社会保険・年金

社会保険の扶養条件とは?年収の壁と手続きを社労士が整理

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

社会保険の扶養とは、一定の条件を満たす家族が、本人の保険料負担なしで被保険者の健康保険に加入できる制度です。

配偶者については、健康保険の被扶養者になると同時に、国民年金の第3号被保険者となる場合があります。

ただし、扶養に入れるかどうかは年収だけで決まるわけではありません。

本人が勤務先の社会保険に加入する条件、家族関係、同居の有無、今後の収入見込みなどを順番に確認する必要があります。

特に、106万円、130万円、150万円、180万円という複数の基準があるため、自分にはどの金額が関係するのか分かりにくいところです。

実際によくある相談でも、税金の扶養と社会保険の扶養が混同されています。

扶養の判定を誤ると、後から被扶養者資格を取り消され、健康保険が負担した医療費の返還を求められることがあります。

反対に、本来は扶養に入れるのに手続きをしていなければ、国民健康保険料や国民年金保険料を余計に負担することにもなりかねません。

この記事では、扶養に入る本人、家族を扶養に入れたい被保険者、手続きを担当する企業のそれぞれが判断できるよう、認定条件から届出方法まで実務の順番に沿って整理します。

  • 社会保険の扶養に入れる家族と基本条件
  • 106万円から180万円までの年収の壁
  • 扶養から外れる時期と判断方法
  • 被扶養者異動届と必要書類の手続き

社会保険の扶養条件とは?年収の壁と手続きを解説

社会保険の扶養条件と収入基準

社会保険の扶養を判断するときは、最初から130万円という数字だけを見るのではなく、本人が勤務先の社会保険に加入する対象ではないかを先に確認します。

そのうえで、家族の範囲、年齢、国内居住、収入、生計維持関係を確認するのが基本です。

実務では、この確認順序が非常に重要です。

たとえば、年収が120万円で130万円未満だったとしても、勤務先で短時間労働者の社会保険加入要件を満たしていれば、家族の扶養に残ることはできません。

反対に、勤務先の加入対象でなければ、初めて被扶養者としての収入基準を確認することになります。

扶養判定の基本的な順番

  1. 本人が勤務先の社会保険に加入する対象か確認する
  2. 被扶養者になれる親族の範囲を確認する
  3. 同居や国内居住の条件を確認する
  4. 今後の年間収入と生計維持関係を確認する

なお、被扶養者の最終的な認定権限を持つのは、会社や被保険者本人ではなく、協会けんぽや健康保険組合などの保険者です。

会社の担当者が書類を受理したからといって、必ず認定されるとは限りません。

判断が微妙なケースでは、申請前に加入先へ確認しておくことが安全です。

社会保険の扶養とは何か

一般に社会保険の扶養という場合、主に 健康保険の被扶養者制度 を指します。

会社員などの健康保険に加入している被保険者によって主として生計を維持されている家族は、一定の条件を満たすと被扶養者になることができます。

被扶養者として認定されると、被扶養者本人が健康保険料を支払わなくても、病気やけがをしたときに健康保険の給付を受けられます。

医療機関の窓口では、原則として医療費の一部を自己負担し、残りを健康保険が負担する仕組みです。

高額な医療費がかかった場合には、高額療養費制度の対象になることもあります。

また、扶養する家族の人数が増えても、原則として被保険者本人の健康保険料が人数分増えることはありません。

健康保険料は、基本的に被保険者本人の標準報酬月額や標準賞与額をもとに計算されるためです。

子どもを1人扶養に入れた場合と3人扶養に入れた場合で、本人の健康保険料が変わる仕組みではありません。

ただし、誰でも保険料負担なしで被扶養者になれるわけではありません。

被保険者との親族関係、収入、生計維持関係、国内居住などの条件を満たし、保険者から認定を受ける必要があります。

単に同じ家に住んでいる、税金上の扶養に入れている、生活費を少し援助しているというだけでは足りない場合があります。

健康保険の扶養と国民年金の第3号は別制度

一方、厚生年金保険には、健康保険と同じ意味での被扶養者制度はありません。

厚生年金に加入している人の配偶者が一定の条件を満たす場合は、国民年金の 第3号被保険者 となります。

第3号被保険者は、自分で国民年金保険料を納付しなくても、その期間が老齢基礎年金の計算上の加入期間に含まれます。

ただし、第3号被保険者になれるのは、原則として厚生年金に加入する第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者です。

子、父母、祖父母、兄弟姉妹などは、健康保険の被扶養者になることはあっても、国民年金の第3号被保険者にはなりません。

たとえば、会社員が20歳の大学生の子どもを健康保険の扶養に入れたとしても、その子の国民年金保険料が自動的に免除されるわけではありません。

学生納付特例など、別の制度を利用する必要があります。

健康保険と年金は別の制度です。

配偶者は、健康保険の被扶養者と国民年金の第3号被保険者の手続きを同時に行うことが多いため、一つの制度のように見えます。

しかし、健康保険の扶養と第3号被保険者は、法律上はそれぞれ別の制度です。

扶養に残ることだけが得とは限らない

扶養に入っていれば社会保険料の本人負担がないため、目先の手取り額だけを見れば有利に感じます。

ただし、勤務先の社会保険に加入した場合には、健康保険料と厚生年金保険料を負担する一方で、保障内容が広がります。

たとえば、被保険者本人として健康保険に加入すれば、業務外の病気やけがで働けず給与を受けられない場合に傷病手当金を受給できる可能性があります。

出産のため会社を休み給与を受けられない場合には、出産手当金の対象となることもあります。

被扶養者には、原則としてこれらの所得保障はありません。

将来の年金額も考えておく必要があります。

第3号被保険者の期間は老齢基礎年金の対象になりますが、自分で厚生年金に加入した場合のように、報酬に応じた老齢厚生年金が上乗せされるわけではありません。

そのため、扶養から外れて社会保険に加入することを、単純に保険料負担が増えるだけと考えるのは適切ではありません。

現在の手取り、傷病時の保障、出産時の保障、障害年金や遺族年金、将来の年金額まで含めて考える必要があります。

扶養に入るかを考えるときの視点

  • 毎月の社会保険料負担
  • 現在の手取り収入
  • 病気や出産で休んだ場合の所得保障
  • 将来受け取る厚生年金の増加
  • 働く時間やキャリアへの影響

実際によくある相談では、年収を130万円未満に抑えること自体が目的になっているケースがあります。

しかし、時給が上がっている状況で勤務時間を大きく減らすと、世帯全体の収入がかえって少なくなる場合もあります。

扶養制度を理解したうえで、あなたの働き方に合う選択をすることが大切です。

被扶養者になれる家族の範囲

被扶養者になれる家族の範囲

健康保険の被扶養者になれるのは、被保険者と一定の親族関係にある人です。

ただし、親族の種類によって、別居でも認定される人と、同居が必要な人に分かれます。

扶養という言葉から、配偶者や子どもだけを想像する方も多いですが、父母、祖父母、孫、兄弟姉妹なども条件を満たせば被扶養者になれます。

一方で、親族であれば無制限に対象になるわけではなく、原則として三親等内という範囲があります。

別居でも被扶養者になれる家族

協会けんぽの一般的な基準では、次の家族は、被保険者と別居していても被扶養者になる可能性があります。

  • 配偶者
  • 子および孫
  • 兄弟姉妹
  • 父母や祖父母などの直系尊属

配偶者には、法律上の婚姻届を提出している配偶者だけでなく、一定の要件を満たす事実婚の配偶者も含まれます。

事実婚の場合は、単に交際しているだけでは足りず、夫婦として共同生活を営み、社会通念上も婚姻関係と同様の実態があることを確認されます。

子については、実子だけでなく養子も対象になります。

子が進学のため県外で一人暮らしをしている場合でも、親が学費や家賃、生活費を継続して負担していれば、別居のまま被扶養者として認定される可能性があります。

父母や祖父母についても、同居自体は必須ではありません。

ただし、別居している場合は、被保険者からの仕送りによって主として生活していることが必要です。

親に年金収入があり、被保険者からの援助が補助的なものにすぎない場合には、扶養認定が難しくなることがあります。

同居が必要になる家族

伯父、叔母、甥、姪、その配偶者など、配偶者、直系尊属、子、孫、兄弟姉妹以外の三親等内の親族は、原則として被保険者との同居が必要です。

内縁関係にある配偶者の父母や子についても、一定の同居要件があります。

この場合の同居は、住民票の住所だけではなく、実際に同じ住居で生活し、家計を共同にしていることを意味します。

住民票だけを被保険者の住所へ移したものの、実際には別の場所で生活している場合は、同居要件を満たすとはいえません。

親族の区分 別居での認定 主な確認事項
配偶者 可能 収入と生計維持関係
子・孫・兄弟姉妹 可能 収入、別居時の仕送り
父母・祖父母 可能 年金を含む収入、仕送り
その他の三親等内親族 原則不可 同居と生計維持関係

親族関係だけでなく生計維持も必要

実務では、親族であるという事実だけで扶養に入れるわけではありません。

対象となる親族の範囲を満たしたうえで、被保険者がその家族の生活を経済的に支えていることが必要です。

たとえば、別居している母親が十分な年金と不動産収入で生活しており、子どもから毎月少額の仕送りを受けているだけであれば、子どもが主として生計を維持しているとは認められない可能性があります。

反対に、母親の年金が少なく、家賃、食費、医療費などの大部分を子どもが継続して負担している場合は、生計維持関係が認められやすくなります。

形式だけではなく、収入と支出の実態を見るということです。

夫婦のどちらが子を扶養するか

夫婦がともに会社員で健康保険に加入している場合、子どもをどちらの扶養に入れるか迷うことがあります。

原則として、今後1年間の年間収入が多い方の被扶養者として認定します。

夫婦の年間収入の差が大きくなければ、過去の収入だけで機械的に決めるのではなく、今後の昇給、育児休業、退職予定なども含めて判断されることがあります。

夫婦の収入がほぼ同程度であれば、主として生計を維持しているのがどちらかを確認します。

ひとり親家庭で子どもを扶養に入れる手続きは、 母子家庭の社会保険と扶養手続きの解説 でも詳しく確認できます。

健康保険料が安い方を自由に選ぶ制度ではありません。

子どもの扶養先は、原則として夫婦の収入状況と生計維持の実態をもとに決めます。

健康保険組合の給付内容がよい、勤務先の家族手当が高いといった理由だけで自由に選べるとは限りません。

夫婦が別々の健康保険組合へ加入していると、それぞれから収入証明書や標準報酬月額が分かる資料を求められることがあります。

出生時や転職時には扶養先の変更が必要になる場合もあるため、両方の勤務先へ早めに確認してください。

同居や国内居住の条件

被扶養者の認定では、同居の有無だけでなく、日本国内に居住しているかどうかも確認されます。

親族関係と収入基準を満たしていても、同居要件や国内居住要件を満たさなければ、被扶養者として認定されない場合があります。

社会保険でいう同居の意味

ここでいう同居とは、単に住民票上の住所が同じというだけではなく、住居と家計を共同にしている状態を指します。

一般的には、同じ住居で日常生活を送り、食費、光熱費、家賃などを共同で負担している状態です。

住民票上は同じ世帯でも、建物が完全に分かれ、食事や家計も別々であれば、実態確認が必要になることがあります。

反対に、世帯分離をして住民票上の世帯が別になっていても、同じ住居で家計を共同にしていれば、直ちに同居ではないと判断されるわけではありません。

介護施設へ入所した親についても、施設入所をもって必ず別居扱いになるとは限りません。

ただし、親族の種類や施設の性質、生活費の負担状況によって取扱いが異なるため、保険者への確認が必要です。

別居でも認定される場合の仕送り

配偶者、子、父母など、同居を要件としない親族は、進学、単身赴任、施設への入所などによって別居していても、被保険者が生活費を負担していれば認定される可能性があります。

別居している家族を扶養に入れる場合は、原則として 被扶養者の収入が被保険者からの仕送り額より少ないこと が必要です。

つまり、扶養対象者自身の収入よりも、被保険者から受ける援助の方が多くなければならないという考え方です。

たとえば、別居する母親の年金収入が月7万円で、子どもからの仕送りが月8万円であれば、収入額だけを見ると基本的な基準を満たす可能性があります。

一方、母親の年金収入が月10万円で、仕送りが月3万円であれば、子どもが主として生計を維持しているとは認められにくくなります。

仕送りの確認には、銀行振込の利用明細、預金通帳の写し、現金書留の控えなどが用いられます。

毎月または一定の周期で継続して送金していることが分かる資料が望ましいです。

現金の手渡しは証明が難しくなります。

別居する家族への仕送りは、誰から誰へ、いつ、いくら支払ったかが分かる銀行振込などを利用するのが実務上安全です。

認定を申請する直前に一度だけ送金しても、継続的な生計維持関係が認められない可能性があります。

帰省した際に現金を渡しているという相談もありますが、現金の手渡しは客観的な記録が残りません。

扶養認定後の資格確認で仕送り証明を求められたときに困るため、扶養申請を考えている段階から振込へ切り替えることをおすすめします。

国内居住要件の基本

居住地については、原則として日本国内に住所があることが必要です。

基本的には、日本国内に住民票があるかどうかを基準に確認します。

この国内居住要件は、日本の医療保険制度が国内居住者を基礎として運営されていることを踏まえたものです。

以前は海外に長期間居住する家族が被扶養者として認定されるケースもありましたが、現在は原則として国内居住が必要になっています。

ただし、住民票が国内にあれば必ず要件を満たすわけではありません。

海外で長期間生活しており、実質的な生活の本拠が海外にある場合は、国内居住の実態について確認を受ける可能性があります。

海外居住でも例外となるケース

海外留学をしている学生、外国へ赴任する被保険者に同行する家族、観光や保養を目的に一時的に海外へ渡航する人など、日本国内に生活の基礎があると認められる一定のケースでは、国内居住要件の例外になることがあります。

海外留学であれば、査証、学生証、在学証明書、入学許可証などを提出し、留学目的で一時的に海外へ居住していることを証明します。

海外赴任へ同行する家族であれば、被保険者の海外赴任辞令や家族関係を示す資料などを求められることがあります。

海外にいるという事実だけでは判断できません。

留学、海外赴任への同行、一時的な渡航など、海外にいる理由と期間によって取扱いが異なります。

国内居住要件の例外に該当することを示す書類が必要です。

また、医療滞在などを目的として日本へ入国した人や、一定の長期滞在制度を利用して入国した人は、日本国内に住民票があっても被扶養者として認定されない場合があります。

海外に居住する家族を扶養に入れたい場合は、例外に該当する事実を証明する書類が必要です。

外国語で作成された書類には、日本語訳と翻訳者の情報を求められることもあります。

海外居住というだけで一律に認定されるわけではないため、加入している健康保険へ事前に確認してください。

年齢別に異なる収入基準

社会保険の扶養に入れるかを判断する年間収入の基準は、被扶養者になる人の年齢や障害の状態によって異なります。

一般的には130万円の壁が広く知られていますが、すべての人に同じ基準が適用されるわけではありません。

被扶養者になる人 年間収入の基準 月額換算の目安
原則として60歳未満 130万円未満 108,334円未満
配偶者を除く19歳以上23歳未満 150万円未満 125,000円未満
60歳以上 180万円未満 150,000円未満
一定の障害がある人 180万円未満 150,000円未満

表の金額は、一般的な基準を理解するための目安です。

年間収入が基準額と同額の場合ではなく、原則として 基準額未満であること が求められます。

130万円未満は今後1年間の見込みで判断する

通常の130万円基準では、年収130万円ちょうどではなく、130万円未満である必要があります。

月額に換算すると、一般的には108,334円未満が一つの目安です。

ただし、社会保険の扶養は、毎年1月から12月までの確定した収入だけで判断する制度ではありません。

認定を受けようとする時点から、今後1年間にどれくらいの収入が見込まれるかを確認します。

たとえば、4月から月12万円の契約で働き始めた場合、4月から12月までの収入が108万円に収まるとしても、月12万円が今後継続するなら年間換算は144万円です。

そのため、原則として4月の時点から130万円未満の要件を満たしません。

反対に、年の前半に多く働いていた人が退職し、その後の収入がなくなった場合は、その年の累計収入がすでに130万円を超えていても、退職後の今後の収入見込みによって扶養認定を受けられる可能性があります。

暦年の合計だけで判断しないことが重要です。

税金の扶養は1月から12月までの所得を基準にしますが、社会保険の扶養は、原則として認定時点からの今後1年間の収入見込みを確認します。

同居の場合は被保険者の収入との比較も必要

金額の基準を満たすだけでは足りません。

同居している場合は、原則として被扶養者になる人の収入が、被保険者の年間収入の半分未満であることが必要です。

たとえば、扶養対象者の年収見込みが100万円で130万円未満でも、被保険者本人の年収が180万円であれば、扶養対象者の収入は被保険者の半分以上になります。

この場合は、形式的な半分未満という基準を満たしません。

ただし、扶養対象者の収入が被保険者の収入の半分以上であっても、被保険者の年間収入を上回らず、その世帯の生計状況を総合的に見て、被保険者が生計維持の中心であると保険者が認める場合には、認定される可能性があります。

これは自動的に認められる例外ではありません。

家賃、生活費、家族構成、収入の安定性などを含め、個別に判断されます。

別居の場合は仕送り額との比較が必要

別居の場合は、扶養対象者の収入が被保険者からの仕送り額未満であることが基本です。

たとえば、別居している親の年金収入が月8万円で、子からの仕送りが月5万円であれば、仕送り額より親の収入の方が多いため、原則的な基準を満たしません。

親の年収が180万円未満であるというだけでは足りないということです。

一方、親の年金収入が月6万円、子からの仕送りが月8万円であれば、収入と仕送り額の関係では基準を満たす可能性があります。

ただし、ほかに不動産収入や同居家族からの援助がある場合には、それらも含めて生活実態を確認されます。

75歳になると収入にかかわらず扶養から外れる

75歳になると健康保険の扶養から外れます。

75歳以上の人は原則として後期高齢者医療制度の対象になるため、家族の健康保険の被扶養者にはなりません。

収入が少ない場合でも同様です。

被扶養者が75歳になると、誕生日当日から後期高齢者医療制度へ移行します。

通常は自治体から資格確認書などの案内が届きますが、被保険者の勤務先でも扶養削除の確認が必要になることがあります。

一定の障害がある65歳以上75歳未満の人については、申請によって後期高齢者医療制度へ加入している場合があります。

その場合も、後期高齢者医療制度へ加入した時点で健康保険の被扶養者ではなくなります。

2026年4月以降の労働契約による判定

2026年4月1日以降の新たな扶養認定では、給与収入だけがある人について、一定の条件を満たす場合、労働条件通知書や雇用契約書に記載された賃金から年間収入を判定する取扱いが始まっています。

これまでは、直近の給与明細などをもとに残業代を含めて今後の収入を見込むことで、繁忙期の残業が一時的に増えただけでも扶養認定が難しくなることがありました。

新しい取扱いでは、労働契約上の賃金を年間換算して基準未満であれば、原則として収入要件を満たすものとして扱われます。

ここでいう賃金には、基本給だけではなく、労働基準法上の賃金に該当する諸手当や賞与も含まれます。

労働条件通知書に記載された内容を正確に確認することが必要です。

ただし、契約上の賃金だけで一律に判定されるわけではありません。

年金、失業給付、事業収入、不動産収入など給与以外の収入がある場合には、この簡便な取扱いを利用できないことがあります。

また、契約内容と実際の勤務状況が明らかに異なる場合も、追加確認を受ける可能性があります。

制度の詳細は、 日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱い」 をご確認ください。

月額換算額はあくまで一般的な目安です。

給与の支払形態、賞与、各種手当、給与以外の収入、保険者の確認方法によって判断が変わります。

月額だけで自己判断せず、雇用契約全体とほかの収入を確認してください。

扶養判定に含まれる収入

扶養判定に含まれる収入

社会保険の扶養では、所得税の計算でいう所得ではなく、原則として今後継続して受け取ることが見込まれる収入を確認します。

この違いを理解していないと、税金上は非課税だから社会保険でも収入に含まれない、経費として確定申告で差し引いたから扶養判定でも差し引ける、と誤解してしまいます。

給与収入は手取り額ではなく総支給額で考える

給与を受け取っている人の場合は、手取り額ではなく、社会保険料や税金などを差し引く前の総支給額を基本に確認します。

基本給だけではなく、役職手当、資格手当、家族手当、住宅手当などの諸手当や賞与も確認対象です。

非課税の通勤手当も、税法上の取扱いとは異なり、社会保険の扶養判定では収入に含まれるのが一般的です。

給与明細の課税支給額だけを合計すると、通勤手当を見落とすことがあります。

たとえば、基本給が月10万円、通勤手当が月8,000円であれば、年間換算は単純計算で129万6,000円です。

ここに賞与やほかの手当が加われば、130万円以上になる可能性があります。

もっとも、2026年4月以降の新たな扶養認定では、一定の要件を満たす給与所得者について、労働条件通知書などに記載された契約上の賃金を用いる取扱いがあります。

実際の残業代が一時的に増えたからといって、直ちに扶養から外れるとは限りません。

年金や給付金も収入に含まれる

次のような収入は、社会保険の扶養判定に含まれるのが一般的です。

  • 給与や賞与
  • 老齢年金、障害年金、遺族年金
  • 雇用保険の基本手当
  • 健康保険の傷病手当金
  • 健康保険の出産手当金
  • 継続的な事業収入や不動産収入
  • 継続的に受け取る企業年金や個人年金

特に注意したいのが、遺族年金や障害年金です。

これらは所得税がかからない非課税所得ですが、社会保険の被扶養者認定では原則として収入に含まれます。

たとえば、60歳以上の親が老齢年金を年120万円、遺族年金を年40万円、パート給与を年30万円受け取る見込みであれば、合計は190万円です。

各収入を別々に見るのではなく、継続的に受け取る収入を合算して180万円未満かを確認します。

傷病手当金や出産手当金も、給与そのものではありませんが、継続的な生活保障として支給されるため、一般的には収入へ含めます。

退職後に傷病手当金を継続受給している人が配偶者の扶養へ入ろうとする場合は、支給日額を確認する必要があります。

税金がかかるかどうかでは判断しません。

社会保険の扶養では、非課税の収入であっても継続的に受け取るものは収入に含まれることがあります。

給与明細だけを見て判断せず、年金や各種給付も合算して確認してください。

一時的な収入は通常含まれない

退職金を一時金で受け取った場合、相続、贈与、宝くじの当選金、生命保険の一時金など、継続性のない一時的な収入は、通常は年間収入に含めません。

ただし、生命保険金でも年金形式で継続的に受け取る場合や、退職金を年金形式で受け取る場合は、継続収入として確認対象になる可能性があります。

名称だけではなく、どのような方法で、どのくらいの期間受け取るのかを見る必要があります。

また、株式の売却益などについても、単発の資産売却なのか、反復継続して取引を行っているのかによって確認方法が異なる場合があります。

投資収入の取扱いは健康保険組合独自の基準が設けられていることもあるため、加入先へ確認してください。

自営業者は税務上の所得と一致しないことがある

自営業者については、売上の全額ではなく、売上から事業を行うために直接必要な経費を差し引いた金額で判断されるのが一般的です。

ただし、健康保険上認められる必要経費の範囲は、税務上の必要経費と必ずしも一致しません。

税務上は経費として認められていても、扶養判定上は事業を行うために直接必要な経費ではないとして、差し引けない場合があります。

たとえば、減価償却費、青色申告特別控除、接待交際費、広告宣伝費、租税公課などについて、どこまで控除できるかは保険者によって異なることがあります。

確定申告書の所得金額が130万円未満だからといって、自動的に扶養へ入れるわけではありません。

実務では、確定申告書だけでなく、収支内訳書や青色申告決算書の各経費項目まで確認されることがあります。

健康保険組合によっては、扶養判定上控除できる経費の一覧を独自に定めています。

事業の赤字と給与収入を自由に相殺できるとは限りません。

自営業の赤字があるから給与収入を差し引いて130万円未満になる、という考え方が認められるとは限りません。

収入の種類ごとに確認されるため、保険者の基準に従う必要があります。

個人事業主の扶養認定は、健康保険組合ごとに必要書類や経費の取扱いが異なる場合があります。

確定申告書、収支内訳書、帳簿、売上の推移が分かる資料などを準備したうえで、加入している健康保険へ確認することが重要です。

106万円と130万円の壁

106万円の壁と130万円の壁は、どちらも社会保険に関係する言葉ですが、判定している制度が異なります。

ここを混同すると、勤務時間を減らして年収を130万円未満にしたのに社会保険へ加入することになった、106万円を超えていないから扶養に入れると思っていた、といった行き違いが生じます。

106万円の壁 は、主に短時間労働者が自分の勤務先の健康保険と厚生年金保険に加入するかを判断する基準です。

130万円の壁 は、家族の健康保険の被扶養者として認定されるかを判断する基本的な収入基準です。

項目 106万円の壁 130万円の壁
判断する内容 勤務先の社会保険への加入 家族の健康保険の扶養
主な基準 労働時間、賃金、企業規模など 今後の年間収入と生計維持関係
基準を超えた場合 勤務先の社会保険に加入 被扶養者から外れる
本人の選択 加入要件を満たせば原則選べない 要件を満たす範囲で申請する

勤務先の社会保険加入を先に確認する

パートやアルバイトで働く人が家族の扶養に入れるかを判断するときは、最初に勤務先で社会保険の加入対象になるかを確認します。

通常の労働者の週所定労働時間と月所定労働日数の両方が4分の3以上であれば、会社の規模や年収にかかわらず、原則として勤務先の社会保険へ加入します。

これがいわゆる4分の3基準です。

4分の3基準を満たさない短時間労働者でも、勤務先の企業規模などに応じて、次の要件をすべて満たすと社会保険へ加入します。

  • 勤務先が原則として厚生年金の被保険者数51人以上の企業である
  • 週の所定労働時間が20時間以上である
  • 所定内賃金が月額8万8,000円以上である
  • 2か月を超えて雇用される見込みがある
  • 学生ではない

これらの要件を満たす人は、年収が130万円未満でも勤務先の社会保険に加入します。

家族の扶養に残るか、勤務先の社会保険に入るかを本人が自由に選べるわけではありません。

たとえば、年収見込みが120万円であっても、週20時間以上、月額8万8,000円以上などの要件を満たせば、勤務先で健康保険と厚生年金へ加入します。

130万円未満だから扶養に入れるという判断にはなりません。

社会保険の加入条件を詳しく確認したい方は、 社会保険への加入条件と週20時間基準の解説 も参考にしてください。

106万円は実際の年収だけを見る基準ではない

106万円は単純な年収判定ではありません。

月額8万8,000円の判定では、残業代、賞与、通勤手当などを含めない所定内賃金を用います。

一方、130万円の扶養判定では、原則として各種手当や継続的な給付も含めた今後の収入見込みを確認します。

106万円という数字は、月額8万8,000円を年換算したおおよその金額です。

実際に1月から12月までの給与を合計して106万円を超えた瞬間に加入する制度ではありません。

月額8万8,000円以上かどうかは、基本給や諸手当のうち所定内賃金に含まれるものを確認します。

原則として、時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金、賞与、通勤手当、家族手当、精皆勤手当などは、この賃金要件の判定から除外されます。

ただし、実際に支払われた賃金が2か月連続で月額8万8,000円以上となり、その状態が今後も続くと見込まれる場合には、実績をもとに加入対象となることがあります。

130万円の壁は扶養認定の基準

勤務先の社会保険加入対象ではない人について、家族の健康保険の被扶養者になれるかを判断する際に、130万円未満という基準を使用します。

130万円の判定では、給与の所定内賃金だけでなく、通勤手当、残業代、賞与、年金、失業給付、傷病手当金など、継続的な収入を幅広く確認するのが基本です。

つまり、106万円の壁では対象外となる通勤手当や残業代も、130万円の扶養判定では収入に含まれることがあります。

同じ社会保険の話でも、確認する賃金の範囲が異なります。

106万円の壁に関する今後の改正

2025年に成立した年金制度改正法により、106万円の壁と呼ばれる月額8万8,000円以上の賃金要件は、今後撤廃されることが決まっています。

ただし、撤廃時期は一律に2026年10月と確定しているわけではありません。

法律の公布から3年以内に、全国の最低賃金が一定水準以上となる状況を見極めて撤廃される仕組みです。

また、賃金要件が撤廃されても、週の所定労働時間20時間以上という要件がなくなるわけではありません。

学生ではないことや、2か月を超えて雇用される見込みがあることなどの要件も引き続き確認します。

企業規模要件については、現在の51人以上から段階的に縮小され、最終的に撤廃される予定です。

今後は、小規模な会社で働く短時間労働者にも社会保険の適用が広がっていきます。

106万円の壁は金額が引き上げられるのではなく、月額8万8,000円という賃金要件そのものが撤廃されます。

施行前から要件がなくなったと誤解せず、実際の施行時期と勤務先の企業規模を確認してください。

改正内容と適用拡大の予定は、 厚生労働省「年金社会保険の加入対象の拡大について」 で確認できます。

一時的に130万円を超えた場合の取扱い

人手不足による残業や繁忙期の勤務増加など、収入増加が一時的である場合には、事業主がその事実を証明することで、引き続き被扶養者として認定されることがあります。

たとえば、通常は年収120万円程度で働いている人が、同僚の退職や育児休業による一時的な人手不足で残業し、その年だけ収入が130万円を超えた場合などが想定されます。

この取扱いを利用する場合は、扶養対象者が勤務する事業主から、一時的な収入変動であることの証明を受け、被保険者の勤務先を通じて保険者へ提出します。

恒常的な賃上げには利用できません。

基本給の引上げ、恒常的な所定労働時間の増加、雇用契約の変更などにより、今後も継続して130万円以上になることが明らかな場合は、一時的な収入増加とはいえません。

また、事業主の証明を提出すれば必ず認定されるわけではなく、最終的な判断は加入している健康保険が行います。

収入超過の原因、雇用契約、過去の収入状況などから、一時的な変動とは認められない場合もあります。

社会保険の扶養手続きと注意点

年収基準を理解した後は、どの時点で扶養に入り、どの時点で外れるのかを確認します。

社会保険の扶養は、年末に一度だけ判定する制度ではありません。

就職、退職、賃金変更、失業給付の受給開始など、状況が変わった時点で届出が必要です。

企業の担当者は、従業員から申出を受けたら、被扶養者異動届と添付書類を確認します。

扶養に入る家族本人も、収入や給付の変化を被保険者の勤務先へ速やかに伝えることが重要です。

被扶養者の資格は、保険者が認定した日から発生します。

申請が遅れた場合、必ず希望日に遡って認定されるとは限りません。

扶養に入る事実が生じたら、必要書類がすべて揃うのを待つ前に、まず勤務先へ相談することをおすすめします。

150万円と180万円の壁

被扶養者の年間収入基準は原則として130万円未満ですが、一定の年齢に該当する人には150万円または180万円の基準が適用されます。

誰にどの基準が適用されるかを確認せず、すべて130万円未満として扱うと、必要以上に勤務時間を抑えてしまうことがあります。

19歳以上23歳未満は150万円未満

2025年10月1日以降、被保険者の配偶者を除く19歳以上23歳未満の家族については、年間収入の基準が130万円未満から 150万円未満 に引き上げられています。

主に大学生年代の子どもの就業調整を緩和するための見直しですが、学生であること自体は要件ではありません。

年齢と親族関係などの条件を満たせば、学生ではない子、孫、兄弟姉妹なども対象になり得ます。

たとえば、20歳の子どもが大学へ通いながらアルバイトをしている場合だけでなく、20歳の子どもが就職せずにパートで働いている場合も、勤務先の社会保険加入対象でなければ150万円未満の基準が適用される可能性があります。

ただし、本人が勤務先の社会保険へ加入する要件を満たしている場合は、年収が150万円未満であっても扶養には入れません。

150万円という基準は、勤務先の加入判定を行った後に確認する被扶養者の収入基準です。

年齢は12月31日時点で判定する

年齢は、扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定します。

19歳の誕生日を迎える年から22歳の誕生日を迎える年までが、基本的な対象期間です。

たとえば、2026年11月に19歳になる人は、2026年12月31日時点では19歳であるため、2026年中の年間収入要件は150万円未満になります。

一方、2026年に23歳になる人は、2026年12月31日時点で23歳となるため、その年は原則として130万円未満の基準へ戻ります。

年齢は民法上、誕生日の前日に加算されます。

そのため、1月1日生まれの人などは判定に注意が必要です。

配偶者は150万円基準の対象外です。

配偶者が19歳以上23歳未満であっても、健康保険の被扶養者認定では原則として130万円未満の基準を用います。

税法上の配偶者特別控除に関する150万円基準と混同しないよう注意してください。

150万円未満でも生計維持要件は必要

19歳以上23歳未満で年収150万円未満であれば、無条件で扶養に入れるわけではありません。

同居の場合は、原則として被保険者の年間収入の半分未満であること、別居の場合は仕送り額未満であることなど、通常の生計維持要件も確認します。

また、給与以外に遺族年金、事業収入、不動産収入などがあれば、それらも合算します。

アルバイト給与が年140万円であっても、ほかに継続的な収入が年20万円あれば、合計160万円となるため基準を超えます。

学生の子どもが複数のアルバイト先で働いている場合は、すべての勤務先の収入を合算します。

一つの勤務先だけで150万円未満かを確認するのではありません。

60歳以上などは180万円未満

60歳以上の人、またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害がある人は、年間収入 180万円未満 が基準になります。

月額に換算すると、おおむね15万円未満が目安です。

60歳以上の親を扶養に入れる場合は、給与収入だけではなく、老齢年金、遺族年金、企業年金、パート収入などを合算します。

年金を受け取りながらパートで働く65歳以上の方の扶養条件は、 65歳以上が年金もらいながらパートで扶養に入る条件の解説 で詳しく整理しています。

年金は税金がかからないものでも、扶養判定上は収入に含まれることがあります。

たとえば、年金が月10万円、パート収入が月4万円であれば、単純な年換算では168万円になります。

一方、パート収入が月6万円であれば、年金との合計は192万円となるため、原則的な180万円基準を超えます。

賞与を受け取る場合や、年金額が改定される場合もあるため、毎月の金額だけでなく年間の見込み額を確認してください。

年金収入 給与収入 年間収入の合計 180万円基準
年120万円 年48万円 年168万円 金額上は基準未満
年120万円 年72万円 年192万円 基準以上
年150万円 年24万円 年174万円 金額上は基準未満

別居する親は仕送り額にも注意する

60歳以上の親の年間収入が180万円未満でも、親と別居している場合は、原則として親の収入が子どもからの仕送り額未満であることが必要です。

たとえば、親の年金収入が年120万円、子どもからの仕送りが年60万円であれば、親自身の収入の方が多いため、原則的な別居要件を満たしません。

この点は、180万円未満だから扶養に入れると誤解されやすいところです。

年収基準と生計維持基準は別々に確認します。

また、親が配偶者と同居しており、その配偶者にも十分な収入がある場合は、誰が主として生計を維持しているかを確認されることがあります。

親だけの年収を見れば判断できるとは限りません。

これは一般的な計算例であり、実際の認定では今後の収入見込みや生計維持関係も確認されます。

65歳以上の具体的な考え方は、 65歳以上が年金を受けながら扶養に入る条件 で詳しく解説しています。

扶養から外れる主なケース

扶養から外れる主なケース

社会保険の扶養から外れるのは、年間収入が基準額を超えたときだけではありません。

本人が勤務先の社会保険に加入した場合や、親族関係、生計維持関係に変化があった場合にも資格を失います。

主なケースは次のとおりです。

  • 今後の年間収入が130万円などの基準以上になると見込まれた
  • 勤務先の健康保険と厚生年金保険に加入した
  • 就職や雇用契約の変更により恒常的に収入が増えた
  • 雇用保険の基本手当の受給を開始した
  • 離婚により配偶者ではなくなった
  • 別居により同居要件または生計維持要件を満たさなくなった
  • 死亡した
  • 75歳になり後期高齢者医療制度へ移行した

収入基準を継続的に超える見込みになった場合

扶養から外れる時期は、年間の給与総額が確定した年末とは限りません。

今後継続して基準額以上の収入を受けることが明らかになった時点で、被扶養者の要件を満たさなくなるのが基本です。

たとえば、雇用契約を変更して月給12万円で継続して働くことになった場合、実際の年収が130万円に到達するまで待つのではなく、契約変更により収入見込みが基準以上となった時点から扶養を外すことになります。

時給が上がった場合や、週の契約時間を増やした場合も同様です。

過去の累計収入が少なくても、変更後の契約を年間換算して基準以上になるのであれば、扶養資格を見直します。

130万円を超えた日を探す制度ではありません。

社会保険の扶養は、過去の年収だけではなく、認定時点以降の継続的な収入見込みで判断します。

雇用契約や勤務条件が変わった場合は、年間累計額だけで判断しないことが重要です。

勤務先の社会保険へ加入した場合

扶養対象者が自分の勤務先で健康保険と厚生年金保険へ加入した場合は、その加入日から家族の健康保険の扶養を外れます。

この場合は、年収が130万円未満かどうかにかかわらず、勤務先の社会保険が優先されます。

複数の健康保険へ同時に加入することはできません。

勤務先で社会保険資格を取得したにもかかわらず、家族の扶養削除が行われていないと、資格が重複している状態になります。

勤務先から資格取得の連絡を受けたら、被保険者の勤務先へもすぐに申し出てください。

失業手当を受給する場合

失業手当を受ける場合も注意が必要です。

雇用保険の基本手当は扶養判定上の収入に含まれ、原則として基本手当日額が次の金額以上になると、その受給期間中は扶養から外れます。

年間収入基準 基本手当日額の一般的な目安
130万円未満 3,612円未満
150万円未満 4,167円未満
180万円未満 5,000円未満

たとえば、130万円基準の人が基本手当日額3,612円以上を受給する場合は、実際の受給総額が130万円未満でも、受給開始時から扶養を外れるのが一般的です。

日額3,612円に360日を掛けると130万円以上になるため、実際に何日分を受給するかではなく、日額を年間換算して判断する考え方です。

自己都合退職などによる待期期間や給付制限期間は、基本手当が支給されていません。

その期間は、ほかの条件を満たせば一時的に扶養へ入れる可能性があります。

その後、基本手当の受給開始時に削除手続きが必要です。

基本手当の受給終了後、ほかの収入が基準未満であれば、再び扶養へ入る手続きを行える可能性があります。

自動的に扶養へ戻るわけではないため、受給終了を確認できる雇用保険受給資格者証などを準備して申請します。

離婚や生計維持関係の変化

配偶者を扶養に入れている場合、離婚が成立すれば、原則として離婚日から被扶養者ではなくなります。

事実婚関係が解消された場合も同様です。

親族の種類によって同居が必要なケースでは、別居を始めたことで同居要件を満たさなくなり、扶養から外れることがあります。

配偶者、子、父母など同居が必須ではない親族であっても、仕送りを停止した、扶養対象者の収入が増えた、ほかの家族が生活費の大部分を負担するようになったなど、生計維持関係が変化した場合は資格を見直します。

75歳到達や死亡の場合

被扶養者が75歳になると、誕生日当日から後期高齢者医療制度へ移行するため、家族の健康保険の扶養を外れます。

被扶養者が死亡した場合は、死亡日の翌日が扶養削除日となるのが一般的です。

死亡後も健康保険証や資格確認書が手元にある場合は、被保険者の勤務先へ返却します。

扶養から外れた後の保険切替え

扶養から外れた後は、勤務先の社会保険に加入するか、国民健康保険と国民年金への切替えが必要です。

勤務先の社会保険へ加入しない場合は、扶養を外れた日から原則として14日以内に、市区町村で国民健康保険の加入手続きを行います。

20歳以上60歳未満で厚生年金へ加入しない人は、国民年金第1号被保険者への切替えも必要です。

手続きをしないままにしても、保険料負担がなくなるわけではありません。

後から国民健康保険料や国民年金保険料を遡って請求される可能性があります。

任意継続や国民健康保険との保険料比較は、 社会保険継続と国民健康保険どっちが得かの解説 で詳しく整理しています。

扶養資格の削除が遅れると医療費返還の可能性があります。

本来は扶養から外れている期間に家族の健康保険を使った場合、健康保険が負担した医療費の返還を求められることがあります。

その後、新たに加入した保険へ療養費を請求できる場合もありますが、一時的に大きな金額を立て替えることになります。

被扶養者異動届の提出方法

家族を健康保険の扶養に入れる場合や、扶養から外す場合は、原則として被保険者の勤務先を通じて 健康保険被扶養者(異動)届 を提出します。

従業員本人が家族の状況を会社へ申告し、会社が届出内容と必要書類を確認したうえで、日本年金機構や健康保険組合へ提出する流れです。

配偶者は第3号被保険者の届出も行う

配偶者が20歳以上60歳未満で、国民年金の第3号被保険者になる場合は、健康保険被扶養者(異動)届と国民年金第3号被保険者関係届を兼ねた様式を使用します。

健康保険の扶養へ追加するだけで、国民年金の第3号被保険者へ必ず自動的に切り替わるとは考えない方が安全です。

届書上で第3号被保険者の該当日や基礎年金番号などを正確に記載します。

配偶者が60歳以上であれば、健康保険の被扶養者にはなれる可能性がありますが、第3号被保険者にはなりません。

第3号被保険者は原則として20歳以上60歳未満が対象だからです。

扶養へ入る手続きの流れ

一般的な手続きの流れは次のとおりです。

  1. 被保険者が勤務先へ扶養の追加または削除を申し出る
  2. 勤務先が親族関係、収入、生計維持関係を確認する
  3. 被扶養者異動届と必要な添付書類を作成する
  4. 勤務先から年金事務所または事務センターへ提出する
  5. 認定後に資格情報のお知らせや資格確認書などを受け取る

会社へ申し出る際は、扶養へ入る理由と発生日を明確にします。

結婚であれば婚姻日、退職であれば退職日の翌日、出生であれば出生日などが基準になります。

退職した配偶者を扶養へ入れる場合は、前職の健康保険資格を喪失する退職日の翌日から認定を申請するのが一般的です。

ただし、退職後も任意継続被保険者となる場合や、失業手当を受給する場合は取扱いが変わります。

届出期限は原則5日以内

届出期限は、原則として扶養の事実が発生してから 5日以内 です。

実際には退職証明書や戸籍謄本などの準備に時間がかかることもありますが、従業員は事実が発生した段階で勤務先へ速やかに申告してください。

必要書類が揃うまで何も連絡せず、数か月後に申請すると、希望する日まで遡って認定されない可能性があります。

書類の準備に時間がかかる場合は、何を後から提出できるかを会社や保険者へ確認します。

会社側も、従業員から申出を受けた日、扶養事由が発生した日、必要書類の依頼日などを記録しておくと、遅延の原因を確認しやすくなります。

提出方法は電子申請・郵送・窓口

協会けんぽに加入する事業所の場合は、年金事務所または事務センターへ提出します。

提出方法には、電子申請、郵送、窓口への持参などがあります。

企業では電子申請を利用するケースが増えています。

電子申請では郵送時間を短縮でき、手続き状況や公文書を電子的に管理しやすい利点があります。

健康保険組合へ加入している事業所では、年金事務所への届出に加えて、健康保険組合独自の扶養申請書や添付書類を提出することがあります。

提出先や様式は勤務先へ確認してください。

税金の扶養申告だけでは手続きは完了しません。

年末調整の扶養控除等申告書へ家族を記載しても、健康保険の被扶養者が自動的に追加されるわけではありません。

反対に、健康保険の扶養から削除しても、給与計算上の税区分が自動で変更されるわけではないため、それぞれ別に届け出ます。

扶養から外す場合も同じ届書を使用する

扶養から外す場合も同じ被扶養者異動届を使用し、削除日と削除理由を記載します。

削除理由には、就職、収入増加、離婚、死亡、後期高齢者医療制度への移行などがあります。

削除日は理由によって異なるため、事実が発生した日を確認して記載します。

健康保険証が交付されている場合は健康保険証を、資格確認書が交付されている場合は資格確認書を勤務先へ返却します。

2024年12月以降、従来の健康保険証は新規発行されていませんが、有効期間内の健康保険証が残っている場合は返却が必要です。

マイナ保険証を利用している場合でも、資格喪失の手続き自体が不要になるわけではありません。

マイナンバーカードそのものを会社へ返却する必要はありませんが、会社が扶養削除の届出を行う必要があります。

届出が遅れた場合のリスク

届出が遅れると、扶養資格が遡って取り消されることがあります。

資格喪失日以降に被扶養者として健康保険を利用していた場合は、健康保険が負担した医療費の返還を求められる可能性があります。

たとえば、病院の窓口で3割を支払い、残り7割を健康保険が負担していた場合、その7割相当額の返還請求を受けることがあります。

高額な入院や手術を受けていれば、返還額も大きくなります。

新しい健康保険へ遡って加入できる場合は、その保険へ療養費を請求できる可能性がありますが、請求期限や必要書類があります。

いったん旧保険者へ返還してから新保険者へ請求するため、手続きも資金負担も大きくなります。

状況が変わったら会社へ伝える事項

  • 就職または退職した日
  • 雇用契約や勤務時間を変更した日
  • 失業手当の受給を開始または終了した日
  • 年金額や継続的な収入が変わった日
  • 離婚、別居、死亡など家族関係が変わった日

扶養手続きに必要な書類

被扶養者異動届に添付する書類は、扶養に入る理由、家族関係、収入の種類、同居または別居の状況によって異なります。

全員が同じ書類を提出するわけではありません。

実務では、続柄を確認する書類、収入を確認する書類、生計維持関係を確認する書類の3つに分けて考えると整理しやすいです。

続柄を確認する書類

最初に確認するのは、被保険者と被扶養者になる人の続柄です。

一般的には、戸籍謄本、戸籍抄本、世帯全員の住民票などを使用します。

住民票を提出する場合は、提出日から90日以内に発行されたものを求められるのが一般的です。

個人番号の記載がない住民票を用意します。

被保険者と扶養対象者のマイナンバーが届書に記載され、事業主が続柄を確認した旨を記載できる場合などは、続柄確認書類を省略できることがあります。

ただし、別居している家族、内縁関係、外国籍の家族などは、マイナンバーだけでは関係を確認できず、別途書類を求められることがあります。

収入を確認する書類

収入確認書類は、扶養対象者の現在の状況に応じて準備します。

扶養対象者の状況 主な確認書類
会社を退職した 退職証明書、離職票の写しなど
雇用保険を受給する 雇用保険受給資格者証など
給与収入がある 雇用契約書、給与明細、収入証明書など
年金を受給している 年金額改定通知書、年金振込通知書など
自営業をしている 確定申告書、収支内訳書など
収入がない 非課税証明書、退職証明書など
被保険者と別居している 振込明細書、通帳の写しなど

給与収入がある人は、労働条件通知書、雇用契約書、直近の給与明細、事業主の収入証明書などを提出します。

契約上の賃金だけでなく、賞与や手当がある場合は、それらも分かる資料が必要です。

年金受給者は、老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金を含めた年金額が分かる資料を用意します。

複数の年金を受けている場合は、すべての通知書を提出します。

自営業者は、直近の確定申告書、青色申告決算書または収支内訳書などを提出します。

保険者によっては、経費の内訳、売上台帳、廃業届などの追加資料を求めることがあります。

退職後に扶養へ入る場合

退職後に扶養へ入る場合は、退職日が確認できる書類が必要です。

離職票、雇用保険被保険者資格喪失確認通知書、退職証明書などが利用されます。

離職票は会社が手続きをした後に発行されるため、手元へ届くまで時間がかかる場合があります。

早く扶養手続きを進めたいときは、会社が発行する退職証明書を利用できるか勤務先へ確認してください。

また、退職後に失業手当を受給する予定があるかも確認します。

基本手当日額が扶養基準を超える場合、待期期間や給付制限期間だけ一時的に扶養へ入り、受給開始時に扶養から外れる手続きが必要になることがあります。

別居の場合は仕送り証明が必要

別居している家族については、仕送りの事実と金額が分かる書類を求められます。

一般的には、銀行の振込明細書、インターネットバンキングの取引履歴、預金通帳の写し、現金書留の控えなどです。

仕送りは継続性が重要です。

申請直前の1回だけではなく、毎月または一定の周期で生活費を負担していることが分かる資料を準備します。

学生で下宿している子、単身赴任によって一時的に別居している配偶者などは、仕送り証明の提出を省略できる場合があります。

ただし、保険者によって確認方法が異なるため、会社の担当者へ確認してください。

家族名義の口座へ振り込んでください。

扶養対象者と同居する別の家族の口座へ送金している場合、扶養対象者本人への仕送りと認められるか追加確認が必要になることがあります。

内縁関係の場合

内縁関係の配偶者を扶養に入れる場合は、双方に法律上の配偶者がいないことや、夫婦として共同生活をしている実態を確認します。

一般的には、双方の戸籍謄本、世帯全員の住民票、家計を共同にしていることが分かる資料などを提出します。

住民票上の続柄が夫未届または妻未届となっているかを確認されることもあります。

単に同居しているだけではなく、社会通念上、夫婦としての共同生活が認められることが必要です。

事情によって追加資料や申立書を求められることがあります。

健康保険組合では独自書類を求めることがあります。

協会けんぽと健康保険組合では、認定基準の基本部分は共通していても、収入の確認方法や必要書類が異なる場合があります。

勤務先が健康保険組合に加入している場合は、その健康保険組合の様式と案内を確認してください。

書類を準備するときの実務上の注意

必要書類に不足があると、認定日が希望日より遅れたり、追加資料の提出が必要になったりします。

退職、結婚、出生など、扶養へ入る予定が分かっている場合は、事前に勤務先の担当者へ書類を確認しておくと手続きがスムーズです。

提出書類の有効期限にも注意してください。

住民票や戸籍謄本は、発行から一定期間以内のものを求められることがあります。

コピーを提出する書類と原本が必要な書類も確認します。

マイナンバーが記載された書類をメールへ添付するなど、不適切な方法で会社へ送らないよう、勤務先が指定する安全な提出方法を利用してください。

事前に整理しておくとよい情報

  • 扶養へ入る理由と発生日
  • 被保険者との続柄
  • 同居または別居の状況
  • 給与、年金、給付金などすべての収入
  • 別居の場合の仕送り額と送金方法
  • 失業手当の申請予定と基本手当日額

税金の扶養との違い

税金の扶養との違い

社会保険上の扶養と税法上の扶養は、名前が似ていますが、目的、収入の判定方法、対象者、手続き先が異なる制度です。

実際によくある相談では、年末調整で扶養として申告したから健康保険にも入っていると思っていた、健康保険の扶養から外れたから配偶者控除も受けられないと思っていた、という誤解があります。

項目 社会保険上の扶養 税法上の扶養
主な制度 健康保険、国民年金第3号 所得税、住民税
判定時期 認定時点からの今後の収入見込み その年の1月から12月までの所得
主な収入の考え方 給与、年金、失業給付などを確認 税法上の合計所得金額で確認
主な手続き 被扶養者異動届 年末調整または確定申告
手続き先 勤務先を通じて年金事務所など 勤務先または税務署

社会保険は今後の収入見込みで判断する

社会保険の扶養では、認定時点から今後1年間にどの程度の収入が継続して見込まれるかを確認します。

年の途中で就職、退職、賃金変更があれば、その時点から扶養へ入ったり、外れたりします。

たとえば、1月から6月までに100万円の給与収入があった人が6月末に退職し、その後の収入がなくなった場合、年間累計がすでに100万円あるから扶養へ入れないとは限りません。

退職後の今後の収入見込みが基準未満であれば、7月から扶養へ入れる可能性があります。

反対に、10月から月15万円の給与で働き始めた場合、その年の給与総額が45万円であっても、今後1年間の収入見込みは180万円です。

年内の収入が少ないから扶養に残れるという判断にはなりません。

税法上の扶養は1月から12月の所得で判断する

税法上の扶養は、原則として1月1日から12月31日までの合計所得金額をもとに判断します。

年末調整では、その年の所得見込みを申告し、最終的に差があれば確定申告などで精算します。

税法では、給与収入そのものではなく、給与収入から給与所得控除を差し引いた給与所得などを用います。

そのため、税法上の収入基準と社会保険の130万円基準を、そのまま比較することはできません。

また、税法上の扶養には、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除など複数の制度があります。

配偶者と子どもでは適用される控除が異なります。

収入へ含める範囲が異なる

収入に含まれる範囲も異なります。

たとえば、雇用保険の基本手当、遺族年金、障害年金は、税法上は非課税となるため、通常は合計所得金額に含めません。

一方、社会保険の扶養判定では、これらを継続的な収入として原則的に含めます。

そのため、給与所得がなく税金上は扶養の対象でも、遺族年金などの金額によって社会保険上は扶養に入れないことがあります。

通勤手当についても、一定額まで所得税が非課税となりますが、社会保険の扶養判定では収入に含まれるのが一般的です。

そのため、 税金上は扶養の対象でも、社会保険上は扶養に入れない というケースがあります。

反対に、社会保険上は扶養の範囲内でも、税法上の控除額が減少することもあります。

手続きはそれぞれ別に必要

社会保険の扶養へ入る場合は、被保険者の勤務先を通じて被扶養者異動届を提出します。

配偶者が第3号被保険者になる場合は、国民年金第3号被保険者関係届も行います。

税法上の扶養については、給与所得者であれば扶養控除等申告書や配偶者控除等申告書などを勤務先へ提出し、年末調整で反映します。

必要に応じて確定申告を行います。

扶養は一つの手続きではありません。

健康保険の被扶養者、国民年金の第3号被保険者、所得税の配偶者控除や扶養控除は、それぞれ別に確認します。

勤務先へ扶養の申告をするときは、どの制度について申告しているのかを明確にしてください。

健康保険の扶養へ入れたからといって、給与計算上の扶養人数へ自動的に反映されるわけではありません。

反対に、年末調整で配偶者控除を申告しても、健康保険の資格は変わりません。

会社の家族手当も別制度

さらに、会社が支給する家族手当や扶養手当も、社会保険や税金とは別の制度です。

支給条件は就業規則や賃金規程で会社ごとに定められています。

健康保険の扶養に入っていることを家族手当の条件にする会社もあれば、税法上の扶養を条件にする会社、年収額を独自に定める会社もあります。

そのため、社会保険の扶養から外れた場合に家族手当も停止されるとは限りません。

反対に、社会保険上は扶養に入っていても、会社の手当基準を超えれば家族手当が支給されないことがあります。

制度 判断する主体 主な確認先
健康保険の扶養 協会けんぽ・健康保険組合 勤務先、加入する保険者
国民年金第3号 日本年金機構 勤務先、年金事務所
税法上の扶養 税務署・市区町村 勤務先、国税庁、税理士
会社の家族手当 勤務先 就業規則、賃金規程

産休中のように、税金と社会保険で結論が分かれやすいケースについては、 産休中の税金と社会保険の扶養の違い も参考にしてください。

税制上の所得基準は法改正によって変更されることがあります。

給与収入と所得金額の違いもあるため、最新の基準は国税庁などの公式情報を確認してください。

社会保険の扶養を正しく判断

社会保険の扶養を判断するときは、130万円という金額だけを見ないことが重要です。

最終的な結論へ至るまでには、勤務先の加入要件、親族関係、居住地、生計維持関係、収入の種類、年齢などを順番に確認します。

最初に勤務先の社会保険加入条件を確認する

まず、扶養に入りたい本人が勤務先の社会保険に加入する対象かを確認します。

通常の労働者の週所定労働時間と月所定労働日数の4分の3以上であれば、原則として勤務先で社会保険へ加入します。

4分の3未満でも、企業規模、週20時間以上、月額賃金など、短時間労働者の加入要件を満たす場合は加入対象です。

勤務先の加入対象であれば、年収が130万円未満でも家族の健康保険の扶養には入れません。

本人が扶養へ残ることを希望していても、加入義務があれば選択できません。

次に親族・居住・生計維持を確認する

勤務先で社会保険の加入対象にならない場合は、被扶養者になれる親族か、同居が必要か、日本国内に居住しているかを確認します。

配偶者、子、孫、兄弟姉妹、父母、祖父母などは別居でも対象になり得ますが、それ以外の三親等内親族は原則として同居が必要です。

別居している場合は、扶養対象者の収入と仕送り額を比較し、被保険者が主として生活を支えているかを確認します。

単に毎月少額を送金しているだけでは、生計維持関係が認められない可能性があります。

年齢に応じた収入基準を確認する

一般的な収入基準は130万円未満ですが、配偶者を除く19歳以上23歳未満は150万円未満、60歳以上または一定の障害がある人は180万円未満が目安です。

給与だけでなく、年金、失業給付、傷病手当金、出産手当金、事業収入、不動産収入なども含めて確認します。

同居の場合は被保険者の年収との比較、別居の場合は仕送り額との比較も必要です。

収入基準未満というだけで、自動的に扶養認定されるわけではありません。

社会保険の扶養を確認するポイント

  • 勤務先の社会保険加入条件を先に確認する
  • 収入は過去の実績だけでなく今後の見込みで考える
  • 給与以外の年金や各種給付も確認する
  • 状況が変わったら速やかに勤務先へ申告する
  • 税金上の扶養とは別に手続きする

具体例で確認する

ケース 主な確認事項 一般的な考え方
配偶者が年収120万円でパート勤務 勤務先の加入要件 加入要件を満たせば扶養不可
20歳の子が年収140万円 勤務先加入、150万円基準 ほかの要件を満たせば扶養の可能性
65歳の親が年金160万円 180万円基準、生計維持 ほかの要件を満たせば扶養の可能性
別居の親が年金100万円、仕送り60万円 仕送り額との比較 原則的な別居基準を満たしにくい
失業手当日額4,000円を受給 日額基準 130万円基準では受給中は扶養不可の可能性

たとえば、配偶者の年収見込みが120万円であっても、週20時間以上など勤務先の加入要件を満たせば、自分の勤務先で社会保険へ加入します。

20歳の子どもが年収140万円で働いている場合は、150万円未満の基準が適用される可能性があります。

ただし、本人が勤務先の社会保険へ加入していないことや、被保険者が生計を維持していることなど、ほかの条件も必要です。

65歳の親の年金が160万円であれば、180万円未満という金額基準を満たす可能性があります。

しかし、別居していて仕送りが年60万円であれば、親の年金収入の方が多いため、生計維持要件を満たさない可能性があります。

制度改正と現在の制度を分けて考える

106万円の壁と呼ばれる月額8万8,000円以上の賃金要件は、今後撤廃されることが決まっています。

ただし、この記事の閲覧時点で実際に撤廃されているか、勤務先が適用対象になっているかは、最新情報を確認する必要があります。

企業規模要件も段階的に縮小・撤廃される予定ですが、すべての企業へ一度に適用されるわけではありません。

現在の勤務先の厚生年金被保険者数と施行時期を確認してください。

将来の改正予定だけを見て、現在の勤務条件を変更したり、扶養手続きを行わなかったりするのは避けるべきです。

現在適用されている制度と、今後施行される制度を分けて考えます。

届出を遅らせない

扶養の届出が遅れると、資格が遡って取り消され、医療費の返還や国民健康保険料の遡及負担が発生する可能性があります。

本人だけで判断せず、就職、退職、賃金変更、失業給付の受給開始、年金額の変更、離婚、別居などがあった時点で勤務先へ相談してください。

会社側も、年に一度の被扶養者資格確認だけに頼るのではなく、従業員へ家族の収入や就職状況が変わった場合の申告方法を周知しておくことが重要です。

扶養に入っている本人からの申告が必要です。

被保険者の勤務先は、扶養家族の勤務先や収入変化を自動的に把握できません。

家族が就職した、勤務時間を増やした、失業手当を受け始めたなどの変化は、被保険者を通じて速やかに会社へ申告してください。

個別判断が必要になるケース

自営業者、複数の勤務先から給与を受ける人、海外居住者、内縁関係、夫婦の年収がほぼ同額の場合などは、一般的な基準だけでは判断が難しくなります。

また、健康保険組合は、協会けんぽとは異なる独自の確認書類や必要経費の基準を定めていることがあります。

以前の勤務先では扶養認定されたから、転職後の健康保険でも同じ結論になるとは限りません。

この記事で示した金額や取扱いは、一般的な制度を理解するための目安です。

加入している健康保険が協会けんぽか健康保険組合かによって、確認方法や必要書類が異なる場合があります。

最終確認の順番

  1. 勤務先の加入要件を確認する
  2. 親族と同居要件を確認する
  3. 国内居住要件を確認する
  4. すべての継続収入を合算する
  5. 同居時は被保険者収入、別居時は仕送り額と比較する
  6. 必要書類を揃えて勤務先へ申告する

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

制度改正の施行時期や個別の認定については、日本年金機構、厚生労働省、加入している健康保険の最新情報を確認する必要があります。

収入の種類が多い場合、自営業をしている場合、夫婦の収入が同程度の場合などは判断が複雑になります。

会社側の届出や本人の保険切替えにも影響するため、 最終的な判断は専門家にご相談ください。

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