社会保険・年金

治療用装具と補装具の違い|対象・費用・申請手続きを整理

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

治療用装具と補装具の大きな違いは、装具を使う目的と利用する制度です。

病気やけがの治療中に医師の指示で使うものは健康保険の治療用装具、障害による身体機能を補い、日常生活や就労・就学のために長期間使うものは障害者総合支援法の補装具として扱われるのが基本です。

ただし、装具の名前だけで制度が決まるわけではありません。

同じ下肢装具でも、脳卒中後の治療過程で作る場合と、症状が固定した後に生活用として作り替える場合では、利用する制度が変わることがあります。

この違いが分かりにくい理由は、治療用装具にも補装具にも「装具」という同じ言葉が使われており、義足や下肢装具など、同じ種類の用具が異なる制度の対象になることがあるためです。

身体障害者手帳を持っていれば必ず補装具になるわけでもありませんし、医療機関で勧められたものがすべて健康保険の対象になるわけでもありません。

この記事では、治療用装具と補装具の違いを、目的、対象者、自己負担、申請方法、健康保険や介護保険との優先関係まで整理します。

これから装具を作る方だけでなく、治療中に作った装具の作り替えを考えている方も、どの制度を確認すべきか判断できるように解説します。

  • 治療用装具と補装具の目的や対象者の違い
  • 健康保険と補装具費支給制度の自己負担の違い
  • 治療中と症状固定後で制度が変わる考え方
  • 介護保険や労災保険を含めた制度の優先関係

治療用装具と補装具の違い|対象・費用・申請を比較

治療用装具と補装具の違いを比較

まず押さえておきたいのは、治療用装具と補装具は、単に呼び方が違うだけではなく、制度の目的そのものが異なるという点です。

どの制度を利用するか迷ったときは、装具の種類から考えるよりも、「何のために、どの時期に使うのか」から整理すると判断しやすくなります。

ここでは、対象者、装具の種類、費用負担、制度の優先関係を順番に比較します。

最初に全体像をつかんでおくと、後半の申請手続きも理解しやすくなります。

治療用装具と補装具は目的が違う

治療用装具は、病気やけがの 治療や症状の改善のために、治療期間中に使用する装具 です。

健康保険では、通常の保険診療として医療機関の窓口で自己負担分だけを支払う方法とは異なり、一定の要件を満たした治療用装具について、いったん費用を支払った後に療養費として給付を受ける仕組みが採られています。

たとえば、骨折後に患部を固定する装具、腰椎疾患の治療で使用するコルセット、手術後の関節装具、足底装具などが代表的です。

重要なのは、その装具を医師が治療上必要と認めていることです。

単に「装着すると楽になる」「自分で使った方がよいと思った」というだけではなく、傷病の治療との関連性が求められます。

一方、障害者総合支援法の補装具は、 障害によって失われたり低下した身体機能を補完・代替し、日常生活や就労、就学のために長期間使用するもの です。

義手・義足、装具、車椅子、補聴器などが代表的な例です。

障害者総合支援法上の補装具は、身体に適合させて製作されることや、長期間継続して使用すること、医師等の専門的な知識に基づいて必要性が判断されることなどを前提としています。

つまり、両者を分ける軸は「医療用か福祉用か」という単純な名称の違いではありません。

治療そのものを目的としているのか、それとも残った障害による身体機能を補うことを目的としているのか を見る必要があります。

たとえば、脳卒中後の片麻痺で使用する下肢装具を考えてみましょう。

回復期のリハビリテーション中に、歩行訓練を行いながら身体機能の改善を図るために作製するのであれば、健康保険の治療用装具として取り扱われることがあります。

一方、治療後に障害が残り、自宅や職場で歩行するために継続して使用する装具を作製するのであれば、補装具費支給制度を検討することになります。

同じ「下肢装具」でも制度が変わるわけです。

ここが、治療用装具と補装具の違いを理解するうえで最も重要なポイントかなと思います。

比較項目 治療用装具 補装具
主な制度 健康保険の療養費 障害者総合支援法の補装具費
主な目的 病気やけがの治療・症状改善 障害による身体機能の補完・代替
使用する時期 主に治療中 主に障害が固定した後の生活場面
使用期間 治療に必要な期間 長期間の継続使用を想定
主な申請先 加入している健康保険 住所地の市区町村

装具の名称ではなく、治療目的なのか、障害を補う生活目的なのかを見ることが基本です。

同じ種類の装具でも、作製する時期や目的によって利用する制度が変わることがあります。

補装具費支給制度の目的や対象者、利用者負担などについては、厚生労働省が制度概要を公表しています。

制度改正もあり得るため、実際に申請する際には最新情報を確認してください。

(出典: 厚生労働省「補装具費支給制度の概要」

対象者と障害者手帳の要否

対象者と障害者手帳の要否

治療用装具は、健康保険の被保険者や被扶養者が対象です。

医師が治療上必要であると認め、健康保険の療養費としての要件を満たしていれば、 身体障害者手帳を持っている必要はありません

たとえば、骨折して初めてコルセットを作る方や、子どもが治療のために足底装具を作る場合でも、障害者手帳の有無とは関係なく健康保険による療養費を検討します。

治療用装具は「障害があるから使う制度」というより、「健康保険の加入者が傷病の治療上必要な装具を作製した場合に利用する制度」と考えると分かりやすいでしょう。

逆に、身体障害者手帳を持っている方であっても、現在の装具が傷病の治療のために必要なのであれば、直ちに補装具費支給制度を利用することになるわけではありません。

手帳の有無だけではなく、今回作製する装具の目的を確認する必要があります。

これに対して補装具費支給制度は、障害者や障害児、一定の難病患者等が対象となります。

身体障害者の場合は、対象となる障害について身体障害者手帳を取得していることを前提として手続きするケースが一般的です。

たとえば、下肢機能障害があり、日常生活で使用する義足や下肢装具について補装具費を申請するケースなどが考えられます。

ただし、 補装具費の対象者を「身体障害者手帳を持つ人だけ」と考えるのは正確ではありません

障害者総合支援法の対象となる難病患者等については、身体障害者手帳を取得していなくても対象となる場合があります。

そのため、「手帳がないから絶対に補装具費は利用できない」と自己判断せず、難病等に該当する場合には市区町村へ確認することが重要です。

また、子どもの補装具費についても注意が必要です。

以前は一定以上の所得がある世帯について支給対象外となる仕組みがありましたが、障害児に係る補装具費支給制度では令和6年4月から所得制限が撤廃されています。

成人については所得による支給制限が残っているため、子どもと成人を同じ条件で考えないことが大切です。

障害者手帳の等級と障害年金の等級は別の制度です。

障害者手帳を取得したから障害年金も同じ等級になる、あるいは障害年金を受給しているから補装具費の対象になる、という関係ではありません。

社労士の実務でも、「障害年金を受給しているから補装具も使えますか」「障害者手帳があるので健康保険ではなく補装具費ですよね」といった整理になっていることがあります。

しかし、障害年金、身体障害者手帳、健康保険の療養費、障害者総合支援法の補装具費は、それぞれ目的と要件が異なる制度です。

実務で確認するときは、「障害者手帳があるか」だけで判断せず、現在治療中なのか、症状が固定しているのか、どの身体機能を補うための装具なのか、難病等の対象となる可能性があるのかまで確認する必要があります。

この順番で整理すると、自分がどの窓口に相談すべきかも見えてきます。

対象となる装具の種類と具体例

治療用装具と補装具には、対象となる用具の種類にも違いがあります。

ただし、ここでも注意したいのは、 同じ名称の装具が両方の制度に登場することがある という点です。

健康保険の治療用装具として扱われる代表例には、骨折や腰部疾患などで使用するコルセット、術後の関節装具、下肢装具、足底装具などがあります。

また、一定の要件を満たす弾性着衣や、小児弱視等の治療に必要な眼鏡なども療養費の対象になる場合があります。

もっとも、単に市販の商品を購入したから健康保険が使えるということではなく、医師による治療上の必要性や、それぞれの給付要件を満たしていることが前提となります。

一方、補装具費支給制度では、義肢、装具、姿勢保持に用いる装置、視覚障害者安全つえ、義眼、眼鏡、補聴器、車椅子、電動車椅子、歩行器、一定の歩行補助つえ、重度障害者用意思伝達装置など、多様な用具が対象として定められています。

ここで大切なのは、補装具費支給制度には 対象となる「種目」が定められている ということです。

障害があり、生活に役立つ製品だからといって、あらゆる福祉用具が補装具費の対象になるわけではありません。

たとえば、日常生活用具給付等事業や介護保険の福祉用具など、別の制度で取り扱われるものもあります。

用具の例 治療用装具となる例 補装具となる例
下肢装具 脳卒中後などの治療・リハビリ中に使用 障害が固定した後の日常生活で継続使用
体幹装具 骨折や疾患の治療中に使用するコルセット 体幹機能障害を長期間補うために使用
眼鏡 一定の要件を満たす小児弱視等の治療用眼鏡 視覚障害に対応する補装具としての眼鏡
義足 治療過程で必要となる場合 身体機能を代替し日常生活で継続使用する場合

特に分かりやすいのが下肢装具です。

たとえば脳卒中後のリハビリテーションで歩行機能の回復を目指して使用している段階では、治療用装具として考えます。

一方、身体状況が安定した後、自宅や職場で歩行能力を補うため継続使用する段階になれば、補装具としての申請を検討します。

義足についても、「義足だから必ず補装具」とだけ覚えるのではなく、作製時点の治療状況や利用目的を確認することが必要です。

特に切断後の早い段階では、身体状況や断端の変化を見ながら治療・訓練が進むため、長期使用を前提とした補装具との区分を個別に確認することになります。

補聴器も混同しやすいところです。

聴覚障害について補装具費支給制度の要件を満たせば補装具の対象となりますが、加齢性難聴などで制度上の対象とならない場合は、原則として健康保険の治療用装具へ自動的に切り替わるわけではありません。

自治体によっては、身体障害者手帳の対象とならない高齢者等について独自の補聴器購入助成制度を設けていることがあります。

これは全国一律の制度ではありませんので、住所地の自治体へ確認してください。

「この用具は治療用装具ですか、補装具ですか」と名称だけで判断するのではなく、 誰が、どの身体状態で、何の目的で、どのくらいの期間使用するのか まで確認することが重要です。

自己負担と費用助成の違い

自己負担と費用助成の違い

費用面でも、治療用装具と補装具では仕組みが大きく異なります。

治療用装具の場合は、原則として利用者が装具業者へ いったん費用の全額を支払い 、その後、加入している健康保険へ療養費を申請します。

通常の病院受診では窓口で自己負担分だけを支払うことが多いため、「健康保険が使えるなら最初から3割だけ払えばよいのでは」と思われる方もいるかもしれません。

しかし、治療用装具の療養費は、いったん立て替えた後に申請して支給を受ける仕組みが基本です。

健康保険で認められる額をもとに、年齢や所得などに応じた自己負担割合を除いた額が支給されます。

一般的な現役世代であれば自己負担割合は原則3割ですが、年齢や所得などによって負担割合は異なります。

そのため、ご自身のケースで何割が支給されるかは加入している保険者へ確認してください。

また、 実際に業者へ支払った金額の7割が必ずそのまま戻ってくるわけではありません。

健康保険では、治療用装具について定められた基準に基づき保険者が療養費の支給額を計算します。

実際に支払った金額が基準に基づいて算定した金額より高い場合には、その差額まで健康保険から支給されるとは限りません。

たとえば、装具業者へ10万円支払ったからといって、単純に「10万円×7割=7万円」が必ず戻るという計算ではありません。

保険者が療養費として認める額が9万円であれば、自己負担割合を差し引く際の基礎となる金額も変わります。

この点は、治療用装具の費用を考えるときに非常に重要です。

一方、補装具費支給制度では、利用者負担は 原則として基準額の1割 とされ、所得状況に応じた負担上限月額が設けられています。

つまり、「装具の価格の1割を必ず支払えばよい」という単純な仕組みでもありません。

対象となる基準額や所得区分、月額負担上限などを踏まえて、実際の利用者負担額が決まります。

また、成人の補装具費については所得による支給制限があります。

2026年時点の厚生労働省の案内では、障害者本人または配偶者のうち、市町村民税所得割の最多納税者について一定の基準を超える場合には支給対象外となる仕組みが示されています。

一方、障害児については令和6年4月から所得制限が撤廃されています。

このように、治療用装具と補装具では「自己負担率」だけを比べても十分ではありません。

健康保険では療養費として認められる額、補装具費では国が定める基準額や所得による負担上限など、計算の仕組み自体が異なります。

補装具の自己負担額や所得基準、健康保険の負担割合などは制度改正により変更される可能性があります。

数値は一般的な目安として考え、 正確な情報は公式サイトをご確認ください

また、補装具で基準額を超える仕様を希望した場合や、制度上の給付対象とならない部分が含まれる場合などには、自己負担が発生する可能性があります。

費用だけを見て作製を進めず、見積書の段階で「公費の対象となる部分」「自己負担になる可能性がある部分」を市区町村や補装具業者へ確認しておくと安心です。

健康保険が優先されるケース

身体障害者手帳を持っている方が装具を作る場合でも、自由に健康保険と補装具費支給制度のどちらかを選べるわけではありません。

障害者総合支援法では、同じ障害の状態について健康保険や介護保険など、他の法令による給付を受けられる場合には、その給付との調整を行う仕組みが設けられています。

そのため、 治療の一環として必要な装具で健康保険の療養費の対象となる場合は、基本的に健康保険を先に検討します

障害者手帳があるから補装具費を使った方が自己負担が少ない、という理由だけで制度を選択するものではありません。

ここは利用者にとって少し分かりにくいところです。

健康保険では自己負担が一定割合あり、補装具費では原則1割負担と聞けば、「補装具として申請した方が得なのでは」と考えるのは自然です。

しかし、公的制度は単純に利用者が有利な方を選ぶ仕組みではなく、同じ目的の給付について複数制度が重ならないように優先関係が設けられています。

たとえば脳卒中後の回復期リハビリテーション中に、歩行訓練や機能回復のために下肢装具を作製するケースです。

この段階では治療との結び付きが強いため、健康保険の治療用装具として取り扱われることがあります。

たとえその方がすでに身体障害者手帳を取得していたとしても、「手帳があるから補装具」という一律の判断にはなりません。

その後、症状が固定し、身体障害者手帳を取得したうえで、日常生活で継続して使用するために下肢装具を作り替える場合には、補装具費支給制度の対象を検討することになります。

また、同じ人であっても、装具を作製するたびに同じ制度になるとは限りません。

最初の装具は治療用装具、数年後の作り替えは補装具ということもあります。

逆に、新たな病気やけがに対する治療が始まり、その治療上必要な装具を作製するのであれば、再び健康保険の療養費を検討するケースも考えられます。

判断するときは、 「どの装具か」より「何のために今作るのか」 を確認してください。

治療中なのか、障害が固定した後の生活用なのかが、制度を切り分ける重要なポイントです。

私が相談を受ける場合にも、「障害者手帳は持っていますか」と最初から手帳だけを確認するのではなく、「現在も病院で治療・リハビリを続けていますか」「医師から何のための装具と説明されていますか」「以前の装具の作り替えですか」といった事情を確認します。

制度の優先関係が分からない場合には、自分でどちらかに決めて申請を進めるより、まず医療機関、加入している健康保険、市区町村の障害福祉担当窓口へ状況を伝える方が確実です。

特に高額な装具では、制度を誤って先に作製してしまうと費用負担が大きくなる可能性があります。

治療用装具と補装具の違いと選び方

制度の違いを理解したら、次は自分がどちらに該当するのかを整理します。

特に迷いやすいのが、治療中に作った装具を数年後に作り替えるケースです。

ここからは、時期と目的を軸に、申請手続きや他制度との関係まで具体的に見ていきます。

治療用装具と補装具では、申請する「順番」がほぼ逆といってよいほど異なるため、手続きを始める前に確認しておくことが重要です。

治療中と症状固定後で制度が変わる

治療用装具と補装具を判断するうえで、非常に分かりやすい基準の一つが 「現在も治療の過程にあるのか、それとも症状が固定しているのか」 という点です。

治療中で、身体の状態が今後変化する可能性があり、治療や機能回復のために装具を使用するのであれば、健康保険の治療用装具を検討します。

一方、治療による大きな改善が見込みにくい状態となり、残った障害を補うために日常生活で長期間使用するのであれば、補装具費支給制度を検討する流れになります。

ただし、「症状固定」という言葉だけで機械的に線引きできるわけではありません。

医療上の治療経過、装具を使用する目的、身体機能の状態などを総合的に見て判断することになります。

そのため、患者本人が「もう治療は終わったと思う」と考えているかどうかではなく、医師からどのような説明を受けているかも重要です。

脳卒中後の下肢装具で考える

たとえば脳卒中で片麻痺が残った方が、回復期のリハビリテーション中に歩行訓練のための下肢装具を作ったとします。

この時点では、治療や機能回復を目的としているため、治療用装具として健康保険を利用することがあります。

リハビリテーションの経過では、筋力や関節可動域、痙縮の程度、歩行能力などが変化することがあります。

そのため、治療過程で使用する装具も現在の身体状況に応じて選択されます。

この段階の装具は、単に「一生使う生活用品」というより、治療・訓練を進めるための役割を持っています。

その後、退院して症状が固定し、身体障害者手帳を取得したうえで、自宅や職場で長期間使用する装具を新しく作る場合には、障害者総合支援法の補装具として申請することが考えられます。

ここで重要なのは、「最初に健康保険で作ったから、次も必ず健康保険」という考え方をしないことです。

数年後の作り替えでは、治療段階から生活段階へ目的が変わっている可能性があります。

コルセットでも考え方は同じ

骨折や腰椎疾患の治療中に患部を固定するためのコルセットであれば、治療用装具として扱われるのが基本です。

一方、長期にわたる体幹機能障害を補うため、身体に合わせて継続的に使用する装具であれば、補装具費支給制度を検討する余地があります。

つまり、「コルセット=健康保険」「下肢装具=補装具」といった用具名による暗記では判断できません。

利用目的が変われば制度も変わり得ます。

作り替えの相談では、現在使っている装具を「いつ」「どの制度で」「何の目的で」作ったのかを確認しておくと、その後の相談がスムーズです。

領収書、支給決定通知、補装具費支給券の控えなど、以前の手続きが分かる書類があれば保管しておくとよいでしょう。

社労士として相談内容を整理するときも、私はまず「いつ作った装具なのか」「現在も治療中なのか」「作り替えなのか」「障害者手帳の申請予定があるのか」を確認します。

さらに、業務中・通勤中のけがではないか、65歳以上など介護保険との調整が必要な状況ではないかも確認します。

この順番で整理すると、利用すべき制度がかなり見えやすくなります。

治療用装具の申請手続きと流れ

治療用装具の申請手続きと流れ

治療用装具では、一般的に医師が治療上必要と判断した後、義肢装具士などが採型や製作を行います。

その後、利用者が装具業者へ費用を支払い、必要書類をそろえて加入している健康保険へ療養費を申請します。

大まかな流れは次のとおりです。

  1. 医師が治療用装具の必要性を判断する
  2. 義肢装具士などが採型・製作する
  3. 完成した装具を受け取る
  4. 装具業者へ費用をいったん全額支払う
  5. 医師の証明書や領収書などをそろえる
  6. 加入している健康保険へ療養費を申請する
  7. 審査後、認められた療養費が支給される

ここで最も大きな特徴は、 先に装具を受け取り、費用を支払った後に健康保険へ申請する という点です。

補装具費支給制度とは手続きの順序が異なるため、両者を混同しないようにしてください。

申請時には、療養費支給申請書のほか、医師が治療上必要であることを証明する書類、装具業者の領収書や内訳が分かる書類などが必要になります。

協会けんぽでは、治療用装具を購入・装着した場合の添付書類として、装具の名称・種類・内訳別の費用額などが分かる領収書、医師が記入・証明した治療用装具製作指示装着証明書などが案内されています。

靴型装具については現物写真も必要です。

(出典: 全国健康保険協会「治療用装具・治療用眼鏡等」

ここで注意したいのが、単なるレシートだけでは必要事項が確認できないケースです。

領収書には装具の名称や種類、内訳など、保険者が支給内容を確認するための情報が求められます。

装具業者はこうした手続きに慣れていることが多いですが、受け取ったら必要事項が記載されているか確認しておくと安心です。

また、医師の証明書についても、「病院を受診した記録があるから大丈夫」というものではありません。

治療用装具が治療上必要であることを確認できる書類が必要になります。

療養費の支給額は、実際に支払った金額だけで決まるわけではありません。

保険者が定められた基準に基づいて計算した額と実際の支払額を踏まえて支給額を決定するため、支払金額の一定割合がそのまま払い戻されるとは限らない点にも注意してください。

また、療養費には申請期限があります。

治療用装具についても、一般に費用を支払った日の翌日から2年が時効の目安となるため、書類がそろったら早めに手続きしておく方が安心です。

証明書を後で取り寄せようとして時間がたつと、医療機関への確認にも手間がかかることがあります。

必要書類や具体的な提出方法については、 治療用装具の申請方法と必要書類 で詳しく整理しています。

療養費支給申請書そのものの基本的な考え方について確認したい場合は、 療養費支給申請書の書き方と提出手続き も参考にしてください。

領収書だけでは申請できないケースがあります。

装具を作製するときに、医療機関と装具業者へ「健康保険の療養費を申請する予定です」と伝え、必要な証明書や領収書の形式をあらかじめ確認しておくと手続きがスムーズです。

なお、協会けんぽ以外の健康保険組合、共済組合、国民健康保険などに加入している場合には、申請様式や必要書類の案内が異なることがあります。

「インターネットで見つけた協会けんぽの書式をそのまま出せばよい」と考えず、ご自身が加入している保険者の案内を確認してください。

補装具費支給制度の申請手続き

補装具費支給制度では、治療用装具とは手続きの順番が大きく異なります。

最も重要なのは、 原則として補装具を作る前に市区町村へ申請する という点です。

一般的な流れは次のようになります。

  1. 住所地の市区町村の障害福祉担当窓口へ相談する
  2. 身体障害者手帳、医師の意見書、見積書など必要書類を提出する
  3. 必要に応じて身体障害者更生相談所等の判定を受ける
  4. 市区町村が補装具費の支給を決定する
  5. 補装具費支給券などの交付を受ける
  6. 補装具業者と契約し、製作を進める
  7. 完成した補装具の適合確認を受け、引渡しを受ける

補装具の種類や申請者の状況によっては、医師の意見書だけで判断する場合や、身体障害者更生相談所等による判定が必要になる場合があります。

必要書類や判定方法は種目によって異なるため、最初に市区町村へ確認することが重要です。

たとえば、以前から同じ補装具を使用しており、その修理を申請するケースと、新たに義足や車椅子を作製するケースとでは、確認される内容や手続きが同じとは限りません。

また、成人と障害児でも判定の流れが異なることがあります。

市区町村へ相談するときには、身体障害者手帳だけを持っていくのではなく、現在使用している補装具がある場合はその種類や作製時期、破損状況、身体状況の変化なども説明できるようにしておくとスムーズです。

補装具業者から見積書を取得するよう案内される場合もあります。

費用の支払いには、利用者が一度全額を支払って後から補装具費を受け取る償還払いのほか、代理受領方式が採用されている場合があります。

代理受領では、利用者が原則として自己負担分を業者へ支払い、残りの補装具費を市区町村から業者へ支払う仕組みです。

利用者にとっては全額を立て替えなくてよい点が大きな違いですが、実際にどの方式を利用できるかは自治体や事業者の取扱いを確認する必要があります。

また、補装具には購入だけでなく修理の制度もあり、一定の場合には借受けが認められることもあります。

成長に伴って短期間で交換が必要になる場合、障害の進行によって適合する補装具が変化することが想定される場合、購入前に複数の仕様を比較する必要がある場合など、一定の条件のもとで借受けが検討されます。

補装具について「壊れたから買い直す」と考える前に、まず修理の対象にならないか確認してみてください。

補装具費支給制度には購入だけでなく修理の仕組みもあり、部品交換などで対応できることがあります。

なお、補装具費支給制度は全国共通の法律・基準を基礎としていますが、窓口で求められる書類や具体的な事務手続きには自治体ごとの違いが生じることがあります。

そのため、インターネット上の他自治体の案内だけを見て手続きを進めず、最終的には住所地の市区町村へ確認してください。

補装具は作製前の申請が必要

補装具費支給制度で特に注意したいのが、 支給決定を受ける前に自己判断で作製しないこと です。

健康保険の治療用装具は、先に装具を作って費用を支払い、その後に療養費を申請する形が基本です。

この流れを知っている方ほど、補装具についても「先に作って領収書を持っていけば後から戻る」と考えてしまうことがあります。

しかし、補装具費支給制度では、市区町村が障害の状況や補装具の必要性、種目、価格などを確認し、支給決定したうえで製作することが基本です。

この違いは非常に重要です。

たとえば、現在使用している装具が壊れたため急いで新しいものが必要になり、補装具業者へ直接「同じものを作ってください」と依頼したとします。

その後に市区町村へ「補装具費を申請したい」と相談しても、すでに作製してしまったものについて当然に公費負担が認められるとは限りません。

支給決定前に購入・作製した補装具は、原則として補装具費の対象とならない可能性があります。

見積書を受け取った段階で製作を進めず、まず住所地の市区町村へ申請方法を確認してください。

補装具業者から「そろそろ作り替えた方がよい」と言われた場合も、すぐに契約・発注するのではなく、「補装具費支給制度を利用したい」と伝えたうえで、市区町村への申請が先かどうかを確認することをおすすめします。

補装具業者が制度に詳しいケースも多いですが、最終的な支給決定を行うのは市区町村です。

また、一度補装具を作った後は、いつでも公費で新しいものへ作り替えられるわけではありません。

補装具には種目ごとに耐用年数や修理の基準が定められており、耐用年数内の再交付は原則として制限されます。

ただし、耐用年数は「その日を1日でも過ぎれば自動的に新しい補装具が支給される」という保証期間でもありません。

耐用年数が経過していても、現在の補装具を使用できる状況であれば、必ず新規作製が認められるとは限りません。

反対に、耐用年数内であっても身体状況の著しい変化や修理不能の破損など、やむを得ない事情があれば再交付が検討される場合があります。

もっとも、身体の状態が変化して現在の補装具が使用できなくなった場合や、著しい破損が生じた場合など、事情によっては例外的な取扱いが検討されることがあります。

そのため、作り替えを考えている場合も、最初に業者へ注文するのではなく、市区町村の障害福祉担当窓口へ現在の装具の状態と作製時期を伝え、再交付または修理のどちらになるのか確認するのが実務的です。

急な破損で日常生活に大きな支障が生じている場合などには、その事情も含めて窓口へ伝えてください。

「原則が作製前申請だから何もできない」と自己判断するのではなく、まず相談することが大切ですよ。

介護保険や労災保険との関係

介護保険や労災保険との関係

治療用装具と補装具を考える際には、健康保険と障害福祉だけでなく、介護保険や労災保険との関係にも注意が必要です。

公的給付では、同じ目的について複数の制度から重複して給付を受けるのではなく、他制度で同等の給付を受けられる場合には、その制度との調整が行われます。

特に高齢者の車いす・歩行器、仕事中のけがによる装具では、最初から健康保険や補装具費だけを考えないことが重要です。

介護保険を利用できる場合

65歳以上の方など介護保険の対象となる場合、車いすや歩行器などについては、介護保険の福祉用具貸与を利用できることがあります。

既製品の車いすや歩行器などで身体状況に対応できる場合は、介護保険による福祉用具貸与が優先して検討されるのが一般的です。

介護保険の福祉用具貸与であれば、購入するのではなくレンタルによって使用することができます。

身体状況が変化した場合に機種を変更しやすいこともあり、高齢者の日常生活では合理的な場合があります。

一方で、障害の状態に合わせて個別に製作する必要がある場合などは、補装具費支給制度の対象となる可能性があります。

介護保険の対象者だから補装具費を一切利用できないという意味ではなく、 他制度で同等の給付を受けられるかどうかを個別に確認する 必要があります。

たとえば一般的な既製品の車いすで生活上のニーズを満たせるのか、それとも障害の状態に合わせて座位保持などを含めた個別の対応が必要なのかによっても検討する制度が変わります。

「65歳を過ぎたから全部介護保険」「障害者手帳を持っているから全部補装具」と単純に分けないことが重要です。

仕事中や通勤中のけがの場合

装具が必要になった原因が業務上の事故や通勤災害である場合は、健康保険ではなく労災保険を先に確認します。

たとえば仕事中の転倒で骨折し、治療のために装具が必要になった場合には、労災保険の療養補償給付等として取り扱われる可能性があります。

障害が残った後に義肢などが必要となる場合にも、労災保険には義肢等補装具費支給制度があります。

ここで重要なのは、傷病の原因です。

同じ骨折、同じコルセットであっても、休日の私生活中に負傷した場合と、業務中の事故で負傷した場合とでは、まず検討する保険制度が異なります。

社労士として確認する際には、「病気やけがの原因が仕事と関係していないか」は早い段階で確認するポイントです。

業務災害・通勤災害であるにもかかわらず健康保険で手続きを進めると、後から給付の調整や返還が必要になることがあります。

特に会社から「とりあえず健康保険で受診してください」と案内されているケースでは注意が必要です。

労災に該当するかどうかは、会社が希望する制度で自由に決められるものではありません。

業務との関係を事実関係に基づいて整理する必要があります。

健康保険から受けられる給付の全体像については、 健康保険の給付金一覧と申請方法 でも整理しています。

制度が重なりそうなときは、健康保険、障害福祉、介護保険、労災保険を別々に考えるのではなく、「今回の装具について他の制度から同じ目的の給付を受けられるか」という視点で確認すると整理しやすくなります。

実務では、まず「なぜその装具が必要になったのか」を確認し、次に「現在治療中なのか」「長期間の日常生活用なのか」「介護保険の対象か」と順番に見ていくと整理しやすいです。

制度が複数関係する場合には、市区町村、健康保険、労働基準監督署、医療機関など、それぞれの窓口へ確認しながら進めることになります。

治療用装具と補装具の違いまとめ

治療用装具と補装具の違いは、装具そのものの名称よりも、 作製する目的と時期 で考えると分かりやすくなります。

病気やけがの治療中で、医師が治療のために必要と判断した装具であれば、健康保険の治療用装具として療養費を申請するのが基本です。

一方、治療が終わり、残った障害による身体機能を補うために日常生活や就労・就学で長期間使用するのであれば、障害者総合支援法の補装具費支給制度を検討します。

ただし、「治療中なら必ず健康保険」「症状固定後なら必ず補装具」という単純な公式だけで判断するのではなく、医師による治療上の必要性、障害の状態、装具を使用する目的、身体障害者手帳や難病等の状況、他制度の利用可否などを確認することが重要です。

確認するポイント 治療用装具 補装具
目的 治療・症状改善 障害による身体機能の補完・代替
主な時期 治療中 症状固定後など
障害者手帳 不要 身体障害者では原則確認が必要
申請時期 支払後に療養費を申請 原則として作製前に申請
申請先 加入する健康保険 住所地の市区町村
負担の考え方 健康保険の自己負担割合等による 原則1割で所得に応じた上限等あり

迷ったときは、まず「現在も治療中か」「何のために装具を使うのか」「身体障害者手帳の対象となっているか」「仕事中や通勤中のけがではないか」「介護保険を利用できる状態か」を順番に確認してみてください。

さらに、「今回が初めての作製なのか、それとも以前作った装具の作り替え・修理なのか」も重要です。

以前は健康保険で作った装具であっても、現在は生活用の補装具として申請するケースがあります。

過去に利用した制度だけで判断しないようにしてください。

特に補装具は、先に購入してから申請するという考え方ではなく、原則として市区町村の支給決定を受けてから作製する点が重要です。

治療中に作った装具を作り替える場合も、以前と同じ制度を使うとは限りません。

治療中なら健康保険の治療用装具、障害を補って長期間生活で使う段階なら補装具 という大きな整理から始めると、制度を判断しやすくなります。

もう一つ実務上お伝えしておきたいのは、装具の作製を急ぐ場合ほど、制度確認を後回しにしないことです。

治療用装具と補装具では申請する順番が異なります。

特に補装具では「作ってから申請」ではなく「申請・支給決定を受けてから作製」が基本となるため、先に注文してしまうと公費負担を受けられない可能性があります。

医療機関から装具を勧められた段階では、医師や義肢装具士へ「これは健康保険の治療用装具として申請するものですか」と確認してみてください。

長期間使用している装具の作り替えであれば、市区町村の障害福祉担当窓口へ「補装具費支給制度を利用できるか」を先に確認するとよいでしょう。

また、仕事中・通勤中のけがであれば労災保険、介護保険の対象者で車いすや歩行器などを利用する場合には介護保険との調整も考える必要があります。

複数の制度が関係すると、「結局どこに聞けばよいのか分からない」という状態になりやすいところですが、傷病の原因、現在の治療状況、使用目的を一つずつ整理すれば判断しやすくなります。

実際の支給可否は、装具の種類、治療状況、障害の状態、他制度の利用状況などによって個別に判断されます。

また、自己負担額や所得基準、対象種目などは制度改正によって変更されることがあります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください

判断に迷うケースでは、加入している健康保険、市区町村の障害福祉担当窓口、医療機関などへ確認し、 最終的な判断は専門家にご相談ください

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