こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
職場でのちゃん付けは、状況によってハラスメント、特にセクシュアルハラスメントに該当する可能性があります。
もっとも、ちゃん付けだけで常に違法と決まるわけではなく、相手の受け止め方、継続性、職場での必要性、他の言動との組み合わせを見て判断されます。
名字にちゃんを付けて呼ばれる、上司や先輩から何度も同じ呼び方をされる、外見への発言と一緒に扱われる。
このような相談は、実務でも判断に迷いやすいところです。
この記事では、職場のちゃん付けとハラスメントの関係を、従業員側の対処法と、企業側の予防策の両面から整理します。
- ちゃん付けがセクハラになり得る判断基準
- 佐川急便のちゃん付け判決の実務ポイント
- やめてほしい時の伝え方と証拠の残し方
- 会社が整えるべき呼称ルールと相談体制

職場のちゃん付けはハラスメントか

まずは、職場でのちゃん付けがどのような場合に問題となるのかを整理します。
呼び方の問題は軽く見られがちですが、職場では人間関係、上下関係、性別、継続性が絡むため、単なる親しみの表現では済まないことがあります。
特に、呼ぶ側が親しみのつもりでも、呼ばれる側が嫌な気持ちを抱き、職場でのやり取りに負担を感じている場合には注意が必要です。
労務相談の現場でも、最初は小さな違和感だったものが、毎日続くことで出勤しづらさや体調不良につながるケースがあります。
ちゃん付けはセクハラになるか

結論からいうと、職場でのちゃん付けは、状況によってセクハラに該当する可能性があります。
特に、女性従業員だけをちゃん付けで呼ぶ、本人が嫌がっているのに続ける、外見や体形への発言と一緒に行われる場合は、職場環境を害する言動として問題になりやすいです。
セクハラには、大きく分けて対価型と環境型があります。
対価型は、性的な言動を拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けるケースです。
環境型は、性的な言動によって職場環境が不快になり、働くうえで支障が出るケースです。
ちゃん付けの問題は、多くの場合、この環境型セクハラの観点から検討されます。
たとえば、上司が部下の女性だけを名字にちゃん付けで呼び、男性社員には名字にさん付けをしている場合、呼び方そのものに性別による扱いの差が出ています。
さらに、かわいい、若く見える、体形がいいといった発言が重なると、本人にとっては仕事上の評価ではなく、性的・外見的な目線で扱われていると感じやすくなります。
厚生労働省は、職場におけるセクシュアルハラスメントについて、性的な言動により労働者の就業環境が害されることなどを問題として整理しています。
制度や事業主の措置義務を確認する場合は、一次情報として 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」 を確認するとよいです。
職場のちゃん付けは、相手が嫌がっているのに続けると、ハラスメントとして扱われるリスクがあります。
一方で、職場全体で自然に使われており、本人も明確に受け入れている場合まで、すべてが直ちに違法と判断されるわけではありません。
ただし、ここで注意したいのは、本人がその場で笑っていたとしても、本当に同意しているとは限らないことです。
上司や先輩との関係では、場の空気を壊したくない、評価に影響しそうで怖い、波風を立てたくないという理由で、嫌だと言えないことがあります。
実務上は、呼び方そのものだけでなく、誰が、誰に、どの場面で、どれくらいの頻度で、どのような関係性の中で使っていたのかを見ます。
私が相談を受ける場合も、単語だけで判断せず、その呼び方が職場でどのような意味を持っていたのかを確認します。
大切なのは、行為者のつもりだけでなく、受け手の感じ方と職場の客観的な状況をあわせて見ることです。
ちゃん付けが違法になる条件
ちゃん付けが違法なハラスメントと評価されるかは、複数の事情を総合して判断されます。
実務では、ひとつの発言だけを見るのではなく、日常的な言動の積み重ねとして確認することが多いです。
つまり、ある日一度だけ呼び間違えたという話と、本人が嫌がっているのに毎日のようにちゃん付けを続けていたという話では、リスクの大きさがまったく違います。
特に問題になりやすいのは、次のようなケースです。
- 本人が不快だと感じている
- やめてほしいと伝えた後も続いている
- 上司や先輩など断りにくい立場の人が呼んでいる
- 女性だけ、若手だけ、特定の人だけに使っている
- かわいい、体形がいいなど外見への発言と一緒に行われている
- 業務上その呼び方を使う必要性がない
職場での呼び方は、業務を円滑に進めるためのものです。
そのため、業務上の必要性が乏しく、親密さや上下関係を一方的に押し付けるような呼称は、リスクが高くなります。
たとえば、業務指示や会議中にわざわざちゃん付けで呼ぶ必要は通常ありません。
まして、本人が嫌がっていると分かっているのに続ける場合は、職場環境を悪化させる行為として扱われやすくなります。
受け手の不快感だけで決まるわけではない
ここで誤解されやすいのが、受け手が嫌だと言えば必ず違法になるのか、という点です。
ハラスメントの判断では、本人の不快感は非常に重要ですが、それだけで機械的に結論が出るわけではありません。
通常の労働者の感覚から見ても不快といえるか、職場での必要性があるか、継続性があるか、他の言動と組み合わさっているかといった事情も見られます。
ただし、本人が嫌だと表明した後も続ける場合は、話が変わります。
やめてほしいと伝えられた時点で、呼ぶ側は相手の意に反している可能性を認識できます。
それでも変えないとなると、悪気がなかったという説明はかなり弱くなります。
悪気がなかった という説明だけでは、十分な反論にならないことがあります。
ハラスメント対応では、行為者の意図だけでなく、受け手の不快感や就労環境への影響が重視されます。
また、本人がその場で強く反論していないからといって、同意しているとは限りません。
上司、先輩、年上の同僚など、相手との力関係によっては、その場で嫌だと言えないこともあります。
ここは中小企業でもよく見落とされるポイントです。
職場の人間関係が近い会社ほど、嫌なら言えばいいじゃないか、という受け止めになりがちですが、実際には言えないから問題が深くなることもあります。
会社側が判断するときは、呼ばれた本人の話だけでなく、周囲の従業員の認識、過去の注意の有無、呼称が使われていた場面、業務上の関係、本人の体調や就業への影響を確認する必要があります。
感情論で決めつけず、事実を丁寧に積み上げること。
これが実務上の基本です。
職場の呼び方ハラスメントとは
職場の呼び方ハラスメントとは、相手を見下す、子ども扱いする、性的なニュアンスを含ませる、人格を軽く扱うような呼称によって、相手に不快感や精神的負担を与える問題です。
ちゃん付けはその代表例のひとつですが、問題はちゃんという言葉だけに限られません。
呼び方には、その人をどう扱っているかが表れます。
たとえば、ある従業員だけを幼い呼び方で呼ぶ、役職や年齢に関係なくお前と呼ぶ、外見の特徴をあだ名にする、異性の下の名前を馴れ馴れしく呼び捨てにする。
このような呼称は、職場での尊重を欠くものとして受け止められやすいです。
特に、本人が嫌がっているのに周囲が冗談として扱うと、本人は職場に居場所がないように感じてしまいます。
ちゃん付けだけでなく、職場では次のような呼び方も問題になり得ます。
| 呼び方 | 問題になりやすい理由 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| お前 | 強い見下しや威圧感を与えやすい | 指導場面で使うとパワハラ的に受け止められやすい |
| 呼び捨て | 特に異性の下の名前では不快感を招きやすい | 親しいつもりでも職場では境界線が必要 |
| 女の子・男の子 | 成人を子ども扱いする印象を与える | 若手社員への発言でも避けたほうが安全 |
| くん付け | 立場によっては下に見られた感覚につながる | 男性にはくん、女性にはちゃんという使い分けは特に注意 |
| 不快なあだ名 | 外見や特徴をからかう内容は特に問題になりやすい | 本人が笑っていても同意とは限らない |
もちろん、すべてのあだ名や呼称が禁止されるわけではありません。
本人同士の関係性があり、本人が明確に望んでいる場合には、問題になりにくいこともあります。
ただし、職場は友人関係の場ではなく、労働契約に基づいて働く場所です。
本人の尊厳を損なう呼び方や、業務と関係のない親密さを押し付ける呼び方は避けるべきです。
呼び方は職場文化を映す
呼び方の問題は、単なる言葉づかいの問題に見えて、実は職場文化そのものを映しています。
役職者が部下を雑に呼ぶ職場では、注意や指導も強い口調になりやすく、相談しにくい雰囲気が生まれます。
一方で、互いにさん付けを基本にしている職場では、少なくとも呼称の面では対等な人格を尊重する土台ができます。
企業側の実務では、呼び方の問題を雑談の延長として放置せず、 職場秩序とハラスメント防止の問題 として扱うことが大切です。
ハラスメント全般の整理については、 職場で問題になりやすいハラスメントの種類と優先順位 も参考になります。
社内ルールを作るときは、禁止語を細かく並べるだけでなく、相手が望まない呼称や人格を傷つける呼称を使わない、という考え方を明記しておくと運用しやすくなります。
ちゃん付けのセクハラ判例

職場でのちゃん付けについては、2025年10月23日の東京地裁判決が実務上注目されています。
この事案では、佐川急便の東京都内営業所で勤務していた40代女性が、年上の元同僚男性から名字にちゃんを付けて継続的に呼ばれるなどしたとして、損害賠償を求めました。
裁判所は、ちゃん付けについて、一般的に幼い子どもや交際相手など親密な関係で用いられる呼称であり、職場の業務上そのような呼び方をする必要性は見出しにくいと判断しました。
この部分は、企業の労務管理にとって非常に大きな意味があります。
なぜなら、親しみを込めた呼び方という説明が、必ずしも職場で通用するわけではないことを示しているからです。
この判決のポイントは、ちゃん付けだけを切り離して見たのではなく、外見や体形、下着に関する発言とあわせて、一連の言動として評価した点です。
裁判所は、こうした言動が許容される限度を超えた違法なハラスメントにあたると判断しました。
判例を見るときの実務目線
判例を見るときに大切なのは、賠償額だけを見て軽い、重いと判断しないことです。
賠償額は、発言内容、期間、被害の程度、診断の有無、退職との関係、会社側の対応など、多くの事情によって変わります。
そのため、金額だけを見て、この程度で済むなら大丈夫、あるいは必ずこの金額になる、と考えるのは危険です。
労務相談の現場では、判例は社内研修や規程見直しのきっかけとして使うのが実務的です。
特に今回のように、呼び方、外見評価、職場での継続的な言動が組み合わさっている事案は、管理職研修で取り上げる価値があります。
なぜなら、管理職本人が悪気なくやっている言動ほど、本人がリスクに気づきにくいからです。
判例や報道内容は、事案ごとの事情に左右されます。
賠償額や判断内容は個別事情によって変わるため、 正確な情報は公式サイトをご確認ください 。
また、具体的な紛争については、 最終的な判断は専門家にご相談ください 。
実務上は、判決が出たからといって、すべてのちゃん付けが同じ結論になるわけではありません。
ただ、企業が呼称ルールを見直すきっかけとしては非常に重要です。
特に、古くからの職場文化としてちゃん付けやあだ名が残っている会社では、今後も同じ運用でよいのか、一度点検する必要があります。
また、従業員側にとっても、この判例は、自分が不快に感じていることを相談してよいのだと考える材料になります。
小さなことだから我慢しなければならない、という話ではありません。
呼び方が継続し、外見への言及や上下関係と結びついている場合には、職場環境の問題として整理してよいのです。
佐川急便のちゃん付け判決
佐川急便のちゃん付け判決では、原告の女性が約550万円の損害賠償を求め、元同僚男性に対して22万円の賠償が命じられたとされています。
また、会社との関係では、別途70万円の解決金で和解したと報じられています。
金額はあくまで個別事案の結果であり、同じような相談で必ず同じ結論になるわけではありません。
問題とされた言動には、名字にちゃんを付けて日常的に呼ぶことのほか、かわいい、体形がいいといった外見に関する発言、下着が見えた際のコメントなどが含まれていました。
女性はうつ病と診断され、その後退職に至ったとされています。
ここで重要なのは、ちゃん付けが単独で語られたのではなく、職場での不快な言動の一部として評価されたことです。
この事案から読み取れる実務上の教訓は、次の3点です。
- 親しみのつもりでも、相手に不快感を与えれば問題になる
- 呼び方と外見への発言が組み合わさるとリスクが高まる
- 会社は相談後の対応や再発防止も問われ得る
会社が見落としやすいポイント
中小企業では、昔からこの呼び方だから、本人も何も言っていないから、という理由で見過ごされることがあります。
しかし、現在の労務管理では、従業員が安心して働ける環境を整えることが会社の重要な責任です。
特に、社内で声の大きい人、経験年数の長い人、現場で影響力のある人が問題行動をしている場合、周囲が注意しにくくなります。
会社としては、相談があった時点で、呼び方くらいで大げさだと受け止めないことが大切です。
最初の相談対応を誤ると、相談者は会社に言っても無駄だと感じ、外部機関や弁護士への相談に進むことがあります。
もちろん、外部相談自体が悪いわけではありませんが、本来は社内で早期に調整できた問題が、紛争化してしまうこともあります。
本人が明確に拒否していない という事情だけで安全とはいえません。
職場の上下関係や雰囲気によって、拒否できなかった可能性を考える必要があります。
ハラスメントの相談対応は、事実確認、プライバシー保護、不利益取扱いの防止まで含めて設計する必要があります。
感情的に誰かを責めるのではなく、事実を整理し、再発防止につなげることが実務上の基本です。
また、管理職に対しては、ちゃん付けだけでなく、外見を評価する発言、体形に触れる発言、服装や下着に関する発言は職場で不要だと明確に伝えるべきです。
仕事上の評価は、成果、行動、能力、協力姿勢などに向けるべきであり、容姿や年齢に向ける必要はありません。
この切り替えができるかどうかが、令和の職場管理では重要かなと思います。
職場のちゃん付けハラスメント対策

ここからは、実際にちゃん付けをやめてほしいと感じている方の対処法と、企業や管理職が整えるべき予防策を確認します。
従業員側と会社側のどちらにとっても、早い段階で記録し、相談し、ルールを明確にすることが大切です。
対応の目的は、誰かを一方的に責めることではありません。
職場で安心して働ける状態を取り戻すこと、そして同じ問題を繰り返さない仕組みを作ることです。
従業員側は自分を守るために、会社側は職場環境を守るために、できることを順番に進めましょう。
職場のちゃん付けをやめてほしい時
職場でちゃん付けをやめてほしいと感じた場合、まずは可能であれば、落ち着いた言い方で希望する呼び方を伝える方法があります。
たとえば、○○さんと呼んでいただけますか、職場では名字にさん付けでお願いします、という伝え方です。
相手が本当に気づいていない場合は、この一言で改善することもあります。
このとき、相手を強く非難するよりも、今後の呼び方を具体的に伝えるほうが、職場での関係を必要以上に悪化させずに済むことがあります。
実務でも、最初の段階では呼称の修正で収まるケースがあります。
言い方としては、ちゃん付けはやめてくださいだけではなく、今後は○○さんでお願いしますと代替案まで伝えると、相手も行動を変えやすいです。
ただし、相手が上司や先輩で言いにくい場合、すでに外見への発言なども重なっている場合、直接伝えることで不利益を受けそうな場合は、無理に一人で対応する必要はありません。
社内のハラスメント相談窓口、人事担当者、信頼できる管理職に相談することを優先してください。
直接伝える場合の例文
直接伝える場合は、短く、具体的に、職場の呼び方の希望として伝えるのが実務的です。
たとえば、次のような言い方があります。
職場では名字にさん付けで呼んでいただけると助かります。
ちゃん付けで呼ばれることに少し抵抗があります。
今後は○○さんでお願いします。
業務上のやり取りでは、他の方と同じようにさん付けでお願いします。
メールやチャットで伝える場合は、感情的な表現を避け、記録として読まれても問題ない文面にしておきましょう。
たとえば、いつも業務でお世話になっています。
呼び方についてお願いがあります。
今後、職場では○○さんと呼んでいただけますでしょうか、という程度で十分です。
相手と二人きりの場で強く抗議すると、後で言った言わないの話になることがあります。
必要に応じて、メールやチャットなど記録に残る形で、冷静に伝える方法も検討しましょう。
大切なのは、自分が我慢すればよいと抱え込まないことです。
呼び方の問題は小さく見えても、毎日のことになると精神的な負担が大きくなります。
特に、出勤前に気が重くなる、相手との業務連絡を避けるようになる、周囲の目が気になるといった状態が出ている場合は、早めに相談したほうがよいです。
会社側の立場で見ると、従業員から呼び方をやめてほしいと相談された場合には、本人の過敏さとして処理せず、職場環境の調整として受け止めることが必要です。
相手に注意するときも、あなたがセクハラをしたといきなり断定するのではなく、本人が不快に感じているため今後はさん付けに統一してください、と具体的に行動を指示する形が現実的です。
ちゃん付けの証拠と対処法

ちゃん付けの証拠を残すときは、録音の有無だけにこだわる必要はありません。
まずは、いつ、どこで、誰から、どのような呼び方をされ、周囲に誰がいたかを記録することが重要です。
ハラスメント相談では、記憶だけに頼ると時系列があいまいになりやすいため、できるだけ早めにメモを残すことをおすすめします。
記録には、次のような項目を残しておくと相談時に整理しやすくなります。
- 日時
- 場所
- 発言した人
- 実際の呼び方や発言内容
- 目撃者や同席者
- その後の体調や仕事への影響
- 会社へ相談した日と対応内容
ハラスメント相談では、何となく嫌だったという説明だけでは、会社も外部機関も事実確認を進めにくいことがあります。
もちろん、つらい気持ちは大切な情報ですが、実務上は 感情と事実を分けて記録する ことがポイントです。
たとえば、嫌だったと書くだけでなく、朝礼後に上司が全員の前で名字にちゃん付けで呼んだ、その後に周囲が笑った、午後の打ち合わせで発言しづらくなった、というように事実と影響を分けて書くと伝わりやすくなります。
記録メモの書き方
記録は、きれいな文章である必要はありません。
スマートフォンのメモ、手帳、メールの下書き、自分宛てのメールなど、後から日時が確認しやすい形で残しておくとよいです。
内容は短くても構いませんが、具体性が大切です。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 日時 | 2026年6月18日 9時15分ごろ |
| 場所 | 事務所内の朝礼後 |
| 相手 | 直属の上司Aさん |
| 内容 | 名字にちゃん付けで呼ばれ、周囲の前でかわいいと言われた |
| 周囲 | 同じ部署のBさん、Cさんが近くにいた |
| 影響 | その後の打ち合わせで発言しづらくなった |
メール、チャット、日報、メモ、診断書、相談記録などがある場合は、削除せず保管しておきましょう。
労基署や労働局への相談準備については、 労基署へ相談する前に準備したい証拠と流れ でも整理しています。
証拠は相手を攻撃するためではなく、起きている事実を正確に伝えるために残します。
録音については、職場のルールや状況によって慎重な判断が必要です。
録音が有効な場面もありますが、無断録音をめぐって別のトラブルになることもあります。
どうしても必要だと感じる場合は、事前に専門家へ相談したほうが安全です。
企業側も、相談を受けたら相談者のメモを軽視せず、当事者、目撃者、過去の相談履歴を確認する必要があります。
一方の話だけで決めつけず、秘密保持に配慮しながら慎重に進めることが大切です。
特に、相談者が不利益を受けないよう、配置、評価、シフト、業務分担に変化が出ていないかも確認しましょう。
厚生労働省は、心理的負荷による精神障害の労災認定基準を公表しており、ハラスメントを含む業務上の出来事が心理的負荷として評価される場合があります。
詳しくは一次情報として 厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」 を確認してください。
ちゃん付けの相談先はどこか
ちゃん付けに関する相談先は、状況によって変わります。
まず社内にハラスメント相談窓口がある場合は、そこに相談するのが基本です。
会社には、職場におけるセクハラを防止するため、方針の明確化、相談体制の整備、事実確認、適正な対応などの措置を講じる義務があります。
社内に相談しにくい場合や、相談しても対応されない場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなど外部機関への相談も選択肢になります。
内容によっては、社会保険労務士や弁護士に相談したほうがよいケースもあります。
特に、退職、休職、損害賠償、会社との交渉が絡む場合は、早めに専門家へ相談するほうが安全です。
| 相談先 | 向いている相談内容 | 相談前に準備したいもの |
|---|---|---|
| 社内相談窓口 | 呼称の改善、上司への注意、職場内の調整 | 発言メモ、相手の名前、希望する対応 |
| 人事部・管理職 | 配置や業務上の接点を含む社内対応 | 時系列、目撃者、業務への影響 |
| 労働局 | 会社のハラスメント防止措置や相談対応への不安 | 会社へ相談した経緯、会社の回答 |
| 社会保険労務士 | 会社の制度整備、相談体制、就業規則の見直し | 就業規則、相談対応フロー、社内規程 |
| 弁護士 | 損害賠償、退職、示談、裁判など法的紛争 | 証拠一式、診断書、会社とのやり取り |
従業員側としては、最初から大ごとにしたいわけではなく、ただ呼び方を改めてほしいという場合も多いです。
その場合でも、相談先には、いつから、どのように呼ばれ、どの程度困っているのかを具体的に伝えましょう。
相談時には、相手を処分してほしいのか、呼び方を変えてほしいのか、接点を減らしてほしいのか、自分の希望を整理しておくと話が進みやすくなります。
社内相談で伝えるべきこと
社内相談では、感情を押し殺す必要はありませんが、会社が動きやすいように、事実、困っていること、希望する対応を分けて伝えるとよいです。
たとえば、直属の上司から毎日名字にちゃん付けで呼ばれている、以前にさん付けで呼んでほしいと伝えたが変わらない、周囲の前で呼ばれるため業務連絡がしづらい、今後はさん付けに統一してほしい、という形です。
相談するときは、相手をすぐに処分してほしいという話に限定しなくても構いません。
呼び方の改善、本人への注意、部署内ルールの見直し、管理職からの周知など、段階的な対応もあります。
会社側としては、相談が入った時点で、単なる人間関係の不満として片づけないことが大切です。
相談窓口、調査方法、不利益取扱いの禁止を社内で周知しておくことが、後のトラブル防止につながります。
また、相談を受けた管理職が、そんなことで相談するな、相手も悪気はない、あなたが気にしすぎだと返してしまうと、二次被害につながります。
最初の一言は非常に重要です。
まずは、話してくれてありがとうございます、事実関係を確認します、相談したことで不利益が出ないようにします、という姿勢を示すことが望ましいです。
ちゃん付けとパワハラの違い
ちゃん付けは、主にセクハラとして問題になることが多いですが、状況によってはパワハラの要素も含むことがあります。
セクハラは性的な言動によって就業環境が害される問題であり、パワハラは職場での優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境が害される問題です。
たとえば、上司が部下を人前でちゃん付けし、子ども扱いするような言い方を続けている場合、性的なニュアンスが強ければセクハラ、見下しや支配の意味合いが強ければパワハラの観点でも問題になります。
実際の相談では、セクハラとパワハラがきれいに分かれることは少なく、複数の要素が混ざっていることがよくあります。
実務では、セクハラかパワハラかを最初から一つに決め切るよりも、次のように分解して考えると整理しやすいです。
- 性的な意味合いがあるか
- 上下関係や優越的な立場があるか
- 業務上必要な言動か
- 本人の就労環境に悪影響が出ているか
- 継続的に行われているか
セクハラとパワハラの整理
| 分類 | 主なポイント | ちゃん付けで問題になる例 |
|---|---|---|
| セクハラ | 性的な言動や性別に基づく不快な扱い | 女性だけをちゃん付けし、外見を評価する |
| パワハラ | 優越的な関係を背景にした不適切な言動 | 上司が部下を人前で幼く扱い続ける |
| 職場環境の問題 | 安心して働けない雰囲気や相談しにくさ | 周囲も一緒に笑い、本人が孤立する |
中小企業では、セクハラ、パワハラ、いじめ、単なる相性の問題が混ざって相談されることがあります。
そのため、会社は相談内容を分類しながらも、相談者の困りごとそのものは丁寧に受け止める必要があります。
分類は会社が適切に対応するための道具であって、相談者を追い返すためのものではありません。
ため息や態度を含む非言語的なハラスメント対応については、 ため息がハラスメントになる場合の職場対応 でも実務上の考え方を解説しています。
これはセクハラではなくパワハラだから相談窓口が違う、というようにたらい回しにすると、会社への不信感が強くなります。
まず相談を受け止め、必要に応じて担当部署で連携することが大切です。
また、従業員側も、自分の相談がセクハラなのかパワハラなのかを完璧に分類してから相談する必要はありません。
職場での呼び方に困っている、相手とのやり取りがつらい、仕事に支障が出ている、という形で相談して大丈夫です。
分類は相談を受けた側が一緒に整理すればよい部分です。
職場のさん付け統一ルール

企業側の予防策として最も実務的なのは、職場での呼び方を原則として名字にさん付けで統一することです。
特に中小企業では、社長、役員、古くからいる従業員の呼び方が職場文化として定着していることがありますが、時代に合わせて見直す必要があります。
さん付け統一ルールを作る場合は、単に今日から全員さん付けにしますと伝えるだけでなく、なぜ必要なのかを説明することが大切です。
目的は、堅苦しい職場を作ることではなく、誰もが安心して働ける環境を整えることです。
ここを説明しないと、昔ながらの呼び方をしてきた従業員から、距離ができる、冷たい職場になる、という反応が出ることがあります。
会社の基本ルール としては、名字にさん付けを原則とし、例外的な呼び方は本人が明確に望む場合に限る、という整理が安全です。
就業規則やハラスメント防止規程に、人格を傷つける呼称、不快なあだ名、性的なニュアンスを含む呼び方を禁止する内容を入れておくと、相談対応時にも説明しやすくなります。
規程に明記しておけば、注意する側も、個人的に気に入らないから注意しているのではなく、会社のルールとして伝えていると説明できます。
社内ルールに入れたい項目
呼称ルールを作る場合は、次のような項目を整理しておくと運用しやすくなります。
- 職場では原則として名字にさん付けを使用する
- 本人が望まないあだ名やちゃん付けをしない
- お前、呼び捨て、外見をからかう呼称を使わない
- 役職者や管理職は率先してルールを守る
- 相談があった場合は速やかに事実確認を行う
- 相談者に対する不利益取扱いを禁止する
また、管理職研修では、呼び方だけでなく、外見、年齢、体形、結婚、出産、恋愛に関する発言を避けることもあわせて伝える必要があります。
呼称ルールだけを整えても、容姿への発言が残れば、ハラスメントリスクは下がりません。
社内周知では、禁止事項だけでなく、良い例も示すと定着しやすいです。
たとえば、業務中は名字にさん付け、会議やチャットでも同じ呼称にする、取引先の前でも統一する、といった具体例です。
採用時や入社時の説明でも、職場では互いを尊重する呼称を使うことを確認しておくと、あとから注意するよりも受け入れられやすくなります。
これは実務上、職場の雰囲気を整えるうえで効果があります。
一方で、ルールを作っただけで終わらせないことも重要です。
実際には、社長やベテラン社員が従来の呼び方を続けてしまうと、若手や新入社員は注意できません。
会社のルールとして定着させるには、役職者から先に変える必要があります。
トップや管理職が変わると、現場も変わりやすいです。
職場のちゃん付けハラスメントまとめ
職場のちゃん付けは、常に違法と決まるわけではありません。
しかし、相手が不快に感じている、継続的に行われている、業務上の必要性がない、外見や体形への発言と組み合わさっている場合は、ハラスメントとして問題になる可能性があります。
特に、上司や先輩から部下や後輩に向けて使われる場合は、断りにくい力関係があるため注意が必要です。
従業員側は、まず自分が望む呼び方を伝えられる状況かを見極め、難しい場合は社内窓口や外部機関に相談しましょう。
その際は、日時、場所、発言内容、目撃者、会社への相談経緯を記録しておくと、状況を正確に伝えやすくなります。
直接伝えられる場合でも、今後は○○さんと呼んでくださいというように、希望する呼び方を具体的に伝えることが大切です。
企業側は、ちゃん付けを単なる親しみの表現として放置せず、職場の呼称ルール、相談窓口、研修、就業規則を整えることが重要です。
特に、全員を名字にさん付けで呼ぶルールは、実務上わかりやすく、トラブル予防にもつながります。
ハラスメント対応は、起きてから慌てて動くより、日ごろのルールづくりでかなり防げます。
また、相談があったときは、相談者の受け止め方、相手の言動、周囲の状況、業務への影響を丁寧に確認しましょう。
相手に悪気がなかったとしても、結果として職場環境が悪化しているなら、会社として改善に動く必要があります。
職場のちゃん付けハラスメント対策で大切なのは、個人の感覚論で終わらせず、呼称ルールと相談体制を会社の仕組みとして整えることです。
ハラスメント対応は、感情論だけで判断するとこじれやすい分野です。
法令、職場の実態、本人の受け止め方、証拠の有無を分けて整理することが大切です。
従業員側にとっては、我慢し続ける前に相談すること。
企業側にとっては、小さな違和感の段階で改善すること。
どちらも大事です。
職場のちゃん付けハラスメントに関する正確な情報は、厚生労働省などの公式サイトをご確認ください。
個別の事案では事情によって結論が変わるため、最終的な判断は専門家にご相談ください。
私の実務感覚でも、呼び方の問題は、早めに整えれば大きな紛争になる前に改善できることが多いです。
反対に、軽く見て放置すると、外見への発言、人格否定、退職、メンタル不調など、より深刻な問題につながることがあります。
職場のちゃん付けは小さな言葉の問題に見えますが、働く人の尊厳に関わるテーマです。
会社も従業員も、早めに、冷静に、記録とルールに基づいて対応していきましょう。