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産休とは?期間・条件・手当・会社手続きをまとめて整理

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

産休とは、労働基準法に定められた産前産後休業の通称です。

出産前の産前休業と、出産後の産後休業を合わせた制度で、妊娠・出産による女性労働者の身体的な負担を軽減することを目的としています。

妊娠が分かると、いつから休めるのか、産休中の給料はどうなるのか、会社へ何を伝えればよいのかなど、確認したいことが一気に増えます。

産休と育休を同じ制度だと思っている方も少なくありませんが、法律上は明確に区別されています。

この記事では、初めて制度を調べる方にも分かるように、産休の期間、対象者、出産手当金、社会保険料の免除、会社で必要になる手続きまで、全体像を実務目線で整理します。

  • 産休を取得できる期間と基本的な仕組み
  • 産休を取得できる人と雇用形態による違い
  • 産休中の給料や出産手当金の考え方
  • 従業員と会社が行う手続きの流れ

産休とは?期間・条件・手当・手続きを解説

産休の基本と取得できる条件

まずは、産休がどのような制度で、誰がいつからいつまで取得できるのかを確認します。

特に重要なのは、産前休業と産後休業では、休業の開始方法や就業できる条件が異なる点です。

会社員として働いている方はもちろん、人事労務担当者も、最初にこの基本構造を理解しておくと、その後の手当や社会保険の手続きが整理しやすくなります。

産休とは何かをわかりやすく解説

産休とは、正式には 産前産後休業 といい、労働基準法第65条に定められている休業制度です。

妊娠中の女性労働者が取得する産前休業と、出産後の女性労働者に適用される産後休業の2つで構成されています。

産休は、会社が福利厚生として任意に設ける特別休暇ではありません。

法律が定める母性保護制度であり、会社の規模、業種、就業規則の記載内容、過去の取得実績などにかかわらず適用されます。

たとえば、従業員が数名しかいない会社で、これまで産休を取得した人が一人もいなかったとしても、それを理由に取得を拒むことはできません。

産休は会社が独自に認める休暇ではありません。

就業規則に規定がない、前例がない、代替要員を確保できないといった会社側の事情によって、法律上の産前産後休業を取得できなくなるものではありません。

ここで押さえておきたいのは、産休が単なる休暇ではなく、 女性労働者を就業させてはならない期間を含む制度 だという点です。

特に産後休業は、本人が働きたいと希望していたとしても、会社が自由に就業を認められるわけではありません。

通常の有給休暇や会社独自の休職制度とは、法的な性質が大きく異なります。

産休の主な目的は、妊娠中と出産後の母体を保護することです。

出産は身体への負担が大きく、出産前後には一定の休養期間が必要になります。

そのため、子どもの養育を主な目的とする育児休業とは、根拠法も対象者も取得時期も異なります。

日常的には産休・育休と一続きに呼ばれることが多いのですが、実務では別々の制度として管理しなければなりません。

産休以外にも利用できる母性保護制度

妊娠中の女性労働者に関する制度は、産前産後休業だけではありません。

医師から指導を受けた場合の勤務時間の短縮や休憩、通勤緩和、妊婦健診のための時間確保、軽易な業務への転換など、妊娠中の健康状態に応じて利用できる仕組みがあります。

たとえば、立ち仕事や重量物の取扱いが多い職場では、妊娠を報告した後に業務内容を調整することがあります。

つわりや切迫早産などにより通常勤務が難しい場合は、産前休業の開始時期まで無理に通常勤務を続けるのではなく、医師の指導内容を会社へ伝え、勤務時間や業務の調整を相談することが重要です。

産休開始前でも会社へ相談できます。

妊娠中の体調に応じた就業上の措置は、産前休業が始まる6週間前よりも前から利用できる場合があります。

母性健康管理指導事項連絡カードなどを活用し、医師の指導内容を会社へ正確に伝える方法もあります。

会社が労働基準法第65条の就業制限に違反した場合には、同法第119条により罰則の対象となる可能性があります。

実務上は、会社側が制度を知らなかった、本人も働くことを希望していたという事情だけで、法令違反の問題がなくなるわけではありません。

産前産後休業の期間や法的な取扱いは、労働基準法第65条に明記されています。

制度の根拠を確認したい方は、 e-Gov法令検索「労働基準法」 をご確認ください。

産休はいつからいつまで取れるか

産休はいつからいつまで取れるか

産休を取得できる期間は、原則として次のとおりです。

産前休業と産後休業では、日数の数え方だけでなく、本人からの請求が必要かどうかも異なります。

区分 取得できる期間 基本的な取扱い
産前休業 出産予定日の6週間前から出産日まで 本人が請求した場合に取得
多胎妊娠の産前休業 出産予定日の14週間前から出産日まで 本人が請求した場合に取得
産後休業 出産日の翌日から8週間 原則として就業禁止

単胎妊娠の場合、産前休業を取得できるのは出産予定日の6週間前からです。

双子や三つ子などの多胎妊娠の場合は、母体への負担を考慮して14週間前から取得できます。

この期間は、法律上、本人が産前休業を請求できる最も早い時期です。

ただし、出産予定日の6週間前になったら、すべての方が自動的に仕事を休まなければならないわけではありません。

産前休業は本人からの請求によって始まります。

そのため、体調に問題がなく、本人が勤務を希望している場合は、出産予定日の4週間前や2週間前まで働くことも可能です。

反対に、産前6週間より前から体調が悪化し、仕事を休む必要が生じることもあります。

この場合、法律上の産前休業として休めるわけではありませんが、医師の診断に基づく病気休暇、会社の休職制度、年次有給休暇、傷病手当金などを利用できる可能性があります。

産前休業の開始前だから休めない、と単純に考えないことが大切です。

出産予定日より遅れて出産した場合

出産予定日を過ぎても出産に至らない場合、予定日から実際の出産日までの期間も産前休業に含まれます。

たとえば、出産予定日より5日遅れて出産した場合、その5日間によって産後休業が短くなるわけではありません。

実際の出産日の翌日から、改めて8週間の産後休業が始まります。

予定日を過ぎた日数だけ、産前の休業期間が長くなります。

産後休業は実際の出産日の翌日から8週間となるため、予定日を過ぎて出産しても、産後の休業期間が削られることはありません。

出産予定日より早く出産した場合

出産予定日より早く出産した場合は、実際の出産日をもって産前休業が終了します。

そして、実際の出産日の翌日から産後休業が始まります。

予定日を基準に予定していた産前休業の残りの日数を、産後に付け加えることはできません。

たとえば、出産予定日の6週間前から産前休業に入り、予定日より2週間早く出産した場合、実際の産前休業は4週間程度になります。

その後は出産日の翌日から8週間の産後休業となります。

出産日は産前と産後のどちらに含まれるか

日数を数える際に迷いやすいのが、出産日そのものの扱いです。

出産日は産前休業に含まれ、産後休業は出産日の翌日から始まります。

この区分は、勤怠管理、社会保険料免除の届出、出産手当金の申請期間を確認するときに重要です。

予定日と実際の出産日が異なる場合は、会社へ必ず出産日を報告しましょう。

実際の出産日が分からないままでは、産後休業の終了日、育児休業の開始日、社会保険料免除の期間などを正しく計算できません。

具体的な日付の数え方については、 産休を出産予定日から計算する方法 で詳しく解説しています。

出産予定日を起点に、自分の産前休業開始日と産後休業終了日を確認しておくと、会社との打合せや引継ぎの予定を立てやすくなります。

産前休業と産後休業の違い

産前休業と産後休業は、まとめて産休と呼ばれていますが、法律上の性質は同じではありません。

最も大きな違いは、 産前休業は本人の請求によって取得する制度であるのに対し、産後休業は原則として会社が就業させてはならない期間である という点です。

産前休業は本人の請求によって始まる

産前休業は、出産予定日の6週間前、多胎妊娠の場合は14週間前から、本人が会社へ請求することで取得できます。

法律上は請求制であるため、該当する時期になっただけで自動的に休業へ切り替わるわけではありません。

会社によっては、産休申出書や休業申請書などの社内様式が用意されています。

法律上、必ず特定の書式で申し出なければならないわけではありませんが、開始希望日や出産予定日を後から確認できるよう、書面や社内システムで記録を残すことが望ましいでしょう。

産前休業を取得しないことも可能ですが、妊娠後期は体調が変化しやすく、通勤や長時間勤務の負担も大きくなります。

本人が働きたいと希望している場合でも、会社は健康状態を確認し、必要に応じて業務量や勤務時間を調整することが大切です。

産後休業は本人の希望だけでは働けない

産後休業は、出産日の翌日から原則として8週間です。

この期間は、本人から休業の請求があるかどうかにかかわらず、会社が女性労働者を就業させてはなりません。

実務でよくあるのが、本人から「体調が戻ったので早く復職したい」「在宅勤務ならできる」と相談されるケースです。

しかし、産後6週間を経過するまでは、本人が希望していても就業できません。

在宅勤務や短時間勤務であっても、会社の指揮命令を受けて仕事をすれば就業に該当します。

産後6週間は、本人の希望があっても就業できません。

産後6週間を経過した後であれば、本人が就業を請求し、医師が支障ないと認めた業務に限り、産後8週間を待たずに就業できる場合があります。

産後6週間経過後の早期復職

産後6週間を経過した後は、一定の条件を満たせば、産後8週間が終了する前に復職できる場合があります。

必要なのは、本人から就業の請求があることと、医師が支障ないと認めた業務であることです。

会社が人手不足だからという理由で復職を促したり、本人が口頭で大丈夫と言っただけで就業させたりすることは適切ではありません。

医師がどの業務について支障がないと判断したのかを確認し、その範囲内で業務を設定する必要があります。

たとえば、医師が身体的負担の少ない事務作業であれば就業可能と判断した場合でも、長時間の立ち仕事や重量物の運搬まで認められたことにはなりません。

会社側は、本人の申出と医師の判断を記録として残しておくことが望ましいです。

流産や死産の場合の取扱い

労働基準法上の産後休業における出産には、妊娠4か月以上の分娩が含まれ、一定の流産や死産も対象になります。

子どもが生まれて育児をするかどうかではなく、出産による母体への負担を考慮した制度だからです。

この点は、産休と育休の目的の違いをよく表しています。

産後休業は母体保護が目的であるため、育児をする状況にない場合でも適用される可能性があります。

一方、育児休業は子どもの養育を目的とするため、同じ取扱いになるとは限りません。

産前と産後を分けて管理することが重要です。

勤怠上は一続きの休業に見えても、産前は請求制、産後は原則就業禁止という違いがあります。

会社が休業開始日や復職日を判断するときは、両者を明確に区別しましょう。

実務では、本人も会社も産休という一つの制度として捉え、産前と産後の違いを意識していないことがあります。

しかし、この違いを理解していないと、産前休業の申出漏れや産後の違法な早期復職につながるおそれがあります。

特に小規模事業所では初めて対応することも多いため、予定日、実際の出産日、産後6週間経過日、産後8週間終了日をそれぞれ確認して管理することが大切です。

産休の対象者と取得条件

産休は、会社と雇用関係にある女性労働者であれば、原則として雇用形態や勤続年数にかかわらず取得できます。

正社員だけを対象とする制度ではなく、契約社員、派遣社員、パートタイマー、アルバイトなども対象です。

  • 正社員
  • 契約社員
  • 有期雇用労働者
  • 派遣社員
  • パートタイマー
  • アルバイト

育児休業では、有期雇用契約の終了予定や労使協定による除外などが問題になることがありますが、産前産後休業には勤続年数の条件がありません。

そのため、入社から数日、数週間、数か月しか経過していない場合でも、女性労働者である以上は対象になります。

たとえば、採用時点ですでに妊娠していた場合や、入社直後に妊娠が判明した場合でも、勤続1年未満という理由で産休を取得できなくなることはありません。

採用時によく確認されるポイントですが、産休の取得可否と育児休業の取得要件は分けて考える必要があります。

勤務日数や労働時間は問われない

週1日や週2日だけ勤務する短時間労働者であっても、会社との間に労働契約があり、労働者として働いているのであれば産前産後休業の対象です。

社会保険や雇用保険に加入していないことだけを理由に、産休の取得を拒むこともできません。

ここで混同しやすいのが、休業を取得する権利と、休業中に給付を受ける権利です。

産休は労働基準法上の制度であり、健康保険の加入状況を問わず取得できます。

一方、出産手当金は健康保険の制度であるため、勤務先の健康保険の被保険者本人であることなど、別の要件があります。

産休の取得条件と、出産手当金の支給条件は別です。

社会保険に加入していないパートでも産休は取得できます。

ただし、勤務先の健康保険に加入していなければ、原則として勤務先の健康保険から出産手当金は支給されません。

有期契約の場合は契約終了日を確認する

契約社員やパートなどの有期雇用労働者も産休を取得できます。

ただし、産休を取得したことによって、本来予定されていた契約終了日が自動的に延長されるわけではありません。

たとえば、契約期間が9月30日までで、産休期間中に契約満了日を迎える場合、契約更新がなければ雇用関係は9月30日で終了する可能性があります。

会社は産休を取得したことを理由として不利益に雇止めをしてはいけませんが、更新の約束がなく、従来からの更新判断に基づいて契約が終了するケースまで、必ず更新しなければならないとは限りません。

有期契約の場合は、契約書、更新回数、これまでの更新実績、更新判断の基準、会社からの説明内容を確認する必要があります。

産休を取得できるかという問題と、契約がいつまで継続するかという問題は、切り分けて整理しましょう。

派遣社員は派遣元へ申し出る

派遣社員の場合、雇用主は勤務先である派遣先ではなく、派遣会社である派遣元です。

そのため、産前休業の申出、社会保険料免除の届出、出産手当金の事業主証明などは、原則として派遣元を通じて行います。

一方、実際の業務の引継ぎや勤務上の配慮については、派遣先との調整も必要です。

まずは派遣元の担当者へ妊娠と出産予定日を報告し、派遣先への情報共有の範囲やタイミングを相談するとよいでしょう。

個人事業主や会社役員は原則対象外

個人事業主やフリーランスは、会社に雇用される労働者ではないため、労働基準法上の産前産後休業の対象ではありません。

自分の判断で事業を休むことはできますが、雇用されている労働者と同じ意味で会社に産休を請求する制度ではありません。

会社役員も、原則として労働基準法上の労働者ではないため、通常は産休の対象外です。

ただし、役員という肩書があっても、実際には会社の指揮命令を受け、一般従業員と同様に働き、労働の対価として賃金を受けている場合には、労働者性が認められる可能性があります。

肩書だけで対象者かどうかを判断しないでください。

兼務役員などは、業務内容、勤務時間の拘束、報酬の性質、指揮命令関係などを踏まえて個別に判断する必要があります。

最終的な判断は専門家にご相談ください。

なお、産休取得を理由とする解雇や不利益な取扱いは法的な問題になる可能性があります。

会社側は、本人の妊娠や休業によって人員配置に負担が生じる場合でも、それを理由に退職を促したり、合理的な理由なく契約更新を拒否したりしないよう注意が必要です。

パートやアルバイトも産休を取れる

パートやアルバイトも産休を取れる

パートやアルバイトでも、会社と雇用関係にある女性労働者であれば産休を取得できます。

勤務日数が少ない、1日の勤務時間が短い、扶養の範囲内で働いている、社会保険に加入していない、入社から間もないといった事情は、産休そのものを取得できない理由にはなりません。

実際によくある相談が、会社から「パートには産休制度がない」「勤続1年以上の従業員しか休めない」「社会保険に入っていないので産休はない」と説明されたというものです。

しかし、これらは産休と育児休業、出産手当金、会社独自の休職制度を混同している可能性があります。

パートの産休は、次の3つを分けて考えます。

  • 労働基準法上の産休を取得できるか
  • 健康保険から出産手当金を受けられるか
  • 産後休業後に育児休業を取得できるか

社会保険に入っていなくても産休は取得できる

産前産後休業は、社会保険の被保険者だけを対象とする制度ではありません。

勤務先の健康保険や厚生年金保険に加入していない短時間パートであっても、労働者であれば産休を取得できます。

ただし、社会保険に加入していない場合、勤務先の健康保険から出産手当金を受けることは原則としてできません。

また、健康保険料や厚生年金保険料を負担していないため、会社員向けの産前産後休業期間中の社会保険料免除も対象になりません。

つまり、休むことはできても、休業中の収入を補う給付が受けられるとは限らないということです。

産休へ入る前に、給与がいつまで支給されるのか、出産手当金の対象になるのか、住民税や生活費をどのように準備するのかを確認しておきましょう。

扶養に入っているパートの出産手当金

配偶者の健康保険の被扶養者になっている方は、自分自身が勤務先の健康保険の被保険者ではありません。

そのため、原則として出産手当金の対象外です。

出産に関する給付には、出産育児一時金と出産手当金があります。

名称が似ていますが、制度の目的は異なります。

出産育児一時金は出産費用の負担軽減を目的とする給付で、被扶養者の出産でも対象になり得ます。

一方、出産手当金は、被保険者本人が出産のため仕事を休み、給与を受けられない期間の所得を補う制度です。

扶養に入っている方が出産育児一時金を受けられても、出産手当金を受けられるとは限りません。

制度名を混同しやすいため、加入している健康保険へ、自分が被保険者本人なのか被扶養者なのかを確認しましょう。

有給休暇を利用してから産休へ入る場合

パートやアルバイトでも、年次有給休暇の要件を満たしていれば有給休暇を取得できます。

産前休業の開始可能日より前に体調不良で休む場合や、法定の産前休業へ入る前から休みたい場合に、有給休暇を利用することがあります。

また、産前休業を取得できる期間に入ってから、本人の希望で有給休暇を利用するケースもあります。

ただし、有給休暇として給与が支払われた日は、出産手当金の支給額に影響する可能性があります。

どちらが有利かは、賃金額、有給休暇の残日数、出産手当金の日額などによって異なります。

有給休暇を使い切ってから産休に入るのが必ず得とは限りません。

有給休暇を復職後の子どもの通院や看護に残しておきたい方もいるでしょう。

生活設計や復職後の働き方まで考えて判断することをおすすめします。

パートでも会社へ早めに相談する

法律上、妊娠を報告する具体的な期限は決められていません。

しかし、シフト制の職場では、産休開始時期が分からないと、その後の人員配置や勤務表を作成できません。

体調が安定し、会社へ伝えられる状況になった段階で、出産予定日と休業の希望を相談すると実務がスムーズです。

会社側も、正社員とパートで産休の取扱いを分けるのではなく、申出書、引継ぎ、社会保険手続き、出産手当金の案内を統一しておくとよいでしょう。

特に店長や現場責任者だけで判断すると誤った説明になりやすいため、人事担当者や社会保険労務士へ確認できる体制が重要です。

パートの取得条件や手当については、 パートが産休を取得する条件と給付 でも詳しく整理しています。

男性は産休を取得できるのか

労働基準法上の産休は、妊娠・出産する女性労働者の母体保護を目的とする制度です。

そのため、男性は産前産後休業を取得できません。

男性が配偶者の出産に伴って仕事を休む場合は、育児休業、産後パパ育休、年次有給休暇、会社独自の配偶者出産休暇などを利用します。

日常会話や企業の広報では、男性の産休という表現が使われることがあります。

しかし、法律上の制度名として男性の産休があるわけではありません。

制度名を正確に区別しないと、取得できる期間や申出期限、給付金、社会保険料免除の要件を誤って案内するおそれがあります。

制度 主な対象者 主な目的 主な特徴
産前産後休業 妊娠・出産する女性労働者 出産前後の母体保護 産前6週間・産後8週間が基本
育児休業 一定の要件を満たす男女労働者 子どもの養育 原則として子が1歳になるまで
産後パパ育休 出生後の子を養育する労働者 出生直後の育児参加 子の出生後8週間以内に取得
配偶者出産休暇 会社が定める対象従業員 出産の付き添いや各種対応 日数や有給・無給は会社規程による

男性が利用できる産後パパ育休

産後パパ育休の正式名称は出生時育児休業です。

子どもの出生後8週間以内に、原則として4週間まで取得できる制度で、通常の育児休業とは別に取得できます。

配偶者が産後休業を取得している期間に男性が産後パパ育休を取得すれば、出生直後から夫婦で育児を分担できます。

出産後の退院、出生届などの行政手続き、上の子どもの世話、家事の対応など、出生直後は家庭内の負担が大きくなるため、制度を利用する意義は大きいでしょう。

ただし、産後パパ育休には申出期限や分割取得のルールがあります。

会社の労使協定や就業規則によって必要な手続きが定められていることもあるため、出産予定日が分かった段階で早めに確認することが重要です。

会社独自の配偶者出産休暇

会社によっては、配偶者の出産時に1日から数日程度の特別休暇を取得できる制度があります。

これは法律上すべての会社に義務付けられた休暇ではなく、就業規則などに基づく会社独自の制度です。

有給扱いになるか、無給扱いになるか、出産当日だけ利用できるか、入院や退院の日にも使えるかは会社によって異なります。

育児休業や産後パパ育休と組み合わせて利用できることもあるため、就業規則を確認しましょう。

短期の休暇と長期の休業を組み合わせる方法もあります。

出産当日は配偶者出産休暇、その後は年次有給休暇、退院後に産後パパ育休を取得するなど、家庭の状況に合わせて組み合わせることが考えられます。

男性の育児休業中の給付

男性が雇用保険の要件を満たして育児休業や産後パパ育休を取得した場合、出生時育児休業給付金や育児休業給付金の対象になる可能性があります。

産休中の女性に支給される出産手当金とは、支給元も要件も異なります。

また、所定の要件を満たして会社が届出を行えば、育児休業期間中の健康保険料と厚生年金保険料が免除されることがあります。

ただし、短期間の育児休業については、月末を含むか、同一月内に一定日数以上取得しているかなど、免除判定のルールを確認する必要があります。

男性が休む場合も、単に会社へ休みたいと伝えるだけでは手続きが完了しません。

利用する制度を特定し、申出日、休業期間、給付金申請、社会保険料免除をそれぞれ確認しましょう。

会社側も、男性の産休という曖昧な表現のまま処理せず、どの制度を利用するのかを本人と確認することが大切です。

産休中のお金と必要な手続き

産休を取得する際に、多くの方が心配するのがお金と手続きです。

産休中の給与は法律上当然に支払われるものではありませんが、健康保険の出産手当金や社会保険料免除など、一定の経済的支援があります。

給与、健康保険の給付、社会保険料、税金をそれぞれ分けて確認すると、産休中の収支を把握しやすくなります。

産休と育休の違いを整理

産休と育休は、どちらも出産や子育てに伴って仕事を休む制度ですが、目的、根拠法、対象者、取得できる期間、受けられる給付が異なります。

女性が出産後も継続して休む場合、見た目には長期間連続して休業しますが、途中で産後休業から育児休業へ制度が切り替わります。

比較項目 産休 育休
正式名称 産前産後休業 育児休業
根拠法 労働基準法 育児・介護休業法
目的 妊娠・出産する女性の母体保護 子どもの養育
主な対象者 妊娠・出産する女性労働者 一定の要件を満たす男女労働者
主な期間 産前6週間、産後8週間 原則として子が1歳になるまで
主な給付 出産手当金 育児休業給付金など
主な申請先 健康保険 雇用保険

産休は母体保護、育休は子どもの養育

産休は、妊娠・出産する女性の身体を保護するための制度です。

そのため、男性は取得できず、一定の流産や死産の場合にも産後休業が適用される可能性があります。

育児休業は、子どもを養育するための制度です。

女性だけでなく男性も取得でき、母親が専業主婦である場合などでも、一定の要件を満たせば父親が取得できます。

この目的の違いにより、根拠となる法律も異なります。

産休は労働基準法、育児休業は育児・介護休業法に基づく制度です。

会社の就業規則でも、産前産後休業と育児休業を別の条文や別規程で定めていることが一般的です。

産後休業から育児休業へ切り替わる日

女性が出産後も引き続き休む場合、原則として産後休業が終了した翌日から育児休業が始まります。

産後休業の終了日は、実際の出産日の翌日から8週間を数えて判断します。

出産予定日より実際の出産日が前後した場合、育児休業の開始予定日も変わる可能性があります。

会社側は、出産前に予定日を基に仮の日程を作成し、出産後に実際の出産日を確認して確定させるとよいでしょう。

産休から育休へは自動的に切り替わりません。

育児休業を希望する場合は、育児・介護休業法や会社の規程に基づく申出が必要です。

出産前に申出手続きや提出期限を確認しておきましょう。

産休と育休では給付金が異なる

産休中の所得補償として中心になるのは、健康保険から支給される出産手当金です。

一方、育児休業中の所得補償として中心になるのは、雇用保険から支給される育児休業給付金です。

健康保険に加入していても雇用保険に加入していない場合や、雇用保険の被保険者期間が不足している場合は、出産手当金を受けられても育児休業給付金を受けられないことがあります。

反対に、退職時期や健康保険の加入状況によっては、両方の要件を個別に確認しなければなりません。

会社の給与担当者に産休中はいくらもらえるかと尋ねても、健康保険と雇用保険の加入記録、標準報酬月額、賃金支払状況などを確認しなければ正確な金額は計算できません。

給付制度ごとに支給元と計算方法を確認しましょう。

産休と育休では対象条件も異なる

産休には勤続年数の要件がなく、雇用形態を問わず女性労働者が対象です。

育児休業については、有期雇用労働者の場合、子が一定の年齢に達するまでに労働契約が終了することが明らかでないことなど、一定の要件があります。

また、会社が労使協定を締結している場合、継続雇用期間が1年未満の従業員や、申出から一定期間内に雇用関係が終了することが明らかな従業員などが育児休業の対象外となる可能性があります。

産休を取得できることと、育休を取得できることは同じではありません。

特に有期契約の方や入社して間もない方は、雇用契約の終了予定と会社の労使協定を早めに確認しましょう。

育児休業制度は法改正が比較的多い分野です。

出生後休業支援給付などの関連制度も含め、利用時点の要件を確認する必要があります。

勤務先の規程が古い内容のままになっているケースもあるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。

産休中の給料はどうなるか

産休中の給料はどうなるか

産休中の給料を会社が支払うことは、法律上義務付けられていません。

労働基準法は産前産後休業を取得する権利や就業制限を定めていますが、休業期間を有給にしなければならないとは定めていないためです。

そのため、就業規則や賃金規程に有給扱いとする定めがなければ、産休期間中は無給になる会社が一般的です。

月給制の正社員であっても、産休中に毎月の基本給が当然に支給されるわけではありません。

産休に入る月の給与

月の途中から産前休業へ入る場合、産休開始日前までの勤務分について給与が支給されます。

月給からどのように控除するかは、会社の賃金規程や欠勤控除の計算方法によって異なります。

たとえば、暦日数で日割りする会社、月平均所定労働日数で日割りする会社、欠勤した所定労働日数に応じて控除する会社などがあります。

給与の締日と支給日によっては、産休へ入った後に通常に近い給与が一度振り込まれ、翌月から大きく減ることもあります。

銀行口座への入金額だけを見て産休中も給与が出ると判断せず、何月分の給与なのか、欠勤控除はいつ反映されるのかを確認しましょう。

会社独自の有給制度や手当

会社によっては、産前産後休業の一部を有給にしたり、出産祝い金や休業補償を支給したりする場合があります。

このような制度は法律で一律に義務付けられているものではなく、就業規則、賃金規程、福利厚生規程、健康保険組合の規約などによって内容が異なります。

公務員や一部の企業では、産前産後休業中も一定の給与が支給されることがありますが、民間企業のすべてに共通する取扱いではありません。

勤務先の規程を確認し、不明な点は給与担当者へ質問してください。

産休中の収入と負担は、次の項目を分けて確認します。

  • 会社から支給される給与や独自手当
  • 健康保険から支給される出産手当金
  • 健康保険料と厚生年金保険料の免除
  • 住民税の支払方法
  • 財形貯蓄や社宅費などの会社控除

給与が支給されると出産手当金に影響する

産休中に会社から給与が支払われる場合、出産手当金が全額支給されるとは限りません。

給与の日額が出産手当金の日額以上であれば、その日の出産手当金は原則として支給されません。

給与の日額が出産手当金の日額より少なければ、差額が支給される場合があります。

有給休暇を取得した日も賃金が支払われるため、出産手当金との調整対象になります。

賞与、通勤手当、住宅手当などが休業中に支給された場合の取扱いは、支給の性質や対象期間によって判断が変わる可能性があります。

会社側は、出産手当金支給申請書の事業主証明欄に、出勤状況や賃金支払状況を正確に記載しなければなりません。

給与の一部支給がある場合は、賃金台帳や出勤簿との整合性を確認しましょう。

住民税は原則として支払いが続く

住民税は前年の所得に対して課税されるため、産休へ入り、その年の給与が減少しても、すぐに納付額がなくなるわけではありません。

給与が支給されない期間は、給与天引きである特別徴収を続けられなくなる場合があります。

会社によっては、産休前の給与や賞与から将来分をまとめて控除する、休業中に本人から会社へ振り込んでもらう、自治体の納付書で支払う普通徴収へ切り替えるといった方法を取ります。

社会保険料が免除されても、住民税は自動的に免除されません。

休業開始後に納付書が届いて慌てることがないよう、会社へ住民税の支払方法を確認しておきましょう。

所得税や年末調整への影響

所得税は、その年に支給された課税給与などに応じて計算されます。

産休中に給与が支給されなければ、その期間の給与に対する源泉所得税も通常は発生しません。

出産手当金は、一般に所得税の課税対象となる給与ではありません。

ただし、会社独自の手当や給与として支給される金銭は課税対象になる可能性があります。

年の途中から産休へ入り、給与収入が減少した場合、年末調整で所得税が還付されることがあります。

また、医療費の自己負担が大きい場合は、医療費控除の対象になる可能性もあります。

税務上の取扱いは個別事情によって異なるため、税務署や税理士へ確認してください。

産休前に生活費を試算する

産休中の家計を考えるときは、毎月の給料がそのまま3分の2になると単純に考えない方がよいでしょう。

出産手当金は標準報酬月額を基に計算され、給与の締日どおり毎月支給されるとは限りません。

申請してから実際に入金されるまで時間がかかることもあります。

産休前に、最後の給与支給日、出産手当金の申請時期、住民税、家賃や住宅ローン、保険料、出産費用などを整理し、数か月分の資金繰りを確認しておくことをおすすめします。

実際によくあるのは、給付額よりも入金時期を見落としていたというケースです。

産休中のお金は金額と入金時期の両方を確認しましょう。

出産手当金が支給される見込みでも、申請から入金までの間は一時的に収入が少なくなります。

勤務先や加入する健康保険へ、申請の流れを早めに確認してください。

出産手当金の対象と支給内容

出産手当金は、勤務先の健康保険に加入している被保険者本人が、出産のために会社を休み、その間に給与の支払いを受けられない場合に支給される給付です。

産休中の生活を支える重要な制度ですが、産休を取得したすべての方へ自動的に支給されるわけではありません。

原則として、次の要件を満たす必要があります。

  • 勤務先の健康保険の被保険者本人であること
  • 妊娠4か月以上の出産であること
  • 出産のために仕事を休んでいること
  • 休業期間中に給与が支払われていないこと

被扶養者や国民健康保険加入者の取扱い

配偶者の健康保険の被扶養者になっている方は、自分自身が被保険者本人ではないため、原則として出産手当金を受けられません。

また、市区町村の国民健康保険に加入している個人事業主やフリーランスについても、一般的な会社員向けの出産手当金はありません。

ただし、国民健康保険組合など、加入している制度によって独自の給付が設けられている可能性があります。

自分が加入している保険制度と給付内容を個別に確認してください。

出産育児一時金は、出産手当金とは別の制度です。

被扶養者や国民健康保険加入者であっても出産育児一時金の対象になり得るため、両者を混同しないようにしましょう。

比較項目 出産手当金 出産育児一時金
主な目的 休業中の所得補償 出産費用の負担軽減
主な対象 健康保険の被保険者本人 被保険者または被扶養者の出産
金額 標準報酬月額等を基に日額計算 制度上定められた一時金
主な確認先 勤務先の健康保険 加入している健康保険

出産手当金の支給対象期間

出産手当金の支給対象期間は、原則として出産日以前42日から、出産日の翌日以後56日までです。

多胎妊娠の場合、出産日前の対象期間は98日となります。

ここでいう出産日以前42日は、実際の出産が予定日以前であれば実際の出産日を基準にします。

出産が予定日より遅れた場合は、出産予定日以前42日から実際の出産日までの期間も対象になり得ます。

ただし、対象期間に含まれる日であっても、実際に仕事を休んでいない日や、出産手当金以上の給与が支払われている日は支給されないことがあります。

出産手当金の支給期間は、産休期間と似ていますが完全に同じとは限りません。

法律上の休業期間だけでなく、実際に休んだ日と給与の支払状況を基に支給の可否が判断されます。

出産手当金の日額計算

出産手当金の1日当たりの支給額は、一般的には次の計算式を基礎として算定されます。

支給開始日前12か月間の各標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 3分の2

標準報酬月額とは、毎月の給与そのものではなく、社会保険料や保険給付を計算するために給与を一定の等級に当てはめた金額です。

そのため、現在の手取り額や基本給へ単純に3分の2を掛けても、実際の支給額とは一致しません。

たとえば、標準報酬月額の平均額が30万円であれば、30万円を30日で割り、その3分の2を計算するのが基本的な考え方です。

ただし、端数処理があるため、実際の支給日額は健康保険の計算結果を確認する必要があります。

支給開始日前の被保険者期間が12か月未満の場合は、通常とは異なる計算方法が用いられます。

転職して間もない方、社会保険へ加入したばかりの方、任意継続から再就職した方などは、加入する健康保険へ確認しましょう。

給与が一部支給された場合

産休中に会社から給与が支払われた場合でも、直ちに出産手当金の全額が不支給になるとは限りません。

給与の日額が出産手当金の日額より少なければ、原則として差額が支給されます。

一方、給与の日額が出産手当金の日額以上であれば、その日に対する出産手当金は支給されないことがあります。

会社から支給される金銭が、どの期間の労働に対する給与なのか、休業中の補償なのか、賞与なのかによって取扱いが変わる可能性もあります。

給与が支給された月があるからといって、自分で出産手当金の対象外と判断しないでください。

給与の日額や支給対象期間を基に差額支給となる場合があります。

会社の給与担当者と加入している健康保険へ確認しましょう。

申請書に必要な証明

出産手当金の支給申請書には、本人が振込先や申請期間などを記載する欄のほか、会社が出勤状況と給与支払状況を証明する欄、医師または助産師が出産予定日や実際の出産日を証明する欄があります。

産前分と産後分をまとめて申請する場合は、出産後に医師または助産師の証明を受けて提出することが一般的です。

家計上、早めに給付を受けたい場合は、産前分と産後分を分けて申請できることもありますが、申請回数が増えるため会社や医療機関の証明も複数回必要になる可能性があります。

会社を通さず本人が健康保険へ直接提出できる場合もありますが、事業主証明は必要です。

退職後に申請する場合も、在職中の勤務状況や給与について元勤務先の証明を受けることがあります。

退職後も出産手当金を受けられる場合

退職すると健康保険の資格を喪失しますが、一定の要件を満たす場合は、資格喪失後も出産手当金の継続給付を受けられる可能性があります。

一般的には、退職日までに継続して一定期間以上被保険者であり、退職時点で出産手当金を受けているか、受けられる状態にあることなどが確認されます。

特に注意したいのが退職日の出勤です。

退職日に実際に勤務すると、資格喪失後の継続給付に影響する可能性があります。

退職を予定している方は、退職日、最終出勤日、産前休業開始日を決める前に、加入している健康保険へ確認してください。

退職後の出産手当金は、退職日の状況によって結論が変わることがあります。

退職後も当然に支給されるとは限らないため、退職届を提出する前に確認することをおすすめします。

出産手当金は自動的に振り込まれない

出産手当金は、産休へ入っただけで自動的に支給される制度ではありません。

申請書を作成し、必要な証明を受けて、加入している健康保険へ提出する必要があります。

申請時期や審査期間によっては、産休開始から実際の入金まで数か月空くことがあります。

出産手当金を毎月の給与と同じタイミングで受け取れると考えていると、生活費が不足する可能性があります。

支給額は個人の標準報酬月額、被保険者期間、休業日数、給与の支払状況などによって異なります。

数値はあくまで一般的な目安であり、正確な情報は 全国健康保険協会「出産育児一時金・出産手当金」 や加入している健康保険組合の公式サイトをご確認ください。

産休中の社会保険料免除

勤務先の健康保険と厚生年金保険に加入している方が産前産後休業を取得した場合、会社が所定の申出を行うことで、産前産後休業期間中の健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。

免除されるのは従業員本人の負担分だけではありません。

会社が負担する事業主負担分も免除されます。

休業中に給与が支給されない場合でも、届出をしなければ給与システム上の処理や年金事務所の記録が適切に反映されない可能性があるため、会社側の手続きが重要です。

社会保険料免除の主なポイント

  • 健康保険料と厚生年金保険料が対象
  • 本人負担分と会社負担分の両方が免除
  • 健康保険の資格は継続する
  • 厚生年金では納付済み期間として扱われる
  • 会社による申出手続きが必要

保険料免除の対象期間

免除期間は、原則として産前産後休業を開始した月から、産前産後休業が終了する日の翌日が属する月の前月までです。

産前産後休業の終了日が月末の場合は、その月まで免除対象になります。

社会保険料は月単位で計算されるため、休業を開始した日や終了した日によって免除される月数が変わります。

日割りで数日分だけ免除される仕組みではありません。

たとえば、ある月の途中から産前休業を開始した場合でも、その月の保険料が免除対象になります。

一方、復職日の前日である休業終了日が月の途中であれば、その月は免除対象にならないことがあります。

休業終了日と復職日は別の日です。

産前産後休業の終了日の翌日が復職日となるため、月末付近の復職では日付を正確に確認する必要があります。

免除期間も年金上は納付済みとして扱われる

厚生年金保険料が免除されると、将来の年金額が減るのではないかと心配する方もいます。

しかし、産前産後休業期間中の免除については、将来の厚生年金額を計算する際、保険料を納付した期間として扱われます。

つまり、本人も会社も保険料を実際には納めませんが、年金記録上は一定の保護が設けられています。

単なる保険料の未納や一般的な免除とは性質が異なります。

健康保険についても資格が継続するため、産休中に医療機関を受診した場合は、通常どおり健康保険を利用できます。

保険証や資格確認の仕組みも引き続き利用できます。

会社による申出が必要

社会保険料は、本人が会社へ産休を申し出ただけで自動的に免除されるわけではありません。

会社が産前産後休業取得者申出書を日本年金機構へ提出する必要があります。

健康保険組合に加入している会社では、日本年金機構への厚生年金の手続きに加え、健康保険組合で別途手続きが必要になる場合があります。

必要書類や提出方法は加入先へ確認してください。

出産前に申出を行う場合は出産予定日を記載します。

実際の出産日が予定日と異なり、産前産後休業期間が変更された場合は、変更の届出が必要になることがあります。

出産日が予定日から変わった場合は、社会保険の届出内容も確認してください。

特に予定日より遅れて出産した場合、産前休業期間が延び、産後休業の終了日も後ろへずれます。

賞与の社会保険料

産前産後休業期間中に賞与が支給された場合、賞与にかかる健康保険料と厚生年金保険料も、免除対象期間との関係で免除される可能性があります。

ただし、賞与の支給月、休業期間、届出状況によって処理が異なるため、給与担当者は毎月の給与だけでなく賞与の社会保険料も確認する必要があります。

賞与支払届の提出自体が不要になるわけではないため、保険料免除と届出の要否を混同しないようにしましょう。

住民税や雇用保険料は別に考える

産前産後休業期間中に免除されるのは、主に健康保険料と厚生年金保険料です。

住民税は社会保険料ではないため、産休を理由とする一律の免除制度はありません。

雇用保険料は、支払われた賃金を基に計算されるため、産休中に賃金が支給されなければ通常は発生しません。

ただし、会社から休業中の給与や手当が支給される場合は、その手当が雇用保険料の算定対象となる賃金に該当するか確認が必要です。

社会保険料免除と、税金やその他の控除は別制度です。

健康保険料と厚生年金保険料が免除されても、住民税、社宅費、団体保険料、財形貯蓄などの支払いが続く場合があります。

国民年金の産前産後免除とは別制度

個人事業主や扶養を外れて国民年金第1号被保険者になっている方には、国民年金保険料の産前産後期間の免除制度があります。

これは会社員の健康保険・厚生年金保険における産前産後休業期間中の免除とは別の制度です。

個人事業主は労働基準法上の産休対象者ではありませんが、国民年金保険料の免除制度を利用できる可能性があります。

自分が厚生年金の被保険者なのか、国民年金第1号被保険者なのかによって手続き先が異なります。

制度の詳細、対象期間、提出期限、必要書類は変更される可能性があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

会社側も本人側も、産休の申出だけで手続きが終わったと考えず、社会保険料免除の届出が提出されているかを確認することが大切です。

会社が行う産休手続きの流れ

会社が行う産休手続きの流れ

産休に関する手続きは、従業員本人だけで完結するものではありません。

会社には、休業期間の管理、社会保険料免除の届出、出産手当金申請書への事業主証明、育児休業への切替え、復職後の社会保険手続きなど、複数の対応があります。

中小企業では、産休対応が数年に一度しか発生せず、前回の担当者が退職していることもあります。

その場で一つずつ調べると漏れが生じやすいため、妊娠の報告から復職までを一つのスケジュールとして管理することをおすすめします。

妊娠と出産予定日の報告

従業員が妊娠を会社へ報告する法定の期限はありません。

ただし、産前休業の開始日、業務の引継ぎ、社会保険の手続き、育児休業の意向確認などがあるため、一定の時期までには会社へ報告する必要があります。

会社へ伝える際は、出産予定日、現在の健康状態、産前休業の開始希望日、産後の育児休業取得予定など、現時点で分かる範囲を共有します。

すべてを一度に確定させる必要はありません。

出産日や保育園の状況などによって予定が変わる可能性があるため、変更が生じた際に更新できる管理方法が実務的です。

会社側は、妊娠の報告を受けたことを理由に、解雇、雇止め、降格、減給、不利益な配置転換、退職勧奨などを行ってはなりません。

業務上の配慮を検討する際も、本人の意向や医師の指導を確認し、一方的な配置変更にならないよう注意が必要です。

妊娠に関する情報は、健康情報や家族情報を含む重要な個人情報です。

上司、同僚、取引先などへどこまで共有するかは、本人と相談して決めることが望まれます。

最初の面談で確認したい事項

  • 出産予定日
  • 産前休業の開始希望日
  • 現在の健康状態と必要な配慮
  • 育児休業の取得意向
  • 社内で情報を共有する範囲
  • 業務の引継ぎ予定

産前休業の申出

産前休業は本人の請求によって始まるため、会社が指定する申出書などを提出します。

法律上、全国共通の申請書が決められているわけではありませんが、申出の有無と開始日を明確にするため、書面や社内システムで記録を残すことが実務上重要です。

申出書には、氏名、所属、出産予定日、産前休業開始希望日、連絡先、育児休業の予定などを記載してもらう方法があります。

母子健康手帳の写しや医師の証明を求める会社もありますが、必要以上の個人情報を収集しないよう配慮が必要です。

会社側は、産前休業開始予定日、出産予定日、産後休業終了予定日、育児休業開始予定日を管理します。

出産前の段階では予定日を基にした仮の日程となるため、出産後に実際の出産日を確認し、各日付を修正します。

社会保険料免除の申出

会社は、健康保険・厚生年金保険の産前産後休業取得者申出書を提出します。

出産前に提出する場合は出産予定日を記載し、実際の出産日によって休業期間が変わった場合は、必要に応じて変更の届出を行います。

この手続きが遅れると、給与がないにもかかわらず社会保険料が請求されたり、給与システム上で本人負担分を未収金として処理したりすることがあります。

後から訂正できる場合もありますが、本人への説明や給与計算の修正が必要になるため、早めに対応しましょう。

健康保険組合に加入している会社では、年金事務所への厚生年金の手続きだけでなく、健康保険組合への届出方法も確認します。

電子申請に対応している場合は、申請結果や公文書を保存しておくと後から確認しやすくなります。

出産手当金と社会保険料免除は別の手続きです。

出産手当金の申請書を提出しても、社会保険料免除の申出を行ったことにはなりません。

会社側でそれぞれの進捗を管理しましょう。

出産手当金の申請

出産後は、出産手当金支給申請書を加入している健康保険へ提出します。

申請書には、本人の記入欄、会社による事業主証明欄、医師または助産師による証明欄があります。

会社は、申請対象期間の出勤日、欠勤日、有給休暇日、給与支払額などを確認して証明します。

給与締日との関係で、申請期間の賃金がまだ確定していない場合は、給与計算完了後でなければ証明できないことがあります。

産前分と産後分をまとめて申請する場合は申請回数を減らせますが、産後休業終了後まで申請できないため、入金が遅くなる可能性があります。

期間を分けて申請する場合は早期に一部給付を受けられる可能性がありますが、会社や医療機関の証明を複数回受けることがあります。

どの方法がよいかは、加入する健康保険の運用と本人の資金状況によって異なります。

会社は一律に決めつけず、本人へ申請方法を案内するとよいでしょう。

育児休業への切替え

産後休業の終了後も休業を続ける場合は、育児休業の申出を行います。

産後休業が終われば自動的に育児休業へ切り替わるわけではありません。

会社は、育児休業申出書の提出期限、育児休業開始日、終了予定日、育児休業給付金、社会保険料免除、復職予定日などを確認します。

出産前に育児休業の申出を受けている場合でも、実際の出産日が予定日と異なれば、開始日を修正する必要があります。

また、育児休業を申し出た従業員に対しては、制度の個別周知や取得意向の確認など、会社に求められる対応があります。

単に申出書を受け取るだけでなく、給付、社会保険、復職支援まで一連の流れとして説明すると本人の不安を減らせます。

復職準備と職場復帰

復職予定日の1か月から2か月程度前になったら、本人と会社で復職面談を行うとよいでしょう。

保育園の入園状況、希望する勤務時間、短時間勤務の利用、時間外労働や深夜業の制限、子どもの送迎時間、業務内容などを確認します。

産休前と同じ働き方で復職できるとは限りませんが、会社側が一方的に職位や賃金を下げることも適切ではありません。

育児短時間勤務によって労働時間が短くなった場合の賃金減額と、産休・育休取得を理由とする不利益な減給は分けて考える必要があります。

復職後は、子どもの発熱や保育園からの呼出しが増えることもあります。

子の看護等休暇、年次有給休暇、テレワーク、時差出勤など、利用できる制度を事前に案内しておくと職場定着につながります。

復職後の社会保険手続き

産前産後休業から復職した後、短時間勤務などにより給与が下がった場合は、一定の要件を満たすことで産前産後休業終了時報酬月額変更届を提出できます。

通常の随時改定では、固定的賃金の変動や標準報酬月額の等級差などの要件がありますが、産前産後休業終了時改定は、産休から復職した方を対象とする特例的な仕組みです。

復職後3か月間に受けた報酬の平均を基に、標準報酬月額を改定できる場合があります。

標準報酬月額が下がれば、毎月の健康保険料と厚生年金保険料が下がる可能性があります。

一方、標準報酬月額が下がると、将来の厚生年金額の計算に影響する可能性があります。

そこで、3歳未満の子を養育している方については、養育期間標準報酬月額特例を利用できることがあります。

この制度は、養育期間中に標準報酬月額が低下しても、将来の厚生年金額の計算上、子どもを養育する前の高い標準報酬月額を用いることができる仕組みです。

会社側で管理したい主な項目

  • 出産予定日と実際の出産日
  • 産前休業と産後休業の開始日・終了日
  • 社会保険料免除の申出状況
  • 出産手当金申請書の事業主証明
  • 育児休業の申出と給付金申請
  • 復職予定日と実際の復職日
  • 復職後の勤務時間と給与
  • 標準報酬月額の改定手続き

産休手続きの全体スケジュール

時期 従業員が行うこと 会社が行うこと
妊娠報告時 出産予定日や必要な配慮を伝える 制度説明、意向確認、業務調整
産休開始前 産前休業を申し出る 休業日程と引継ぎを確認
産休開始後 必要書類を準備する 社会保険料免除を申請
出産後 実際の出産日を報告 休業期間と届出内容を修正
産後休業中 出産手当金申請書を準備 勤務・給与状況を証明
育休開始前 育児休業を申し出る 育休、給付、保険料免除を手続き
復職前後 働き方や保育状況を伝える 復職支援と社会保険手続きを実施

手続きの漏れは、給付金の支給遅れ、社会保険料の過徴収、育児休業給付金の申請遅延などにつながる可能性があります。

従業員本人と会社の担当者が、いつ、誰が、何を行うのかを一覧にして共有することが大切です。

産休の仕組みを正しく理解しよう

産休は、労働基準法に基づいて妊娠・出産する女性労働者を保護する制度です。

正社員だけでなく、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトも対象になり、勤続年数による取得条件はありません。

産前休業は、単胎妊娠であれば出産予定日の6週間前、多胎妊娠であれば14週間前から、本人が請求することで取得できます。

産前休業は請求制であるため、本人が希望すれば体調に問題のない範囲で出産直前まで働くことも可能です。

一方、産後休業は出産日の翌日から原則8週間です。

本人が休業を請求したかどうかにかかわらず、会社は就業させることができません。

産後6週間を経過した後に限り、本人が就業を請求し、医師が支障ないと認めた業務であれば、産後8週間より前に復職できる場合があります。

産休で特に押さえたいポイント

  • 産休は会社の規模や就業規則の有無にかかわらず利用できる
  • パートやアルバイトでも労働者であれば対象になる
  • 産前休業は本人の請求が必要
  • 産後休業は原則として会社が就業させてはならない
  • 産休の取得と出産手当金の支給は別々に判断する
  • 社会保険料免除には会社の届出が必要
  • 産後休業から育児休業へは自動的に切り替わらない

産休を取得できることと給料が出ることは別

産休は法律上取得できる制度ですが、会社が産休期間中の給与を支払うことまで法律で義務付けられているわけではありません。

会社の規程に有給とする定めがなければ、無給になることが一般的です。

その代わり、勤務先の健康保険の被保険者本人であり、出産のために仕事を休んで給与を受けられない場合は、出産手当金の対象になる可能性があります。

出産手当金は給与そのものではなく、健康保険から支給される保険給付です。

したがって、産休を取得できるか、会社から給与が支払われるか、出産手当金が支給されるかは、それぞれ別の基準で確認しなければなりません。

産休と育休も別の制度

産休は妊娠・出産する女性の母体保護を目的とし、育児休業は子どもの養育を目的とします。

産後休業が終わった後も休みたい場合は、育児休業を別途申し出る必要があります。

産休には勤続年数の条件がありませんが、育児休業では雇用契約の終了予定や労使協定による除外などを確認することがあります。

産休を取得できたから、育児休業も必ず同じ条件で取得できるとは限りません。

お金の手続きは自動ではない

出産手当金も社会保険料免除も、産休を取得しただけで自動的に処理されるわけではありません。

出産手当金は本人、会社、医師または助産師が申請書を作成し、加入している健康保険へ提出します。

社会保険料免除は、会社が産前産後休業取得者申出書を提出します。

出産日が予定日から変わった場合には、休業期間の変更に応じて届出の修正が必要になる可能性があります。

産休の申出、出産手当金の申請、社会保険料免除の届出は、それぞれ別の手続きです。

一つの書類を提出すれば、すべての制度が自動的に適用されるわけではありません。

会社へ早めに確認したいこと

妊娠を会社へ報告する際は、産休開始日だけでなく、給与、住民税、出産手当金、社会保険料、育児休業、復職後の働き方についても確認しておくと安心です。

  • 産前休業の申出方法と提出期限
  • 産休中の給与が有給か無給か
  • 出産手当金の申請時期と提出先
  • 住民税や会社控除の支払方法
  • 育児休業の申出方法
  • 復職後に利用できる短時間勤務制度

会社側も、本人から質問を受けてから個別に調べるのではなく、産休・育休の案内資料や手続き一覧を準備しておくとよいでしょう。

初めて対応する担当者でも、必要な手続きを漏れなく進めやすくなります。

個別事情がある場合は早めに相談する

産休に関する基本的なルールは法律で決まっていますが、実際の手続きや給付は、雇用形態、契約期間、社会保険の加入状況、給与の支払い、退職予定、出産日などによって結論が変わります。

たとえば、産休期間中に有期契約の満了日を迎える場合、退職後も出産手当金を受けたい場合、会社役員と従業員を兼務している場合、産後6週間経過後に早期復職したい場合などは、一般的な説明だけでは判断できないことがあります。

相談時には資料を準備しましょう。

雇用契約書、就業規則、賃金規程、健康保険の加入情報、給与明細、出産予定日が分かる資料などがあると、具体的な確認を進めやすくなります。

また、会社から産休を認められない、退職を求められている、出産手当金の対象になるか分からない、休業期間中の社会保険料を請求されたといった場合は、事実関係を整理したうえで確認する必要があります。

産休に関する制度や手続きは、法改正や加入する健康保険の運用によって変更される可能性があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

個別の雇用契約、退職、給付、社会保険手続きなどについては、一般的な情報だけで結論を出さず、最終的な判断は専門家にご相談ください。

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