こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
労働時間の平均を確認するときは、まず所定労働時間、実労働時間、残業時間を分けて見ることが大切です。
たとえば、月の残業時間の平均を見るのか、年間の総労働時間を見るのかで、判断すべき数字は変わります。
実務では、従業員の方から自分の働き方が一般的なのか知りたいという相談もありますし、会社側から月平均所定労働時間や36協定の上限について確認したいという相談もあります。
この記事では、労働時間の平均を客観的に見るための基本と、給与計算や労務管理で注意したいポイントを整理します。
数値は統計上の一般的な目安であり、業種、職種、雇用形態、会社の就業規則によって変わります。
あなた自身の勤務実態や会社の制度と照らし合わせながら確認していきましょう。
- 日本の労働時間の平均と見方
- 正社員やパートで異なる労働時間
- 残業時間の業種別・職種別の傾向
- 月平均所定労働時間と36協定の注意点

労働時間の平均をまず把握

労働時間の平均を知るうえで最初に確認したいのは、何の平均を見ているのかという点です。
所定労働時間は会社が決めた働く時間、実労働時間は実際に働いた時間、所定外労働時間は残業時間を指します。
この区別が曖昧なままだと、自分の働き方や会社の労務管理を正しく判断しにくくなります。
特に、検索で労働時間の平均を調べている方は、自分の勤務時間が長いのか、残業代の計算に問題がないのか、転職先の求人票をどう見ればよいのかを知りたいはずです。
会社側であれば、従業員の残業が法的に問題ない範囲なのか、月平均所定労働時間の計算が合っているのか、36協定の管理が適切なのかが気になるところです。
ここでは、まず統計データの見方と、実務で間違いやすいポイントを整理していきます。
月平均の実労働時間

月平均の実労働時間を見るときは、まず所定内労働時間と所定外労働時間を分けて考える必要があります。
所定内労働時間は、会社の就業規則や雇用契約で決められた勤務時間の範囲内で働いた時間です。
一方、所定外労働時間は、いわゆる残業にあたる時間です。
ここを分けずに労働時間の平均を見ると、自分の働き方をかなり誤って判断してしまうことがあります。
厚生労働省の毎月勤労統計調査では、2024年の所定外労働時間について、就業形態計では月10.0時間、一般労働者では月13.8時間、パートタイム労働者では月2.2時間という水準が示されています。
ここでいう一般労働者は、正社員に近い働き方をしている人を含む区分として見ると理解しやすいです。
統計の詳細は、厚生労働省が公表している 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 で確認できます。
ただし、この数字はあくまで平均です。
平均が月10時間前後だからといって、月20時間の残業が直ちに違法というわけではありませんし、反対に平均以下なら必ず問題がないとも言い切れません。
労働時間を判断するときは、勤務実態、36協定、就業規則、健康面への影響をあわせて見る必要があります。
実際によくある相談でも、「平均より少ないから大丈夫だと思っていた」という会社側の認識と、「実際には休憩が取れず、体感としてかなりきつい」という従業員側の感覚がずれていることがあります。
平均を見る前に確認したい3つの時間
月平均の実労働時間を確認する際は、勤怠記録上の始業時刻と終業時刻だけでなく、休憩時間が実際に取れているかも確認する必要があります。
たとえば、9時から18時まで勤務で休憩1時間とされていても、昼休みに電話対応や来客対応をしている場合、その時間が実質的に労働時間と評価される可能性があります。
表面上の労働時間と、実際の労働時間は必ずしも一致しません。
| 確認する時間 | 意味 | 実務での注意点 |
|---|---|---|
| 所定労働時間 | 会社が定めた勤務時間 | 就業規則や雇用契約書で確認する |
| 実労働時間 | 実際に働いた時間 | 休憩中の対応や持ち帰り仕事も問題になり得る |
| 所定外労働時間 | 会社の所定時間を超えた時間 | 残業代や36協定の管理に関係する |
従業員側であれば、給与明細に記載された残業時間と、自分の手帳や勤怠アプリの記録に差がないかを確認してみてください。
会社側であれば、タイムカード、勤怠システム、パソコンのログ、業務チャットの送信時刻などが大きくずれていないかを見ることが重要です。
最近は、労働時間の客観的把握が以前より強く求められており、管理職の目視や自己申告だけでは説明が難しい場面もあります。
労働時間の平均を見るときの基本は、所定内労働時間と残業時間を分けることです。
実際によくある相談でも、残業を含む実労働時間と、会社が定めた所定労働時間が混同されているケースがあります。
平均値は、自分の働き方を客観視するための入口です。
ただし、あなたの職場で本当に問題があるかどうかは、平均との比較だけでは決まりません。
長時間労働が続いている場合、休憩が取れていない場合、残業申請をしにくい雰囲気がある場合は、平均より少なく見えても注意が必要です。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
正社員の労働時間平均
正社員の労働時間平均を考える場合、パートタイム労働者を含めた全体平均だけを見ると、実態より短く感じられることがあります。
正社員に近い一般労働者の所定外労働時間は月13.8時間というデータがありますが、実際には業種、職種、役職、繁忙期の有無によってかなり差が出ます。
特に正社員は、勤務時間だけでなく責任範囲や突発対応の有無によって、労働時間が長くなりやすい傾向があります。
20代から30代の正社員を対象にした調査では、男性は月180時間から200時間未満の層が多く、月200時間以上の割合も一定数あります。
女性では月160時間から180時間未満の層が多い傾向があります。
営業職やサービス職では、顧客対応や突発的な予定に左右されやすく、月200時間以上になりやすい傾向も見られます。
もちろん、これは全員に当てはまるものではなく、会社の人員配置や業務設計によって大きく変わります。
私が採用時や労務相談でよく確認するのは、求人票に書かれた勤務時間だけでなく、実際の退勤時刻、休憩の取り方、残業申請の仕組みです。
正社員の場合、責任範囲が広くなるほど、明確に命じられた残業ではないのに実態として長時間働いているケースがあります。
たとえば、「上司から残れと言われたわけではないが、業務量的に帰れない」「定時後に顧客対応のメールを返している」「休日に少しだけ資料を作っている」といったケースです。
正社員の平均を見るときの注意点
正社員の労働時間を見るときは、月の総労働時間が何時間かだけでなく、その中にどれだけ残業が含まれているかを確認する必要があります。
月180時間働いている場合でも、所定労働時間が160時間の会社であれば20時間程度の残業があることになります。
一方、月180時間でも、変形労働時間制やシフト制の運用によって意味合いが変わることがあります。
正社員の労働時間を比較するときは、月間労働時間、残業時間、年間休日数、休憩取得の実態をセットで見ると判断しやすくなります。
月の労働時間だけを見ても、休日の少なさや繁忙期の偏りは見えにくいからです。
転職活動中の方であれば、求人票の平均残業時間を見るだけでなく、面接時に繁忙期の時期、残業申請のルール、固定残業代の有無、休日出勤の頻度を確認しておくと安心です。
会社側であれば、正社員だから多少の残業は仕方ないという感覚ではなく、業務量と人員配置のバランスを定期的に見直すことが大切です。
正社員は長期的に会社を支える人材だからこそ、労働時間の管理を丁寧に行う必要があります。
正社員の労働時間について詳しく確認したい場合は、勤務時間、残業代、36協定の考え方を整理した 正社員の労働時間と残業代の解説 も参考になります。
年間労働時間の平均
年間労働時間の平均を見ると、日本の年間平均労働時間は2024年で約1,627時間という水準が示されています。
OECD平均は1,736時間とされており、国際比較では日本が必ずしも最長というわけではありません。
ただし、年間平均だけを見ると、職場ごとの忙しさや個人ごとの負担感は見えにくくなります。
年間労働時間は便利な指標ですが、使い方を間違えると現場の実感とずれてしまう数字でもあります。
年間労働時間は、月ごとの繁閑差をならして見るのに向いています。
たとえば、年度末だけ極端に残業が増える会社や、夏季・年末の繁忙期がある会社では、月平均だけで判断すると実態を見誤ることがあります。
会社側としても、特定の月だけでなく、年間を通じた労働時間管理が重要です。
特に、繁忙期に残業が集中する会社では、36協定の月上限だけでなく、複数月平均や年間上限も意識する必要があります。
従業員側から見ると、年間労働時間は転職活動の比較材料にもなります。
求人票に年間休日数、所定労働時間、平均残業時間が記載されている場合は、それらを組み合わせて見ると、働き方のイメージを持ちやすくなります。
たとえば、1日の所定労働時間が同じ8時間でも、年間休日が105日の会社と120日の会社では、年間で120時間程度の差が生じます。
これは、8時間勤務に換算すると15日分程度の違いです。
年間休日と年間労働時間の関係
年間労働時間をざっくり把握したい場合は、年間休日数を見るとかなりイメージしやすくなります。
1日8時間勤務の場合、年間休日が105日なら年間の所定労働時間はおおむね2,080時間、年間休日が120日ならおおむね1,960時間です。
ここに残業時間が加わるため、実際の年間労働時間はさらに増える可能性があります。
| 年間休日 | 1日8時間勤務の年間所定労働時間 | 見方 |
|---|---|---|
| 105日 | 約2,080時間 | 法定労働時間に近い設計になりやすい |
| 110日 | 約2,040時間 | 土曜出勤が一部ある会社で見られる |
| 120日 | 約1,960時間 | 土日祝休みに近い会社で見られる |
| 125日 | 約1,920時間 | 休日が比較的多い会社で見られる |
実務上は、年間休日が少ない会社ほど、月平均所定労働時間が長くなりやすく、残業代の時間単価にも影響します。
従業員側は、月給額だけを見るのではなく、年間休日数や1日の所定労働時間も確認した方がよいです。
会社側も、求人票で年間休日数や平均残業時間を表示する場合は、実態とずれないように注意が必要です。
採用後に説明と実態が違うと、早期離職や労務トラブルにつながることがあります。
年間労働時間は、国や統計によって集計方法が異なることがあります。
国際比較の数字を見るときは、対象者、集計年、パートタイム労働者の扱いなども確認することが大切です。
残業時間の平均

残業時間の平均を見るときは、平均値だけでなく、自分の残業がどの程度続いているのかを確認することが大切です。
一般労働者の月間所定外労働時間は13.8時間という目安がありますが、業務量が多い部署や繁忙期のある職場では、これを上回ることも珍しくありません。
残業時間は、単に長いか短いかだけでなく、継続性、偏り、記録の正確性が重要になります。
注意したいのは、平均残業時間がそれほど多く見えなくても、一部の従業員に業務が集中しているケースです。
中小企業では、特定の担当者しかできない業務がある、引き継ぎが進んでいない、管理職が現場業務を抱え込んでいるといった事情で、残業が偏ることがあります。
会社全体の平均残業時間が月10時間でも、ある従業員だけ月40時間、別の従業員はほぼ0時間ということもあります。
この場合、全体平均だけでは問題を見逃します。
残業時間は、賃金計算だけでなく健康管理にも関係します。
月45時間を超える残業が続く場合や、月80時間に近い時間外・休日労働が続く場合は、労務管理上のリスクが高まります。
労働者側も会社側も、単月の数字だけではなく、複数月での推移を確認することが重要です。
実務では、1か月だけ忙しかったのか、慢性的に忙しいのかで対応が変わります。
残業時間を見るときの実務チェック
従業員側であれば、残業時間が給与明細に正しく反映されているかを確認しましょう。
残業代が固定残業代に含まれている場合でも、固定残業時間を超えた分については追加支払いが必要になることがあります。
会社側であれば、残業申請制を採用している場合でも、申請がないから残業がないとは言い切れません。
上司が黙認していた業務、業務上必要な持ち帰り仕事、始業前の準備作業などが労働時間と評価されることもあります。
残業時間が平均より多いか少ないかだけで、違法性や安全性を判断することはできません。
36協定、労働時間の記録、割増賃金、健康確保措置を総合的に確認する必要があります。
残業時間を減らすには、単に早く帰るように声をかけるだけでは足りないことが多いです。
業務量の見直し、担当の分散、マニュアル化、会議時間の削減、承認フローの簡素化など、仕事の設計そのものを見直す必要があります。
私が企業の労務相談でよくお伝えするのは、残業削減は従業員の努力だけに任せるものではなく、会社の仕組みづくりとして取り組むものだという点です。
月50時間前後の残業が続いている場合のリスクについては、 残業50時間が続く場合の法律と現場リスク でも実務目線で整理しています。
所定労働時間の平均
所定労働時間とは、会社が就業規則や雇用契約で定めている働く時間です。
法定労働時間は原則として1日8時間、週40時間ですが、会社の所定労働時間はそれより短く設定されている場合もあります。
たとえば、1日7時間30分勤務や、週37時間30分勤務の会社もあります。
所定労働時間は、労働時間の平均を考えるうえで土台になる数字です。
東京都産業労働局の調査では、1日の所定労働時間の平均は7時間44分という目安があります。
これは、1日8時間勤務の会社が多い一方で、7時間台の勤務時間を定める会社も一定数あるためです。
所定労働時間が短い会社では、同じ月給でも時間単価が高くなる場合があります。
反対に、所定労働時間が長い会社では、月給だけを見ると高く見えても、時間単価に直すと印象が変わることがあります。
実務上、所定労働時間は給与計算や残業代計算に直結します。
月給制の場合、1時間あたりの賃金を計算するために、月平均所定労働時間を使います。
ここを誤ると、残業代の単価が低く計算されてしまうことがあるため、会社側にとっても従業員側にとっても重要な確認ポイントです。
中小企業では、昔から使っている給与計算の設定がそのまま残っていて、実際の年間休日数と合っていないケースもあります。
所定労働時間と法定労働時間の違い
所定労働時間と法定労働時間は似ていますが、意味が違います。
法定労働時間は法律上の上限で、原則として1日8時間、週40時間です。
所定労働時間は、会社がその範囲内で定める勤務時間です。
たとえば、会社の所定労働時間が1日7時間30分の場合、7時間30分を超えて8時間まで働いた時間は、会社の所定時間を超えていますが、法定労働時間内に収まっています。
この部分の割増賃金の扱いは、就業規則や賃金規程の確認が必要です。
| 項目 | 意味 | 確認する書類 |
|---|---|---|
| 法定労働時間 | 法律で定められた原則上限 | 労働基準法 |
| 所定労働時間 | 会社が定めた勤務時間 | 就業規則・雇用契約書 |
| 月平均所定労働時間 | 月給者の時間単価計算に使う時間 | 賃金規程・年間カレンダー |
所定労働時間は、実際に働いた時間そのものではなく、会社があらかじめ定めた勤務時間です。
この違いを押さえるだけでも、労働時間の平均に関する誤解はかなり減ります。
従業員側は雇用契約書や就業規則を確認し、会社側は給与計算ソフトに設定している月平均所定労働時間が最新の年間休日数と合っているかを確認してみてください。
所定労働時間は、労働時間管理と賃金計算の出発点です。
残業代の計算に違和感がある場合、最初に確認すべきなのは、時給単価のもとになる月平均所定労働時間です。
労働時間の平均と法規制

ここからは、労働時間の平均を業種別・職種別に確認しながら、月平均所定労働時間の計算方法や36協定の上限規制まで整理します。
平均値は自分の状況を客観視する材料になりますが、法律上の判断は平均ではなく、会社ごとの制度や実際の労働時間によって変わります。
労働時間の問題は、従業員側にとっては健康や生活に関わる問題であり、会社側にとっては賃金、法令遵守、採用定着に関わる問題です。
平均を知ることは大切ですが、最終的には自社や自分の実態に落とし込んで確認する必要があります。
業種別の残業時間平均
業種別に残業時間を見ると、運輸業・郵便業、情報通信業、電気・ガス業、教育・学習支援業、飲食サービス等で比較的長くなる傾向があります。
2024年の一般労働者の所定外労働時間では、運輸業・郵便業が月24.3時間、情報通信業が月16.5時間、電気・ガス業が月16.4時間、教育・学習支援業が月15.9時間、飲食サービス等が月15.5時間という目安があります。
これらの業種では、顧客対応、納期、インフラ維持、シフト調整などが労働時間に影響しやすいです。
一方で、医療・福祉は月6.8時間という水準が示されています。
ただし、医療・福祉の現場はシフト勤務、夜勤、休日勤務などが絡みやすいため、単純な残業時間だけで負担の大きさを判断しにくい面があります。
残業が少なく見えても、夜勤回数が多い、休憩が取りにくい、勤務間隔が短いといった負担があることもあります。
業種別の平均は、転職活動や労務改善の参考になります。
ただし、同じ業種でも会社の人員体制、勤務シフト、業務の標準化によって実態は大きく異なります。
採用時によく確認しますが、平均残業時間だけでなく、繁忙期の残業、休日出勤の有無、勤怠管理の方法も見ることが大切です。
たとえば、同じ飲食サービスでも、予約制中心の店舗と深夜営業の店舗では、労働時間の組み方がかなり違います。
| 業種 | 月間所定外労働時間の目安 | 実務上の見方 |
|---|---|---|
| 運輸業・郵便業 | 24.3時間 | 拘束時間や改善基準告示も確認が必要 |
| 情報通信業 | 16.5時間 | 納期前や障害対応で残業が偏りやすい |
| 電気・ガス業 | 16.4時間 | インフラ維持や緊急対応の影響を受けやすい |
| 教育・学習支援業 | 15.9時間 | 授業外業務や準備時間の管理が課題になりやすい |
| 飲食サービス等 | 15.5時間 | 人員不足や繁忙時間帯の影響を受けやすい |
| 医療・福祉 | 6.8時間 | 残業時間だけでなく夜勤や休憩実態も確認する |
業種別平均を自社改善に使う視点
会社側が業種別の平均を見る場合、「自社は平均より低いから問題ない」と考えるのは少し危険です。
平均より低くても、特定部署だけ残業が多い、管理職だけ長時間労働になっている、休憩が取れていないといった問題は起こります。
逆に、平均より高くても、繁忙期が一時的で、36協定や割増賃金、健康管理が適切に運用されている場合もあります。
業種別の残業時間平均は、会社全体の立ち位置を知るための目安です。
実務では、業種平均と比較したうえで、部署別、職種別、個人別の労働時間まで分解して確認すると改善点が見えやすくなります。
従業員側であれば、自分の業種がもともと残業の多い傾向にあるからといって、すべてを我慢する必要はありません。
残業代が正しく支払われているか、36協定の範囲内か、健康面に無理が出ていないかは別の問題です。
業種の特性を理解しつつ、必要な記録と確認を行うことが大切です。
職種別の残業時間平均

職種別の残業時間平均を見ると、職種によって働き方の傾向がかなり違います。
パーソルキャリアの調査(2025年1月)では、全体平均の残業時間は月21.0時間とされ、前回より0.9時間減少しています。
残業が少ない職種として医療事務が月10.3時間、建築・土木系エンジニアは月26.0時間、事務・アシスタントは月14.3時間という目安があります。
職種別の数字は、求人選びや社内の人員配置を考えるうえで参考になります。
職種別で残業時間が変わる理由は、業務の締切、顧客対応、現場対応、突発業務の多さが異なるためです。
たとえば、インフラ系のコンサルタントやエンジニア職では、トラブル対応や納期対応が発生しやすく、時間が読みづらい傾向があります。
事務・アシスタント職は比較的残業が少ない傾向がありますが、月末月初や決算期には一時的に増えることもあります。
営業職では、顧客の都合に合わせた訪問や商談、移動時間、見積作成などが重なりやすいです。
職種別の平均を使うときは、転職先を選ぶ材料としては有効です。
ただし、同じ職種名でも会社によって担当範囲は違います。
営業職といっても、外回り中心なのか、既存顧客対応なのか、事務処理をどこまで担当するのかで労働時間は変わります。
エンジニア職でも、保守運用中心なのか、開発プロジェクト中心なのか、顧客先常駐なのかで働き方はかなり変わります。
求人票で確認したい項目
求人票を見るときは、平均残業時間だけでなく、固定残業代の有無、残業申請のルール、勤怠システムの有無も確認しましょう。
実際によくある相談として、求人票では残業少なめと書かれていたものの、入社後に繁忙期の残業や休日対応が想定より多かったというケースがあります。
平均残業時間が記載されている場合でも、それが全社員平均なのか、配属予定部署の平均なのか、直近何か月の平均なのかによって意味が変わります。
職種名だけで労働時間を判断しないことが大切です。
同じ事務職でも、営業事務、経理、人事、総務では繁忙期も業務量も異なります。
求人票では、担当業務の範囲と繁忙期を必ず確認しましょう。
会社側にとっても、職種別の残業時間を把握することは重要です。
全社平均だけを見ていると、現場職、営業職、管理部門の負担差が見えません。
職種ごとの残業時間を集計すると、採用を増やすべき部署、業務効率化が必要な部署、管理職の支援が必要な部署が見えてきます。
中小企業では、ひとりの従業員が複数職種の業務を兼ねていることも多いため、肩書だけでなく実際の業務内容で確認することが必要です。
職種別の残業時間は、あなたの働き方を考えるうえで便利な材料です。
ただし、最終的には自分が担当する業務、配属先の体制、上司のマネジメント、会社の勤怠管理の仕組みによって実態が変わります。
面接時や入社前の確認では、遠慮しすぎず、働き方に関する質問をしてよいかなと思います。
国際比較で見る労働時間
国際比較で見ると、日本の年間労働時間は中程度といえます。
メキシコや韓国は年間労働時間が長い国として挙げられ、米国も日本より長い水準です。
一方で、英国、フランス、ドイツなどの欧州主要国は、日本より短い傾向があります。
かつての日本には長時間労働のイメージが強くありましたが、統計上は長期的に労働時間が減少してきた面もあります。
ただし、国際比較の数字は、働き方の実感をそのまま表すものではありません。
パートタイム労働者の割合、有給休暇の取得状況、労働時間の記録方法、産業構造などが国によって異なるためです。
日本では、年間労働時間自体は長期的に減少傾向にありますが、職場によっては長時間労働の負担感が残っているのが実情です。
特に、正社員、管理職、専門職、現場責任者に業務が集中する職場では、平均値よりもかなり長く働いている人がいます。
日本の労働時間が減りにくい背景には、メンバーシップ型雇用、業務の属人化、職務範囲の曖昧さがあります。
誰の仕事か明確でない業務が特定の人に集まると、その人だけ残業が増えることがあります。
中小企業では迷いやすいポイントですが、業務分担表の整備や引き継ぎルールの明確化は、残業削減に直結します。
実務上も、残業の原因を聞いていくと、単なる人手不足だけでなく、「この人しか分からない仕事」が多いことに気づくことがあります。
日本の労働時間が減っても残る課題
日本全体の年間労働時間が減っているとしても、職場内の偏りが解消されていなければ、個人の負担感は残ります。
たとえば、パートタイム労働者や短時間勤務者が増えると、全体の平均労働時間は下がります。
しかし、正社員や管理職の業務量が減っていなければ、現場では「むしろ忙しくなった」と感じることもあります。
平均値が改善していることと、一人ひとりの働きやすさが改善していることは、必ずしも同じではありません。
国際比較は、国ごとの制度や働き方の違いを理解するための材料です。
自社や自分の働き方を考えるときは、国全体の平均だけでなく、業種別・職種別の実態もあわせて見ると判断しやすくなります。
会社側が国際比較を参考にする場合は、単に欧州の労働時間が短いという部分だけを見るのではなく、仕事の範囲、休暇取得の文化、業務の標準化、管理職の役割などもあわせて考える必要があります。
従業員側にとっては、日本は平均としては極端に長い国ではないとしても、自分の職場で長時間労働が続いているなら、記録を残し、会社に相談し、必要に応じて専門家へ相談することが大切です。
国際比較の数字は参考になりますが、最も大切なのは、あなた自身の労働時間が健康や生活に無理のない範囲に収まっているかどうかです。
平均を知ったうえで、日々の働き方に落とし込む。
この順番で見ていくと、判断を誤りにくくなります。
月平均所定労働時間の計算
月平均所定労働時間は、残業代の時間単価を計算するときに重要です。
月給制の場合、残業代の基礎となる1時間あたりの賃金は、原則として月給を月平均所定労働時間で割って計算します。
そのため、月平均所定労働時間を誤ると、残業代の計算にも影響します。
従業員側から見れば、残業代が少なく計算されていないかを確認するための重要な数字ですし、会社側から見れば、未払い残業代リスクを防ぐための基本項目です。
基本的な計算式は、月平均所定労働時間=(365日−年間休日日数)×1日の所定労働時間÷12か月です。
たとえば、年間休日121日、1日8時間勤務の場合は、(365−121)×8÷12=162.7時間となります。
年間休日105日、1日8時間勤務の場合は、(365−105)×8÷12=173.3時間です。
よく見かける173時間前後という数字は、法定週40時間に近い働き方を前提にした目安です。
会社ごとに年間休日数や1日の所定労働時間が違うため、すべての会社で同じ数字を使えるわけではありません。
特に注意したいのは、年間休日数を変更したのに、給与計算ソフトの月平均所定労働時間が昔のままになっているケースです。
たとえば、年間休日を増やした場合、月平均所定労働時間は短くなり、時間単価は上がる可能性があります。
ここを修正しないと、残業代が本来より低く計算されることがあります。
計算式を実務に当てはめる流れ
月平均所定労働時間を計算するときは、まず年間休日数を確認します。
次に、1日の所定労働時間を確認します。
最後に、12か月で割って月平均を出します。
会社によっては、夏季休暇や年末年始休暇を年間休日に含めるか、会社カレンダーでどのように扱っているかが問題になります。
就業規則、年間カレンダー、雇用契約書の内容がずれていないかも確認しましょう。
| 年間休日 | 1日の所定労働時間 | 計算式 | 月平均所定労働時間 |
|---|---|---|---|
| 121日 | 8時間 | (365−121)×8÷12 | 約162.7時間 |
| 105日 | 8時間 | (365−105)×8÷12 | 約173.3時間 |
| 120日 | 7時間30分 | (365−120)×7.5÷12 | 約153.1時間 |
月給を時間単価に直す場合、すべての手当を含めるわけではありません。
家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当など、一定の除外対象となる賃金もあります。
ただし、名称だけで判断できるものではなく、支給実態によって扱いが変わることがあります。
ここは実務上かなり間違いやすいポイントです。
月平均所定労働時間は、会社ごとの年間休日数と所定労働時間で計算します。
給与計算では、就業規則、雇用契約書、年間カレンダーをそろえて確認することが実務上とても大切です。
従業員側であれば、給与明細の残業単価に違和感がある場合、まず月平均所定労働時間を確認してみてください。
会社側であれば、給与計算ソフトの設定、賃金規程、年間休日カレンダーを年1回は見直すことをおすすめします。
制度としては小さな数字に見えても、毎月の残業代に影響するため、長期間放置すると差額が大きくなることがあります。
36協定と2024年規制

労働基準法では、法定労働時間は原則として1日8時間、週40時間です。
これを超えて労働させる場合には、36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要になります。
36協定がないまま法定労働時間を超える残業をさせることは、労務管理上かなり大きなリスクです。
会社側では、「残業代を払っているから大丈夫」と考えてしまうことがありますが、残業代の支払いと36協定の届出は別の問題です。
36協定による時間外労働の上限は、原則として月45時間、年360時間です。
特別条項付き36協定を締結した場合でも、年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内、月45時間を超えられるのは年6か月までといった上限があります。
これらは、休日労働を含めて見る場面もあるため、単純に残業時間だけを見ればよいわけではありません。
制度の詳細は、厚生労働省の 厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」 で確認できます。
2024年4月からは、これまで猶予されていた建設業、自動車運転業務、医師などにも上限規制が本格的に適用されています。
建設業は原則として一般の上限規制が適用され、自動車運転業務は年960時間、医師は区分により年960時間から1,860時間という上限が設けられています。
業種によって取扱いが異なるため、該当する会社は一般的な36協定の理解だけでなく、自社の業務に適用されるルールを確認する必要があります。
36協定で実務上確認すること
36協定は、締結して届け出れば終わりではありません。
実際の労働時間が協定の範囲内に収まっているか、特別条項を使う場合の手続きが守られているか、健康確保措置が実施されているかを継続的に確認する必要があります。
特に、月45時間を超える残業が発生する月がある会社では、年間で何回超えているかを管理しなければなりません。
年6か月を超えてしまうと、協定の範囲を超える可能性があります。
| 項目 | 原則 | 特別条項がある場合の主な上限 |
|---|---|---|
| 時間外労働 | 月45時間・年360時間 | 年720時間以内 |
| 単月の上限 | 原則上限内で管理 | 時間外・休日労働の合計が100時間未満 |
| 複数月平均 | 原則上限内で管理 | 2〜6か月平均で80時間以内 |
| 月45時間超の回数 | 原則超えない | 年6か月まで |
36協定の制度についてより詳しく確認したい場合は、 36協定の歴史と実務上の注意点 で、上限規制や特別条項の考え方を整理しています。
36協定の上限や2024年規制は、業種や業務内容によって取扱いが異なる場合があります。
違反時には罰則の対象となる可能性もあるため、会社側は協定書、届出、勤怠記録をセットで管理することが重要です。
従業員側としては、月45時間を超える残業が続いている場合や、休日労働を含めるとかなり長時間になっている場合、まず勤務記録を整理することが大切です。
会社側としては、勤怠管理システムで月45時間、80時間、100時間に近づいた段階でアラートが出る仕組みを整えると、リスクを早めに把握しやすくなります。
法令や制度の運用は変更される可能性があるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
労働時間の平均を見直すまとめ
労働時間の平均を確認するときは、まず何の平均を見ているのかを整理しましょう。
月平均の実労働時間、正社員の労働時間平均、年間労働時間、残業時間、所定労働時間は、それぞれ意味が違います。
平均という言葉だけで判断すると、実態を見誤ることがあります。
特に、所定労働時間と実労働時間、残業時間を混同してしまうと、賃金計算や労務管理の判断を誤りやすくなります。
従業員の方にとっては、自分の働き方が一般的な水準から大きく外れていないかを確認する材料になります。
特に、残業が長期間続いている場合、休憩が取れていない場合、残業代の計算に疑問がある場合は、勤務記録や給与明細を整理して確認することが大切です。
平均より多いから直ちに違法、平均より少ないから必ず安心、という話ではありません。
あなた自身の勤務実態を具体的に見ることが必要です。
会社側にとっては、平均値は労務管理の見直しに役立ちます。
ただし、平均残業時間が少なく見えても、一部の従業員に負担が集中していることがあります。
部署別、職種別、個人別に労働時間を確認し、36協定の範囲内で管理できているか、健康面の配慮ができているかを見直す必要があります。
中小企業では、担当者が少ないために業務が属人化しやすく、残業が特定の人に偏ることがあります。
ここは実務でよく見ます。
最後に確認したい実務ポイント
労働時間を見直すときは、まず勤怠記録を正確に残すことから始めます。
そのうえで、就業規則や雇用契約書に定められた所定労働時間、月平均所定労働時間、残業代の計算方法、36協定の内容を確認します。
会社側であれば、毎月の残業時間を集計するだけでなく、特定の従業員に業務が偏っていないか、繁忙期の対応が属人的になっていないかを確認しましょう。
従業員側であれば、疑問を感じたときに説明を求められるよう、勤務時間や給与明細を保管しておくとよいです。
| 確認項目 | 従業員側の見方 | 会社側の見方 |
|---|---|---|
| 実労働時間 | 実際の勤務記録と給与明細が合っているか | 客観的な記録で把握できているか |
| 残業時間 | 長時間残業が続いていないか | 36協定の範囲内に収まっているか |
| 所定労働時間 | 雇用契約書と実態が合っているか | 就業規則と給与計算設定が合っているか |
| 月平均所定労働時間 | 残業単価に違和感がないか | 年間休日変更後も設定が正しいか |
労働時間の平均は、自分や会社の状況を客観的に見るための目安です。
最終的には、就業規則、雇用契約、勤怠記録、賃金計算、36協定の内容を総合的に確認することが欠かせません。
平均値は便利ですが、あなた自身の働き方や会社の運用を確認するための入口として使うのがよいかなと思います。
この記事の内容は、一般的な労働時間制度と統計データに基づく整理です。
個別の勤務実態、賃金計算、36協定、労働時間制度によって結論が変わることがあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
具体的な請求、会社対応、制度設計については、最終的な判断は専門家にご相談ください。