社会保険・年金

二以上事業所勤務と代表取締役|社会保険の判定基準を整理

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

代表取締役を2社で兼務しているからといって、自動的に二以上事業所勤務になるわけではありません。

まずA社、B社それぞれについて社会保険の被保険者になるかを判定し、その結果、2社以上で被保険者になる場合に二以上事業所勤務として扱います。

特に迷いやすいのが、片方では常勤の代表取締役、もう片方では非常勤役員というケースや、新しく設立した法人から役員報酬を受け取り始めるケースです。

肩書きだけで判断するのではなく、経営への関わり方や報酬の実態まで確認する必要があります。

この記事では、複数法人の代表取締役や役員を兼務するときの社会保険について、どの会社で加入が必要になるのか、二以上事業所勤務届が必要になるのはどのようなケースかを実務目線で整理します。

  • 代表取締役や役員が社会保険の被保険者になる判断基準
  • 2社の代表取締役を兼務した場合のパターン別の扱い
  • 二以上事業所勤務に該当した場合の届出と保険料の基本
  • 非常勤役員や役員報酬ゼロの場合の注意点

二以上事業所勤務と代表取締役|社会保険の判定と手続き

二以上事業所勤務と代表取締役の判定基準

代表取締役の二以上事業所勤務を考えるときは、最初から二以上事業所勤務届の要否を考えるのではなく、 各法人でその代表者や役員が社会保険の被保険者になるか を一社ずつ判定することが重要です。

実際によくある相談でも、「2社から役員報酬をもらえば必ず二以上事業所勤務なのか」「非常勤役員という扱いにすれば片方は加入しなくてよいのか」といった点で判断が分かれます。

ここでは、その前提となる被保険者資格の考え方から確認します。

代表取締役も社会保険の加入対象になる

株式会社などの法人は、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。

そして、代表取締役や取締役などの役員についても、一定の要件を満たせば社会保険の被保険者になります。

役員は一般の従業員のように会社から指揮命令を受けて働く立場とは異なるため、「社長は労働者ではないから社会保険には入らないのでは」と思われることがあります。

しかし、健康保険・厚生年金保険では、労働基準法上の労働者に当たるかどうかだけで判断するわけではありません。

昭和24年7月28日保発第74号では、法人の代表者や業務執行者について、 法人から労務の対償として報酬を受けている場合には、法人に使用される者として被保険者資格を取得させる という考え方が示されています。

代表取締役の社会保険を考える基本

  • 法人の代表者や役員も社会保険の対象になり得る
  • 代表取締役という肩書きだけで加入・未加入を決めない
  • 法人の経営に継続的に関与しているかを確認する
  • その労務の対価として継続的な報酬を受けているかを確認する

代表取締役は通常、会社を代表し、事業運営について決裁したり、従業員や他の役員を指揮監督したりする立場です。

そのため、毎月役員報酬を受けながら実際に経営を行っている代表取締役であれば、一般的には被保険者に該当しやすいと考えられます。

一方で、 代表取締役だから無条件で必ず被保険者になる、という形で判断するものではありません。

報酬の有無と実際の経営参画の状況を確認する必要があります。

なお、健康保険・厚生年金保険と労災保険・雇用保険では役員の扱いが異なります。

役員は労災保険や雇用保険では原則として対象外となり、使用人兼務役員など労働者としての実態がある場合に別途判断することになります。

役員報酬があるだけでは決まらない

役員報酬があるだけでは決まらない

役員報酬を受け取っていることは重要な判断材料ですが、 役員報酬が1円でもあれば機械的に社会保険へ加入する、という金額基準があるわけではありません。

2026年に厚生労働省から示された法人役員の被保険者資格に関する取扱いでは、役員について、主に次の2つの観点から実態を総合的に判断する考え方が明確にされています。

役員の被保険者資格で確認する2つの軸

  • 法人の経営に参画する内容の経常的な労務を提供しているか
  • その業務の対価として法人から経常的に報酬を受けているか

経営への参画については、単純な出勤日数だけを見るわけではありません。

代表取締役の仕事は会社の事務所内で行うものに限らず、取引先との交渉、経営判断、決裁など事業所外で行われる業務も多いためです。

実務では、たとえば次のような事情を確認します。

  • 担当業務について決裁権を持っているか
  • 従業員や他の役員を指揮監督しているか
  • 役員間の連絡調整や取りまとめを行っているか
  • 定期的な役員会や経営会議に参加しているか
  • 会議への出席以外にも継続的な業務を行っているか
  • 役員報酬が労務の内容に対応するものとして支払われているか

逆に、年に数回役員会へ出席し、求められたときだけ意見を述べる程度で、職員への指示や決裁などを行っていないのであれば、経常的な経営参画があるとは限りません。

また、役員会への出席のたびに支払われる出席報酬や、交通費などの実費を弁償しているだけであれば、通常の役員報酬とは異なる判断になることがあります。

役員報酬の金額だけでは判断できません。

極端に低い報酬であっても、それだけを理由に資格がないとはいえません。

一方で、実態のない役員就任に形式的な報酬を設定しただけでは、被保険者資格が認められない可能性があります。

役員の被保険者資格については、2026年9月14日の一部改正を含め、 厚生労働省「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」 でも考え方が示されています。

2社で代表取締役なら勤務実態を確認する

2社で代表取締役を兼務している場合も、考え方は同じです。

A社とB社をそれぞれ独立して判定し、両方で被保険者になる場合には二以上事業所勤務となります。

日本年金機構の案内でも、二以上事業所勤務になる例として「A社およびB社で法人の代表者」という働き方が示されています。

ただし、これは「代表者に就任した時点で無条件に二以上事業所勤務になる」という意味ではありません。

それぞれの法人について社会保険の被保険者となる実態があることが前提です。

実務で迷いやすいケースを整理すると、次のようになります。

勤務状況 A社 B社 二以上事業所勤務
A社・B社とも代表取締役で、両社の経営を行い役員報酬を受ける 被保険者 被保険者 該当
A社は代表取締役で報酬あり、B社は無報酬の非常勤取締役 被保険者 原則として被保険者にならない 原則として該当しない
A社は代表取締役、B社は役員会に出席するだけで出席報酬と実費のみ 被保険者 原則として適用なし 原則として該当しない
A社で代表取締役、B社で正社員として勤務 被保険者 加入要件を満たせば被保険者 両社で被保険者なら該当
A社で代表取締役、B社では加入要件を満たさない短時間勤務 被保険者 被保険者にならない 該当しない
A社の代表者がB法人を新設し、B社からも役員報酬を受ける 被保険者 要件を満たせば被保険者 両社で被保険者なら該当
二以上事業所勤務中にB社の役員報酬を継続的に0円とする 被保険者 資格喪失となる場合あり B社の資格喪失後は解消
A社が健康保険組合、B社が協会けんぽで両社とも加入対象 被保険者 被保険者 該当

判断する順番は「代表取締役を何社でしているか」ではなく、「何社で被保険者になるか」です。

私は相談を受けるときも、まず会社ごとに役員報酬、職務内容、決裁権、従業員への指示の有無などを分けて確認します。

この順番にすると、二以上事業所勤務届が必要かどうかも整理しやすくなります。

非常勤役員は経営参画の実態で判断する

非常勤役員は経営参画の実態で判断する

非常勤役員について特に注意したいのは、 「非常勤」という肩書きだけでは社会保険に加入するかどうかは決まらない という点です。

会社内部では「常勤取締役」「非常勤取締役」と区分することがありますが、社会保険では実際にどのような仕事をしているのかを確認します。

たとえばB社で非常勤取締役とされていても、毎月定額の役員報酬を受け取り、担当部門について決裁し、従業員へ具体的な指示を出し、定期的に経営会議へ参加しているのであれば、単に出勤日数が少ないという理由だけで社会保険の対象外になるとは限りません。

反対に、次のようなケースでは、社会保険の適用がないと判断される可能性が高くなります。

  • 役員会へ出席するだけで日常的な経営業務を行わない
  • 求めに応じて意見を述べる立場にとどまる
  • 従業員への指揮監督を行わない
  • 担当業務について決裁権を持たない
  • 役員報酬ではなく出席報酬や実費弁償のみを受ける

代表取締役については、通常は会社を代表して業務を執行する立場であり、取締役よりも経営参画の実態が認められやすくなります。

そのため「B社では非常勤代表取締役だから加入しない」と肩書きだけで処理するのは避けた方が安全です。

また、定期的に会社へ出勤していないことだけで資格が否定されるわけでもありません。

代表者の業務は、事務所への出勤時間だけでは把握できないためです。

非常勤役員の判定に迷うときは、役職名よりも、実際の職務内容を書き出してみると整理しやすくなります。

決裁権、指揮監督、会議への参加状況、会議以外の業務、報酬の決め方と支払い状況まで確認してください。

役員報酬がゼロなら原則加入しない

代表取締役として実際に会社を経営していても、その法人から労務の対価として報酬を受けていない場合には、原則としてその法人では健康保険・厚生年金保険の被保険者になりません。

たとえばA社では代表取締役として月額報酬を受けて社会保険に加入しているものの、B社では代表取締役を兼務していて役員報酬を0円としているケースです。

この場合、B社で被保険者にならないのであれば、A社とB社の二以上事業所勤務にはなりません。

A社のみの被保険者として扱うのが基本です。

報酬0円の場合の考え方

  • A社から報酬あり、B社から報酬なしならB社は原則として被保険者にならない
  • B社から役員報酬を支給し始めた場合はその時点で再判定する
  • 二以上事業所勤務中にB社の報酬を継続的に0円とした場合は資格喪失が問題になる

ただし、すでに被保険者となっている役員の報酬を一時的に減額したケースは別です。

日本年金機構の疑義照会では、経営状況などによって一時的に低い報酬となっただけで今後の支払いが見込まれる場合に、単に低報酬という理由だけで資格を喪失させることは妥当ではないとされています。

したがって、「B社の役員報酬を少額にすれば社会保険から外せる」と考えるのは適切ではありません。

社会保険には、役員報酬が一定額以下なら自動的に被保険者にならないという最低金額のルールはありません。

役員報酬を0円にした場合の資格喪失や実務上の注意点は、役員報酬0円で社会保険はどうなる?資格喪失を実務で確認で詳しく整理しています。

二以上事業所勤務で代表取締役が行う手続き

A社とB社の両方で被保険者になると判断したら、ここで初めて二以上事業所勤務の手続きへ進みます。

各法人で必要な資格取得手続きと、本人が行う所属選択・二以上事業所勤務届は別の手続きです。

また、二以上事業所勤務になると保険料も各社で別々に通常計算するのではなく、複数法人の報酬を合算して決定します。

新設法人から役員報酬を受ける場合

実際によくあるのが、すでにA社の代表取締役として社会保険へ加入している経営者が、新たにB法人を設立し、B社からも役員報酬を受け取るケースです。

「A社ですでに健康保険と厚生年金に入っているから、B社では社会保険の手続きは不要」と考えてしまいやすいのですが、これは二以上事業所勤務で特に注意したいポイントです。

社会保険の適用は法人ごとに判定します。

すでに別法人で社会保険に加入していることを理由として、新たな法人の加入手続きを省略することはできません。

B法人でも代表取締役として経営に参画し、労務の対価として役員報酬を継続的に受け取るのであれば、B法人側でも社会保険の被保険者となることが考えられます。

この場合には、B法人について必要な新規適用の手続きを行い、代表者の被保険者資格取得届を提出したうえで、A社とB社について所属選択・二以上事業所勤務届を提出する流れになります。

新設法人で確認する順番

  • B法人が社会保険の適用対象となるか確認する
  • 代表者がB法人でも被保険者になるか確認する
  • B法人で必要な新規適用・資格取得手続きを行う
  • A社とB社の二以上事業所勤務の手続きを行う

一方、B法人を設立したものの、設立当初は代表者の役員報酬を0円としているのであれば、その代表者について直ちにB法人の被保険者資格を取得するとは限りません。

その後、株主総会などで役員報酬を決定し、実際に報酬を受けるようになった場合には、改めてB法人での被保険者資格を確認します。

役員の資格取得日については、役員就任日、役員報酬の決定時期、実際の労務提供や報酬支給の状況など個別事情によって確認が必要になることがあります。

会社設立時や報酬支給開始時に判断が難しい場合は、管轄の年金事務所へ確認してから処理することをおすすめします。

他社で正社員を兼務する場合の扱い

他社で正社員を兼務する場合の扱い

二以上事業所勤務は、2社とも代表取締役でなければ発生しない制度ではありません。

たとえばA社で代表取締役として社会保険に加入しながら、B社では正社員として勤務しているケースもあります。

B社について通常の社会保険の加入要件を満たし、A社でも代表取締役として被保険者である場合には、 A社とB社の二以上事業所勤務になります。

日本年金機構の案内でも、「A社で法人の代表者かつ、B社で正社員として勤務する方」が二以上事業所勤務の例として示されています。

ここでも、判断の出発点は会社ごとです。

A社では「役員として被保険者になるか」を確認し、B社では「従業員として被保険者になるか」を確認します。

その結果、両方で加入対象となれば二以上事業所勤務です。

B社で短時間だけ勤務している場合も考え方は同じです。

その時点で適用される短時間労働者等の社会保険加入要件をB社単独で満たすかを確認します。

B社側で加入要件を満たさないのであれば、A社の被保険者資格だけが残り、二以上事業所勤務とはなりません。

社会保険の適用範囲は制度改正によって変更されることがありますので、短時間勤務を含むケースでは、その時点の最新の加入要件を確認してください。

二以上事業所勤務届は本人が提出する

A社とB社の両方で社会保険の被保険者になると、 健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届 が必要になります。

この届出で特徴的なのは、原則として会社ではなく 被保険者本人が行う届出 であることです。

実際の会社実務では、代表者本人が用紙を一から作成するというより、選択事業所の総務担当者や顧問社労士が必要事項を整理して作成を支援することが多いと思います。

二以上事業所勤務届は、原則として事実発生から 10日以内 に提出します。

また、A社とB社のうち、主たる事業所として扱う事業所を選択します。

なお、二以上事業所勤務届を提出すれば、各法人で必要となる資格取得届が不要になるわけではありません。

届出を混同しないことが重要です

  • 各法人での資格取得届は事業主が行う
  • 所属選択・二以上事業所勤務届は被保険者本人が行う
  • 両方の手続きが必要になるケースがある

健康保険組合と協会けんぽなど、複数の健康保険の保険者にまたがる場合には、どの保険者を選択するかという手続きも関係します。

健康保険組合を選択する場合には、健康保険組合側への届出も確認してください。

提出期限や現在の届書については、 日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」 で確認できます。

届書の具体的な記入方法、選択事業所と非選択事業所の書き分け、提出先については、 二以上事業所勤務届の書き方|記入例と提出手順を実務で確認 で詳しく解説しています。

社会保険料は役員報酬を合算して決める

二以上事業所勤務になると、社会保険料の計算方法も通常の一社勤務とは変わります。

A社とB社がそれぞれ自社の役員報酬だけを使い、別々に標準報酬月額を決めるわけではありません。

A社とB社から受ける社会保険上の報酬月額を合算し、その合算額を基礎として一つの標準報酬月額を決定します。

そのうえで、決定した健康保険料・厚生年金保険料を、各法人から受ける報酬月額の割合に応じて各社へ按分します。

二以上事業所勤務の保険料は「報酬を合算してから、各社へ按分する」という順番です。

そのため、A社ですでに標準報酬月額が決まっているからといって、B社の役員報酬についてだけ別枠で保険料を追加する処理にはなりません。

複数法人を経営している方の場合、二以上事業所勤務になることで合算後の標準報酬月額の等級が上がり、本人負担だけでなく各法人の事業主負担にも影響することがあります。

反対に、標準報酬月額の上限に達しているケースでは、役員報酬を合算しても保険料が報酬額と同じ割合では増えないことがあります。

健康保険・厚生年金保険では上限等級や保険料額表の内容が異なるため、実際の金額はその時点の保険料額表で確認してください。

役員報酬を変更した場合

二以上事業所勤務中に一方の法人の役員報酬を変更した場合には、随時改定の対象になるかどうかも確認します。

この点は、単純にA社とB社の報酬を合算し、合算後に2等級以上変わったかだけを見る処理ではありません。

二以上事業所勤務者の随時改定については、各事業所について要件に該当するかを確認する必要があるため、通常の月額変更より判断が複雑になることがあります。

また、一方の法人で被保険者資格を喪失した場合には、その法人の報酬を除いて標準報酬月額が決め直されます。

報酬合算、各社への按分、決定通知書、給与控除など具体的な計算実務については、 二以上事業所勤務の保険料計算方法|合算・按分を実務で確認 で詳しく整理しています。

届出漏れは遡及して精算することがある

届出漏れは遡及して精算することがある

二以上事業所勤務で最も避けたいのが、B社でも社会保険の加入対象となっているにもかかわらず、長期間手続きをしないままにしてしまうケースです。

特にグループ会社の設立や複数法人の役員兼務では、次のような届出漏れが起こりやすくなります。

  • B社から役員報酬を支給しているのにB社で資格取得していない
  • A社とB社でそれぞれ資格取得したが二以上事業所勤務届を出していない
  • B社を非常勤役員として未加入にしたが実態は継続的に経営へ参画している
  • 新設法人の社会保険手続きそのものを行っていない

健康保険・厚生年金保険の被保険者資格は、届出だけではなく、必要に応じて保険者や行政側の確認によって処理されることがあります。

年金事務所の調査などによって「本来は過去からB社でも被保険者だった」と判断されれば、過去にさかのぼって資格取得や保険料の精算が必要になることがあります。

社会保険料を徴収する権利には原則として2年の時効があります。

そのため、個別の事情によっては 時効にかからない範囲で最大2年分程度まで遡って保険料の精算が発生することがあります。

ただし、「届出を忘れれば必ず2年分徴収される」という意味ではありません。

実際にいつから被保険者資格があったのか、どのような届出がされていたのかなどによって扱いは異なります。

遡及処理が行われると、単に会社が追加で保険料を納めれば終わるとは限りません。

合算後の標準報酬月額を基に各法人の負担額が決まり直し、本人負担分についても過去の給与との精算が必要になることがあります。

健康保険の保険者まで変わるケースでは、資格関係や過去の給付について追加確認が必要となる可能性もあります。

逆に、実態がない役員を形式的に社会保険へ加入させることにも注意が必要です。

役員として経営へ参画する実態や、労務の対価としての報酬がないにもかかわらず資格取得を行った場合には、後から資格が否定される可能性があります。

私が非常勤役員の相談を受ける場合には、役員名簿や肩書きだけではなく、実際の担当業務、決裁権、指揮監督の有無、会議への出席頻度、役員報酬の決定資料や支払状況まで整理するようにしています。

判断に迷うのであれば、後から遡及処理を行うより、役員就任や報酬決定の段階で年金事務所へ確認しておく方が実務負担を抑えやすいでしょう。

二以上事業所勤務と代表取締役の要点まとめ

代表取締役を複数の法人で兼務するときに最も重要なのは、 「代表取締役を2社でしているから二以上事業所勤務」と最初から結論を出さないこと です。

まず、それぞれの法人について社会保険の被保険者になるかを確認します。

二以上事業所勤務と代表取締役の判断手順

  • 各法人で経営に継続的に参画しているかを確認する
  • 各法人から労務の対価として報酬を受けているかを確認する
  • それぞれの法人で被保険者資格を判定する
  • 2社以上で被保険者になる場合は二以上事業所勤務として処理する
  • 各法人の資格取得と本人の二以上事業所勤務届を確認する
  • 社会保険料は対象となる各社の報酬を合算して決定する

代表取締役は通常、会社を代表して事業を執行する立場にあるため、継続的な役員報酬を受けながら実際に経営を行っているのであれば、被保険者となる可能性が高くなります。

一方で、無報酬の法人や、単に役員会へ出席して意見を述べるだけの非常勤役員などについては、同じ結論になるとは限りません。

特に避けたいのは、「非常勤という肩書きだから加入しない」「役員報酬が少額だから加入しない」「すでにA社で社会保険に加入しているからB社では加入しない」といった形式だけで判断することです。

社会保険では、肩書きより実態を見るという考え方が基本です。

グループ会社を設立したときや複数法人で役員報酬を設定するときは、税務上の役員報酬だけではなく、社会保険の資格取得と二以上事業所勤務の手続きまで同時に確認しておくと、後の修正を減らせます。

社会保険の被保険者資格は、役員の職務内容、報酬の支払状況、会社ごとの勤務実態などによって個別に判断されます。

また、制度や取扱いが変更される場合がありますので、 正確な情報は公式サイトをご確認ください。

特に非常勤役員、複数法人の代表者、新設法人、過去の届出漏れなど判断が分かれやすいケースでは、管轄の年金事務所へ確認するとともに、 最終的な判断は専門家にご相談ください。

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