社会保険・年金

社会保険とは?種類・加入条件・扶養の判断基準を整理

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

社会保険とは、病気やけが、出産、老齢、介護、失業、労働災害など、生活の中で起こり得るさまざまなリスクに備えるための公的な保険制度の総称です。

会社員として働き始めると、健康保険料や厚生年金保険料などが給与から控除されますが、支払った保険料によってどのような保障を受けられるのかまで理解している方は、それほど多くありません。

また、社会保険という言葉は、健康保険や厚生年金保険だけを指す場合もあれば、雇用保険や労災保険まで含めて使われる場合もあります。

そのため、インターネットで調べても説明の範囲が異なり、かえって分かりにくく感じることがあります。

実務では、従業員から加入条件について質問を受けるだけでなく、会社側からも、パートやアルバイトをいつ加入させるべきか、個人事業所にも加入義務があるのか、扶養の範囲で働くにはどうすればよいのかといった相談をよく受けます。

社会保険は、本人の年収だけで結論が決まる制度ではありません。

勤務先の形態、従業員数、所定労働時間、所定労働日数、雇用期間などを順番に確認する必要があります。

この記事では、社会保険を初めて調べる方にも分かるように、制度の全体像、5つの保険の役割、国民健康保険との違い、会社と従業員の加入条件、パートやアルバイトの基準、扶養の考え方まで、実務で迷いやすいポイントを含めて詳しく解説します。

  • 社会保険の基本的な仕組みと目的
  • 健康保険や厚生年金などの種類
  • 会社や従業員に適用される加入条件
  • 国民健康保険や扶養との違い
社会保険とは?種類や加入条件を社労士が解説

社会保険とは何かをわかりやすく解説

社会保険について理解するには、最初に制度の目的と、社会保険という言葉が指す範囲を整理することが大切です。

給与から控除される保険料だけを見ると負担に感じやすいものですが、社会保険には医療費の負担を軽くするだけでなく、病気で働けない期間の所得保障、老後の年金、障害や死亡への保障、失業時の生活支援など、幅広い機能があります。

まずは、なぜ社会保険が強制加入の制度になっているのか、どのような保険が含まれているのかを確認していきましょう。

社会保険の仕組みと目的

社会保険とは、国民の生活を支えるために設けられた公的な保険制度です。

加入者や事業主が負担する保険料、国庫負担などを財源として、病気、けが、出産、老齢、障害、死亡、介護、失業、労働災害といった一定の事由が発生したときに、必要な給付を行います。

人生の中で、病気やけがを完全に避けることはできません。

長く働けなくなることもあれば、勤務先の都合で仕事を失うこともあります。

高齢になれば、現役時代と同じように働き続けることが難しくなる場合もあるでしょう。

このようなリスクを一人だけで負担すると、医療費や生活費を賄えず、生活そのものが成り立たなくなる可能性があります。

そこで、働いている人、会社、国などが共同で費用を負担し、実際にリスクが発生した人へ給付する仕組みが設けられています。

これが社会保険の基本的な考え方です。

多数の加入者が保険料を出し合い、必要になった人を支えるため、相互扶助の制度とも説明されます。

民間の医療保険や生命保険は、原則として本人が加入するかどうかや、どの程度の保障を付けるかを選択できます。

一方、社会保険は、法律で定められた条件に該当すると、本人や会社の希望にかかわらず加入しなければなりません。

社会保険は、加入するかどうかを自由に選ぶ民間保険ではなく、法律に基づく公的な強制保険制度です。

会社と従業員が話し合って「加入しない」と決めても、法律上の加入条件を満たしていれば、その合意によって加入義務がなくなるわけではありません。

実務でも、従業員が手取り額の減少を避けるために加入を希望しないケースがあります。

しかし、社会保険は希望制ではありません。

会社が加入対象者を加入させなかった場合、後日、日本年金機構の調査などによって過去にさかのぼって資格取得を求められる可能性があります。

会社員の場合、健康保険料や厚生年金保険料などは、毎月の給与から控除されます。

会社は従業員から控除した保険料に会社負担分を加え、まとめて納付します。

そのため、従業員本人が毎月納付書を使って支払うことは通常ありません。

健康保険料と厚生年金保険料は、原則として会社と従業員が半分ずつ負担します。

たとえば、厚生年金保険料の本人負担額が毎月2万円であれば、会社も原則として同程度の金額を負担しています。

給与明細に表示されるのは本人負担分であるため、会社も保険料を負担していることは見えにくいポイントです。

社会保険料は、原則として実際の給与額そのものに毎月直接保険料率を掛けるのではなく、給与を一定の幅で区分した標準報酬月額を基礎として計算します。

入社時の報酬、毎年の定時決定、固定的賃金が変わった場合の随時改定などによって標準報酬月額が決まります。

そのため、残業代が少し増えたからといって、必ず翌月から健康保険料や厚生年金保険料が上がるわけではありません。

一方、基本給や固定手当が変更され、その後の報酬が一定以上変動した場合には、途中で標準報酬月額が見直されることがあります。保険料率や賞与にかかる保険料の上限まで含めた計算方法は、社会保険料とは?内訳と計算方法、負担割合を実務で確認で詳しく解説しています。

社会保険の目的は、単に病院の窓口負担を軽くすることだけではありません。

健康保険には、病気やけがで働けないときの傷病手当金や、出産のために休業したときの出産手当金があります。

厚生年金保険には、老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金があります。

つまり、社会保険は現在の医療費だけでなく、働けなくなったときや将来の生活まで支える制度です。

給与から控除される金額だけを見るのではなく、どのような場面で保障を受けられるのかまで理解することが大切かなと思います。

社会保険料を支払っていても、給付は自動的に振り込まれるものばかりではありません。

傷病手当金や出産手当金など、本人や会社が申請しなければ受け取れない給付もあります。

制度を知っているかどうかが、実際の生活保障に影響することもあります。

社会保険の種類と保障内容

社会保険の種類と保障内容

社会保険を広い意味で捉える場合、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の5つが含まれます。

それぞれ目的や加入条件、保険料の負担方法が異なります。

給与明細では、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料が別々に表示されるのが一般的です。

一方、労災保険料は会社が全額負担するため、従業員の給与から控除されません。

制度 主な保障内容 主な対象となる事由 主な保険料負担
健康保険 医療給付、傷病手当金、出産手当金など 業務外の病気、けが、出産、休業 会社と従業員で原則折半
介護保険 介護サービス、介護予防サービスなど 加齢に伴う疾病などにより介護が必要になった場合 会社と従業員で原則折半
厚生年金保険 老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金 老齢、障害、死亡 会社と従業員で折半
雇用保険 基本手当、育児休業給付、教育訓練給付など 失業、育児休業、介護休業、能力開発 会社と従業員が所定の割合を負担
労災保険 療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償など 業務上や通勤中の病気、けが、障害、死亡 会社が全額負担

健康保険

健康保険は、主に業務外の病気やけが、出産、死亡などに対して給付を行う制度です。

医療機関を受診した際には、年齢や所得などに応じた一部負担金を支払うことで診療を受けられます。

高額な医療費が発生した場合には、高額療養費制度により、一定の自己負担限度額を超えた部分が支給されることがあります。

手術や長期入院が必要になった場合でも、医療費の自己負担が際限なく増えるわけではありません。

また、業務外の病気やけがにより働けず、会社から十分な給与を受けられない場合には、一定の条件のもとで傷病手当金が支給されます。

出産のために仕事を休み、給与を受けられない場合には、出産手当金の対象になることがあります。

健康保険は、病院代のためだけの制度だと思われがちですが、実際には休業中の所得保障という重要な機能も持っています。

主な保険者には、全国健康保険協会と健康保険組合があります。

中小企業では全国健康保険協会、いわゆる協会けんぽに加入するケースが多く、大企業や企業グループでは独自に設立された健康保険組合に加入する場合があります。

どちらも法律に基づく健康保険ですが、保険料率や付加給付、健康診断に対する補助などが異なることがあります。

勤務先が変われば、加入する健康保険の保険者が変わる場合もあります。

介護保険

介護保険は、介護が必要になった方を社会全体で支える制度です。

要介護認定や要支援認定を受けることで、訪問介護、通所介護、福祉用具の貸与、施設サービスなどを、原則として費用の一部を負担して利用できます。

介護保険の被保険者は、年齢によって第1号被保険者と第2号被保険者に分かれます。

65歳以上の方が第1号被保険者、40歳以上65歳未満で医療保険に加入している方が第2号被保険者です。

会社員などの40歳以上65歳未満の方については、介護保険料が健康保険料と合わせて給与から控除されるのが一般的です。

40歳になった後、給与明細の介護保険料が新たに増えるのはこのためです。

第2号被保険者が介護保険サービスを利用できるのは、加齢との関係がある一定の特定疾病によって介護が必要になった場合に限られます。

40歳以上であれば、原因を問わず利用できるわけではない点に注意が必要です。

厚生年金保険

厚生年金保険は、会社員などを対象とする公的年金制度です。

老後に受け取る老齢厚生年金だけでなく、病気やけがによって一定の障害状態になった場合の障害厚生年金、被保険者が亡くなった場合に遺族へ支給される遺族厚生年金があります。

日本に住む20歳以上60歳未満の方は、原則として国民年金に加入します。

会社員や一定の公務員などは、国民年金の第2号被保険者となり、同時に厚生年金保険にも加入します。

公的年金は、国民年金を1階部分、厚生年金を2階部分とする建物に例えられます。

厚生年金に加入している期間については、国民年金の基礎年金に、報酬や加入期間に応じた厚生年金が上乗せされます。

厚生年金保険料は、標準報酬月額と標準賞与額を基礎として計算され、会社と従業員が折半します。

賞与からも厚生年金保険料が控除されるのは、賞与についても標準賞与額をもとに保険料が計算されるためです。

雇用保険

雇用保険は、労働者の雇用と生活の安定を支える制度です。

会社を退職して失業状態になった場合に支給される基本手当がよく知られていますが、それだけではありません。

育児休業を取得して一定の条件を満たした場合の育児休業給付、家族の介護のために休業した場合の介護休業給付、指定された教育訓練を受講した場合の教育訓練給付なども、雇用保険から支給されます。

健康保険や厚生年金保険とは加入条件が異なり、原則として、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる労働者が対象です。

そのため、健康保険と厚生年金には加入していないものの、雇用保険には加入しているというパートやアルバイトもいます。

社会保険と雇用保険の加入条件を同じものとして扱わないことが大切です。

労災保険

労災保険は、労働者が仕事中または通勤途中に病気、けが、障害、死亡などに至った場合に給付を行う制度です。

正社員だけでなく、パート、アルバイト、日雇労働者など、雇用形態にかかわらず原則としてすべての労働者が対象になります。

たとえば、工場内で機械に手を挟まれた場合、介護業務中に腰を痛めた場合、会社から自宅へ帰る合理的な経路上で交通事故に遭った場合などは、労災保険の対象となる可能性があります。

労災と認定されれば、治療費に関する療養補償給付、休業中の所得を補う休業補償給付、障害が残った場合の障害補償給付、亡くなった場合の遺族補償給付などが行われます。

労災保険料は会社が全額負担するため、従業員の給与から控除されません。

労災事故が発生した際に、会社が保険料負担を理由として申請を拒むことはできません。

仕事が原因の病気やけがに、健康保険を使うことは原則としてできません。

業務上または通勤上の災害に該当する可能性がある場合は、医療機関や勤務先へ仕事中または通勤中の災害であることを伝え、労災保険の手続きを確認してください。

健康保険は主に業務外の病気やけが、労災保険は業務上または通勤上の病気やけがを対象とします。

どちらを利用するかは、本人が自由に選ぶのではなく、病気やけがが発生した原因によって判断されます。

広義と狭義の社会保険の違い

社会保険という言葉には、広義と狭義の2つの使い方があります。

この区別を理解していないと、会社からの説明、給与計算、行政手続き、インターネット上の記事で、同じ社会保険という言葉を使っているのに内容が噛み合わないことがあります。

  • 狭義の社会保険 :健康保険、介護保険、厚生年金保険
  • 広義の社会保険 :健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険

狭義の社会保険は、主に会社で社会保険手続きと呼ぶ場面で使われます。

会社が日本年金機構へ提出する健康保険・厚生年金保険の資格取得届や資格喪失届、算定基礎届、月額変更届などは、一般に社会保険手続きと呼ばれます。

介護保険は、40歳以上65歳未満の健康保険加入者について、健康保険料と一緒に介護保険料を徴収する仕組みになっています。

そのため、会社の実務では、健康保険、介護保険、厚生年金保険を一つのまとまりとして扱うことが多くなります。

一方、雇用保険と労災保険は、まとめて労働保険と呼ばれます。

会社は原則として、年度ごとに労災保険料と雇用保険料を計算し、労働保険の年度更新を行います。

実務上の呼び方 含まれる主な制度 主な手続先 代表的な手続き
社会保険 健康保険、介護保険、厚生年金保険 日本年金機構、健康保険組合など 資格取得、資格喪失、算定基礎、月額変更
労働保険 雇用保険、労災保険 公共職業安定所、労働基準監督署など 雇用保険資格取得、年度更新、労災請求

たとえば、採用時に会社から社会保険へ加入しますと説明された場合、通常は健康保険と厚生年金保険への加入を意味します。

ただし、雇用保険にも加入する勤務条件であれば、実際には健康保険、厚生年金保険、雇用保険の手続きがそれぞれ行われます。

また、給与明細で社会保険料と表示されている金額が、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料の合計を意味する場合もあります。

給与計算ソフトや会社の明細様式によって表示方法が異なるため、内訳が分からないときは給与担当者へ確認するとよいでしょう。

社会保障という言葉は、さらに広い概念です。

社会保険だけでなく、生活保護などの公的扶助、社会福祉、公衆衛生なども含みます。

社会保険と社会保障は同じ意味ではありません。

社会保険という言葉だけでは、どこまでの制度を指しているのか分からないことがあります。

会社への確認や専門家への相談では、健康保険と厚生年金の話なのか、雇用保険や労災保険まで含むのかを明確にすると、認識のずれを防ぎやすくなります。

私も相談を受ける際には、最初に「ここでいう社会保険は、健康保険と厚生年金のことでよいでしょうか」と確認することがあります。

用語の意味を揃えるだけで、その後の説明がかなり分かりやすくなります。

あなたが会社から社会保険に入るよう言われた場合は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険のどれに加入するのか、保険料がいつの給与から控除されるのかを確認しておくと安心です。

国民健康保険や国民年金との違い

国民健康保険や国民年金との違い

会社員の社会保険では、健康保険料と厚生年金保険料を会社と従業員が原則として折半します。一方、国民健康保険料と国民年金保険料については、勤務先が負担する仕組みではないため、原則として本人または世帯が全額を負担します。国民健康保険料は前年の所得や世帯の加入人数、自治体ごとの料率などによって計算されるため、社会保険へ加入すれば必ず安くなるとは限りません。

会社の健康保険には被扶養者制度があり、一定の収入要件や生計維持要件を満たす配偶者、子、親などは自分で保険料を負担せず給付を受けられます。国民健康保険には扶養という考え方がなく、家族もそれぞれ加入者として扱われます。

また、会社の健康保険には病気やけがで働けないときの傷病手当金や出産手当金がありますが、市区町村が運営する国民健康保険には原則として同じ内容の給付はありません。この所得保障の違いは、独立や退職を考える際に見落とされやすいポイントです。

退職後は、市区町村の国民健康保険、退職前の健康保険の任意継続、家族の扶養、転職先の健康保険という主に4つの選択肢があります。

保険料の試算方法や扶養する家族がいる場合の比較、任意継続の申請期限などは、社会保険と国民健康保険どっちが得?保険料と扶養を社労士が徹底比較で詳しく解説しています。

公務員や自営業者が加入する制度

社会保険は会社員だけを対象とする制度ではありません。

公務員、自営業者、フリーランス、船員なども、それぞれの職業や働き方に対応した公的保険制度に加入します。

制度の名称や保険者が異なるため別物に見えますが、病気、老齢、障害、死亡などの生活上のリスクに備えるという基本的な目的は共通しています。

公務員

公務員は、国家公務員共済組合や地方公務員共済組合などの共済組合に加入します。私立学校の教職員は私立学校教職員共済制度の対象になることがあります。

共済組合は、民間企業の健康保険に相当する短期給付と、年金に関する長期給付などを行いますが、独自の付加給付や、民間企業から公務員へ転職した場合の手続きなど、会社員の社会保険とは異なる点も少なくありません。詳しくは社会保険と共済組合の違いを公務員転職の実務から解説で整理しています。

自営業者やフリーランス

自営業者やフリーランスは、原則として市区町村の国民健康保険と国民年金に加入します。

業種によっては、市区町村の国民健康保険ではなく、同業者などで構成される国民健康保険組合に加入できる場合もあります。

国民年金については、自営業者などは第1号被保険者となり、自分で保険料を納付します。

会社員のように勤務先が半分を負担する仕組みではありません。

自営業者が従業員を雇った場合には、事業所の業種と従業員数によって、その事業所が健康保険と厚生年金保険の強制適用事業所になることがあります。

自分自身は国民健康保険と国民年金に加入しながら、従業員は会社の社会保険に加入するというケースもあります。

ここは実務で迷いやすいポイントです。

個人事業主本人は、原則として自分の個人事業所の健康保険と厚生年金保険の被保険者にはなりません。

個人事業所が強制適用事業所になった場合でも、加入するのは原則として従業員です。

ただし、個人事業を法人化すると扱いが変わります。

法人は、事業の種類や従業員数にかかわらず、原則として健康保険と厚生年金保険の強制適用事業所です。

法人の代表者が役員報酬を受け、法人に常用的に使用されている実態がある場合は、従業員がいない一人会社でも原則として社会保険に加入します。

法人化を検討する場合は、税金だけでなく、会社負担分を含む社会保険料も資金計画に織り込む必要があります。

個人事業主と法人代表者では、社会保険の扱いが異なります。

法人化すると、売上や利益が少ないという理由だけで社会保険への加入義務がなくなるわけではありません。

役員報酬の設定と社会保険料負担を併せて検討することが重要です。

船員

一定の船員は、全国健康保険協会が運営する船員保険に加入します。

船員保険は、船員という職業の特殊性を踏まえて設けられた制度です。

業務外の病気やけが、出産などに関する給付に加えて、船員に特有の給付が設けられています。

船員として雇用されている場合は、一般の協会けんぽではなく船員保険の対象になることがあります。

なお、船員の雇用保険や職務上の災害に関する保障については、それぞれ関係する制度との調整があります。

実際の加入関係は、船舶の種類、雇用形態、従事する業務などによって確認する必要があります。

働き方 主な医療保険 主な年金制度 主な保険料負担
民間会社員 協会けんぽまたは健康保険組合 国民年金と厚生年金 会社と本人で原則折半
公務員 共済組合 国民年金と厚生年金 所属先と本人で負担
自営業者・フリーランス 国民健康保険など 国民年金 原則として本人が負担
一定の船員 船員保険 国民年金と厚生年金 船舶所有者と本人で所定の割合を負担

会社員、公務員、自営業者では加入先が異なりますが、病気や老齢などの生活上のリスクに備えるという社会保険の目的は共通しています。

転職、独立、法人化などによって働き方が変わると、加入する制度も変わる可能性があります。

社会保険とは誰が加入する制度か

健康保険と厚生年金保険への加入は、本人が希望するかどうかだけでは決まりません。

実務上は、最初に勤務先が社会保険の適用事業所に該当するかを確認し、次に、その事業所で働く本人が被保険者の条件を満たすかを確認します。

会社が適用事業所であっても、すべての人が同じ条件で加入するわけではありません。

正社員、短時間労働者、学生、臨時に雇用される人、70歳以上の人などでは確認すべき基準が異なります。

ここからは、会社側と従業員側の加入条件を分けて詳しく見ていきましょう。

強制適用事業所と任意適用事業所

健康保険と厚生年金保険では、法律上加入が義務付けられている事業所を強制適用事業所といいます。

事業主や従業員が加入を希望するかどうかにかかわらず、要件に該当した時点で加入手続きを行う必要があります。

主な強制適用事業所は次のとおりです。

  • 従業員数にかかわらず、株式会社や合同会社などの法人事業所
  • 常時5人以上の従業員を使用する法定の業種に該当する個人事業所

法人事業所は原則として強制適用

株式会社、合同会社、一般社団法人、医療法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人などの法人事業所は、事業の種類や従業員数にかかわらず、原則として強制適用事業所です。

従業員を雇用していない一人会社であっても、常勤の代表者が役員報酬を受けている場合は、原則として健康保険と厚生年金保険への加入が必要です。

実務では、「従業員が5人未満だから加入しなくてもよい」と考えている法人が見受けられます。

しかし、5人という人数基準が問題になるのは主に個人事業所です。

法人は、従業員が1人もいない場合でも加入義務が生じることがあります。

役員については、役員という名称だけで一律に判断するのではなく、法人から労務の対価として役員報酬を受け、常用的な使用関係があるかを確認します。

非常勤役員や報酬を受けていない役員については、勤務実態などを踏まえた個別判断が必要です。

個人事業所は従業員数と業種を確認

個人事業所の場合は、常時使用する従業員が5人以上であり、法律で定められた業種に該当すると、原則として強制適用事業所になります。

法律、会計、税務、社会保険労務士などの一定の士業についても、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所は強制適用の対象です。

一方、個人経営の飲食店、旅館、理美容業、クリーニング業などの一部サービス業や、農業、林業、漁業などは、現行制度上、常時5人以上の従業員を雇用していても強制適用にならない場合があります。

個人事業所は、従業員が5人以上という事実だけでは加入義務を判断できません。

法人か個人事業所か、常時使用する従業員が何人か、どの業種に該当するかという順番で確認する必要があります。

ここでいう常時5人以上は、ある一日だけ5人を超えたかどうかではなく、事業所で通常使用している従業員の状態をもとに判断します。

正社員だけでなく、一定のパートやアルバイトを人数に含めて判断することがあります。

事業所の業種については、会社が掲げている名称だけでなく、実際の事業内容によって判断します。

複数の事業を行っている場合や、業種の区分が分かりにくい場合には、管轄の年金事務所へ確認した方が安全です。

任意適用事業所とは

強制適用事業所に該当しない個人事業所でも、一定の手続きを行うことで、健康保険と厚生年金保険の適用を受けることができます。

これを任意適用事業所といいます。

任意適用の申請を行うには、原則として、被保険者となるべき従業員の半数以上の同意を得たうえで、厚生労働大臣の認可を受ける必要があります。

任意適用は、同意した従業員だけを加入させる制度ではありません。

認可を受けて任意適用事業所になった後は、被保険者の要件を満たす従業員が原則として加入対象になります。

会社側にとっては保険料の事業主負担が発生しますが、社会保険を整備することで採用力や定着率の向上につながることがあります。

従業員側にとっても、保険料の会社負担、厚生年金への加入、傷病手当金などの保障を受けられるメリットがあります。

区分 加入の考え方 主な対象 従業員の同意
強制適用事業所 法律上、加入が義務 法人事業所、一定の個人事業所 不要
任意適用事業所 申請と認可により適用 強制適用に該当しない個人事業所 原則として半数以上の同意が必要

適用事業所に該当するかどうかについては、 日本年金機構「適用事業所と被保険者」 に基本的な取扱いが示されています。

未加入の状態が長期間続くと、後から保険料をまとめて負担することになり、会社と従業員の双方に大きな影響が出る可能性があります。

法人を設立したとき、個人事業所の従業員が増えたとき、事業内容を変更したときには、早めに適用関係を確認しましょう。

従業員が社会保険に入る条件

従業員が社会保険に入る条件

社会保険の適用事業所で常用的に働く従業員は、原則として健康保険と厚生年金保険の被保険者になります。

正社員、契約社員、準社員、嘱託社員など、会社が使用する雇用区分の名称だけで加入の可否が決まるわけではありません。

実際には、雇用契約の内容、所定労働時間、所定労働日数、雇用期間、報酬、勤務実態などを確認し、事業所と従業員との間に常用的な使用関係があるかを判断します。

正社員は原則として加入対象

期間の定めなくフルタイムで働く一般的な正社員は、原則として入社日から健康保険と厚生年金保険の被保険者になります。

本人がすでに国民健康保険へ加入している場合や、配偶者の健康保険の扶養に入っている場合でも、勤務先の社会保険の加入条件を満たせば、原則として勤務先の社会保険へ切り替えます。

国民健康保険からの脱退や、家族の扶養から外れる手続きは、勤務先の資格取得手続きとは別に必要となることがあります。

会社が社会保険の資格取得をしただけで、市区町村の国民健康保険が自動的に脱退となるとは限りません。

試用期間中も原則として加入

試用期間中であっても、当初から継続して雇用する予定であり、通常の従業員と同様の勤務条件で働く場合は、原則として入社日から社会保険へ加入します。

実際によくあるのが、3か月間の試用期間が終わって本採用になってから社会保険へ加入させればよいという誤解です。

しかし、試用期間は、従業員の適性や能力を確認するための期間であり、社会保険の加入を待つための期間ではありません。

会社が独自に「試用期間中は社会保険なし」と雇用契約書へ記載しても、法律上の加入条件を満たす限り、その記載によって加入義務を免れることはできません。

社会保険の加入は、会社や本人が自由に選択するものではありません。

加入条件を満たす場合は、原則として資格取得日から手続きが必要です。

手取り額を増やしたいという本人の希望だけで、加入を見送ることはできません。

有期契約社員も対象になる

契約期間が定められている契約社員でも、社会保険の加入条件を満たせば被保険者になります。

有期契約だから社会保険へ加入しなくてよいというわけではありません。

契約期間が2か月以内である場合でも、契約更新が予定されている、過去に同じ契約で更新された実績があるなど、当初から2か月を超えて雇用される見込みがある場合は、入社時から加入対象になることがあります。

会社が形式上2か月契約を繰り返している場合でも、実態として継続雇用が予定されていれば、最初の契約期間だけを見て加入対象外と判断するのは危険です。

年齢によって加入する制度が変わる

健康保険は、原則として75歳になるまで加入します。

75歳になると、原則として後期高齢者医療制度へ移行します。

厚生年金保険は、原則として70歳になるまでが被保険者となる年齢です。

そのため、70歳以上75歳未満の方は、健康保険には加入しながら、厚生年金保険の被保険者にはならないケースがあります。

ただし、70歳以上の方についても、厚生年金保険の適用事業所で働き、一定の要件を満たす場合には、70歳以上被用者として届出が必要になることがあります。

老齢厚生年金を受給しながら働く場合には、賃金と年金額によって在職老齢年金の調整を受ける可能性もあります。

年金を受給しているから社会保険に加入しなくてもよいというわけではありません。

年金受給の有無と、勤務先での社会保険加入は分けて判断します。

国籍や本人の希望は原則として関係しない

外国人労働者についても、適用事業所で加入条件を満たして働く場合は、原則として健康保険と厚生年金保険の被保険者になります。

国籍を理由に加入対象外とすることはできません。

数年後に帰国する予定である、母国の保険へ加入しているといった事情があっても、それだけで日本の社会保険への加入義務がなくなるわけではありません。

厚生年金保険料については、一定の要件を満たして帰国した外国人が脱退一時金を請求できる制度があります。

また、社会保障協定を締結している国との間では、保険料の二重負担防止などの取扱いが設けられている場合があります。

よくあるケース 基本的な考え方
正社員として入社した 原則として入社日から加入
試用期間中である 加入条件を満たせば試用期間中も加入
有期契約社員である 有期契約という理由だけでは対象外にならない
年金を受給している 年金受給の有無だけでは対象外にならない
外国籍である 国籍にかかわらず加入条件を適用
本人が加入を希望しない 加入条件を満たせば原則として加入が必要

健康保険と厚生年金の関係については、 社会保険に厚生年金が含まれないケースの解説 も参考にしてください。

会社側は、採用時に雇用区分だけで判断するのではなく、労働条件通知書や雇用契約書に記載した所定労働時間、所定労働日数、雇用期間などを確認しましょう。

契約内容と実際の働き方が異なる場合には、勤務実態も含めて見直す必要があります。

パートやアルバイトの加入条件

パートやアルバイトであっても、勤務条件によっては健康保険と厚生年金保険への加入が必要です。加入の可否は、正社員という名称で働いているかどうかではなく、通常の労働者と比べてどの程度働いているかによって判断します。

基本になるのは、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、同じ事業所で働く通常の労働者の4分の3以上かどうかという基準です。4分の3以上であれば、企業の規模にかかわらず原則として加入対象になります。

4分の3未満であっても、特定適用事業所で働く短時間労働者は、週の所定労働時間が20時間以上、2か月を超えて雇用される見込みがある、学生ではないなどの要件をすべて満たすと加入対象になります。2026年9月までは、これに加えて所定内賃金が月額8万8,000円以上(いわゆる「106万円の壁」)で、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業などで働いていることも要件です。

2026年10月に予定されているのは、賃金要件(月額8万8,000円以上)の撤廃です。

企業規模要件(現行51人以上)は同じタイミングでは変わらず、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上、2035年10月に撤廃という別スケジュールで段階的に縮小されます。「106万円の壁撤廃」と「企業規模要件撤廃」は施行時期が異なる別の改正なので、混同しないよう注意が必要です。

4分の3基準や短時間労働者の要件、週20時間の判定方法、賃金要件の詳細な範囲までさらに詳しく確認したい方は、社会保険への加入条件を社労士が解説|週20時間・106万・130万の基準パートの社会保険加入条件|4分の3基準と適用拡大の改正点を社労士が解説で整理しています。

扶養に入れる条件と保険料負担

扶養に入れる条件と保険料負担

会社の健康保険には被扶養者制度があります。

一定の条件を満たす配偶者、子、親などは、自分自身で健康保険料を負担せず、被保険者である家族の健康保険から給付を受けることができます。

一方、厚生年金保険そのものに家族を扶養として加入させる仕組みがあるわけではありません。

20歳以上60歳未満の配偶者が一定の要件を満たす場合には、国民年金の第3号被保険者になる制度があります。

健康保険の被扶養者と国民年金の第3号被保険者は関係が深い制度ですが、完全に同じものではありません。

配偶者以外の子や親は健康保険の扶養に入れる可能性がありますが、国民年金の第3号被保険者になることはありません。

健康保険の扶養に入る収入基準

一般的には、被扶養者となる方の年間収入が130万円未満であることが、一つの基準です。

扶養に入れるかどうかの詳しい判断基準は、 社会保険の扶養条件と収入基準の解説 で詳しく整理しています。

60歳以上の方または一定の障害がある方については、年間収入180万円未満が基準となることがあります。

ただし、年間収入が基準未満であれば必ず扶養に入れるわけではありません。

本人と被保険者が同居しているか別居しているか、被保険者によって主として生計を維持されているか、別居の場合にどの程度の仕送りを受けているかなども確認されます。

同居している家族の場合は、原則として被扶養者となる方の年間収入が被保険者の年間収入の2分の1未満であることが基準の一つとなります。

別居している場合は、被扶養者となる方の年間収入が、被保険者からの仕送り額より少ないことなどが確認されます。

これらは一般的な基準であり、個別の事情によって認定される場合や、追加書類を求められる場合があります。

健康保険組合では、協会けんぽとは異なる確認書類や運用を定めていることもあります。

過去の年収ではなく今後の見込みで判断する

健康保険の扶養認定では、原則として、認定を受ける時点から今後1年間に見込まれる収入によって判断します。

前年の源泉徴収票に記載された金額だけで決まるわけではありません。

たとえば、前年に正社員として年収300万円を得ていた方でも、退職して今後の収入がなくなれば、退職後に配偶者の扶養へ入れる可能性があります。

反対に、前年の収入が100万円であっても、今後の雇用契約で毎月12万円の給与を受ける予定であれば、年間収入の見込みは144万円となるため、一般的な130万円未満の基準を満たさない可能性があります。

給与収入の場合、年間130万円未満を月額に換算したおおむね10万8,334円未満が継続しているかを確認されることがあります。

失業給付や傷病手当金なども、健康保険の扶養認定では収入として扱われる場合があります。

税法上は非課税となる収入でも、健康保険の扶養判定では収入に含まれることがあります。

失業給付、公的年金、傷病手当金、出産手当金などを受け取る場合は、金額と受給期間を確認してください。

勤務先の社会保険加入が扶養より優先する

パートやアルバイト本人が勤務先の健康保険と厚生年金保険の加入条件を満たした場合は、年収が130万円未満であっても、原則として勤務先の社会保険へ加入します。

つまり、130万円を超えなければ必ず配偶者の扶養に残れるわけではありません。

4分の3基準を満たす場合や、特定適用事業所で週20時間以上働くなど短時間労働者の要件を満たす場合には、130万円へ到達する前でも本人が社会保険へ加入します。

勤務先の社会保険へ加入する条件と、家族の健康保険の扶養に入る条件は、別々に確認する必要があります。

実務では、「年収を130万円未満に抑えているので社会保険には入らなくてよい」と考えていたところ、実際には週20時間以上などの加入条件を満たしていたという相談があります。

年収だけでなく、週の所定労働時間や勤務先の企業規模も確認しましょう。

社会保険の扶養と税法上の扶養は別制度

社会保険の扶養、所得税や住民税に関する扶養、会社の家族手当は、それぞれ別の制度です。

社会保険の扶養から外れたからといって、必ず同じ時点で税法上の扶養からも外れるとは限りません。

制度 主な判断基準 主な確認先
健康保険の扶養 今後の年間収入見込み、生計維持関係、同居・別居など 協会けんぽ、健康保険組合、共済組合
国民年金第3号被保険者 配偶者であること、年齢、収入など 日本年金機構など
税法上の扶養 その年の合計所得金額、続柄など 税務署、税理士、勤務先
会社の家族手当 就業規則、賃金規程、会社独自の支給要件 勤務先

会社の家族手当についても、健康保険の扶養に入っていることを支給条件とする会社もあれば、税法上の扶養を基準とする会社、独自の年収上限を設ける会社もあります。

扶養から外れた場合には、健康保険料と厚生年金保険料の負担だけでなく、配偶者の勤務先で家族手当が停止される可能性もあります。

働く時間を増やす場合は、世帯全体の手取りへの影響を確認することが大切です。

19歳以上23歳未満の家族の収入要件

19歳以上23歳未満の一定の家族については、健康保険の被扶養者認定における年間収入要件が150万円未満となる場合があります。

ただし、配偶者はこの取扱いの対象外です。

また、年齢の判定時期、続柄、同居・別居、生計維持関係など、収入以外の要件も確認する必要があります。

大学生年代の子がアルバイトをしている家庭では、収入が増えた場合に健康保険の扶養を外れるかどうかが問題になります。

年間収入額だけで判断せず、加入している健康保険へ確認しましょう。

健康保険の扶養に入っている家族が増えても、健康保険料が扶養人数に応じて直接加算される仕組みではありません。

一方、国民健康保険には扶養制度がなく、家族もそれぞれ加入者として扱われます。

扶養を確認するときは、次の順番で整理すると分かりやすくなります。

  • 本人が勤務先の社会保険加入条件を満たしていないか
  • 今後1年間の収入見込みはいくらか
  • 被保険者によって生計を維持されているか
  • 失業給付や年金など給与以外の収入がないか
  • 健康保険、税金、会社手当を分けて確認したか

扶養認定は、加入している健康保険の保険者が行います。

収入の種類や家族関係によって必要書類が異なるため、最終的には協会けんぽ、健康保険組合、共済組合などへ確認してください。

社会保険とは何かを整理しよう

社会保険とは、病気やけが、出産、老齢、介護、失業、労働災害など、生活上のさまざまなリスクに備えるための公的な保険制度です。

加入者や会社などが保険料を出し合い、実際に病気、失業、老齢などの状況になった人へ必要な給付を行います。

社会保険は、民間保険のように本人が自由に加入するかどうかを決める制度ではありません。

法律で定められた条件に該当すれば、会社や本人の希望にかかわらず加入するのが原則です。

狭い意味での社会保険は、健康保険、介護保険、厚生年金保険を指します。

広い意味では、これらに雇用保険と労災保険を加えた5つの制度を指します。

会社の実務では、健康保険と厚生年金保険を社会保険、雇用保険と労災保険を労働保険と呼び分けることが多くなります。

同じ社会保険という言葉でも、使われる場面によって含まれる制度が異なる点を押さえておきましょう。

健康保険は、業務外の病気やけがに対する医療給付だけでなく、傷病手当金や出産手当金など、働けない期間の所得を支える役割も持っています。

厚生年金保険は、老後の年金だけでなく、障害や死亡に対する保障も行います。

雇用保険には失業時の基本手当、育児休業給付、介護休業給付などがあり、労災保険は仕事中や通勤途中の病気やけがを保障します。

それぞれ対象となる事由が異なるため、どのような場合にどの制度を使うのかを理解しておくことが大切です。

加入条件は会社側と従業員側の両方を確認する

健康保険と厚生年金保険への加入を判断するときは、最初に勤務先が強制適用事業所または任意適用事業所に該当するかを確認します。

そのうえで、働く本人が被保険者の要件を満たしているかを確認します。

法人事業所は、従業員数にかかわらず原則として強制適用事業所です。

個人事業所については、従業員数と業種によって加入義務が異なります。

正社員は原則として加入対象です。

パートやアルバイトについては、通常の労働者の4分の3以上働いているか、週20時間以上などの短時間労働者の要件を満たすかを確認します。

本人の年間収入だけを見て加入を判断することはできません。

特に106万円や130万円という金額だけが独り歩きしやすいのですが、106万円は短時間労働者の賃金要件、130万円は主に健康保険の扶養認定に関する基準です。

目的が異なる、別の基準です。

  • 法人事業所は原則として社会保険の強制適用事業所
  • 個人事業所は従業員数だけでなく業種の確認が必要
  • パートやアルバイトでも勤務条件によって加入対象
  • 4分の3基準は企業規模にかかわらず適用
  • 2026年10月には短時間労働者の賃金要件を撤廃予定
  • 企業規模要件は2027年10月以降に段階的に縮小予定
  • 130万円未満でも勤務先の社会保険に加入する場合がある

従業員が確認しておきたいポイント

あなたが会社へ入社するときや勤務時間を増やすときは、社会保険へ加入する日、給与から保険料が控除される時期、扶養家族の手続き、これまで加入していた国民健康保険の脱退方法などを確認しましょう。

社会保険料が控除されることで、短期的には給与の手取り額が減る場合があります。

一方で、保険料の一部を会社が負担すること、厚生年金が将来の年金へ上乗せされること、傷病手当金などの保障を受けられることも含めて考える必要があります。

社会保険に加入した後も国民健康保険料を支払い続けている場合は、国民健康保険の脱退手続きが完了していない可能性があります。

市区町村へ勤務先の健康保険へ加入したことを届け出てください。

配偶者の扶養から外れる場合は、配偶者の勤務先でも手続きが必要です。

会社間で自動的に情報が連携され、すべての手続きが完了するとは限りません。

会社が確認しておきたいポイント

会社側では、採用時に正社員かパートかという名称だけで判断せず、所定労働時間、所定労働日数、雇用期間、所定内賃金、学生かどうかなどを確認する必要があります。

特にシフト制のパートについては、雇用契約書上の時間と実際の勤務時間が一致しているかを定期的に確認しましょう。

契約上は週20時間未満でも、恒常的に週20時間以上働いている場合には、加入条件の再判定が必要になることがあります。

また、会社全体の厚生年金保険の被保険者数が増えた場合には、特定適用事業所への該当を確認しなければなりません。

店舗ごとの人数ではなく、法人全体で判断する点にも注意が必要です。

社会保険料は会社にも負担が発生するため、対象者が増える場合には人件費の見込みも変わります。

しかし、保険料負担を避けることだけを目的に、実際の労働時間と異なる契約を作成したり、加入対象者を加入させなかったりすることは適切ではありません。

社会保険の未加入は、将来の給付だけでなく、会社の資金繰りにも影響します。

後日さかのぼって資格取得となった場合、会社負担分と本人負担分をまとめて納付する必要が生じる可能性があります。

本人負担分を過去の給与からどのように回収するかという問題も発生します。

制度改正を前提に早めに準備する

短時間労働者に関する月額8万8,000円以上の賃金要件は、2026年10月に撤廃される予定です。

企業規模要件も2027年10月以降、段階的に縮小される予定となっています。

これまで対象外だった企業や短時間労働者が、今後は社会保険の加入対象になる可能性があります。

制度が変わる直前になってから対象者を確認すると、本人への説明や給与計算の準備が間に合わないことがあります。

会社は、現在のパートやアルバイトの契約時間、実際の勤務時間、賃金、学生区分を整理し、将来どの時点で加入対象となる可能性があるかを確認しておくとよいでしょう。

従業員に対しては、保険料が控除されて手取りが変わることだけでなく、厚生年金への加入、傷病手当金、出産手当金、障害年金、遺族年金などの保障が加わることも説明する必要があります。

社会保険への加入は、単なる給与控除の変更ではありません。

会社にとっては法令上の義務であり、従業員にとっては病気、出産、障害、老齢などに備える生活保障の一部です。

社会保険の加入条件は、会社の法人格、個人事業所の業種、従業員数、契約内容、実際の勤務状況などによって結論が異なります。

制度改正の施行時期や詳細な取扱いが更新される場合もあるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。

個別のケースでは、契約書だけでなく、出勤簿、シフト表、賃金台帳などを確認しなければ判断できないことがあります。

会社や本人だけで結論を出すことが難しい場合には、最終的な判断は専門家にご相談ください。

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