社会保険・年金

賞与支払届の提出先はどこ?期限と提出方法を実務で確認

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

会社が従業員へ賞与を支給したときは、健康保険・厚生年金保険の被保険者賞与支払届を作成し、原則として賞与を実際に支給した日から5日以内に提出します。

提出先は、事業所を管轄する年金事務所または事務センターです。

ただ、実務では提出先だけ分かれば終わりというわけではありません。

年3回以下と年4回以上の支給で社会保険上の扱いが変わるほか、標準賞与額の計算、賞与を支給しなかった場合の処理、電子申請、提出を忘れた場合の対応まで確認する必要があります。

さらに、退職者へ賞与を支給した場合、同じ月に2回以上賞与を支給した場合、高額な賞与を支給した場合、育児休業中の従業員へ賞与を支給した場合などは、通常の賞与よりも確認事項が増えます。

給与計算上は正しく処理できていても、賞与支払届の内容が一致していなければ、後から社会保険料や年金記録の確認が必要になることがあります。

この記事では、初めて賞与支払届を担当する人事・総務・給与担当者の方でも処理の流れを整理できるよう、提出先から記入、電子申請、提出後の実務まで順番に解説します。

  • 賞与支払届の提出先と提出期限
  • 賞与支払届の対象となる賞与の範囲
  • 標準賞与額の計算方法と上限
  • 不支給や提出忘れがあった場合の対応

賞与支払届の提出先はどこ?期限・方法を社労士解説

賞与支払届の提出先と期限を確認

賞与支払届の手続きでは、まず「誰について」「どの賞与を」「いつまでに」「どこへ提出するのか」を整理しておくことが重要です。

特に賞与という名称だけで対象を判断すると、年4回以上支給する手当などを誤って賞与として処理してしまうことがあります。

また、社会保険上の賞与と、会社が給与規程や賞与規程で「賞与」と呼んでいるものが必ず一致するわけではありません。

まず制度上の基本を押さえ、その後に自社の支給制度へ当てはめる順番で確認していきましょう。

被保険者賞与支払届とは

被保険者賞与支払届は、会社が健康保険・厚生年金保険の被保険者などへ賞与を支給したときに、その支給額を届け出るための手続きです。

正式には「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届」と呼ばれます。

会社が賞与を振り込んだだけでは、日本年金機構が一人ひとりの賞与額を自動的に把握できるわけではありません。

そのため、事業主が賞与支払届を提出し、誰に、いつ、いくらの賞与を支給したのかを届け出ます。

賞与支払届を提出すると、実際に支給した賞与額をもとに 標準賞与額 が決定されます。

この標準賞与額は、賞与にかかる健康保険料や厚生年金保険料を計算する基礎になるだけでなく、将来の厚生年金額を計算する際の年金記録にも関係します。

そのため、賞与支払届は「保険料を計算するためだけの書類」と考えない方がよいでしょう。

賞与支払届は、単なる会社内部の給与計算資料ではありません。

社会保険料と従業員の年金記録につながる正式な社会保険手続きです。

対象になるのは、原則として社会保険の被保険者と70歳以上被用者です。

70歳以上になると通常の厚生年金保険の被保険者ではなくなりますが、厚生年金保険の適用事業所に勤務して一定の要件に該当する70歳以上被用者については、在職老齢年金などの計算に必要となるため、賞与に関する届出も確認しなければなりません。

ここで実務上大切なのは、給与計算の対象者一覧と社会保険上の届出対象者一覧を同じものだと思わないことです。

たとえば退職予定者、70歳以上の従業員、育児休業中の従業員などがいると、通常の従業員とは確認ポイントが異なる場合があります。

私が賞与処理を確認するときは、まず賞与台帳だけを見るのではなく、社会保険の資格取得・資格喪失情報と照合します。

賞与支給日に誰がどの資格状態だったのかを先に整理しておくと、後から「この人は届出が必要だったのか」と迷いにくくなります。

また、会社が賞与から健康保険料や厚生年金保険料を控除していても、賞与支払届を提出していなければ、日本年金機構側の標準賞与額の記録とは一致しません。

反対に、賞与支払届を提出していても、会社側の給与計算で社会保険料の控除額を誤っていれば、従業員との精算が必要になる可能性があります。

したがって、実務では「賞与計算」「社会保険料控除」「賞与支払届」の3つを別々の仕事として処理するのではなく、一つの業務として連動させることが重要です。

賞与明細を作成した段階で届出対象者一覧まで作り、支給後に賞与支払届を提出し、決定内容まで確認する流れを作っておくと安定します。

賞与支払届の提出期限は5日以内

賞与支払届の提出期限は5日以内

賞与支払届の提出期限は、原則として 賞与を実際に支給した日から5日以内 です。

ここで基準になるのは、賞与の査定対象期間や賞与計算を確定した日ではなく、実際の賞与支払日です。

給与担当者にとっては基本的な点ですが、賞与計算を早めに確定する会社ほど「いつから5日を数えるのか」が分かりにくくなることがあります。

たとえば、冬季賞与について11月25日に取締役会等で金額を確定し、12月1日に賞与明細を作成したとしても、実際の銀行振込日が12月10日であれば、賞与支払日は12月10日として考えます。

会社の賞与規程に「12月賞与」と記載されているか、給与システム上の処理月が何月になっているかよりも、実際に従業員へ支払った日を基準に管理することが重要です。

賞与計算日ではなく、実際の賞与支払日から5日以内 と覚えておくと分かりやすいでしょう。

賞与の時期は、通常の給与計算に加えて、人事評価、年末調整、住民税、年末年始の休業対応など複数の業務が重なりやすいため、賞与支払届が後回しになるケースがあります。

特に中小企業では、給与計算担当者が社会保険手続きも兼務していることが多く、「賞与振込が終わったので賞与処理も完了した」と認識してしまうことがあります。

実際によく起こりやすい処理漏れです。

賞与支給日から逆算して管理する

実務では、賞与支給日を決めた段階で、その前後の処理期限までカレンダーに入れてしまう方法が分かりやすいです。

たとえば、賞与支給日が12月10日なら、賞与計算確定、振込データ作成、給与明細発行、社会保険料確認、賞与支払届の作成・提出という流れを一つのチェックリストにします。

担当者が複数いる会社では、「給与計算担当者が賞与支払届も出すのか」「総務担当者へデータを引き渡すのか」を事前に決めておくことも大切です。

期限が短いため、賞与支給後に担当者を確認していると処理が遅れやすくなります。

賞与支給後の作業だけを管理するより、賞与支給日を起点に「給与計算・振込・社会保険料・賞与支払届」をセットで管理した方が提出漏れを防ぎやすくなります。

なお、5日を過ぎたからといって、賞与支払届そのものを提出しなくてよくなるわけではありません。

期限を過ぎていることに気づいた場合は、後述するように放置せず、速やかに処理することが重要です。

提出期限、提出先、対象となる賞与、標準賞与額の上限などについては、日本年金機構でも詳細に案内されています。

実際に届出を行う際には最新の内容も確認してください。

(出典:日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」)

制度や様式は変更される可能性がありますので、社内マニュアルを毎年そのまま使い続けるのではなく、賞与支給前に最新版を確認する習慣をつけておくと安心です。

賞与支払届の提出方法

被保険者賞与支払届の提出先は、原則として 事業所を管轄する年金事務所または事務センター です。

会社の所在地によって管轄が決まるため、従業員本人の住所地を管轄する年金事務所へ一人ずつ提出するわけではありません。

複数の都道府県から従業員が通勤している会社でも、基本的には適用事業所を基準に提出先を確認します。

提出方法には、電子申請、電子媒体、郵送、年金事務所の窓口への持参などがあります。

提出方法 実務上の特徴 向いているケース
電子申請 オンラインで提出でき、紙の郵送や窓口訪問を省略できる 継続的に社会保険手続きを行う事業所
電子媒体 CD・DVDなど所定の電子媒体を利用する 電子媒体による届出体制が整っている事業所
郵送 事務センターなどへ書面を郵送する 紙での手続きを継続している事業所
窓口持参 管轄年金事務所の窓口へ提出する 書類確認とあわせて相談したい場合など

現在は、継続的に社会保険手続きを行う事業所であれば、電子申請を利用した方が管理しやすいケースが多いでしょう。

特に賞与支給対象者が多い会社では、紙で一人ずつ転記するよりも、給与ソフトや届書作成プログラム等からデータを作成して電子申請する方が、入力作業そのものを減らせることがあります。

ただし、データ連携を使えば自動的に正しくなるわけではありません。

元となる給与データや社会保険情報が誤っていれば、そのまま誤った届出データが作成されます。

健康保険組合に加入している場合

健康保険組合に加入している事業所については、厚生年金保険に関する届出とは別に、加入している健康保険組合への手続きが必要になる場合があります。

健康保険組合ごとに様式、提出方法、電子申請への対応などの取扱いが異なることがあるため、 加入する健康保険組合の案内も確認 してください。

協会けんぽと健康保険組合では実務上の提出経路が異なることがあります。

「賞与支払届だから全部同じ提出先」と考えず、自社が加入している健康保険の保険者を確認しておきましょう。

新しく会社の社会保険事務を担当した方であれば、まず自社が協会けんぽなのか健康保険組合なのかを確認することをおすすめします。

健康保険証が廃止された後は従来より確認しにくいこともありますので、資格情報や会社の社会保険関係書類、加入先の案内などから確認するとよいでしょう。

また、郵送する場合は、送付先と会社内の控えの保存方法も決めておきたいところです。

紙で提出するのであれば、提出した届書のコピーを保存し、いつ発送したかが確認できるようにしておくと、後日問い合わせがあったときに確認しやすくなります。

電子申請の場合も同じで、送信したデータ、受付結果、返戻の有無、決定通知などを一連の記録として保存しておくことが大切です。

提出方法が紙から電子に変わっても、「提出した記録を残す」という実務の基本は変わりません。

賞与支払届の対象となる賞与

社会保険上の賞与は、会社が「ボーナス」という名称で支給したものだけを意味するわけではありません。

賃金、給料、俸給、手当、賞与など名称を問わず、 労働の対償として支給されるもののうち、原則として年3回以下支給されるもの が賞与として扱われます。

たとえば、一般的な夏季賞与や冬季賞与はもちろん、業績に応じて支給する決算賞与、期末手当なども、労働の対償として年3回以下支給されるのであれば賞与支払届の対象になり得ます。

支給例 基本的な考え方 確認ポイント
夏季賞与・冬季賞与 原則として賞与 実際の支給日と金額を確認
決算賞与 労働の対償で年3回以下なら賞与 通常賞与と合計した年間支給回数を確認
期末手当 名称にかかわらず実態で判断 規程と支給実態を確認
年4回以上の定期的な手当 原則として報酬として扱う 標準報酬月額への反映を確認

実務上重要なのは、 名称ではなく支給の実態と年間の支給回数を見ること です。

たとえば「特別手当」という名称であっても、毎年7月と12月の2回だけ支給することが給与規程等で定められており、労働の対償として支給されるのであれば、社会保険上は賞与として取り扱われることがあります。

反対に「四半期賞与」という名称で3か月ごとに定期支給している場合には、名称に賞与と付いていても年4回となるため、標準報酬月額の対象となる報酬としての取扱いを確認する必要があります。

労働の対償かどうかも確認する

年3回以下で支給された金銭なら、すべて賞与になるわけでもありません。

社会保険上の賞与に該当するかを判断するときは、労働の対償として支給されたものかどうかも確認します。

たとえば、従業員の結婚等に際して会社が恩恵的に支給する慶弔金などは、通常の賞与とは性質が異なります。

一方、業績、勤務成績、在籍期間などに応じて支給される決算手当や特別手当であれば、名称が通常の賞与と違っていても労働の対償として判断される可能性があります。

「給与システムで賞与項目を使ったから賞与」「会社が手当と呼んでいるから報酬」という判断は避けましょう。

支給回数だけでなく、支給目的、規程、支給実態まで確認することが重要です。

また、育児休業中や産前産後休業中の従業員であっても、被保険者資格が継続していて賞与が支給されれば、賞与支払届の確認が必要です。

ここで間違いやすいのが、社会保険料の免除と賞与支払届を同じものとして考えてしまうことです。

育児休業等による賞与保険料の免除要件を満たしているからといって、「保険料が0円だから賞与支払届も不要」とは判断できません。

育休中の賞与については、保険料免除の要件が通常の月額保険料と異なります。

詳しくは 育休中の賞与は社会保険料免除?1ヶ月超の条件を実務で確認 で整理しています。

賞与支給前には、今回支給する名称だけを見るのではなく、その年に同じ性質の支給が何回あるのかまで一覧にして確認すると、賞与と報酬の区分を誤りにくくなります。

年4回以上の支給は報酬扱い

年4回以上の支給は報酬扱い

賞与支払届を作成するときに特に間違いやすいのが、年4回以上支給されるものの扱いです。

社会保険では、原則として 年3回以下支給されるものを賞与、年4回以上支給されるものを報酬 として取り扱います。

この違いは単なる書類上の区分ではなく、標準賞与額で保険料を計算するのか、標準報酬月額へ反映して保険料を計算するのかという違いにつながります。

たとえば、3か月ごとに年4回支給する業績手当がある場合、会社がその手当を「賞与」と呼んでいたとしても、通常は賞与支払届によってその都度処理するのではなく、標準報酬月額に含める報酬としての取扱いを確認する必要があります。

「賞与」という名称だけで賞与支払届へ入力しないことが重要です。

年間の支給回数と給与規程上の支給方法、実際の支給実績まで確認しましょう。

この区分を誤ると、標準報酬月額と標準賞与額の双方に影響し、社会保険料の計算をやり直す原因になる可能性があります。

特に、毎月の給与とは別に四半期ごとのインセンティブを支給している会社、店舗や営業職へ定期的な業績手当を支給している会社、従来年2回だった賞与を年4回へ変更した会社などでは注意が必要です。

賞与制度を変更した年は特に確認する

実務では、「以前からこの手当は賞与として処理しているから」という理由だけで前年と同じ処理を続けることがあります。

しかし、支給制度そのものが変更されていれば、社会保険上の取扱いも見直す必要があります。

たとえば、これまで6月と12月の年2回だった賞与を、4月・7月・10月・1月の年4回へ変更した場合、従来の賞与支払届の処理をそのまま続けてよいとは限りません。

給与規程の改定内容、支給回数、支給の性質を確認したうえで、標準報酬月額への反映方法まで確認する必要があります。

また、逆に年4回支給していた手当を年2回へ変更した場合も、変更後の支給について賞与としての取扱いを確認します。

給与制度の変更は、従業員への説明や給与計算だけでなく、社会保険実務まで影響するということです。

給与制度や賞与制度を変更するときは、 「賃金規程の変更」「給与計算方法」「社会保険上の報酬・賞与区分」 をセットで確認すると実務上の漏れを防ぎやすくなります。

毎月の給与などから決定する標準報酬月額の仕組みについては、 社会保険料の等級表の見方|標準報酬月額と計算方法を整理 も参考になります。

なお、年4回以上という基準を確認する際には、単純にその暦年に何回振り込んだかだけでは判断しにくいケースもあります。

給与規程上どのような支給が定められ、実態としてどのように支給されているのかを確認することが大切です。

四半期インセンティブや特殊な成果給など、一般的な夏季・冬季賞与とは異なる制度を採用している会社では、自己判断で処理を続けるよりも、制度設計の段階で年金事務所や社会保険労務士へ確認しておく方が安全かなと思います。

標準賞与額の計算方法と上限

賞与にかかる健康保険料と厚生年金保険料は、賞与の総支給額そのものに直接保険料率を掛けるのではなく、まず 標準賞与額 を決定してから計算します。

標準賞与額は、原則として実際に支給された税引き前の賞与総支給額について、1,000円未満を切り捨てた金額です。

手取り額ではありません。

所得税や社会保険料などを差し引く前の支給額を基礎にします。

また、通貨による賞与だけでなく、社会保険上賞与として評価される現物支給があれば、その価額についても確認が必要です。

たとえば賞与の総支給額が423,750円の場合、1,000円未満を切り捨てた 423,000円 が標準賞与額となります。

423,750円から社会保険料を控除した手取り額を使うわけではありません。

標準賞与額には上限があります。

一般的な取扱いは次のとおりです。

保険 標準賞与額の上限 集計単位 実務上の注意
健康保険 573万円 毎年4月1日から翌年3月31日までの年度累計 年度内の複数回の標準賞与額を累計する
厚生年金保険 150万円 1か月ごと 同一月に複数回支給した場合は合算する

健康保険については、同一年度内に複数回賞与が支給された場合、その標準賞与額を累計して上限を判定します。

たとえば夏季賞与、冬季賞与、決算賞与と複数回の支給がある場合は、それぞれを別々に573万円までとするのではなく、4月1日から翌年3月31日までの年度単位で累計します。

厚生年金保険については1か月150万円が上限です。

同じ月に2回以上賞与を支給するときは、それぞれに150万円の上限を使うのではなく、その月に支払った賞与を合算して確認します。

同じ月に2回賞与を支給した場合

たとえば6月10日に100万円、6月25日に80万円の賞与を支給した場合、厚生年金について100万円と80万円をそれぞれ別の150万円上限で計算するわけではありません。

同一月の支給として合算し、月単位の上限を確認する必要があります。

すでにその月の賞与支払届を提出した後で追加の賞与を支給した場合も注意が必要です。

最初の届出だけを残したまま追加分を別月のように処理すると、標準賞与額の決定に影響します。

同一月の賞与については全体を把握したうえで処理してください。

健康保険の573万円を超える場合

高額賞与を支給する役員や従業員がいる会社では、健康保険の年度累計573万円にも注意が必要です。

同一の被保険者期間が継続している場合と、年度途中に転職や資格取得・資格喪失がある場合では、必要な確認が増えることがあります。

高額賞与については、単純に「573万円を超えた部分を給与ソフトが自動的に除外しているから問題ない」と判断しない方が安全です。

年度途中の資格取得・喪失や保険者の変更がある場合には、標準賞与額の累計状況を個別に確認してください。

賞与から控除する社会保険料は、基本的に標準賞与額へ健康保険、介護保険の対象者であれば介護保険、厚生年金保険の各保険料率を適用して計算します。

健康保険料率は加入している健康保険の保険者等によって異なりますし、介護保険料は対象年齢等の確認も必要です。

そのため「去年の賞与と同じ率」で計算するのではなく、支給時点の保険料率を確認することが重要です。

一方、 雇用保険料は標準賞与額ではなく、原則として賞与の賃金総額を基礎に計算 します。

社会保険では1,000円未満を切り捨てた標準賞与額を使いますが、雇用保険では同じ考え方をそのまま使いません。

給与計算システムを使っていても、社会保険と雇用保険は計算基礎が異なることを理解しておくと、検算しやすくなります。

保険料率や制度上の上限額は将来変更される可能性があります。

ここで示した数値は制度を理解するための一般的な目安として捉え、実際の給与計算では最新の保険料率や公式案内を確認してください。

賞与支払届の提出先と実務対応

ここからは、実際に賞与支払届を処理するときに迷いやすい、不支給の場合の対応、記入方法、電子申請、提出忘れについて整理します。

賞与を支給しなかった場合でも手続きが必要になるケースがあるため、賞与支払予定月を登録している会社は特に確認しておきましょう。

また、賞与支払届は提出した時点で終わりではありません。

電子申請の受付状況、返戻の有無、標準賞与額の決定内容まで確認することで、一連の社会保険事務として完了します。

賞与不支給報告書が必要な場合

日本年金機構へ賞与支払予定月を登録している事業所では、その予定月に賞与が支給されることを前提として賞与支払届の管理が行われます。

しかし、会社の業績、賞与制度の変更、支給時期の変更などによって、予定していた月に賞与を支給しないこともあります。

この場合、賞与支払予定月に賞与を支給しなかった会社は、賞与支払届に代えて 賞与不支給報告書 を提出します。

「賞与を支給していないから何もしなくてよい」とは限りません。

賞与支払予定月を登録している会社では、不支給報告まで含めて処理を完了させます。

不支給報告を行わないままにすると、日本年金機構側では「賞与支払届が未提出なのか」「実際に賞与がなかったのか」を判断できません。

そのため、登録された賞与支払予定月の後になっても届出が確認できない場合、未提出について確認や催告が行われることがあります。

全員不支給と一部不支給は分けて考える

ここで注意したいのが、会社全体として賞与を支給しなかったケースと、一部の従業員だけ賞与を支給しなかったケースを混同しないことです。

賞与支払予定月に会社として賞与そのものを支給しなかった場合には、賞与不支給報告書の提出を確認します。

一方、会社としては賞与を支給しているものの、査定や入社時期などにより特定の従業員だけ支給対象外だった場合には、賞与を受けていない人について賞与額を0円で届け出るという処理ではありません。

紙の届書に氏名が印字されているものの賞与を支払わなかった人がいる場合などは、所定の方法に従って処理します。

電子媒体の場合も、賞与を支給していない人のデータをどのように扱うかを確認する必要があります。

「会社全体で賞与なし」と「一部の従業員だけ賞与なし」は処理の考え方が異なります。

給与台帳の賞与対象者と、届書に印字された被保険者一覧を照合して確認しましょう。

賞与支払予定月そのものが変わった場合

毎年6月と12月に賞与を支給していた会社が、今後は7月と12月へ変更するなど、賞与支払予定月そのものを変更することもあります。

このような場合、その年だけ賞与不支給報告書を提出して終わりにするのではなく、登録されている賞与支払予定月を変更する必要がないか確認してください。

賞与支払予定月の登録内容を変更しておかないと、翌年以降も旧予定月を前提とした案内や未提出確認につながることがあります。

また、賞与制度そのものを廃止し、今後賞与を支給しないことになった場合も同様です。

会社の給与規程だけ変更して、日本年金機構側の登録が以前のまま残っているという状態は避けたいところです。

実務では、賞与制度を改定するときに「就業規則・給与規程」「給与計算システム」「社会保険上の賞与支払予定月」の3か所をセットで見直すと管理しやすいです。

賞与不支給報告書は電子申請の対象にもなっています。

紙で提出する会社だけの手続きではありませんので、自社の申請方法に合わせて処理してください。

賞与支払届の記入ポイント

賞与支払届の記入ポイント

紙の賞与支払届を作成するときは、被保険者情報と賞与の支給内容を照合しながら記入します。

事業所へ送付される届書には、あらかじめ対象となる被保険者の氏名、生年月日などが印字されていることがありますが、印字されている人をそのまま全員処理すればよいとは限りません。

届書が作成された後に入社した従業員、退職した従業員、賞与支給対象外となった従業員などがいる可能性があります。

つまり、届書の印字情報は確認の出発点ではありますが、賞与支払日時点の最新情報と照合する必要があります。

基本的に確認する項目は次のとおりです。

  • 被保険者整理番号
  • 氏名・生年月日
  • 賞与支払年月日
  • 通貨による賞与額
  • 現物による賞与額
  • 賞与額の合計
  • 70歳以上被用者などの該当状況

特に間違いやすいのが賞与額です。

賞与支払届の賞与額欄では、標準賞与額へ切り捨てた後の金額を自分で書くのではなく、 原則として1,000円未満を切り捨てる前の実際の賞与額を確認して記載 します。

給与計算で使用した「賞与総支給額」と、賞与支払届に入力する「賞与額」を照合してから提出すると、金額の転記ミスを防ぎやすくなります。

賞与支払年月日は実際の支払日を記載する

賞与支払年月日も間違いやすい項目です。

賞与計算を行った日や賞与明細を作成した日ではなく、実際に賞与を支払った年月日を確認します。

特に、給与システムで「12月賞与」と登録していても、銀行振込日が12月5日なのか12月10日なのかで支払年月日は異なります。

給与台帳だけで判断しにくい場合は、振込データや会社の賞与支給日を確認してください。

同一月に複数回支給している場合

同じ月に2回以上賞与を支給する会社では、通常の年2回賞与とは異なる確認が必要です。

たとえば、月初に通常賞与を支給し、月末に追加の決算賞与を支給した場合、同一月に支給された賞与を合算して標準賞与額を決定する取扱いがあります。

先に通常賞与の届出を済ませた後で追加賞与を支給する場合には、最初の届出をそのまま残し、追加分だけ別の賞与として単純処理しないよう注意してください。

退職者へ支給した賞与

退職者の賞与も注意が必要です。

資格喪失月に支払われた賞与は原則として社会保険料の賦課対象になりませんが、健康保険では資格喪失日の前日までに支給された賞与を標準賞与額として決定し、年度累計に含める取扱いがあります。

「保険料がかからないから賞与支払届も不要」と自己判断せず、資格喪失日と賞与支払日を確認してください。

たとえば月末退職者の場合、資格喪失日は通常その翌日になります。

一方、月の途中で退職した場合には資格喪失日と賞与支払日の前後関係を確認する必要があります。

さらに資格取得と資格喪失が同じ月に発生するケースなどでは、通常と異なる確認が必要になることがあります。

育児休業中の賞与

育児休業等によって賞与の社会保険料が免除される場合であっても、被保険者資格そのものがなくなるわけではありません。

賞与が支給された場合には、賞与支払届と保険料免除の判定を別々に確認する必要があります。

「賞与保険料が免除だから賞与額の記録も不要」と考えないようにしましょう。

また、賞与支払届に基づいて標準賞与額が決定された後は、会社側で決定内容を確認しておくことも大切です。

届出額と決定額が想定どおりかを確認し、必要な通知や社内保存を行います。

賞与支払届を電子申請する方法

賞与支払届は電子申請に対応しています。

社会保険手続きを継続的に行う会社では、紙で郵送するよりも電子申請を利用した方が、提出履歴を管理しやすくなる場合があります。

賞与対象者が多い会社では、紙への転記作業を減らせる点もメリットです。

電子申請では、e-Govなど所定のオンライン手続きを利用し、事業所情報、被保険者情報、賞与支払年月日、賞与額などをもとに申請します。

利用するサービスや申請方式によって、GビズID等の認証方法、届書作成プログラム、給与・労務管理ソフトとの連携方法が異なります。

e-Govでは、健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届・70歳以上被用者賞与支払届について電子申請手続きが用意されています。

申請方式や必要な認証方法は更新される可能性がありますので、実際に手続きする際は最新の申請画面を確認してください。

(出典:e-Gov電子申請「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届/70歳以上被用者賞与支払届」)

電子申請前に確認したい情報

  • 事業所整理記号などの事業所情報
  • 被保険者整理番号
  • 賞与支払年月日
  • 従業員ごとの賞与支給額
  • 70歳以上被用者などの対象区分

実務では、電子申請そのものの操作よりも、 申請前の給与データが正しいかを確認する作業 の方が重要です。

給与ソフトからそのまま電子申請用データを作れる場合でも、対象者、賞与支払日、賞与額が正しく登録されているかを確認してから送信しましょう。

電子申請は元データの確認が重要

電子申請を導入すると、紙への転記ミスは減らせます。

しかし、給与システム内の被保険者整理番号が間違っている、退職者の資格情報が更新されていない、賞与支払日が誤って登録されているといった場合には、その誤りを含んだまま申請データが作られることがあります。

そのため、賞与計算が確定したら、少なくとも「賞与対象者数」「賞与総額」「社会保険加入者数」「賞与支払日」などを申請データと照合することをおすすめします。

確認段階 チェック内容
賞与計算確定時 対象者、総支給額、社会保険加入状況
申請データ作成時 被保険者整理番号、賞与支払日、賞与額
送信前 申請件数、エラーの有無、対象者漏れ
送信後 受付状況、返戻、決定通知

電子申請では「送信したこと」と「手続きが正常に完了したこと」は同じではありません。

送信後は受付状況や返戻の有無、決定通知などまで確認し、会社内に記録を残しておくと安心です。

返戻された場合は原因を確認する

電子申請後に入力内容の不備などで返戻された場合は、単にもう一度送信するのではなく、返戻理由を確認して元データから修正します。

たとえば被保険者情報が一致しないのであれば、賞与支払届だけを修正すればよいのか、そもそも社会保険資格情報や氏名情報に別の問題があるのかを確認します。

電子申請のエラーは、ほかの人事データの不整合を発見するきっかけになることもあります。

また、申請が完了したら、電子申請の受付結果や決定通知を給与データと関連付けて保存しておくと、後日「この賞与について届出済みか」を確認しやすくなります。

賞与支払届だけでなく、算定基礎届や月額変更届なども電子申請できます。

社会保険手続き全体の流れを整理したい場合は、 算定基礎届の書き方|対象者と支払基礎日数を実務で確認 もあわせて確認すると、標準報酬月額と標準賞与額の違いを理解しやすくなります。

賞与支払届を忘れていた場合

賞与支払届を忘れていた場合

賞与支払届を提出していなかったことに気づいた場合は、そのまま放置せず、 気づいた時点で速やかに提出 することが基本です。

「提出期限の5日を過ぎたから、もう提出できない」という手続きではありません。

むしろ、遅れていることに気づいた後も放置する方が問題を大きくしやすいため、まず未提出となっている賞与の内容を整理します。

提出が遅れると、賞与にかかる健康保険料・厚生年金保険料の処理も遅れます。

その結果、後日になって保険料の納入額へ反映されたり、従業員の年金記録に標準賞与額が反映される時期が遅れたりする可能性があります。

また、過去の賞与について健康保険の年度累計を確認する必要がある場合には、その管理にも影響します。

過去の賞与支払届が漏れていた場合、現在の賞与だけ提出して終わらせず、過去の給与台帳や賞与台帳を確認し、ほかにも未提出の賞与がないか確認することをおすすめします。

まず事実関係を整理する

担当者の交代時や年金事務所からの問い合わせによって、過去の賞与支払届の漏れが見つかることがあります。

この場合、慌てて推測した金額で届出するのではなく、賞与台帳、賃金台帳、銀行振込記録、賞与明細、会計データ、社会保険料控除額などを照合し、いつ、誰に、いくら賞与を支給したのかを整理します。

確認資料 確認できる内容
賞与台帳・賃金台帳 対象者、総支給額、控除内容
銀行振込記録 実際の支給日、振込実績
資格取得・喪失記録 賞与支給日時点の資格状況
過去の申請記録 賞与支払届を提出済みかどうか
社会保険料の計算資料 当時どのように保険料を控除したか

特に注意したいのが、「賞与から社会保険料を控除しているから、賞与支払届も提出しているはず」と決めつけないことです。

給与計算と社会保険届出は別工程ですので、片方だけ処理されていることは実務上あり得ます。

金額や対象者を間違えて提出した場合

すでに賞与支払届を提出したものの、賞与額や対象者を間違えていた場合には、未提出とは対応が異なります。

たとえば50万円の賞与を60万円として届け出ていた、賞与を支給していない従業員について誤って届け出た、同一月の追加賞与を合算していなかったといった場合には、訂正方法を確認します。

誤った届出を放置すると、会社の給与台帳と日本年金機構側の標準賞与額が一致しない状態になります。

社会保険料だけでなく年金記録にも関係しますので、判明した段階で訂正してください。

従業員への精算が必要になる場合もある

賞与支払届の漏れと同時に、会社側の社会保険料控除そのものも漏れていた場合には、後から保険料が発生する可能性があります。

この場合、会社が納付する社会保険料だけでなく、従業員負担分をどのように精算するかという問題も出てきます。

現在在籍している従業員なのか、すでに退職しているのかによっても実務対応は変わります。

複数年度にわたる提出漏れ、多数の従業員への影響、保険料控除漏れが伴うケースでは、届書だけを提出して終わるとは限りません。

保険料の精算方法や従業員への説明まで含めて対応を整理してください。

提出漏れが長期間にわたっている場合や、複数年度・多数の従業員に影響する場合は、社内だけで判断せず、過去資料を準備したうえで年金事務所や社会保険労務士へ相談した方が安全です。

賞与支払届の漏れは、仕組みを整えれば再発を防ぎやすい手続きでもあります。

原因を「担当者が忘れた」で終わらせず、賞与支給のチェックリストに賞与支払届を組み込み、提出完了まで管理できる形へ変更しておくことをおすすめします。

賞与支払届の提出先を最終確認

賞与支払届の提出先は、基本的に 事業所を管轄する年金事務所または事務センター です。

提出期限は賞与を実際に支給した日から5日以内と考え、賞与計算と同時に提出準備を進めておくと処理漏れを防ぎやすくなります。

賞与支払届で最初に確認するのは提出先ですが、実際の処理では「対象となる賞与か」「届出対象者か」「賞与支払日はいつか」「賞与額はいくらか」「標準賞与額の上限に該当しないか」という順番で確認すると分かりやすいでしょう。

確認項目 基本的な取扱い 実務上のチェック
提出先 事務センターまたは管轄年金事務所 健康保険組合加入時は組合側の手続きも確認
提出期限 賞与支払日から5日以内 賞与計算日ではなく実際の支払日
対象となる賞与 原則として年3回以下の支給 名称ではなく支給回数と実態を確認
年4回以上の支給 原則として報酬として扱う 標準報酬月額への反映を確認
標準賞与額 税引前総支給額から1,000円未満を切り捨て 届書には実際の賞与額を確認して記載
健康保険の上限 年度累計573万円 年度内の複数回賞与を累計
厚生年金の上限 1か月150万円 同一月の複数賞与は合算
賞与を支給しなかった場合 一定の場合は賞与不支給報告書を提出 賞与支払予定月の登録状況を確認

人事・総務担当者として特に意識しておきたいのは、賞与支払届を単独の届出として管理しないことです。

賞与計算、社会保険料控除、雇用保険料、銀行振込、賞与支払届、保険料納付までを一つの業務フローとして管理すると、処理漏れをかなり減らせます。

賞与処理を一つのチェックリストにする

私が実務上おすすめしたいのは、賞与支給のたびに同じチェックリストを使用する方法です。

  • 賞与対象者を確定する
  • 社会保険資格を確認する
  • 賞与額を確定する
  • 社会保険料と雇用保険料を計算する
  • 賞与を実際に支給する
  • 賞与支払届を作成する
  • 賞与支払日から5日以内に提出する
  • 電子申請等の受付状況を確認する
  • 決定内容と給与データを照合する
  • 関係資料を保存する

この流れにしておけば、「賞与支給は終わったが賞与支払届だけ忘れていた」「届出はしたが電子申請が返戻されていた」という状態を防ぎやすくなります。

また、年4回以上支給する手当、高額賞与、同一月に複数回支給する賞与、退職月の賞与、育児休業中の賞与などは、通常の賞与より判断項目が増えます。

会社ごとの給与制度や被保険者資格の状況によって取扱いが変わるケースもあるため、形式だけで判断しないようにしましょう。

賞与支払届で迷ったときは、「賞与の名称」ではなく「支給の実態」、「給与システム上の月」ではなく「実際の支払日」、「保険料が発生するか」だけでなく「標準賞与額としての届出が必要か」という順番で整理すると判断しやすくなります。

特に退職者や育児休業者については、「社会保険料がかからない=届出不要」とは限りません。

また、高額賞与では健康保険と厚生年金で上限の考え方が異なります。

通常と違うケースが含まれるときは、給与ソフトの自動計算だけに頼らず、制度上の取扱いも確認してください。

賞与支払届は、対象者と支給内容を順番に整理すれば、決して難しい手続きではありません。

一方で、提出漏れや金額誤りがあると、会社の社会保険料だけでなく従業員の年金記録にも影響する可能性があります。

まずは「賞与を支給したら、賞与支払日から5日以内に、事務センターまたは管轄年金事務所へ賞与支払届を提出する」という基本を社内で共有し、そのうえで対象者、支給回数、標準賞与額、不支給時の処理まで確認する仕組みを作っておきましょう。

制度や保険料率、様式、電子申請の仕組みは変更される可能性がありますので、 正確な情報は公式サイトをご確認ください

また、資格喪失月の賞与、高額賞与、過去の提出漏れ、複数事業所勤務など、個別の資格状況によって判断が難しいケースについては、 最終的な判断は専門家にご相談ください

-社会保険・年金