こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
賞与とは、毎月支給される給与とは別に、会社の業績や従業員の勤務成績、貢献度などを踏まえて臨時的に支給される賃金です。
賞与の具体的な内容は、賞与の平均はいくら?年代・業種・規模別の相場をまとめた記事で確認できます。
一般にはボーナスと呼ばれ、夏と冬の年2回支給する会社が多く見られますが、支給時期や回数、計算方法は会社によって異なります。
賞与について特に誤解されやすいのが、会社には必ず賞与を支給しなければならない法律上の義務がある、という考え方です。
法律によってすべての会社に賞与制度が義務付けられているわけではありません。
ただし、就業規則や労働契約に支給時期、支給額、算定方法などが定められていれば、その内容によって会社に支給義務が生じます。
また、賞与の額面がそのまま銀行口座へ振り込まれるわけではありません。
賞与からは健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税などが差し引かれるため、額面と手取り額には差が生じます。
前月の給与額や扶養親族等の人数によって所得税率が変わることもあり、同じ金額の賞与を受け取っても、全員の手取り額が同じになるとは限りません。
会社側にとっては、賞与規程の書き方、評価方法、社会保険料の計算、賞与支払届の提出など、確認すべき実務が数多くあります。
従業員側にとっても、退職前に賞与を受け取れるのか、産休や育休中に社会保険料が免除されるのか、パートや有期雇用でも支給対象になるのかといった疑問が出てきます。
この記事では、賞与の基本的な意味から、給与との違い、支給義務、社会保険料と所得税の計算、決算賞与、退職時の支給日在籍要件まで、企業側と従業員側の双方に必要なポイントを実務目線で詳しく整理します。
- 賞与と毎月の給与との違い
- 会社に賞与の支給義務が生じる条件
- 賞与の社会保険料と所得税の計算方法
- 退職や産休・育休に伴う賞与の注意点

賞与とは何か|給与との違い
まずは、賞与の基本的な意味と、毎月の給与との違いを整理します。
賞与も給与も、従業員の労働に対して会社が支払う金銭であることに変わりはありませんが、法律上の支払義務、支給時期、金額の決まり方には大きな違いがあります。
会社が賞与制度を新しく設計する場合も、従業員が自分の賞与について確認する場合も、就業規則、賃金規程、賞与規程、雇用契約書、求人票などの内容を確認することが出発点です。
制度上の名称だけで判断せず、どのような条件で、誰を対象に、どのような計算によって支給されるのかを確認しましょう。
賞与の意味と主な支給時期
賞与とは、企業が従業員に対して、毎月支給する定期的な給与とは別に支払う臨時的な賃金です。
一般にはボーナスと呼ばれていますが、会社によっては夏季手当、年末手当、期末手当、特別手当、業績手当、勤勉手当など、異なる名称が使われることがあります。
ただし、賞与に該当するかどうかは、会社が付けた名称だけで決まるものではありません。
たとえば、特別手当という名称であっても、一定期間の勤務成績や会社業績への貢献に対して臨時に支給されるのであれば、実質的には賞与として取り扱われる可能性があります。
反対に、ボーナスという名称でも、毎月固定的に支給されるのであれば、社会保険上は月例の報酬として取り扱われることがあります。
賞与が支給される主な目的
会社が賞与を支給する目的は一つではありません。
実務上は、複数の目的を組み合わせて制度が設計されていることが多いです。
- 会社の利益や業績を従業員へ還元する
- 算定期間中の勤務成績や貢献を評価する
- 目標達成に対する報奨として支給する
- 従業員の定着や勤務意欲の向上につなげる
- 月例給与とは別に従業員の生活を支援する
- 会社全体や部門ごとの成果を共有する
たとえば、基本給の何か月分という形で支給する会社では、生活給や処遇としての性格が比較的強くなります。
一方、会社業績や個人評価によって金額が大きく変わる会社では、成果配分や報奨としての性格が強くなります。
社会保険労務士として賞与規程を確認していると、会社が考えている制度の目的と、実際の計算方法が一致していないケースがあります。
成果を反映させたいと考えているのに、全員へ一律で基本給の1か月分を支給しているケースなどです。
制度を設計するときは、賞与によって何を評価し、どのような行動を促したいのかを明確にすることが重要です。
賞与の支給時期に法律上の決まりはない
賞与をいつ支給するかについて、法律上の一律の決まりはありません。
一般的には、夏季賞与を6月または7月、冬季賞与を12月に支給する会社が多く見られます。
しかし、年1回だけ支給する会社、春と秋に支給する会社、四半期ごとに業績給を支給する会社、決算時に臨時賞与を支給する会社もあります。
重要なのは、支給日だけではなく、どの期間の勤務を評価するのかという算定期間です。
たとえば、夏季賞与の算定期間を前年10月1日から当年3月31日、冬季賞与の算定期間を当年4月1日から9月30日とする会社があります。
この場合、4月に入社した従業員は夏季賞与の算定期間に在籍していないため、夏の賞与が不支給または寸志になることがあります。
賞与年2回という表示だけでは、初年度の支給額まで分かりません。
求人票に賞与年2回、前年度実績3か月分などと書かれていても、入社初年度から必ず同じ金額が支給されるとは限りません。
前年度実績は、あくまで過去に在籍していた従業員へ支給した実績であり、将来の支給を保証するものではない場合があります。
給与と賞与の基本的な違い
| 項目 | 毎月の給与 | 賞与 |
|---|---|---|
| 主な支給方法 | 毎月固定的または継続的に支給 | 年1回から数回、臨時的に支給 |
| 支払義務 | 労働契約に基づき支払う必要がある | 制度を設ける法律上の義務はない |
| 支給額 | 基本給や手当として事前に定める | 会社業績や評価により変動することが多い |
| 社会保険 | 標準報酬月額を基準に計算 | 標準賞与額を基準に計算 |
| 所得税 | 給与所得の源泉徴収税額表で計算 | 原則として賞与用の算出率表で計算 |
さらに、社会保険上は、原則として年3回以下の回数で支給されるものを賞与として扱います。
年4回以上、毎年継続して支給されるものは、名称がボーナスや特別賞与であっても、原則として報酬に含めて標準報酬月額を決定します。
一般に使われるボーナスという言葉と、社会保険制度における賞与の定義は必ずしも一致しません。
四半期賞与や年4回のインセンティブを導入する会社では、給与計算だけでなく、定時決定や随時改定に与える影響まで確認する必要があります。
賞与に支給義務はあるのか

賞与について最も多い疑問の一つが、会社には賞与を支給する義務があるのか、という問題です。
結論からいうと、すべての会社に賞与制度を設けることや、毎年必ず賞与を支給することを一律に義務付ける法律はありません。
そのため、就業規則や労働契約に賞与の定めがなく、過去にも支給実績がない会社であれば、原則として会社が賞与を支給するかどうかを判断できます。
会社が赤字である場合はもちろん、黒字であっても、法律上当然に従業員へ利益を賞与として分配しなければならないわけではありません。
ただし、ここで注意したいのが、 賞与制度を設ける義務がないことと、すでに発生した賞与を支払わなくてもよいことは別問題 だという点です。
賞与も労働基準法上の賃金になり得る
労働基準法では、賃金を、賃金、給料、手当、賞与その他名称を問わず、労働の対償として使用者が労働者へ支払うすべてのものと定義しています。
そのため、一定期間の勤務や評価に対して支給される賞与は、一般に労働基準法上の賃金に該当します。
賞与が賃金に該当する場合、会社が従業員に対して具体的な金額を確定して通知した後や、就業規則の計算方法によって金額が確定した後に、理由なく一方的に取り消すことは難しくなります。
たとえば、12月10日に賞与を支給すると社内通知し、各従業員へ賞与額も通知した後で、会社の都合により全額を支給しないと変更するケースです。
通知内容や規程の定めによっては、従業員に具体的な賞与請求権が発生している可能性があります。
賞与制度を設ける義務と、確定した賞与を支払う義務は分けて考えます。
会社は原則として賞与制度を設けるかどうかを決められます。
しかし、就業規則や労働契約に基づいて支給条件と金額が確定した場合は、その定めに従って支払う必要があります。
就業規則の定めによって支給義務が変わる
実際によくあるのが、経営者は賞与を任意のものと考えている一方で、就業規則には「賞与は毎年7月および12月に基本給の2か月分を支給する」と明記されているケースです。
このような規定があれば、会社の業績が悪化したという理由だけで、一方的に不支給や減額へ変更することは難しくなります。
反対に、「会社の業績、本人の勤務成績その他の事情を考慮し、賞与を支給することがある」「会社の業績が著しく悪化した場合は支給しないことがある」と定め、支給の有無や金額を会社がその都度決定する仕組みであれば、会社に一定の裁量が認められる可能性があります。
ただし、裁量があるということは、理由を説明しなくてもよいという意味ではありません。
同程度の評価と貢献度である従業員のうち、一人だけを恣意的に不支給とするような運用は、差別的な取り扱いや権利濫用として問題になる可能性があります。
過去の支給実績も確認が必要
規程に賞与の定めがない場合でも、長期間にわたり毎年同じ時期に同じような基準で賞与を支給してきた場合は、その慣行が労働条件の一部として評価される可能性があります。
単に就業規則に書かれていないから、今年から説明なく不支給にしてよいとは限りません。
もっとも、過去に賞与を支給していた事実だけで、直ちに将来も同じ金額を支給する義務が生じるわけではありません。
支給額の決め方、会社の裁量の程度、従業員への説明、過去の通知内容などを総合的に確認します。
経営状況が悪化した場合でも、規程を確認せずに不支給を決めるのは危険です。
就業規則に具体的な支給額が定められている場合や、すでに従業員へ支給額を通知している場合は、賞与請求権が発生している可能性があります。
会社側は、支給決定前の段階で規程と過去の運用を確認してください。
会社が賞与の支給について一定の裁量を確保したいのであれば、制度を導入する段階で、業績によって減額または不支給とする場合があること、支給額は会社が査定して決定すること、算定期間や対象者の条件などを明確にしておく必要があります。
就業規則で支給義務が生じる場合
就業規則、賃金規程、賞与規程または労働契約に、賞与の支給時期、支給額、計算方法などが具体的に定められている場合は、その内容が労働条件となり、会社に賞与の支給義務が生じる可能性があります。
支給義務を判断するときは、単に賞与という言葉が書かれているかどうかではなく、誰を対象に、いつ、どのような条件で、どの程度の金額を支給することになっているかを確認します。
規定の具体性によって会社の裁量が変わる
| 規定の例 | 実務上の考え方 | 会社の裁量 |
|---|---|---|
| 賞与は支給しない | 原則として賞与制度はない | 臨時支給するかは会社判断 |
| 会社の業績により支給することがある | 支給の有無を会社が判断する余地がある | 比較的大きい |
| 毎年7月と12月に支給する | 支給時期に関する義務が生じる可能性がある | 一定程度制限される |
| 基本給の2か月分を支給する | 支給額が具体的に確定する可能性が高い | 小さい |
| 業績や評価により基本給の0か月から2か月分を支給する | 評価基準に沿った合理的な査定が必要 | 定められた範囲内 |
| 業績により減額または不支給とすることがある | 実際の業績や判断過程を説明できることが重要 | 一定程度認められる |
たとえば、「賞与は年2回支給する」とだけ定めている場合、支給額までは確定していないとしても、年2回の支給自体が労働条件になっている可能性があります。
そのため、会社が突然、今年は業績が悪いから支給回数をゼロにすると判断した場合、規程との整合性が問題になります。
一方、「賞与は会社の業績および本人の勤務成績を考慮し、原則として年2回支給する。
ただし、会社の業績その他やむを得ない事情がある場合は、支給時期を変更し、減額し、または支給しないことがある」と定めていれば、一定の事情に応じて支給を見送る余地が残ります。
規程と実際の運用を一致させる
中小企業では、規程の文章と実際の運用がずれているケースが少なくありません。
たとえば、規程には基本給と評価を基準に計算すると書かれているのに、実際には代表者がその都度、感覚的に金額を決めているケースです。
このような運用では、従業員から「なぜ自分は昨年より減ったのか」「同じ仕事をしている人より少ない理由は何か」と尋ねられたときに、客観的な説明ができません。
賞与は毎月の給与より金額が大きくなりやすいため、説明不足が評価制度全体への不信感につながることがあります。
私が賞与規程を確認するときは、規程の文章だけでなく、実際に使用している評価表、賞与計算表、過去の支給結果まで確認します。
規程上は評価連動となっていても、評価表が存在しない会社もあります。
この場合は、規程を直すだけではなく、実際に運用できる評価方法まで整える必要があります。
賞与規程に定めたい主な事項
- 賞与を支給する可能性がある時期
- 賞与の算定対象期間
- 支給対象となる従業員の範囲
- 会社業績と本人評価の反映方法
- 基本給や役割給など計算基礎となる賃金
- 欠勤、遅刻、早退、休職期間の取り扱い
- 中途入社者の按分方法
- 産休、育休、介護休業期間の取り扱い
- 懲戒処分を受けた場合の取り扱い
- 支給日に在籍していることを条件とするか
- 会社業績により減額または不支給とする可能性
特に重要なのが、算定期間と支給日在籍要件です。
算定期間中に勤務していたとしても、支給日前に退職した従業員を対象外にしたいのであれば、その旨を就業規則や賞与規程に明記し、従業員へ周知しておく必要があります。
規程の変更によって賞与を減らす場合
すでに基本給の2か月分を毎年支給すると定めている会社が、会社業績に応じて0か月から2か月分へ変更する場合は、従業員にとって不利益な労働条件変更となる可能性があります。
就業規則を変更して会社の裁量を広げれば、それだけで過去に確立した賞与の権利を自由に縮小できるわけではありません。
変更の必要性、従業員が受ける不利益の程度、変更後の内容の相当性、説明や協議の状況などが問題になります。
会社の業績により不支給にする可能性がある場合は、制度導入時から規程へ明記しておくことが重要です。
ただし、規定さえ置けばどのような運用でも認められるわけではありません。
評価の恣意的な変更や、特定の従業員だけを合理的な理由なく不支給にする運用は、別の労務トラブルにつながります。
賞与規程は、会社にとって都合のよい免責条項を並べるものではありません。
会社がどのような考え方で従業員の貢献を評価し、どのように利益を還元するかを明確にするルールです。
会社と従業員の双方が理解でき、実際に継続して運用できる内容にすることが大切です。
決算賞与の意味と通常賞与との違い

決算賞与とは、会社の事業年度の業績を踏まえ、決算月の前後に支給する賞与です。
通常の夏季賞与や冬季賞与が、あらかじめ定められた算定期間の勤務成績や基本給を中心に計算されることが多いのに対し、決算賞与はその年度の利益や目標達成状況を基準として支給される傾向があります。
たとえば、3月決算の会社が当期の売上や利益を確認し、目標を上回った場合に3月または4月に支給するケースです。
会社によっては、通常の夏季賞与と冬季賞与に加え、業績が良かった年度だけ3回目の賞与として支給します。
決算賞与を支給する主な目的
- 事業年度の利益を従業員へ還元する
- 年間目標の達成に対して報いる
- 従業員の会社への貢献を評価する
- 翌年度に向けた意欲を高める
- 組織全体で成果を共有する
- 一定の要件のもとで当期の損金算入を検討する
決算賞与には、単に従業員へ金銭を支給するだけではなく、会社の成果を従業員と共有する効果があります。
特に中小企業では、売上や利益の目標を達成したときに従業員へ還元することで、数字への関心や組織への一体感を高めることができます。
一方、利益が出たから余った金額を配る、というだけでは、従業員から支給基準が見えません。
前年度より利益が増えたのに賞与が減った場合などに不満が生じるため、決算賞与を導入するときも、会社業績、部門実績、本人評価のどこを反映するのかを整理したほうがよいでしょう。
通常賞与との違い
| 項目 | 通常の賞与 | 決算賞与 |
|---|---|---|
| 主な支給時期 | 夏や冬など会社が定めた時期 | 決算月の前後 |
| 主な目的 | 定期的な処遇、勤務評価、生活支援 | 年度業績の還元、目標達成への報奨 |
| 計算基準 | 基本給、算定期間、本人評価など | 会社利益、部門業績、年間の貢献度など |
| 支給の確実性 | 規程や慣行により比較的高い場合がある | 年度業績により支給しない場合がある |
| 社会保険 | 原則として標準賞与額の対象 | 原則として標準賞与額の対象 |
| 所得税 | 原則として賞与として源泉徴収 | 原則として賞与として源泉徴収 |
決算賞与にも社会保険料と税金がかかる
決算賞与という名称であっても、労働の対価として従業員へ支給する以上、原則として健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税の対象になります。
会社が現金で臨時に渡したから、給与明細へ載せなくてよい、社会保険料がかからない、というものではありません。
金銭だけでなく、自社商品や商品券などを労働の対価として支給する場合にも、賃金や賞与としての取り扱いを確認する必要があります。
役員へ支給する決算賞与については、従業員への賞与とは税務上の取り扱いが異なります。
事前確定届出給与などの要件を満たさない役員賞与は、法人税の計算上、損金に算入できないことがあります。
役員と従業員を同じ感覚で処理しないことが重要です。
損金算入と労務上の支給義務は別問題
決算賞与については、一定の要件を満たすことで、その事業年度の損金として処理できる場合があります。
ただし、税務上の損金算入が認められるかどうかと、従業員に対する労務上の支給義務が発生しているかどうかは別の問題です。
税務上は、各従業員へ支給額を通知した時期、実際に支払った時期、決算上の処理などが問題になります。
一方、労務上は、会社が従業員へ具体的な支給額を通知したことで、賞与請求権が確定したかどうかが問題になります。
決算前に金額を通知した後は、簡単に取り消せない可能性があります。
損金算入のために各従業員へ支給額を通知した場合、その通知によって従業員の賞与請求権が具体的に確定する可能性があります。
資金繰りが変わったから支給を取りやめる、という対応は慎重に判断してください。
毎年支給すると臨時性が薄れることがある
決算賞与を毎年同じ時期に、同じような基準で継続して支給していると、従業員から恒常的な労働条件であると受け止められる可能性があります。
業績連動の臨時的な制度として運用するのであれば、会社業績により支給しない年度があることや、支給額は毎年度決定することを規程上明確にしておくことが大切です。
ただし、会社の裁量を強調しすぎると、従業員にとって制度の目的が分からなくなります。
利益がどの程度出たら支給を検討するのか、個人評価をどの程度反映するのかなど、一定の考え方を社内で共有したほうが、賞与による動機付けの効果は高くなるかなと思います。
賞与の手取り額の計算方法
賞与の手取り額は、額面の賞与から社会保険料、雇用保険料、所得税などを差し引いて計算します。
会社から賞与50万円と通知された場合でも、50万円がそのまま口座へ振り込まれるわけではありません。
賞与の手取り額の基本式
賞与の額面額-健康保険料-介護保険料-子ども・子育て支援金-厚生年金保険料-雇用保険料-所得税等
住民税については、通常、前年所得を基に計算した年間税額を毎月の給与から分割して控除するため、賞与から別途控除しない会社が一般的です。
ただし、住民税の徴収方法や退職時の一括徴収などによって取り扱いが異なる場合があります。
健康保険料と厚生年金保険料
健康保険料と厚生年金保険料は、賞与の額面から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額を基準に計算します。
たとえば、額面が500,800円であれば、標準賞与額は500,000円です。
標準賞与額へ、賞与支給時点の健康保険料率、介護保険料率、子ども・子育て支援金率、厚生年金保険料率を掛け、原則として会社と従業員が負担します。
健康保険料率は加入している協会けんぽの都道府県支部や健康保険組合によって異なります。
40歳以上65歳未満の健康保険加入者は、原則として介護保険第2号被保険者となり、介護保険料も賞与から控除されます。
そのため、同じ会社で同じ額の賞与を受け取っても、39歳の従業員と40歳の従業員では手取り額が異なることがあります。
雇用保険料
雇用保険料は、原則として1,000円未満を切り捨てる前の実際の賞与額に、労働者負担の雇用保険料率を掛けて計算します。
健康保険と厚生年金では標準賞与額を使うのに対し、雇用保険では実際の賃金額を使う点が重要です。
雇用保険料率は年度や事業の種類によって異なります。
一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業では料率が異なるため、給与計算担当者は会社の事業区分に対応する年度の料率を確認してください。
所得税
所得税は、賞与額へ一律の税率を掛けるわけではありません。
通常は、前月の社会保険料等控除後の給与額と、給与所得者の扶養控除等申告書に記載された扶養親族等の人数を基準に、賞与に適用する税率を確認します。
そのため、同じ50万円の賞与を受け取った人でも、前月給与が25万円の人と50万円の人では、源泉徴収される所得税が異なる場合があります。
また、扶養控除等申告書を会社へ提出していない場合は乙欄による税率を使用するため、一般に控除額が大きくなりやすいです。
手取り額が人によって違う理由
- 加入している健康保険の保険料率が異なる
- 40歳以上65歳未満で介護保険の対象となっている
- 前月の給与額が異なる
- 扶養親族等の人数が異なる
- 扶養控除等申告書の提出状況が異なる
- 雇用保険の事業区分が異なる
- 育児休業等による社会保険料免除の対象となっている
- 標準賞与額の上限に達している
概算例を確認する
たとえば、賞与額が500,000円で、社会保険料等の従業員負担額が合計75,000円、所得税が25,000円だった場合、手取り額はおおむね400,000円です。
| 項目 | 概算額 |
|---|---|
| 賞与の額面 | 500,000円 |
| 社会保険料等 | 75,000円 |
| 所得税等 | 25,000円 |
| 概算手取り額 | 400,000円 |
ただし、この計算は仕組みを理解するための一例です。
実際の保険料率や所得税率は、加入先、年齢、前月給与、扶養人数、年度によって変わります。
賞与が50万円だから手取りは必ず40万円になる、という意味ではありません。
手取り額の概算では、額面の75%から85%程度と紹介されることがあります。
ただし、この割合はあくまで一般的な目安です。
高額賞与で標準賞与額の上限に達する場合や、育児休業等によって社会保険料が免除される場合は、手取り割合が大きく変わります。
社会保険料の詳しい仕組みや計算例は、 社会保険料の内訳と計算方法を解説した記事 でも確認できます。
賞与とは何かを実務で整理
ここからは、賞与を実際に支給するとき、または賞与明細を確認するときに迷いやすい社会保険料、所得税、産休・育休、退職の問題を整理します。
賞与は毎月の給与より金額が大きくなりやすいため、わずかな計算方法の違いや規程の不足が、会社と従業員の双方に大きな影響を与えます。
給与計算担当者は、支給額の決定だけでなく、社会保険料と税金の計算、賞与支払届の提出、退職者や休業者の取り扱いまで、一連の流れとして確認しましょう。
賞与の社会保険料の計算方法
健康保険と厚生年金保険では、実際に支給する税引き前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた金額を標準賞与額とし、この標準賞与額に各保険料率を掛けて保険料を計算します。
たとえば、賞与額が500,800円の場合、健康保険料と厚生年金保険料の計算に使用する標準賞与額は500,000円です。
500,800円へ直接保険料率を掛けるわけではありません。
賞与の社会保険料の基本式
標準賞与額×健康保険料率
標準賞与額×介護保険料率
標準賞与額×子ども・子育て支援金率
標準賞与額×厚生年金保険料率
標準賞与額に含まれるもの
標準賞与額の対象となるのは、名称を問わず、労働の対償として年3回以下の回数で支給されるものです。
夏季賞与、冬季賞与、決算賞与のほか、期末手当、年末手当、繁忙手当、業績一時金なども、支給実態によっては賞与として取り扱われます。
現金だけでなく、労働の対償として現物を支給した場合も、社会保険上の賞与に含まれる可能性があります。
会社の商品や商品券を渡した場合に、給与計算へ反映しなくてよいとは限りません。
一方、結婚祝金、災害見舞金、弔慰金など、労働の対償ではなく恩恵的に支給されるものは、通常、報酬や賞与に含まれません。
ただし、名称だけで判断せず、就業規則上の支給条件や支給実態を確認する必要があります。
労使折半となる保険料
健康保険料、介護保険料、子ども・子育て支援金、厚生年金保険料は、原則として会社と従業員が負担します。
協会けんぽでは通常、保険料を労使で折半しますが、健康保険組合では規約によって会社側の負担割合を高く設定している場合があります。
厚生年金保険料率は労使合計18.3%で、一般の被保険者の本人負担は原則として9.15%です。
健康保険料率や介護保険料率、子ども・子育て支援金率は加入先や年度により異なるため、必ず賞与の支給時点に対応する料率を使用します。
雇用保険料は計算の基礎が異なる
雇用保険料は、健康保険や厚生年金とは計算方法が異なります。
雇用保険では、1,000円未満を切り捨てた標準賞与額ではなく、原則として実際に支給する賞与額を含む賃金総額へ雇用保険料率を掛けます。
たとえば賞与額が500,800円の場合、健康保険と厚生年金は500,000円を基準に計算しますが、雇用保険は原則として500,800円を基準に計算します。
この違いは、給与計算ソフトを使っていても設定ミスが起こりやすいところです。
標準賞与額と実際の賞与額を混同しないようにしましょう。
健康保険と厚生年金は1,000円未満を切り捨てた標準賞与額を使用します。
一方、雇用保険では原則として切り捨て前の実際の賞与額を使用します。
資格喪失月に支給する賞与
退職者へ賞与を支給する場合、賞与支給日の属する月に社会保険料がかかるかどうかは、社会保険の資格喪失日との関係で判断します。
原則として、退職日の翌日が資格喪失日です。
月の末日に退職した場合は翌月1日が資格喪失日となるため、退職月の社会保険料が発生します。
一方、月の途中で退職した場合は退職日の翌日に資格を喪失し、資格喪失月に支給した賞与については健康保険料と厚生年金保険料がかからないことがあります。
ただし、雇用保険料と所得税は別の基準で判断します。
健康保険料がかからないから、すべての控除が不要になるわけではありません。
賞与支払届の提出
会社は賞与を支給した場合、原則として支給日から5日以内に被保険者賞与支払届を日本年金機構へ提出します。
賞与支払届には、被保険者ごとの賞与支払額などを記載します。
育児休業等によって保険料が免除される従業員や、資格喪失月の支給により保険料がかからない従業員についても、賞与支払届の提出が必要になることがあります。
また、賞与支払予定月として登録されている月に賞与を支給しなかった場合は、賞与不支給報告書の提出が必要になることがあります。
賞与を支給しなかった場合にも手続きが必要になることがあります。
賞与支払予定月として日本年金機構へ登録されている月に賞与を支給しなかったときは、賞与不支給報告書の提出対象になる場合があります。
支給したときだけ確認するのではなく、不支給時の処理も確認しましょう。
標準賞与額の計算、上限額、賞与支払届の提出方法については、 日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」 で最新情報を確認できます。
標準賞与額の上限と年4回支給

標準賞与額には上限があります。
賞与の額面が上限を超えた場合、上限を超える部分には健康保険料や厚生年金保険料がかかりません。
ただし、健康保険と厚生年金では上限額だけでなく、集計する期間も異なります。
| 制度 | 標準賞与額の上限 | 集計期間 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 573万円 | 毎年4月1日から翌年3月31日までの累計 | 同一保険者における年度累計で判断 |
| 介護保険 | 573万円 | 毎年4月1日から翌年3月31日までの累計 | 健康保険の標準賞与額に連動 |
| 子ども・子育て支援金 | 573万円 | 毎年4月1日から翌年3月31日までの累計 | 健康保険の標準賞与額に連動 |
| 厚生年金保険 | 150万円 | 同一月に支給した賞与の合計 | 同月内に複数回支給した場合は合算 |
厚生年金は1か月あたり150万円が上限
厚生年金保険の標準賞与額の上限は、1か月あたり150万円です。
1回の支給ごとに150万円までという意味ではありません。
たとえば、同じ月に100万円の賞与を2回支給した場合、実際の支給総額は200万円ですが、厚生年金の標準賞与額は合計150万円が上限です。
別々の日に支給しても、同一月内であれば合算して判断します。
反対に、6月に150万円、12月に150万円を支給した場合は、それぞれ異なる月の支給であるため、それぞれ150万円までが厚生年金の標準賞与額となります。
健康保険は年度累計573万円が上限
健康保険の標準賞与額は、毎年4月1日から翌年3月31日までの年度累計で573万円が上限です。
1回ごとや1か月ごとの上限ではありません。
たとえば、7月に300万円、12月に300万円を支給した場合、年度累計は600万円になります。
この場合、健康保険の標準賞与額は年度累計573万円までとなり、573万円を超えた部分には健康保険料がかかりません。
年度途中に転職や転勤などで健康保険の資格取得と喪失があった場合は、同じ保険者に加入していた期間の標準賞与額を累計することがあります。
たとえば、協会けんぽに加入する会社から、別の協会けんぽ加入会社へ同一年度内に転職した場合には、前職分と転職後の賞与を累計して上限を判断することがあります。
健康保険の上限は、会社単位ではなく保険者単位で確認します。
同一年度内に複数の会社から賞与を受け取った場合でも、同じ保険者に加入していた期間があれば、前職分を含めて累計することがあります。
高額な賞与を受け取る従業員が転職してきた場合は注意が必要です。
社会保険上の賞与は原則として年3回以下
健康保険と厚生年金保険における賞与とは、名称を問わず、労働の対償として年3回以下の回数で支給されるものをいいます。
たとえば、7月、12月、3月の年3回であれば、原則としてそれぞれを賞与として標準賞与額の対象にします。
一方、毎年3月、6月、9月、12月の年4回を継続して支給する場合は、原則として賞与ではなく報酬として取り扱います。
年4回以上支給されるものは、通常、年間の支給総額を12で割った金額を、毎月の報酬へ加えて標準報酬月額を決定します。
そのため、年4回の業績手当を新設した場合、単に賞与支払届を年4回提出すればよいわけではありません。
臨時に4回支給した場合の考え方
年4回以上かどうかは、単純にその年に実際に支給した回数だけで判断するとは限りません。
毎年の支給が予定されているか、賃金規程や労働契約に年何回と定めているか、過去の支給実績がどうなっているかなどを確認します。
たとえば、通常は夏と冬の年2回だけ賞与を支給している会社が、ある年だけ好業績を理由に臨時賞与を2回追加し、結果的に4回支給した場合でも、直ちにすべてが報酬へ変更されるとは限りません。
一方、毎年四半期ごとに支給することが制度として確立していれば、報酬として扱われる可能性が高くなります。
年4回以上かどうかは名称ではなく、制度と支給実態で判断します。
特別手当、業績給、インセンティブなどの名称でも、毎年4回以上継続して支給される場合は、社会保険上の報酬として扱われる可能性があります。
年3回から年4回へ賞与制度を変更すると、標準報酬月額や毎月の社会保険料へ影響します。
従業員の手取り額と会社負担も変わる可能性があるため、制度変更前に年間の保険料を試算しておくことをおすすめします。
賞与の所得税と源泉徴収方法
賞与には所得税と復興特別所得税がかかります。
ただし、毎月の給与と賞与では、原則として源泉徴収税額の計算方法が異なります。
賞与額へ給与と同じ税率を掛けるのではなく、通常は国税庁が公表する賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表を使用します。
給与所得者の扶養控除等申告書を会社へ提出している従業員については甲欄を使用し、提出していない従業員については乙欄を使用します。
二つ以上の会社から給与を受け取っている人は、扶養控除等申告書を主たる勤務先一社にしか提出できないため、副業先の賞与は乙欄になるのが一般的です。
扶養控除等申告書を提出している場合
一般的な計算手順は次のとおりです。
- 前月給与から社会保険料等を差し引いた金額を確認する
- 扶養親族等の人数を確認する
- 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表を確認する
- 該当する前月給与額と扶養人数から税率を決定する
- 賞与から社会保険料等を差し引いた金額へ税率を掛ける
- 1円未満の端数を所定の方法で処理する
つまり、賞与から控除される所得税は、賞与額だけでは決まりません。
前月の給与額と扶養親族等の人数によって適用される税率が変わります。
たとえば、賞与の額面が同じ500,000円であっても、前月給与の社会保険料控除後の金額が200,000円の人と400,000円の人では、賞与へ適用する税率が異なることがあります。
また、扶養親族等が0人の人と2人の人でも、税率が異なる場合があります。
扶養控除等申告書を提出していない場合
扶養控除等申告書を提出していない従業員については、原則として賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表の乙欄を使用します。
乙欄では、前月給与や扶養親族等の人数に応じた甲欄とは異なる税率が適用されます。
新しく入社した従業員が扶養控除等申告書をまだ提出していない場合や、副業先から賞与を受け取る場合は、乙欄による計算となる可能性があります。
賞与から多額の所得税が引かれていると従業員から問い合わせがあったときは、まず扶養控除等申告書が提出されているか、甲欄と乙欄のどちらで計算されているかを確認するとよいでしょう。
通常の算出率を使わない場合
次のような場合は、通常の賞与に対する算出率をそのまま使用せず、給与所得の源泉徴収税額表の月額表を用いた特別な方法で計算します。
- 前月に給与の支払いがない場合
- 賞与から社会保険料等を差し引いた金額が、前月の社会保険料等控除後の給与額の10倍を超える場合
前月に給与の支払いがない例としては、長期休職中の従業員や、育児休業中で給与は支給していないものの賞与だけを支給する従業員が考えられます。
また、高額な決算賞与や特別賞与を支給する場合は、賞与額が前月給与の10倍を超えていないか確認が必要です。
通常の税率表をそのまま当てはめると、源泉徴収税額を誤る可能性があります。
所得税は年末調整で精算される
賞与から源泉徴収された所得税は、その時点で最終的な年間税額が確定したものではありません。
会社員で年末調整の対象となる人は、年間の給与と賞与、所得控除などを基に年末調整で所得税を精算します。
そのため、賞与支給時に所得税が多く控除されたように見えても、年末調整によって還付されることがあります。
反対に、副業所得や医療費控除などの事情によっては、確定申告が必要になる場合があります。
前年の税額表をそのまま使用しないようにしてください。
源泉徴収税額表や賞与に対する算出率の表は、税制改正によって変更されることがあります。
支給する年に対応した最新版を使用する必要があります。
賞与に対する源泉徴収の具体的な計算方法と最新の税額表については、 国税庁「賞与に対する源泉徴収」 をご確認ください。
産休・育休中の賞与と保険料免除
産休や育休を取得している従業員に賞与を支給するかどうかは、会社の就業規則や賞与規程、算定期間中の勤務実績、評価方法によって決まります。
産休や育休を取得しているという理由だけで、法律上当然に賞与が全額支給されるわけではありません。
一方で、産前産後休業や育児休業の取得そのものを理由として、不利益な取り扱いをすることは認められません。
勤務していなかった期間を賞与の算定対象から外すことはあり得ますが、実際に勤務した期間の貢献まで一律に評価対象から除外する運用は慎重に判断する必要があります。
産休や育休中の賞与額はどう決まるか
賞与の算定期間中に産休や育休を取得した場合、会社は賞与規程に基づき、休業期間を不就労期間として按分することがあります。
たとえば、賞与の算定期間が6か月で、そのうち3か月間を育児休業していた場合、在籍期間ではなく実際の勤務期間を基準に、通常賞与の2分の1程度へ按分する仕組みが考えられます。
このように、勤務していなかった期間に対応する部分を減額すること自体は、直ちに違法となるわけではありません。
ただし、育児休業を取得したことを理由に、実際に勤務した3か月分までゼロとするような取り扱いは、不利益取扱いとして問題になる可能性があります。
休業期間に応じた按分と、休業取得への制裁は異なります。
実際に勤務していない期間を算定対象から除外することはあり得ますが、産休や育休を取得したこと自体への制裁として賞与を減額することは認められません。
産前産後休業中の賞与
産前産後休業期間中に賞与が支給され、賞与支給月の末日が産前産後休業期間に含まれている場合は、原則としてその賞与にかかる健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。
産前産後休業における社会保険料免除は、従業員本人負担分だけでなく、会社負担分も対象です。
免除期間中も、将来の年金額を計算するときは、保険料を納付したものとして取り扱われます。
免除を受けるためには、会社が産前産後休業取得者申出書を提出する必要があります。
従業員が産休を取得しているだけで自動的にすべての処理が完了するわけではありません。
育児休業中の賞与
育児休業等の取得者に支給する賞与については、賞与支給月の末日を含む連続した育児休業等の期間が1か月を超える場合に限り、健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。
2022年10月以降は、賞与支給月の末日を1日だけ育児休業にすれば、その賞与の社会保険料が免除されるという仕組みではありません。
賞与にかかる社会保険料の免除には、賞与支給月の末日を含み、連続して1か月を超える育児休業等を取得していることが必要です。
たとえば、12月10日に賞与が支給され、12月31日を含む育児休業を取得していても、連続した育児休業期間が1か月以下であれば、原則として賞与の社会保険料は免除されません。
月例給与と賞与では免除要件が異なる
| 対象 | 主な免除要件 |
|---|---|
| 毎月の給与にかかる保険料 | 月末を含む育児休業等、または同一月内に14日以上の育児休業等を取得した場合など |
| 賞与にかかる保険料 | 賞与支給月の末日を含む連続した1か月を超える育児休業等を取得した場合 |
月例給与と賞与では、育児休業中の免除要件が異なります。
同一月内に14日以上の育児休業等を取得すれば月例給与の保険料が免除される場合がありますが、その要件だけで賞与の保険料まで免除されるわけではありません。
免除されるのは社会保険料
産休や育休中の賞与について社会保険料が免除された場合でも、所得税まで免除されるわけではありません。
賞与は通常どおり給与所得として扱われ、所得税と復興特別所得税の源泉徴収が必要です。
また、住民税は前年の所得を基準に計算されるため、産休や育休中で給与の支給がなくても納付が続くことがあります。
会社が給与から特別徴収できない場合は、本人が納付書で支払う普通徴収へ切り替わることもあります。
会社側が確認したい実務
- 賞与規程に休業期間の取り扱いが定められているか
- 算定期間中の実勤務期間を正しく把握しているか
- 産前産後休業取得者申出書を提出しているか
- 育児休業等取得者申出書を提出しているか
- 賞与支給月の末日が休業期間に含まれるか
- 育児休業等が連続して1か月を超えているか
- 所得税と雇用保険料の処理を分けて確認しているか
産休中の賞与の減額や社会保険料については、 産休中のボーナスの支給条件を整理した記事 で詳しく解説しています。
退職時の支給日在籍要件

賞与の支給日在籍要件とは、賞与の支給日に会社へ在籍している従業員だけを支給対象とするルールです。
多くの会社では、就業規則や賞与規程に「賞与は支給日に在籍する者に支給する」と定めています。
従業員からすると、賞与の算定期間をすべて勤務したのだから、支給日前に退職しても賞与を受け取れるのではないかと考えるところです。
一方、会社側は、賞与には将来の勤務を促す目的や、在籍者の定着を図る目的もあるため、支給日に在籍していない人を対象外にしたいと考えることがあります。
支給日在籍要件が定められている場合
支給日在籍要件が就業規則や賞与規程に明記され、従業員へ適切に周知されている場合、算定期間の全部または一部を勤務していたとしても、支給日前に自己都合で退職した従業員を不支給とする取り扱いが認められる可能性があります。
たとえば、賞与の算定期間が4月1日から9月30日、支給日が12月10日であり、従業員が11月30日に退職した場合を考えます。
賞与規程に「賞与は支給日に在籍する従業員に支給する」と明記されていれば、算定期間をすべて勤務していても、12月10日に在籍していないことを理由に不支給となる可能性があります。
この場合、最終出勤日ではなく、労働契約が終了する退職日が基準です。
11月30日が最終出勤日でも、有給休暇を消化しながら12月15日付で退職するのであれば、12月10日の支給日には在籍していることになります。
支給日在籍要件が定められていない場合
就業規則や賞与規程に支給日在籍要件がない場合、会社が当然に退職者へ賞与を支給しなくてよいとは限りません。
算定期間中の勤務実績、賞与の性格、過去の支給慣行、支給額の計算方法、会社が金額を確定した時期などによっては、退職者に賞与請求権が認められる可能性があります。
特に、賞与額が算定期間中の勤務実績だけで機械的に計算でき、支給日時点の査定や将来への期待がほとんど含まれない制度では、算定期間を勤務した退職者の権利が問題になりやすいです。
退職時に確認したい資料
- 就業規則
- 賃金規程または賞与規程
- 雇用契約書や労働条件通知書
- 求人票や採用時の説明資料
- 会社から交付された賞与の通知
- 過去の賞与明細
- 過去の退職者への支給実績
定年退職や会社都合退職の場合
定年退職者や会社都合退職者に支給日在籍要件を適用できるかは、自己都合退職者と同じとは限りません。
自己都合退職の場合、従業員自身が退職日を選択できるため、賞与支給日後を退職日に設定することもできます。
一方、定年退職では就業規則によって退職日があらかじめ決められており、従業員が自由に変更できません。
また、会社都合退職や整理解雇の場合は、会社側の事情によって支給日前に雇用関係が終了します。
このようなケースで一律に賞与を不支給とすることが合理的かどうかは、賞与の性格や規程の内容を踏まえて慎重に検討する必要があります。
支給日を意図的に変更した場合
会社が退職予定者への支払いを避ける目的で、本来予定していた賞与支給日を意図的に退職日後へ変更した場合は、支給日在籍要件の適用が認められない可能性があります。
たとえば、毎年12月10日に賞与を支給していた会社が、12月15日退職予定の従業員だけを対象外にする目的で、その年だけ支給日を12月20日に変更するようなケースです。
形式的には支給日に在籍していませんが、変更の目的や経緯が問題になります。
支給日在籍要件は、規程に書けばどのような場合でも有効になるわけではありません。
規程の周知状況、退職理由、賞与の性格、支給日の変更経緯、過去の運用などを総合的に確認する必要があります。
退職予定者の賞与を減額できるか
支給日に在籍しているものの、すでに退職届を提出している従業員について、退職予定であることだけを理由に賞与を減額できるかも問題になります。
賞与に将来への期待や定着への奨励という性格が含まれ、規程上もその点が明確であれば、退職予定を一定程度考慮できる可能性があります。
一方、賞与が過去の勤務実績に対する対価として計算されている場合は、退職予定だけを理由に大幅に減額することが合理的とは限りません。
会社側は、退職を申し出たから評価を最低にする、といった感情的な判断を避ける必要があります。
算定期間中の勤務成績、目標達成度、引き継ぎ状況など、客観的な評価項目に沿って判断しましょう。
賞与をもらってから退職したい従業員は、支給予定日だけでなく、就業規則上の支給日在籍要件と正式な退職日を確認してください。
最終出勤日と退職日は同じとは限りません。
退職と賞与の関係については、 退職するとボーナスをもらえない場合の解説 も参考にしてください。
賞与とは何かを正しく理解しよう
賞与とは、毎月の給与とは別に、会社の業績や従業員の勤務成績、貢献度などを踏まえて支給される賃金です。
一般にはボーナスと呼ばれますが、その支給目的、支給時期、計算方法は会社ごとに異なります。
法律によってすべての会社に賞与制度の導入が義務付けられているわけではありません。
しかし、就業規則や労働契約で支給時期、支給額、算定方法などが具体的に定められている場合は、その内容に従った支給義務が生じる可能性があります。
会社側が押さえておきたいこと
会社側は、賞与を任意に運用したいからといって、規程を曖昧にすればよいわけではありません。
曖昧な制度は、会社の裁量を広げる一方で、従業員にとって評価基準が見えず、不満や不信感を生みやすくなります。
賞与制度を設けるのであれば、少なくとも次の内容を整理する必要があります。
- 賞与制度の目的
- 算定対象期間
- 支給対象となる従業員
- 会社業績と個人評価の反映方法
- 欠勤、休職、入退社時の取り扱い
- 産休や育休期間の取り扱い
- 支給日在籍要件
- 業績により減額または不支給とする可能性
- 評価結果をどのように説明するか
さらに、規程の内容と実際の運用を一致させることが重要です。
規程上は評価制度に基づいて計算すると定めているのに、実際には経営者の感覚だけで金額を決めているのであれば、制度への信頼は高まりません。
賞与は従業員の意欲を高める効果がある一方で、説明不足によって意欲を下げることもあります。
金額だけではなく、どのような貢献が評価されたのかを伝える仕組みも整えるとよいでしょう。
従業員側が押さえておきたいこと
従業員側は、求人票に賞与ありと書かれているだけで、支給額や支給時期が確定しているとは限らない点に注意してください。
賞与年2回、前年度実績3か月分という求人情報であっても、会社業績や本人評価により支給額が変わる場合があります。
入社初年度は算定期間が不足し、最初の賞与が寸志または不支給となることもあります。
賞与について疑問がある場合は、就業規則、賃金規程、賞与規程、雇用契約書を確認しましょう。
特に退職を予定している場合は、支給日に在籍することが条件となっていないか確認する必要があります。
パートや有期雇用労働者の賞与
正社員に賞与を支給し、パートや有期雇用労働者には一切支給しない制度については、雇用形態が違うという理由だけで当然に問題がないとはいえません。
正社員とパート・有期雇用労働者の職務内容、責任の程度、配置変更の範囲、会社への貢献度などを比較し、賞与を支給しない待遇差に合理的な理由があるかを確認する必要があります。
たとえば、賞与が会社業績への貢献に報いる目的で支給されるものであり、パート社員も正社員と同様の仕事と責任を担っている場合は、パート社員を一律に対象外とすることが不合理と判断されるリスクがあります。
一方、正社員には転勤、職種変更、管理責任、長期的な人材育成などが予定されており、パート社員とは職務や責任に明確な違いがある場合は、賞与の有無や支給額に差を設けることが認められる可能性があります。
賞与を確認する際の重要ポイント
- 法律上、すべての会社に賞与制度が義務付けられているわけではない
- 就業規則や労働契約の内容によって支給義務が生じる
- 賞与額が確定した後は賃金として支払義務が生じることがある
- 社会保険上は年3回以下の支給が原則として賞与になる
- 年4回以上の定期支給は報酬として扱われる可能性がある
- 健康保険と厚生年金は標準賞与額を基準に計算する
- 所得税は前月給与や扶養親族等の人数によって変わる
- 産休と育休では賞与の保険料免除要件を確認する
- 退職前は支給日在籍要件を確認する
- パートや有期雇用労働者との待遇差には合理的な説明が必要
会社と従業員の認識をそろえることが重要
賞与に関するトラブルの多くは、会社と従業員の認識が一致していないことから生じます。
会社は業績によって自由に決められると考えている一方、従業員は毎年当然にもらえる固定的な賃金だと考えているケースです。
この認識のずれを防ぐためには、会社が規程を整備し、採用時や制度変更時に分かりやすく説明することが重要です。
また、支給額が前年より大きく下がる場合や、賞与を不支給とする場合は、規程上の根拠だけでなく、会社業績や評価結果について可能な範囲で説明したほうがよいでしょう。
従業員側も、賞与は必ず基本給の何か月分を受け取れるものだと思い込まず、自社の制度を確認することが大切です。
会社ごとに賞与の目的と仕組みが違うからです。
賞与は金額だけでなく、制度全体を確認しましょう。
支給回数、前年度実績、算定期間、評価方法、初年度の取り扱い、退職時の条件まで確認することで、入社後や退職時の認識違いを減らせます。
社会保険料率、税額表、届出様式、子ども・子育て支援金制度などは、今後の制度改正によって変更される可能性があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
また、賞与の支給義務、退職者への支給、産休・育休中の減額、パートや有期雇用労働者との待遇差は、規程の内容、実際の職務、会社の支給実績、退職理由などによって結論が変わります。
個別の事情を踏まえた 最終的な判断は専門家にご相談ください。