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パートの賞与はもらえる?相場・手取り・扶養のポイント

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

パートだからという理由だけで、賞与が必ずもらえないわけではありません。

一方で、会社には原則としてパートへ賞与を支給する法律上の一律の義務があるわけでもなく、実際に支給されるかどうかは会社の賞与制度や労働条件によって決まります。

ただし、正社員には賞与を支給しているのに、仕事内容や責任などが同じパートにはまったく支給しない場合には注意が必要です。

パートだから賞与を出さなくてよい、と単純に判断できるわけではなく、正社員との待遇差が不合理なものになっていないかを確認しなければなりません。

また、パートとして働いている方から実際によく聞かれるのが、賞与をもらうことで扶養から外れないかという疑問です。

特に社会保険の130万円の壁については、2026年4月から被扶養者認定における年間収入の確認方法が変更されており、労働契約に基づく賃金だけでなく、賞与も重要な確認項目になっています。

一方、いわゆる106万円の壁と130万円の壁は、同じ「年収の壁」と呼ばれていても仕組みが異なります。

賞与をどのように扱うのかも違うため、ここを混同すると自分が社会保険に加入するのか、家族の扶養に残れるのかを正しく判断できません。

この記事では、パートの賞与がもらえる条件や相場だけではなく、賞与から控除される社会保険料、雇用保険料、所得税、130万円の壁、106万円の壁まで、働く側が確認しておきたいポイントを社労士の実務目線で順番に整理します。

  • パートでも賞与をもらえる条件と法律上の考え方
  • パートの賞与相場や支給時期の目安
  • 賞与から引かれる社会保険料や税金
  • 賞与と106万円・130万円の壁との関係

パートの賞与はもらえる?相場・手取り・扶養を社労士が解説

パートの賞与はもらえる?法律と相場

まず押さえておきたいのは、パートだから賞与がない、正社員だから必ず賞与がある、と法律上決められているわけではないということです。

パートの賞与を考えるときは、「会社に賞与制度があるか」「自分がその制度の対象になっているか」「正社員との待遇差に合理的な理由があるか」という順番で整理すると分かりやすくなります。

求人票に「賞与あり」と書かれていても、全員一律で同じ金額が支給されるとは限りません。

勤続期間、週の勤務時間、評価、会社業績、賞与算定期間中の出勤実績などによって支給額が変わる会社もあります。

まずは「パートだから」という雇用形態だけで判断せず、実際の労働条件を確認することが重要です。

パートに賞与がないのは違法?

結論からいうと、 パートに賞与が支給されないことだけを理由に、直ちに違法になるわけではありません。

そもそも民間企業について、すべての会社に賞与制度を設けるよう義務付ける一般的な法律上のルールはありません。

会社が賞与制度そのものを設けていないのであれば、正社員にもパートにも賞与が支給されないことがあります。

また、会社に賞与制度がある場合でも、正社員とパートで賞与の支給条件や計算方法が異なること自体が、直ちに法律違反になるわけではありません。

ここは「パートに賞与がない=違法」「パートだから賞与なしでも必ず適法」という両極端な理解をしないことが大切です。

パートに賞与がない場合は、まず次の点を分けて確認しましょう。

  • 会社自体に賞与制度があるのか
  • パートが賞与の対象として定められているのか
  • 支給条件や算定方法はどのようになっているのか
  • 正社員とパートの待遇差に合理的な理由があるのか

雇用契約や就業規則に賞与の定めがある場合

法律上、会社に賞与制度を設ける一般的な義務がないことと、会社が自ら定めた賞与の約束を守らなくてもよいことは別問題です。

たとえば、労働条件通知書や雇用契約書に「賞与年2回、各10万円」と明確に記載されているようなケースでは、その内容が労働契約の一部になっている可能性があります。

会社が特段の根拠なく突然支給しないとすれば、契約上の問題が生じることがあります。

一方、実際の賞与規程では「会社の業績、本人の勤務成績等を考慮して支給することがある」「会社業績により支給しないことがある」といった規定もよく見られます。

この場合には、単に規程に「賞与」という文字があるだけでは、必ず一定額を受け取れるとは限りません。

賞与について確認するときは、「賞与あり・なし」だけを見るのではなく、支給対象者、支給条件、算定方法、業績による不支給条項まで確認することが重要です。

正社員にだけ賞与がある場合は別の問題がある

もう一つ重要なのが、正社員とパートとの待遇差です。

たとえば、正社員には毎年賞与を支給している一方で、パートは一律に賞与対象外としている会社があったとします。

このことだけで直ちに違法とはいえませんが、「なぜ正社員には支給し、パートには支給しないのか」という理由を検討する必要があります。

正社員は売上目標を負い、部下の指導や店舗管理、クレーム対応、転勤や配置転換まで求められる一方、パートは担当する定型業務に職務が限定されているのであれば、賞与の差について説明しやすいでしょう。

反対に、実際に担当している仕事も責任も正社員とほぼ変わらず、人材活用の方法にも大きな違いがないのに、「パートという名称だから」という理由だけで一切賞与を支給しないのであれば、不合理な待遇差ではないかという問題が生じます。

私が会社の賃金制度や就業規則を確認するときも、「正社員」「パート」という名称だけを見るのではなく、実際に何をしているのかを確認します。

労務管理では、形式よりも実態を見ることが非常に重要だからです。

「パートには賞与を出さなくても法律違反ではない」という説明だけで判断するのは適切ではありません。

会社の賞与制度、労働契約の内容、正社員との仕事内容・責任・人材活用の違いまで確認したうえで判断する必要があります。

なお、会社側から見ても、パートを賞与対象外とするのであれば「なぜ対象外なのか」を説明できる制度にしておくことが大切です。

雇用形態だけを理由に機械的な線引きをするより、職務、責任、勤務時間、評価など、賞与の目的と関連する基準で制度を設計するほうが労務トラブルを防ぎやすくなります。

同一労働同一賃金で賞与はどうなる?

同一労働同一賃金で賞与はどうなる?

正社員とパートの賞与を考えるうえで避けて通れないのが、いわゆる 同一労働同一賃金 の考え方です。

パートタイム・有期雇用労働法では、同じ企業の中で働く通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与などの個々の待遇について不合理な相違を設けることが禁止されています。

ここで重要なのは、「パートと正社員の待遇をすべて同じにしなければならない」という制度ではないことです。

仕事内容や責任、人材活用の方法などに違いがあるのであれば、その違いに応じて待遇差を設けること自体は考えられます。

問題になるのは、その待遇差について合理的に説明できるかどうかです。

賞与だけを単独で見るわけではない

実務上、正社員とパートの待遇差を考える場合には、主に次のような事情を比較します。

確認項目 具体的に見る内容 賞与との関係
職務内容 担当業務、難易度、責任の程度 業績への貢献度や役割に差があるか
配置変更の範囲 転勤、配置転換、職種変更など 将来的な人材活用の違いがあるか
責任 部下指導、売上責任、クレーム対応など 賞与評価の対象となる責任に差があるか
その他の事情 能力、経験、成果、人材活用の仕組みなど 待遇差を説明できる事情があるか
賞与の目的 業績貢献、功労、将来への期待など その目的と待遇差が対応しているか

たとえば、会社が賞与について「半年間の業績への貢献に応じて支給する」と位置付けているのであれば、正社員とパートが同程度に業績へ貢献しているにもかかわらず、パートという雇用区分だけを理由に一律ゼロとすることについては慎重に考える必要があります。

反対に、正社員には会社全体の目標達成、部門管理、人材育成、転勤への対応などを求め、それらも含めて賞与を決定している一方、パートには担当業務のみを求めているという場合には、その違いを賞与額へ反映することには一定の理由があります。

大阪医科薬科大学事件から分かること

賞与の待遇差について有名なのが、最高裁判所の大阪医科薬科大学事件です。

この事件では、正職員には賞与が支給されていた一方、アルバイト職員には賞与が支給されておらず、その待遇差が不合理かどうかが争われました。

最高裁は、賞与には正職員としての職務を遂行できる人材の確保・定着などの目的があることや、正職員とアルバイト職員では職務内容、責任、人事異動の範囲などに相違があったことを踏まえ、その事案において賞与を支給しないことが不合理とはいえないと判断しています。

ここから分かるのは、 「正社員に賞与があり、パートやアルバイトにない」という一つの事実だけでは結論が決まらない ということです。

その会社において賞与を何のために支給しているのか、その目的に照らして正社員とパートの違いを説明できるのかを個別に検討する必要があります。

同一労働同一賃金を考えるときのポイント

  • 正社員とまったく同額でなければ違法という制度ではない
  • パートだから一律に賞与なしでよいという制度でもない
  • 職務内容や責任、人材活用の違いを確認する
  • 賞与を支給する目的と待遇差が対応しているかを見る

2026年10月からルールが改正される

パートタイム・有期雇用労働者の待遇については、2026年10月1日から改正された施行規則や同一労働同一賃金ガイドラインなどが適用されます。

改正では、雇い入れ時に労働者が待遇差について説明を求めることができる旨を明示することや、賞与・退職手当などについて待遇差を検討する際の考え方の明確化などが行われます。

企業側にとっては、今後ますます「正社員とパートで扱いが違う理由を説明できること」が重要になります。

制度上の区分だけを作って終わりではなく、職務や責任の違いと待遇差がきちんと対応しているかを点検しておく必要があります。

パートや有期契約社員は、正社員との待遇差の内容や理由について会社へ説明を求めることができます。

賞与がない理由に疑問がある場合も、まず会社に制度や判断基準を確認することが一つの方法です。

(出典:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」)

パートの賞与相場はいくら?

パートの賞与について「普通はいくらくらいもらえるのか」「自分の3万円は少ないのか」と気になる方は多いと思います。

ただし、 パートの賞与には全国一律の相場があるわけではありません。

正社員のように「基本給の○か月分」という制度を採用している会社もあれば、一律1万円、3万円、5万円などの寸志を支給する会社、そもそも賞与制度を設けていない会社もあります。

そのため、単純な平均額だけを見て自分の賞与が高い・低いと判断するのはおすすめできません。

パートの賞与は寸志型も多い

中小企業で実務を見ていると、パートの賞与については正社員と同じ「基本給×○か月」という計算方法よりも、一定額の寸志を支給する制度もよく見られます。

たとえば、夏と冬にそれぞれ2万円、勤務実績に応じて3万円から5万円、会社業績が良い年だけ一律5万円といった形です。

一方、フルタイムに近いパートや長期間勤務しているパートについては、基本給や月額賃金を基準にして一定の支給率を掛ける会社もあります。

支給方法 賞与額の一例 主な特徴
寸志型 2万円~5万円程度 会社業績や勤務実績を考慮して一定額を支給
評価型 数万円~10万円超 勤続年数、勤務時間、人事評価などによって決定
月数型 給与の1~3か月分程度となる場合もある フルタイムに近いパートなどで採用されることがある

上記はあくまで一般的なイメージです。

実際の金額は会社の規模、業種、勤務時間、勤続年数、本人評価、会社業績などによって大きく変わります。

同じ会社でもパートごとに金額が違うことがある

パートに賞与を支給している会社であっても、全員が同じ金額をもらえるとは限りません。

たとえば週5日勤務と週2日勤務では会社への勤務量が異なりますし、勤続10年のパートと入社半年のパートでは経験や習熟度が異なることもあります。

そのため、「所定労働時間に比例させる」「人事評価によって支給率を変更する」「勤続年数に応じて一定額を加算する」といった仕組みを設ける会社があります。

ここで重要なのは、金額に差があることそのものではなく、 どのような基準で差を付けているのか です。

たとえば週20時間勤務の人と週40時間勤務の人で賞与額が違うことには説明しやすい理由があります。

一方、仕事も勤務時間もほぼ同じなのに、理由の分からない大きな差があるのであれば、会社に算定方法を確認してみてもよいでしょう。

求人票の「賞与あり」は金額保証ではない

これからパート求人を探している方は、「賞与あり」という記載だけで待遇を比較しないようにしましょう。

同じ賞与ありでも、年1回1万円程度の寸志と、年2回それぞれ月給1か月分では大きな違いがあります。

可能であれば、前年実績、支給回数、算定方法、パートの支給実績などを確認すると実態が分かりやすくなります。

賞与相場の数値は、調査対象、年度、企業規模、勤務時間、職種などによって大きく変わります。

ここで紹介している金額はあくまで一般的な目安であり、個別企業の賞与額を保証するものではありません。

また、賞与は会社業績によって変動することがあります。

前年に10万円支給されたからといって翌年も必ず10万円もらえるとは限りません。

特に「業績による」「勤務成績を考慮する」と定めている会社では、年度によって支給額が変わることも十分にあります。

パートの賞与を見るときは、単純な金額だけでなく、時給、勤務時間、昇給、各種手当、社会保険への加入状況まで含めた年間の待遇全体で比較するのが実務的ですよ。

賞与をもらいやすいパートの条件

パートの賞与は会社ごとの制度によりますが、実務上は 勤務時間、勤続期間、仕事内容、責任、勤務成績 などが支給条件として設定されているケースが多くあります。

もちろん、これらの条件を満たせば法律上必ず賞与をもらえるという意味ではありません。

あくまで、会社がパート向けの賞与制度を設計するときに基準として使われやすい項目です。

あなたが「自分は賞与の対象になりそうか」を確認するときにも、この視点で見ると分かりやすいと思います。

勤務時間や勤務日数

まず影響しやすいのが勤務時間です。

週5日で1日7時間働いているパートと、週2日で1日4時間働いているパートでは、会社への勤務量に大きな違いがあります。

このため、「週の所定労働時間30時間以上を賞与対象とする」「週4日以上勤務している者を対象とする」などの条件を設定する会社があります。

正社員とほぼ同じ時間勤務するフルタイムパートの場合には、勤務時間だけを理由として賞与を完全に対象外とすることについて、正社員との仕事内容や責任の違いも含めて確認する必要があるでしょう。

勤続期間や算定期間

賞与は、一定期間の勤務に対する評価や業績貢献を反映するものとして設計されることが多いため、勤続期間も重要です。

たとえば「入社6か月未満は対象外」「算定期間の半分以上勤務した者を対象とする」といった条件です。

入社したばかりのパートが最初の賞与をもらえない場合、「パートだから」ではなく「賞与の算定期間を勤務していないから」というケースもあります。

仕事内容や責任の程度

正社員に近い仕事を担当しているパートも賞与対象になりやすい傾向があります。

たとえば、単純な補助業務だけではなく、新人教育、シフト管理、発注、売上管理、顧客対応、責任者の代行などを行っているケースです。

特に長期間勤務しているパートの場合、実際には正社員より業務に詳しく、現場を支えているというケースも珍しくありません。

そのような働き方をしているにもかかわらず賞与がまったくなく、正社員には業績貢献を理由とする賞与があるのであれば、会社側としては待遇差の理由を整理しておく必要があります。

賞与をもらいやすいパートに見られる条件の例

  • 週4~5日などフルタイムに近い勤務をしている
  • 一定期間以上継続して勤務している
  • 正社員に近い業務を担当している
  • 新人教育や責任のある業務を担当している
  • 勤務成績や人事評価が良好である
  • 賞与の算定期間を一定以上勤務している

一方、週2日程度の短時間勤務、入社直後、期間限定の短期雇用などについては、会社の規程上、賞与の対象外になっているケースがあります。

ただし、 「週3日以下だから賞与を出さなくてよい」「週20時間未満なら賞与対象外にできる」という法律上の一律の基準があるわけではありません。

会社が独自に支給条件を定める場合にも、その条件は賞与の目的や働き方の違いと対応していることが望ましいでしょう。

企業側の実務としては、「パートは対象外」とだけ規定するより、「算定期間の勤務実績」「所定労働時間」「人事評価」「職務や役割」など、説明できる基準を設けておくほうがトラブル防止につながります。

私が労務管理を確認するときも、単純に雇用区分だけで待遇を決めるのではなく、 その待遇差が実際の仕事や責任の違いと対応しているか を重視します。

パート本人が確認したいポイント

  • 賞与対象となる最低勤続期間
  • 週の勤務時間や勤務日数の条件
  • 賞与算定期間
  • 人事評価や出勤率の基準
  • 賞与支給日の在籍要件

賞与がもらえるか分からない場合は、「私もらえますか」とだけ聞くより、「パートの賞与対象者はどのような条件になっていますか」と確認すると、制度全体を把握しやすいと思います。

パートの賞与はいつからもらえる?

パートの賞与はいつからもらえる?

パートの賞与が入社後いつから支給されるのかについても、法律で一律に「入社○か月後から」と決まっているわけではありません。

会社ごとの賞与規程、賃金規程、労働条件通知書、雇用契約書などによって決まります。

そのため、求人票に「賞与年2回」と記載されていたとしても、入社して最初に迎える賞与支給日に必ず満額を受け取れるとは限りません。

ポイントは賞与の算定期間

賞与を理解するうえで非常に重要なのが「算定期間」です。

たとえば、7月に夏季賞与、12月に冬季賞与を支給する会社があるとします。

夏季賞与の算定期間が前年10月1日から当年3月31日までとなっている場合、4月1日に入社した人は7月の支給日には在籍していても、その賞与の算定期間中には一日も勤務していません。

このような制度であれば、7月の賞与が不支給になることや、通常の賞与ではなく寸志のみとなることがあります。

逆に、算定期間が1月から6月までで、4月に入社したのであれば、3か月分だけ勤務しています。

会社の規程によっては在籍月数に応じて按分して支給することもあります。

主な条件 確認する内容 よくある取扱い
勤続期間 勤続3か月・6か月以上などの条件 一定期間未満は対象外や寸志
算定期間 評価対象期間に何か月勤務したか 勤務月数に応じて按分する場合がある
支給日在籍 賞与支給日に在籍している必要があるか 退職済みの場合は対象外となる規程もある
出勤率 欠勤や休職期間がどう扱われるか 一定のルールで減額される場合がある

「賞与年2回」と「年2回必ず満額支給」は違う

採用時によく確認するポイントですが、「賞与年2回」という表示は、毎回一定額を必ず支給するという意味とは限りません。

会社業績、勤務成績、算定期間中の在籍期間によって支給額が変わる制度もあります。

たとえば求人票に「賞与年2回」と書いてあっても、雇用契約書には「会社業績及び本人の勤務成績を考慮し支給することがある」と記載されているケースがあります。

この場合、支給回数だけを見て「夏と冬に必ず○万円もらえる」と考えるのは早いでしょう。

支給日在籍要件にも注意

賞与規程の中には、「賞与支給日に在籍している従業員に支給する」といった支給日在籍要件が設けられている場合があります。

たとえば賞与の算定期間をすべて勤務していたとしても、賞与支給日の前に退職している場合、規程上は支給対象外となることがあります。

退職予定がある方は、賞与の算定期間だけでなく、支給日在籍要件も確認したほうがよいでしょう。

入社後いつから賞与をもらえるか確認する順番

  • 賞与の支給月を確認する
  • 賞与の算定期間を確認する
  • 最低勤続期間の条件を確認する
  • 初回賞与の按分ルールを確認する
  • 支給日在籍要件を確認する

入社直後の賞与については、支給回数だけではなく「いつの勤務を評価して支給する賞与なのか」を見ることが重要です。

「4月に入社して7月だから3か月経った。

夏の賞与も3か月分はもらえるはず」とは限りません。

会社ごとの賞与制度を確認して初めて判断できます。

パート求人を比較するときも、賞与年2回という表記だけでなく、前年のパートへの支給実績や入社初年度の取扱いまで確認できると、年間収入をより正確にイメージできますよ。

賞与の支給条件はどこで確認する?

自分が賞与をもらえるか分からない場合、最初に確認したいのが 労働条件通知書や雇用契約書 です。

パートタイム・有期雇用労働者については、雇い入れ時に賞与の有無などを明示する必要があります。

そのため、採用時に会社から受け取った書類に「賞与:あり」「賞与:なし」「業績により支給」などの記載がないか確認してみましょう。

ただし、労働条件通知書に「賞与あり」とだけ記載されている場合には、具体的な金額、算定期間、評価方法、支給日在籍要件などまでは分からないことがあります。

その場合には、就業規則や賃金規程、賞与規程などを確認していきます。

最初は労働条件通知書を確認する

採用時に受け取った労働条件通知書や雇用契約書は、自分の労働条件を確認する基本資料です。

求人票は会社を選ぶ段階の情報ですが、実際に雇用される際の労働条件については、最終的に交付された労働条件通知書や締結した雇用契約書の内容を確認することが重要です。

たとえば求人票に「賞与あり」と書かれていたとしても、採用時の説明で条件がより具体化されていることがあります。

詳しい条件は就業規則や賞与規程へ

労働条件通知書に賞与の詳しい計算方法が書かれていない場合には、就業規則や賃金規程、賞与規程を確認します。

実務上は、次のような内容が書かれていることがあります。

  • 賞与の支給時期
  • 賞与の算定期間
  • 賞与対象となる従業員
  • 最低勤続期間
  • 人事評価や出勤率の取扱い
  • 支給日在籍要件
  • 会社業績が悪化した場合の取扱い

会社に常時10人以上の労働者がいる場合には、就業規則を作成して労働基準監督署へ届け出る義務があります。

また、作成した就業規則は従業員へ周知しなければなりません。

就業規則そのものではなく、別に賃金規程や賞与規程を設けている会社もあります。

賞与条件を確認する順番

  1. 労働条件通知書・雇用契約書
  2. 就業規則
  3. 賃金規程・賞与規程
  4. 会社の人事・給与担当者

正社員との差が分からない場合は会社に確認する

「正社員には賞与が出ているのに、なぜパートには出ないのだろう」と感じる場合もあるでしょう。

この場合、いきなり「違法ではないか」と考えるのではなく、まず会社に賞与制度の違いとその理由を確認するのがおすすめです。

正社員には管理業務や人材育成、転勤などが求められている一方、パートにはそれらが求められていないなど、外からは分からない制度上の違いがあるかもしれません。

一方で、実態を確認するとほとんど仕事内容に違いがないというケースもあります。

その場合には、会社側としても待遇差が合理的なものか見直す必要が出てくることがあります。

2026年10月1日からは、パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが改正され、雇い入れ時などに、正社員との待遇差について説明を求めることができる旨の明示に関するルールも追加されます。

待遇差について会社へ尋ねる場合も、「正社員には出ているのになぜ私はもらえないのですか」と対立的に聞くより、「パートの賞与制度では、どのような基準で対象者を決めていますか」と制度を確認する形で質問したほうが話を進めやすいと思います。

会社の説明を聞いても合理的な理由が分からない場合には、都道府県労働局などへの相談を検討する方法もあります。

重要なのは、求人票だけで判断せず、 最終的な労働条件と会社の規程を確認すること です。

特に賞与を含めて年間収入を調整したい方は、賞与額がどの程度見込まれるのかも早めに確認しておくとよいでしょう。

パートの賞与と手取り・扶養への影響

パートの賞与については、「いくらもらえるのか」だけでなく、実際にいくら手元に残るのか、そして扶養へどのような影響があるのかも重要です。

特に、自分自身で勤務先の健康保険・厚生年金に加入しているパートと、配偶者などの健康保険の扶養に入っているパートでは、賞与を受け取ったときの取扱いが異なります。

また、106万円の壁と130万円の壁では賞与の扱いそのものが違います。

ここからは、賞与明細を見るときに知っておきたい控除の仕組みと、扶養内勤務を考える方が特に注意したい年収の壁について整理していきます。

パート賞与の手取り計算方法

パートが賞与をもらった場合、額面金額がそのまま銀行口座へ振り込まれるとは限りません。

あなたの社会保険や雇用保険への加入状況、前月の給与額などに応じて、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税などが差し引かれます。

そのため、「会社から賞与10万円と言われたのに振込額が8万円台だった」ということも珍しいことではありません。

賞与の手取り額の基本的な考え方

賞与総額 − 社会保険料 − 雇用保険料 − 所得税 = おおよその手取り額

社会保険に加入しているかで大きく変わる

まず大きな違いになるのが、自分自身が勤務先の健康保険・厚生年金に加入しているかどうかです。

自分自身で社会保険に加入しているパートの場合には、賞与からも健康保険料と厚生年金保険料が原則として控除されます。

40歳以上65歳未満で介護保険の対象となる方については、介護保険料も関係します。

一方、配偶者などの健康保険の被扶養者になっており、自分自身では勤務先の健康保険・厚生年金に加入していない場合には、その賞与から本人負担の健康保険料や厚生年金保険料が控除されるわけではありません。

ただし、扶養に入っている人でも雇用保険の被保険者になっているケースはあります。

その場合には賞与から雇用保険料が控除されます。

所得税は前月の給与などで税率が変わる

賞与にかかる所得税は、「賞与額の○%」とすべての人に同じ税率を掛ける仕組みではありません。

原則として、前月の給与から社会保険料等を控除した後の金額と、扶養親族等の人数を基に「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から適用する率を確認します。

そして、賞与から社会保険料等を控除した後の金額に、その率を掛けて源泉所得税を計算します。

したがって、同じ10万円の賞与を受け取った人でも、前月給与や扶養親族等の人数が違えば、賞与から源泉徴収される所得税額も異なることがあります。

また、賞与額が前月給与の10倍を超える場合や、前月に給与の支払いがない場合などには通常とは異なる計算方法を使います。

住民税は通常の賞与計算では直接控除しない

賞与明細を見て「住民税が引かれていない」と疑問に思う方もいます。

給与から住民税を特別徴収している一般的なケースでは、住民税は年間の税額を毎月の給与から分割して徴収します。

そのため、通常は賞与額に対して別途住民税率を掛け、賞与から追加で徴収するという計算は行いません。

控除項目 賞与からの控除 主なポイント
健康保険料 社会保険加入者は原則あり 標準賞与額を基に計算
介護保険料 対象者はあり 原則40歳以上65歳未満
厚生年金保険料 加入者は原則あり 標準賞与額を基に計算
雇用保険料 被保険者はあり 賞与も賃金として計算
所得税 原則あり 前月給与や扶養人数等で税率が変わる
住民税 通常は賞与から直接控除しない 毎月の給与から特別徴収するのが一般的

たとえば賞与10万円であっても、「手取りは必ず○円」と一律には計算できません。

健康保険の保険料率は加入先によって異なりますし、年齢や前月給与などでも控除額が変わるからです。

手取り額は健康保険の保険料率、年齢、加入している健康保険、前月給与、扶養親族等の人数などによって変わります。

具体的な金額はあくまで個別計算となるため、一般的なシミュレーション結果だけで判断しないようにしてください。

賞与と毎月の給与では社会保険料や所得税の計算方法が異なるため、賞与明細の控除額を見て「毎月より税金が高いのでは」と感じることもあります。

まずは額面賞与と手取り賞与を分けて考えるのがポイントです。

賞与と給与の基本的な違いについては、 賞与と給与の違いや手取りの仕組みを解説した記事 でも詳しく整理しています。

賞与にかかる社会保険料と雇用保険

賞与にかかる社会保険料と雇用保険

自分自身が勤務先の健康保険・厚生年金に加入しているパートについては、原則として賞与にも社会保険料がかかります。

毎月の給与については標準報酬月額を使って社会保険料を計算しますが、賞与では 標準賞与額 を使います。

標準賞与額とは、実際に支給された賞与額から1,000円未満を切り捨てた金額です。

たとえば賞与が100,800円なら、標準賞与額は100,000円となります。

健康保険料と厚生年金保険料

保険 基本的な計算の考え方 本人負担
健康保険 標準賞与額 × 健康保険料率 原則として会社と折半
介護保険 標準賞与額 × 介護保険料率 対象者について原則会社と折半
厚生年金 標準賞与額 × 18.3% 原則9.15%相当を本人負担

健康保険料率は全国一律ではありません。

協会けんぽであれば都道府県ごとに保険料率が設定されますし、健康保険組合に加入している会社では、その健康保険組合の保険料率が適用されます。

厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、原則として会社と従業員が半分ずつ負担します。

そのため、本人負担は9.15%相当です。

40歳以上65歳未満の健康保険加入者については、原則として介護保険料も賞与から控除されます。

標準賞与額には上限がある

社会保険の標準賞与額には上限があります。

健康保険では、毎年4月1日から翌年3月31日までの年度累計で573万円が上限です。

厚生年金については、同一月に支給された賞与を合算して150万円が標準賞与額の上限となります。

たとえば厚生年金の対象となる賞与を同じ月に複数回受け取った場合には、その合計について150万円の上限を確認します。

もっとも、パートの賞与が数万円から数十万円程度である場合には、この上限が実際の計算に影響するケースは通常それほど多くありません。

制度として知っておく程度でよいでしょう。

雇用保険料も賞与から引かれる

雇用保険の被保険者となっているパートについては、賞与も雇用保険料の対象となります。

雇用保険では、賞与も労働の対償として会社から支払われる賃金に含まれるためです。

2026年度、つまり2026年4月1日から2027年3月31日までについて、一般の事業における労働者負担の雇用保険料率は5/1,000、つまり0.5%です。

そのため、一般の事業で賞与10万円が支給された場合、単純計算で雇用保険料の労働者負担は500円です。

賞与10万円の場合の雇用保険料の例

100,000円 × 0.5% = 500円

※2026年度の一般の事業を前提とした例です。

農林水産・清酒製造の事業や建設の事業では料率が異なるため、すべてのパートに0.5%が適用されるわけではありません。

また、雇用保険に加入していない人については、当然ながら賞与から雇用保険料は控除されません。

社会保険料は会社も負担している

賞与明細を見ると本人負担額だけが目に入るため、「こんなに引かれるのか」と感じる方もいると思います。

ただ、健康保険料や厚生年金保険料は原則として会社も負担しています。

たとえば厚生年金なら、本人が9.15%相当を負担するのと同様に、会社も原則9.15%相当を負担します。

会社側から見ると、パートへ10万円の賞与を支給する場合、会社の負担は賞与10万円だけではありません。

会社負担分の社会保険料や雇用保険料なども発生します。

そのため、企業がパート向け賞与制度を設計するときには、額面賞与だけでなく法定福利費まで含めた人件費を考える必要があります。

社会保険料率や雇用保険料率は年度や加入先によって異なる場合があります。

具体的な賞与の控除額を計算するときは、支給時点の保険料率を確認してください。

社会保険そのものの仕組みを整理したい方は、 社会保険の種類と加入条件を解説した記事 も参考にしてください。

賞与は130万円の壁に含まれる?

配偶者などの健康保険の扶養に入りながらパートで働いている方にとって、特に重要なのが130万円の壁と賞与の関係です。

結論として、 社会保険の被扶養者認定における年間収入を確認するとき、賞与は原則として収入に含まれます。

そのため、「毎月の給与を10万円以内にしているから年間120万円で大丈夫」と考えていても、年間に賞与が支給される契約になっているのであれば、その賞与を加えて確認する必要があります。

2026年4月から労働契約を基にした判定へ

ここは制度が新しくなっているため、特に注意してほしいところです。

2026年4月1日から、健康保険の被扶養者認定における年間収入について、一定の条件を満たす場合には、労働条件通知書や雇用契約書などに記載された労働契約の内容から見込まれる年間収入を基準として原則的な認定を行う取扱いが始まっています。

従来は、過去の給与実績や現在の収入、今後の収入見込みなどを確認する場面がありましたが、新しい取扱いでは、契約上の時給、所定労働時間、勤務日数などから年間収入を見込みます。

そして、この年間収入の算定に使う賃金には、 労働基準法上の賃金に該当する諸手当や賞与も含まれます。

(出典:日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」)

毎月10万円でも賞与があれば130万円を超えることがある

具体例で考えてみましょう。

たとえば次のような労働条件の場合

  • 毎月の給与見込み:10万円
  • 年間給与見込み:120万円
  • 契約上の賞与見込み:年間15万円

年間の見込み収入は、単純計算では120万円+15万円=135万円となります。

毎月の給与だけを見れば130万円未満ですが、賞与を合わせると135万円です。

このように、扶養内で働こうとするときは「月給×12」だけを見るのではなく、契約上見込まれる賞与や手当も合わせて確認する必要があります。

特に夏と冬にそれぞれ5万円や10万円の賞与が支給されるパートでは、年間給与が120万円程度でも130万円を超える可能性があります。

契約上決まっていない残業代とは扱いが違う

2026年4月からの取扱いで重要なのが、労働契約から年間収入を見込むという点です。

契約上の労働時間や賞与などから見込むことができる賃金は年間収入に反映します。

一方で、契約段階ではあらかじめ見込むことが難しい時間外労働による賃金などについては、同じように契約上の年間収入へ機械的に加えるわけではありません。

つまり、「今年は残業が増えるかもしれないから、その予想分まで全部加えて契約上の年間収入を計算する」という仕組みではありません。

ただし、シフト制などで契約上の勤務時間や賃金を明確に見込むことができない場合には、給与明細など別の資料を基に確認することがあります。

労働契約に「賞与あり」とだけ記載され、具体的な金額や算定方法が決まっていない場合などは、年間の見込み額を一律に判断できないことがあります。

実際の認定については、加入している健康保険や勤務先の担当者へ確認してください。

一時的に130万円を超える特例もある

130万円の壁については、人手不足による労働時間の増加などによって一時的に収入が増えた場合、事業主の証明を受けることで引き続き被扶養者として認定される仕組みがあります。

たとえば繁忙期に人手が足りず、一時的に残業や追加シフトが増えたため年収が130万円以上になったケースなどです。

ただし、この仕組みは、最初から恒常的に年間130万円以上となる労働契約を結んでいる人を扶養に残すための制度ではありません。

また、「130万円を1円超えたらその瞬間に必ず扶養から外れる」という単純な仕組みでもありません。

一時的な収入増なのか、今後も継続して130万円以上になる見込みなのかによって確認内容が変わります。

130万円の壁と税金の扶養は別物

年収の壁について相談を受けていると、税金と社会保険が混ざっているケースが非常に多いです。

ここで説明している130万円の壁は、原則として健康保険の被扶養者認定に関する収入基準です。

所得税が発生するかどうか、配偶者控除や配偶者特別控除を受けられるかどうかといった税制上のルールとは別に考えなければなりません。

確認したいこと 関係する制度
自分に所得税がかかるか 所得税
配偶者の税控除がどうなるか 配偶者控除・配偶者特別控除など
勤務先の社会保険へ加入するか 健康保険・厚生年金の適用要件
家族の健康保険の扶養に残れるか 健康保険の被扶養者認定

「扶養を外れたくない」という場合には、何の扶養について話しているのかを最初に整理することが大切です。

税金上は問題がなくても社会保険の扶養から外れる場合がありますし、その逆もあり得ます。

扶養そのものの条件について詳しく知りたい方は、 社会保険の扶養条件と年収の壁を整理した記事 も参考にしてください。

週20時間と106万円の壁の注意点

週20時間と106万円の壁の注意点

パートの賞与と扶養を考えるとき、130万円の壁と一緒に理解しておきたいのが、いわゆる 106万円の壁 です。

この2つはよく一緒に説明されますが、制度としては別物です。

130万円の壁は、主に配偶者などの健康保険の被扶養者として認定されるかどうかに関する基準です。

一方、106万円の壁と呼ばれているものは、一定の短時間労働者が勤務先の健康保険・厚生年金へ加入する基準から生まれた表現です。

そのため、賞与の扱いにも違いがあります。

2026年8月時点の短時間労働者の主な加入要件

2026年8月時点では、一定規模以上の会社で働く短時間労働者について、主に次の条件を満たすと健康保険・厚生年金の加入対象となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 所定内賃金が月額8.8万円以上
  • 学生ではないこと
  • 2か月を超えて雇用される見込みがあること
  • 対象となる企業規模などの条件を満たすこと

現在の企業規模要件では、原則として厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業などが対象です。

ここで「月額8.8万円×12か月=約106万円」となるため、一般に106万円の壁と呼ばれています。

106万円の判定では賞与を8.8万円に含めない

賞与との関係で非常に重要なのがここです。

現在の月額8.8万円という所定内賃金の判定では、賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は原則として算定対象に含めません。

つまり、月の所定内賃金が8万円の人が10万円の賞与を受け取ったからといって、それだけで「8.8万円の要件を超えた」と判断するわけではありません。

一方、先ほど説明した130万円の被扶養者認定では、賞与は原則として年間収入に含めて考えます。

項目 106万円の壁 130万円の壁
制度の意味 勤務先の社会保険への加入基準 家族の健康保険の扶養基準
主な確認方法 週20時間や所定内賃金など 年間収入の見込みなど
賞与の扱い 現在の月額8.8万円判定には原則含めない 年間収入には原則含める
超えた場合 他の要件も満たせば勤務先の社会保険へ加入 原則として被扶養者の収入要件を満たさなくなる

賞与と年収の壁を整理すると

  • 130万円の壁では賞与を原則として年間収入に含める
  • 現在の106万円の壁の月額8.8万円判定では賞与を原則含めない
  • 勤務先の社会保険に加入した後は賞与にも健康保険料・厚生年金保険料がかかる

2026年10月に賃金要件は撤廃予定

106万円の壁については、現在まさに制度が変わろうとしています。

2025年に成立した年金制度改正法によって、短時間労働者に設けられている「所定内賃金月額8.8万円以上」という賃金要件は撤廃されることになっています。

具体的な撤廃日は政令で定められる仕組みですが、現時点では 2026年10月の撤廃が予定されています。

このため、今後は「106万円を超えるか」という金額そのものではなく、 週の所定労働時間が20時間以上か という働き方のほうが重要になっていきます。

ただし、「106万円の壁がなくなる=2026年10月からすべてのパートが社会保険へ加入する」という意味ではありません。

企業規模要件はすぐにはなくならない

賃金要件とは別に、現在は企業規模要件があります。

こちらは2026年10月に一斉撤廃されるのではなく、段階的に対象企業を広げていく予定です。

時期 対象となる企業規模の目安
2027年9月まで 51人以上
2027年10月から 36人以上
2029年10月から 21人以上
2032年10月から 11人以上
2035年10月から 企業規模要件を撤廃

そのため、2026年10月に月額8.8万円の賃金要件が予定どおり撤廃されたとしても、企業規模要件については2027年9月まで現在の基準が残ります。

ここは制度改正の記事などでも混同されやすいところです。

「106万円の壁が撤廃される」という表現は、月額8.8万円という賃金要件がなくなることを指します。

企業規模要件まで2026年10月にすべてなくなるわけではありません。

週20時間未満にすれば必ず加入しないとも限らない

もう一つ注意したいのは、社会保険には短時間労働者の適用拡大とは別に、通常の労働者との比較による加入基準があることです。

一般的には、同じ事業所の通常の労働者の週所定労働時間や月所定労働日数の4分の3以上で働く場合、企業規模にかかわらず健康保険・厚生年金の加入対象となります。

そのため、「週20時間未満なら絶対に社会保険に入らない」と機械的に考えるのも適切ではありません。

あなたが社会保険へ加入するかどうかを確認するときには、勤務先の規模、週の所定労働時間、通常の労働者との勤務時間・日数の比較などを確認する必要があります。

特に扶養内で働きたい方は、「年間○万円まで」という金額だけでシフトを決めるのではなく、自分がどの社会保険加入基準に該当するのかを先に確認しておくことをおすすめします。

制度改正が続いている時期ですので、今まで大丈夫だった働き方が今後もそのまま同じ取扱いになるとは限りません。

パートの賞与で迷ったときの確認ポイント

ここまで見てきたように、パートの賞与については「パートだからもらえない」「賞与が出たら必ず扶養から外れる」といった一言では判断できません。

賞与をもらえるかどうかという労働条件の問題と、賞与をもらった後の社会保険料や税金の問題、さらに家族の健康保険の扶養に残れるかという問題をそれぞれ分けて整理する必要があります。

最後に、実際にあなたがパートの賞与について確認するときの順番をまとめておきます。

まず賞与をもらえる契約か確認する

最初に確認するのは、労働条件通知書や雇用契約書です。

「賞与あり」「賞与なし」「業績による」などの記載を確認し、詳しい支給条件が分からなければ就業規則や賞与規程を確認します。

特に重要なのは、賞与の有無だけではありません。

支給時期、算定期間、勤続期間、評価基準、支給日在籍要件まで確認すると、「自分がいつから、どの程度もらえる可能性があるのか」が見えてきます。

正社員との違いに疑問があれば仕事内容も比較する

正社員には賞与があるのに自分にはない場合には、正社員とパートの実際の働き方を確認します。

仕事内容、責任、配置転換、人材育成、転勤の可能性などに違いがあるのであれば、待遇差に理由がある可能性があります。

一方、実際の職務も責任もほぼ同じである場合には、なぜ賞与だけ大きな差があるのか、会社に説明を求めることを検討してもよいでしょう。

手取りを知りたいなら保険加入状況を確認する

賞与の手取り額を考える場合には、自分自身が勤務先の健康保険・厚生年金に加入しているかを確認します。

加入していれば、原則として賞与からも健康保険料・厚生年金保険料が控除されます。

雇用保険の被保険者であれば雇用保険料もかかり、所得税については前月給与や扶養人数等によって税率が変わります。

そのため、「賞与10万円なら手取り9万円くらい」といった大ざっぱな情報だけでは正確な金額は分かりません。

扶養内なら賞与を含めた年間収入を確認する

配偶者などの健康保険の扶養に入っている場合には、賞与を含めた年間収入を確認することが重要です。

2026年4月以降の被扶養者認定では、一定の場合、労働条件通知書などの労働契約から見込まれる年間収入によって判定します。

毎月の給与だけなら130万円未満でも、契約上の賞与を足すことで130万円以上となることがあります。

特に「扶養内だから月10万円に抑えている」という方は、賞与や各種手当を見落とさないようにしましょう。

106万円と130万円を混同しない

現在の106万円の壁については、月額8.8万円の判定に賞与を原則含めません。

一方、130万円の被扶養者認定では賞与を原則として年間収入に含めます。

同じ賞与でも制度によって扱いが異なるわけです。

さらに、短時間労働者の月額8.8万円という賃金要件については2026年10月の撤廃が予定されており、企業規模要件についても2027年以降段階的に縮小されていきます。

これからは単純に「年収を106万円以下にしておけばよい」と考えるよりも、週20時間という勤務時間の基準を意識することが重要になっていきます。

パートの賞与について最後に確認したいポイント

  • 労働条件通知書に賞与あり・なしの記載があるか
  • 賞与の算定期間や勤続期間の条件はあるか
  • 正社員との仕事内容や責任にどのような違いがあるか
  • 自分が健康保険・厚生年金に加入しているか
  • 雇用保険の被保険者になっているか
  • 賞与を含めた年間収入が130万円未満になるか
  • 週20時間以上働いて社会保険の加入対象にならないか
  • 2026年以降の制度改正が自分の働き方に影響しないか

パートの賞与は、単に「ボーナスがもらえてうれしい」で終わる話ではありません。

賞与があることで年間収入が増え、所得税や社会保険料、扶養認定に影響することがあります。

一方で、社会保険へ加入することは単純なデメリットでもありません。

保険料の本人負担は発生しますが、厚生年金によって将来の年金額が増えるほか、健康保険から傷病手当金や出産手当金を受けられる可能性があるなど、保障が厚くなる面もあります。

そのため、「社会保険料を払いたくないから何が何でも扶養内」という考えだけで働き方を決めるのではなく、年間の手取り、勤務時間、将来の保障まで含めて考えることが大切かなと思います。

また、企業側にとっても、パートの賞与制度は単に人件費の問題ではありません。

人材確保や定着、モチベーション向上というメリットがある一方、正社員との待遇差について合理的に説明できる制度設計にしておかなければ、同一労働同一賃金の観点から問題になる可能性があります。

実務では、「パートだから賞与なし」と最初から結論を決めるよりも、何のために賞与を払うのか、誰を対象にするのか、どのような基準で金額を決めるのかを整理して制度を作ることが重要です。

パートの賞与については、「賞与をもらえるか」という問題と、「もらった賞与が手取りや社会保険の扶養にどう影響するか」という問題を分けて考えることが最大のポイントです。

社会保険制度、被扶養者認定の取扱い、保険料率、雇用保険料率などは法改正や年度変更によって内容が変わることがあります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

また、実際の賞与支給義務、不合理な待遇差、社会保険への加入、被扶養者認定については、会社の規程や個別の労働条件によって判断が異なります。

最終的な判断は専門家にご相談ください。

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