こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
職場でのため息は、それだけで直ちにハラスメントと断定されるわけではありません。
ただし、特定の相手に繰り返され、相手を委縮させたり就業環境を悪化させたりしている場合は、ため息によるハラスメントとして問題になる可能性があります。
特に上司のため息や舌打ちは、言葉がなくても相手に強いプレッシャーとして伝わります。
この記事では、ため息がどのような場合に問題になり得るのか、従業員側の対処法、行為者側の改善点、企業や人事担当者が取るべき実務対応まで整理します。
- ため息がハラスメントになり得る条件
- フキハラとパワハラの関係
- 被害を受けたときの記録と相談先
- 企業や管理職が取るべき予防策

ため息はハラスメントになるのか

まずは、ため息や舌打ちがなぜ職場で問題になるのかを整理します。
重要なのは、ため息そのものの有無だけでなく、頻度、相手、職場での力関係、業務への影響を総合的に見ることです。
フキハラの定義と特徴

フキハラとは、不機嫌ハラスメントの略として使われる言葉です。
ため息、舌打ち、無言の威圧、不機嫌な表情、乱暴な物音など、言葉以外の不機嫌な態度によって周囲に精神的な苦痛や圧力を与える行為を指します。
職場では、発言そのものよりも、表情や態度、空気感のほうが相手に強く伝わることがあります。
特に上司や先輩など、評価や業務指示に関わる立場の人が不機嫌な態度を繰り返すと、受け手は自分が責められているように感じやすくなります。
法律上、フキハラという独立した名称のハラスメント類型が明確に定められているわけではありません。
ただ、実務上は モラルハラスメントの一種 として問題視されることがあり、状況によってはパワーハラスメントの判断材料になることもあります。
ポイントは、ため息そのものを一つの動作として見るのではなく、その動作が職場でどのような意味を持ち、相手の働き方にどのような影響を与えているかです。
実際によくある相談として、上司が何も言わずに大きなため息をつく、部下が報告すると毎回舌打ちをする、ミスの説明中に黙って不機嫌な表情を続ける、といったケースがあります。
こうした行為は一つひとつを見ると小さく見えますが、職場では継続するほど相手の心理的負担が大きくなります。
言葉による叱責がないため、周囲からは見えにくい一方で、当事者にとっては毎日の出勤や報告が大きなストレスになります。
フキハラが起きやすい職場の特徴
フキハラは、忙しさや人手不足を理由に、感情のコントロールが後回しになっている職場で起きやすい傾向があります。
上司が常に余裕のない表情をしている、質問しづらい空気がある、ミスをした人に対して周囲が冷たくなる、こうした環境では、ため息や沈黙が暗黙の圧力として機能しやすくなります。
フキハラは、発言がないため証拠が残りにくいのが特徴です。
そのため、受け手が気のせいかもしれないと抱え込みやすく、相談が遅れることがあります。
会社側としては、明確な暴言が出てから対応するのではなく、職場の空気や相談しづらさにも目を向けることが大切です。
ため息がパワハラに該当する条件
ため息がパワハラに該当するかは、単に不快だったかどうかだけで決まりません。
職場のパワーハラスメントは、一般に 優越的な関係を背景とした言動 、 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動 、 就業環境が害されること という要素を踏まえて判断されます。
厚生労働省の考え方でも、この3つの要素を満たすものが職場のパワーハラスメントと整理されています(出典: 厚生労働省「あかるい職場応援団」パワーハラスメントとは )。
たとえば、上司が特定の部下に対してだけ繰り返しため息をつき、その部下が報告や相談をためらうようになった場合は、単なる癖では済まされない可能性があります。
ため息そのものに言葉はなくても、相手に対する不満、否定、威圧として機能している場合があるからです。
特に、上司から部下へのため息は、評価、配置、仕事の割り振りと結びついて受け止められやすく、受け手が逆らいにくい関係であればあるほど問題が深刻化します。
単発のため息が直ちにパワハラになるとは限りませんが、反復性、対象の限定性、力関係、業務への支障が重なると、職場環境を害する行為として扱われる可能性があります。
社労士として相談を受ける場面でも、判断が難しいのは一回の出来事ではなく、日々の積み重ねです。
本人はため息のつもりでも、相手から見ると毎回の否定や威圧に見えていることがあります。
ため息が問題化しやすい判断軸
ため息が問題になるかどうかは、誰が、誰に、どの場面で、どの頻度で行ったかを分けて確認します。
たとえば、全員が疲れている繁忙期に一度だけ出たため息と、特定の部下が発言するたびに上司が大きくため息をつくケースでは、意味合いが大きく異なります。
職場でのハラスメント対応では、行為者の主観だけでなく、受け手の状況、周囲の認識、業務への影響も合わせて確認します。
| 確認項目 | 実務上の見方 | 具体例 |
|---|---|---|
| 反復性 | 一度ではなく、継続して行われているか | 報告のたびにため息をつかれる |
| 対象 | 特定の人に向けられているか | 特定の部下の発言時だけ舌打ちする |
| 関係性 | 上司と部下など優越的な関係があるか | 評価者である上司が不機嫌な態度を続ける |
| 影響 | 委縮、体調不良、報告回避などが起きているか | 相談できずミスの報告が遅れる |
制度や行政資料は更新されることがあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
また、個別事案では事実関係によって評価が変わるため、最終的な判断は専門家にご相談ください。
ため息や舌打ちが与える影響
ため息や舌打ちは、発した本人が思っている以上に強いメッセージとして周囲に伝わります。
言葉で叱責していなくても、受け手は自分が責められている、自分の存在が迷惑なのではないか、と受け止めることがあります。
特に、仕事に慣れていない新入社員、異動直後の従業員、復職直後の従業員などは、周囲の反応に敏感になりやすい時期です。
そこへ上司や先輩のため息が重なると、質問すること自体を避けるようになる場合があります。
職場では、報告、連絡、相談が安全にできることが大切です。
しかし、相談するたびに上司がため息をつく環境では、従業員はミスや不明点を隠しやすくなります。
結果として、問題の早期発見が遅れ、職場全体のリスクが高まります。
これは本人の気持ちの問題にとどまりません。
業務上必要な情報が上がってこない、確認が遅れる、ミスが連鎖する、顧客対応が後手に回るといった実害につながることがあります。
中小企業では、上司と部下の距離が近い分、日常的な態度の影響が大きく出やすいです。
ため息や舌打ちが常態化すると、職場の空気が重くなり、他の従業員も委縮します。
これは単なる気分の問題ではなく、 生産性、離職、メンタルヘルス にも関わる実務上の問題です。
優秀な人ほど、注意されること自体よりも、相談できない空気や理不尽な態度に見切りをつけて離れていくことがあります。
職場全体に広がる二次的な影響
ため息や舌打ちの影響は、直接受けた本人だけにとどまりません。
周囲の従業員も、次は自分が同じ態度を向けられるかもしれないと感じます。
その結果、会議で意見が出なくなる、若手が質問しなくなる、管理職に悪い情報が届きにくくなるといった状態が生まれます。
これが続くと、職場の心理的安全性が下がり、形式的には業務が回っていても、内部では不満や不安が積み重なっていきます。
舌打ちや机を強く叩く行為は、ため息よりも明確に不快感や威圧を示す行為として受け取られやすくなります。
指導の場面であっても、感情を非言語でぶつける対応は避けるべきです。
特に、相手の発言を遮るような舌打ちや、書類を投げるような動作は、職場の安全配慮の観点からも軽視できません。
上司のため息で起こるストレス

上司のため息がつらいという相談では、ため息の回数そのものよりも、ため息の後に起きる空気の変化が問題になっていることが多いです。
たとえば、部下が質問すると上司が大きくため息をつく、報告のたびに不機嫌そうな顔をする、ミスの説明中に黙り込むといった状況です。
こうした場面では、部下は仕事の内容ではなく、上司の機嫌を読むことに注意を奪われます。
このような状態が続くと、部下は上司の機嫌を常に気にするようになります。
その結果、必要な確認を避けたり、判断に迷っても相談できなかったりします。
業務上のミスを防ぐためのコミュニケーションが、かえって滞ってしまうのです。
特に、上司が評価者である場合、部下は単に嫌な気持ちになるだけでなく、自分の評価や今後の仕事に影響するのではないかと不安を感じます。
この不安が続くと、集中力の低下、睡眠不調、出勤前の緊張感などにつながることもあります。
社労士として労務相談を受けていると、従業員本人は最初からハラスメントとして大きく訴えたいわけではなく、まずは普通に相談できる職場に戻したいという希望を持っていることも多いです。
会社側は、従業員の感じ方だけの問題として片づけず、職場の報告体制や上司の指導方法を確認する必要があります。
実際、上司本人には悪意がなくても、部下から見ると非常に強いプレッシャーになっているケースは珍しくありません。
ストレスのサインを見逃さない
ため息が原因でストレスを感じている場合、最初は気分の落ち込みや出勤前の憂うつ感として現れることがあります。
その後、報告を先延ばしにする、上司の席に近づくのを避ける、メールやチャットでしか連絡できなくなる、ミスを隠したくなるといった行動面の変化が出ることもあります。
こうした変化は、本人の弱さではなく、職場環境から受けている負荷のサインとして捉えるべきです。
上司のため息がつらいと感じたときは、自分の受け止め方だけを責めないでください。
まずは、いつ、どの場面で、どのような影響が出ているかを整理することが、冷静な対応につながります。
無意識のため息も問題になる理由
ため息をつく側には悪意がない場合もあります。
疲労、忙しさ、焦り、考えごとによって、無意識にため息が出ることは誰にでもあります。
問題は、そのため息が周囲にどのように届いているかです。
職場では、本人の意図と相手の受け止め方がずれることがあります。
ため息をついた本人は単なる疲労の表れだと思っていても、相手は自分への不満や否定として受け止めることがあります。
特に管理職やリーダーのため息は、本人が思う以上に職場へ影響します。
部下は上司の評価を気にしますので、上司のため息を自分への不満や失望のサインとして受け止めやすくなります。
部下が質問した直後、報告した直後、ミスを説明している途中などにため息が出ると、タイミングによっては強いメッセージになります。
本人が無意識であっても、受け手にとっては明確な否定として残ることがあります。
無意識だから問題にならない とは言い切れません。
ハラスメント対応では、行為者の意図だけでなく、行為の内容、頻度、受け手への影響、職場環境への影響を確認します。
指摘された場合は、反論から入るのではなく、自分の態度が周囲にどう見えていたかを振り返ることが大切です。
これは、管理職としての信頼を守るためにも重要です。
部下にとって相談しやすい上司であることは、業務管理上の大きな強みになります。
無意識の癖を改善する実務的な工夫
無意識のため息を減らすには、まず自分がどの場面でため息をつきやすいかを知ることから始めます。
忙しい時間帯、部下から質問を受けた瞬間、予定外のトラブルが起きたときなど、出やすい場面には傾向があります。
ため息が出そうになったら、一度深呼吸してから話す、席を立って水を飲む、指導の前に伝える内容をメモする、といった小さな工夫でも印象は変わります。
管理職は、感情をため息や沈黙で伝えるのではなく、必要な指導を具体的な言葉で伝えることが重要です。
指摘すべきは人格ではなく、改善してほしい行動です。
部下が次に何をすればよいか分かる伝え方に変えるだけで、職場の空気はかなり変わります。
ため息によるハラスメントの対処法

次に、ため息によるハラスメントが疑われるときの具体的な対応を整理します。
従業員側は記録と相談、行為者側は自覚と改善、企業側は事実確認と再発防止が実務上の柱になります。
職場でまず記録すべきこと
ため息や舌打ちは、メールやチャットのように形が残りにくい行為です。
そのため、つらいと感じた場合は、まず記録を残すことが大切です。
記録は感情だけでなく、事実が分かる形にしておくと、社内相談や外部相談の際に状況を説明しやすくなります。
相談の場で、いつもため息をつかれますと伝えるだけでは、会社側も具体的に調査しにくいものです。
できるだけ場面を特定できる記録があると、事実確認が進めやすくなります。
具体的には、日時、場所、誰がいたか、どのような場面でため息があったか、その後に自分の業務や体調へどのような影響が出たかをメモします。
日記形式でも構いませんが、できるだけ具体的に書くことが重要です。
たとえば、単に上司が不機嫌だったと書くより、午前10時の週次会議で進捗を報告した際、私の発言直後に大きなため息をつき、その後に返答がなかった、というように書くと状況が伝わりやすくなります。
たとえば、上司に資料確認を依頼した際に大きなため息をつかれ、その後の会話がなくなった、会議中に自分の発言だけに舌打ちをされた、といったように、場面が分かる記録があると実態を確認しやすくなります。
記録は相手を攻撃するためではなく、自分の状況を正確に説明するためのものです。
つらい状態が続くと記憶があいまいになりやすいため、できればその日のうちに短く残しておくとよいですよ。
記録に残しておきたい項目
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 日時 | 2026年6月14日 午前10時頃 |
| 場所 | 会議室、上司の席、オンライン会議など |
| 状況 | 資料の確認を依頼した直後に大きなため息をつかれた |
| 周囲の人 | 同席者、会議参加者、近くにいた同僚 |
| 影響 | その後質問できず、業務判断が遅れた |
録音を検討する場合は、社内規程や法的な問題も関係します。
使い方によってはトラブルになることもあるため、必要に応じて専門家へ相談してください。
録音の有無だけに頼らず、日々のメモ、相談履歴、体調の変化も合わせて整理することが大切です。
フキハラの証拠になるもの

フキハラの証拠としては、本人のメモ、目撃者の証言、体調不良の記録、医療機関の受診記録、社内相談の履歴などが考えられます。
ため息そのものを毎回客観的に証明するのは難しいため、複数の資料を組み合わせて状況を整理することが実務上は多いです。
特に、非言語のハラスメントは録音しても伝わりにくい場合があるため、どの場面でどのような態度があり、それによって自分の行動や体調がどう変わったかを残しておくことが重要です。
重要なのは、ため息があったという一点だけでなく、それがどの程度繰り返され、どのような影響を与えたかです。
たとえば、上司のため息が続いた結果、報告をためらうようになった、出勤前に動悸がするようになった、医師に相談した、といった経過は、職場環境への影響を確認するうえで参考になります。
また、同僚も同じ場面を見ていた、同じ上司について複数人が同様の不安を感じている、といった事情があれば、会社としても職場環境全体の問題として把握しやすくなります。
会社側が相談を受けた場合も、最初からどちらかを決めつけるのではなく、当事者双方から丁寧に聴き取る必要があります。
行為者に自覚がない場合もあるため、記録に基づいて具体的な場面を確認することが大切です。
たとえば、あなたはいつもため息をついていると抽象的に伝えるより、6月の定例会議でAさんの報告直後にため息をつき、その後Aさんが発言しなくなった、というように確認した方が、改善につながりやすくなります。
証拠は一つで完璧を目指さない
ハラスメント相談では、決定的な証拠がないと相談してはいけないと考える方がいます。
しかし、実務上は最初から完璧な証拠がそろっているケースばかりではありません。
まずは、継続した記録、相談した事実、体調や業務への影響を整理することが出発点です。
会社側も、相談を受けた段階で事実確認を行い、必要に応じて職場環境の調整や行為者への注意を検討します。
フキハラの証拠は、ため息そのものを証明する資料だけではありません。
日時のメモ、周囲の証言、業務への影響、体調不良の記録、相談履歴を合わせて、職場で何が起きていたかを立体的に整理することが大切です。
社内外の相談先を知る
ため息や舌打ちがつらいと感じたら、まずは一人で抱え込まないことが大切です。
社内で相談できる相手がいる場合は、信頼できる上長、人事担当者、ハラスメント相談窓口などに状況を伝えます。
このとき、相手の人格を責める表現だけになると、相談の焦点がぼやけてしまうことがあります。
いつ、どこで、どのような態度があり、業務や体調にどのような影響が出ているかを中心に話すと、会社側も対応しやすくなります。
社内で相談しにくい場合や、相談しても改善が見られない場合は、外部の相談先も検討します。
都道府県労働局の総合労働相談コーナー、弁護士、社会保険労務士などが相談先になります。
ハラスメントの相談先は、内容によって労働基準監督署だけで完結しないこともあります。
たとえば、未払い残業代のように労働基準法違反が疑われる問題と、職場のいじめや嫌がらせ、パワハラの相談では、使う窓口や解決の進め方が異なることがあります。
相談先の違いで迷う場合は、当事務所の記事 労働基準監督署と労働局の違いを問題別に解説 でも整理しています。
パワハラや職場トラブルでは、労基署、労働局、社内窓口、専門家相談をどう使い分けるかが大切です。
会社の中で解決できる問題もありますが、相談したことによって不利益を受けそうな場合や、すでに心身の不調が出ている場合は、早めに外部へ相談する選択肢も持っておきましょう。
行政の相談窓口については、厚生労働省の 総合労働相談コーナーのご案内 で確認できます。
総合労働相談コーナーでは、いじめ、嫌がらせ、パワハラを含む労働問題の相談を受け付けています。
制度や窓口の情報は変更されることがあるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
相談前に整理しておくとよいこと
- いつ頃からため息や舌打ちが続いているか
- 誰から、どのような場面で行われているか
- 業務上どのような支障が出ているか
- 体調や通院の有無
- 社内で相談した相手とその結果
相談するときは、相手を責める表現だけでなく、いつ、どこで、何が起き、どのように業務へ支障が出ているかを整理すると伝わりやすくなります。
相談内容によっては、法的判断や会社の規程確認が必要になるため、最終的な判断は専門家にご相談ください。
行為者が改善すべき言動
ため息が多いと指摘された側は、ため息くらいでハラスメントなのかと感じるかもしれません。
実務上も、管理職からそのような相談を受けることがあります。
ただ、管理職や上司の態度は、部下にとって評価や処遇と結びついて見えやすいものです。
自分では疲れていただけ、考えていただけと思っていても、相手からは怒っている、見下されている、責められていると見えることがあります。
ここが、行為者側にとって見落としやすいポイントです。
まずは、自分のため息が特定の相手の前で多くなっていないか、指導の場面で舌打ちや沈黙を使っていないかを振り返る必要があります。
ため息は自分のストレス発散のつもりでも、相手には不満や否定のメッセージとして届くことがあります。
特に、部下が質問してきた瞬間、ミスの報告をした瞬間、改善案を話している途中などにため息が出ると、指導内容よりもため息の印象が強く残ります。
その結果、部下は次から質問や報告を控えるようになります。
改善の基本は、非言語で圧をかけるのではなく、必要なことを言葉で伝えることです。
たとえば、また同じミスかというため息ではなく、前回と同じ箇所で誤りがあるため、次回から確認手順を一つ増やしましょうと伝える方が、業務指導として明確です。
指導は、相手を萎縮させるためではなく、次の行動を改善するために行うものです。
ここを意識するだけで、管理職としての伝え方はかなり変わります。
言い換えで職場の印象は変わる
| 避けたい対応 | 改善した伝え方 |
|---|---|
| ため息をついて黙る | 確認したい点が2つあります、と切り出す |
| 舌打ちして資料を返す | 修正箇所を具体的に示す |
| またか、という表情をする | 同じミスを防ぐ手順を一緒に確認する |
| 不機嫌な沈黙を続ける | 今は確認中なので、後ほど返答しますと伝える |
指導で大切なのは、感情をぶつけることではなく、次に何を改善すればよいかを相手が理解できる状態にすることです。
ため息で空気を悪くするより、短くても具体的な言葉で伝えるほうが、結果として仕事も早く進みます。
人事が取るべき職場対応

人事担当者や経営者がため息によるハラスメントの相談を受けた場合は、軽く扱わないことが重要です。
言葉による暴言がないから問題ではない、と決めつけると、被害を訴えた従業員がさらに孤立する可能性があります。
ため息や舌打ちは、明確な発言が残りにくいからこそ、相談者の話を丁寧に聴く姿勢が必要です。
一方で、行為者側にも自覚がないことがあるため、最初から加害者と決めつける対応も避けるべきです。
中立的な事実確認。
ここが大切です。
最初に行うべきことは、相談内容の記録と事実確認です。
いつ、どこで、誰が、どのような場面でため息や舌打ちをしたのか、周囲に目撃者がいるのか、業務や体調に影響が出ているのかを確認します。
そのうえで、行為者側にも丁寧に事情を聴きます。
聴き取りの際には、相談者のプライバシー保護や、相談したことによる不利益取扱いを防ぐ配慮も欠かせません。
相談後にシフトを減らす、評価を下げる、周囲に相談内容を漏らすといった対応は、二次被害につながります。
行為者に自覚がない場合は、まずは注意指導や研修によって改善を促す対応が現実的です。
ただし、改善が見られない場合、被害者の体調不良が深刻な場合、複数人に同様の行為がある場合は、配置転換や業務分担の見直しも検討します。
懲戒処分を行うかどうかは、就業規則の根拠、行為の程度、過去の指導歴、本人の改善状況などを踏まえて慎重に判断します。
感情的に処分を急ぐのではなく、会社として説明できる手順を踏むことが重要です。
ハラスメントの種類や企業が優先して整えるべき体制については、当事務所の記事 ハラスメントの種類と職場で優先すべき対応 でも解説しています。
相談窓口を置くだけでなく、相談後の調査、保護、再発防止まで流れを決めておくことが実務では重要です。
就業規則やハラスメント防止規程に相談対応の流れが書かれていても、実際に現場で運用できていなければ意味がありません。
企業が整えておきたい予防策
- ハラスメント相談窓口の周知
- 管理職向けの感情マネジメント研修
- 非言語ハラスメントを含む研修内容の整備
- 相談後の事実確認と再発防止の手順化
- 相談者への不利益取扱い防止
相談を受けた後の基本フロー
| 段階 | 対応内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 受付 | 相談内容を記録し、秘密保持を説明する | 相談者を責める質問を避ける |
| 確認 | 当事者、目撃者、記録を確認する | 一方の話だけで判断しない |
| 対応 | 注意指導、配置調整、業務分担見直しを行う | 相談者への不利益を防ぐ |
| 再発防止 | 研修、管理職指導、相談体制の見直しを行う | 一度きりで終わらせない |
会社としては、誰が悪いかを急いで決めるより、職場で何が起きているかを把握し、安心して働ける環境に戻すことが大切です。
ハラスメント対応は、労務管理、メンタルヘルス、就業規則の運用が関わるため、最終的な判断は専門家にご相談ください。
ため息のハラスメントを防ぐ要点
ため息のハラスメントを防ぐには、従業員側、管理職側、企業側のそれぞれが役割を理解する必要があります。
従業員側は、つらい状況を我慢し続けるのではなく、記録を残し、相談できる相手につなげることが大切です。
ため息や舌打ちのような非言語の問題は、自分でも説明しにくく、周囲にも伝わりにくいことがあります。
だからこそ、感情だけで抱え込まず、事実と影響を整理することが第一歩になります。
管理職側は、ため息や舌打ち、沈黙で不満を伝えないことが基本です。
業務上の指導が必要な場面では、改善してほしい行動を具体的に言葉で伝えます。
人格を否定するような態度や、相手を委縮させる非言語の圧力は、職場の信頼関係を壊します。
管理職に求められるのは、いつも機嫌よくいることではありません。
忙しいときや厳しい指導が必要なときでも、相手が次に何をすればよいか分かるように伝えることです。
企業側は、ため息程度と軽く見ず、相談があった時点で事実確認と環境調整を行う姿勢が求められます。
特に中小企業では、人間関係が近い分、上司の機嫌が職場全体に広がりやすいです。
だからこそ、日常的な態度や指導方法を見直すことが、ハラスメント予防につながります。
ハラスメント研修では、暴言や暴力だけでなく、ため息、舌打ち、無視、不機嫌な態度などの非言語コミュニケーションも扱うと、現場での理解が進みやすくなります。
立場別に押さえたい実務ポイント
| 立場 | 押さえるポイント |
|---|---|
| 従業員 | 日時、場面、影響を記録し、早めに相談する |
| 管理職 | ため息や舌打ちではなく、具体的な言葉で指導する |
| 人事 | 相談を軽視せず、中立的に事実確認を行う |
| 経営者 | 相談体制、研修、再発防止の仕組みを整える |
ため息がハラスメントになるかは状況次第ですが、相手を委縮させ、報告や相談を妨げ、就業環境を悪化させているなら、職場として放置すべきではありません。
ため息によるハラスメントは、感情論だけでなく、職場環境、指導方法、相談体制の問題として整理することが大切です。
従業員側も企業側も、早い段階で記録を残し、必要に応じて専門家や公的窓口に相談しながら、冷静に対応していきましょう。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別の事案では、就業規則、証拠、当事者の関係性、体調への影響などによって判断が変わるため、最終的な判断は専門家にご相談ください。