社会保険・年金

健康保険の特定疾病療養受療証とは?対象と申請方法を整理

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

健康保険の特定疾病療養受療証は、人工透析など、長期間にわたって高額な治療が必要となる特定の疾病について、医療費の自己負担を一定額に抑えるための制度です。

関連して、健康保険は健康保険の高齢受給者証は廃止済みを解説した記事でも整理しています。

対象となる疾病は限定されていますが、該当する方にとっては毎月の医療費負担に大きく関わる制度です。

人工透析では自己負担が1万円になる場合と2万円になる場合があり、申請時期や有効期限にも注意が必要です。

特に人工透析の治療が始まったばかりの方や、家族が対象疾病に該当した方の場合、「高額療養費とは別の制度なのか」「会社を通して申請するのか」「いつから使えるのか」といった部分が分かりにくいのではないでしょうか。

会社の人事・労務担当者にとっても、頻繁に発生する手続きではないため、従業員から突然相談を受けると判断に迷いやすい制度の一つです。

この記事では、特定疾病療養受療証の対象疾病、自己負担限度額、高額療養費制度との違い、申請方法、有効期限まで、初めて制度を確認する方にも分かるように整理します。

従業員や被扶養者から相談を受けた会社の担当者が確認しておきたいポイントにも触れていきます。

  • 特定疾病療養受療証の対象となる3つの疾病
  • 人工透析などの自己負担限度額
  • 高額療養費制度との違いと医療費の考え方
  • 申請方法や必要書類、有効期限と更新

健康保険の特定疾病療養受療証とは?対象・申請方法を解説

健康保険の特定疾病療養受療証とは

健康保険の特定疾病療養受療証は、すべての病気を対象とした制度ではありません。

長期間にわたって高額な治療を継続する必要がある一定の疾病について、医療機関ごとの1か月の自己負担額を一定の範囲に抑える仕組みです。

通常の高額療養費制度と関係する制度ではありますが、対象となる疾病が限定され、自己負担限度額も特別に低く設定されている点が大きな特徴です。

高額療養費をはじめとする健康保険の給付全体は、健康保険の給付金一覧|種類・支給額・申請方法をわかりやすく整理で整理しています。

まずは、誰が対象になるのか、どのくらい負担が軽減されるのかを整理していきます。

対象となる3つの特定疾病

特定疾病療養受療証の対象になるのは、厚生労働大臣が定める一定の疾病です。

一般的な病気で医療費が高額になったというだけでは対象にならず、次の3つの疾病に該当することが基本となります。

  • 人工腎臓による人工透析を実施している慢性腎不全
  • 血漿分画製剤を投与している先天性血液凝固第Ⅷ因子障害または第Ⅸ因子障害
  • 抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群など所定の要件を満たすもの

代表的なのが、慢性腎不全によって人工透析を継続しているケースです。

人工透析は1回治療を受けて終了するものではなく、継続して治療を受けるケースが多いため、通常の健康保険の自己負担だけでは毎月の負担が大きくなりやすいという特徴があります。

そこで、高額な治療を長期間にわたって継続する必要がある一定の疾病について、通常の高額療養費よりもさらに低い自己負担限度額を設けているのが特定疾病に関する特例です。

ここで大切なのは、単に「腎臓病である」「血液の病気である」といった病名だけで判断する制度ではないという点です。

慢性腎不全については人工腎臓、つまり人工透析を実施していることが前提となりますし、血友病についても制度上定められた血液凝固因子障害について所定の治療を受けていることが必要です。

HIV感染症についても、すべてのケースを一律に扱うわけではなく、制度上定められた要件を満たしているかを確認します。

本人だけでなく被扶養者も対象になり得る

また、対象になるのは健康保険の被保険者本人だけではありません。

健康保険の被扶養者が対象疾病に該当する場合も制度を利用できることがあります。

たとえば、会社員である夫の健康保険に妻が被扶養者として加入しており、その妻が人工透析を受けているケースです。

この場合、健康保険上の被保険者は夫ですが、特定疾病の認定を受ける対象者は妻になります。

実務でも、従業員本人ではなく、その家族の人工透析について会社へ相談が寄せられることがあります。

従業員から「家族が透析を始めることになったのですが、健康保険で何か手続きがありますか」と聞かれたときは、通常の高額療養費だけではなく、特定疾病療養受療証の対象にならないかを確認するとよいでしょう。

会社が疾病そのものを認定するわけではありません。

会社側では、加入している健康保険の確認や申請先の案内など、必要な手続きへつなぐサポートをするのが基本です。

申請書では健康保険に加入している被保険者の情報と、実際に治療を受ける認定対象者の情報を区別して記入する必要があります。

本人と被扶養者を取り違えると申請内容の確認に時間がかかる可能性があるため、誰が被保険者で、誰が治療を受ける人なのかを整理してから記入することが重要です。

人工透析の自己負担は1万円か2万円

人工透析の自己負担は1万円か2万円

人工透析を行っている慢性腎不全の場合、特定疾病療養受療証による認定を受けると、対象となる保険診療について1か月の自己負担限度額は原則として1万円です。

ただし、すべての人工透析患者が必ず1万円になるわけではありません。

70歳未満で、診療を受けた月の標準報酬月額が53万円以上となる被保険者またはその被扶養者については、人工透析に関する自己負担限度額が2万円となります。

対象 自己負担限度額の一般的な目安
人工透析を行う慢性腎不全 原則として月1万円
70歳未満で標準報酬月額53万円以上の被保険者・被扶養者 月2万円
70歳以上の人工透析患者 原則として月1万円

この「標準報酬月額53万円以上」という部分は、会社員の方には少し分かりにくいところです。

標準報酬月額は、単純な手取り額や毎月の給与総額そのものではありません。

社会保険料を計算するときに使われる等級上の金額であり、定時決定や随時改定などによって決められています。

そのため、「自分の年収が600万円だから1万円」「年収が800万円だから2万円」といったように、年収だけで機械的に判断することはできません。

被扶養者が人工透析を受ける場合も、被扶養者本人の収入だけを見るわけではなく、健康保険上の被保険者の標準報酬月額が関係します。

2万円になるのは人工透析の一部のケース

もう一つ押さえておきたいのが、2万円という自己負担限度額は、特定疾病全体に適用されるものではないという点です。

血友病や所定のHIV感染症については原則1万円であり、2万円となる取扱いは、70歳未満の一定の所得区分に該当する人工透析患者に関係するものです。

「特定疾病だから2万円になることがある」のではなく、「人工透析のうち、70歳未満で一定の標準報酬月額に該当する場合に2万円になる」と整理すると分かりやすいですよ。

協会けんぽの現行案内でも、人工透析を実施している慢性腎不全は原則1万円、診療のある月の標準報酬月額が53万円以上となる70歳未満の被保険者またはその被扶養者は2万円とされています。

(出典:全国健康保険協会「高額療養費」)

この記事に記載している1万円・2万円という金額は、現行制度を理解するための一般的な目安です。

医療保険制度は改正されることがありますので、実際に治療を受ける時点で適用される自己負担限度額については、加入している健康保険の保険者に確認してください。

特に転職直後や標準報酬月額が変更された時期は、自分がどの所得区分になるのか分かりにくいことがあります。

会社側で相談を受けた場合も、給与額だけから自己負担限度額を断定するのではなく、健康保険上の標準報酬月額と保険者の判定を確認するのが安全です。

血友病とHIV感染症の自己負担

特定疾病療養受療証は人工透析だけの制度ではありません。

一定の血友病や、所定の要件を満たす後天性免疫不全症候群についても対象になります。

血友病については、具体的には血漿分画製剤を投与している先天性血液凝固第Ⅷ因子障害または先天性血液凝固第Ⅸ因子障害が対象です。

一般的には血友病Aや血友病Bとして知られる疾病ですが、制度の適用を判断するときは、日常的に使われる病名だけではなく、健康保険制度上の要件を満たしているかが重要になります。

また、後天性免疫不全症候群については、抗ウイルス剤を投与していることなど、制度上定められた要件があります。

「HIV陽性であれば無条件ですべて対象」と単純に整理するのではなく、実際に特定疾病として認定される状態に該当するかを医師と保険者に確認する必要があります。

これらについて、特定疾病として認定された場合の自己負担限度額は 原則として1か月1万円 です。

疾病 主な要件 自己負担限度額の目安
血友病 所定の先天性血液凝固因子障害で所定の治療を受けている 月1万円
所定のHIV感染症 抗ウイルス剤を投与しているなど制度上の要件を満たす 月1万円

病名だけで自己判断しないことが大切

この制度についてインターネットで調べると、「血友病は対象」「HIVは対象」という短い説明だけが掲載されていることがあります。

しかし、実際の申請では医師による証明等を通じて、制度上定められた疾病に該当していることを確認します。

そのため、ご本人や会社の担当者が病名だけを見て「確実に対象です」と判断するのは避けた方がよいでしょう。

特に会社側では、従業員本人から病状について詳しく聞き出す必要はありません。

私が会社側から相談を受けた場合であれば、「特定疾病療養受療証という制度があるので、主治医と加入している健康保険へ対象になるか確認してください」というところまで案内し、医学的な判断は医療機関に委ねる形を基本にします。

疾病名や治療内容は非常にセンシティブな個人情報です。

会社が申請をサポートする場合でも、本人が手続きを進めるために必要な範囲を超えて、病状や治療歴を社内で共有しないよう注意が必要です。

また、血友病やHIV感染症については、特定疾病療養受療証とは別に公費による医療費助成などが関係することもあります。

どの制度が適用されるかによって実際の窓口負担が変わる可能性があるため、「特定疾病療養受療証が1万円だから必ず1万円を支払う」とも限りません。

利用できる公費制度を含めた実際の負担額については、医療機関の相談窓口や自治体、加入している健康保険へ確認するのが確実です。

高額療養費制度との違いと使い分け

高額療養費制度との違いと使い分け

特定疾病療養受療証について相談を受けたとき、特に多いのが高額療養費制度との違いです。

どちらも健康保険における医療費の自己負担を軽減する制度なので、初めて確認する方には同じ制度のように見えます。

実際には、特定疾病療養受療証は高額療養費制度と無関係な別制度というより、 長期にわたって高額な治療が必要な特定疾病について設けられた高額療養費の特例 と理解するのが適切です。

比較項目 特定疾病療養受療証 通常の高額療養費制度
主な対象 国が定める特定の疾病 健康保険が適用される幅広い医療
限度額 原則月1万円、一部2万円 年齢や所得区分などに応じて決定
考え方 高額な治療を長期間続ける特定疾病の特例 1か月の医療費負担が高額になった場合の一般的な負担軽減
対象疾病以外の治療 原則として対象外 要件を満たせば対象になり得る

通常の高額療養費制度では、1か月に支払った保険診療の自己負担が一定の限度額を超えたとき、その超えた部分が高額療養費として支給されます。

限度額は年齢や所得区分によって異なり、誰でも一律1万円という制度ではありません。

一方、特定疾病に該当する治療について認定を受けている場合は、原則1万円、一部の人工透析患者は2万円という、より低い特例的な限度額が使われます。

どちらか一つを選ぶ制度ではない

ここで重要なのは、「特定疾病療養受療証と高額療養費のどちらを使えば得なのか」と選択する制度ではないということです。

特定疾病に該当する治療については特定疾病の特例が適用され、それとは別の疾病や医療費については通常の高額療養費制度が関係することがあります。

たとえば、人工透析について特定疾病の認定を受けている方が、同じ月に骨折して別の病院へ入院したとします。

人工透析については特定疾病の自己負担限度額が関係しますが、骨折の治療まで自動的に1万円になるわけではありません。

骨折の医療費については通常の高額療養費制度のルールで計算されることになります。

特定疾病療養受療証は「高額療養費とは別にもう一つ1万円をもらえる制度」ではなく、特定の疾病について高額療養費の自己負担限度額を低くする特例です。

この位置づけを理解しておくと、制度の関係がかなり分かりやすくなるかなと思います。

高額療養費制度そのものや、通常の限度額適用の仕組みについて詳しく確認したい方は、 限度額適用認定証の申請方法|マイナ保険証との違いを整理 もあわせて確認してください。

特に現在は、マイナ保険証による限度額情報の確認など、医療機関の窓口での取扱いも変わってきています。

特定疾病以外の医療費について高額療養費を利用する場合は、受診時点の制度を確認することが重要です。

受療証を使うときの医療費の考え方

特定疾病療養受療証を利用すると「毎月の医療費が全部1万円になる」と理解してしまうことがありますが、ここは注意が必要です。

自己負担限度額は、原則として 対象となる特定疾病について、1か月単位、医療機関等ごと に考えます。

協会けんぽの案内では、医療機関等ごとに加え、入院、通院、薬局ごとに自己負担限度額を考える取扱いが示されています。

1万円または2万円は、本人や家族がその月に支払うすべての医療費を合計した上限ではありません。

どの疾病の治療なのか、何月の診療なのか、どの医療機関で受診したのかを分けて考える必要があります。

たとえば、人工透析について特定疾病療養受療証の認定を受けていて、透析を行っている医療機関で対象となる保険診療を受けている場合、その部分には特定疾病の自己負担限度額が適用されます。

一方、風邪や骨折、歯科治療など、人工透析とは別の疾病について受診した医療費まで自動的に1万円または2万円の中に収まるわけではありません。

入院・通院・薬局の扱いにも注意

同じ病院を利用している場合でも、入院と外来では計算上別に扱われることがあります。

また、院外処方によって薬局を利用した場合も、医療機関での支払いと全く同じ窓口処理になるとは限りません。

その結果、一度窓口で限度額を超える金額を支払い、後から高額療養費として払い戻しを受けるケースも考えられます。

実際の精算方法については、受診している医療機関や薬局、加入している保険者に確認してください。

よくあるケース 考え方
人工透析のために通院 認定された特定疾病の治療として限度額の対象
同じ月に別の病気で他院を受診 別の医療費として通常の健康保険・高額療養費のルールを確認
月をまたいで治療 月ごとに限度額を計算
差額ベッド代など保険外費用 特定疾病の自己負担限度額の対象外

特に忘れてはいけないのが、1万円または2万円という限度額は、基本的に健康保険が適用される対象疾病の療養についての話だということです。

入院時の差額ベッド代、日用品、保険適用外の治療などについては、別途負担が発生することがあります。

入院を伴う場合には食事に関する負担も別の制度によって扱われるため、「受療証があれば病院への支払いは完全に1万円だけ」と考えないようにしましょう。

マイナ保険証を使う場合

現在、協会けんぽでは、特定疾病の認定を受けたうえでマイナ保険証を利用して医療機関を受診する場合、認定情報をオンラインで確認できることで、受療証の提示が不要となる取扱いも案内されています。

一方、資格確認書で受診する場合などは、特定疾病療養受療証の提示が必要になることがあります。

受療証が交付されたからといって、受診方法を自己判断するのではなく、初回受診時に「特定疾病の認定を受けています」と医療機関の窓口で確認しておくとスムーズです。

実務では、「受療証を持っているから医療費全体が1万円になると思っていた」という認識違いを防ぐことが重要です。

実際の窓口負担について不明な点がある場合は、医療機関と加入している保険者の双方に確認しておくと安心です。

健康保険の特定疾病療養受療証の申請と更新

対象疾病に該当していても、何もしなくても自動的に特定疾病療養受療証が交付されるとは限りません。

原則として、加入している健康保険の保険者から特定疾病として認定を受けるための申請が必要です。

特に重要なのが申請時期です。

協会けんぽでは発効日が原則として申請月の初日となり、それより前の月へさかのぼって発効することはできません。

ここからは申請書の書き方、必要書類、申請先、申請時期、有効期限を順番に確認します。

特定疾病療養受療証交付申請書の書き方

協会けんぽに加入している場合は、健康保険特定疾病療養受療証交付申請書を使用して申請します。

申請書では、大きく分けて被保険者の情報、認定を受ける方の情報、対象となる疾病、医師による証明などを記載します。

主な記入項目 確認する内容
被保険者情報 記号・番号、氏名、生年月日、住所など
認定対象者 実際に対象疾病の治療を受ける方
疾病 どの特定疾病に該当するか
医師の証明 対象疾病について診療を受けていることの証明

特に間違えやすいのが、 被保険者と認定対象者が必ずしも同じではない という点です。

たとえば、会社員である夫の健康保険に妻が被扶養者として加入しており、妻が人工透析を受けている場合、健康保険上の被保険者は夫ですが、認定対象者は妻です。

申請書に「被保険者」と書かれているからといって、透析を受けている妻の情報をすべて記入してしまうと、健康保険上の資格情報と一致しなくなります。

最初に資格情報を確認する

申請書を書き始める前に、まず健康保険の資格情報を確認してください。

  • どの健康保険に加入しているか
  • 被保険者は誰か
  • 治療を受ける人は本人か被扶養者か
  • 被保険者の記号・番号は何か
  • 現在もその健康保険の資格が有効か

特に転職直後、退職予定、扶養へ入った直後などは注意が必要です。

申請した保険者と実際に治療を受ける日の保険者が違えば、受療証をそのまま使えない可能性があります。

退職や転職によって健康保険の資格を喪失すると、それまで加入していた健康保険が交付した特定疾病療養受療証を継続して使用できるとは限りません。

新しい健康保険へ加入した場合は、新たな保険者で手続きが必要か確認してください。

会社が記入する申請書とは限らない

会社員の方からすると、「健康保険の書類だから会社が全部手続きをする」と思うかもしれません。

しかし、特定疾病療養受療証は本人や家族の医療に関する健康保険給付の手続きです。

会社が必ず申請書を作成して提出する手続きとは限りません。

会社側では、従業員が加入している健康保険を案内したり、必要に応じて申請先を説明したりする程度のサポートになることも多いです。

私が企業の担当者から相談を受けた場合も、まず「誰が対象者なのか」「現在どの健康保険に加入しているのか」を確認します。

そのうえで、本人が直接保険者へ提出するのか、会社を経由する運用なのかを確認してもらう形が実務的です。

病名や具体的な治療内容は、会社が把握しなければならない情報とは限りません。

申請をサポートする場合も、必要な情報だけを扱う意識が重要です。

申請に必要な医師の証明と添付書類

申請に必要な医師の証明と添付書類

特定疾病療養受療証の交付を受けるためには、申請者が希望するだけでは足りず、対象となる特定疾病に該当していることを確認する必要があります。

そのため、申請では医師による証明が重要になります。

協会けんぽの申請書には医師の意見を記載する欄が設けられており、その欄への記入を受ける方法があります。

また、所定の疾病に該当していることを証明できる診断書などを添付して手続きを行うケースもあります。

申請時に準備する書類は、一般的には次のようなものです。

  • 特定疾病療養受療証交付申請書
  • 医師の証明または疾病を確認できる診断書など
  • 必要に応じて本人確認に関する書類
  • 代理人が手続きをする場合の委任状など

まず医療機関で証明方法を確認する

人工透析を開始することになった場合などは、治療を受けている医療機関側も特定疾病療養受療証の手続きを案内していることがあります。

そのため、申請書を準備したら、主治医や病院の相談窓口へ「特定疾病療養受療証の申請をしたい」と伝え、医師の意見欄への記入方法を確認すると進めやすいです。

医療機関によっては、医師の証明を受けるまで一定の日数を要することもあります。

申請月より前へさかのぼって発効できないことを考えると、治療開始が決まった段階で早めに動いておくことが重要です。

マイナンバーを記載する場合の注意

協会けんぽへの申請では、被保険者の記号・番号を記載できる場合と、マイナンバーによって資格情報を確認する場合で、必要となる確認書類が変わることがあります。

マイナンバーを記載して申請するケースでは、番号確認や本人確認に必要な書類の添付を求められることがあります。

申請書の様式は更新されることがあるため、以前ダウンロードして保存していた申請書をそのまま使うよりも、提出する時点で最新の様式を確認することをおすすめします。

代理人が申請する場合

本人が手続きを行うことが難しく、家族などが代理で提出する場合には、代理関係を確認するための書類が必要になることがあります。

協会けんぽでは、任意代理人の場合には委任状や代理人の本人確認書類などが必要となる取扱いがあります。

法定代理人の場合には、法定代理人であることを確認できる書類が必要になる場合があります。

社会保険労務士が提出を代行する場合には、所定の提出代行表示による取扱いがあります。

申請書そのものだけを準備すれば終わりではありません。

医師の証明、代理提出の有無、資格情報の確認方法まで含めて必要書類をチェックしましょう。

協会けんぽに加入している方は、最新の申請書と必要書類を公式ページで確認できます。

(出典:全国健康保険協会「健康保険特定疾病療養受療証交付申請書」)

健康保険組合や国民健康保険の場合は、協会けんぽとは様式や必要書類が異なることがあります。

インターネットで見つけた協会けんぽの申請書をそのまま使用するのではなく、自分の加入している保険者が指定する書類を使用してください。

協会けんぽなど加入先別の申請先

特定疾病療養受療証は、どこへ申請してもよいわけではありません。

現在加入している公的医療保険によって申請先が異なります。

加入している医療保険 主な申請先
協会けんぽ 加入している協会けんぽの都道府県支部
健康保険組合 加入している健康保険組合
国民健康保険 住所地の市区町村

会社員だから全員が協会けんぽというわけではありません。

勤務先によっては独自の健康保険組合に加入していることがありますし、共済組合など別の医療保険に加入しているケースもあります。

そのため、最初に「どの保険者へ申請するのか」を確認することが大切です。

協会けんぽに加入している場合

中小企業で働く会社員の方に多いのが、全国健康保険協会、いわゆる協会けんぽです。

協会けんぽでは、健康保険特定疾病療養受療証交付申請書を使用し、加入している都道府県支部へ提出します。

現在は対象となる健康保険給付の申請について電子申請が利用できるものもあり、特定疾病療養受療証交付申請書も電子申請の対象として案内されています。

電子申請を利用すると、郵送の準備が不要になり、申請状況を確認しやすいといったメリットがあります。

一方、医師の証明などアップロードが必要な書類がある場合には、電子申請上の添付方法を確認して進める必要があります。

健康保険組合に加入している場合

大企業や企業グループなどでは、協会けんぽではなく健康保険組合へ加入していることがあります。

健康保険組合の場合は、申請書の名称が似ていても、組合独自の様式や申請方法を設けていることがあります。

会社の人事・総務部門を経由して申請する運用となっている健康保険組合もあります。

協会けんぽの申請書を使うのではなく、勤務先の担当者や健康保険組合の案内を確認してください。

国民健康保険の場合

自営業者や退職後の方などが加入する国民健康保険の場合は、基本的に住所地の市区町村が窓口となります。

特定疾病療養受療証の制度自体は国民健康保険にもありますが、申請書の名称、提出方法、必要な本人確認書類などは自治体によって異なることがあります。

市区町村の国民健康保険担当窓口へ「人工透析で特定疾病療養受療証を申請したい」などと伝えると、必要な手続きを案内してもらえます。

転職、退職、扶養からの離脱などによって加入する健康保険が変わった場合は、それまで使用していた受療証をそのまま利用できるとは限りません。

保険者が変わるときは、新しい加入先で特定疾病の認定手続きが必要か必ず確認してください。

特に退職時は注意が必要です。

退職後に任意継続へ加入するのか、家族の健康保険の被扶養者になるのか、国民健康保険へ加入するのかによって保険者が変わります。

人工透析など継続的な治療を受けている方は、健康保険が切り替わる前から新しい保険者へ手続き方法を確認しておくことをおすすめします。

特定疾病療養受療証は早めに申請する

特定疾病療養受療証では、申請する時期が非常に重要です。

協会けんぽでは、特定疾病の認定を受けた場合の発効日は、原則として 申請月の初日 です。

健康保険へ加入した月に申請した場合には、資格取得日が発効日となる取扱いです。

申請月より前の月までさかのぼって発効させることはできないため、対象となる治療を受け始めることが分かったら早めに申請することが大切です。

申請が1か月遅れるとどうなるのか

たとえば、8月から人工透析を開始したものの、特定疾病療養受療証の制度を知らず、10月になって初めて申請したとします。

この場合、10月に申請した受療証を8月までさかのぼって発効させることは原則できません。

つまり、「対象疾病に該当していたのだから、後から申請すれば過去の月もすべて1万円になる」とは考えない方がよいということです。

実務では、ここが非常にもったいないポイントです。

制度自体を知らなかったことによって申請が遅れるケースも考えられるため、治療開始が決まった段階で医療機関や保険者へ確認しておくことをおすすめします。

人工透析を開始することが決まったら、「治療が始まった後に落ち着いてから手続きしよう」ではなく、できるだけ早い段階で特定疾病療養受療証について確認するのがポイントです。

月末に治療開始が決まった場合は特に注意

申請月単位で発効日が決まるため、月末付近では数日の違いが重要になることがあります。

たとえば、8月末に対象疾病であることが分かったにもかかわらず、申請を9月まで待った場合、8月へさかのぼって発効できない可能性があります。

医師の証明を受ける時間も必要になることを考えると、対象となる治療が決まった時点で申請書の準備を始めた方がよいでしょう。

ただし、実際にどの時点で申請を受理したものとして扱われるか、どの書類がそろっていれば受付となるかについては保険者へ確認してください。

会社の担当者が相談を受けた場合

会社の人事・労務担当者が従業員から「来月から家族が人工透析を始める」と相談された場合、会社側で病気の内容を詳しく判断する必要はありません。

一方で、「特定疾病療養受療証という制度があり、申請月より前にさかのぼれないので、早めに健康保険へ確認してください」と案内するだけでも、従業員にとっては大きな助けになります。

頻繁に行う手続きではないからこそ、人事担当者が制度名だけでも把握していると実務上役立ちます。

人工透析という話が出たら、高額療養費だけでなく特定疾病療養受療証も確認する、と覚えておくとよいでしょう。

なお、申請が間に合わず高額な自己負担が発生した場合に、通常の高額療養費制度などによって後から払い戻しを受けられるケースもあります。

個別の医療費がどの制度の対象になるのかについては、加入している保険者へ確認してください。

特定疾病療養受療証の有効期限と更新

特定疾病療養受療証の有効期限と更新

特定疾病療養受療証の有効期限については、対象疾病や年齢、所得区分、加入している医療保険によって取扱いを確認する必要があります。

特に人工透析を行っている慢性腎不全で70歳未満の場合は、所得区分によって自己負担限度額が1万円になるか2万円になるかが変わります。

そのため、所得区分を定期的に確認する必要があり、有効期限が設定された受療証が交付されることがあります。

一方、血友病や所定のHIV感染症、70歳以上の人工透析患者などでは、所得によって1万円と2万円を判定する必要がないため、有効期限の扱いが異なる場合があります。

対象 有効期限・更新の一般的な考え方
70歳未満の人工透析患者 所得区分確認のため有効期限が設定される場合がある
血友病 有効期限が設けられない場合がある
所定のHIV感染症 有効期限が設けられない場合がある
70歳以上の人工透析患者 年齢や加入制度に応じて取扱いを確認

人工透析では所得区分の確認が重要

70歳未満の人工透析患者については、標準報酬月額が一定以上になると自己負担限度額が2万円となります。

標準報酬月額は固定されたままとは限りません。

毎年行われる算定基礎届による定時決定や、固定的賃金が大きく変わった場合の随時改定などによって変更されることがあります。

そのため、前年と今年で自己負担限度額の区分が同じとは限らないという点に注意してください。

受療証が更新された場合は、「前年も1万円だったから今年も1万円だろう」と考えず、新しい受療証に記載されている自己負担限度額を確認することが大切です。

更新時には、有効期限だけでなく、新しく交付された受療証の自己負担限度額が1万円なのか2万円なのかまで確認しましょう。

保険者が変わった場合は更新とは別に考える

同じ健康保険へ加入したまま受療証の有効期限を迎えるケースと、退職や転職によって保険者そのものが変わるケースは分けて考える必要があります。

たとえば協会けんぽから健康保険組合へ変わったり、退職後に国民健康保険へ加入したりした場合、以前の保険者から交付された受療証を新しい健康保険で当然に継続使用できるわけではありません。

新しい健康保険へ加入したら、特定疾病の認定について改めて申請が必要か確認してください。

70歳・75歳など年齢到達時も確認する

年齢によって医療保険制度上の取扱いが変わることもあります。

特に75歳になると、原則として後期高齢者医療制度へ移行するため、保険者そのものが変わります。

人工透析の治療は健康保険が変わったからといって終了するものではありませんので、保険資格の切替時に医療費の手続きが途切れないよう、事前に新しい保険者や市区町村へ確認しておくことが重要です。

有効期限や更新方法は加入している健康保険や自治体によって実務上の取扱いが異なる場合があります。

受療証に記載された有効期限と、加入している保険者から届く案内を必ず確認してください。

実務では、「受療証を一度取ったから、その後は何もしなくていい」と思ってしまうケースが一番心配です。

継続的な治療だからこそ、受療証の有効期限、健康保険の資格変更、所得区分の変更という3点は定期的に確認しておくとよいでしょう。

健康保険の特定疾病療養受療証の要点まとめ

健康保険の特定疾病療養受療証は、人工透析、一定の血友病、所定のHIV感染症など、長期間にわたり高額な治療が必要となる特定疾病について、毎月の医療費負担を軽減するための制度です。

通常の高額療養費制度と似ているため混同しやすいのですが、特定疾病療養受療証は対象となる疾病が限定され、その代わりに自己負担限度額が原則として月1万円という低い水準に設定されているのが大きな特徴です。

  • 対象となる疾病は国が定める3つの特定疾病
  • 自己負担限度額は原則として月1万円
  • 70歳未満で標準報酬月額53万円以上の人工透析患者等は月2万円
  • 被扶養者が対象疾病に該当する場合も申請対象になり得る
  • 申請には医師の証明などが必要
  • 申請月より前までさかのぼれないため早めの申請が重要
  • 健康保険が変わった場合は新しい保険者で手続きを確認する

特に人工透析の場合、通常の高額療養費制度だけを調べていると、特定疾病療養受療証という特例を見落としてしまうことがあります。

対象となる3疾病に該当する可能性がある場合は、まず特定疾病の認定を受けられるかを確認することが重要です。

人工透析が決まったら早めに動く

人工透析の場合に最も重要なのは、制度を知った時点で早めに手続きを確認することです。

協会けんぽでは発効日が原則として申請月の初日となり、それより前の月へさかのぼることはできません。

治療開始後に数か月たってから制度を知るよりも、透析開始が決まった段階で医療機関や保険者へ相談しておく方が安心です。

また、70歳未満では標準報酬月額によって1万円か2万円かが変わるため、自分の給与額だけから判断しないこともポイントです。

会社側は手続きへの橋渡しをする

会社側としても、従業員本人や被扶養者について相談を受けたときには、病状そのものへ必要以上に踏み込む必要はありません。

会社が確認しておきたいのは、従業員がどの健康保険へ加入しているのか、申請先はどこなのか、会社を経由する必要があるのかといった手続き上のポイントです。

「人工透析を始めます」と相談されたときに、特定疾病療養受療証という制度があることを案内できるだけでも、従業員にとっては有益です。

一方で、対象疾病に該当するかどうかは医学的な判断を伴います。

会社が「あなたは対象です」「対象ではありません」と判断するのではなく、主治医や保険者へ確認してもらうことが適切です。

私自身、社会保険の相談では「制度が使えるか」だけでなく、「いつ申請するのか」「誰が申請するのか」「健康保険が変わったらどうするのか」を一緒に整理することが重要だと考えています。

特定疾病療養受療証も、この順番で確認すると迷いにくくなります。

最後に確認したいチェックポイント

確認項目 チェックする内容
対象疾病 3つの特定疾病の要件に該当しているか
加入先 協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険などのどれか
認定対象者 被保険者本人か被扶養者か
自己負担限度額 1万円か、人工透析の一定のケースで2万円か
医師の証明 申請書の意見欄など必要な証明を準備したか
申請時期 申請月より前へさかのぼれないことを踏まえて早めに申請したか
有効期限 交付された受療証の期限や自己負担額を確認したか
資格変更 転職・退職・75歳到達などで保険者が変わっていないか

特定疾病療養受療証は、対象者が限られるため一般にはあまり知られていませんが、該当する方にとっては長期の治療費負担を考えるうえで非常に重要な制度です。

人工透析など対象となる治療を開始することになった場合は、高額療養費だけを確認するのではなく、特定疾病療養受療証の申請についても忘れずに確認してください。

なお、この記事で紹介した自己負担限度額や申請方法、有効期限などは一般的な制度の目安です。

健康保険制度は改正されることがあり、加入している保険者によって申請方法や取扱いが異なる場合もあります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

また、個別の加入状況、標準報酬月額、申請時期、資格変更の状況などによって判断が分かれる場合があります。

制度の適用について判断に迷う場合には、 最終的な判断は専門家にご相談ください。

対象疾病に該当するか、どのような治療が必要かといった医学的な判断については、担当する医師や医療機関へ確認してください。

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