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有給5日の取得義務を社労士が実務目線でわかりやすく解説

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

有給5日の取得義務とは、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者について、会社が基準日から1年以内に5日以上の有給休暇を取得させなければならない制度です。

2019年4月から始まった制度ですが、対象者、パートの扱い、管理職の扱い、半日取得や時間単位有給のカウントなど、実務では今でも迷いやすいポイントが多くあります。

この記事では、従業員の方が自分の権利を確認できるようにしながら、会社側・人事労務担当者がどのように管理すべきかも、実務目線で整理します。

  • 有給5日の取得義務の基本ルール
  • 対象者とパート・管理職の扱い
  • 半日・時間単位・計画的付与の考え方
  • 違反時の罰則と会社の管理方法

有給5日の取得義務を社労士が解説

有給5日の取得義務とは

有給5日の取得義務とは

5日取得義務の前提として、そもそもの付与日数と条件は有給の付与日数を一覧で確認できる社労士の実務解説ガイドで確認できます。

まずは、有給5日の取得義務がいつから始まり、誰が対象になるのかを確認します。

ここを押さえておくと、従業員側は「自分が対象かどうか」を判断しやすくなり、会社側は「誰を管理対象に入れるべきか」を整理しやすくなります。

義務化はいつから始まったか

義務化はいつから始まったか

有給5日の取得義務は、働き方改革関連法による労働基準法の改正により、2019年4月1日から始まりました。

大企業だけでなく、中小企業にも同じタイミングで適用されています。

つまり、会社の規模にかかわらず、対象者がいる事業場では対応が必要です。

この制度の中心は、 年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、会社が年5日以上の有給休暇を確実に取得させる という点です。

従業員が自分で申請して5日以上取得していれば、会社が追加で時季指定をする必要はありません。

一方で、基準日から1年以内に5日に届かない見込みであれば、会社側が本人の意見を聴き、できる限りその希望を尊重しながら取得日を決める必要があります。

ここで誤解されやすいのは、「年5日分を会社が必ず一方的に指定する制度」ではないということです。

従業員が自主的に取得した日数、計画的付与で取得した日数、会社が時季指定して取得させた日数を合わせて、結果として5日以上になっていればよいという整理です。

ただし、会社が何も確認せず、従業員任せにしていた結果、5日に届かなかった場合は、会社側の管理不足として問題になります。

有給5日の取得義務は、会社側に課された義務です。

従業員が申請しなかったからといって、会社が免責されるわけではありません。

私のところにも、「従業員が忙しくて申請してこない場合はどうすればよいですか」「本人が休みたくないと言っている場合でも会社に責任がありますか」といった相談が寄せられます。

結論としては、会社は対象者の取得状況を確認し、必要に応じて本人に取得希望日を確認するなど、積極的に取得へつなげる対応が必要です。

本人が希望を出しにくい職場であれば、上司や人事担当者から声をかける仕組みも必要になります。

制度の根拠を確認する

年次有給休暇の制度は、労働基準法第39条に定められています。

年5日の取得義務について正確な条文を確認したい場合は、一次情報として e-Gov法令検索「労働基準法」 を確認するとよいです。

実務では条文だけでは分かりにくい部分も多いため、会社の運用に落とし込む際は、就業規則、勤怠管理、給与計算、現場のシフト調整まで含めて整理する必要があります。

また、有給5日の取得義務は「法律で決まっているから仕方なく対応するもの」と捉えるよりも、従業員の疲労回復、離職防止、職場の属人化対策にもつながる制度として考えると運用しやすくなります。

特定の人しかできない業務が多い会社ほど、有給を取れないこと自体が組織上のリスクになります。

年5日をきっかけに、業務の見える化や引き継ぎ体制の整備を進めることも、労務管理としては大切な視点です。

対象者になる従業員

有給5日の取得義務の対象になるのは、 年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者 です。

正社員だけでなく、契約社員、有期雇用労働者、パート、アルバイト、管理監督者も、条件を満たせば対象になります。

雇用形態の名称ではなく、年次有給休暇が何日付与されるかで判断する点が重要です。

一般的なフルタイム勤務の従業員は、入社から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば、最初に10日の年次有給休暇が付与されます。

そのため、多くの正社員やフルタイム契約社員は、初回付与の時点で有給5日の取得義務の対象になります。

新卒採用、中途採用、契約社員から正社員に転換した方なども、勤務実態と付与日数を確認して判断します。

一方で、年次有給休暇がまだ発生していない方や、付与日数が10日未満の短時間勤務者は、年5日の取得義務の対象外となる場合があります。

ただし、対象外であっても年次有給休暇そのものが発生している場合は、労働者が請求すれば会社は原則として取得を認める必要があります。

つまり、年5日の義務対象外であることと、有給休暇を取れないことは別問題です。

実務では、「年5日の取得義務の対象ではないから、有給の管理もしなくてよい」と誤解されることがあります。

しかし、付与日数が1日でもある労働者については、取得日数や残日数を適切に把握しておくことが望ましいです。

対象者判定で確認する項目

対象者を判定するときは、従業員名簿や雇用契約書だけを見るのではなく、実際の勤務条件も確認します。

特に、週所定労働日数、週所定労働時間、勤続年数、出勤率、付与日数の5つは確認しておきたい項目です。

勤務日数が変更されたパート、育児・介護で短時間勤務になった従業員、休職や復職を挟んだ従業員は、機械的に判断すると誤りが出やすい部分です。

確認項目 確認する理由 実務上の注意点
週所定労働日数 比例付与の判定に関係するため 契約上の日数と実態がずれていないか確認
週所定労働時間 週30時間以上かどうかで扱いが変わるため シフト制では平均的な勤務時間も確認
勤続年数 付与日数が増えるため 長期勤務のパートは対象化しやすい
出勤率 有給発生要件に関係するため 休職や欠勤が多い場合は慎重に確認
付与日数 年10日以上か判断するため 前倒し付与や統一基準日も反映する

有給休暇の基本的な発生条件については、掲載サイト内の 有給ない会社は違法かを解説した記事 でも詳しく整理しています。

従業員側で「自分には有給があるのか分からない」という場合は、まず雇用契約書、給与明細、勤怠システム、就業規則を確認してみてください。

会社側では、対象者の見落としを防ぐため、年1回だけでなく、入社日や契約更新のタイミングでも確認する運用がおすすめです。

パートも対象になる条件

パートやアルバイトも、年10日以上の年次有給休暇が付与される場合は、有給5日の取得義務の対象になります。

ここは、中小企業では特に迷いやすいポイントです。

「パートだから対象外」「扶養内勤務だから対象外」「短時間だから有給はない」といった判断は、実務上トラブルにつながりやすいです。

パートやアルバイトの有給休暇は、週の所定労働日数や年間の所定労働日数に応じて比例付与されます。

たとえば、週4日勤務の方は勤続年数が一定期間を超えると10日以上の有給休暇が付与されるため、その時点から年5日の取得義務の対象になります。

週3日勤務の方でも、勤続年数が長くなると10日に達する場合があります。

また、週所定労働時間が30時間以上のパートは、週の所定労働日数が少なく見える場合でも、フルタイム労働者と同じように扱われることがあります。

たとえば、1日7.5時間で週4日勤務している場合などは、週30時間に達するため、初回付与から10日となる可能性があります。

ここを見落とすと、対象者の管理漏れにつながります。

勤務形態 対象になる目安 実務で確認する点
週30時間以上 入社6か月で10日付与 フルタイムと同様に扱う
週4日勤務 勤続3年6か月以降が目安 比例付与で10日に達するか確認
週3日勤務 勤続5年6か月以降が目安 付与日数の変化を毎年確認
週2日以下 勤務日数と勤続年数による 10日未満なら義務対象外の場合あり

シフト制パートで迷いやすい点

シフト制のパートでは、契約書上は週3日勤務となっていても、実際には週4日や週5日働いているケースがあります。

逆に、契約上は週4日でも、実態としては勤務日数が少ない場合もあります。

年次有給休暇の管理では、契約内容と勤務実態の両方を見て、会社として整合性のある判断をすることが大切です。

実際によくある相談として、「長年働いているパートさんが、正社員より有給を取りにくい雰囲気になっている」というものがあります。

パートは少人数の店舗や部署で重要な戦力になっていることが多く、本人も遠慮して休みを申し出にくい場合があります。

しかし、条件を満たして年10日以上付与されているなら、会社は年5日の取得義務を負います。

パートの対象漏れは、会社側の有給管理で特に起こりやすいミスです。

正社員だけでなく、勤続年数の長いパートや週30時間以上勤務のパートも必ず確認しましょう。

会社側では、正社員だけを一覧管理していると、長く勤務しているパートの対象漏れが起こりやすくなります。

採用時や契約更新時には、週所定労働日数、週所定労働時間、勤続年数を確認し、比例付与で10日に達しているかを見直すことが大切です。

従業員側も、自分がパートだから対象外だと決めつけず、勤続年数と付与日数を確認してみるとよいですよ。

管理職も対象になる理由

管理職も対象になる理由

管理職についても、年10日以上の有給休暇が付与される場合は、有給5日の取得義務の対象になります。

ここでいう管理職には、一般的に課長、部長、店長、工場長、エリアマネージャーなどと呼ばれる方も含まれます。

肩書きが管理職であるかどうかではなく、年次有給休暇が付与される労働者であるかどうかが判断の出発点です。

労働基準法上の管理監督者は、労働時間、休憩、休日に関する一部の規定が適用されない扱いになります。

しかし、 年次有給休暇の制度は管理監督者にも適用されます。

そのため、「管理職だから有給5日の取得義務は関係ない」と考えるのは誤りです。

実務では、管理監督者に該当するかどうか自体も慎重な判断が必要ですが、仮に労基法上の管理監督者であっても、有給休暇の対象から外れるわけではありません。

実務では、管理職ほど業務責任が重く、本人も遠慮して有給を取りにくいケースがあります。

しかし、対象者である以上、会社は管理職についても取得日数を確認し、5日に届かない場合は対応する必要があります。

管理職の有給取得が進まない理由

管理職の有給取得が進まない理由として多いのは、代わりに判断できる人がいない、部下のシフト調整を優先して自分の休みを後回しにする、経営者や上司に遠慮して申請しにくい、といったものです。

特に中小企業では、管理職がプレイヤーとしても現場業務を抱えていることが多く、休むと業務が止まるという不安が出やすいです。

ただ、管理職が休めない状態は、会社にとってもリスクです。

特定の人に判断や情報が集中していると、その人が急病や退職で不在になったときに業務が回らなくなります。

有給5日の取得義務は、単に休ませる制度ではなく、業務の属人化を見直すきっかけにもなります。

会社側では、管理職本人に「休みたい日があれば申請してください」と伝えるだけでは不十分になりがちです。

年間の繁忙期、会議日程、締め処理、棚卸し、給与計算、採用面接など、管理職が関わる業務を見える化し、休める時期をあらかじめ候補として出すほうが運用しやすいです。

管理職の有給取得は、本人の問題ではなく会社の体制づくりの問題でもあります。

副担当者を決める、承認権限を一時的に委任する、業務マニュアルを作るなど、休める仕組みを整えることが重要です。

特に店舗長、工場長、部門責任者などは、現場の稼働に大きく関わるため、取得時季の調整が後回しになりがちです。

早い段階で年間スケジュールを確認し、繁忙期を避けながら計画的に取得できるよう調整しておくことが実務上のポイントです。

従業員側の管理職の方も、「自分は管理職だから取れない」と思い込まず、会社の管理対象に入っているか確認しておきましょう。

中小企業も義務の対象

有給5日の取得義務は、中小企業にも適用されています。

働き方改革関連法の中には、中小企業に対して適用時期が遅れていた制度もありますが、有給5日の取得義務については、2019年4月1日から大企業・中小企業ともに始まっています。

会社の人数が少ないことや、地方の小規模事業所であることは、義務を免れる理由にはなりません。

中小企業では、少人数で業務を回しているため、「休まれると現場が回らない」「代わりの人がいない」「繁忙期が長くて休ませるタイミングがない」という相談を受けることがあります。

これは実務上とても現実的な悩みです。

ただし、人手不足を理由に、年5日の取得をさせない運用は認められません。

むしろ、人手不足の会社ほど、計画的な取得管理が必要になります。

対応の基本は、年度末にまとめて確認するのではなく、 基準日から数か月ごとに取得状況を確認すること です。

たとえば、基準日から3か月、6か月、9か月のタイミングで取得状況を確認し、取得が進んでいない従業員には早めに声をかけます。

期限直前になってから5日分をまとめて取らせようとすると、現場にも本人にも負担がかかります。

小規模事業所での現実的な進め方

小規模事業所では、全員が同じ時期に休むのは難しいことがあります。

その場合は、繁忙期を避けた月に1日ずつ取得してもらう、閑散期に部署ごとに取得日を分散する、管理職から先に取得予定を決めるなど、会社の実情に合わせた方法を考えます。

大切なのは、場当たり的に決めるのではなく、年間の見通しを持って進めることです。

中小企業では、勤怠システムがなくても、Excelや給与計算ソフトの有給管理機能を使って、基準日・取得日数・残日数を一覧化しておくことが重要です。

実務では、社長や経営者が従業員一人ひとりの休みを感覚的に把握している会社もあります。

ただ、有給5日の取得義務は「なんとなく休んでいるはず」では足りません。

基準日、取得日、取得日数を記録し、後から説明できる状態にしておく必要があります。

特に、労働基準監督署の調査が入った場合、口頭説明だけではなく、管理簿や勤怠記録で確認されることがあります。

中小企業でおすすめなのは、毎月の給与計算前に有給取得状況を一緒に確認する運用です。

給与計算と勤怠集計は必ず行う業務なので、そこに有給5日の進捗確認を組み込むと、確認漏れを防ぎやすくなります。

また、従業員側に対しては、有給を取ることを「迷惑」と感じさせない職場づくりも大切です。

会社が制度として取得を促していることを周知し、上司が率先して取得することで、申請しやすい雰囲気が生まれます。

制度対応と職場風土。

どちらも大切です。

有給5日の取得義務への対応

有給5日の取得義務への対応

ここからは、会社が実際にどのように有給5日の取得義務へ対応するかを整理します。

従業員側にとっても、会社がどのような基準で管理しているのかを知っておくと、自分の取得状況を確認しやすくなります。

基準日の考え方

有給5日の取得義務では、 年10日以上の年次有給休暇を付与した日 が基準日になります。

会社は、その基準日から1年以内に、対象者へ5日以上の有給休暇を取得させる必要があります。

基準日を正しく押さえないと、いつまでに5日取得させるべきか分からなくなり、管理全体が不安定になります。

たとえば、4月1日に入社したフルタイム従業員が、6か月後の10月1日に10日の有給休暇を付与された場合、10月1日が基準日になります。

この場合、翌年9月30日までの1年間で5日以上取得しているかを管理します。

4月入社だから年度末までに5日という考え方ではなく、あくまで10日以上を付与した日から1年以内という考え方です。

実務では、入社日が従業員ごとに異なるため、基準日もバラバラになりやすいです。

そのまま個別管理する方法もありますが、人数が増えるほど管理が複雑になります。

そのため、毎年4月1日などに全社統一の基準日を設ける会社もあります。

これを斉一的取扱いと呼ぶことがあります。

個別管理と統一基準日の違い

個別管理は、法定どおりに付与日を管理しやすい反面、従業員ごとに期限が異なるため、管理表を丁寧に作らないと漏れが出ます。

統一基準日は、会社全体で管理しやすくなる反面、法定付与日より不利にならないよう前倒し付与が必要になる場合があります。

どちらが正しいというより、会社の規模、勤怠システム、入退社の多さ、給与計算の体制に合わせて選ぶことになります。

管理方法 メリット 注意点
個別基準日 入社日ごとの法定付与に沿いやすい 従業員ごとに期限が異なり管理が複雑
全社統一基準日 一斉に確認でき管理しやすい 前倒し付与や移行期間の整理が必要
入社月別管理 個別管理より整理しやすい 月ごとの確認運用が必要

ただし、全社統一の基準日を採用する場合は、法定付与日より不利にならないよう、前倒し付与が必要になることがあります。

前倒し付与をすると、付与した日が新たな基準日になるため、年5日の取得義務の管理期間もそこから始まります。

移行初年度は特に複雑になりやすいため、就業規則や運用ルールに明記しておくことが大切です。

前倒し付与の制度設計については、掲載サイト内の 有給を入社後すぐ付与する制度設計の記事 でも実務上の注意点を解説しています。

会社側では、基準日の整理を曖昧にしたまま運用を始めるのではなく、対象者一覧と基準日一覧を最初に作ることをおすすめします。

半日取得のカウント方法

半日取得のカウント方法

有給5日の取得義務では、半日単位の有給取得もカウントできます。

1日単位で取得した場合は1日、半日単位で取得した場合は0.5日として扱うのが一般的です。

つまり、半日有給を2回取得すれば、1日分として計算します。

従業員にとっても、会社にとっても、半日取得は制度を運用しやすくする選択肢の一つです。

半日取得を認めるかどうかは、会社の就業規則や運用ルールに関わる部分です。

会社が半日単位の取得制度を設けている場合は、従業員にとっても休みやすく、会社にとっても年5日の取得義務に対応しやすくなります。

特に、通院、子どもの学校行事、役所手続き、家族の送迎など、丸1日休むほどではない用事では半日有給が使いやすいですよ。

たとえば、午前中に通院して午後から出勤する、午後に学校行事があるため午前だけ勤務する、といった場面では半日有給が実務に合います。

従業員の取得促進にもつながりやすい制度です。

半日取得を導入する際の注意点

ただし、半日取得を運用する場合は、勤怠管理上の記録を正確に残す必要があります。

午前休、午後休の区分、所定労働時間との関係、賃金控除をしない処理、休憩時間との関係などを明確にしておくと、後から確認しやすくなります。

特にシフト制や変形労働時間制の職場では、1日の所定労働時間が日によって異なる場合があるため、半日の定義をあらかじめ決めておくことが重要です。

たとえば、1日の所定労働時間が8時間の会社では、午前4時間・午後4時間という整理がしやすいかもしれません。

一方で、午前3時間・午後5時間のように勤務時間が偏っている会社では、単純に半分とはいえない場合があります。

会社ごとに、午前休・午後休の取り扱いを就業規則や勤怠ルールで明確にしておくと、従業員との認識違いを防げます。

半日有給は年5日のカウントに使えますが、運用ルールが曖昧だと勤怠集計や給与計算で混乱します。

導入する場合は、申請方法、承認方法、カウント方法をセットで整えましょう。

従業員側も、半日有給を取得した場合に何日分としてカウントされているかを確認しておくと安心です。

会社の勤怠システムによっては、半日有給が0.5日として表示されるものもあれば、時間数で表示されるものもあります。

年5日の取得義務に関係する管理では、半日取得が正しく0.5日として反映されているかがポイントになります。

私が会社の有給管理を確認するときは、半日取得を認めているか、勤怠システムで正しく集計されるか、給与明細上の残日数と管理簿の数字が合っているかをよく見ます。

半日有給は便利な制度ですが、便利だからこそ、ルールと記録をきちんとそろえておくことが大切です。

時間単位有給は対象外

時間単位有給は、年5日の取得義務のカウントには含めない扱いに注意が必要です。

時間単位有給そのものは、労使協定を締結することで導入できる制度ですが、年5日の確実な取得とは別に考える必要があります。

ここは、実務上かなり誤解が多いポイントです。

たとえば、1時間単位で何度か有給を取得し、合計時間が1日分に相当したとしても、それを年5日の取得義務の1日分として扱うことは避けるべきです。

年5日の取得義務に対応するためには、1日単位または半日単位での取得状況を確認することが重要です。

時間単位有給をたくさん使っていても、1日単位・半日単位で5日に届いていなければ、会社は追加の対応を検討する必要があります。

時間単位有給を導入している会社ほど、年5日の管理と混同しやすいです。

勤怠システム上でも、時間単位取得と年5日カウント対象の取得を分けて確認できるようにしておきましょう。

なぜ時間単位は分けて考えるのか

有給5日の取得義務は、年次有給休暇をまとまった休息として確実に取らせる趣旨があります。

時間単位有給は、通院、子どもの送迎、役所手続きなどに便利な制度ですが、短時間の中抜けに近い使い方になることもあります。

そのため、年5日の確実な取得のカウントとは分けて扱う必要があります。

会社側でよくあるミスは、勤怠システムの有給取得合計だけを見て、時間単位有給を含めた合計日数で5日を超えていると判断してしまうことです。

たとえば、時間単位有給を8時間分使っているから1日取得扱いにする、というような集計は、年5日の義務管理としては慎重に避けるべきです。

取得方法 年5日のカウント 実務上の扱い
1日単位の有給 1日としてカウント 最も分かりやすい管理方法
半日単位の有給 0.5日としてカウント 2回で1日分として整理
時間単位有給 カウントしない 年5日管理とは別枠で確認
振替休日 カウントしない 有給休暇ではないため別扱い
代替休暇 カウントしない 年次有給休暇とは制度が異なる

従業員側も、「時間単位でかなり有給を使っているから年5日は大丈夫」と思い込まないことが大切です。

自分が基準日から何日分の有給を取得しているか、会社の勤怠システムや給与明細などで確認しておきましょう。

表示が分かりにくい場合は、人事担当者に「年5日の取得義務上、何日取得済みとして扱われていますか」と聞くと話が早いです。

会社側では、時間単位有給を導入する際に、労使協定、就業規則、勤怠システムの設定、給与計算の処理を確認する必要があります。

特に、年5日の取得義務の対象日数と時間単位有給の利用時間を別々に出力できるかは重要です。

導入後に混乱しないよう、制度設計の段階で確認しておきたいところです。

計画的付与の活用方法

計画的付与とは、労使協定を結んだうえで、会社があらかじめ有給休暇の取得日を計画的に定める制度です。

夏季休暇、年末年始の前後、閑散期、会社指定の休業日などに組み込まれることがあります。

上手に使えば、会社にとっては業務調整がしやすくなり、従業員にとっても休みの予定を立てやすくなります。

計画的付与で取得した有給休暇の日数は、有給5日の取得義務のカウントに含めることができます。

ただし、労働者が自由に取得できる有給休暇を一定日数残しておく必要があります。

すべての日数を会社が一方的に指定できるわけではありません。

年次有給休暇は本来、労働者が請求する時季に与える制度ですので、計画的付与はその例外的な仕組みとして丁寧に運用する必要があります。

計画的付与には、主に次のような方法があります。

  • 全従業員を同じ日に休ませる一斉付与方式
  • 部署や班ごとに休ませる班別付与方式
  • 個人ごとに取得日を決める個人別付与方式

計画的付与が向いている職場

計画的付与が向いているのは、繁忙期と閑散期がはっきりしている職場、会社全体で休業日を作りやすい職場、製造業や建設業のように工程管理と休暇管理を合わせやすい職場などです。

たとえば、お盆や年末年始の前後に会社全体で休業日を設け、その一部を計画的付与にするケースがあります。

一方で、医療、介護、小売、飲食、宿泊など、常に一定の人員配置が必要な業種では、一斉付与が難しい場合があります。

その場合は、班別付与や個人別付与のほうが現実的です。

大事なのは、制度の名前だけを導入するのではなく、現場が回る形で設計することです。

計画的付与は、有給5日の取得義務に対応する有効な方法ですが、労使協定と自由取得分の確保が前提です。

会社の都合だけで一方的に運用しないよう注意しましょう。

実務では、計画的付与を導入したつもりでも、労使協定がない、就業規則との整合性がない、対象者への周知が不十分というケースがあります。

この状態では、後から従業員とのトラブルにつながることがあります。

導入時には、対象者、対象日、除外する従業員の扱い、入社間もない人や有給残日数が少ない人の扱いを決めておきます。

また、計画的付与は「5日を超える分」について使えるという考え方も重要です。

労働者が自由に取得できる日数を確保する必要があるため、付与された有給休暇のすべてを計画的付与に回すことはできません。

従業員側から見ても、私用や体調管理のために自分で使える有給が残っているかは大切な確認ポイントです。

計画的付与を上手に使うと、会社は年5日の取得義務を見通しやすくなり、従業員も休暇予定を立てやすくなります。

ただし、制度設計を誤ると、休ませているつもりでも法的な要件を満たしていない可能性があります。

最終的には、就業規則、労使協定、勤怠管理の3点をそろえて運用することが大切です。

罰則と違反時の対応

罰則と違反時の対応

有給5日の取得義務に違反した場合、会社には罰則が科される可能性があります。

一般的には、対象労働者1人につき30万円以下の罰金が問題となることがあります。

また、年次有給休暇管理簿を作成していない場合も、罰則の対象となる可能性があります。

罰則だけを見ると金額の問題に見えるかもしれませんが、実務上は会社の労務管理体制そのものが問われる問題です。

ただし、実務上は、いきなり罰金というよりも、まず労働基準監督署による調査や是正指導が行われるケースが多いです。

もちろん、悪質な拒否、虚偽記載、改善しない状態が続く場合には、より重い対応につながる可能性があります。

たとえば、有給申請をすべて拒否している、申請があったのに欠勤扱いにしている、管理簿に実際と違う取得日を記載しているような場合は、かなり危険です。

罰則の有無だけで判断するのではなく、従業員の信頼、採用への影響、労務トラブルの予防という観点からも、有給5日の取得義務は確実に管理すべき制度です。

違反が起こりやすいパターン

違反が起こりやすいパターンとしては、対象者の把握漏れ、基準日の管理漏れ、時間単位有給を誤ってカウントしている、管理職を対象外にしている、パートを対象外にしている、年度末にまとめて対応しようとして間に合わない、などがあります。

どれも故意ではなくても、結果として5日取得できていなければ問題になります。

従業員側で5日取得できていない場合は、まず会社や人事担当者に、基準日からの取得日数と今後の取得予定を確認してみてください。

いきなり対立的な言い方をするよりも、「私の基準日からの有給取得日数を確認したいです」「年5日の取得義務の対象になっているか教えてください」と聞くほうが、実務上は話が進みやすいです。

会社がまったく対応しない場合は、総合労働相談コーナーや労働基準監督署へ相談する方法もあります。

相談の流れについては、掲載サイト内の 有給休暇を労働基準監督署に相談する流れの記事 でも整理しています。

年5日の取得義務や取得促進の考え方については、一次情報として厚生労働省の資料も確認できます。

詳しくは 厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得」 をご確認ください。

会社側で違反に気づいた場合は、まず対象者、基準日、取得済み日数、不足日数を整理します。

そのうえで、残りの管理期間の中で取得可能日を本人と調整します。

すでに管理期間を過ぎてしまっている場合は、事実関係を整理し、再発防止策を作ることが重要です。

具体的には、管理表の作成、チェック時期の設定、管理責任者の明確化、就業規則の整備、本人への取得勧奨の記録化などが考えられます。

罰則を避けるためだけでなく、会社として説明できる運用を整えることが大切です。

従業員に安心して働いてもらうためにも、有給を取れる職場であることは大きな意味を持ちます。

採用時にも、休暇制度の運用状況を確認されることが増えています。

労務管理は、会社の信頼そのもの。

そう考えて取り組むのがよいかなと思います。

有給5日の管理方法

会社側で最も重要なのは、年次有給休暇管理簿を整備し、対象者ごとに取得状況を追える状態にしておくことです。

管理簿には、基準日、取得日、取得日数などを記録します。

保存期間については法改正や経過措置の影響を受けるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。

管理方法としては、勤怠システムを使う方法、給与計算ソフトで管理する方法、Excelで一覧表を作る方法などがあります。

どの方法でも大事なのは、 基準日から1年以内に5日取得できているかを、期限前に確認できる状態にすること です。

管理簿を作っていても、期限が過ぎてからしか気づけない運用では意味が薄くなります。

私が実務で確認する場合は、少なくとも次の項目を一覧で見られるようにしておくことをおすすめしています。

  • 従業員名
  • 雇用区分
  • 基準日
  • 付与日数
  • 取得済み日数
  • 年5日までの不足日数
  • 取得予定日
  • 時季指定の有無

管理表に入れておきたい項目

項目 目的 確認頻度の目安
基準日 1年の管理期間を確定するため 付与時・更新時
付与日数 年10日以上か判定するため 年次付与時
取得済み日数 5日に達しているか確認するため 毎月または四半期
不足日数 追加取得が必要か判断するため 毎月または四半期
取得予定日 期限直前の未取得を防ぐため 半期・9か月経過時
時季指定の記録 会社が対応した証拠を残すため 指定時

特に、パート、管理職、休職者、途中入社者、前倒し付与を受けた従業員は、確認漏れが起こりやすいです。

年1回だけの確認ではなく、四半期ごと、少なくとも半期ごとに取得状況を見直す運用が現実的です。

人数が少ない会社でも、対象者が1人でもいれば管理義務は発生します。

有給5日の管理は、年度末の作業ではなく、年間を通じた進捗管理です。

基準日から6か月時点で取得が少ない人を把握できれば、期限直前の慌ただしい対応を防げます。

時季指定を行う場合は、本人の意見を聴くことが必要です。

実務では、書面やメール、勤怠システムの申請機能などを使い、「いつ取得したいか」を確認し、その記録を残しておくことをおすすめします。

口頭だけで済ませると、後から「聞いていない」「希望と違う」といった認識違いが起こることがあります。

また、常時10人以上の労働者を使用する事業場で、会社が時季指定を行う場合は、就業規則に時季指定の方法や手続きについて定めておく必要があります。

制度を導入しているつもりでも、就業規則に記載がない場合は整備が必要です。

中小企業では、就業規則を作ったまま何年も見直していないケースもありますので、有給5日の取得義務に対応した内容になっているか確認しておきましょう。

勤怠システムを使っている会社でも、設定が正しくなければ安心できません。

半日取得のカウント、時間単位有給の除外、繰越分と当年度付与分の表示、基準日の自動更新など、システムの仕様を理解しておくことが大切です。

システムに任せきりにせず、人事労務担当者が定期的にチェックすること。

ここが実務ではかなり重要です。

有給5日の取得義務の要点

有給5日の取得義務は、従業員にとっては年次有給休暇を確実に取得するための制度であり、会社にとっては労務管理上の重要な義務です。

ポイントは、年10日以上の有給休暇が付与される人を対象に、基準日から1年以内に5日以上取得させることです。

制度の名前はシンプルですが、実際の運用では対象者、基準日、取得方法、管理簿、時季指定、就業規則まで確認が必要になります。

正社員だけでなく、条件を満たしたパートやアルバイト、管理職も対象になります。

半日有給は0.5日としてカウントできますが、時間単位有給は年5日の取得義務とは分けて管理する必要があります。

計画的付与を活用する場合も、労使協定や自由取得分の確保に注意が必要です。

会社側が「うちは何となく取れているはず」と考えている場合は、一度、管理表で実際の取得状況を確認することをおすすめします。

会社側は、対象者・基準日・取得日数を一覧で管理し、期限直前ではなく早めに取得状況を確認することが大切です。

従業員側が確認したいこと

従業員側は、自分の有給付与日数、基準日、取得済み日数を確認し、5日に届いていない場合は早めに会社へ相談しましょう。

給与明細や勤怠システムに有給残日数が表示されている場合でも、それだけでは年5日の取得義務上の取得日数が分からないことがあります。

特に、時間単位有給を使っている場合や、半日有給が多い場合は、何日としてカウントされているか確認すると安心です。

会社側も、本人任せにせず、必要に応じて意見聴取や時季指定を行うことが求められます。

「忙しそうだから声をかけにくい」「本人が申請してこないから仕方ない」という対応では不十分です。

対象者が5日に届かない見込みであれば、会社から取得予定を確認し、業務に支障が出ない範囲で取得日を調整する必要があります。

会社側が整えるべきこと

会社側では、まず対象者一覧を作り、基準日と取得期限を明確にします。

そのうえで、毎月または四半期ごとに取得状況を確認し、不足している人には取得予定を確認します。

時季指定をする場合は、本人の意見を聴いた記録、指定した日、実際に取得した日を残しておきます。

就業規則、労使協定、勤怠管理、給与計算の整合性も確認しておきたいところです。

有給5日の取得義務は、単に法律対応として見るだけでなく、休みやすい職場づくり、業務の属人化防止、従業員の定着にもつながる制度です。

中小企業では、少しずつでも管理の仕組みを整えることが大切です。

なお、法律や行政解釈、保存期間、罰則の運用などは変更される可能性があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

また、会社ごとの就業規則、雇用契約、勤怠管理の状況によって判断が変わることがありますので、最終的な判断は専門家にご相談ください。

もりおか社会保険労務士事務所では、就業規則の整備、有給管理表の確認、パートや管理職を含めた対象者判定、時季指定の運用方法など、実務に合わせた労務管理の相談をお受けしています。

計画的付与と似た制度として有給奨励日があります。奨励日の適法性については有給奨励日とは?強制と違法性を社労士が企業向け解説で解説しています。

5日義務と繰越の関係を整理するには有給の繰越上限は何日?35日と40日を社労士が解説で解説しています。

有給5日の取得義務は、早めに仕組みを作れば大きな負担になりにくい制度です。

会社の実態に合った運用を整えていきましょう。

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