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産休がない会社でも取得できる?拒否時の対処法と判断基準

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

会社に産休制度がなくても、産前産後休業は取得できます。

就業規則に記載がない場合や、過去に取得した従業員がいない場合でも、会社は法律上認められた産休を拒否できません。

勤務先から「うちの会社には産休がない」「今まで取得した人がいないので対応できない」と言われると、産休を取るには退職するしかないのではないかと不安になりますよね。

しかし、会社が独自に用意する福利厚生や特別休暇と、法律によって保障される産前産後休業は分けて考える必要があります。

産休は、会社が好意で認める制度ではありません。

会社の規模、雇用形態、勤続年数、取得実績などにかかわらず、法律上の要件を満たす女性労働者に適用されます。

会社に制度や申請書がない場合は、取得できないのではなく、社内の規程や手続きが整っていない可能性が高いと考えてください。

ただし、産休と育休は別の制度です。

産休は取得できても、育休については雇用契約の終了予定や労使協定の内容などを確認しなければならない場合があります。

また、産休中の給与、出産手当金、社会保険料免除も、それぞれ別の仕組みです。

少しややこしいところですが、順番に整理すれば判断しやすくなります。

この記事では、産休を取得できる法的根拠、育休との違い、就業規則に記載がない場合の扱い、会社に拒否された場合の対応、休業中のお金や社会保険の取扱いまで、社会保険労務士の実務目線で詳しく解説します。

  • 産休制度がない会社でも取得できる理由
  • 産休と育休の対象者や期間の違い
  • 会社に産休を拒否された場合の対応方法
  • 産休中の給与や社会保険料の取扱い

産休がない会社でも取得できる?拒否された場合の対処法

産休がない会社でも取得できる理由

産休は、会社が任意で用意する休暇ではありません。

法律によって直接保障される休業であるため、会社の規模、就業規則の内容、過去の取得実績にかかわらず取得できます。

実務上は、社内規程に産前産後休業の項目がないことを理由に、会社側も従業員側も「この会社では産休を取れない」と誤解しているケースがあります。

しかし、就業規則に書かれていることだけが労働者の権利になるわけではありません。

法律で保障されている最低基準は、社内規程の整備状況にかかわらず適用されます。

まずは、産休の法的な位置付け、取得できる期間、対象となる労働者、育児休業との違いを確認しましょう。

そのうえで、就業規則や前例がない会社では、どのように手続きを進めればよいのかを整理します。

産前産後休業は法律上の権利

一般に産休と呼ばれている制度の正式名称は、産前産後休業です。

労働基準法第65条に基づき、出産する女性労働者に保障されています。

会社が独自に導入する福利厚生ではないため、会社が「制度を設けるかどうか」を自由に決められるものではありません。

会社に産休制度があるから取得できるのではなく、労働基準法が適用されることで取得できます。

産前休業は本人からの請求で始まる

産前休業は、原則として出産予定日の6週間前から取得できます。

双子や三つ子などの多胎妊娠の場合は、出産予定日の14週間前から取得可能です。

ここで重要なのは、産前休業は本人から会社への請求によって始まるという点です。

出産予定日の6週間前になったからといって、会社が自動的に休ませなければならないわけではありません。

本人が産前休業を請求せず、医師から就業を止められているなどの事情もなければ、出産直前まで働くことも制度上は可能です。

もっとも、体調に問題がある場合まで無理に働く必要はありません。

妊娠中は、医師等から勤務時間の短縮、休憩の確保、通勤緩和、休業などの指導を受けることがあります。

その場合は、母性健康管理指導事項連絡カードなどを利用し、会社に必要な措置を申し出る方法もあります。

産後休業は本人の希望だけでは短縮できない

産後休業は、出産日の翌日から8週間です。

産前休業とは異なり、本人から請求がなかったとしても、会社は原則として産後の女性を就業させることができません。

特に、出産日の翌日から6週間を経過するまでの期間は、本人が「体調がよいので働きたい」と希望しても就業できません。

会社と本人が合意していたとしても同じです。

母体保護を目的とした強制的な就業禁止期間であり、会社の繁忙、人手不足、本人の希望などを理由に例外扱いすることはできません。

区分 期間 本人の請求 就業の扱い
産前休業 出産予定日の6週間前から
多胎妊娠は14週間前から
必要 本人が請求した期間は就業させられない
産後6週間 出産日の翌日から6週間 不要 本人が希望しても就業できない
産後6週間経過後 産後6週間から8週間まで 就業する場合は本人の請求が必要 医師が支障ないと認めた業務に限り就業可能

出産予定日より早い場合と遅い場合

出産日当日は産前休業に含まれ、出産日の翌日から産後休業が始まります。

出産予定日より実際の出産が早かった場合は、結果として産前休業の期間が短くなります。

一方、予定日より出産が遅れた場合は、予定日から実際の出産日までの日数も産前休業として扱われます。

予定日を超過した分だけ産後休業が短くなるわけではありません。

実際の出産日の翌日から改めて産後8週間を数えます。

そのため、予定日より出産が遅れた場合は、産前産後休業の合計期間が当初の予定より長くなることがあります。

流産や死産も法律上の出産に含まれる

労働関係法令や健康保険制度では、妊娠4カ月以上、具体的には妊娠85日以上の分娩について、生産だけでなく、死産、流産、人工妊娠中絶も出産として扱われます。

非常につらい状況で会社へ事情を説明しなければならないこともありますが、該当する場合は産後休業の対象になります。

会社が「子どもを育てる育休とは違うから休めない」と判断しないよう、産前産後休業と育児休業を区別することが大切です。

産前産後休業は、子どもの養育を直接の目的とする制度ではなく、妊娠・出産による母体の保護を目的とする制度です。

そのため、一定期間以降の流産や死産なども対象になります。

産前産後休業の基本的な期間や会社の義務については、厚生労働省の公式案内でも確認できます。

制度改正や個別の取扱いを確認するときは、必ず最新情報を参照してください。

厚生労働省「産前・産後の休業について」

正社員以外も産休の対象になる

正社員以外も産休の対象になる

産前産後休業は、正社員だけを対象とする制度ではありません。

契約社員、パート、アルバイト、派遣労働者など、雇用されて働いている女性であれば、原則として対象になります。

産休には、勤続年数、週の勤務日数、1日の労働時間による取得条件はありません。

入社して間もない人や、週に数日だけ働くパートタイマーであっても、労働者として雇用されていれば産前産後休業を取得できます。

入社直後でも産休は取得できる

実際によくあるのが、「入社から1年たっていないので産休は取れない」と説明されるケースです。

しかし、産前産後休業には、入社後何カ月以上働かなければならないという勤続要件はありません。

例えば、入社から数カ月後に産前6週間の期間へ入った場合でも、本人が請求すれば産前休業を取得できます。

採用時点で妊娠していたかどうかや、会社が妊娠を把握していたかどうかも、産休を取得する権利の有無を左右するものではありません。

ただし、採用内定後から入社前までの期間は、まだ労働契約が開始していないことがあります。

産休は在職中の労働者を対象とする制度であるため、実際の入社日、労働契約の開始日、出産予定日との関係を確認する必要があります。

パートやアルバイトにも適用される

パートやアルバイトについても、雇用契約に基づいて会社の指揮命令を受けて働いているのであれば、産前産後休業の対象です。

「正社員向けの就業規則にしか産休の記載がない」「パート用の就業規則には書かれていない」という理由だけで、産休を認めないことはできません。

勤務時間が短い人や、週の所定労働日数が少ない人については、健康保険・厚生年金や雇用保険に加入していないことがあります。

しかし、社会保険に加入していることは、産前産後休業を取得するための条件ではありません。

産休を取得できるかどうか と、 出産手当金や社会保険料免除を利用できるかどうか は別に判断します。

社会保険に加入していないパートタイマーでも産休は取得できますが、健康保険の被保険者本人を対象とする出産手当金は受けられないことがあります。

一方、配偶者の健康保険の扶養に入っている場合は、出産育児一時金の対象になる可能性があります。

休業の権利と給付制度を混同しないことが重要です。

契約社員や有期雇用労働者の場合

契約社員などの有期雇用労働者も、契約期間中であれば産前産後休業の対象です。

契約期間が短いことや、更新回数が少ないことを理由として、産休そのものを拒否することはできません。

ただし、産休を取得したからといって、もともとの契約期間が自動的に延長されるわけではありません。

産休中に有期労働契約の満了日を迎える場合は、契約更新の有無が問題になります。

会社が妊娠や産休取得を理由として契約を更新しないのであれば、不利益な取扱いに該当する可能性があります。

一方、妊娠とは無関係に、従来から示されていた更新上限へ到達した場合や、更新しないことについて客観的かつ合理的な理由がある場合などは、個別に判断されます。

契約社員の場合は、産休を取得できるかだけでなく、契約満了日、更新基準、これまでの更新実績、会社から受けた説明を確認してください。

派遣労働者は派遣元へ申し出る

派遣労働者の場合、雇用主は実際に勤務している派遣先ではなく、原則として派遣元会社です。

そのため、産前産後休業の申出や社会保険の手続きは、派遣元会社に対して行います。

派遣先の業務を休むことになるため、実務上は派遣先との調整も必要ですが、派遣先に産休制度がないことを理由として取得できなくなるわけではありません。

まずは派遣元の担当者へ出産予定日と休業希望日を伝え、契約や休業後の働き方について確認しましょう。

業務委託やフリーランスは原則として対象外

業務委託契約や請負契約で働くフリーランスは、原則として労働基準法上の労働者ではないため、雇用されている人と同じ産前産後休業制度は適用されません。

仕事を休めるかどうかは、契約内容や発注者との協議によって決まります。

ただし、契約書に業務委託と書かれていても、勤務時間や勤務場所を細かく指定され、仕事の進め方について具体的な指揮命令を受け、報酬が労務提供の対価として支払われている場合などは、実態として労働者に該当する可能性があります。

契約名称だけでは判断できないため、自分が雇用契約なのか業務委託なのか分からない場合は、契約書、勤務実態、報酬の支払方法などを整理したうえで、労働基準監督署や専門家へ相談するのがよいかなと思います。

産休と育休の違いを整理する

産休と育休は続けて取得されることが多いため、同じ制度だと思われがちです。

しかし、根拠となる法律、制度の目的、対象者、取得要件、取得できる期間が異なります。

会社から「育休の対象外だから産休も取れない」と説明された場合は、制度を混同している可能性があります。

反対に、産休が無条件で取得できるからといって、育休もまったく同じ条件で取得できるとは限りません。

比較項目 産休 育休
正式名称 産前産後休業 育児休業
根拠法 労働基準法 育児・介護休業法
主な目的 妊娠・出産前後の母体保護 子どもの養育と仕事の両立
対象者 出産する女性労働者 一定の要件を満たす男女労働者
主な期間 産前6週間と産後8週間 原則として子が1歳になるまで
勤続要件 なし 労使協定により入社1年未満を除外できる場合がある
会社の拒否 法律上の申出を拒否できない 要件を満たす申出を原則として拒否できない

産休は出産する女性の母体保護が目的

産前産後休業は、妊娠・出産による身体的負担から女性労働者を保護する制度です。

そのため、対象となるのは出産する女性労働者であり、配偶者である男性労働者が産休を取得することはできません。

男性労働者については、子どもの出生後に出生時育児休業、いわゆる産後パパ育休や通常の育児休業を取得する制度があります。

日常会話では、男性が取得する休業まで含めて産休と表現されることもありますが、法律上は別の制度です。

育休は子どもを養育するための制度

育児休業は、原則として1歳未満の子どもを養育する労働者が、仕事を休んで育児に専念するための制度です。

女性だけでなく、男性も取得できます。

保育所等へ申し込んだものの入所できない場合など、法律上の延長要件を満たすときは、子どもが1歳6カ月になるまで、さらに必要な場合は2歳になるまで延長できることがあります。

ただし、単に「もう少し自宅で育てたい」「希望する保育所へ入れなかった」といった事情だけで、必ず延長できるとは限りません。

申込みの時期、入所希望日、不承諾通知など、延長要件を満たしていることを確認する必要があります。

育休では労使協定の確認が必要になる

育児休業では、会社が労働者代表との間で適法な労使協定を締結している場合、一定の労働者を対象外にできることがあります。

代表的なのは、入社1年未満の労働者と、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者です。

そのため、入社から1年未満の人については、「産休は取得できるが、育休は労使協定により対象外になる」ということがあり得ます。

会社が口頭で「入社1年未満は育休を取れない」と説明しただけでは、直ちに対象外になるわけではありません。

実際に労使協定が締結されているかを確認する必要があります。

有期雇用労働者については、申出時点で、子どもが1歳6カ月になるまでに労働契約が終了し、更新されないことが明らかな場合、育児休業の対象外になることがあります。

契約満了日が近いというだけで一律に対象外になるわけではなく、更新の可能性や契約内容を確認します。

産休から育休へは自動で切り替わらない

女性労働者が出産後も休業を続ける場合、産後休業が終わった翌日から育児休業を開始するのが一般的です。

しかし、産後休業を取っていれば自動的に育児休業へ切り替わるわけではありません。

育児休業については、原則として所定の期限までに会社へ申し出る必要があります。

会社指定の申出書がある場合は、その書式を使用します。

期限直前になって慌てないよう、出産前の段階で育児休業の取得予定を会社へ伝えておくとよいでしょう。

また、出産手当金は健康保険、育児休業給付は雇用保険の制度です。

申請先も支給要件も異なります。

会社から給与が出ない期間に受けられるお金という点は共通していますが、同じ給付ではありません。

産休、育休、出産手当金、育児休業給付は、それぞれ別の制度です。

休業期間だけでなく、申出期限、加入保険、申請書類も分けて確認しましょう。

産休と育休の具体的な期間を確認したい場合は、当事務所の 産休・育休期間の自動計算ツール も利用できます。

就業規則に記載がなくても取れる

就業規則に記載がなくても取れる

就業規則に産休の記載がなくても、産前産後休業を取得する権利はなくなりません。

労働基準法によって直接保障されている権利であり、会社の就業規則よりも法律上の基準が優先されるためです。

会社から「就業規則に産休が書かれていないので認められない」と言われた場合、その説明は適切ではありません。

就業規則に規定がないことは、会社側の規程整備の問題であって、労働者側の権利を失わせる理由にはなりません。

常時10人以上の事業場には就業規則が必要

常時10人以上の労働者を使用する事業場には、就業規則を作成し、労働者の過半数代表者等から意見を聴いたうえで、労働基準監督署へ届け出る義務があります。

この人数は、会社全体ではなく、原則として本店、支店、営業所などの事業場単位で判断します。

また、正社員だけでなく、パートやアルバイトなども常時使用する労働者数に含めて判断するのが基本です。

就業規則には、始業・終業時刻、休日、休暇、賃金、退職などの事項を記載します。

産前産後休業についても、休暇・休業に関する事項として明確にしておく必要があります。

ただし、就業規則への記載が漏れているからといって、産休が存在しないことにはなりません。

会社は法律に従って産前産後休業を認めるとともに、今後の運用に備えて規程を見直す必要があります。

就業規則に産休の記載がない場合は、 産休を取得できないのではなく、会社側に規程の見直しが必要な状態 と考えるのが適切です。

常時10人未満でも産休は適用される

常時10人未満の労働者を使用する事業場には、労働基準法上、就業規則の作成・届出義務がありません。

そのため、小規模な会社や個人事業所では、就業規則自体が作成されていないことがあります。

しかし、就業規則の作成義務がないことと、産前産後休業を与えなくてよいことは別の話です。

労働基準法第65条は、事業場の人数にかかわらず適用されます。

従業員が1人しかいない事業所でも、その従業員が法律上の産休を請求した場合、会社は対応しなければなりません。

就業規則が法律を下回る場合

就業規則に「勤続1年以上の正社員に限り産休を認める」「パートは産休の対象外とする」と記載されていたとしても、法律上の基準を下回る部分について、そのまま有効なルールとして扱うことはできません。

就業規則は、法律より労働者に有利な内容を定めることはできます。

例えば、産前休業を法律上の6週間より早い時期から会社独自の有給休暇として認めることや、産休中の給与を一定割合支払うことなどは可能です。

一方で、法律が保障している期間を短縮したり、対象者を正社員だけに限定したりすることはできません。

会社独自の有給の産前休暇については対象者を定める余地がありますが、労働基準法上の産前産後休業まで対象外にすることはできません。

会社への伝え方

会社から就業規則に書かれていないと言われた場合、最初から強い言葉で違法性を追及すると、実務上の調整が難しくなることがあります。

担当者が制度を知らないだけというケースもありますので、まずは事実確認から始めるのがよいでしょう。

例えば、「就業規則に記載がないことは確認しましたが、労働基準法上の産前産後休業として、出産予定日の6週間前から休業したいと考えています。

必要な申請書類を教えてください」と伝えます。

会社指定の書式がない場合は、出産予定日、産前休業開始希望日、氏名、申出日を記載した書面やメールを提出しておく方法があります。

母子健康手帳の該当箇所や出産予定日を確認できる書類については、会社から提出を求められることもあります。

口頭での相談だけでは、後から申出の有無や日付について認識が食い違うことがあります。

社労士実務でも、申出内容を記録として残すことは非常に大切なポイントです。

産休の前例がなくても問題ない

中小企業では、これまで出産する従業員がいなかったため、産休の取得実績がないことも珍しくありません。

私が就業規則を確認する際にも、制度を意図的に設けていないというより、単に前例がなく、規程や申請書の整備まで手が回っていない会社があります。

取得実績がないことと、取得できないことは別の問題です。

あなたが会社で初めて産休を申し出た従業員であっても、法律上の権利は変わりません。

前例がない会社で起こりやすいこと

前例がない会社では、人事担当者が「どこへ申請すればよいか分からない」「給与を払わなければならないのか」「代替要員をどうするのか」といった実務上の不安を抱えていることがあります。

その結果として「うちには制度がない」「今まで誰も取っていない」と説明してしまうことがありますが、多くの場合、法律上取得できないという意味ではなく、会社内の手順が決まっていないという意味です。

会社側がすぐに明確な回答を出せない場合でも、まずは産前産後休業を取得する予定を伝え、会社に必要な手続きを調べてもらいましょう。

会社は、年金事務所、健康保険組合、ハローワーク、労働局、顧問社労士などへ確認できます。

会社側が進める主な準備

会社側は、産休の申出を受けたことをきっかけに、次のような実務対応を進める必要があります。

  • 出産予定日と産前休業開始予定日の確認
  • 産前産後休業の申出を書面で受け付ける
  • 業務の引き継ぎ範囲と代替要員を検討する
  • 休業中の連絡方法と緊急連絡先を確認する
  • 産前産後休業期間中の給与の取扱いを確認する
  • 健康保険・厚生年金保険の保険料免除手続きを行う
  • 出産手当金の事業主証明に対応する
  • 産後休業後に育児休業を取得する意向を確認する
  • 育児休業に関する個別周知と意向確認を行う
  • 復帰時期や復帰後の働き方を整理する

産休は一定期間業務から離れる制度ですから、業務の引き継ぎは必要です。

ただし、引き継ぎが完了しないことを理由として、法律上の産前休業開始日を一方的に遅らせることはできません。

会社と従業員の双方にとって、出産予定日が分かった段階から、無理のない範囲で早めに引き継ぎ計画を作ることが重要です。

転職先に取得実績がない場合の見方

転職活動中に求人票を見て、産休・育休の取得実績がないことを不安に感じる人もいます。

ただし、実績がないことだけで、直ちに制度を利用できない会社だと判断する必要はありません。

会社の設立から日が浅い、対象となる従業員がこれまでいなかった、従業員数が少ないなど、単純に取得する機会がなかった可能性もあります。

確認するときは、取得実績の有無だけでなく、就業規則や育児・介護休業規程が整備されているか、産休・育休の相談窓口があるか、担当者が制度を理解しているか、復職後の短時間勤務制度があるかなども見ておくとよいでしょう。

面接時に妊娠や将来の出産予定など、答えにくい私生活上の情報まで詳しく話す必要はありません。

「産休・育休制度の利用実績と、復職後の働き方について教えてください」と、制度や職場環境について質問する方法があります。

前例がないことを理由に退職を求められた場合

「前例がないから認められない」「代わりの人を採用できないから退職してほしい」といった説明を受けた場合は注意が必要です。

人手不足や引き継ぎの負担は、会社にとって現実的な課題です。

しかし、それを理由として法律上の産休を拒否したり、退職を強要したりすることはできません。

退職届を提出すると、後から「会社に辞めさせられた」と争う際に、本人の自発的な退職だったと扱われる可能性があります。

納得できない状態で、その場ですぐに署名・提出しないことが重要です。

会社から退職を勧められた場合は、誰から、いつ、どのような理由で、何を求められたのかを記録してください。

メールや書面がある場合は保存し、口頭でのやり取りについても日時と内容をメモしておきます。

会社側も、初めての産休で混乱しているからといって、安易に退職を求めるべきではありません。

まずは制度を確認し、休業期間、代替要員、復帰後の働き方を冷静に整理することが大切です。

産休がない会社で困ったときの対応

産休を申し出たところ、会社から難色を示された場合でも、すぐに退職を決める必要はありません。

担当者の理解不足なのか、会社として明確に拒否しているのかを整理し、申出や回答の記録を残しながら対応することが大切です。

特に中小企業では、法令に反する意図があるのではなく、担当者が手続きを経験していないために誤った説明をしていることがあります。

最初は制度の確認と申出内容の明確化から始め、それでも解決しない場合に外部相談へ進むとよいでしょう。

ここからは、中小企業における具体的な進め方、会社が拒否した場合の違法性、産後の就業制限、解雇や不利益な取扱い、産休中のお金について詳しく説明します。

中小企業でも産休は取得できる

産前産後休業について、会社の規模による適用除外はありません。

従業員が数人の会社や個人事業所であっても、雇用している女性労働者から法律上の期間内に産前休業の請求を受けた場合は、休業させる必要があります。

「中小企業には産休制度を導入する余裕がない」「大企業だけの制度だ」と誤解されることがありますが、産休は企業規模に応じて選択できる制度ではありません。

従業員数が少なく、1人が休む影響が大きい会社にも適用されます。

会社の認可を待つ制度ではない

会社が産休を与えるために、労働基準監督署や年金事務所などから事前の認可を受ける必要はありません。

労働者から請求を受けた会社が、法律に基づいて休業期間を確認し、就業させないように管理します。

その後、健康保険・厚生年金の保険料免除や出産手当金など、必要な社会保険手続きを進めます。

社内に専任の人事担当者がいない会社でも、年金事務所や加入する健康保険、顧問社労士などへ確認しながら対応できます。

社内に申請書がない場合でも産休は取得できます。

会社指定の様式がないことを理由に、申出を受け付けないことは適切ではありません。

従業員から会社へ伝える内容

産前休業を希望する場合は、口頭だけでなく、書面やメールで次の事項を伝えると実務が進みやすくなります。

  • 本人の氏名と所属部署
  • 出産予定日
  • 単胎妊娠か多胎妊娠か
  • 産前休業の開始希望日
  • 産後休業後に育児休業を取得する予定があるか
  • 休業前の業務引き継ぎ予定
  • 休業中の連絡先と連絡方法

産前休業は本人の請求によって開始するため、「いつから休みたいか」を明確にしておくことが大切です。

法律上取得できる初日から必ず休まなければならないわけではなく、その期間内で本人が請求した日から取得できます。

例えば、法律上は6週間前から取得できるものの、本人が4週間前からの取得を希望することも可能です。

ただし、体調に不安がある場合や医師の指導がある場合は、無理に勤務を続けず、必要な措置を会社へ申し出てください。

申出の記録を残す

会社に産休を申し出る際は、申出日と内容が分かる記録を残しておきましょう。

メールで送信する、申請書の控えを保管する、書面を2部作成して受付印をもらうなどの方法があります。

記録を残す目的は、最初から会社と争うためではありません。

担当者の変更や認識違いによって、「申出を受けていない」「休業開始日は別の日だと思っていた」という問題が起こるのを防ぐためです。

出産予定日、産前休業開始日、育児休業の予定、申出日 は、後から確認できる状態にしておきましょう。

会社側の実務対応

会社側は、産休の申出を受けたら、まず本人の希望と出産予定日を確認します。

そのうえで、休業期間、給与の取扱い、社会保険手続き、業務の引き継ぎ、育児休業の意向などを整理します。

本人の体調やプライバシーへ配慮することも重要です。

妊娠や出産に関する情報を、本人の同意なく社内へ広く共有することは避け、業務上必要な範囲で扱います。

また、代替要員の確保や引き継ぎについて、本人だけへ過度な責任を負わせるべきではありません。

業務体制を整える最終的な責任は会社側にあります。

本人には可能な範囲で協力してもらいつつ、管理職や同僚を含めて計画的に進める必要があります。

制度が未整備であれば、今回の申出を機に就業規則、育児・介護休業規程、社内書式、相談窓口などを整備することをおすすめします。

次回以降の申出にも対応しやすくなり、採用や定着の面でもプラスになります。

会社が産休を拒否すると違法になる

会社が産休を拒否すると違法になる

女性労働者が法律上の期間内に産前休業を請求したにもかかわらず、会社が休業を認めず働かせた場合は、労働基準法違反となる可能性があります。

また、産後8週間は原則として就業させることができず、特に産後6週間以内は本人の希望があっても働かせることができません。

労働基準法の母性保護規定に違反した場合は、同法第119条により、 6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 の対象となる可能性があります。

罰則の適用は個別の事実関係や行政・司法機関の判断によりますが、会社にとって無視できない法的リスクです。

制度がないという説明だけでは終わらない

会社から「制度がない」と言われた場合は、その言葉が何を意味しているのか確認してください。

社内申請書がない、就業規則に条文がない、担当者が手続きを知らないという意味であれば、法律に沿って手続きを整えることで解決できる可能性があります。

一方で、「制度がないので休むことは認めない」「休むなら退職してほしい」「欠勤扱いにする」と明確に言われた場合は、単なる手続き上の問題ではありません。

産休の拒否や不利益な取扱いが疑われます。

就業規則の記載漏れと、実際に産休を拒否して働かせる行為は分けて考えます。

後者は、会社にとって重大な労務リスクです。

最初に社内で確認する

直属の上司から産休を認めないと言われた場合でも、その上司が制度を正しく理解していない可能性があります。

まずは人事、総務、経営者など、労務管理を担当する部署や責任者へ確認しましょう。

確認する際は、「労働基準法上の産前産後休業として、出産予定日の何週間前から休業を希望しています。

会社としての申請方法を教えてください」と、制度名と希望日を具体的に伝えます。

会社からの回答も、可能であればメールや書面でもらってください。

口頭回答だけの場合は、後から「本日の面談では、産休を認められないとの説明を受けましたが、認識に相違がないか確認させてください」とメールを送る方法もあります。

証拠として残しておきたいもの

  • 会社へ提出した産休申出書やメール
  • 出産予定日が確認できる書類
  • 会社から届いたメールやチャット
  • 面談の日時、参加者、発言内容のメモ
  • 退職や雇用形態変更を求められた記録
  • 就業規則や育児・介護休業規程
  • 雇用契約書や労働条件通知書
  • シフト表や勤務記録

相談機関や専門家へ事情を説明する際、時系列と資料が整理されていると、問題点を把握しやすくなります。

感情的なやり取りだけを記録するのではなく、いつ、誰が、何を言い、会社としてどのような対応をしたのかを具体的に残すことが重要です。

相談先を使い分ける

妊娠、出産、産休、育休を理由とする不利益な取扱いやハラスメントについては、都道府県労働局の雇用環境・均等部または雇用環境・均等室が主な相談先です。

産前休業の請求を認めず働かせる、産後の就業禁止期間に出勤を命じるなど、労働基準法違反が疑われる場合は、事業場を管轄する労働基準監督署への相談を検討します。

会社との交渉、解雇や雇止めの有効性、損害賠償など、個別の法的判断が必要な場合は弁護士への相談が適しています。

社内制度、就業規則、社会保険手続き、会社への説明方法などを整理したい場合は、社会保険労務士への相談も選択肢です。

相談先に迷う場合でも、まずは都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどへ事情を伝え、適切な窓口を案内してもらう方法があります。

会社と話し合う余地がある場合は、直ちに対立関係を深める必要はありません。

ただし、会社から退職を迫られている、産後すぐに働くよう求められている、契約終了を示唆されているなど、影響が大きい場合は早めに外部へ相談してください。

産後六週間は希望しても働けない

産後休業は8週間ですが、そのうち出産日の翌日から6週間を経過するまでの期間は、本人が働きたいと希望しても、会社は働かせることができません。

これは、出産後の母体を保護するために法律が設けている強制的な就業禁止期間です。

仕事が忙しい、本人が早く復帰したい、会社と本人が合意している、短時間だけ働く といった事情があっても、産後6週間以内の就業は認められません。

在宅勤務や軽い作業でも注意が必要

産後6週間以内に会社へ出勤しなければ問題ない、というわけではありません。

在宅勤務、オンライン会議への参加、顧客へのメール対応、書類の作成なども、会社の指揮命令を受けて業務として行えば就業に該当する可能性があります。

本人が善意で「少しだけ対応します」と申し出た場合でも、会社が業務を依頼してはいけません。

緊急時の引き継ぎ確認についても、実質的な労務提供にならないよう注意が必要です。

産後6週間以内は、在宅勤務、短時間勤務、無償の手伝いという形式に変えても、実態が業務であれば問題になる可能性があります。

会社側は、出産前に業務情報を整理し、産後の本人へ連絡しなくても業務が進む体制を作っておくことが重要です。

本人側も、産後すぐの業務対応を安易に約束せず、必要な引き継ぎは出産前に進めましょう。

産後6週間を過ぎれば自由に復帰できるわけではない

産後6週間を経過した後から8週間までの期間については、一定の条件を満たす場合に限って就業できます。

  • 女性労働者本人が就業を請求していること
  • 医師が支障ないと認めた業務であること

会社が人手不足を理由として復帰を求めるだけでは足りません。

また、本人が復帰を希望していても、医師が就業可能と判断していない業務に就かせることはできません。

産後6週間経過後の早期復帰には、本人の請求と医師の判断の両方が必要です。

医師が認めるのは、本人の健康状態に支障がない業務です。

従来の業務すべてに復帰できるとは限らず、身体的負担が大きい業務、夜勤、長時間労働などについて制限が必要になることもあります。

産後8週間が過ぎた後

産後8週間が終了すると、産前産後休業の期間は終わります。

その後は、育児休業を取得する、年次有給休暇を利用する、会社の休職制度を利用する、職場へ復帰するなど、本人の状況と制度の要件に応じて選択します。

育児休業を希望する場合は、所定の期限までに申出が必要です。

産後8週間が終了する直前に初めて相談すると、申出期限や社内手続きの問題が生じることがあります。

出産前の段階で育児休業の希望を伝え、必要書類を確認しておきましょう。

早期復帰を考える場合の実務上の注意

家庭の事情、収入面、本人の希望などから、産後8週間の終了後すぐに復帰したい人もいます。

法律上復帰できる時期であっても、産後の体調や育児環境には個人差があります。

復帰する場合は、勤務時間、通勤方法、授乳や保育の環境、残業の有無、夜勤、休憩、子どもの預け先などを事前に確認しましょう。

育児時間、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、短時間勤務制度など、利用できる制度がないか会社へ確認することも大切です。

会社側も、「産後休業が終わったのだから以前と同じように働ける」と決めつけず、本人の希望を確認しながら復帰支援を行う必要があります。

復帰直後の働き方を段階的に調整することは、離職防止の面でも有効です。

解雇や不利益な扱いは禁止される

会社は、労働者が妊娠したこと、出産したこと、産前産後休業を請求・取得したことなどを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをしてはいけません。

不利益な取扱いは、明確な解雇だけではありません。

退職の強要、雇止め、不合理な降格、減給、不利益な配置転換、正社員からパートへの変更強要、人事評価上の不利益など、さまざまな形が考えられます。

産休中とその後30日間の解雇制限

労働基準法第19条により、原則として産前産後休業中と、その後30日間は解雇が禁止されています。

これは、休業中や復帰直後の不安定な時期に労働者の雇用を保護するための規定です。

ただし、どのような事情があっても絶対に解雇できないという意味ではなく、一定の法律上の例外があります。

個別の解雇が有効かどうかは、解雇理由、時期、手続き、会社の状況などによって判断されます。

また、妊娠中や産後1年以内の女性労働者に対する解雇は、会社が妊娠・出産などを理由とする解雇ではないことを証明できない場合、無効とされる可能性があります。

産休の申出直後に解雇や退職勧奨を受けた場合は、会社が説明した理由と、それまでの勤務評価や契約更新状況を記録してください。

不利益な取扱いの具体例

  • 妊娠を報告した直後に退職を求める
  • 産休を取るなら契約を更新しないと伝える
  • 正社員からパートへの変更を強要する
  • 産休取得だけを理由に降格や減給を行う
  • 復帰後に合理的な理由なく仕事を与えない
  • 産休取得者だけを不利な人事評価にする
  • 本人が希望していない配置転換を制裁的に行う
  • 産休の申出を撤回するよう繰り返し圧力をかける

ただし、これらに似た取扱いがすべて直ちに違法になるわけではありません。

例えば、会社全体の組織再編により複数の従業員が配置転換される場合や、本人の能力・勤務実績に基づいて適正に評価される場合など、妊娠や産休取得とは別の合理的理由があることもあります。

重要なのは、その取扱いが妊娠、出産、産休の申出・取得を理由として行われたものかどうかです。

時期が近い場合でも、因果関係や会社の説明を含めて個別に判断します。

退職届への署名を求められた場合

会社から「産休を取るなら一度退職して、落ち着いたら再雇用する」「会社に迷惑をかけるのだから退職届を出してほしい」と言われるケースがあります。

その場で退職届へ署名すると、後から会社都合の解雇ではなく、本人が自ら退職したと主張される可能性があります。

退職する意思がない場合は、すぐに署名せず、持ち帰って検討すると伝えてください。

退職を希望していない場合は、 産休を取得して雇用を継続したい意思 を、メールなど記録に残る方法で明確に伝えましょう。

すでに退職届を提出してしまった場合でも、提出時の状況、会社からの説明、圧力の程度などによっては、意思表示の有効性が問題になることがあります。

ただし、撤回や取消しが認められるかは個別判断となるため、早めに弁護士などへ相談してください。

マタニティハラスメントへの対応

会社には、妊娠、出産、産休、育休などに関するハラスメントを防止するため、相談窓口の設置、相談への適切な対応、事実確認、再発防止などの措置を講じる義務があります。

上司や同僚から「休むなら辞めればよい」「妊娠する時期を考えてほしかった」「周りに迷惑をかけている」などと繰り返し言われ、就業環境が害されている場合は、社内の相談窓口へ相談しましょう。

相談したことを理由として、さらに不利益な取扱いをすることも許されません。

社内で解決しない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部または雇用環境・均等室などへ相談できます。

一方で、妊娠中や産休中であれば、すべての注意・指導や人事上の対応が禁止されるわけではありません。

通常の業務上必要な指導や、妊娠・産休とは無関係な合理的措置まで禁止されるものではないため、具体的な言動や取扱いを整理して判断する必要があります。

解雇、雇止め、退職勧奨、降格、配置転換などの有効性は、事実関係によって結論が変わります。

最終的な判断は専門家にご相談ください。

産休中の給与と社会保険料

産休中の給与と社会保険料

産休を取得できることと、会社から給与が支払われることは別の問題です。

労働基準法は産前産後休業を保障していますが、産休期間中の給与を会社に支払わせる規定ではありません。

会社の就業規則、賃金規程、労働協約などに産休中も給与を支給する定めがなければ、休業期間中は無給となるのが一般的です。

ただし、健康保険の被保険者が一定の要件を満たす場合は出産手当金を受けられる可能性があり、健康保険・厚生年金保険料の免除制度もあります。

産休中の給与は会社の規程を確認する

産休中に会社が給与を支払うかどうかは、就業規則や賃金規程などによって決まります。

法律上、産休期間を有給にする義務はありません。

会社によっては、産休中の一定期間を有給とする、会社独自の手当を支給する、積立有給休暇を利用できるなど、法定基準を上回る制度を設けていることがあります。

一方、多くの会社では、産休期間を無給としています。

無給になる場合は、いつから給与が減額されるのか、月途中から産休へ入る場合の給与計算、通勤手当、住宅手当、賞与の査定、住民税の徴収方法なども確認しておくと安心です。

産休中の賃金が無給でも、産休を取得する権利が失われるわけではありません。

休業の権利と賃金の支払いは別の問題です。

出産手当金の基本

出産手当金は、健康保険の被保険者本人が、出産のために仕事を休み、その期間について給与の支払いを受けられないときに支給される制度です。

一般的な支給対象期間は、出産日以前42日、多胎妊娠の場合は98日から、出産日の翌日以後56日までの範囲です。

出産が予定日より遅れた場合は、予定日から実際の出産日までの期間も支給対象期間へ加わります。

1日当たりの支給額は、原則として、支給開始日以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額を30で割り、3分の2を掛けて計算します。

ただし、健康保険の加入期間が12カ月未満の場合や、産休中に給与の一部が支払われる場合などは、計算方法や支給額が異なることがあります。

確認項目 一般的な取扱い
対象者 勤務先の健康保険に加入する被保険者本人
主な要件 出産のため仕事を休み、十分な給与を受けていないこと
対象期間 原則として産前42日、多胎妊娠は98日、産後56日
支給額 原則として標準報酬月額を基礎に算定した日額の3分の2相当
給与が一部出る場合 出産手当金との差額が支給される場合がある

支給額は、普段の手取り給与の単純な3分の2ではありません。

標準報酬月額を基礎として計算され、税金や社会保険料の扱いも通常の給与とは異なります。

具体的な金額を知りたい場合は、加入している健康保険へ確認してください。

扶養に入っている人や国民健康保険の人

出産手当金は、原則として勤務先の健康保険に加入している被保険者本人を対象とします。

配偶者の健康保険の被扶養者として加入している人は、通常、出産手当金の対象になりません。

また、市区町村の国民健康保険には、会社員が加入する健康保険と同様の出産手当金制度は原則としてありません。

ただし、加入している国民健康保険組合などによって独自の給付が設けられている場合があります。

出産手当金を受けられない場合でも、健康保険や国民健康保険から出産育児一時金を受けられる可能性があります。

出産手当金は休業中の所得保障、出産育児一時金は出産費用の負担軽減を目的とする別の給付です。

出産手当金と出産育児一時金は名称が似ていますが、対象者、目的、申請方法が異なります。

両者を混同しないようにしましょう。

産前産後休業中の社会保険料免除

健康保険と厚生年金保険に加入している従業員が産前産後休業を取得した場合、会社が産前産後休業取得者申出書を提出することで、一定期間の健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。

免除の対象になるのは、従業員本人が負担する分だけではありません。

会社負担分も免除されます。

会社が従業員の給与から本人負担分を控除して納付し、後から本人へ返すという仕組みではなく、対象期間の保険料そのものが免除されます。

免除期間は、原則として産前産後休業を開始した月から、終了日の翌日が属する月の前月までです。

産前産後休業終了日が月末の場合は、その月まで免除対象となります。

具体的な月の判定は休業開始日・終了日によって変わるため、会社や年金事務所へ確認してください。

保険料が免除された期間も、健康保険の給付は通常どおり受けられます。

厚生年金についても、保険料を納付した期間として将来の年金額に反映されます。

産休中の社会保険料は、本人負担分と会社負担分の両方が免除され、免除期間も年金上は納付済みとして扱われます。

社会保険料免除の申出は、従業員本人が直接年金事務所へ提出するのではなく、原則として会社が行います。

会社に産休の前例がない場合は、この手続きが漏れることも考えられるため、担当者へ確認しておきましょう。

手続きの最新情報は、 日本年金機構「産前産後休業を取得し、保険料の免除を受けようとするとき」 で確認できます。

住民税やその他の支払いにも注意する

社会保険料が免除されても、住民税まで自動的に免除されるわけではありません。

住民税は前年の所得を基に課税されるため、産休中に給与がなくても支払いが発生することがあります。

会社が給与から住民税を天引きできなくなる場合は、休業前にまとめて徴収する、本人が納付書で支払う普通徴収へ切り替える、復帰後の給与から調整するなど、会社や自治体の取扱いに応じて対応します。

産休へ入る前に、住民税、会社の貸付金、社宅費、組合費、民間保険料など、給与天引きされている項目が休業中にどうなるか確認しておくとよいでしょう。

申請は自動ではない

出産手当金や社会保険料免除は、産休を取得すればすべて自動的に処理されるわけではありません。

会社や本人による申請・申出が必要です。

出産手当金の申請書には、本人の記入欄、会社による勤務状況・給与支払状況の証明欄、医師または助産師の証明欄などがあります。

産後にまとめて申請するケースが多いですが、申請時期や分割申請の可否は加入する健康保険へ確認してください。

産休後に育児休業へ移行する場合は、育児休業給付と育児休業期間中の社会保険料免除について、別途手続きが必要です。

産前産後休業の申出だけで、育児休業に関する手続きまで完了するわけではありません。

妊娠中の休職、産休、育休で受けられる給付の違いについては、 妊娠中の休職と育休手当の関係 でも詳しく解説しています。

制度の内容、支給額、申請期限、必要書類は、加入制度や法改正によって変わる可能性があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

産休がない会社でも権利を確認しよう

会社から「産休制度がない」と言われても、産前産後休業を取得する権利がなくなるわけではありません。

産休は労働基準法に基づく制度であり、就業規則への記載、会社の規模、雇用形態、勤続年数、過去の取得実績にかかわらず、出産する女性労働者に適用されます。

産休がない会社とは、法律上の産休を取得できない会社ではなく、社内規程や手続きが整備されていない会社であることがほとんどです。

まず確認すること

会社に産休制度がないと言われた場合は、最初に次の点を確認してください。

  • 会社が産前産後休業そのものを拒否しているのか
  • 単に就業規則や社内申請書がないという意味なのか
  • 産休と育休を混同していないか
  • あなたの出産予定日と産前休業開始可能日はいつか
  • 会社へ正式な申出を提出済みか
  • 産休中の給与は有給か無給か
  • 健康保険と厚生年金に加入しているか
  • 産後に育児休業を取得する予定があるか

担当者が制度を知らない場合は、産休は労働基準法に基づく休業であることを伝え、申請方法を確認しましょう。

会社に指定書式がなければ、出産予定日、休業開始希望日、氏名、申出日などを書面やメールで提出します。

会社と話すときの実務的な進め方

会社と話す際は、「産休を認めてくれるか」と許可を求める形だけではなく、「労働基準法上の産前産後休業を取得したいので、社内手続きを確認したい」と伝えると制度の位置付けが明確になります。

ただし、最初から担当者を責める必要はありません。

中小企業では、産休取得者が初めてで、単純に手続きが分からないこともあります。

会社が調査し、適切に対応する姿勢を示しているのであれば、出産予定日、引き継ぎ、社会保険手続き、育児休業の予定を一緒に整理すればよいでしょう。

一方で、明確に取得を拒否する、退職を求める、産後すぐの就業を命じるなどの対応がある場合は、口頭でのやり取りだけにせず、記録を残してください。

退職する意思がない場合は、会社から求められても、その場で退職届へ署名しないでください。

産休を取得して雇用を継続したい意思を明確に伝えましょう。

解決しない場合は外部へ相談する

会社へ制度を説明し、正式に申し出ても解決しない場合は、外部の相談先を利用してください。

産前産後休業中の就業、産休の拒否など、労働基準法上の問題は労働基準監督署へ相談できます。

妊娠、出産、産休、育休を理由とする不利益な取扱いやハラスメントについては、都道府県労働局の雇用環境・均等部または雇用環境・均等室が相談先になります。

会社との交渉や解雇・雇止めの法的判断が必要な場合は弁護士、就業規則、休業制度、社会保険手続きなどの実務整理は社会保険労務士へ相談するとよいでしょう。

会社側も早めに制度を整備する

企業側にとっても、産休の申出を受けてから初めて制度を調べる状態は望ましくありません。

従業員が安心して申し出られるよう、就業規則、育児・介護休業規程、申請書、相談窓口、引き継ぎ手順などを整備しておく必要があります。

産休や育休を取得しやすい環境を整えることは、単に法律違反を防ぐためだけではありません。

採用、定着、復職支援、管理職の負担軽減、業務の属人化解消にもつながります。

前例がない会社ほど、最初の対応が今後の基準になります。

本人の権利を尊重しながら、会社として必要な業務調整と手続きを進めることが重要です。

最後に押さえておきたいこと

産休は、会社に制度がある人だけが取得できる特典ではありません。

正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイト、派遣労働者にも適用され、入社直後でも取得できます。

ただし、産休と育休、給与と出産手当金、休業の権利と社会保険の給付は、それぞれ別の制度です。

あなたの雇用契約、労使協定、社会保険の加入状況、会社からの給与支給などによって、確認すべき点が異なります。

この記事で紹介した制度や金額の考え方は一般的な内容です。

法令改正、加入する健康保険、個別の雇用契約などによって取扱いが変わる可能性があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

会社から産休を拒否された、退職を求められた、契約更新を断られたなど、個別の労務問題については、資料ややり取りを整理したうえで、最終的な判断は専門家にご相談ください。

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