就業規則・制度

入社前の健康診断は必要?対象者・費用・時期を実務で確認

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

従業員を新しく採用するとき、一定の要件を満たす労働者については、会社に雇入時の健康診断を実施する義務があります。

正社員だけではなく、パートや契約社員であっても対象になる場合があるため注意が必要です。

一方で、入社前であればいつ受けてもよいわけではありません。

実施する時期、法定の検査項目、入社前3か月以内に受けた健康診断の利用、費用負担など、採用実務では確認しておきたいポイントがいくつかあります。

特に中小企業では、「本人に健康診断を受けてきてもらえばよいのか」「費用は本人負担でもよいのか」「パートも対象なのか」といった相談がよくあります。

この記事では、入社前の健康診断について、人事・総務担当者が採用時に判断できるよう実務の流れに沿って整理します。

  • 雇入時健康診断が必要になる従業員の範囲
  • 健康診断を実施する時期と入社前の健診結果の扱い
  • 法定11項目と会社が負担する費用の考え方
  • 健診結果の保存や本人通知など会社が行う対応

入社前の健康診断は必要?対象者・項目・費用を社労士解説

入社前の健康診断で会社が確認すべきこと

入社前の健康診断を考えるときは、最初に「誰に健康診断を受けてもらう必要があるのか」と「いつ実施すればよいのか」を整理することが重要です。

正社員であれば比較的判断しやすいのですが、パート、アルバイト、契約社員では労働時間や契約期間によって扱いが変わります。

また、雇入時健康診断は採用選考のために行う制度ではありません。

採用決定後の適正配置や入社後の健康管理につなげるための制度であることも押さえておきましょう。

雇入時健康診断とは何か

雇入時健康診断とは、会社が常時使用する労働者を雇い入れるときに行う健康診断です。

「雇入れ」は「やといいれ」と読みます。

根拠となるのは、 労働安全衛生法第66条第1項と労働安全衛生規則第43条 です。

事業者は、常時使用する労働者を雇い入れる際に、医師による所定の健康診断を実施しなければなりません。

雇入時健康診断は会社が任意で行う福利厚生ではなく、法律に基づく一般健康診断の一つです。

会社員が受ける健康診断にはさまざまなものがあるため、制度を混同しないことも大切です。

雇入時健康診断と、原則として1年以内ごとに1回実施する定期健康診断は、いずれも労働安全衛生法に基づく一般健康診断です。

一方、健康保険制度に基づいて実施される特定健康診査や、一定の有害業務に従事する労働者に対する特殊健康診断は、目的や対象者、根拠となる制度が異なります。

特定健診との違いについては、 健康保険の特定健診受診券 でも詳しく整理しています。

実施義務を負うのは会社

雇入時健康診断についてまず押さえておきたいのは、健康診断を実施する責任が労働者本人ではなく 事業者側にある という点です。

そのため、「採用したので自分で健康診断を受けて、結果だけ提出してください」と案内する場合でも、それだけで会社の責任がなくなるわけではありません。

法定項目を満たしているか、必要な時期に実施されているかを会社側で確認する必要があります。

一方、労働者にも健康診断を受診する義務があります。

会社が指定した医師による健康診断を希望しない場合でも、一定の要件を満たした別の医師による健康診断を受け、その結果を証明する書面を会社へ提出する方法があります。

採用選考のための健康診断ではない

採用時には、この点も非常に重要です。

雇入時健康診断は、 応募者を採用するかどうかを判断するための健康診断ではありません。

採用することが決まった人について、雇入れ後の適正配置や健康管理につなげることが制度の趣旨です。

合理的・客観的な必要性がないにもかかわらず、健康状態を採否の判断材料とする目的で応募者に健康診断を受けさせたり、健康診断書を一律に提出させたりすることは、公正な採用選考の観点から問題となる可能性があります。

実務では「入社前健康診断」という名称を使うことがありますが、 採用選考中に行う健康診断と、採用決定後に行う雇入時健康診断は分けて考える ことが大切です。

雇入時健康診断の対象者

雇入時健康診断の対象者

雇入時健康診断の対象となるのは、労働安全衛生規則上の 常時使用する労働者 です。

正社員については、通常はこの常時使用する労働者に該当します。

そのため、正社員を新しく採用したときには、雇入時健康診断を実施することを基本に考えてください。

一方で、「常時使用する」という言葉だけを見ると、無期雇用の正社員だけが対象のようにも見えます。

しかし、雇用形態の名称だけで判断するものではありません。

契約期間と労働時間で判断する

パート、アルバイト、契約社員などの短時間労働者については、一般に次の2つの要件を確認します。

確認項目 主な判断基準
雇用期間 期間の定めがない、または契約更新等により1年以上使用される予定・実績がある
週所定労働時間 同種の業務に従事する通常の労働者の週所定労働時間の4分の3以上

この2つを満たす場合には、パートやアルバイトという名称であっても、原則として雇入時健康診断の対象として考えます。

健康診断の対象者を判断するときは、「社会保険に加入しているか」だけで判断しないことが重要です。

社会保険の適用基準と労働安全衛生法上の健康診断の対象基準は、それぞれ別の制度です。

採用実務では、雇用契約書や労働条件通知書を作成する段階で、契約期間と週所定労働時間を確認しておくと判断しやすくなります。

派遣労働者は派遣元が実施する

派遣労働者についても健康診断の考え方がありますが、一般健康診断である雇入時健康診断や定期健康診断については、基本的に 派遣元事業者が実施主体 となります。

派遣先の会社が、自社で直接雇用した従業員と同じように雇入時健康診断を実施するという整理ではありません。

派遣社員を受け入れている会社では、この点も混同しないようにしましょう。

パートや契約社員も対象になるか

パートや契約社員を採用するときは、「正社員ではないから健康診断は不要」と判断しないことが大切です。

先ほど説明したとおり、雇用期間と週所定労働時間の要件を満たせば、パート、アルバイト、契約社員でも雇入時健康診断の対象になります。

たとえば、同じ仕事をしている正社員の週所定労働時間が40時間であれば、その4分の3は30時間です。

長期雇用が予定され、週30時間以上勤務するパートであれば、対象になる可能性が高くなります。

ただし、会社によって通常の労働者の所定労働時間は異なるため、単純に「週30時間」という数字だけで全社共通の判断をすることはできません。

パートの健康診断は、雇用形態の名称ではなく、契約期間と所定労働時間の実態から判断します。

4分の3未満なら必ず不要とは限らない

週所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満であれば、直ちに法定の実施対象になるわけではありません。

ただし、長期雇用の要件を満たし、週所定労働時間がおおむね通常の労働者の2分の1以上である短時間労働者については、健康診断を実施することが望ましいとされています。

つまり、 4分の3は法的義務を判断する重要な基準ですが、4分の3未満なら健康管理を考えなくてよいという意味ではありません。

実際の会社運用では、法定の最低ラインだけではなく、従業員間の公平性や健康管理、安全配慮の観点から、一定範囲の短時間労働者まで会社の健康診断に含めているケースもあります。

一度会社として対象範囲を決めたら、担当者によって判断が変わらないよう、健康診断の運用ルールとして整理しておくと実務が安定します。

雇入時健康診断はいつまでに行うか

雇入時健康診断はいつまでに行うか

雇入時健康診断について、「入社後何日以内に受けさせればよいのか」「3か月以内ならよいのか」「6か月以内でよいのか」と迷う担当者は少なくありません。

労働安全衛生規則第43条では、常時使用する労働者を 雇い入れるとき に健康診断を行うと規定されています。

そのため、法律上「入社後30日以内」や「入社後3か月以内」といった一律の日数が期限として定められているわけではありません。

基本的には入社日の直前または直後に実施する と考えておくのが実務上わかりやすいでしょう。

会社側の事情で何か月も先送りする運用は、雇入れ時に健康状態を把握して適正配置や健康管理につなげるという制度の趣旨から外れてしまいます。

中小企業で採用時によく確認するのは、「入社日までに結果が間に合わない」というケースです。

その場合でも、法令上の目的を踏まえ、入社日の前後のできるだけ早い時期に実施するようスケジュールを組むことが重要です。

会社の運用期限を決めておく

法律上の日数が明記されていないからこそ、会社では社内ルールを決めておくことをおすすめします。

たとえば、内定後に健康診断の案内を送り、入社前に受診してもらうことを原則とし、予約の都合などで難しい場合には入社後速やかに受診させる、といった運用です。

実務上の管理期限として「原則として入社前、やむを得ない場合は入社後おおむね1か月以内」などの基準を設定する方法もありますが、これは法定期限を意味するものではありません。

あくまで会社が健診漏れを防ぐための管理基準として考えてください。

採用決定前に一律実施しない

会社としては入社手続きを早めに終えたいところですが、健康診断を受けるタイミングには注意が必要です。

雇入時健康診断は採用決定後の健康管理を目的とする制度です。

採用選考の途中で、応募者全員に一律で健康診断を受けさせ、その結果を採否の判断材料とするような運用は避けるべきです。

健康状態について採用前に確認する必要性がある場合でも、職務との関連性や合理的・客観的な必要性を慎重に検討する必要があります。

雇入時健康診断が法律で義務づけられていることを理由に、採用選考段階の健診まで当然に認められるわけではありません。

入社前3か月以内の健診で代用できるか

雇入時健康診断には、実務上かなり重要な例外があります。

入社する人が 雇入れ前3か月以内に医師による健康診断を受けており、その結果を証明する書面を会社へ提出した場合 には、その健康診断で実施済みの項目に相当する項目について、新たな検査を省略することができます。

転職者の場合には、前職で受けた定期健康診断が直近にあるケースがあります。

また、本人が人間ドックなどを受けたばかりというケースもあるでしょう。

その結果が3か月以内のもので、雇入時健康診断の法定項目を満たしていれば、新しく同じ検査を一から受け直す必要がない場合があります。

3か月以内という基準は、「雇入時健康診断を入社後3か月以内に行えばよい」という意味ではありません。

入社前に受けた別の健康診断結果を利用できる期間の基準です。

ここは検索でも非常に混同されやすいところです。

「雇入時健康診断は3か月以内」と覚えてしまうと、実施時期を誤って理解する可能性があります。

11項目すべてを満たしているか確認する

前職の健康診断書を提出してもらったからといって、自動的に雇入時健康診断がすべて不要になるわけではありません。

会社側では、提出された健康診断結果と、雇入時健康診断で必要となる法定項目を照合する必要があります。

たとえば、提出された健康診断結果に心電図検査が含まれていなければ、その部分まで省略できるわけではありません。

実施されていない項目については、別途受診してもらう必要があります。

採用人数が多い会社では、「3か月以内か」「11項目を満たしているか」「不足項目がないか」を確認するチェックリストを作っておくと、重複受診や確認漏れを減らせます。

前職の健診結果を利用できれば、本人が同じ検査を短期間で繰り返す負担を避けられ、会社側の健診費用を抑えることにもつながります。

ただし、コスト削減を優先して法定項目の確認がおろそかにならないよう注意してください。

入社前の健康診断の項目と費用の実務

対象者と実施時期を確認したら、次は実際に何を受診してもらうのか、費用を誰が負担するのかを整理します。

特に注意したいのは、雇入時健康診断と定期健康診断では検査項目の扱いが同じではないという点です。

会社から医療機関へ予約するときも、単に「健康診断をお願いします」と伝えるのではなく、雇入時健康診断に対応したコースであることを確認すると安心です。

雇入時健康診断の法定11項目

雇入時健康診断では、労働安全衛生規則第43条に基づき、原則として次の11項目を実施します。

項目 検査内容
1 既往歴および業務歴の調査
2 自覚症状および他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
4 胸部エックス線検査
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量、赤血球数)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9 血糖検査
10 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無)
11 心電図検査

人事担当者としては、一つひとつの医学的な意味まで判断する必要はありません。

大切なのは、 医療機関へ雇入時健康診断であることを伝え、法定項目を満たしているコースを選ぶこと です。

雇入時は原則として項目を省略できない

定期健康診断では、年齢や医師の判断など一定の条件のもとで、一部の検査項目を省略できる場合があります。

この定期健康診断のルールと混同しやすいのですが、 雇入時健康診断には、定期健康診断と同じような医師判断による項目省略の仕組みはありません。

したがって、「若い従業員だから血液検査は不要」「35歳未満だから心電図は不要」といった形で、定期健康診断と同じ感覚で項目を省略しないようにしてください。

雇入時健康診断で省略できる代表的なケースは、雇入れ前3か月以内に受けた健康診断の結果を証明する書面が提出され、その検査項目に相当する部分を利用する場合です。

定期健康診断との違い

雇入時健康診断と定期健康診断は、どちらも一般健康診断ですが、実施するタイミングが異なります。

比較項目 雇入時健康診断 定期健康診断
実施時期 常時使用する労働者を雇い入れる際 原則として1年以内ごとに1回
一部項目の省略 医師判断による通常の省略規定なし 一定の条件で省略できる項目あり
労基署への結果報告 一般的な報告義務なし 常時50人以上の労働者を使用する事業場は報告義務あり

この違いを理解しておくと、「入社時の健診を定期健診と同じコースで受けさせてよいのか」と迷ったときにも判断しやすくなります。

健康診断の費用は会社負担が原則

健康診断の費用は会社負担が原則

雇入時健康診断の費用については、 会社が負担するのが原則 です。

雇入時健康診断は、従業員が個人的な健康管理のために任意で受ける健康診断ではありません。

法律によって事業者に実施義務が課されている健康診断であるため、その実施に必要な費用は事業者が負担すべきものとされています。

実務では、会社が指定した医療機関へ予約し、医療機関から会社へ直接請求してもらう方法がわかりやすいでしょう。

本人の都合などにより別の医療機関を受診する場合には、本人が一度立て替え、領収書と健康診断結果を会社へ提出して精算する方法もあります。

「入社するために必要な書類だから本人負担」と考えるのではなく、法定健康診断を会社が実施するという視点で費用負担を整理することが重要です。

健康保険は原則として使えない

雇入時健康診断は、病気やけがの診断・治療を目的とした診療ではありません。

そのため、通常は健康保険を使う診療ではなく、 自由診療として自費で受診 することになります。

ここでいう「自費」は、従業員本人が最終的に負担するという意味ではなく、健康保険を使わず医療機関へ健診費用を支払うという意味です。

会社がその費用を医療機関へ直接支払うか、本人が立て替えた後に会社が精算する形にすると整理しやすいでしょう。

料金は医療機関によって異なる

雇入時健康診断は自由診療であるため、料金は全国一律ではありません。

医療機関、地域、検査内容、診断書の発行方法などによって異なります。

そのため、採用予定者へ案内する前に、会社が利用する医療機関へ料金や予約方法を確認しておくことをおすすめします。

採用件数が増えてきた会社では、毎回従業員に自由に医療機関を探してもらうよりも、会社指定の健診機関を決めておいた方が、法定項目の不足や精算金額のばらつきを防ぎやすくなります。

再検査やオプション検査は別に考える

法定健康診断の結果、再検査や精密検査を受けるよう勧められることがあります。

再検査や精密検査は、雇入時健康診断そのものとは性質が異なります。

また、人間ドックの追加項目やがん検診など、法定11項目を超える検査についても同様です。

これらを会社負担とするかどうかは、会社の福利厚生制度や就業規則などによって取り扱いが異なることがあります。

法定項目の費用と、それ以外の検査費用を分けて整理しておくとよいでしょう。

受診時間の賃金はどうするか

雇入時健康診断を含む一般健康診断については、受診に要する時間の賃金を法律上当然に支払わなければならないと一律に整理されているものではなく、基本的には労使間の協議によって定めることになります。

ただし、会社に実施義務があり、従業員にも受診を求める制度です。

円滑に健康診断を実施する観点からは、 受診時間についても賃金を支払う運用が望ましい と考えられています。

会社によって扱いがバラバラにならないよう、「勤務時間中に受診するのか」「休日に受診した場合はどうするのか」「交通費を支給するのか」まで社内ルールを決めておくと採用時の説明がスムーズです。

雇入時健康診断はどこで受けるか

雇入時健康診断は、法定項目を実施できる医療機関や健診機関で受けることができます。

一般の病院やクリニックでも対応しているところがありますが、すべての医療機関が雇入時健康診断を行っているわけではありません。

また、血液検査、胸部エックス線、心電図などを一つの施設で実施できない医療機関もあります。

予約するときには、単に「会社提出用の健康診断を受けたい」と伝えるだけではなく、 労働安全衛生規則第43条の雇入時健康診断を受けたい と伝えると確認しやすくなります。

会社指定の医療機関を決める方法

会社側の実務を考えると、一定の採用人数がある企業では、あらかじめ利用する医療機関や健診センターを決めておく方法がおすすめです。

会社指定にしておけば、法定11項目を満たした健診コースを医療機関と事前に確認できます。

また、費用の請求方法や結果の受け渡し方法も統一できます。

従業員が各自で医療機関を探す方式では、「心電図が入っていなかった」「聴力検査の内容が違った」「会社が想定していた金額より高かった」といった問題が起こることがあります。

採用時の案内には、医療機関名、予約方法、受診期限、会社負担の方法、結果の提出方法まで記載しておくと、本人からの問い合わせを減らせます。

即日で結果が必要な場合は事前確認する

入社直前になって健康診断が必要だと分かり、「今日受診して即日で診断書を受け取りたい」というケースもあります。

医療機関によっては当日に受診できる場合がありますが、 受診できることと、健康診断結果を即日発行できることは別です。

血液検査などが含まれるため、結果が完成するまで数日かかる医療機関もあります。

即日発行が必要な場合には、予約前に法定11項目への対応状況と結果交付までの日数を確認してください。

採用担当者としては、入社日から逆算して早めに案内を出すことが一番の対策です。

本人が別の医療機関を希望した場合

労働者が会社指定の医療機関以外で健康診断を受けるケースもあります。

その場合には、雇入時健康診断として必要な項目を満たしていることを確認し、結果を証明する書面を会社へ提出してもらいます。

会社指定外の医療機関を認める場合は、費用精算の上限や手続きについて事前にルールを決めておくとトラブルを防ぎやすくなります。

ただし、法定健康診断に必要な費用まで安易に本人負担とする運用にならないよう注意してください。

健診結果の保存と本人への通知

健診結果の保存と本人への通知

雇入時健康診断は、従業員に受診してもらえば終わりではありません。

会社には、その後の 結果の記録、保存、本人への通知、異常所見がある場合の対応 まで求められます。

人事・総務担当者としては、健康診断の予約管理とあわせて結果回収後の処理も仕組み化しておくことが大切です。

健康診断個人票を5年間保存する

会社は、健康診断の結果に基づいて 健康診断個人票を作成し、5年間保存 する必要があります。

採用人数が少ない会社では、医療機関から届いた診断書を従業員の一般的な人事ファイルへそのまま入れているケースもありますが、健康診断結果は非常に機微性の高い個人情報です。

閲覧できる担当者を必要な範囲に限定し、通常の人事書類とは分けて管理するなど、情報管理にも配慮してください。

健康情報は、社内で誰でも確認できる状態にするべき情報ではありません。

業務上必要な範囲を超えて共有しない運用が重要です。

健診結果を本人へ通知する

会社は、健康診断の結果を 本人へ遅滞なく通知 する必要があります。

会社だけが結果を保管し、本人には何も知らせないという運用にはできません。

医療機関から本人用と会社用の結果がそれぞれ発行される場合もありますので、受診を依頼する段階で結果の受け渡し方法を確認しておくとよいでしょう。

異常所見があれば医師の意見を聴く

健康診断の結果に異常の所見がある労働者については、会社は原則として健康診断の日から3か月以内に、就業上の措置について医師の意見を聴く必要があります。

健康診断で異常値が出たからといって、会社が独自に「この仕事はできない」「採用を取り消す」と判断するものではありません。

医師の意見を踏まえ、必要がある場合には、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮など、適切な就業上の措置を検討します。

健康診断は異常を見つけること自体が目的ではなく、その結果を入社後の適切な健康管理や就業上の配慮につなげることが重要です。

雇入時健診は労基署への結果報告が不要

雇入時健康診断と定期健康診断では、労働基準監督署への報告についても違いがあります。

雇入時健康診断については、事業場の規模にかかわらず、通常の健康診断結果を労働基準監督署へ報告する義務は定められていません。

一方、定期健康診断については、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、実施後遅滞なく定期健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長へ提出する必要があります。

定期健康診断結果報告など一定の労働安全衛生関係の手続きについては、2025年1月から電子申請が原則となっています。

雇入時健康診断について「社員数が50人を超えたので、一人採用するたびに労基署へ報告するのか」と質問を受けることがありますが、定期健康診断の報告制度と分けて考えてください。

健康診断を実施しなかった場合

雇入時健康診断は法律上の義務です。

労働安全衛生法第66条第1項に違反して、必要な健康診断を実施しなかった場合には、 50万円以下の罰金 の対象となる可能性があります。

また、従業員側にも健康診断を受診する義務があります。

ただし、労働者が正当な理由なく一般健康診断を受診しなかったこと自体について、同様の罰金が直接科される仕組みではありません。

会社としては、就業規則などに健康診断の受診義務を定め、対象者に確実に案内し、未受診者を把握して受診を促す運用を整えておくことが重要です。

育児休業などで通常の健康診断の時期に休業している従業員の取扱いについては、 育休中の健康診断 で別途詳しく解説しています。

入社前の健康診断で押さえる要点

入社前の健康診断について、採用担当者が最初に確認したいのは、採用した人が雇入時健康診断の対象になるかどうかです。

正社員は原則として対象となり、パートや契約社員についても、長期雇用の見込みと週所定労働時間などの要件を満たせば対象になります。

雇用形態の名称だけで判断しないようにしましょう。

実施時期については、「入社後3か月以内」や「6か月以内」という法定期限があるわけではありません。

雇入れの際、つまり 入社日の直前または直後に実施することを基本 として運用するのが適切です。

一方、入社前3か月以内に本人が別の医師による健康診断を受け、その結果を証明する書面を提出した場合には、すでに実施した法定項目に相当する検査を省略できます。

入社時に会社が確認したいポイント

  • 雇入時健康診断の対象者に該当するか
  • 入社日の前後に受診できるよう案内しているか
  • 法定11項目を満たしているか
  • 3か月以内の既存健診結果を利用できないか
  • 法定健診の費用を会社が負担しているか
  • 結果の記録・保存・本人通知まで行っているか

採用時には、労働条件通知書の作成、社会保険や雇用保険の資格取得、給与情報の登録など、多くの手続きが集中します。

そのため、健康診断だけ後回しになり、数か月後に未実施だったことが分かるケースもあります。

私は採用手続きの相談を受ける際、健康診断についても「誰が対象か」「いつ案内するか」「どの医療機関を利用するか」「費用精算をどうするか」まで決めておくことをおすすめしています。

一度ルールを作ってしまえば、採用のたびに一から判断する必要がなくなるからです。

健康診断に関する法令や行政上の取扱いは改正される場合があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

また、個別の雇用形態や勤務条件によって対象者の判断が難しい場合には、 最終的な判断は専門家にご相談ください。

入社前の健康診断は、単に診断書を1枚集めるための手続きではありません。

対象者を正しく把握し、必要な検査を適切な時期に実施し、その結果を入社後の健康管理へつなげるところまでが会社の実務です。

採用フローの一つとしてあらかじめ仕組み化し、受診漏れや費用負担をめぐるトラブルを防いでいきましょう。

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