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労働基準監督署から電話が来る理由と対応手順を企業向け解説

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

労働基準監督署から電話が来ると、会社の経営者や人事労務担当者の方は、かなりドキッとすると思います。

労基署から電話があった理由は何か、呼び出しなのか、調査なのか、無視してよいのか、折り返しは必要なのか、是正勧告につながるのか。

実務上すぐに確認したいことが一気に出てきますよね。

特に、未払い残業代、長時間労働、36協定、就業規則、賃金台帳、出勤簿、タイムカード、労働条件通知書、労災、是正報告書といった言葉が頭に浮かぶと、不安になるのも自然です。

実際、私のところにも、労働基準監督署から急に電話が来たが、どう対応すればよいかという相談はよくあります。

また、従業員側の方であれば、労働基準監督署への電話相談、匿名相談、申告後の流れ、最寄りの労働基準監督署の電話番号を調べる場面もあるでしょう。

この記事では、会社側の実務対応を中心にしながら、従業員側の相談の流れにも触れ、労働基準監督署から電話があったときに落ち着いて対応するためのポイントを整理します。

  • 労働基準監督署から電話が来る主な理由
  • 電話を受けた直後に確認すべき事項
  • 調査前に準備しておきたい書類
  • 是正勧告後の実務対応と相談先

労働基準監督署から電話が来たら

労働基準監督署から電話が来る理由

労働基準監督署から電話が来る理由

労働基準監督署からの電話は、必ずしも会社を責める目的だけで行われるものではありません。

定期的な監督、労働者からの申告、是正報告書の提出確認、労災に関する確認、事務的な照会など、いくつかの理由があります。

まずは、電話の背景を落ち着いて切り分けることが大切です。

ここで焦ってしまうと、必要以上に不安になったり、逆に軽く見すぎたりしてしまいます。

突然の電話で確認すること

突然の電話で確認すること

労働基準監督署から電話があったとき、最初に行うべきことは、慌てて説明を始めることではありません。

まずは、 担当監督官の氏名、所属する労働基準監督署名、折り返し先の電話番号、電話の目的 を確認してください。

突然の電話だと、つい「何か悪いことをしたのかな」と身構えてしまいますよね。

ただ、最初の数分で確認すべきことを押さえておけば、その後の対応はかなり整理しやすくなります。

電話では、調査日程の調整、来署依頼、事業場への訪問予定、準備書類の案内、是正報告書の提出状況の確認などが伝えられることがあります。

担当者が不在のまま別の従業員が電話を受けた場合、内容が曖昧なまま社内で伝言され、あとから「結局、何を持っていけばいいのか」「誰が対応するのか」が分からなくなることもあります。

中小企業では本当によくある場面です。

私が実務で見る限り、労働基準監督署対応で最初に崩れやすいのは、法律論よりも社内の情報共有です。

代表者だけが電話内容を知っていて労務担当者に伝わっていない、総務担当者が聞いたけれどメモが残っていない、顧問社労士へ相談する時点で内容がぼんやりしている。

こうなると、必要な準備が後手に回ります。

電話メモは社内共有できる形で残す

電話を受けたら、個人のメモ帳だけでなく、社内で共有できる形に残しておくと安心です。

たとえば、日付、時刻、相手の氏名、電話番号、要件、指定された書類、回答期限、折り返しの要否をまとめておきます。

あとで担当者が変わっても、同じ情報を確認できる状態にしておくこと。

こういう地味な対応が、実務ではかなり効きます。

電話を受けたら、最低限次の内容をメモしてください。

  • 担当監督官の氏名
  • 労働基準監督署名と連絡先
  • 電話の目的
  • 調査または来署の日時
  • 準備すべき書類と対象期間
  • 折り返しや回答の期限
  • 会社側で対応する担当者

なお、電話の相手が本当に労働基準監督署か不安な場合は、折り返しにしても問題ありません。

その際は、聞き取った電話番号だけで判断せず、厚生労働省や都道府県労働局の公式サイトで最寄りの労働基準監督署の代表番号を確認し、そこから担当監督官につないでもらう方法が安全です。

最近は、公的機関を名乗る不審な電話もゼロではありません。

確認してから折り返すのは、失礼なことではないですよ。

電話を受けた段階で、すぐに詳しい説明を求められたとしても、資料を見ないと分からないことまで即答する必要はありません。

「確認のうえ、折り返しご連絡します」と伝え、事実を確認してから回答しましょう。

曖昧な記憶で答えた内容が、あとから資料と食い違うほうが問題です。

まずは、相手の情報を確認し、要件を整理し、社内で担当者を決めること。

初動の基本です。

定期監督で連絡が来る場合

労働基準監督署から電話が来る理由として、実務上よくあるのが定期監督です。

定期監督とは、労働基準監督署が年度ごとの監督計画などに基づき、対象となる事業場を選んで実施する調査です。

特定の従業員から申告があった場合だけでなく、業種、規模、過去の指摘状況、労働災害の発生状況、長時間労働が疑われる事情などを踏まえて選ばれることがあります。

定期監督という言葉を聞くと、「定期なら大したことはないのかな」と感じる方もいるかもしれません。

ただ、そこは少し注意が必要です。

定期監督であっても、調査の中で労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法などに関する問題が見つかれば、是正勧告や指導につながることがあります。

つまり、入口が定期監督でも、確認される内容はかなり実務的です。

定期監督では、労働時間、残業代、36協定、就業規則、労働条件通知書、賃金台帳、出勤簿、年次有給休暇、安全衛生関係など、会社の労務管理全体が確認されます。

労働基準監督署が来る理由と調査の全体像については、当事務所の 労働基準監督署が来る理由と調査対応の実務ポイント解説 でも詳しく整理しています。

定期監督で見られやすい実務項目

定期監督では、会社が日常的に労務管理をきちんと行っているかが見られます。

たとえば、36協定を届け出ていないのに残業をさせていないか、タイムカード上の労働時間に対して残業代が正しく支払われているか、労働条件通知書に必要事項が記載されているか、常時10人以上の事業場で就業規則が作成・届出されているか、といった点です。

また、最近は年次有給休暇の5日取得義務、長時間労働者への医師面接指導、安全衛生管理体制なども確認されることがあります。

会社としては、労働時間と賃金だけを見ていればよいわけではありません。

人を雇う以上、採用から退職までの一連の管理が対象になります。

定期監督の電話でよくある伝えられ方

  • 〇月〇日に事業場へ伺いたい
  • 指定の日時に労働基準監督署へ来てほしい
  • 賃金台帳と出勤簿を持参してほしい
  • 36協定と就業規則を確認したい
  • 直近数か月分の勤怠資料を準備してほしい

定期監督の電話では、事前に日時を指定されるケースもあれば、会社側の都合を確認しながら調整されるケースもあります。

ここで大切なのは、 定期監督だから軽い調査だと決めつけないこと です。

むしろ、会社の労務管理を見直すよい機会と捉えたほうが、結果的にリスクを抑えやすいかなと思います。

調査前には、まず指定された書類をそろえ、そのうえで賃金台帳、勤怠記録、36協定、就業規則、労働条件通知書に大きなズレがないか確認してください。

調査当日に初めて資料を見て「あれ、これはどう説明しよう」となると、かなり焦ります。

事前準備。

これが一番大事です。

申告監督が疑われる場合

申告監督が疑われる場合

労働者や元従業員から労働基準監督署へ申告があった場合、申告監督として会社に連絡が入ることがあります。

申告内容としては、未払い残業代、長時間労働、休日が取れていない、労働条件通知書が交付されていない、賃金が支払われていない、休憩が取れていない、といった内容が典型です。

退職した従業員からの申告がきっかけになることも少なくありません。

ただし、電話の段階で労働基準監督署が会社に対して、必ずしも申告があったことを明確に伝えるとは限りません。

定期監督のような形で日程調整を行い、実際には特定の申告内容を確認するための調査であることもあります。

ここ、少しややこしいですよね。

実際によくある相談です。

会社側からすると、「誰が言ったのか」「どの件なのか」を知りたくなる気持ちは分かります。

ただ、申告監督が疑われる場面で一番やってはいけないのは、申告者探しや従業員への圧力です。

労働者が労働基準監督署へ申告したことを理由に、不利益な取扱いをすることは法律上問題になります。

会社としては、まず事実確認に集中しましょう。

申告監督では何を確認されるのか

申告監督では、申告された内容に関係する資料を中心に確認されることが多いです。

たとえば、未払い残業代の申告であれば、出勤簿、タイムカード、シフト表、業務日報、賃金台帳、給与明細、雇用契約書、固定残業代の規定などが見られます。

労働時間の申告であれば、実際の出退勤時刻、休憩取得、休日労働、36協定の範囲内かどうかが問題になります。

また、会社側の説明だけでなく、労働者への聞き取りが行われることもあります。

つまり、書類上は整っていても、実態と違っていれば指摘される可能性があります。

たとえば、休憩を1時間取ったことになっているが、実際には電話番をしながら食事をしていた、タイムカードを先に押してから残業していた、管理職扱いだが出退勤や業務内容の裁量がほとんどなかった。

こうした実態面がポイントになることがあります。

申告が疑われる場合に避けたい対応

  • 従業員に対して申告者探しをする
  • 関係者へ口止めをする
  • 勤怠記録や賃金台帳を後から都合よく直す
  • 監督官に事実と異なる説明をする
  • 退職者に感情的な連絡をする
  • 社内で一方的に犯人扱いする

会社側としては、申告者を探すのではなく、勤怠、賃金、契約内容、就業規則、36協定などの事実関係を整理することが先です。

特に、未払い残業代が問題になりそうな場合は、対象者だけでなく、同じ部署や同じ勤務形態の従業員にも同じ問題がないかを確認する必要があります。

1人の申告をきっかけに、会社全体の運用が見直し対象になることもあります。

申告監督の連絡があったときは、正直に言って、会社だけで抱え込むより早めに専門家へ相談したほうが安全なことが多いです。

なぜなら、どの資料をどう確認するか、監督官へどこまで説明するか、是正が必要な場合にどの範囲まで対応するかは、判断を誤ると後から大きな問題になるからです。

焦らず、でも放置しない。

ここが実務のコツです。

是正勧告後の督促電話

過去に是正勧告を受けている会社では、是正報告書の提出期限後に労働基準監督署から電話が来ることがあります。

これは、指摘事項について改善が完了しているか、是正報告書の提出が遅れていないかを確認する連絡です。

電話の内容としては、「提出期限を過ぎていますが、状況はいかがですか」「改善は完了していますか」「報告書はいつ提出できますか」といったものが多いです。

是正勧告は行政指導の一種とされますが、軽く考えてよいものではありません。

期限までに是正報告書を提出しない、監督官からの連絡に応じない、違反状態を放置する、といった対応を続けると、再監督や書類送検のリスクが高まることがあります。

ここは少し厳しめに受け止めたほうがよいですよ。

特に多いのは、未払い残業代、36協定の未届出、就業規則の未作成、労働条件通知書の不備、年次有給休暇管理簿の未整備、健康診断の未実施などです。

是正報告では、単に「今後気をつけます」と書くだけでは不十分です。

何を、いつ、どのように改善したのかを、資料とあわせて説明する必要があります。

督促電話が来たときの優先順位

是正報告書の提出が遅れている場合、まず確認すべきなのは、指摘事項ごとの進捗です。

すでに改善が終わっているもの、まだ資料作成中のもの、対応方法そのものを検討中のものを分けて整理します。

全部終わっていないから何も連絡できない、という考え方は避けたほうがよいです。

進んでいる部分、遅れている理由、提出予定日を伝えるだけでも、対応姿勢はまったく違って見えます。

状況 会社が行うべき対応 監督官へ伝える内容
是正が完了している 報告書と添付資料を整える 提出予定日と添付資料の内容
一部のみ完了している 完了分と未完了分を分ける 未完了の理由と完了予定日
計算や確認に時間がかかる 対象者・対象期間・計算方法を整理する 作業中であることと見込み時期
対応方針が決まらない 専門家へ相談する 確認中であることと回答予定日

是正勧告を受けた後の考え方は、当事務所の 労働基準監督署メールの効果と相談先の選び方を社労士解説 でも、是正報告の実務に触れながら解説しています。

是正報告書は、監督署に提出するためだけの書類ではなく、会社の今後の運用を整えるための記録でもあります。

督促電話が来た時点で、「もう遅い」と考える必要はありません。

ただし、そこからさらに放置するのはよくありません。

対応が遅れているなら遅れている理由を説明し、いつまでに何をするのかを具体的に伝える。

必要であれば、社労士や弁護士に相談しながら、報告内容を整理する。

これが現実的な対応です。

労災や相談照会の電話

労災や相談照会の電話

労働基準監督署からの電話は、調査や是正勧告に限られるわけではありません。

労働災害が発生した場合の確認、労働者死傷病報告に関する照会、労災保険給付に関する事実確認、労働保険や届出に関する事務的な確認として電話が来ることもあります。

つまり、労働基準監督署から電話が来たからといって、必ずしも会社が重大な違反を疑われているとは限りません。

たとえば、従業員が業務中にけがをして休業した場合、労働者死傷病報告の提出が必要になることがあります。

労災保険の請求内容と会社側の説明に確認が必要な場合、労働基準監督署から電話が来ることもあります。

事故の発生状況、業務との関係、休業日数、再発防止策などについて確認されることがあるため、事故当時の記録や関係者の聞き取りメモを残しておくと安心です。

また、労働者が労働基準監督署へ相談した段階で、事業主に対して任意の確認が入る場合もあります。

この場合でも、会社としては感情的に受け止めず、事実確認に徹することが大切です。

相談があったこと自体を問題視するのではなく、実際に法令違反や運用上の不備がないかを確認する姿勢が求められます。

労災関係の電話で確認されやすいこと

労災関係の電話では、事故がいつ、どこで、どのように起きたのかが確認されます。

作業手順、使用していた機械や道具、本人の経験年数、当日の勤務状況、休憩状況、安全教育の有無、防止措置の状況なども関係します。

特に、重傷事故や死亡事故、同じような事故が繰り返されている場合は、より詳しい確認が行われる可能性があります。

労災対応で気をつけたいのは、「会社に責任があると困るから労災ではないことにしたい」といった発想です。

業務上の負傷かどうかは、会社の都合で決めるものではありません。

事実関係を整理し、必要な手続きを進めることが大切です。

ここを誤ると、従業員との信頼関係にも影響しますし、会社の法令遵守にも関わります。

労働基準監督署と労働局、総合労働相談コーナーでは、扱う問題の範囲が少し異なります。

残業代、最低賃金、労災などは労働基準監督署が関わる場面が多く、ハラスメント防止措置や民事的な労働トラブルは労働局や総合労働相談コーナーが関わることもあります。

相談先の違いは、 労働基準監督署と労働局の違いを問題別に社労士が実務解説 も参考になります。

相談照会の電話であっても、会社側の対応は基本的に同じです。

担当者名、要件、対象者、対象期間、必要な資料、回答期限を確認します。

そのうえで、本人の勤務実態や契約内容、賃金支払い状況などを客観的に整理します。

感情ではなく記録で説明する。

労務管理ではこの姿勢が大事かなと思います。

労働基準監督署から電話が来た時の対応

労働基準監督署から電話が来た時の対応

労働基準監督署から電話が来たときは、まず事実確認を行い、必要書類を整え、誠実に対応することが基本です。

会社側の実務では、電話対応そのものよりも、その後の資料準備と社内確認が重要になります。

ここからは、実際の対応手順を具体的に見ていきます。

落ち着いて順番に進めれば、やるべきことは整理できますよ。

無視や拒否を避ける理由

労働基準監督署からの電話を無視したり、調査への協力を拒否したりする対応は避けるべきです。

労働基準監督官には、事業場への臨検、帳簿や書類の提出要求、使用者や労働者への尋問など、法律上の権限があります。

こうした権限については、厚生労働省も労働基準監督官の仕事として説明しています(出典: 厚生労働省「労働基準監督官の仕事」 )。

正当な理由なく調査を拒んだり、帳簿書類の提出をしなかったり、虚偽の記載をした帳簿書類を提出したりすると、罰則の対象となる可能性があります。

もちろん、すべての電話がただちに強制的な調査というわけではありません。

ただ、労働基準監督署からの連絡を「忙しいから後でいいや」と放置するのは、かなり危ない対応です。

もちろん、指定された日時にどうしても対応できないことはあります。

代表者や労務担当者が不在、繁忙期で資料準備が間に合わない、担当者が急病で出社できない、給与計算の締め作業と重なっている。

実務ではいろいろありますよね。

その場合は、無断で放置するのではなく、早めに担当監督官へ連絡し、日程変更を相談してください。

拒否と日程調整はまったく違う

大切なのは、調査を拒否しているのか、正確な資料を準備するために日程調整をお願いしているのかを明確にすることです。

たとえば、「担当者が不在のため対応できません」だけで終わると、受け取り方によっては非協力的に見えるかもしれません。

一方で、「担当者が不在のため、正確な資料説明ができません。

〇日または〇日で再調整いただけますか」と伝えれば、誠実な調整として伝わりやすくなります。

避けるべきなのは、日程変更そのものではなく、連絡しないことです。

労働基準監督署からの連絡を放置すると、会社が非協力的だと受け取られやすくなります。

実務上も、最初の対応が誠実であるほど、その後の説明や資料提出が進めやすくなります。

電話の時点で十分に説明できない場合は、「確認のうえ、折り返しご連絡します」と伝えて構いません。

曖昧な記憶で答えるより、事実を確認してから回答するほうが安全です。

特に、賃金や労働時間に関する質問は、その場の感覚で答えるのではなく、賃金台帳、出勤簿、就業規則、雇用契約書を確認してから答えたほうがよいです。

また、従業員に対して「余計なことを言わないように」と伝えるのも避けてください。

会社として説明したい事情がある場合は、資料や事実を整理して監督官に説明すればよい話です。

従業員の発言をコントロールしようとすると、かえって調査が厳しく見られることもあります。

無視しない、隠さない、事実で説明する。

基本ですが、とても大事です。

調査前に準備する書類

調査前に準備する書類

労働基準監督署の調査では、会社の労務管理が法律に沿って運用されているかを確認するため、複数の書類を求められることがあります。

電話で指定があった場合は、その内容を優先してください。

指定がない場合でも、直近の勤怠、賃金、契約、就業規則、安全衛生関係の資料は確認しておきたいところです。

ここをきちんと準備できるかどうかで、当日の説明のしやすさがかなり変わります。

調査前の資料準備では、ただ書類をファイルに入れるだけではなく、内容の整合性を確認することが大切です。

たとえば、出勤簿では月30時間の残業があるのに、賃金台帳では残業代がゼロになっている。

36協定の有効期間が切れている。

就業規則の労働時間と実際のシフトが合っていない。

労働条件通知書の休日欄と実際の勤務が違う。

こうしたズレがあると、調査で説明を求められます。

分類 主な書類 確認されやすいポイント
労働時間 出勤簿、タイムカード、勤怠システムの記録、シフト表 実労働時間、休憩、休日労働、残業時間、打刻漏れ
賃金 賃金台帳、給与明細、振込記録、残業代計算資料 残業代、深夜割増、休日割増、控除内容、固定残業代
労働条件 労働条件通知書、雇用契約書、雇入れ時の説明資料 労働時間、賃金、休日、契約期間、更新基準
社内規程 就業規則、賃金規程、育児介護休業規程、退職金規程 届出、周知、実態との整合性、改定履歴
協定関係 36協定、変形労働時間制の労使協定、従業員代表選出資料 届出状況、有効期間、上限時間、代表者選出手続き
安全衛生 健康診断個人票、安全衛生委員会議事録、長時間労働者対応記録 健康診断の実施、面接指導、安全衛生管理体制

36協定など、労働基準監督署へ申請または届出する様式については、厚生労働省が主要様式を公開しています。

必要な様式や記載例を確認する際は、一次情報を確認するのが安全です(出典: 厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー」 )。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

資料は提出用と説明用を分ける

実務では、監督署へ提出・提示する資料と、会社側が説明のために使う資料を分けて準備するとスムーズです。

たとえば、タイムカードそのものは提示資料ですが、残業時間を月別に集計した一覧表は説明用資料です。

監督官から質問されたとき、元資料をめくりながらその場で計算するより、事前に整理した一覧があるほうが説明しやすいですよ。

調査前の準備で意識したいこと

  • 指定された書類を最優先でそろえる
  • 対象期間を確認する
  • 勤怠と賃金の数字を照合する
  • 36協定の有効期間と届出控えを確認する
  • 就業規則が実態と合っているか見る
  • 説明が必要な点を事前にメモしておく

保存期間については、法改正や経過措置が関係することがあります。

賃金台帳、労働者名簿、雇入れ・退職関係書類などは、法律上の保存義務がありますが、実務では当面の経過措置も関係します。

特に調査対応では、対象期間を監督官に確認したうえで準備することが大切です。

書類がない場合も、ないままにせず、なぜないのか、代替資料はあるのか、今後どう整備するのかを説明できるようにしましょう。

出勤簿と賃金台帳の確認

労働基準監督署の調査で特に見られやすいのが、出勤簿やタイムカードなどの勤怠記録と、賃金台帳の整合性です。

勤怠上は残業が発生しているのに、賃金台帳では残業代が支払われていない、固定残業代で処理しているが不足分の精算がない、管理監督者として扱っているが実態が伴っていない、といったケースは注意が必要です。

ここは労務管理の急所です。

中小企業では、勤怠システム、手書きの出勤簿、シフト表、給与計算ソフトが別々に管理されていることがあります。

そのため、調査前に資料を集めてみると、数字が合わないことがあります。

これは珍しいことではありません。

ただ、合わないまま提出すると、説明に苦労します。

監督官からすれば、「実際の労働時間を正しく把握しているのか」「賃金を適切に支払っているのか」を確認する必要があるからです。

特に注意したいのは、始業前や終業後の時間です。

制服への着替え、朝礼、清掃、日報作成、閉店後の片付け、引き継ぎ、パソコンの起動やシャットダウンなどが、労働時間に当たるかどうかは実態で判断されます。

会社が「これは自主的にやっているだけ」と考えていても、業務上必要な行為であれば労働時間と評価される可能性があります。

固定残業代は特に説明できる状態にする

固定残業代を導入している会社では、基本給部分と固定残業代部分が明確に区分されているか、何時間分の残業代なのかが分かるか、実際の残業代が固定残業代を超えた場合に差額を支払っているかを確認してください。

固定残業代を払っているから残業代は追加で不要、というわけではありません。

ここは本当に誤解が多いです。

また、管理職だから残業代は不要と考えているケースもありますが、労働基準法上の管理監督者に当たるかどうかは、肩書だけでは判断されません。

職務内容、権限、勤務時間の裁量、待遇などを総合的に見ます。

店長、マネージャー、主任といった肩書があっても、実態によっては残業代の対象になることがあります。

確認すべき実務ポイント

  • タイムカードの打刻時刻と給与計算上の労働時間が一致しているか
  • 休憩時間を実態どおり控除しているか
  • 法定時間外労働と法定休日労働を区別しているか
  • 深夜労働の割増賃金を計算しているか
  • 固定残業代がある場合、不足分を精算しているか
  • 管理監督者扱いの従業員について実態を説明できるか
  • 端数処理が一方的に不利になっていないか

残業代の未払いは、労働基準監督署の指摘事項として多い分野です。

会社としては、単に給与計算の結果だけを見るのではなく、労働時間の把握方法そのものが実態に合っているかを確認する必要があります。

タイムカードを使っていても、実際の労働時間と違う運用になっていれば問題になりますし、自己申告制であっても、会社が実態を確認する仕組みを持っているかが見られます。

調査前には、少なくとも対象期間について、従業員ごとに総労働時間、時間外労働、休日労働、深夜労働、支払済み残業代を一覧にしておくとよいです。

全部を完璧に整理するのは大変かもしれませんが、問題がありそうな部署や勤務形態から優先的に確認するだけでも、当日の説明はかなりしやすくなります。

日程変更を相談する方法

日程変更を相談する方法

労働基準監督署から指定された日時に対応できない場合、日程変更の相談は可能です。

ただし、何となく先延ばしにするのではなく、理由と代替日を明確に伝えることが大切です。

実務では、誠実に連絡すれば日程調整に応じてもらえることもあります。

ここで大事なのは、「対応したくない」のではなく、「正確に対応するために調整したい」という姿勢を伝えることです。

たとえば、社長しか労務関係を把握していない会社で、指定日に社長が出張している場合があります。

また、給与計算担当者が不在、顧問社労士へ資料確認を依頼中、過去資料が倉庫にあり準備に数日かかる、といったこともあります。

こうした事情があるなら、早めに電話で伝えましょう。

ギリギリまで放置してから変更をお願いすると、印象が悪くなりやすいです。

「ご連絡ありがとうございます。

指定いただいた日は労務担当者が不在のため、十分な資料説明が難しい状況です。

恐れ入りますが、〇月〇日または〇月〇日で再調整いただくことは可能でしょうか。

必要書類は事前に確認し、準備しておきます。」

ポイントは、対応を拒むのではなく、より正確に説明するための調整であることを伝えることです。

監督官も、資料が整わないまま形式的に調査を進めるより、必要な資料がそろっている状態で確認したほうがスムーズです。

会社側としても、準備不足のまま当日を迎えるより、短期間でも整理する時間があったほうが安心ですよね。

日程変更をお願いするときの伝え方

日程変更をお願いするときは、まずお詫びを伝え、変更が必要な理由を簡潔に説明し、代替日を複数提示します。

「いつなら大丈夫ですか」と監督官に丸投げするより、会社側から候補日を出したほうが調整しやすくなります。

また、指定された資料の準備状況を伝えると、監督官も判断しやすくなります。

避けたい伝え方 望ましい伝え方
その日は無理です その日は担当者不在のため、〇日または〇日で再調整をお願いできますでしょうか
資料がまだありません 資料確認に数日かかるため、正確に説明できるよう〇日まで準備期間をいただけますでしょうか
忙しいので後にしてください 給与締め処理と重なっているため、翌週の〇日以降で調整いただけますでしょうか

一方で、何度も日程変更を繰り返す、理由を説明しない、折り返しをしないといった対応は避けてください。

会社側にそのつもりがなくても、調査を避けているように見えてしまいます。

どうしても準備が間に合わない場合は、「現時点でそろっている資料」と「後日提出する資料」を分けて伝える方法もあります。

日程変更は、あくまで誠実に対応するための調整です。

変更できるかどうかは相手の判断もありますが、早めに、具体的に、丁寧に伝えることで、無用な誤解を避けやすくなります。

是正報告書の提出対応

調査の結果、法令違反が確認されると、是正勧告書が交付されることがあります。

是正勧告書には、違反内容、根拠条文、是正期日などが記載されます。

会社は、指定された期限までに改善を行い、その内容を是正報告書として提出します。

初めて受け取るとかなり重く感じるかもしれませんが、まずは内容を一つずつ分解して確認しましょう。

是正報告書で大切なのは、形式的に報告書を出すことではなく、実際に改善した事実を示すことです。

未払い残業代であれば、対象者、対象期間、計算方法、支払額、支払日を整理し、必要に応じて振込記録や修正後の賃金台帳を添付します。

36協定の未届出であれば、従業員代表の選出手続き、協定締結日、届出日、今後の管理方法を確認します。

是正報告書は、文章だけで説得するものではありません。

改善の事実を資料で示すものです。

たとえば、「残業代を支払いました」と書くなら、誰に、いくら、いつ、どのような計算で支払ったのかが分かる資料が必要です。

「就業規則を整備しました」と書くなら、改定後の就業規則、従業員代表の意見書、届出控え、周知方法の説明が必要になることがあります。

指摘内容 是正対応の例 添付資料の例
未払い残業代 対象期間を再計算し、不足分を支払う 計算表、賃金台帳、振込明細
36協定未届出 労使協定を締結し、所轄署へ届け出る 36協定届、従業員代表選出資料
就業規則未届出 就業規則を整備し、意見書を添えて届け出る 就業規則、意見書、届出控え
年休管理簿不備 年次有給休暇管理簿を作成し、取得状況を確認する 年休管理簿、取得状況一覧
健康診断未実施 対象者を確認し、健康診断を実施する 受診記録、今後の実施計画

是正報告では再発防止策も重要

是正報告では、過去の違反を直すだけでなく、今後同じことを繰り返さない仕組みを示すことも大切です。

たとえば、36協定の期限切れが原因なら、毎年の更新スケジュールを管理表に入れる、担当者と確認者を分ける、給与計算前に勤怠確認を行う、就業規則改定時は従業員への周知記録を残す、といった方法があります。

未払い残業代の是正では、過去分の支払いだけで終わらせると、翌月からまた同じ問題が起きるかもしれません。

勤怠締めのルール、残業申請の方法、管理職による確認、給与計算時のチェック体制まで見直す必要があります。

せっかく是正するなら、今後の運用まで直したほうが会社のためです。

是正報告書を作るときの流れ

  • 是正勧告書の指摘事項を一つずつ確認する
  • 根拠となる資料を集める
  • 過去分の不足や不備を確認する
  • 改善方法を決める
  • 改善した事実を資料で示す
  • 再発防止策を整理する
  • 期限までに提出する

期限までに是正が完了しない場合でも、放置してはいけません。

事情を整理し、いつまでに何ができるのかを監督官へ相談してください。

できない理由を説明するだけでなく、改善予定を具体的に示すこと が重要です。

計算に時間がかかる、対象者が多い、過去資料の確認が必要、従業員代表の選出に時間が必要など、事情があるなら早めに説明しましょう。

是正報告書は、会社の信用にも関わる書類です。

場当たり的に作るのではなく、今後の労務管理を整えるための区切りとして取り組むのがよいかなと思います。

社労士や弁護士への相談

社労士や弁護士への相談

労働基準監督署から電話があっただけで、必ず専門家へ依頼しなければならないわけではありません。

ただし、申告監督が疑われる場合、未払い残業代が大きい場合、36協定や就業規則に不備がある場合、是正勧告の内容が複雑な場合は、早めに専門家へ相談したほうがよいことがあります。

特に、初めて労基署対応をする会社では、どこから手をつければよいか分からないことが多いですよね。

社労士は、労働時間管理、賃金台帳、就業規則、36協定、労働条件通知書、年休管理など、日常の労務管理と行政対応の整理を支援します。

具体的には、調査前の書類確認、監督官から指定された資料の整理、是正勧告書の読み解き、是正報告書の作成支援、今後の運用改善などが中心です。

会社の実務に落とし込む部分。

ここが社労士の得意分野です。

一方で、すでに労使間で法的紛争が顕在化している場合、損害賠償請求や訴訟対応が想定される場合、代理交渉が必要な場合は、弁護士への相談が必要になることがあります。

社労士と弁護士は役割が違います。

どちらに相談すべきか迷う場合は、現在の状況が「労務管理の整備」なのか「法的紛争への対応」なのかで考えると整理しやすいです。

相談前に整理しておくとよい情報

専門家へ相談するときは、電話の内容、監督官の氏名、指定された資料、調査日、対象期間、心当たりのある問題、過去の是正勧告の有無を整理しておくとスムーズです。

相談の場で一から思い出しながら話すより、メモや資料があるほうが具体的な助言につながります。

相談を検討したい場面

  • 労働者から未払い残業代の請求が出ている
  • 過去数年分の勤怠と賃金を確認する必要がある
  • 固定残業代や管理監督者の扱いに不安がある
  • 是正勧告書の内容をどう直せばよいか分からない
  • 監督官への説明資料を整理したい
  • 労働者とのトラブルに発展しそう
  • 就業規則や36協定の内容に不備がある

また、相談は早いほうが選択肢が多いです。

調査が終わって是正勧告が出てから相談するより、電話が来た段階で資料を確認したほうが、事前に問題点を把握できます。

未払い残業代がありそうな場合も、調査当日に初めて判明するより、事前に概算をつかんでおいたほうが、会社としての対応方針を考えやすくなります。

労務問題は、会社の規模、業種、勤務実態、雇用契約の内容によって判断が変わります。

一般論だけで対応すると、かえって問題を大きくすることがあります。

最終的な判断は専門家にご相談ください

専門家に相談することは、責任逃れではありません。

会社と従業員の双方にとって、適切な落としどころを探すための実務対応です。

労働基準監督署から電話のまとめ

労働基準監督署から電話が来たときは、まず担当監督官の氏名、連絡先、目的、日時、準備書類を確認してください。

電話の理由は、定期監督、申告監督、是正勧告後の督促、労災関係、相談照会などさまざまです。

最初から悪い方向に決めつける必要はありませんが、軽く考えて放置するのも危険です。

まずは落ち着いて、情報を整理するところからです。

会社側の実務では、勤怠記録と賃金台帳の整合性、36協定の届出状況、就業規則や労働条件通知書の整備、年次有給休暇や安全衛生関係の資料を確認することが重要です。

特に、未払い残業代や長時間労働は指摘につながりやすいため、普段から管理しておきたいところです。

調査が来てから整えるより、日常的に整えておくほうが圧倒的に楽ですよ。

また、従業員側にとっても、労働基準監督署は未払い賃金、長時間労働、労災などを相談できる窓口です。

会社としては、労働者の相談や申告を敵対的に捉えるのではなく、労務管理を見直すきっかけとして受け止めることが、結果的にリスクを抑える対応になります。

会社を守るということは、従業員の権利を無視することではありません。

法令に沿った運用を整えることです。

電話が来たらこの順番で対応

労働基準監督署から電話が来たときの基本手順

  • 担当監督官の氏名と連絡先を確認する
  • 電話の目的を確認する
  • 調査日時と場所を確認する
  • 準備書類と対象期間を確認する
  • 社内の担当者を決める
  • 勤怠と賃金を照合する
  • 必要に応じて専門家へ相談する
  • 期限があるものは早めに対応する

労働基準監督署から電話があった場合は、落ち着いて事実を確認し、必要書類を整え、誠実に対応することが基本です。

制度や窓口、様式、保存期間、相談先などは変更される可能性があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

特に、法令や行政の取扱いに関する情報は、古い情報をそのまま使わないように注意しましょう。

最後にもう一度まとめると、労働基準監督署から電話が来たときの対応は、初動で大きく変わります。

無視せず、慌てず、事実と資料を整理すること。

分からない点を曖昧にしたまま進めないこと。

必要な場面では専門家に相談すること。

これが、会社と従業員の双方にとって納得感のある労務管理につながります。

突然の電話は確かに緊張します。

でも、やるべきことを順番に整理すれば対応できます。

労務管理は、トラブルが起きてから慌てるより、日頃から少しずつ整えておくのが一番です。

労働基準監督署から電話が来たことを、会社の運用を見直すきっかけにしていきましょう。

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