こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
労災の略図は、労働者死傷病報告を作成するときに、事故の発生状況を第三者にも分かるように示すための図です。
この記事では、様式23号の略図欄に何を描けばよいのか、手書きでよいのか、電子申請ではどのように提出するのかを、企業の人事・総務担当者向けに実務目線で整理します。
略図は上手な絵である必要はありません。
大切なのは、誰が、どこで、何をしていたときに、どのような災害が起きたのかが伝わることです。
- 労働者死傷病報告と略図の基本
- 様式23号の略図欄に描く内容
- 手書きや写真を使う場合の注意点
- 電子申請で略図を提出する方法

労災の略図で必要な基本

まずは、労災の略図がどの書類で求められるものなのか、なぜ必要なのかを確認しておきましょう。
実務では、事故直後に慌てて様式を探し、略図欄で手が止まるケースが少なくありません。
特に人事・総務担当者が現場に常駐していない会社では、現場から聞いた内容をどの程度まで図に落とし込むべきかで迷いやすいです。
ここで大切なのは、略図を「絵」として考えすぎないことです。
労災の略図は、事故発生状況の文章を補うための実務資料です。
現場を知らない第三者が見ても、事故が起きた場所、被災者の位置、危険源、動きの方向が分かるように整理することが目的です。
様式23号と略図の役割

労働災害により労働者が死亡した場合、または休業4日以上となった場合、事業主は労働者死傷病報告を所轄の労働基準監督署へ提出する必要があります。
一般に、休業4日以上や死亡の場合に使われてきた書式として 様式第23号 があります。
制度上の様式や電子申請の取扱いは改正されることがあるため、実際に提出する際は最新の公式案内を確認してください。
労働者死傷病報告は、単なる社内記録ではありません。
労働安全衛生規則に基づき、労働災害の発生を行政へ報告するための重要な手続きです。
休業日数、災害発生場所、被災者の職種、傷病名、災害発生状況などを整理して記載します。
労災保険の給付請求とは別の手続きである点も、実務では混同しやすいところです。
略図は、この労働者死傷病報告の中で、災害発生状況を視覚的に補足する役割を持ちます。
文章だけでは、通路の幅、棚との位置関係、機械との距離、転落方向などが伝わりにくいことがあります。
そこで、簡単な平面図や側面図を使い、事故がどのような状況で起きたのかを示します。
たとえば「倉庫内でフォークリフトと接触した」と文章で書くだけでは、フォークリフトがどちらから来たのか、被災者は通路のどちら側にいたのか、見通しの悪い場所だったのかが分かりません。
略図を添えることで、事故原因の検討や再発防止策の整理がしやすくなります。
略図の役割は、事故の状況を見える化することです。
労働基準監督署が事故の発生状況を把握し、原因確認や再発防止策の検討を行ううえで、略図は重要な資料になります。
特に、文章では説明しづらい位置関係や動きの流れを補うために役立ちます。
実際によくある相談として、「災害発生状況の文章は書けたが、略図をどこまで描けばよいか分からない」というものがあります。
ここで迷ったときは、絵の上手さではなく、事故の流れが第三者に伝わるかを基準にしてください。
きれいなイラストより、事故の事実関係が分かる簡潔な図の方が、実務上は役に立ちます。
また、令和7年1月1日から労働者死傷病報告の報告事項や電子申請に関する取扱いが改正されています。
電子申請や様式の最新情報については、厚生労働省の案内を確認するのが確実です。
制度の根拠や最新の案内は、 厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます」 をご確認ください。
様式名や提出方法は、時期によって取扱いが変わることがあります。
この記事では実務上の考え方を中心に説明していますが、実際の提出時には、労働基準監督署や厚生労働省の最新情報を確認してください。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
略図に描くべき内容
略図に描くべき内容は、事故の種類によって変わります。
ただし、基本的には 場所、被災者、原因となった物や設備、動き の4つを入れると整理しやすくなります。
この4つがそろっていると、監督署の担当者や社内の安全衛生担当者が見たときに、事故の流れを理解しやすくなります。
まず、事故発生場所を描きます。
作業場、通路、階段、倉庫、工場、店舗、駐車場、建設現場など、どこで起きた事故なのかが分かるようにします。
細かい寸法まで正確に描く必要はありませんが、通路と棚の位置関係、階段と踊り場の関係、機械と作業者の距離感など、事故に関係する配置は省略しない方がよいです。
次に、被災者の位置を示します。
人の形を描いてもよいですし、丸印や×印でも構いません。
複数の作業者がいた場合は、被災者と他の作業者が区別できるように書き分けると分かりやすいです。
被災者の位置が曖昧だと、事故発生状況の説明がぼやけてしまいます。
さらに、関係する機械、設備、工具、車両、棚、脚立、段差、床の濡れた箇所、落下物などを描きます。
略図では、事故に関係しない設備まで細かく描く必要はありません。
むしろ、情報が多すぎると見づらくなります。
事故原因の理解に必要なものを選んで描くことが大切です。
最後に、動きや方向を矢印で示します。
被災者が歩いていた方向、フォークリフトの進行方向、転落した方向、荷物が落下した方向などです。
略図では、矢印が非常に重要です。
位置だけを描いても、事故がどのように発生したかまでは伝わりにくいためです。
| 描く内容 | 具体例 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 事故発生場所 | 作業場、通路、階段、倉庫、駐車場 | 現場の全体像が分かる範囲で簡単に描く |
| 被災者の位置 | 人、作業者、被災者、×印 | どこで負傷したかを明確にする |
| 関係する物 | 機械、脚立、棚、フォークリフト、工具 | 事故に関係した設備や物を省略しない |
| 動きや方向 | 矢印、進行方向、転落方向 | 事故が起きるまでの流れを示す |
| 危険要因 | 段差、濡れた床、死角、落下物、回転部 | 再発防止策と結びつく箇所を明示する |
細かい寸法まで正確に描く必要はありませんが、危険箇所の位置関係が分からない略図では、後から確認が必要になることがあります。
略図は、事故現場を知らない人が見ても状況を理解できる程度を目安にする とよいでしょう。
略図で省略してよいもの
略図は、現場のすべてを再現する図面ではありません。
事故と関係のない机、備品、遠く離れた設備、背景情報まで細かく描く必要はありません。
むしろ、情報を詰め込みすぎると、どこが重要なのか分かりにくくなります。
実務では、事故に関係する部分だけを切り出して、必要な説明を添える方が伝わりやすいです。
略図で省略しない方がよいもの
一方で、被災者の位置、危険源、動きの方向、事故の直接原因に関係する箇所は省略しない方がよいです。
たとえば、転倒事故であれば段差や濡れた床、はさまれ事故であれば機械の可動部、落下事故であれば落下元と被災者の位置関係が重要になります。
省略してよい部分と、省略してはいけない部分を分けることが、分かりやすい略図作成のコツです。
労災の略図の書き方
労災の略図を書くときは、最初からきれいに描こうとするより、事故を説明するために必要な要素を順番に置いていくのがおすすめです。
実務では、現場担当者から聞き取りをしながら、ラフに下書きしていくと作成しやすくなります。
特に、事故直後は情報が断片的になりやすいため、まずはメモでもよいので位置関係を残しておくことが大切です。
最初のステップは、事故発生場所の大枠を描くことです。
倉庫であれば通路と棚、工場であれば機械と作業スペース、店舗であれば売場やバックヤード、階段であれば段と踊り場を簡単に描きます。
ここでは正確な縮尺よりも、位置関係が分かることを優先します。
次に、被災者の位置を示します。
事故が起きた瞬間の位置を基本にしますが、必要に応じて、事故前にいた場所から事故発生地点までの動きを矢印で示します。
転倒や転落の場合は、倒れた方向や落ちた方向も描きます。
はさまれ事故の場合は、手や指がどの部分に入ったのかを示すと分かりやすいです。
そのうえで、機械、設備、工具、車両、棚、段差など、事故に関係するものを配置します。
事故に関係するものには、名前を付けておくとよいでしょう。
たとえば「棚A」「脚立」「フォークリフト」「段差」「濡れた床」などです。
短い文字を添えるだけで、略図の読みやすさはかなり変わります。
最後に、矢印と説明文で事故の流れを補足します。
矢印には「進行方向」「転落方向」「荷の落下方向」などの簡単な説明を付けます。
事故発生状況の文章と図が対応するように作ると、読み手が迷いません。
略図作成の実務手順
- 事故発生場所の大枠を描く
- 被災者の位置を示す
- 関係する機械や物を描く
- 動きや転落方向を矢印で示す
- 危険箇所に短い説明を添える
文章と略図をセットで考える
略図では、文章と図の内容が食い違わないことも大切です。
災害発生状況の文章では「通路を歩行中」と書いているのに、略図では作業台の横に被災者が描かれていると、確認が必要になる可能性があります。
文章と略図は別々に作るのではなく、同じ事故を説明する資料として整合させる必要があります。
実務上は、先に文章で事故の流れを整理し、その文章を図で補う方法が作りやすいです。
たとえば「被災者は倉庫内通路を東側から西側へ歩行中、右側から進入してきたフォークリフトと接触した」という文章であれば、略図には通路、東西の方向、被災者、フォークリフト、双方の移動方向を入れます。
現場確認は早めに行う
中小企業では、事故発生直後に現場写真だけを残し、略図作成が後回しになることがあります。
しかし、時間が経つと関係者の記憶が薄れます。
現場の配置が変わったり、荷物が移動したり、床の状態が変わったりすることもあります。
できるだけ早い段階で、現場の配置と被災者の動きを整理しておきましょう。
後から作る略図ほど、事実確認が難しくなります。
事故当日の写真、関係者の聞き取りメモ、現場責任者の確認をもとに、事実と推測を分けて整理してください。
分からないことを無理に描くより、確認できた事実を正確に示す方が安全です。
私が実務で確認するときも、「その場にいなかった人が見て理解できるか」を重視します。
作成者本人は現場を知っているため、簡単な図でも分かったつもりになりがちです。
提出前に、事故現場を知らない人に見てもらい、意味が通じるか確認するのも有効ですよ。
労災の略図の記入例

ここでは、実務で比較的よく見られる事故類型ごとに、略図で意識したいポイントを整理します。
あくまで一般的な例であり、実際の記載は事故の内容に合わせて調整してください。
労災の略図に正解の形が一つだけあるわけではありません。
事故の種類によって、上から見た図がよい場合もあれば、横から見た図がよい場合もあります。
フォークリフト衝突事故の例
フォークリフトとの接触事故であれば、倉庫内の通路、ラック、フォークリフトの進行方向、被災者の位置を上から見た図で描くと分かりやすくなります。
フォークリフトがどちらから進んできたのか、被災者がどの位置にいたのか、死角になりやすい場所があったのかを矢印で示すことが重要です。
この場合、略図には「ラック」「通路」「フォークリフト」「被災者」「進行方向」を入れます。
必要に応じて「見通し悪い」「荷で前方が見えにくい」「曲がり角」などの短い説明を添えます。
事故原因の検討では、通路幅、歩行者通路の有無、フォークリフトの動線、誘導者の有無なども確認対象になります。
略図だけで全てを説明する必要はありませんが、位置関係を示しておくと再発防止策を考えやすくなります。
階段転落の例
階段転落の場合は、階段を横から見た図にして、転落した段数、転落方向、踊り場や手すりの有無を記載します。
滑った、踏み外した、荷物を持っていた、照明が暗かった、足元が濡れていたなど、事故原因に関係する事情があれば短く添えるとよいでしょう。
階段事故では、上から見た平面図だけでは高さや転落方向が伝わりにくいことがあります。
そのため、側面図で階段の段差と転落方向を描く方法が向いています。
被災者が何段目付近で足を滑らせたのか、どこに転落したのか、手すりを使用できる状況だったのかを示すと、事故の状況が見えやすくなります。
切創・はさまれ事故の例
切創やはさまれ事故の場合は、機械や工具の形を簡単に描き、手や指がどの部分に接触したのかを示します。
機械全体を精密に描く必要はありませんが、刃、ローラー、プレス部、回転部など、危険源となった箇所は分かるようにします。
たとえば、食品加工機械で指を切った場合は、機械全体よりも刃の位置、手を入れた方向、作業対象物の位置を描く方が分かりやすいです。
プレス機では、上型と下型、手を差し入れた位置、足踏みスイッチや操作ボタンの位置が関係することがあります。
はさまれ事故では、どの物とどの物の間にはさまれたのかを明確にします。
記入例で共通するポイント
どの事故でも、被災者の位置、危険源、動きの方向を入れると、略図として伝わりやすくなります。
絵としての完成度より、事故の説明資料として機能しているかが大切です。
| 事故類型 | おすすめの描き方 | 略図に入れたい要素 |
|---|---|---|
| フォークリフト接触 | 上から見た平面図 | 通路、ラック、車両、被災者、進行方向 |
| 階段転落 | 横から見た側面図 | 段、踊り場、手すり、転落方向、着地点 |
| 機械による切創 | 機械の一部を拡大した図 | 刃、手指、作業物、操作位置 |
| 脚立からの転落 | 側面図または簡易立面図 | 脚立、高さ、作業位置、転落方向、床面 |
| 転倒事故 | 平面図 | 歩行方向、段差、濡れた箇所、障害物 |
記入例を参考にするときの注意点は、自社の事故にそのまま当てはめすぎないことです。
同じ「転倒」でも、濡れた床で滑ったのか、段差につまずいたのか、荷物につまずいたのかで描くべき内容は変わります。
事故原因に関係する部分を中心に、図を組み立ててください。
略図は手書きでもよいか
略図は手書きでも問題ありません。
むしろ、現場で聞き取りをしながら作成する場合は、紙に手書きした方が早いこともあります。
棒人間や四角形、矢印を使った簡単な図でも、状況が伝われば実務上は十分です。
担当者の方から「絵が苦手なので提出できるレベルにならないのでは」と相談を受けることがありますが、略図に求められるのは絵の上手さではありません。
手書き略図で大切なのは、線と文字が読み取れること、被災者の位置が分かること、事故の流れが矢印で分かることです。
手書きの場合、後から修正しやすいように最初は鉛筆で下書きし、提出用は濃いペンで清書する方法もあります。
電子申請で添付する場合は、スキャンや写真撮影をするため、薄い線や小さすぎる文字は避けましょう。
厚生労働省や労働局の記載例でも、略図はシンプルな図で示されています。
大切なのは、上手なイラストを描くことではありません。
事故の状況を、監督署の担当者や社内の安全衛生担当者が確認できるようにすることです。
手書きで作るときの実務ポイント
手書きで作る場合は、まず余白を広めに使うことをおすすめします。
用紙の端に小さく描くと、矢印や説明文を入れるスペースがなくなります。
A4用紙の中央に事故現場の大枠を描き、その周囲に説明を添えると見やすくなります。
また、被災者を示す記号は一つに統一します。
たとえば、被災者は×印、他の作業者は丸印、機械は四角、動きは矢印というように決めておくと、読み手が理解しやすいです。
略図の横に「×=被災者」と書いておくと、さらに分かりやすくなります。
手書き略図で注意したい点
- 文字や線が薄すぎないようにする
- 被災者と第三者の位置を混同しないようにする
- 矢印の向きが分かるように描く
- 写真撮影する場合は影や反射に注意する
- 事故と関係のない情報を書き込みすぎない
実務では、Googleマップの印刷、工場レイアウト図、店舗の簡単な間取り図を使い、そこに矢印や文字を書き込む方法もあります。
ただし、個人情報や不要な情報が写り込む場合は、提出前に確認してください。
たとえば、顧客名、取引先名、個人の電話番号、防犯上重要な設備配置などが含まれていないかを見ておく必要があります。
写真で略図を省略できるか
事故現場の写真がある場合でも、原則として略図欄を空欄にしてよいとは考えない方が安全です。
写真は現場の状況を補足する資料として有効ですが、写真だけでは被災者の動きや事故発生時の位置関係が分かりにくいことがあります。
現場写真は「その場の状態」を写すものですが、略図は「事故の流れ」を説明するものです。
役割が少し違います。
たとえば、階段の写真を添付しても、どの段で足を滑らせたのか、どちらの方向へ転落したのかは写真だけでは伝わりません。
フォークリフト事故でも、事故後の写真だけでは車両の進行方向や被災者の立ち位置が分からないことがあります。
機械事故でも、写真だけでは手を入れた方向や作業手順が分からないことがあります。
そのため、写真を使う場合でも、略図で被災者の位置、動き、危険箇所を補足するのが実務的です。
写真を印刷して、その上に矢印や説明を書き込む形にする方法もあります。
この場合、写真そのものを略図の土台として使い、必要な情報を追記するイメージです。
写真は補足資料として使う
写真を添付する場合でも、略図として事故の流れを示すことを意識してください。
写真だけで足りるかどうか迷う場合は、略図を併せて作成する方が後日の確認を減らしやすくなります。
写真があるから略図を省略するという考え方ではなく、写真と略図を使い分けて、事故の状況を正確に伝えることを意識してください。
労災の略図と電子申請

令和7年1月1日から、労働者死傷病報告を含む労働安全衛生関係の一部手続きについて、電子申請が原則義務化されています。
ここからは、紙の略図をどうデータ化し、電子申請でどのように扱うかを確認します。
電子申請になると、これまで紙で提出していた感覚とは少し変わります。
特に略図は、手書きで作成したものをPDFや画像にして添付する流れになるため、ファイル形式、容量、見やすさ、保存方法まで意識しておく必要があります。
中小企業では、ここで手続きが止まりやすいです。
電子申請での略図提出

電子申請では、紙の様式に直接手書きするのではなく、略図をデジタルファイルとして添付する流れになります。
厚生労働省の労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービスを利用すると、帳票作成や電子申請の準備を進めやすくなります。
電子申請になったからといって、略図を必ずパソコンで作図しなければならないわけではありません。
紙に手書きした略図をスキャンしてPDFにする、またはスマートフォンで撮影してJPEGにする方法も実務上よく使われます。
パソコンで図形を使って作成しても構いませんし、現場写真に矢印や説明を加えて提出する方法も考えられます。
大事なのは、提出形式が変わっても、略図の目的は変わらないという点です。
事故の発生場所、被災者の位置、関係する設備や物、事故の動き が分かる資料として添付してください。
電子申請では、入力画面上の文字情報と添付ファイルの内容が対応しているかが重要になります。
電子申請に慣れていない会社では、「略図はどこに添付するのか」「手書きの写真でよいのか」「PDFにしなければならないのか」といったところで迷うことがあります。
実務では、まず略図を完成させ、その後に電子申請用のファイルとして保存し、申請画面に添付する順番で進めると整理しやすいです。
制度や手続きは変更される可能性があります。
電子申請の対象、入力方法、添付ファイルの条件などは、運用変更があり得ます。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
電子申請そのものは、e-Govを通じて行う手続きとして案内されています。
アカウントの準備、ログイン方法、申請画面の操作などは会社ごとに事前確認しておくと、事故発生後に慌てずに済みます。
電子申請の入口や利用方法については、 e-Gov電子申請 の公式サイトを確認してください。
電子申請前に社内で決めておきたいこと
電子申請では、誰が申請するのか、どの端末で作業するのか、添付ファイルをどこに保存するのかを決めておくとスムーズです。
事故が起きてから担当者を決めると、現場確認、医療機関対応、家族対応、労災保険給付の手続きなどと重なり、事務処理が混乱しやすくなります。
特に中小企業では、総務担当者が給与計算、社会保険、採用、経理などを兼務していることが多いです。
そのため、労災発生時の手順を簡単なチェックリストにしておくと実務が安定します。
略図の作成担当、写真撮影担当、電子申請担当を分けておくのも一つの方法です。
電子申請で略図を扱うときの基本
- 略図の内容は紙提出の場合と同じ考え方で作る
- 手書きでもデータ化すれば添付資料として使える
- 申請画面の入力内容と略図の内容を一致させる
- 添付前にファイルが開けるか確認する
- 最新の公式案内を確認してから提出する
略図ファイルの形式と容量
略図を電子申請で添付する場合は、ファイル形式と容量に注意します。
一般的にはPDF形式が扱いやすく、スキャンした略図も見やすい状態で保存しやすいです。
スマートフォンで撮影した画像を使う場合は、JPEG形式にすることもあります。
どの形式を使う場合でも、読み手が内容を確認できる鮮明さが必要です。
添付ファイルには容量やファイル数の制限が設けられることがあります。
一般的な案内では、合計15MB以下、最大5ファイルまでとされる取扱いが示されることがありますが、実際の申請時には最新の画面表示や公式案内を確認してください。
容量や形式の条件は、システムの運用により変わる可能性があります。
PDFは、複数ページを1つのファイルにまとめやすく、社内保管にも向いています。
手書き略図をスキャナーで読み込む場合、PDFで保存すると見た目が安定しやすいです。
一方、JPEGはスマートフォンで撮影した写真をそのまま使いやすい形式です。
ただし、撮影環境によっては影が入ったり、文字がぼやけたりすることがあります。
| 形式 | 使いやすい場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| スキャンした手書き略図を提出する場合 | 文字や線が鮮明に読めるか確認する | |
| JPEG | スマートフォンで撮影した略図を提出する場合 | 影、傾き、ぼやけに注意する |
| 写真付き資料 | 現場写真に矢印や説明を加える場合 | 略図として位置関係が分かるようにする |
見やすいファイルにするための工夫
容量を小さくしようとして画像を圧縮しすぎると、肝心の文字や矢印が読めなくなることがあります。
提出前に、第三者が見ても内容を確認できるかを必ずチェックしてください。
ファイルを開いて、拡大しなくても大まかな内容が分かり、拡大すれば文字が読める状態が望ましいです。
スマートフォンで撮影する場合は、明るい場所で真上から撮影します。
斜めから撮ると紙が台形にゆがみ、文字も読みにくくなります。
影が入る場合は、照明の位置を変えるか、別の場所で撮り直してください。
撮影後は、余白を少し残してトリミングすると見やすくなります。
PDF化する場合は、カラーである必要はありません。
モノクロでも、線や文字が読めれば十分です。
ただし、色分けで意味を持たせている場合は、白黒になっても内容が伝わるか確認してください。
赤い矢印、青い被災者マークのように色だけで区別していると、白黒印刷時に分かりにくくなることがあります。
ファイル名も実務上は大切です。
提出用ファイルには、日付、事業場名、略図であることが分かる名称を付けると管理しやすくなります。
ただし、ファイル名に必要以上の個人情報を入れないよう注意してください。
| 確認項目 | 確認する理由 | よくある不備 |
|---|---|---|
| ファイルが開ける | 添付後に内容確認できるようにするため | 破損ファイル、形式違い |
| 文字が読める | 事故状況を正しく伝えるため | 小さすぎる文字、ぼやけ |
| 矢印が分かる | 動きや方向を示すため | 矢印が薄い、向きが不明 |
| 容量が大きすぎない | 電子申請で添付できるようにするため | 高画質写真を複数添付 |
| 不要情報がない | 個人情報や機密情報を避けるため | 顧客名、伝票、社外秘情報の写り込み |
手書き略図のデジタル化
手書き略図をデジタル化する場合は、作成、確認、保存、添付の順で進めるとミスを減らせます。
特に、写真撮影した画像をそのまま添付する場合は、見やすさの確認が重要です。
電子申請では、紙をそのまま窓口へ持参するわけではないため、読み取りやすいデータにする工程が必要になります。
まず、白い紙に濃いペンで略図を描きます。
被災者の位置、矢印、危険箇所、機械や設備の名称を記入します。
紙は罫線入りでも使えますが、できれば白紙の方が見やすいです。
罫線や背景が濃いと、スキャンや写真撮影をしたときに線や文字が見えにくくなることがあります。
次に、スキャナーでPDF化するか、スマートフォンで正面から撮影します。
スキャナーがある場合は、PDF化する方法が安定しやすいです。
スマートフォンで撮る場合は、紙全体が入るようにして、影や反射が入らない場所で撮影します。
机の木目や周囲の物が写り込みすぎると見づらくなるため、略図だけが分かるように整えます。
撮影した画像は、提出前に拡大して確認してください。
文字が読めるか、矢印の向きが分かるか、紙の端が切れていないかを見ます。
必要であれば、画像をPDFに変換して保存すると管理しやすくなります。
スマートフォンのスキャンアプリを使う場合も、変換後のPDFが正しく開けるか確認しておきましょう。
手書き略図のデジタル化手順
- 紙に濃い線で略図を描く
- 被災者の位置と動きを確認する
- PDFまたはJPEGで保存する
- ファイル名を分かりやすく付ける
- 電子申請画面で添付する
デジタル化前に確認すること
デジタル化する前に、略図そのものの内容確認を行います。
データ化してから内容の誤りに気づくと、再撮影や再スキャンが必要になり、手間が増えます。
被災者の位置、事故発生場所、矢印の向き、機械や設備の名称、文章との整合性を先に確認しておくと効率的です。
現場責任者や事故当時の状況を知っている人に見てもらうことも有効です。
「ここは実際には反対側だった」「この棚は事故当時にはなかった」「被災者の立ち位置が少し違う」といった修正点が出ることがあります。
略図は提出資料であると同時に、社内の事故記録でもありますので、事実に沿って作成することが大切です。
デジタル化したからといって、内容確認を省略しないでください。
電子申請で重要なのは、ファイルを添付することだけではありません。
添付した略図が事故状況を正しく表しているか、読み取れる状態か、入力内容と矛盾していないかを確認することが必要です。
略図が書けない場合の対処

略図が書けないと感じる場合でも、最初から完成形を目指す必要はありません。
まずは、事故現場を四角や線で大まかに表し、そこに被災者の位置と動きを加えるだけでも、かなり伝わりやすくなります。
担当者が絵を描くことに苦手意識を持っている場合ほど、略図を難しく考えすぎていることが多いです。
絵が苦手な担当者の場合は、既存の資料を活用する方法があります。
店舗のレイアウト図、工場の配置図、倉庫の棚配置図、現場写真、地図画像などに、矢印や文字を加える方法です。
実務では、この方法が一番早いこともあります。
特に、倉庫や工場のように設備配置がある程度決まっている現場では、既存のレイアウト図をベースにすると作成しやすいです。
ただし、既存資料を使う場合は、事故と関係のない情報が多すぎないように整理しましょう。
関係のない設備名や個人情報、顧客情報が入っている場合は、提出前に削除またはマスキングを検討します。
あくまで労働者死傷病報告の略図として必要な範囲に整えることが大切です。
略図が苦手な場合の考え方
略図は美術の作品ではありません。
監督署や社内の関係者が、事故の発生状況を理解するための実務資料です。
棒人間、四角、矢印、短い説明で十分に伝わることがあります。
図が苦手な人向けの作成方法
図が苦手な場合は、まず文章で事故の流れを書き出します。
たとえば、「被災者は倉庫内通路を歩いていた」「右側からフォークリフトが進入した」「通路の交差部分で接触した」というように、短い文に分けます。
次に、それぞれの文を図に置き換えます。
倉庫内通路を線で描き、被災者を×印で置き、フォークリフトを四角で描き、進入方向を矢印で示します。
この方法であれば、絵を描くというより、文章を記号に変換する作業になります。
人を人らしく描く必要はありません。
機械も正確な形で描く必要はありません。
記号化して伝える。
これで十分な場面が多いです。
現場担当者と一緒に作る
人事・総務担当者が現場を詳しく知らない場合は、無理に一人で作らない方がよいです。
現場責任者や事故当時の状況を知っている従業員に確認しながら作成してください。
人事・総務担当者は様式や提出手続きに詳しくても、現場の動線や機械の配置までは分からないことがあります。
一方で、現場担当者は事故の状況を知っていても、報告書にどう整理すればよいか分からないことがあります。
そこで、人事・総務担当者が様式の観点から整理し、現場担当者が事実関係を確認する形にすると、実務上バランスがよいです。
略図が書けないときの代替手段
- 現場写真に矢印と説明を加える
- 工場や店舗のレイアウト図を使う
- Googleマップなどの地図画像を参考にする
- 手書きのラフ図をスキャンする
- 現場担当者に配置を確認してもらう
どうしても判断に迷う場合は、事実関係を整理したうえで、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に確認することをおすすめします。
労災関係の手続きは、会社の安全配慮や再発防止にも関わる重要な実務です。
最終的な判断は専門家にご相談ください。
不備を避ける確認ポイント
労働者死傷病報告は、単に様式を埋めればよい書類ではありません。
労働災害の発生状況を正確に報告し、再発防止につなげるための資料です。
そのため、略図にも一定の正確性が求められます。
特に、災害発生状況の文章と略図に矛盾があると、後から確認や補正が必要になる可能性があります。
不備を避けるためには、提出前に複数の視点で確認することが大切です。
人事・総務担当者だけで作成するのではなく、可能であれば現場責任者や事故当時の状況を把握している人にも確認してもらいましょう。
現場の事実関係と、提出書類としての分かりやすさの両方が必要です。
提出前の確認チェック
- 災害発生状況の文章と略図が一致している
- 被災者の位置が分かる
- 事故に関係する機械や設備が描かれている
- 移動方向や転落方向が矢印で分かる
- 危険箇所が分かる
- 電子申請用ファイルが鮮明に読める
よくある不備
よくある不備として、被災者の位置が分からない、矢印がない、事故に関係する機械や設備が描かれていない、文章と図の内容が一致していない、写真が不鮮明で読めない、といったものがあります。
略図欄に現場全体を描こうとして、かえって事故発生箇所が分かりにくくなるケースもあります。
また、事故の原因に関係する危険箇所が抜けていることもあります。
たとえば、転倒事故なのに段差や濡れた場所が描かれていない、はさまれ事故なのに可動部がどこか分からない、転落事故なのに転落方向や高さが分からないといったケースです。
略図は原因分析にも関わるため、危険要因を示す意識が必要です。
報告義務を軽く見ない
また、報告そのものを失念しないことも重要です。
労働者死傷病報告を提出しない、または虚偽の報告をした場合、いわゆる労災隠しとして問題になる可能性があります。
50万円以下の罰金が定められています(労働安全衛生法第120条)。
労災が起きたときは、労災保険給付の手続きだけでなく、労働者死傷病報告の提出が必要かどうかも必ず確認してください。
事故が発生したら、まず被災者の救護と医療機関への対応を優先します。
その後、現場確認、関係者への聞き取り、写真や略図の作成、再発防止策の検討を速やかに進めてください。
中小企業では担当者が兼務していることも多いため、あらかじめチェックリストを用意しておくと実務が安定します。
| タイミング | 確認すること | 担当例 |
|---|---|---|
| 事故直後 | 救護、医療機関対応、現場保全 | 現場責任者 |
| 当日中 | 写真撮影、聞き取り、略図の下書き | 現場責任者、人事総務 |
| 報告書作成時 | 休業見込み、様式、災害発生状況 | 人事総務 |
| 提出前 | 文章と略図の整合性、添付ファイル確認 | 人事総務、管理者 |
| 提出後 | 控えの保管、再発防止策の実施 | 会社全体 |
私が実務で大切だと感じるのは、事故対応を「報告書の作成」だけで終わらせないことです。
略図を作る過程で、なぜ事故が起きたのか、どこに危険があったのか、どうすれば同じ事故を防げるのかが見えてきます。
労災対応は、提出義務への対応であると同時に、安全な職場づくりの出発点でもあります。
労災の略図作成のまとめ
労災の略図は、労働者死傷病報告において事故の状況を分かりやすく伝えるための重要な資料です。
上手な絵を描くことが目的ではなく、事故発生場所、被災者の位置、関係する機械や物、動きや方向を第三者に伝えることが目的です。
ここを押さえておけば、略図作成への苦手意識はかなり減らせるはずです。
手書きでも、棒人間でも、簡単な矢印でも構いません。
むしろ実務では、現場の記憶が新しいうちに、分かる範囲で早く整理することが大切です。
写真を使う場合も、略図として事故の流れが分かるように補足しましょう。
写真は現場の状態を示し、略図は事故の流れを示す。
そう考えると使い分けがしやすくなります。
電子申請では、略図をPDFやJPEGなどのデータとして添付する流れになります。
ファイル形式や容量、添付方法は変更される可能性があるため、申請時には最新の公式案内を確認してください。
電子申請になっても、略図の本質は変わりません。
事故の状況を分かりやすく、正確に伝えることが基本です。
労災の略図で押さえるべき要点
- 事故発生場所の配置を簡単に示す
- 被災者の位置を明確にする
- 事故に関係する機械や物を描く
- 動きや転落方向を矢印で示す
- 危険箇所や原因に関係する部分を補足する
- 文章と略図の内容を一致させる
担当者が最後に確認したいこと
提出前には、事故現場を知らない人が略図を見ても、事故の状況を理解できるかを確認してください。
作成者本人は、頭の中に現場のイメージがあるため、多少説明が足りなくても分かったつもりになりがちです。
第三者目線で見直すことが、不備を減らす一番の近道です。
また、労働者死傷病報告は、会社が労働災害を適切に把握し、行政に報告するための手続きです。
労災保険の請求、被災者への説明、社内の再発防止、労働基準監督署への報告は、それぞれ関連していますが、目的が異なります。
どの手続きが必要かを整理しながら進めてください。
最後に確認してください。
労災関係の手続きは、事故の内容、休業日数、事業場の状況によって対応が変わることがあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
最終的な判断は専門家にご相談ください。
もりおか社会保険労務士事務所では、企業の労務管理や労災対応について、実務に即した整理を大切にしています。
労災の略図で迷ったときは、まず事故の事実関係を丁寧に確認し、第三者に伝わる資料として整えることから始めてください。
略図は、事故を責めるためのものではなく、事実を整理し、同じ事故を繰り返さないための資料です。
会社としては、報告義務を果たすだけでなく、被災者への対応、現場への周知、作業手順の見直し、安全教育までつなげていくことが大切です。
実務では、ここまで含めて労災対応だと私は考えています。
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