社会保険・年金

年金受給額平均はいくら?国民年金・厚生年金の目安を整理

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

老後のお金を考え始めると、「年金はいくらくらいもらえるのだろう」「自分の年金は平均より多いのか、少ないのか」と気になる方は多いと思います。

年金受給額の平均を見るときは、まず国民年金と厚生年金を分けて考えることが大切です。

厚生労働省の令和6年度の統計では、国民年金の平均受給月額は5万9,431円、厚生年金保険の平均受給月額は15万1,142円となっています。

ただし、この平均額がそのままあなたの将来の年金額になるわけではありません。

国民年金は保険料を納めた期間などによって金額が変わり、厚生年金はさらに加入期間や現役時代の報酬などによって受給額に差が生じます。

同じ年齢の人でも、これまでの働き方によって年金額はかなり違うことがあります。

また、「厚生年金の平均が15万円台なら、国民年金の5万円台を足して20万円程度もらえるのでは」と考える方もいるかもしれませんが、この理解も正確ではありません。

厚生労働省が公表している厚生年金の平均年金月額には基礎年金月額が含まれているため、統計の意味を確認したうえで数字を見る必要があります。

この記事では、国民年金と厚生年金の平均受給額、男女による違い、受給額に差が生じる理由、そして自分の老後資金を考えるときに平均額をどう活用すればよいのかまで、社会保険労務士の実務目線で詳しく整理します。

  • 国民年金の平均受給額
  • 厚生年金の平均受給額
  • 男女で年金受給額に差が出る理由
  • 自分の年金額を考えるときのポイント

年金受給額の平均はいくら?国民年金・厚生年金を解説

年金受給額の平均はいくら?

まずは、年金受給額の平均について、国民年金と厚生年金に分けて確認していきましょう。

「年金はいくらもらえるのか」という質問は非常にシンプルに見えますが、公的年金は加入してきた制度や期間、現役時代の報酬などによって一人ひとり金額が異なるため、平均額を見るときにも前提を理解しておくことが大切です。

特に厚生年金の平均額については、老齢基礎年金を含む統計であることを理解しておかないと、「国民年金5万円台に厚生年金15万円台がさらに加算される」と誤解してしまう可能性があります。

数字そのものだけではなく、どのような人を対象として、何を含めて計算した平均なのかを見ることが重要です。

区分 平均受給月額 年間換算の目安
国民年金 5万9,431円 約71万3,172円
厚生年金保険 15万1,142円 約181万3,704円

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に整理しています。

平均額は統計上の数値であり、個人の将来の受給額を示すものではありません。

(出典:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」)

国民年金の平均受給額

令和6年度の厚生労働省の統計では、 国民年金の平均受給月額は5万9,431円 です。

12か月分として単純に換算すると、年間では約71万3,172円になります。

まずは「国民年金の平均的な受給水準は月額5万円台後半」というイメージを持つと分かりやすいでしょう。

ただし、ここで非常に重要なのが、国民年金の平均受給額と、毎年度公表される老齢基礎年金の満額は同じ数字ではないという点です。

老齢基礎年金は、原則として20歳から60歳までの40年間、つまり480月について保険料を納付した場合などに満額となります。

一方、実際の受給者の中には、保険料を納付していない期間がある人、免除制度を利用した期間がある人、現在とは異なる過去の制度の影響を受けている人など、さまざまなケースがあります。

そのため、実際の受給者を集計した平均額は、毎年度示される老齢基礎年金の満額とは一致しません。

平均額と満額は別の数字です。

「国民年金の平均が5万9,431円だから、自分も5万9,431円程度になる」と考えるのも、「満額がもっと高いから、全員が満額を受け取れる」と考えるのも適切ではありません。

自分自身の年金額を考える場合には、実際の保険料納付済期間や免除期間などを確認する必要があります。

たとえば、自営業者やフリーランスとして国民年金の第1号被保険者だった期間について、すべての保険料を納付している人と、一部に未納期間がある人とでは、老齢基礎年金の金額が異なる可能性があります。

保険料免除についても注意が必要です。

免除を受けた期間は単純な未納とは扱いが異なり、一定の割合で老齢基礎年金額に反映されます。

一方、学生納付特例や納付猶予の期間については、追納しなければ原則として年金額には反映されません。

受給資格期間に含まれるかどうかと、年金額にどの程度反映されるかは分けて考える必要があります。

実務でも、「学生のころに払っていなかった期間があるが大丈夫でしょうか」「免除を受けたことがあると年金はどれくらい減りますか」といった相談は珍しくありません。

このような場合、私は平均受給額と比較するより先に、まず本人の年金記録を確認することが重要だとお伝えしています。

平均額は全体像を知るためには便利ですが、あなた自身の納付履歴を反映した数字ではないからです。

なお、国民年金の統計には集計対象や「受給者」「受給権者」といった区分の違いがあり、同じ厚生労働省の資料でも表によって平均額がわずかに異なる場合があります。

そのため、別の資料で5万9,431円と少し異なる数字を見つけても、直ちにどちらかが間違っているとは限りません。

国民年金の平均受給額は、自分が将来受け取る年金を直接示す数字ではなく、現在の受給者全体のおおよその水準を把握するための数字 として活用するのが適切です。

老後資金を具体的に考えるのであれば、「平均がいくらか」を確認した次の段階として、自分の加入記録と将来の年金見込額まで確認しておくことをおすすめします。

厚生年金の平均受給額

厚生年金の平均受給額

令和6年度の厚生労働省の統計では、 厚生年金保険の平均受給月額は15万1,142円 となっています。

年間に単純換算すると約181万3,704円です。

国民年金の平均受給月額5万9,431円と比べると大きな差があるため、「会社員だった人は年金がかなり多い」と感じる方もいるでしょう。

この差が生じる大きな理由は、日本の公的年金制度が基礎年金部分と厚生年金部分を組み合わせた仕組みになっているためです。

社会保険とは全体の流れは、社会保険とは?仕組み・種類・広義と狭義の違いについて整理した記事でまとめて整理しています。

会社員などとして厚生年金に加入してきた人は、原則として老齢基礎年金に加え、厚生年金への加入期間や現役時代の報酬に応じた老齢厚生年金を受け取ります。

そのため、国民年金だけの場合と比較すると、受給額が高くなりやすい仕組みになっています。

ただし、ここは年金受給額の平均を調べる際に 特に誤解が多いポイント です。

厚生労働省が公表している厚生年金保険の平均年金月額15万1,142円には、基礎年金月額が含まれています。

したがって、「国民年金5万9,431円+厚生年金15万1,142円=約21万573円」と計算するものではありません。

厚生年金について「平均15万円台」と説明すると、厚生年金部分だけで14万円程度受け取れるように聞こえてしまうことがあります。

しかし、統計上の15万1,142円は、基礎年金を含めた老齢年金の平均として示されている数字です。

さらに、厚生年金は「加入していれば全員ほぼ同じ」という制度でもありません。

老齢厚生年金の報酬比例部分は、厚生年金に加入していた期間と、その期間の報酬記録などによって計算されます。

そのため、同じ40年間働いた人であっても、現役時代の給与や賞与の水準が違えば年金額も違ってきます。

反対に、現役時代の給与が比較的高かった人でも、厚生年金への加入期間が短ければ、必ず平均を上回るとは限りません。

たとえば、会社員として20年間働いた後に独立して自営業になった人と、40年間会社員として厚生年金に加入した人では、同程度の給与水準だった期間があったとしても、老齢厚生年金の金額には差が生じる可能性があります。

転職回数が多いこと自体で年金が不利になるわけではありませんが、転職と転職の間に厚生年金へ加入していない期間があった場合や、自営業期間が長かった場合などは、厚生年金の加入期間が短くなります。

厚生年金の平均15万1,142円を見るときのポイント

  • 基礎年金月額を含む平均である
  • 厚生年金部分だけが15万1,142円という意味ではない
  • 加入期間が長いほど年金額は増えやすい
  • 現役時代の報酬水準も年金額に影響する
  • 平均額は個人の将来受給額を保証するものではない

社労士として年金や社会保険の相談を受けていると、「ずっと会社員だから平均くらいはもらえるはず」と考えている方もいます。

しかし、実際には加入期間や標準報酬の推移を確認しないと、将来の受給額は判断できません。

15万1,142円という数字は「会社員なら将来これくらいもらえる」という基準ではなく、現在の受給者を集計した統計上の平均値 です。

老後設計に使う場合には、平均額を目安として確認した後、自分自身の年金記録を基にした見込額へ置き換えて考えることが重要です。

国民年金と厚生年金の違い

国民年金と厚生年金の平均受給額に大きな差が生じる理由を理解するには、日本の公的年金制度の基本的な構造を知っておくと分かりやすくなります。

日本の公的年金は、一般的に「2階建て」と表現されます。

1階部分にあたるのが国民年金から支給される老齢基礎年金です。

日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、原則として国民年金制度の被保険者になります。

会社員など厚生年金に加入する人についても、国民年金と無関係になるわけではありません。

厚生年金の被保険者は国民年金の第2号被保険者となり、老後には原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることになります。

その上乗せとなる2階部分が厚生年金です。

比較項目 国民年金 厚生年金
制度上の位置づけ 公的年金の基礎部分 基礎年金に上乗せされる被用者年金
主な加入者 自営業者、学生などを含む国民年金被保険者 会社員など一定の被用者
老後の主な給付 老齢基礎年金 老齢基礎年金+老齢厚生年金
年金額に影響する主な要素 保険料納付済期間や免除期間など 加入期間、標準報酬月額、標準賞与額など
受給額の個人差 納付状況などによって生じる 加入期間と報酬水準などによって大きくなりやすい

会社員の方の場合、毎月の給与明細には「厚生年金保険料」と記載されているため、「自分は厚生年金だけに加入していて、国民年金には加入していない」と思っている方もいます。

しかし、制度上は厚生年金加入者も国民年金の第2号被保険者です。

そのため、老後の年金は老齢基礎年金と老齢厚生年金を組み合わせて考える必要があります。

この仕組みが分かると、厚生年金の平均受給額を見るときに国民年金の平均額を単純に足してはいけない理由も理解しやすくなります。

また、一人の人が生涯ずっと同じ制度に加入するとは限りません。

たとえば、大学卒業後に会社員として働き、その後独立して個人事業主となり、さらに別の会社へ再就職するという働き方もあります。

この場合、厚生年金に加入する期間と国民年金の第1号被保険者になる期間が混在します。

結婚などをきっかけとして配偶者の扶養に入り、一定の要件を満たして国民年金の第3号被保険者となる期間がある人もいます。

現在の職業だけを見ても、将来の年金額は分かりません。

重要なのは、20歳以降の長い期間について、どの制度に、どのくらい加入してきたかを確認することです。

さらに厚生年金では、加入期間だけでなく報酬水準も計算に関係します。

そのため、「会社員歴30年」という情報だけでも正確な年金額を把握することはできません。

実務では、転職歴や独立歴が多い方ほど、自分がいつ国民年金で、いつ厚生年金だったのか曖昧になっていることがあります。

そのような場合には、記憶だけで判断するのではなく、年金記録そのものを確認することが大切です。

年金額を確認するときは、現在の働き方ではなく、これまでの加入履歴全体を見る

これが国民年金と厚生年金を理解するうえで非常に重要なポイントです。

男性の年金平均受給額

男性の年金平均受給額

厚生年金保険の老齢年金について男女別に見ると、厚生労働省の令和6年度末の資料では、男性の平均年金月額は 16万9,967円 となっています。

分かりやすく丸めると約17万円です。

12か月分を単純換算すると年間約204万円になります。

ただし、この数字は「男性が65歳になれば平均して毎月17万円を受け取れる」という意味ではありません。

まず、この男女別統計は厚生年金保険(第1号)の老齢年金受給権者について集計されたもので、平均年金月額には基礎年金月額も含まれています。

また、65歳未満で特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分のみを受ける人なども含まれるため、数字を見る際には統計上の対象を理解しておく必要があります。

前に紹介した厚生年金保険の平均受給月額15万1,142円と、男女別統計の全体平均額が完全には一致しないのも、集計対象が同一ではないためです。

「同じ厚生年金なのに数字が違う」と感じるかもしれませんが、統計では受給者と受給権者など、対象範囲によって数字が変わります。

男性の平均額が比較的高くなっている背景の一つとして考えられるのが、現在年金を受給している世代の就業歴です。

現在の高齢世代では、学校を卒業してから定年近くまで正社員として継続して働き、長期間にわたって厚生年金へ加入してきた男性が多く存在します。

厚生年金は加入期間が長く、報酬水準が高いほど老齢厚生年金の報酬比例部分が増えやすいため、このような就業歴が平均額にも反映されます。

たとえば、22歳から60歳まで会社員として厚生年金へ加入してきた人であれば、単純に考えても加入期間は38年前後になります。

一方、会社員だった期間が10年程度で、その後長期間自営業だった人では、厚生年金部分の計算対象となる期間は大きく異なります。

男性平均16万9,967円は「男性ならもらえる金額」ではありません。

年金額を決めるのは性別そのものではなく、厚生年金に加入してきた期間、報酬水準、基礎年金の加入・納付記録などです。

また、給与水準も重要です。

厚生年金の報酬比例部分には現役時代の標準報酬月額や標準賞与額が関係するため、同じ年数だけ厚生年金に加入した男性同士でも年金額には相当な差が生じます。

実際、厚生労働省の資料を見ると、年金月額の分布は一定の金額に集中しているわけではなく、10万円前後の人から20万円を超える人まで幅広く存在しています。

「平均」という1つの数字だけでは、このばらつきまでは分かりません。

したがって、自分の見込額が男性平均より少なかったとしても、直ちに年金記録がおかしいとは限りません。

逆に平均を上回っているからといって、老後資金が十分だとも限りません。

男女別平均は自分の位置を大まかに知る参考資料として使い、実際の老後計画は自分自身の年金見込額を基準にする という使い分けが重要です。

女性の年金平均受給額

厚生年金保険の老齢年金について男女別に見ると、令和6年度末の厚生労働省の資料では、女性の平均年金月額は 11万1,413円 となっています。

男性の16万9,967円と比較すると、月額で約5万8,600円の差があります。

年間に単純換算すれば差は70万円を超えるため、男女による平均受給額の差は小さくありません。

しかし、この数字を見て「女性だから年金が少なくなる仕組みなのだ」と考えるのは正確ではありません。

老齢厚生年金の計算式そのものが、男性と女性で別々に設定されているわけではありません。

男女差の背景には、現在年金を受給している世代がこれまでどのように働いてきたのかという、長期的な就業状況の違いがあります。

現在の高齢世代では、結婚や出産、子育てなどをきっかけに女性が会社を退職し、その後は配偶者の扶養に入ったり、厚生年金の加入対象とならない働き方を選択したりするケースが現在より多くありました。

国民年金の第3号被保険者としての期間があれば、その期間について一定の要件のもと老齢基礎年金には反映されます。

しかし、厚生年金へ加入していない期間については、その人自身の老齢厚生年金の報酬比例部分が積み上がるわけではありません。

また、厚生年金に加入していたとしても、過去の男女間の賃金差や、正社員とパートタイマーなどの働き方の違いによって報酬水準に差があれば、その影響も将来の老齢厚生年金額に表れます。

「女性の平均は約10万7,000円だから、自分もそれくらい」と考えないことが大切です。

現在の受給者の平均には、その世代が長期間経験してきた就業状況や賃金水準が反映されています。

特に現在30代、40代、50代の女性については、現在の高齢世代と働き方が大きく異なることがあります。

結婚や出産後も厚生年金に加入したまま働き続ける人は増えていますし、短時間労働者への社会保険適用も段階的に拡大されてきました。

そのため、現在の女性受給者の平均額を、そのまま将来世代の女性の平均額として当てはめることはできません。

一方で、育児や介護などによってキャリアが中断した場合や、厚生年金に加入しない期間が長くなった場合には、将来の厚生年金額へ影響する可能性があります。

働き方を変更するときには、手取り収入だけでなく、将来の社会保険給付まで含めて考える視点も重要です。

実務でも、扶養内で働くか、社会保険に加入して働くかを検討するときに、現在の保険料負担だけで比較されることがあります。

しかし、厚生年金への加入は将来の老齢厚生年金にも関係します。

現在の男女別平均は、過去の働き方や賃金の違いが長期間積み重なった結果でもある と理解すると、男女差の数字をより正確に読むことができます。

自分の年金を考える場合には、「女性平均はいくらか」よりも、「私はこれまで何年間厚生年金に加入し、どの程度の報酬記録があるのか」を確認するほうがはるかに重要です。

年金受給額の平均を見るポイント

ここまで国民年金、厚生年金、男女別の平均額を確認してきました。

老後資金を考えるうえでは、平均額そのものを覚えること以上に、 なぜ人によって年金額が違うのか を理解することが重要です。

公的年金は一律に同じ金額が支給される制度ではありません。

国民年金であれば保険料の納付状況など、厚生年金であれば加入期間や報酬水準など、長期間の記録が積み重なって最終的な年金額につながります。

そのため、平均額との単純比較だけでは、自分の年金が多いのか少ないのか、老後資金が足りるのかどうかまでは判断できません。

ここからは、年金受給額の平均と自分自身の年金を比較するときに押さえておきたいポイントを、もう少し具体的に見ていきます。

年金受給額に男女差がある理由

厚生年金の平均受給額に男女差が見られる主な理由として、 厚生年金の加入期間と現役時代の報酬水準の違い が挙げられます。

厚生年金の老齢厚生年金は、基本的に加入していた期間と、その期間の標準報酬月額や標準賞与額などを基礎として計算されます。

そのため、長期間にわたり厚生年金へ加入し、比較的高い報酬で働いていた人ほど、老齢厚生年金の報酬比例部分は大きくなりやすくなります。

現在年金を受給している世代が現役だった時代には、現在以上に男女で働き方が異なっていました。

男性は学校卒業後から定年まで正社員として継続的に勤務し、女性は結婚、出産、子育てなどをきっかけに退職するという働き方が比較的一般的だった時期があります。

その結果として、男性のほうが厚生年金の加入期間が長く、現役時代の報酬水準も高いケースが多くなり、その積み重ねが現在の平均年金額にも反映されています。

たとえば、厚生年金に35年間加入した人と15年間加入した人では、報酬水準が同じであったとしても報酬比例部分に差が生じます。

さらに加入期間だけでなく報酬水準にも差があれば、年金額の差はより大きくなる可能性があります。

育児などによる離職後に配偶者の扶養に入り、国民年金の第3号被保険者になった場合には、その期間も一定の要件のもと老齢基礎年金の計算に関係します。

しかし、自分自身が厚生年金へ加入していない期間について、老齢厚生年金の報酬比例部分が増えるわけではありません。

男女差を「性別によって年金額が決められている」と捉えるのは適切ではありません。

実際の年金額に影響する中心的な要素は、加入期間、報酬記録、国民年金保険料の納付状況などです。

また、統計の男女差は「過去の働き方の結果」であることにも注意してください。

現在では女性の就業継続が進み、育児休業を取得しながら雇用を継続するケースも一般的になっています。

また、パートタイマーなど短時間労働者への厚生年金の適用範囲も拡大してきました。

このため、現在40歳の女性が将来65歳になったとき、現在の高齢女性と同じ平均受給額になるとは限りません。

男性についても同様で、働き方の多様化や転職・独立などによって、将来の平均額が現在と同じ構造になるとは限りません。

実務では、現在の男女別平均額を見て将来を悲観したり安心したりするより、本人の年金加入記録を確認したほうが具体的な話ができます。

男女別平均は「なぜ受給額に差が生じるのか」を理解する材料として使い、自分の年金額を予測する数字としては使いすぎない ことがポイントです。

加入期間で受給額は変わる

加入期間で受給額は変わる

年金受給額を考えるうえで、非常に重要なのが加入期間です。

国民年金と厚生年金では計算方法が異なりますが、どちらについても「どれだけ長く制度に加入し、必要な保険料納付等の記録があるか」が年金額に大きく関係します。

老齢基礎年金は、原則として20歳から60歳までの40年間、480月について保険料を納付した場合などに満額となります。

その間に未納期間があれば、その期間は原則として年金額の計算に反映されません。

また、保険料免除を受けた期間については免除の種類などに応じて一定割合が年金額に反映されます。

ここで気をつけたいのが、 受給資格期間と年金額の計算は同じではない ということです。

老齢基礎年金を受け取るためには一定の受給資格期間を満たす必要がありますが、受給資格を満たしていることと満額を受け取れることは別の話です。

受給資格を満たしていても、納付済期間などが短ければ老齢基礎年金額は満額より少なくなる可能性があります。

厚生年金も加入期間の影響を受けます。

たとえば、厚生年金に10年間加入した人と40年間加入した人について、仮に現役時代の報酬水準が同程度であれば、一般的には40年間加入した人のほうが老齢厚生年金の報酬比例部分は大きくなります。

ただし、「勤続年数」と「厚生年金加入期間」を必ずしも同じものとして考えられない場合もあります。

転職の間に無職期間があった場合、自営業になった場合、勤務時間などの加入要件との関係で社会保険の対象になっていなかった期間がある場合など、職歴と厚生年金加入記録が完全には一致しないケースもあるからです。

「40年間働いた=40年間厚生年金」というわけではありません。

会社員、自営業、扶養、無職など、働き方や生活状況が変われば、国民年金上の区分や厚生年金への加入状況も変わることがあります。

実務で特に確認したいのは、記憶上の職歴ではなく、 実際に年金記録上どの期間が加入期間として登録されているか です。

転職を何度も経験した方、会社員から独立した方、再就職した方、配偶者の扶養に入っていた期間がある方、学生納付特例や保険料免除を利用した方などは、一度加入履歴を時系列で確認しておくとよいでしょう。

長い職業人生の中では、本人が忘れている勤務先や、加入期間について認識が曖昧になっていることもあります。

年金は数十年単位の記録を基に計算されるため、60代になって初めて確認するのではなく、現役時代から定期的に記録をチェックしておくことが大切です。

平均受給額を見る前に自分の加入期間を確認する。

これだけでも、平均額を自分の将来年金と混同するリスクをかなり減らすことができます。

報酬水準で厚生年金は変わる

厚生年金では、加入期間だけでなく、現役時代の報酬水準も将来の年金額に関係します。

この点が、保険料の納付期間を中心として金額が決まる老齢基礎年金との大きな違いの一つです。

厚生年金の老齢厚生年金には報酬比例部分があり、実務上は毎月受け取った給与額そのものを一円単位で直接計算に使うのではなく、社会保険上の 標準報酬月額 や、賞与について決定される 標準賞与額 などの記録が計算の基礎となります。

標準報酬月額という言葉は、給与計算や社会保険の手続きを担当していない方にはあまりなじみがないかもしれません。

簡単にいえば、毎月の給与などを一定の幅ごとに区分した社会保険上の等級です。

会社員の場合、この標準報酬月額を基に毎月の厚生年金保険料などが計算されています。

したがって、厚生年金に同じ30年間加入している人同士であっても、その30年間の報酬水準が違えば、将来受け取る老齢厚生年金額も同じにはなりません。

たとえば、長期間にわたって標準報酬月額が比較的高い水準だった人と、比較的低い水準だった人では、加入年数が同程度でも報酬比例部分に差が生じます。

また、賞与についても標準賞与額として厚生年金の計算に関係します。

単純に「月給だけを見れば年金額が分かる」というわけでもありません。

厚生年金の受給額を考える基本は、「どのくらい長く加入したか」と「どのくらいの報酬で加入したか」の2つです。

ここは、平均受給額を見る際にも重要なポイントです。

たとえば現在の給与が平均的だからといって、将来の厚生年金も平均になるとは限りません。

今後20年、30年の給与水準がどう変化するか、途中で独立するのか、短時間勤務になるのか、何歳まで厚生年金に加入するのかによって結果は変わります。

反対に、若いころの給与が低かったからといって、それだけで将来の年金額が低いと決まるわけでもありません。

その後の加入期間や報酬の推移も計算に影響します。

実務では、社会保険の算定基礎届や月額変更届などによって標準報酬月額が決定・改定されます。

給与が変わった月にすぐ厚生年金保険料が同じ割合で変わるわけではないため、「給与明細の保険料と将来の年金がどうつながっているのか分かりにくい」という方も多いです。

しかし、長い目で見ると、その時々の標準報酬の記録が将来の厚生年金額につながっています。

厚生年金では、現在の年収だけを見て将来の受給額を判断することはできません。

過去の加入期間と報酬記録に加え、これから何歳まで、どのような働き方を続けるのかによっても見込額は変わります。

そのため、平均受給額15万円台という数字と自分の給与を単純に比較するより、実際の年金記録を基にした見込額を確認したほうが老後設計には役立ちます。

厚生年金は「給与が高いか低いか」だけでも、「加入年数が長いか短いか」だけでも決まりません。

加入期間と報酬記録の積み重ねで考えることが大切です。

平均額だけで判断しない注意点

平均額だけで判断しない注意点

年金受給額の平均を調べたときに一番避けたいのは、平均額をそのまま自分の老後収入として資金計画に入れてしまうことです。

たとえば厚生年金の平均受給額が15万1,142円だからといって、「自分も65歳になれば毎月14万円から15万円程度受け取れるだろう」と考えるのは早計です。

加入期間や報酬水準、国民年金保険料の納付状況などによって、平均を大きく上回る人もいれば、平均よりかなり少ない人もいます。

そもそも平均値には、受給額が高い人も低い人も含まれています。

したがって、自分が平均額に近くなるとは限りません。

また、統計上の平均年金月額と、実際にあなたの銀行口座へ振り込まれる「手取り」の金額も同じとは限りません。

年金からは、一定の要件に該当すると所得税や住民税、介護保険料、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料などが差し引かれることがあります。

どの程度差し引かれるかは、年齢、年金額、その他の所得、居住する自治体、家族構成などによって異なります。

そのため、「年金月額15万円なら、毎月15万円を生活費に使える」とは限りません。

平均受給額は「自分がもらえる金額」でも「実際の手取り額」でもありません。

老後資金を計画する場合には、自分自身の年金見込額を確認し、さらに税金や社会保険料などが差し引かれる可能性まで考慮しておきましょう。

もう一つ注意したいのが、受給開始時期です。

老齢基礎年金や老齢厚生年金は原則として65歳からの受給が基本ですが、一定の要件のもと繰上げ受給や繰下げ受給を選択できます。

受給開始時期を変えると年金額も変わるため、「平均額」と「自分が選択する受給開始年齢での金額」は別に考える必要があります。

さらに、65歳以降も働きながら厚生年金に加入する場合などには、働き方や年金額との関係で確認すべき制度があります。

老後の収入を考えるときには、年金だけを切り離して見るのではなく、給与収入なども含めて考える必要があります。

そして、年金額や統計は毎年度同じではありません。

公的年金の年金額は年度によって改定されますし、平均受給額も受給者の構成が変われば変化します。

この記事では令和6年度の統計を基準に説明していますが、数年後にこの記事を参考にする場合には最新情報を確認してください。

平均額を見るときは、次の4つを分けて考えると整理しやすくなります。

  • 統計上の平均受給額
  • 自分自身の年金見込額
  • 税金や保険料控除前の年金額
  • 実際に生活費として使える手取り額

この4つを混同すると、老後資金を多く見積もりすぎたり、反対に必要以上に不安になったりする可能性があります。

平均額はあくまで比較のための物差しです。

老後資金について具体的な判断をする段階では、本人の年金記録、受給開始時期、退職金、預貯金、その他の収入などをまとめて考える必要があります。

年金受給額の平均を老後設計に活かす

年金受給額の平均は、老後の生活を考えるための出発点としては非常に役立ちます。

国民年金の平均は5万円台後半、厚生年金の平均は15万円台という大まかな水準を知っておけば、「公的年金だけで老後の生活費をすべて賄えるのか」「自分の場合はどの程度不足しそうなのか」を考えるきっかけになります。

ただし、最終的に必要なのは平均との比較ではなく、 自分自身が将来いくら受け取れる見込みなのかを把握すること です。

最初に確認したいのは、自分の年金加入記録です。

会社員として厚生年金に加入していた期間、自営業者として国民年金保険料を納めていた期間、配偶者の扶養に入っていた期間、学生納付特例や保険料免除・納付猶予を利用した期間などを確認します。

そのうえで、現在確認できる年金見込額を把握し、老後に必要となる生活費との差額を考えていくのが実務的です。

確認するもの 確認するポイント
年金加入記録 加入期間に抜けや認識違いがないか
国民年金の納付状況 未納・免除・猶予・学生納付特例などの期間がないか
厚生年金の記録 勤務先、加入期間、報酬記録などに問題がないか
年金見込額 現在の条件を前提として将来いくら受け取れるか
受給開始時期 65歳から受給するか、繰上げ・繰下げを検討するか
老後の生活費 年金収入との差額が毎月どの程度になるか
その他の資産・収入 預貯金、退職金、企業年金、就労収入などがあるか

自分の加入記録や将来の年金見込額は、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認できます。

ねんきんネットでは、自分の年金記録を確認できるだけでなく、現在と同じ条件で60歳まで加入した場合など、一定の条件を設定して将来の年金見込額を試算することもできます。

(出典:日本年金機構「『ねんきんネット』による年金見込額試算」)

たとえば、自分の年金見込額が月13万円で、老後に必要と考えている生活費が月18万円だとします。

この場合、単純計算では毎月5万円、年間では60万円の差があります。

仮に同じ差額が20年間続けば、単純計算では1,200万円になります。

もちろん、実際の老後生活では物価、税金、社会保険料、医療費、住居費などが変化するため、この計算だけで必要な老後資金が決まるわけではありません。

しかし、「平均年金額はいくらか」を調べて終わるより、自分の年金と生活費の差を数字にしてみるほうが、はるかに具体的な老後設計につながります。

その差額を、預貯金、退職金、企業年金、個人年金、資産運用、65歳以降の就労収入などでどのように補っていくのかを考えていきます。

反対に、自分の年金見込額が平均より低かったとしても、それだけで「老後生活が成り立たない」と判断する必要はありません。

夫婦で暮らすのであれば、世帯として受け取る年金額を見る必要があります。

持ち家で住宅ローンが完済している人と、老後も家賃を支払い続ける人でも必要な生活費は異なります。

退職金や預貯金がどの程度あるのか、65歳以降も働く予定があるのかによっても状況は変わります。

老後設計は「平均との比較」ではなく「自分の収支」で考えます。

  • 自分はいくら年金を受け取れる見込みか
  • 配偶者がいる場合は世帯でいくら受け取れるか
  • 老後の毎月の生活費はいくら必要か
  • 年金との差額はいくらになるか
  • 預貯金や退職金などで何年間補えるか
  • 何歳まで働く予定なのか

年金について相談を受ける際にも、私は「平均より上です」「平均より下です」という比較だけで終わらせないことが重要だと考えています。

平均はあくまで他の受給者を集計した数字です。

あなた自身が老後に受け取る年金は、あなた自身の加入記録によって決まります。

特に50代以降になったら、平均額を見るだけでなく、自分の年金見込額、退職後の働き方、退職金、預貯金、住宅費などを一度まとめて整理してみるとよいでしょう。

まだ30代、40代であっても、現在の加入状況を確認しておくことには十分意味があります。

この記事の要点

  • 令和6年度の国民年金の平均受給月額は5万9,431円
  • 令和6年度の厚生年金保険の平均受給月額は15万1,142円
  • 厚生年金の平均額には基礎年金月額が含まれる
  • 厚生年金の男女別平均では男性16万9,967円、女性11万1,413円
  • 男女差には加入期間や過去の働き方、報酬水準などが影響している
  • 国民年金は保険料の納付状況などによって受給額が変わる
  • 厚生年金は加入期間と報酬水準などによって受給額が変わる
  • 平均受給額は自分自身の将来の年金額を示すものではない
  • 老後設計では自分の年金記録と年金見込額を確認することが重要

年金受給額の平均は「自分はいくらもらえるのか」を考える入口として使い、最終的には自分自身の年金記録と見込額を基準に老後設計をすることが重要です。

また、年金制度や年金額、統計数値は改定・更新される可能性があります。

この記事で紹介した平均受給額は令和6年度の公表資料を基準としており、将来も同じ金額が続くことを意味するものではありません。

実際の受給額についても、加入記録、報酬、受給開始時期、加給年金や振替加算など個別の事情によって異なる場合があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

個別の年金記録や働き方、受給開始時期、老後資金まで含めた判断が必要な場合には、一般的な平均額だけで結論を出さず、 最終的な判断は専門家にご相談ください。

-社会保険・年金