社会保険・年金

社会保険料とは?内訳・計算方法・負担割合を社労士がわかりやすく解説

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

社会保険料とは、病気やけが、老後、介護、失業、仕事中の事故などに備える公的保険の保険料をまとめた呼び方です。

会社員の場合は給与や賞与から本人負担分が差し引かれ、会社負担分と合わせて納付されます。

給与明細を見ると、健康保険料や厚生年金保険料などが別々に記載されているため、何にいくら負担しているのか分かりにくいことがあります。

また、給与があまり変わっていないのに保険料が上がり、手取りが減ったように感じる方も少なくありません。

社会保険料は、単純に給与へ一定の割合を掛けているわけではありません。

標準報酬月額という計算用の金額、加入している健康保険、勤務先の所在地、年齢、雇用保険上の事業区分など、複数の条件によって金額が決まります。

この記事では、社会保険料の種類、会社と従業員の負担割合、標準報酬月額を使った計算方法、2026年度の主な変更点まで、給与明細を確認する方にも企業の労務担当者にも分かるように整理します。

  • 社会保険料に含まれる保険の種類と役割
  • 会社と従業員が負担する割合の違い
  • 標準報酬月額と賞与の保険料計算方法
  • 2026年度の料率や制度変更のポイント

社会保険料とは?内訳と計算方法を社労士が解説

社会保険料の仕組みと内訳

まずは、社会保険料にどのような保険が含まれ、誰がどのように負担するのかを確認します。

給与明細から控除されるものだけでなく、会社だけが負担している保険料もあるため、全体像を分けて考えることが大切です。

特に注意したいのは、日常会話で使われる社会保険料という言葉と、法律や実務で使われる社会保険という言葉の範囲が必ずしも同じではないことです。

ここを整理しておくと、給与明細や会社の人件費を理解しやすくなります。

社会保険料とは何か

社会保険料は、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険という公的保険の保険料をまとめた呼び方です。

病気やけが、出産、老齢、介護、失業、業務上の事故などは、誰にでも起こる可能性があります。

その際の生活や医療を社会全体で支えるため、加入者や会社が保険料を負担し、必要な方に給付を行う仕組みになっています。

広い意味での社会保険料

  • 健康保険料
  • 介護保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 労災保険料

実務上は、健康保険、介護保険、厚生年金保険を狭い意味での社会保険、雇用保険と労災保険を労働保険と呼びます。

ただし、給与や会社負担について説明するときは、これらをまとめて社会保険料と表現することも一般的です。

社会保険そのものの仕組みや加入対象を確認したい方は、 社会保険とは何かをわかりやすく解説した記事 をご覧ください。

社会保険と民間保険の違い

社会保険は、一定の要件を満たした場合に法律上の加入義務が生じる公的な制度です。

自分には必要がないと考えても、会社や本人が自由に加入を断ることは原則としてできません。

一方、生命保険や医療保険などの民間保険は、基本的に本人が保障内容を比較し、加入するかどうかを選択します。

社会保険は最低限の生活保障を社会全体で支える仕組みであり、民間保険は公的保障で足りない部分を補う役割と考えると分かりやすいでしょう。

たとえば、会社員が業務外の病気で医療機関を受診した場合、健康保険によって医療費の自己負担が一定割合に抑えられます。

長期間働けなくなった場合には、一定の要件を満たせば傷病手当金が支給されることもあります。

老後についても、厚生年金保険へ加入している会社員は、国民年金の老齢基礎年金に加えて、報酬額や加入期間に応じた老齢厚生年金を受け取る仕組みです。

単に老後の貯蓄を積み立てている制度ではなく、障害や死亡に対する保障も含まれています。

給与から控除される仕組み

会社員の場合、本人が負担する保険料は給与や賞与から控除され、会社が会社負担分と合わせて納付します。

従業員が自分で毎月、年金事務所や健康保険へ納付する仕組みではありません。

給与明細では、健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険などがそれぞれ記載されることが一般的です。

ただし、労災保険料は会社が全額を負担するため、従業員の控除欄には通常表示されません。

また、会社が従業員の給与から預かった社会保険料は、会社のお金として自由に使えるものではありません。

会社負担分を加え、所定の期限までに納付する必要があります。

会社側で給与計算を担当していると、社会保険料、所得税、住民税が同じ控除欄に並ぶため、すべて同じ仕組みに見えることがあります。

しかし、計算方法も納付先も異なります。

税金と社会保険料は別の制度です。

所得税は課税対象となる給与や扶養人数などをもとに計算し、住民税は原則として前年の所得をもとに計算します。

これに対し、健康保険料や厚生年金保険料は、原則として標準報酬月額をもとに計算します。

なお、社会保険へ加入していることは、保険料の負担だけを意味するものではありません。

医療、年金、出産、休業、失業、労災など、幅広い給付を受ける権利と一体になっています。

給与明細で大きな金額が差し引かれていると、負担面だけが気になるかもしれません。

しかし、社会保険料を正しく理解するには、 何円払っているかだけでなく、どのような場合にどの給付を受けられるのか まで確認することが大切です。

社会保険料の種類と内訳

社会保険料の種類と内訳

社会保険料に含まれる各保険は、それぞれ目的や給付内容が異なります。

給与明細では名称が並んでいるだけのことも多いため、何に備える保険なのかを押さえておきましょう。

種類 主な役割 給与からの控除 主な対象者
健康保険 業務外の病気、けが、出産など あり 健康保険の被保険者
介護保険 介護サービスの給付 対象者のみあり 原則40歳以上65歳未満
厚生年金保険 老齢、障害、死亡に対する年金 あり 厚生年金の被保険者
雇用保険 失業、育児休業、介護休業など あり 加入要件を満たす労働者
労災保険 仕事中や通勤中のけが、病気など なし 原則としてすべての労働者

健康保険の役割

健康保険では、医療機関の窓口負担を一定割合に抑えるだけでなく、病気やけがで働けない場合の傷病手当金、出産のために休業した場合の出産手当金などが支給されることがあります。

医療費が高額になった場合には、高額療養費制度によって、一定の自己負担限度額を超えた部分が支給されることもあります。

健康保険は、単に病院で保険証を使用するためだけの制度ではありません。

ただし、業務中や通勤途中のけがについては、原則として健康保険ではなく労災保険を使用します。

実務では、仕事中に負傷した従業員が誤って健康保険を使用してしまうケースがあります。

発生状況を確認し、業務上または通勤災害に該当する可能性がある場合は、医療機関や労働基準監督署へ早めに相談することが大切です。

介護保険の対象年齢

介護保険料は、原則として40歳以上65歳未満の健康保険加入者が負担します。

この年代の方を介護保険第2号被保険者と呼びます。

40歳になった月から対象になるため、誕生日の前後で給与からの控除額が変わることがあります。

ただし、法律上は誕生日の前日に年齢へ到達すると扱われます。

たとえば、4月1日生まれの方は3月31日に40歳へ到達するため、一般的な感覚とは異なる月から介護保険料の対象になる場合があります。

65歳になると、介護保険料は健康保険料と一緒に給与から控除する仕組みから、市区町村が徴収する仕組みへ切り替わります。

年金から特別徴収される場合もあるため、65歳以降も介護保険料そのものがなくなるわけではありません。

厚生年金保険は老後だけではない

厚生年金保険は老後の年金だけではありません。

一定の障害が残った場合の障害厚生年金や、加入者が亡くなった場合の遺族厚生年金にもつながる制度です。

老齢厚生年金の額は、原則として厚生年金へ加入していた期間や、その期間中の標準報酬月額、標準賞与額などをもとに計算されます。

そのため、厚生年金保険料の負担が増えることは、一定の範囲で将来の年金額にも反映されます。

短時間労働者が社会保険へ新たに加入する場合、手取りが減る面ばかりが注目されがちです。

しかし、厚生年金へ加入することで、老齢、障害、死亡に対する保障が国民年金だけの場合より厚くなる可能性があります。

雇用保険の主な給付

雇用保険には、失業時の基本手当のほか、育児休業給付、介護休業給付、教育訓練給付、高年齢雇用継続給付などがあります。

基本手当は、退職すれば無条件で受け取れるものではありません。

雇用保険の被保険者期間、離職理由、求職活動の状況など、複数の要件があります。

自己都合退職か会社都合退職かによっても、給付制限や所定給付日数の取扱いが変わることがあります。

また、雇用保険は原則として、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある労働者が対象です。

社会保険の短時間労働者要件と似ていますが、完全に同じではありません。

労災保険は会社が全額負担する

労災保険は、業務上または通勤による負傷、病気、障害、死亡などを補償する制度です。

保険料は会社が全額負担するため、従業員の給与から控除されることはありません。

労災保険は、正社員だけでなく、パート、アルバイト、日雇いなど、原則として賃金を支払われて働くすべての労働者が対象です。

勤務時間が短いことや、入社直後であることを理由に対象外になるわけではありません。

業務災害で療養のため働けず、賃金を受けられない場合には、待期期間を経た後、休業補償給付などの対象になる可能性があります。

障害が残った場合や死亡した場合にも、それぞれ給付制度があります。

健康保険、雇用保険、労災保険では、同じ「働けない」という状況でも、原因や休業状況によって利用する制度が異なります。

仕事が原因であれば労災保険、業務外の病気やけがであれば健康保険というように、発生原因を整理することが重要です。

このように、社会保険料は一つの保険料ではありません。

それぞれ目的の異なる制度をまとめた呼び方です。

給与明細を確認するときは、控除総額だけでなく、各保険の金額と加入状況を個別に見ることが大切です。

保険料は労使でどう負担するか

社会保険料は、すべてが単純に会社と従業員の半分ずつになるわけではありません。

保険の種類によって負担方法が異なります。

保険の種類 従業員負担 会社負担 実務上のポイント
健康保険 原則2分の1 原則2分の1 加入する健康保険によって料率が異なる
介護保険 原則2分の1 原則2分の1 原則40歳以上65歳未満が対象
厚生年金保険 2分の1 2分の1 保険料率は18.3%
雇用保険 業種別の労働者負担率 労働者より多い割合 事業主のみ負担する部分がある
労災保険 負担なし 全額負担 業種によって料率が異なる

健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、原則として会社と従業員が折半します。

たとえば、厚生年金保険料率が18.3%であれば、従業員本人の負担率は9.15%、会社も同じく9.15%を負担します。

給与明細に表示されている金額は、基本的に従業員本人の負担分です。

会社は明細に表示されない会社負担分を別途負担しています。

会社負担は給与明細から見えにくい

従業員から見ると、給与明細の控除欄に健康保険料や厚生年金保険料が並んでいるため、自分だけが負担しているように感じることがあります。

しかし、会社も原則として同額程度の保険料を負担しています。

たとえば、標準報酬月額30万円の従業員について、厚生年金保険料の本人負担が2万7,450円であれば、会社も2万7,450円を負担します。

さらに、会社は健康保険料、介護保険料、雇用保険料、労災保険料、子ども・子育て拠出金なども負担します。

このため、会社が月給30万円の従業員を雇用した場合、人件費が30万円だけで済むわけではありません。

通勤手当、賞与、退職金、福利厚生費などを除いても、法定福利費が上乗せされます。

会社が人件費を試算するときの考え方

基本給や諸手当などの給与総額に加え、会社負担の健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料、子ども・子育て拠出金などを含めて考えます。

雇用保険は完全な折半ではない

雇用保険料は労使折半ではなく、会社側に雇用保険二事業分の負担があるため、通常は会社の負担割合が従業員より大きくなります。

2026年度における一般の事業の雇用保険料率は、労働者負担が0.5%、事業主負担が0.85%、合計1.35%です。

農林水産・清酒製造の事業や建設の事業では異なる料率が適用されます。

雇用保険料は、健康保険や厚生年金のように標準報酬月額を使用するのではなく、原則として毎月実際に支払った賃金総額へ料率を掛けて計算します。

そのため、残業代が多い月や賞与を支給した月は、その金額に応じて雇用保険料も増えます。

通勤手当も、原則として雇用保険料の計算対象となる賃金に含まれます。

労災保険料は業種によって差がある

労災保険料率も業種によって異なります。

事務中心の業種と、建設業や林業など災害リスクの高い業種では、会社が負担する保険料が大きく異なることがあります。

労災保険料は、原則として年度内に支払う賃金総額の見込額に労災保険率を掛けて概算保険料を計算し、翌年度に実際の賃金総額で確定精算します。

この手続きが労働保険の年度更新です。

建設業では、元請事業主が下請労働者分も含めて保険料を算定する請負事業の一括や、要件を満たす複数の小規模工事をまとめて扱う有期事業の一括など、一般の事業とは異なる取扱いがあります。

業種や請負関係を正しく確認しないと、適用する料率や賃金総額の集計を誤ることがあります。

労使折半でも端数が完全に同額とは限らない

健康保険料や厚生年金保険料は労使折半が原則ですが、端数処理によって、給与明細上の本人負担額と会社負担額が1円異なることがあります。

また、健康保険組合によっては、規約により会社側の負担割合を本人より多く設定している場合があります。

協会けんぽの一般的な折半だけを前提にせず、勤務先がどの健康保険へ加入しているかを確認する必要があります。

会社負担を含めて社会保険料を確認するときは、給与から控除された金額を単純に2倍すればよいとは限りません。

雇用保険と労災保険を含め、保険ごとの負担割合、端数処理、加入している健康保険制度を分けて確認する必要があります。

賃上げや新規採用を検討する企業では、額面給与だけで予算を組むと、実際の人件費との差が大きくなります。

私は顧問先の人件費を試算するとき、本人へ支払う給与に加えて、会社負担の社会保険料と労働保険料も確認します。

特に従業員数が増えてくると、数%の見込み違いでも年間では大きな金額になります。

標準報酬月額による計算方法

標準報酬月額による計算方法

健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、原則として実際の給与額に毎月直接料率を掛けるのではなく、 標準報酬月額 に保険料率を掛けて計算します。

標準報酬月額とは、毎月の報酬を一定の幅で区切り、等級ごとに設定した計算用の金額です。

健康保険と厚生年金保険では等級数や上限が異なります。

基本的な計算式

標準報酬月額 × 保険料率 = 労使合計の保険料

労使折半の場合は、算出した保険料の原則2分の1が従業員負担です。

たとえば、標準報酬月額が30万円で、厚生年金保険料率が18.3%の場合、労使合計の保険料は次のように計算します。

30万円 × 18.3% = 5万4,900円

労使折半のため、従業員負担は2万7,450円、会社負担も2万7,450円です。

実際の給与額と標準報酬月額は一致しない

標準報酬月額は、実際の給与額そのものではありません。

たとえば、報酬月額が29万円の方と31万円の方が、同じ標準報酬月額の等級に入ることがあります。

このため、給与が数千円増減しても同じ等級の範囲内であれば、健康保険料や厚生年金保険料は変わらないことがあります。

反対に、給与の変動額が小さくても等級の境目を超えれば、保険料が変わる場合があります。

給与明細を見て、額面給与に保険料率を掛けた金額と控除額が一致しないのは、標準報酬月額を使っているためです。

報酬に含まれるもの

標準報酬月額の対象となる報酬には、基本給だけでなく、役職手当、資格手当、住宅手当、家族手当、通勤手当、残業手当など、労働の対価として継続的に支払われるものが広く含まれます。

所得税では一定額まで非課税となる通勤手当であっても、社会保険では原則として報酬に含まれます。

税務上の課税・非課税と、社会保険上の報酬該当性は別の基準です。

支給項目 標準報酬月額への算入 主な考え方
基本給 含む 労働の対価として毎月支給
役職手当・資格手当 含む 継続的な手当
残業手当 含む 実際に支払われた報酬
通勤手当 原則含む 税務上非課税でも算入
年3回以下の賞与 月額には含めない 標準賞与額として別計算
慶弔見舞金 通常含めない 労働の対価ではない臨時的給付

現物で支給する食事や住宅なども、一定の場合には報酬に含まれます。

社宅を低額で貸与している場合には、厚生労働大臣が定める現物給与の価額と本人負担額を比較し、差額を報酬へ加算する場合があります。

標準報酬月額が決まる主な場面

  • 入社時に決める資格取得時決定
  • 毎年4月から6月の報酬で決める定時決定
  • 固定的賃金が大きく変わった場合の随時改定
  • 育児休業終了後に申し出る育児休業等終了時改定

資格取得時決定

入社などにより社会保険の資格を取得したときは、雇用契約などから見込まれる月額報酬をもとに標準報酬月額を決定します。

月給制であれば基本給や毎月支給する手当を合計し、時間給や日給であれば、同じ事業所で同様の業務に従事する方の報酬などを参考に月額へ換算します。

入社後に実際の残業代が見込みより多かったとしても、それだけで資格取得時の標準報酬月額を直ちに修正するとは限りません。

その後、定時決定や随時改定の要件に従って見直します。

定時決定

定時決定では、原則として4月、5月、6月に支払われた報酬の平均額をもとに算定基礎届を提出し、その年の9月分から翌年8月分までの標準報酬月額を決定します。

ここでいう4月、5月、6月は、勤務した月ではなく、原則として報酬を実際に支払った月です。

たとえば、3月勤務分を4月に支払う会社では、その給与が4月の報酬として算定対象になります。

月給者は、原則として支払基礎日数が17日以上の月を対象にします。

特定適用事業所の短時間労働者などは11日以上が基準となる場合があります。

そのため、4月から6月に欠勤が多く、支払基礎日数が基準を下回る月がある場合は、その月を除外して計算することがあります。

単純に3か月分の総支給額を3で割ればよいわけではありません。

4月から6月の残業が多い場合

4月から6月に残業手当が多く支払われると、その後の標準報酬月額が高くなることがあります。

よく「4月から6月は残業しない方がよい」といわれるのは、この定時決定の仕組みが理由です。

ただし、残業を減らすことだけが必ず得になるとは限りません。

残業代として受け取る給与が減るうえ、標準報酬月額が高い期間は将来の厚生年金額や傷病手当金などの計算にも影響します。

また、毎年4月から6月だけ業務量が多いなど、年間を通じた報酬平均と通常の算定結果に大きな差が生じる場合には、一定の要件を満たせば年間平均による保険者算定が認められることがあります。

随時改定

随時改定は、基本給や固定手当などの固定的賃金が変わり、変動月以後3か月の平均報酬による等級と従前の等級に原則2等級以上の差が生じるなど、所定の要件を満たした場合に行います。

主な要件は、固定的賃金に変動があったこと、変動月以後3か月の報酬平均により2等級以上変動すること、各月の支払基礎日数が基準を満たすことです。

残業代が増えただけでは、通常、それだけを理由に随時改定は行いません。

一方、昇給や固定手当の変更があった月以後に残業代も増え、結果として2等級以上変動した場合は、残業代を含めて判定します。

昇給したのに残業時間が減り、3か月平均の報酬が下がった場合など、固定的賃金の変動方向と標準報酬月額の変動方向が一致しないときは、原則として随時改定の対象になりません。

社会保険料の計算は、一見すると料率を掛けるだけに見えます。

しかし、実務で難しいのは、どの支給項目を報酬へ含めるか、どの月を算定対象にするか、随時改定の要件を満たすかという判定部分です。

標準報酬月額の決定方法や届出の基準は、 日本年金機構「標準報酬月額の決め方」 で確認できます。

標準報酬月額を誤ると、本人から控除する保険料だけでなく、会社負担額、傷病手当金、出産手当金、将来の年金額などにも影響する可能性があります。

判断に迷う支給項目や給与変更がある場合は、年金事務所または社会保険労務士へ確認してください。

賞与にかかる保険料と上限

賞与にも健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料がかかります。

ただし、毎月の給与と計算方法が一部異なります。

健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた 標準賞与額 に保険料率を掛けて計算します。

たとえば、賞与が50万500円であれば、標準賞与額は50万円です。

この50万円にそれぞれの保険料率を掛けます。

保険の種類 標準賞与額の上限 上限の判定単位
健康保険・介護保険 同一年度の累計573万円 4月から翌年3月まで
厚生年金保険 1回の支給につき150万円 同月支給分は合算
雇用保険 原則として上限なし 実際の賃金総額

標準賞与額となる支給

社会保険上の賞与とは、名称にかかわらず、労働の対価として年3回以下支給されるものをいいます。

夏季賞与、冬季賞与、決算賞与、期末手当、繁忙手当など、名称が異なっても実態で判断します。

反対に、年4回以上支給されるものは、原則として標準賞与額ではなく、標準報酬月額の対象となる報酬として扱います。

たとえば、四半期ごとに年4回の業績手当を支給する場合は、月額報酬へ含めて標準報酬月額を決めることがあります。

結婚祝金や災害見舞金など、労働の対価ではなく恩恵的に支給されるものは、一般に賞与として扱いません。

ただし、名称だけで判断せず、就業規則、賃金規程、支給基準、実際の運用を確認する必要があります。

賞与保険料の計算例

標準賞与額50万円、健康保険料率9.90%、介護保険料率1.62%、厚生年金保険料率18.3%と仮定した場合、40歳以上65歳未満の被保険者にかかる労使合計の保険料は、概算で次のように計算します。

賞与50万円の概算例

  • 健康保険料:50万円 × 9.90% = 4万9,500円
  • 介護保険料:50万円 × 1.62% = 8,100円
  • 厚生年金保険料:50万円 × 18.3% = 9万1,500円

上記の労使折半部分について、原則として半分が本人負担、半分が会社負担です。

実際の金額は加入する健康保険や端数処理によって異なります。

雇用保険料は、標準賞与額ではなく、原則として1,000円未満を切り捨てる前の実際の賞与額を含む賃金総額へ料率を掛けます。

健康保険と厚生年金で上限が異なる

健康保険と介護保険は、4月1日から翌年3月31日までの年度累計で上限を判定します。

同じ会社から支給された賞与の標準賞与額が年度内で累計573万円を超えた場合、超えた部分について健康保険料と介護保険料はかかりません。

厚生年金保険は、1回の賞与につき150万円が上限です。

ただし、同じ月に賞与を複数回支給した場合は、その月に支給した賞与を合算して150万円の上限を判定します。

たとえば、同じ月に100万円と80万円の賞与を分けて支給しても、厚生年金の標準賞与額は合計180万円として扱い、上限は150万円です。

支給回数を形式的に分けるだけで上限を複数回適用できるわけではありません。

資格取得月や退職月の賞与

賞与を支給した月に社会保険の被保険者であれば、原則として賞与支払届を提出し、保険料を計算します。

ただし、退職日の翌日に被保険者資格を喪失するため、月末より前に退職した場合は、その月に支給した賞与について厚生年金保険料などがかからないことがあります。

月末退職の場合は、翌月1日に資格を喪失するため、退職月の賞与も保険料の対象になるのが通常です。

雇用保険料については、社会保険の資格喪失日とは別に考えます。

退職後に支給した賞与であっても、在職中の労働の対価であれば雇用保険料の対象になることがあります。

賞与支払届の提出

会社が被保険者へ賞与を支給した場合は、原則として支給日から5日以内に賞与支払届を提出します。

賞与を支給しなかった場合でも、日本年金機構から賞与支払届が送付されている事業所では、不支給であることを届け出る場合があります。

実務では、給与計算で賞与保険料を控除したにもかかわらず、賞与支払届の提出を忘れているケースがあります。

反対に、賞与支払届を提出したものの、給与計算で本人負担分を控除していないケースもあります。

賞与の支給時期や名称だけを変えれば保険料がかからなくなるわけではありません。

実態が労働の対価であれば、賃金や賞与として社会保険料の対象になる可能性があります。

また、保険料負担を避ける目的で実態と異なる支給方法へ変更すると、後日の調査で訂正を求められることがあります。

賞与設計を検討するときは、保険料だけでなく、従業員への説明、所得税、就業規則や賃金規程、業績評価との整合性まで含めて考えることが必要です。

社会保険料が変わる理由と対策

社会保険料は、給与が上がったときだけ増えるものではありません。

標準報酬月額の改定、保険料率の変更、年齢、加入制度、制度改正など、複数の要因によって変わります。

ここからは、保険料が高く感じられる理由と、2026年度に確認したい変更点を説明します。

従業員側は手取り額への影響を、会社側は法定福利費を含めた人件費への影響を確認する必要があります。

同じ制度変更でも、立場によって確認するポイントが異なります。

社会保険料が高すぎると感じる理由

給与明細を見て、社会保険料が高すぎると感じる方は少なくありません。

実際によくある相談です。

負担が大きく感じられる主な理由は、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料がそれぞれ控除され、さらに所得税や住民税も差し引かれるためです。

特に厚生年金保険料は、本人負担率だけでも9.15%です。

健康保険や介護保険、雇用保険を加えると、社会保険料だけで給与の1割を大きく超えることがあります。

ただし、実際の負担割合は一律ではありません。

次の要素によって変わります。

  • 標準報酬月額
  • 加入している健康保険制度
  • 事業所が所在する都道府県
  • 40歳以上65歳未満かどうか
  • 雇用保険上の事業区分
  • 給与と賞与の支給状況
  • 子ども・子育て支援金の対象状況

額面給与と手取り額には差がある

求人票や雇用契約書に書かれた月給は、通常、社会保険料や税金を控除する前の総支給額です。

実際に銀行口座へ振り込まれる手取り額とは異なります。

たとえば、月給30万円と記載されていても、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税などが差し引かれます。

年齢や扶養人数、前年所得などによって控除額は変わりますが、総支給額と手取り額に数万円の差が生じるのは一般的です。

特に新卒入社や転職直後は、住民税の控除状況によって手取り額が変わります。

住民税は原則として前年所得をもとに計算するため、入社1年目には給与から控除されず、2年目から控除が始まることがあります。

その結果、給与が上がったにもかかわらず、住民税の控除開始と社会保険料の改定が重なり、手取りが減ったように感じるケースがあります。

社会保険料は段階的に変わる

健康保険料と厚生年金保険料は標準報酬月額の等級で計算するため、給与の増加に対して滑らかに増えるのではなく、等級が変わったタイミングで段階的に増えます。

そのため、標準報酬月額の等級が一つ上がると、給与の増加額に比べて控除額の増加が大きく感じられることがあります。

ただし、一般に給与が増えたことによって、増加額を超えて社会保険料だけが増える仕組みではありません。

手取りが実際に減った場合は、社会保険料だけでなく、住民税、所得税、欠勤控除、通勤手当の変更、会社独自の控除なども確認する必要があります。

40歳になると介護保険料が加わる

40歳になると、原則として健康保険料に加えて介護保険料の本人負担が始まります。

給与額や標準報酬月額が変わっていなくても、40歳到達によって控除額が増えるため、本人から質問を受けやすいポイントです。

会社側では、40歳到達者を給与計算システムへ正しく反映する必要があります。

多くの給与計算ソフトでは生年月日から自動判定しますが、設定や保険料徴収月が誤っていると、控除開始月がずれることがあります。

保険料率の改定でも負担が変わる

協会けんぽの健康保険料率や介護保険料率は、年度ごとに改定されることがあります。

標準報酬月額が同じでも、料率が上がれば本人負担と会社負担の両方が増えます。

雇用保険料率も年度によって変更されます。

健康保険料や厚生年金保険料のような固定額ではなく、毎月支払う賃金額に料率を掛けるため、残業代や賞与の増減も控除額へ反映されます。

会社も同程度以上の負担をしている

給与明細には通常、会社負担分が表示されません。

従業員本人から見ると控除だけが目に入りますが、会社も健康保険料や厚生年金保険料などを別途負担しています。

中小企業では、従業員の給与を1万円引き上げたとき、会社の人件費が単純に1万円だけ増えるわけではありません。

会社負担の社会保険料や労働保険料も増えるため、賃上げを検討するときは法定福利費を含めて試算する必要があります。

社会保険料が高く感じられたときの確認順序

  • 前月の給与明細と控除項目ごとに比較する
  • 標準報酬月額が変更されていないか確認する
  • 40歳到達など年齢要件を確認する
  • 年度の保険料率改定を確認する
  • 住民税など社会保険料以外の控除を確認する

社会保険料は確かに大きな負担ですが、病気やけが、出産、失業、障害、老齢などへの給付と一体になっています。

単純に控除額だけを見て高いと判断するのではなく、保障内容と会社負担分を含めて全体を見ることが重要かなと思います。

保険料が上がると手取りはどう減るか

保険料が上がると手取りはどう減るか

社会保険料が上がれば、総支給額が同じでも手取り額は減少します。

ただし、給与が少し増えた月に、直ちに健康保険料や厚生年金保険料が増えるとは限りません。

健康保険料と厚生年金保険料は標準報酬月額で計算するため、同じ等級の範囲内で給与が変動しても、保険料は原則として変わりません。

一方、毎年の定時決定で標準報酬月額が上がった場合は、通常、その年の9月分から保険料が変わります。

会社の給与控除が翌月徴収であれば、10月支給給与から控除額が変わることが一般的です。

手取り額の基本的な計算

手取り額の基本的な考え方

総支給額 − 社会保険料 − 所得税 − 住民税 − その他の控除 = 差引支給額

社会保険料が1,000円増え、他の条件が変わらなければ、手取り額は原則として1,000円減ります。

ただし、社会保険料は所得税や住民税の計算上、所得控除の対象です。

そのため、年間で見れば社会保険料が増えた分だけ課税所得が減り、所得税や住民税がわずかに下がることがあります。

社会保険料の増加額がそのまま最終的な負担増になるとは限りません。

標準報酬月額の変更が反映される時期

定時決定による標準報酬月額は、原則として9月分の保険料から変更されます。

しかし、給与明細で控除額が変わる月は、会社の徴収方法によって異なります。

社会保険料の「何月分」を「何月支給の給与」から控除するかは、会社の当月徴収・翌月徴収の運用によって見え方が異なります。

給与明細を確認するときは、どの月の保険料を控除しているのかも確認しましょう。

翌月徴収の会社では、9月分の保険料を10月支給給与から控除します。

当月徴収の会社では、9月支給給与から控除することがあります。

社会保険料の控除は、原則として前月分を当月給与から控除できるとされていますが、実務上は会社ごとの運用や給与締日によって異なることがあります。

就業規則、賃金規程、過去の給与明細を確認することが必要です。

昇給後すぐに変わるとは限らない

基本給が上がっても、健康保険料と厚生年金保険料が翌月からすぐに変わるとは限りません。

随時改定の要件を満たす場合には、変動月から4か月目の標準報酬月額が改定されます。

たとえば、4月に固定給が上がり、4月、5月、6月の報酬平均によって2等級以上上がるなどの要件を満たした場合、7月分から改定されます。

翌月徴収であれば、一般に8月支給給与の控除額から変わります。

一方、固定給の変更がなく、繁忙期に残業代だけが増えた場合は、それだけでは随時改定の対象になりません。

翌年の定時決定で反映される可能性があります。

保険料が上がっても将来の給付に反映される

標準報酬月額が高くなると、健康保険料や厚生年金保険料の負担は増えます。

一方で、傷病手当金や出産手当金の日額、将来の老齢厚生年金などにも影響します。

傷病手当金は、原則として支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額の平均額をもとに計算します。

標準報酬月額が高ければ、一定の範囲で給付額も高くなります。

厚生年金についても、加入期間中の標準報酬月額や標準賞与額が将来の年金額へ反映されます。

負担が増えた分が、そのまま現在の給付だけに使われて終わるという単純な仕組みではありません。

40歳、65歳、70歳など年齢による変化

介護保険料については、40歳に達したことで新たに控除が始まるケースがあります。

法律上の年齢到達日は誕生日の前日とされるため、誕生日が月初の場合などは、感覚的な誕生月と保険料の対象月がずれることがあります。

65歳になると、健康保険と一緒に給与から控除される介護保険第2号被保険者としての保険料は原則として終了しますが、市区町村が徴収する介護保険第1号被保険者の保険料へ切り替わります。

厚生年金保険は、原則として70歳まで加入対象です。

70歳到達により厚生年金保険料の控除は終了しますが、健康保険は勤務状況などにより75歳まで加入することがあります。

給与が変わっていないのに保険料が上がる原因

  • 前年の4月から6月の報酬をもとに標準報酬月額が上がった
  • 健康保険料率や介護保険料率が改定された
  • 40歳到達により介護保険料が加わった
  • 子ども・子育て支援金など新たな負担が始まった
  • 過去の控除誤りを当月給与で精算した
  • 賞与や遡及支給に対する保険料が控除された

給与明細の控除額に疑問がある場合でも、控除額だけを見て誤りと断定しないことが大切です。

標準報酬月額、適用料率、年齢、対象月、当月徴収か翌月徴収かを確認し、それでも説明がつかない場合に給与担当者へ問い合わせましょう。

会社側では、保険料額を変更したときに、従業員へ理由を説明できる状態にしておくことが重要です。

定時決定、随時改定、料率改定、介護保険の開始など、変更理由を給与計算の記録として残しておくと、問い合わせ対応がしやすくなります。

少子高齢化で負担が増える仕組み

社会保険料の負担が長期的に増えやすい背景には、少子高齢化があります。

医療保険や介護保険、公的年金は、現在働いている世代が負担する保険料を、その時点で医療や介護、年金を必要とする方への給付に充てる仕組みを含んでいます。

保険料を負担する現役世代が減る一方で、高齢者人口が増えると、一人ひとりの給付内容が変わらなくても、支え手一人当たりの負担は重くなりやすくなります。

現役世代と高齢者の人口構成が変化している

日本では、出生数の減少と平均寿命の伸びにより、総人口に占める高齢者の割合が上昇しています。

働いて保険料を負担する現役世代の人数が減る一方、年金、医療、介護を必要とする高齢者が増える構造です。

社会保障制度には税金も投入されていますが、健康保険料、介護保険料、年金保険料なども重要な財源です。

給付費が増えれば、税負担、保険料負担、給付内容の見直しなどを通じて財源を確保する必要があります。

特に団塊の世代が75歳以上となる時期には、後期高齢者医療や介護サービスの利用増加が見込まれます。

高齢になるほど一人当たりの医療費が高くなる傾向があるため、人口構成の変化が保険料へ影響しやすくなります。

健康保険料には高齢者医療への拠出も含まれる

会社員が加入する健康保険の保険料は、その健康保険の加入者本人や家族の医療費だけに使われるわけではありません。

前期高齢者の医療費を調整するための納付金や、後期高齢者医療制度を支えるための支援金などにも使われます。

そのため、加入者本人の受診が少なくても、高齢者医療費の増加が健康保険財政へ影響することがあります。

協会けんぽの都道府県別保険料率は、地域の医療費水準などを反映して毎年算出されます。

医療費が高い地域では、一定の調整を行ったうえでも保険料率が高くなる可能性があります。

介護給付費の増加

介護保険は、介護が必要な方へ訪問介護、通所介護、施設サービスなどを提供するための制度です。

高齢者人口が増え、要介護認定者や介護サービス利用者が増加すると、必要な給付費も増えます。

介護保険の財源は、公費、65歳以上の方が負担する保険料、40歳以上65歳未満の方が負担する保険料などで構成されています。

介護給付費が増えれば、それぞれの負担へ影響する可能性があります。

会社員の場合、40歳から64歳までの介護保険料は健康保険料と一緒に徴収されます。

介護保険料率の改定は、本人だけでなく、折半する会社の負担にも直接影響します。

年金制度は現役世代が支える仕組みを含む

公的年金は、各加入者が自分の保険料をそのまま自分名義の口座へ積み立てるだけの制度ではありません。

現役世代が納めた保険料を、その時点の年金受給者への給付に充てる賦課方式を基本としています。

少子化により現役世代が減り、年金を受け取る高齢者が増えると、制度を維持するための調整が必要になります。

日本では保険料率を一定水準に固定し、現役世代の人口や平均寿命の変化に応じて年金額の伸びを調整する仕組みも導入されています。

厚生年金保険料率は18.3%で固定されていますが、保険料率が固定されたからといって、年金財政の問題がなくなったわけではありません。

給付水準、国庫負担、積立金の運用などを組み合わせて制度を維持しています。

子育て支援にも安定した財源が必要

少子化対策や子育て支援の充実にも継続的な財源が必要です。

児童手当の拡充、妊娠・出産支援、育児休業中の給付など、子育て世帯を支援する施策が拡充されています。

2026年度から始まった子ども・子育て支援金制度も、社会全体で子育てを支えるための新たな負担の一つです。

社会保険料が上がる主な背景

  • 現役世代の人口減少
  • 高齢者人口の増加
  • 医療や介護に必要な給付費の増加
  • 子育て支援など給付制度の拡充
  • 短時間労働者への社会保険適用拡大
  • 医療技術の高度化や高額な治療の増加

適用拡大は負担増だけではない

短時間労働者への社会保険適用拡大により、これまで国民健康保険や国民年金へ加入していた方、配偶者の扶養に入っていた方などが、勤務先の健康保険と厚生年金へ加入するケースが増えています。

本人には新たな保険料負担が生じますが、会社も原則として半分を負担します。

また、厚生年金の上乗せ、傷病手当金、出産手当金など、保障が厚くなる側面があります。

制度全体としては、働き方によって保障に大きな差が生じる状態を見直し、より多くの労働者を被用者保険で支えることが目的です。

社会保険料を議論するときは、負担額だけを切り取ると制度の全体像が見えにくくなります。

保険料によってどのような給付が維持されているのか、本人負担だけでなく会社や公費がどの程度負担しているのかも合わせて考える必要があります。

もっとも、社会保険料は単なる支出ではなく、医療、年金、傷病、出産、失業などへの保障と一体になっています。

負担額だけでなく、どのような給付を受けられる制度なのかも合わせて考えることが大切です。

2026年度の保険料率と変更点

2026年度は、健康保険料率や介護保険料率、雇用保険料率に加え、子ども・子育て支援金の徴収開始を確認する必要があります。

項目 2026年度の主な内容 主な適用時期
協会けんぽの健康保険料率 都道府県ごとに改定 2026年3月分から
介護保険料率 全国一律1.62% 2026年3月分から
厚生年金保険料率 18.3% 変更なし
雇用保険料率 一般の事業は合計1.35% 2026年4月1日から
子ども・子育て支援金率 協会けんぽは0.23% 2026年4月分から

協会けんぽの健康保険料率

協会けんぽの健康保険料率は、2026年3月分、一般的な翌月徴収では4月支給給与の控除分から新しい料率が適用されます。

全国平均は9.90%ですが、実際に使用する料率は事業所が加入する都道府県支部によって異なります。

2026年度は、東京都が9.85%、佐賀県が10.55%、新潟県が9.21%など、都道府県によって差があります。

勤務先が岩手県の協会けんぽへ加入している場合は、岩手支部の料率を使用します。

原則として、従業員の自宅住所ではなく、適用事業所が加入している協会けんぽ支部の保険料率を適用します。

本社と支店が別々の適用事業所になっている場合などは、それぞれの加入状況を確認します。

健康保険組合へ加入している会社では、協会けんぽの料率は使用しません。

加入する健康保険組合の保険料率や負担割合を確認する必要があります。

介護保険料率は1.62%

介護保険料率は、2026年度に1.59%から1.62%へ変更されています。

対象となる40歳以上65歳未満の被保険者について、健康保険料と合わせて労使が原則折半で負担します。

介護保険料率は協会けんぽでは全国一律ですが、健康保険組合へ加入している場合は、その組合が定める料率を使用します。

給与計算では、40歳到達者だけでなく、65歳到達者についても介護保険料の控除終了時期を確認する必要があります。

年齢判定と翌月徴収の組み合わせにより、給与明細上の変更月が分かりにくくなることがあります。

厚生年金保険料率は18.3%

厚生年金保険料率は18.3%で、本人負担率と会社負担率はそれぞれ9.15%です。

2017年9月に段階的な引き上げが完了して以降、料率は固定されています。

ただし、料率が変わらなくても、標準報酬月額や標準賞与額が上がれば保険料額は増えます。

そのため、給与明細の厚生年金保険料が変わった場合は、料率ではなく標準報酬月額の変更を確認することが多くなります。

雇用保険料率は事業区分で異なる

2026年度の雇用保険料率は、一般の事業では労働者負担0.5%、事業主負担0.85%、合計1.35%です。

農林水産・清酒製造の事業や建設の事業は異なる料率となります。

事業区分 労働者負担 事業主負担 合計
一般の事業 0.5% 0.85% 1.35%
農林水産・清酒製造 0.6% 0.95% 1.55%
建設の事業 0.6% 1.05% 1.65%

会社の事業内容が複数ある場合、どの事業区分を適用するか迷うことがあります。

会社名や登記上の目的だけでなく、実際に行っている主たる事業の内容を確認します。

子ども・子育て支援金の徴収開始

2026年4月分から子ども・子育て支援金の徴収が始まりました。

協会けんぽの一般被保険者については、2026年4月分、5月納付分から0.23%が健康保険料と合わせて徴収されます。

支援金率0.23%は労使合計の率であり、被保険者と事業主が原則として折半します。

標準報酬月額30万円であれば、労使合計は月額690円、本人負担と会社負担はそれぞれ概ね345円です。

子ども・子育て支援金は健康保険料と一体的に徴収されますが、健康保険料率そのものとは区分されます。

給与計算ソフトや保険料額表では、健康保険、介護保険、子ども・子育て支援金がどのように表示されるかを確認しましょう。

2026年度の協会けんぽの都道府県別健康保険料率、介護保険料率、子ども・子育て支援金率は、 全国健康保険協会「令和8年度の保険料率」 で確認できます。

会社が年度初めに確認すること

  • 加入する健康保険の新しい料率
  • 介護保険料率と対象年齢
  • 子ども・子育て支援金率
  • 雇用保険料率と事業区分
  • 給与計算ソフトの料率更新状況
  • 当月徴収か翌月徴収か
  • 賞与計算への反映状況

保険料率や適用時期は、加入している健康保険、都道府県、事業の種類、給与の徴収方法などによって確認事項が異なります。

給与計算ソフトが自動更新される場合でも、設定内容が自社に合っているとは限りません。

数値は一般的な制度説明であり、 正確な情報は公式サイトをご確認ください

実務では、新しい料率の適用月を1か月早くしたり、遅くしたりする誤りが起こりやすいです。

給与計算ソフトを更新しただけで終わらせず、改定前後の保険料額を比較し、標準報酬月額別の料額表とも照合することをおすすめします。

106万円の壁撤廃で変わる対象者

短時間労働者の社会保険では、所定内賃金が月額8万8,000円以上という要件が、いわゆる106万円の壁として意識されてきました。

2026年10月には、この賃金要件が撤廃される予定です。

そのため、対象となる企業で働く短時間労働者については、月額8万8,000円未満かどうかではなく、週の所定労働時間などを中心に加入対象を確認することになります。

ただし、 2026年10月に企業規模要件まで一斉に撤廃されるわけではありません。

106万円の壁とは何か

106万円の壁という言葉は、短時間労働者が勤務先の健康保険と厚生年金保険へ加入する基準のうち、所定内賃金が月額8万8,000円以上という要件を年収換算した通称です。

月額8万8,000円を12か月分にすると105万6,000円になるため、一般に106万円の壁と呼ばれています。

ただし、実際の加入判定では年間収入を後から合計するのではなく、雇用契約上の所定内賃金を月額で確認します。

また、月額8万8,000円の判定では、原則として残業代、賞与、通勤手当、家族手当、精皆勤手当などを除いて判断します。

130万円の扶養認定基準との違いは、 社会保険の扶養条件と収入基準の解説 で詳しく確認できます。

標準報酬月額に含まれる報酬の範囲とは異なる点が重要です。

2026年10月に賃金要件が撤廃される

2026年10月からは、短時間労働者の適用要件のうち、月額8万8,000円以上という賃金要件が撤廃される予定です。

最低賃金以上の時給で週20時間以上働けば、一般的には月額8万8,000円以上になるため、賃金要件を独立して設ける必要性が低くなったことが背景です。

撤廃後は、週の所定労働時間が20時間以上であるか、学生ではないか、雇用期間の見込みを満たすか、勤務先が企業規模要件を満たすかなどを中心に確認します。

2026年10月以降に主に確認する要件

  • 週の所定労働時間が20時間以上か
  • 2か月を超えて雇用される見込みがあるか
  • 学生ではないか
  • 勤務先が対象となる企業規模か

フルタイムの4分の3以上なら企業規模を問わない

短時間労働者の適用拡大ばかりが注目されますが、正社員など通常の労働者と比べて、週の所定労働時間と月の所定労働日数がいずれも4分の3以上であれば、企業規模に関係なく社会保険の加入対象となるのが原則です。

たとえば、正社員の週所定労働時間が40時間であれば、週30時間以上働くパート従業員は、4分の3基準を満たす可能性があります。

この場合、会社の厚生年金被保険者数が50人以下であっても、加入対象になることがあります。

実務では、106万円未満だから加入しなくてよいと判断し、4分の3基準を見落としているケースがあります。

年収だけで社会保険の加入を判断してはいけません。

企業規模要件は段階的に縮小される

企業規模要件は段階的に縮小されます。

2026年時点では、原則として厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業が特定適用事業所の対象です。

その後、2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上へと段階的に対象が拡大され、2035年10月には企業規模要件が撤廃される予定です。

時期 企業規模要件
2026年時点 51人以上
2027年10月 36人以上
2029年10月 21人以上
2032年10月 11人以上
2035年10月 企業規模要件を撤廃予定

企業規模は、単純な全従業員数ではなく、原則として厚生年金保険の被保険者数を基準に判定します。

法人の場合は、同じ法人番号を持つすべての適用事業所を合算して判断します。

週20時間の判断方法

加入判定では、実際にたまたま働いた時間だけでなく、雇用契約上の所定労働時間を確認することが基本です。

週単位で所定労働時間を定めている場合は、その時間を確認します。

1か月単位で所定労働時間を定めている場合は、週の時間へ換算して判断します。

契約書では週20時間未満でも、実際には恒常的に週20時間以上働く状態が続いている場合は、契約内容と勤務実態の両方を確認する必要があります。

繁忙期に一時的に20時間を超えただけで直ちに加入するとは限りませんが、恒常的な勤務実態がある場合は契約書だけを根拠に非加入とすることは避けるべきです。

本人の手取りと保障はどう変わるか

本人にとっては、健康保険料と厚生年金保険料の負担が新たに発生し、手取りが減る可能性があります。

一方で、厚生年金に加入することで将来の年金額が増え、一定の障害がある場合の障害厚生年金や、死亡した場合の遺族厚生年金の対象となる可能性があります。

勤務先の健康保険の被保険者になれば、業務外の病気やけがで働けない場合の傷病手当金、出産のため休業した場合の出産手当金の対象になることもあります。

配偶者の扶養から外れる場合でも、単に保険料負担が増えるだけではなく、本人名義の被保険者として保障を受ける立場になります。

企業側の準備

企業側では、対象者一人ひとりについて会社負担の健康保険料と厚生年金保険料が発生します。

対象となるパート従業員が多い会社では、人件費への影響が大きいため、制度施行前に対象者の抽出と負担額の試算を行うことが重要です。

  • 週20時間以上となる短時間労働者を抽出する
  • 雇用契約書と実際の勤務時間を照合する
  • 学生かどうかを確認する
  • 社会保険加入後の本人負担額を試算する
  • 会社負担を含めた人件費を試算する
  • 対象者へ保障内容と手取りへの影響を説明する
  • 資格取得届と被扶養者の削除手続きを準備する

社会保険の加入は、本人や会社が自由に選べるものではありません。

要件を満たす場合は、原則として加入手続きが必要です。

契約時間の変更やシフト調整を検討する場合も、本人の希望だけで決めず、業務上必要な勤務時間と契約実態を一致させることが大切です。

短時間労働者の適用要件や企業規模要件は段階的に変わります。

施行時期が近づいた段階で、最新の公式情報を確認し、自社の被保険者数と対象者を再判定してください。

産休や育休中の保険料免除

産休や育休中の保険料免除

健康保険と厚生年金保険には、産前産後休業や育児休業を取得している期間の保険料免除制度があります。

所定の手続きを行うことで、対象期間中の従業員負担分と会社負担分の両方が免除されます。

保険料を支払っていない期間であっても、将来の年金額の計算上は保険料を納付したものとして扱われます。

この免除制度は、休業中の従業員の手取りだけでなく、会社の負担も軽減する重要な制度です。

ただし、休業を取得すれば自動的に免除されるわけではありません。

産前産後休業中の免除

産前産後休業中の免除を受けるには、会社が産前産後休業取得者申出書を日本年金機構へ提出します。

産前産後休業とは、労働基準法に基づく産前42日、多胎妊娠の場合は98日、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間をいいます。

免除期間は、産前産後休業を開始した月から、休業終了日の翌日が属する月の前月までです。

休業終了日が月末の場合は、その月まで免除対象になります。

産前産後休業の免除例

7月10日に産前休業を開始し、10月5日に産後休業を終了した場合、原則として7月分から9月分までが免除対象です。

産後休業の終了日が10月31日であれば、終了日の翌日は11月1日となるため、10月分まで免除対象になります。

出産予定日より実際の出産日が遅れた場合は、産前休業期間も延びます。

実際の出産日を確認し、必要に応じて変更の届出を行います。

育児休業中の免除

育児休業中の免除を受けるには、会社が育児休業等取得者申出書を提出します。

月額保険料は、原則として育児休業を開始した月から、終了日の翌日が属する月の前月まで免除されます。

たとえば、育児休業を7月20日に開始し、10月15日に終了した場合、原則として7月分から9月分までが免除対象です。

10月16日に復職するため、10月分は免除されません。

一方、10月31日に育児休業を終了した場合、翌日は11月1日となるため、10月分まで免除されます。

同じ月に開始と終了をした場合

育児休業の開始日と終了日の翌日が属する月が同じ場合でも、その月に14日以上の育児休業等を取得したときは、月額保険料が免除される場合があります。

この14日には、育児休業中の休日も含めます。

ただし、就業した日がある場合の数え方や、複数回の育児休業を合算できるかなど、具体的な判定が必要です。

男性従業員が出生時育児休業を短期間取得するケースでは、この14日要件が重要になります。

会社は開始日と終了日だけでなく、休業期間中の就業状況も確認して申出を行う必要があります。

賞与保険料の免除要件

賞与にかかる社会保険料については、賞与月の末日を含む連続した1か月を超える育児休業等を取得した場合に限り、免除の対象になります。

月額保険料では14日以上の育児休業があれば免除される場合がありますが、賞与保険料は同じ基準ではありません。

賞与月の末日を含み、かつ連続した1か月を超える休業が必要です。

月額保険料と賞与保険料では、育児休業中の免除要件が異なります。

賞与支給月に短期間の育児休業を取得しただけでは、賞与保険料が免除されないことがあります。

免除されるのは健康保険料と厚生年金保険料

産前産後休業や育児休業による免除の対象は、原則として健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料です。

雇用保険料は、実際に賃金が支払われた場合にその賃金額へ料率を掛けて計算します。

休業中に給与を支払わなければ雇用保険料も発生しませんが、社会保険のような申出による免除制度とは仕組みが異なります。

住民税についても免除にはなりません。

住民税は前年所得に基づいて課税されるため、休業中でも納付が必要になることがあります。

給与から控除できない場合は、会社が本人から徴収するか、普通徴収へ切り替えるなどの対応が必要です。

免除期間中も保障は継続する

保険料が免除されている期間も、健康保険の被保険者資格は継続します。

医療機関の受診や扶養家族の保険給付が直ちに受けられなくなるわけではありません。

厚生年金についても、免除期間は保険料を納付したものとして将来の年金額を計算します。

免除を受けたことで、育児休業期間が年金加入期間から除外されるわけではありません。

育児休業終了後の標準報酬月額

育児休業から復職した後、短時間勤務などにより給与が下がることがあります。

この場合、本人の申出により、育児休業終了日の翌日が属する月以後3か月間の報酬平均をもとに標準報酬月額を改定できる制度があります。

通常の随時改定とは異なり、固定的賃金の変動や2等級以上の差がなくても、一定の要件を満たせば改定できることがあります。

一方、標準報酬月額が下がると、将来の厚生年金額への影響が気になる方もいるでしょう。

3歳未満の子を養育している期間については、一定の要件を満たせば、養育期間前の高い標準報酬月額を年金額の計算に使用する養育期間標準報酬月額特例があります。

実務で起こりやすいミス

  • 産休や育休の申出書を提出していない
  • 復職日が変わったのに終了日を訂正していない
  • 免除月の保険料を給与から控除した
  • 免除されない月まで控除を停止した
  • 賞与保険料の免除要件を月額保険料と同じだと考えた
  • 住民税まで免除されると本人へ説明した
  • 育児休業終了時改定を案内していない

産休や育休を取得しただけで、自動的に保険料が免除されるわけではありません。

会社による申出手続きが必要です。

休業開始日、終了予定日、実際の復職日が変わった場合は、変更や終了の手続きが必要になることもあります。

実務では、給与計算担当者と社会保険手続き担当者の連携が不十分で、免除される月の保険料を給与から控除してしまうケースがあります。

休業期間と給与の締日、保険料の徴収月を照合して処理することが大切です。

本人へも、保険料が免除される期間、住民税は別途必要であること、復職月から控除が再開することを事前に説明しておくと、給与明細を見たときの混乱を防ぎやすくなります。

社会保険料を正しく理解しよう

社会保険料は、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険によって構成され、それぞれ目的、計算方法、負担割合が異なります。

健康保険料と厚生年金保険料は、実際の給与額そのものではなく、原則として標準報酬月額に保険料率を掛けて計算します。

そのため、給与が少し変動しただけでは保険料が変わらないこともあれば、定時決定や随時改定によって数か月後に保険料が変わることもあります。

従業員が給与明細で確認するポイント

給与明細の控除額が変わったときは、次の順番で確認すると原因を整理しやすくなります。

  • 標準報酬月額が変更されていないか
  • 健康保険や介護保険の料率が改定されていないか
  • 40歳到達により介護保険の対象になっていないか
  • 雇用保険料率が変更されていないか
  • 子ども・子育て支援金が加わっていないか
  • 保険料の徴収月や訂正処理にずれがないか
  • 賞与や遡及支給に対する保険料ではないか

まずは前月と当月の給与明細を並べ、どの控除項目が何円増減したのかを確認してください。

社会保険料の合計だけを見るより、健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険を分けた方が原因を特定しやすくなります。

健康保険料と厚生年金保険料が同じタイミングで変わっていれば、標準報酬月額の変更が考えられます。

健康保険料と介護保険料だけが変わっていれば、年度の料率改定が考えられます。

介護保険料だけが新たに控除されていれば、40歳到達が考えられます。

雇用保険料だけが毎月変動している場合は、残業代などを含む実際の賃金額の増減が原因かもしれません。

会社が給与計算で確認するポイント

企業側では、従業員から控除する金額だけでなく、会社負担分も含めて人件費を管理する必要があります。

給与計算では、最新の保険料率、標準報酬月額、年齢情報、社会保険の資格取得日と喪失日、産休・育休の免除期間などを正しく登録します。

特に次の時期は、社会保険料の誤りが起こりやすいため注意が必要です。

  • 3月から5月の年度料率改定時
  • 算定基礎届後の9月分保険料変更時
  • 昇給後の月額変更届提出時
  • 40歳、65歳、70歳、75歳の年齢到達時
  • 入社月や退職月
  • 産前産後休業や育児休業の開始・終了時
  • 賞与支給時

給与計算ソフトを使用していても、入社日、生年月日、標準報酬月額、徴収方法などの基礎情報が誤っていれば、正しい計算にはなりません。

自動計算されるから確認不要ということではないですよ。

加入漏れや控除誤りを放置しない

社会保険の加入要件を満たしている従業員を加入させていなかった場合、後から過去にさかのぼって資格取得を求められることがあります。

この場合、会社は会社負担分だけでなく、本人負担分を含む保険料をいったん納付しなければならないことがあります。

本人負担分を過去の給与からまとめて回収することは、従業員の生活へ大きな影響を与えます。

反対に、本来控除すべきでない保険料を給与から控除した場合は、本人へ返金する必要があります。

退職月の保険料、育児休業中の免除、70歳到達後の厚生年金保険料などは、特に確認が必要です。

社会保険料の控除に誤りが見つかった場合は、翌月に一方的に全額を調整するのではなく、誤りの原因、対象期間、本人への返金額または追加徴収額を確認し、本人へ説明したうえで対応してください。

追加徴収額が大きい場合は、分割方法などを検討することもあります。

社会保険料を抑えるための不自然な調整は避ける

社会保険料の負担を抑えるため、給与を不自然に手当へ振り替える、実態と異なる雇用契約を作成する、賞与の名称を変更するなどの方法を検討する方がいます。

しかし、社会保険では名称ではなく実態で判断します。

労働の対価として支払われるものであれば、基本給、手当、現物給与などを含め、報酬や賞与として扱われる可能性があります。

また、本来加入対象となる従業員の所定労働時間を契約書上だけ20時間未満にしても、実際には恒常的に20時間以上勤務していれば、加入対象と判断される可能性があります。

適法な制度設計と、加入逃れを目的とした形式的な調整は別です。

会社の賃金制度や勤務制度を変更するときは、社会保険料だけでなく、労働基準法、最低賃金、同一労働同一賃金、従業員への説明なども含めて検討する必要があります。

社会保険料は保障と一体で考える

社会保険料は、毎月の手取りを減らす負担であることは間違いありません。

しかし、健康保険による医療給付、傷病手当金、出産手当金、厚生年金による老齢・障害・遺族保障、雇用保険による失業等給付、労災保険による業務災害の補償と一体になっています。

特に短時間労働者が新たに社会保険へ加入する場合、本人負担額だけを説明すると、不利益な制度変更だと受け取られやすくなります。

会社負担があること、厚生年金が上乗せされること、傷病手当金などの保障が加わることも説明することが大切です。

社会保険料は、都道府県、加入する健康保険、業種、年齢、報酬額、休業状況などによって変わります。

インターネット上の概算だけで判断せず、自社またはご自身に適用される条件を個別に確認してください。

最後に確認したいこと

確認する立場 主な確認事項
従業員 給与明細の各控除額、標準報酬月額、年齢、料率改定、加入による保障
経営者 本人負担だけでなく会社負担を含めた総人件費
給与担当者 最新料率、徴収月、標準報酬月額、資格取得・喪失、免除期間
短時間労働者 週所定労働時間、企業規模、扶養への影響、加入後の保障
産休・育休取得者 免除期間、住民税、賞与保険料、復職後の標準報酬月額

社会保険料の計算は、基本的な仕組みを理解すれば、給与明細のどこを確認すればよいかが見えてきます。

一方で、入退社、昇給、休職、短時間勤務、産休・育休、賞与などが重なると、個別の判断が必要になります。

保険料率や適用要件は制度改正によって変わる可能性があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください

加入対象の判断、給与からの控除、標準報酬月額の届出などに迷う場合は、 最終的な判断は専門家にご相談ください

-社会保険・年金