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ストレスチェックとは?義務・対象者・罰則を実務で確認

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

ストレスチェックは、労働者が自分のストレス状態に気付くことを促し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための制度です。

個人に検査結果を通知するだけでなく、職場単位で結果を分析し、働きやすい職場環境をつくることも大切な目的に含まれます。

2026年7月時点では、常時50人以上の労働者を使用する事業場に、原則として1年以内ごとに1回の実施が義務付けられています。

さらに、2025年の法改正を受け、2028年4月1日からは50人未満の事業場にも実施義務が広がります。

一方で、事業者に実施義務があることと、労働者に受検義務があることは別の話です。

個人結果の取扱い、高ストレス者への面接指導、受検を拒否した従業員への対応などを誤ると、制度を実施しているにもかかわらず、従業員とのトラブルにつながる可能性があります。

この記事では、制度の基本から対象者の判定、実施の流れ、実施者の資格、監督署への報告、集団分析の活用方法まで、企業の人事・労務担当者が実際に運用する際に必要となるポイントを順番に解説します。

  • ストレスチェックの目的と制度の基本
  • 実施義務がある事業場と対象者の範囲
  • 高ストレス者への面接指導と情報管理
  • 報告義務や罰則と実務上の注意点

ストレスチェックとは?義務・対象者・罰則を社労士が解説

ストレスチェックの基礎と義務

まずは、ストレスチェックが何のために行われる制度なのか、どの事業場に実施義務があり、誰を対象にするのかを整理します。

特に注意したいのは、事業場の人数を数える基準と、実際に検査を実施する対象者の基準が同じではないことです。

会社全体の人数、各拠点の人数、パートやアルバイトの取扱いを混同すると、実施義務の判定を誤ることがあります。

制度の入口となる部分なので、順番に確認していきましょう。

ストレスチェックとは何か

ストレスチェックとは、労働者がストレスに関する質問票へ回答し、その結果を集計・分析することで、自分の心理的な負担の状態を確認する検査です。

労働安全衛生法第66条の10に基づく制度で、2015年12月から施行されています。

制度の主な目的は、うつ病や適応障害などのメンタルヘルス不調が生じてから対応するのではなく、 不調に至る前の段階で本人の気付きを促す一次予防 です。

健康診断のように病気の有無を診断するものではなく、医療機関で行う診察や心理検査とも異なります。

本人の気付きを促すための検査

仕事が忙しい状態が長く続くと、本人が疲労やストレスの蓄積に気付かないまま働き続けてしまうことがあります。

寝つきが悪い、朝起きるのがつらい、イライラしやすい、仕事上のミスが増えたといった変化があっても、「繁忙期だから仕方がない」と考え、対応が遅れるケースも珍しくありません。

ストレスチェックは、質問への回答を通じて自分の状態を振り返り、必要に応じて休養、生活習慣の見直し、上司への相談、医師による面接指導などにつなげるきっかけとなります。

ただし、高ストレスと判定されたからといって、直ちに精神疾患があると判断されるわけではありません。

反対に、高ストレスと判定されなかったからといって、健康上の問題がまったくないと断定できるものでもありません。

個人結果は原則として会社に渡らない

ストレスチェックの結果は、原則として実施者から労働者本人へ直接通知されます。

本人の同意がないまま、会社が個人の検査結果を取得することは禁止されています。

そのため、経営者や人事担当者が従業員ごとの点数や回答内容を自由に閲覧し、人事評価、昇進、異動、契約更新などの判断材料にする運用は認められません。

会社が把握できるのは、受検者数などの実施状況、個人が特定されない形に集計された集団分析結果、本人から申出があった場合の面接指導に必要な情報など、制度上認められた範囲に限られます。

ストレスチェックの二つの目的

  • 労働者が自分のストレス状態に気付き、セルフケアにつなげること
  • 集団分析によって職場の傾向を把握し、職場環境の改善につなげること

会社が実施するだけでは不十分

実務では、質問票を配布して検査結果を返した時点で、ストレスチェックを終えたと考えてしまう会社があります。

しかし、検査の実施だけでは、制度の効果を十分に得られません。

従業員が安心して回答できる環境を整え、高ストレス者が面接指導を申し出やすい仕組みをつくり、部署や職種ごとの集団分析を職場環境の改善へ反映させるところまで考えることが重要です。

会社が検査結果を見られないことや、面接指導の申出を理由に不利益な取扱いをしないことを周知することも、受検率を高めるうえで欠かせません。

ストレスチェックに対して、従業員が「会社が自分を選別するための検査ではないか」と警戒することがあります。

特に、過去に健康情報の取扱いが曖昧だった会社や、相談した従業員への配慮が不十分だった会社では、制度への信頼を得るまで時間がかかります。

ストレスチェックは、従業員を選別する仕組みではなく、本人の健康と働きやすい職場づくりを支える仕組み です。

この前提を経営者、管理職、人事担当者、従業員の間で共有しておくことが、適切な運用の第一歩となります。

実施義務の対象となる事業場

実施義務の対象となる事業場

2026年7月時点では、常時50人以上の労働者を使用する事業場に、ストレスチェックの実施義務があります。

ここでいう50人は、原則として会社全体の従業員数ではなく、 本社、支店、工場、営業所、店舗などの事業場単位 で判断します。

会社単位ではなく事業場単位で考える

事業場とは、一定の場所を基礎として、組織的に関連する業務が継続して行われている単位を指します。

単に住所が異なるかどうかだけでなく、労務管理、指揮命令、業務運営などがどの程度独立しているかも踏まえて判断します。

例えば、会社全体では100人を雇用していても、本社40人、支店30人、工場30人に分かれ、それぞれが独立した事業場として取り扱われる場合、2026年7月時点では各事業場が50人未満となる可能性があります。

反対に、会社全体では複数の拠点があっても、一つの工場だけで常時50人以上を使用していれば、その工場は実施義務の対象です。

ただし、同じ住所に複数の部門があるからといって、必ず一つの事業場になるとは限りません。

また、住所が離れていても、人数が極端に少なく独立した管理機能を持たない出張所などは、上位の事業場と一体として扱われることがあります。

拠点名や社内組織図だけで判断せず、実態を確認する必要があります。

50人には短時間労働者も含まれることがある

実施義務の有無を判断する際の「常時使用する労働者」には、正社員だけでなく、継続して雇用している契約社員、パート、アルバイトなども含まれます。

例えば、週1日しか勤務しないアルバイトであっても、継続的に雇用され、常態としてその事業場で働いているのであれば、50人のカウントに含まれることがあります。

週所定労働時間が正社員の4分の3未満だからという理由だけで、人数判定から除外するわけではありません。

ここが実務上かなり迷いやすいポイントです。

実施義務を判定するための人数と、実際にストレスチェックを行う対象者の範囲では、基準が異なります。

確認する場面 人数の考え方 主な注意点
実施義務の判定 常時使用する労働者を数える 短時間のパートやアルバイトも含む場合がある
実際の受検対象者 契約期間と週所定労働時間で判断する 50人の判定基準とは異なる
複数拠点がある会社 原則として事業場ごとに判断する 組織や指揮命令系統の実態も確認する
休業中の労働者 雇用関係や使用実態を踏まえて判断する 人数判定と実際の受検可否を分けて考える

人数が50人前後の会社は毎年確認する

従業員数が45人から55人程度で変動する事業場では、採用、退職、契約更新などによって義務の有無が変わる可能性があります。

年度初めの人数だけを確認して終わりにするのではなく、雇用状況が変わった際に人数を確認できる管理体制を整えておくことが重要です。

「一時的に50人を超えただけならどうなるのか」という相談もあります。

判断の基準は単純な一日時点の在籍者数ではなく、常態として50人以上を使用しているかどうかです。

ただし、50人以上の状態が継続する見込みであれば、実施体制の準備を始めた方がよいでしょう。

また、ストレスチェック制度だけでなく、産業医や衛生管理者の選任、衛生委員会の設置、定期健康診断結果報告など、常時50人以上を使用する事業場に生じる安全衛生上の義務は複数あります。

ストレスチェックだけを単独で確認するのではなく、50人以上になった際に必要となる安全衛生体制をまとめて点検するのが実務的です。

50人の数え方と受検対象者の範囲は別です。

まず事業場に実施義務があるかを判定し、その後に実際の受検対象者を選定します。

複数拠点の事業場区分や人数判定に迷う場合は、社内の名称だけで判断せず、所在地、指揮命令、労務管理、業務の独立性を整理してください。

対象者と派遣労働者の扱い

ストレスチェックの実施義務の対象となる労働者は、原則として、次の二つの条件をいずれも満たす人です。

  • 期間の定めのない労働契約で使用される人、または1年以上使用される予定の人
  • 週所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者のおおむね4分の3以上である人

対象者の判定では、正社員、契約社員、パート、アルバイトといった社内の呼び方だけで判断しません。

労働契約の期間と週所定労働時間を確認する必要があります。

有期契約労働者も対象になる

契約社員やパートなどの有期契約労働者であっても、契約期間が1年以上である場合や、契約更新によって1年以上使用されている場合、1年以上使用される予定がある場合には、対象となる可能性があります。

例えば、雇用契約書上の契約期間が6か月であっても、すでに複数回の更新によって1年以上働いており、今後も更新が予定されているのであれば、現在の契約期間だけを見て対象外と判断するのは適切ではありません。

過去の契約期間、更新回数、更新予定を確認してください。

一方、契約期間が明確に1年未満で、更新の予定もなく、実際の使用期間も1年未満である労働者は、法令上の実施義務の対象外となる場合があります。

ただし、対象外の労働者に対しても、会社が任意で受検機会を提供することは可能です。

週所定労働時間は通常の労働者と比較する

もう一つの条件は、対象者の1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間のおおむね4分の3以上であることです。

例えば、同じ業務に従事する正社員の週所定労働時間が40時間であれば、その4分の3に当たる30時間程度が一つの目安となります。

ただし、実際の判定では会社の所定労働時間、対象者の契約内容、同種業務の通常の労働者が誰に当たるかを確認する必要があります。

対象者名簿を作成する際は、雇用区分だけで一括判定せず、契約期間と週所定労働時間を人ごとに確認できるようにするとよいでしょう。

採用時によく確認する労働条件通知書や雇用契約書の情報を活用すれば、対象者の抽出がしやすくなります。

労働者の例 対象となる可能性 確認事項
期間の定めがない正社員 高い 週所定労働時間
1年契約の契約社員 高い 週所定労働時間
6か月契約を繰り返すパート あり 過去の使用期間と更新予定
週2日勤務の短時間パート 義務対象外となる可能性 通常の労働者との時間割合
短期の臨時アルバイト 義務対象外となる可能性 契約期間と更新予定

派遣労働者は派遣元が実施する

派遣労働者については、雇用主である 派遣元事業者にストレスチェックの実施義務 があります。

派遣労働者が実際に働いている場所は派遣先ですが、雇用契約は派遣元との間にあるためです。

ただし、派遣労働者が受ける仕事上の負担、職場の人間関係、上司からの支援などは、派遣先の職場環境から大きな影響を受けます。

そのため、派遣先にも派遣労働者を含めてストレスチェックを実施し、集団分析を行うことが望ましいとされています。

ここで注意したいのは、派遣元が保有する個人結果を、派遣先へ当然に提供できるわけではないことです。

本人の同意や情報共有の必要性を確認せず、派遣元と派遣先の担当者が高ストレス判定や回答内容を共有する運用は避けなければなりません。

派遣労働者の基本整理

  • 法令上の個人のストレスチェックは派遣元が実施する
  • 派遣先は派遣労働者が働く職場環境の改善に取り組む
  • 派遣元と派遣先で個人結果を安易に共有しない
  • 就業上の配慮が必要な場合は本人の同意と共有範囲を確認する
  • 派遣先で集団分析を行う場合も個人が特定されないようにする

対象外の労働者への任意実施も検討できる

法令上の実施義務から外れる短時間労働者や短期契約者についても、会社が任意に受検機会を設けることは可能です。

職場全体の環境を把握する観点では、正社員だけを対象とするより、同じ職場で働くパートやアルバイトを含めた方が、実態に近い分析ができる場合があります。

ただし、対象を任意に広げる場合でも、個人結果の秘密保持、本人同意のない会社への提供禁止、不利益取扱いの禁止などの基本的なルールは守る必要があります。

また、任意対象者に対してだけ結果の取扱いを変えることがないよう、事前に運用ルールを統一しておきましょう。

対象者の抽出を外部委託先へ任せる場合も、会社側で名簿の根拠を確認することが大切です。

委託先は、会社独自の雇用区分や契約更新の実態まで把握しているとは限りません。

誰を対象にし、誰を対象外にしたのか、その理由を後から説明できる状態にしておくと安心です。

50人未満も2028年に義務化

50人未満も2028年に義務化

2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、これまで努力義務とされていた常時50人未満の事業場にも、ストレスチェックの実施が義務付けられることになりました。

施行日は 2028年4月1日 です。

ここでいう50人未満の事業場には、社員数名の零細企業から数十名規模の中小企業まで幅広く含まれます。特に社員10人未満の小規模な事業場は、実施体制や情報管理の面で独自の悩みを抱えやすいため、次項で個別に取り上げます。

したがって、2026年7月時点では、50人未満の事業場はまだ努力義務の段階です。

「法改正が成立したため、すでにすべての会社で義務になっている」という説明は正確ではありません。

一方で、施行日まで何もしなくてもよいということでもありません。

施行日や制度改正の概要は、 (出典:厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」) で確認できます。

小規模事業場では実施者の確保が課題になる

常時50人未満の事業場では、産業医の選任義務がないため、日常的に連携している医師や保健師がいない会社も多いと思います。

そのため、ストレスチェックの実施者を誰に依頼するか、面接指導を行う医師をどのように確保するかが、最初の課題になりやすいです。

外部の健診機関、産業保健サービス会社、医療機関などへ委託する方法がありますが、提供されるサービスの範囲は事業者によって異なります。

質問票の配布と集計だけを行うサービスもあれば、実施者の選任、結果通知、高ストレス者への勧奨、医師の面接指導、集団分析まで一体的に提供するサービスもあります。

料金だけで比較すると、実施後に必要な対応が別料金となり、結果的に会社側の負担が大きくなることがあります。

誰が法令上の実施者になるのか、面接指導は料金に含まれるのか、データはどこへ保存されるのかを確認してください。

人事担当者が結果を見ない仕組みをつくる

小規模事業場では、経営者と従業員の距離が近く、一つの部署に数人しかいないこともあります。

人数が少ないほど、部署名、職種、年代、回答傾向などの組合せから、特定の従業員を推測しやすくなります。

そのため、ストレスチェックを実施する際には、社内の人事担当者が個人結果へアクセスできないようにするだけでなく、集団分析の単位にも配慮が必要です。

例えば、3人しかいない部署の結果をそのまま管理職へ渡すと、個人ごとの回答が推測される可能性があります。

外部委託を利用する場合も、会社へ提供される情報の範囲、データ保存先、保存期間、アクセス権限、委託契約終了後のデータ削除方法まで確認しておきましょう。

クラウドサービスを利用する場合は、システム管理者が個人結果を閲覧できる設定になっていないかも重要です。

50人未満の事業場が準備したい事項

  • 実施者となる医師や保健師等の確保
  • 外部委託する業務範囲と費用の確認
  • 調査票、Webシステム、結果保存方法の選定
  • 面接指導を行う医師との連携方法
  • 従業員への周知文書と相談体制の整備
  • 個人が特定されない集団分析の方法
  • 担当者の異動に備えた年間スケジュールの作成

施行直前ではなく段階的に準備する

小規模事業場では、人事労務担当者が給与計算、社会保険手続き、採用、勤怠管理、年末調整などを兼務しているケースが多くあります。

制度開始の直前になってから準備すると、委託先の選定、対象者名簿の作成、社内周知、実施規程の作成が重なり、担当者へ負担が集中します。

まずは、現在の労働者数、雇用形態、拠点ごとの人数を整理し、ストレスチェックの対象候補者を把握するところから始めるとよいでしょう。

その後、実施者と面接指導医の候補を探し、紙で実施するかWebで実施するか、外部委託するか自社運用するかを比較します。

施行前に一度任意で実施しておけば、従業員からどのような質問が出るか、対象者名簿に漏れがないか、結果通知や集団分析にどの程度の時間がかかるかを確認できます。

本番前の試行という考え方です。

勤怠や給与などの労務データが日頃から整理されていないと、対象者名簿の作成や実施記録の管理にも余計な手間がかかります。当事務所では、小規模企業様向けに、勤怠・給与データの管理からストレスチェックの実施までを一体的に整えられる「労務ととのう」というサービスをご用意していますので、あわせてご検討ください。

公的な支援も確認する

小規模事業場は、産業保健総合支援センターによる制度導入支援や、地域産業保健センターによる高ストレス者への面接指導などを利用できる場合があります。

すべてのサービスが無条件で利用できるとは限らないため、対象要件、利用回数、予約方法を事前に確認してください。

2028年4月1日までの準備イメージ

  • 事業場ごとの人数と対象者を整理する
  • 実施方法と外部委託先を検討する
  • 実施者と面接指導医を確保する
  • 結果の保存・閲覧権限を決める
  • 社内規程と周知文書を準備する
  • 可能であれば施行前に任意実施する

義務化への対応は、単に質問票を用意するだけでは完了しません。

従業員が安心して回答できる情報管理、高ストレス者が相談できる導線、集団分析を職場改善に生かす体制まで含めて、少しずつ準備していくことが大切です。

実施頻度は1年以内ごとに1回

ストレスチェックは、1年以内ごとに1回、定期に実施する必要があります。

毎年まったく同じ日でなければならないわけではありませんが、前回から1年を超えないよう、会社の年間スケジュールに組み込んでおくことが大切です。

健康診断とは別の制度

ストレスチェックの実施時期について、法律上一律に何月と決められているわけではありません。

定期健康診断と同じ時期に実施する会社もあれば、繁忙期や人事異動の時期を避けて実施する会社もあります。

ただし、定期健康診断とストレスチェックは、それぞれ目的と取扱いが異なる制度です。

健康診断を実施したからといって、ストレスチェックを実施したことにはなりません。

また、健康診断結果は会社が一定の範囲で把握しますが、ストレスチェックの個人結果は、本人の同意がなければ会社へ提供されません。

同じ時期に実施する場合は、案内文や同意書を分け、従業員が両制度を混同しないようにしてください。

健康診断の問診票とストレスチェックの質問票を同じ封筒で回収するときも、誰が開封し、誰が結果を見るのかを明確にする必要があります。

実施時期は目的に合わせて決める

実施時期を決める際は、受検しやすさだけでなく、結果を職場改善に反映できる時期かどうかも考えます。

例えば、年度末の極端な繁忙期に実施すると、一時的な業務負荷の影響が強く結果に表れる可能性があります。

一方で、繁忙期における実際の負担を把握することが目的であれば、その時期に実施する意味もあります。

人事異動の直後は、新しい上司や業務にまだ慣れていないことが数値に影響する場合があります。

異動から数か月後に実施すれば、新しい職場環境の傾向を把握しやすくなりますが、問題の早期発見という観点では遅くなる可能性もあります。

実施時期の例 メリット 注意点
定期健康診断と同時期 年間予定を管理しやすい 制度や個人情報の取扱いを混同しない
繁忙期の前 早めに職場の課題を確認できる 繁忙期中の負担は結果に反映されにくい
繁忙期の後 業務負荷の影響を把握しやすい 不調者への対応が後手になる可能性がある
人事異動後 新しい組織の状況を確認できる 異動直後は一時的な変化が出やすい
毎年同じ月 前年との比較がしやすい 会社の繁忙期と重ならないか確認する

前回実施日から1年を超えないよう管理する

実務では、前年に10月1日から10月31日まで受検期間を設けたものの、翌年は準備が遅れて11月から実施したということがあります。

毎年1回という要件を満たしているつもりでも、実施間隔が1年を超える可能性があるため注意が必要です。

実施日をどの時点として管理するか、受検期間が複数日にわたる場合にどう記録するかを、社内で統一しておくとよいでしょう。

少なくとも、実施期間、結果通知日、面接指導の申出期限、面接指導日、監督署への報告日を一覧にします。

年間管理表に記録したい項目

  • ストレスチェックの実施期間
  • 対象者数と受検者数
  • 実施者と実施事務従事者
  • 個人結果の通知日
  • 面接指導の申出期限と実施状況
  • 医師の意見聴取と就業上の措置
  • 集団分析結果の提供日
  • 労働基準監督署への報告日
  • 次年度の準備開始日

年1回以外の確認も必要になる

年1回というのは法令上の基本的な実施頻度ですが、従業員のメンタルヘルス対策を年1回の検査だけに頼ることはできません。

大規模な組織再編、急激な人員削減、長時間労働の増加、ハラスメント問題、重大事故などが発生した場合は、ストレスチェックとは別に職場の状況を確認する必要があります。

管理職による定期面談、相談窓口、長時間労働者への面接指導、休職者への対応など、複数の取組を組み合わせることが大切です。

ストレスチェックは、日常的な労務管理を置き換える制度ではありません。

一方で、短期間に何度も同じ質問票への回答を求めると、従業員が負担に感じ、回答率や回答の正確性が下がる可能性があります。

追加調査を行うときは、何を確認したいのか、結果をどのように使うのかを明確にしましょう。

毎年同じ時期、同じ調査票、同じ集団区分で実施すると、前年との比較がしやすくなります。

ただし、組織変更があった場合は、単純な数値比較だけで判断せず、部署構成や業務内容の変化も確認してください。

ストレスチェックの実施と対応

ここからは、実際にストレスチェックを導入する際の準備、実施者の資格、調査票、高ストレス者への面接指導、監督署への報告までを解説します。

制度を形だけで終わらせないためには、実施前に役割分担と情報管理のルールを決めることが重要です。

外部のサービスを利用する場合でも、会社の責任がなくなるわけではありません。

対象者の抽出、従業員への説明、面接指導後の就業上の措置、職場環境の改善など、会社側で判断しなければならない事項を整理しておきましょう。

実施までの流れと社内準備

ストレスチェックは、質問票を従業員へ配布するところから始まるわけではありません。

最初に会社としての実施方針を決め、実施者、実施事務従事者、面接指導を担当する医師、社内担当者の役割を整理します。

最初に会社の実施方針を決める

経営者がストレスチェックの目的を理解し、会社としてどのように取り組むかを表明することが出発点です。

単に法令上の義務を満たすために実施するのか、集団分析を人員配置や業務改善に活用するのかによって、必要な準備が変わります。

実施方針には、制度の目的、実施時期、対象者、実施方法、個人情報の取扱い、面接指導の申出方法、集団分析の活用方法などを盛り込みます。

ストレスチェックについてさらに詳しく知りたい場合は、ストレスチェックは意味ない?理由と効果的な活用法をまとめた記事も参考にしてください。

従業員にとって分かりやすい言葉で周知することも重要です。

常時50人以上の事業場では、衛生委員会で実施方法を調査審議します。

実施時期、使用する調査票、高ストレス者の選定基準、結果の保存方法、集団分析の単位などを事前に話し合います。

産業医、衛生管理者、会社側委員、労働者側委員の意見を反映させることで、一方的な制度設計になりにくくなります。

一般的な実施の流れ

  1. 会社の実施方針を決定する
  2. 衛生委員会で実施方法を調査審議する
  3. 実施者と実施事務従事者を選任する
  4. 対象者へ制度の目的と取扱いを周知する
  5. 質問票を配布し、回答を回収する
  6. 実施者が評価し、高ストレス者を選定する
  7. 実施者から本人へ結果を通知する
  8. 申出があった人へ医師の面接指導を行う
  9. 医師の意見を踏まえて就業上の措置を検討する
  10. 集団分析を職場環境の改善に活用する
  11. 対象事業場は労働基準監督署へ報告する

実施者と事務担当者の権限を分ける

制度を適切に運用するには、誰が対象者名簿を作るのか、誰が質問票を回収するのか、誰が個人結果を保存するのか、誰が受検状況を確認するのかを明確にします。

人事労務担当者は、対象者の抽出、実施案内、日程調整などに関わることができます。

しかし、本人の同意がない個人結果を閲覧することはできません。

人事担当者がシステム管理者を兼ねる場合は、システム上の権限設定により個人結果へアクセスできない状態にする必要があります。

紙で実施する場合は、記入済みの質問票を誰が回収し、どこへ保管するのかを確認します。

従業員が人事担当者へ直接提出する方法では、回答内容を見られるのではないかという不安が生じやすいため、封筒へ入れて提出する、実施者へ直接郵送するなどの方法が考えられます。

従業員への説明が受検率を左右する

従業員への周知では、検査の目的だけでなく、誰が個人結果を見るのか、会社へ結果が渡る条件、受検しない場合の取扱い、面接指導の申出先まで説明します。

「会社に結果を見られるのではないか」「高ストレスになると異動させられるのではないか」「受検しないと評価が下がるのではないか」という不安が残ると、受検を控えたり、実態より良く回答したりする可能性があります。

周知文書に入れたい内容

  • ストレスチェックを実施する目的
  • 実施期間と回答方法
  • 受検は労働者の義務ではないこと
  • 個人結果は本人へ直接通知されること
  • 本人同意なく会社へ結果を提供しないこと
  • 面接指導の申出方法と申出期限
  • 受検拒否や申出を理由に不利益取扱いをしないこと
  • 問い合わせ先と相談窓口

社内ルールを文書化する

就業規則にストレスチェックの詳細を必ず記載しなければならないわけではありません。

ただし、実施規程や社内ルールを文書化し、毎年同じ基準で運用できるようにしておくことをおすすめします。

規程には、実施体制、対象者、実施方法、結果の通知方法、結果提供の同意、面接指導の申出、記録の保存、集団分析、情報管理、不利益取扱いの禁止などを定めます。

担当者が交代しても運用が変わらないことが大切です。

外部委託する場合も、すべてを委託先任せにしてはいけません。

会社側の責任者、委託先の実施者、緊急性が高い回答があった場合の連絡方法、面接指導の予約方法、契約終了後のデータ処理を決めておきます。

低価格のWebサービスを契約しただけで、法令上のストレスチェックがすべて完了するとは限りません。

実施者の有無、高ストレス者の選定、本人への結果通知、面接指導、監督署への報告まで、どの業務が含まれているか確認してください。

私が中小企業の労務管理を確認するときも、制度の有無だけでなく、「担当者が不在になったときに継続できるか」「個人結果を誰が閲覧できるか」「面接指導後に誰が判断するか」を重視します。

実施手順を一度図にしておくと、役割の重複や抜け漏れを見つけやすくなります。

実施者になれる資格と制限

実施者になれる資格と制限

ストレスチェックの実施者になれるのは、医師、保健師のほか、所定の研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師です。

事業場に産業医がいる場合は、職場の状況を把握している産業医が実施者になることが一般的ですが、外部の医師や保健師へ委託することもできます。

実施者は制度の中心的な役割を担う

実施者は、単に質問票を配布したり、集計ソフトを操作したりする担当者ではありません。

調査票の選定、高ストレス者の選定基準への関与、検査結果の評価、本人への結果通知、面接指導の必要性の判断など、制度の中心的な役割を担います。

そのため、資格を持っているだけでなく、ストレスチェック制度の趣旨、職場の業務内容、長時間労働や人間関係などの職場特性を理解していることが望まれます。

産業医が実施者となる場合は、普段の職場巡視、衛生委員会、健康相談などで得た情報を踏まえて対応しやすいという利点があります。

外部の医師や保健師へ委託する場合も、会社の業種、勤務形態、繁忙期、夜勤の有無、組織構成などを事前に共有しておくと、より実態に合った評価や助言を受けやすくなります。

人事権を持つ人は実施者になれない

人事考課、昇進、昇格、異動、解雇などに直接の権限を持つ人 は、その権限が及ぶ労働者に対する実施者にはなれません。

ストレスチェックの結果が人事上の判断に利用されることを防ぎ、労働者が安心して回答できる環境を守るためです。

例えば、医師の資格を持つ会社経営者が、自社の従業員に対する人事上の決定権も持っている場合、その従業員に対する実施者となることは適切ではありません。

また、人事部長や事業所長が保健師等の資格を持っている場合も、人事権が及ぶ範囲を確認する必要があります。

一方、人事部に所属しているだけで、直ちにすべての業務へ関与できないという意味ではありません。

対象者名簿の作成、日程調整、未受検者への一般的な案内など、個人の検査結果や回答内容を扱わない事務は担当できる場合があります。

重要なのは、業務内容とアクセスできる情報を分けることです。

実施事務従事者にも制限がある

実施者の補助として、データ入力、受検状況の確認、結果の出力、結果通知の封入などを行う実施事務従事者を置くことができます。

実施事務従事者は、業務上、個人の回答や検査結果へ触れる可能性があります。

そのため、従業員の解雇、昇進、異動などについて直接の権限を持つ人を選任することはできません。

また、実施事務従事者には、業務上知り得た秘密を外部へ漏らさないことが求められます。

担当者 主な役割 個人結果の取扱い
実施者 評価、高ストレス者の選定、結果通知 制度の実施に必要な範囲で取り扱う
実施事務従事者 入力、回収、通知、保存などの補助 担当業務に必要な範囲に限る
人事労務担当者 対象者管理、日程調整、社内周知 本人同意のない個人結果は閲覧できない
事業者 体制整備、面接指導、就業上の措置 法令上認められる情報に限る
管理職 受検環境の整備、職場改善 部下の個人結果を直接確認できない

外部委託では契約内容を確認する

外部委託を利用する場合は、誰が法令上の実施者となるのかを、契約書や仕様書で明確にしてください。

システム会社が質問票を集計するだけでは、法令上必要な実施者を置いたことにならない場合があります。

実施者の氏名や資格、実施事務従事者の範囲、個人結果を保存する場所、会社へ提供される情報、面接指導の申出方法、緊急時の対応を確認します。

担当の医師が毎年変わる場合は、前年の実施内容や事業場の特徴を引き継ぐ方法も必要です。

委託先を選ぶ際の確認事項

  • 法令上の実施者がサービスに含まれているか
  • 実施者の資格と氏名を確認できるか
  • 高ストレス者の選定基準を誰が決めるか
  • 個人結果へアクセスできる担当者は誰か
  • 面接指導を行う医師を紹介できるか
  • 契約終了後のデータをどのように処理するか

会社側では、実施者に必要な情報を提供しつつ、個人結果には不必要に関与しないという線引きが必要です。

専門家へ丸投げするのではなく、会社と実施者の役割を明確にすることが、適正な運用につながります。

57項目の調査票と評価方法

ストレスチェックの調査票には、少なくとも次の三つの領域を含める必要があります。

  • 仕事の量や質、人間関係などの仕事のストレス要因
  • 不安、疲労感、抑うつ感などの心身のストレス反応
  • 上司、同僚、家族など周囲からのサポート

厚生労働省は、標準的な調査票として職業性ストレス簡易調査票の57項目版を推奨しています。

仕事の負担、心身の状態、周囲からの支援を幅広く確認できるため、多くの事業場や外部サービスで利用されています。

57項目で確認する三つの領域

一つ目の領域は、仕事のストレス要因です。

仕事の量、仕事の質、身体的な負担、職場の対人関係、職場環境、仕事の裁量、技能の活用などを確認します。

二つ目は、心身のストレス反応です。

活気、イライラ感、疲労感、不安感、抑うつ感、身体的な不調などについて回答します。

これにより、現在の心身の反応がどの程度生じているかを把握します。

三つ目は、周囲のサポートです。

上司、同僚、家族や友人などに相談できるか、必要な支援を得られているかを確認します。

同じ仕事量であっても、上司や同僚から適切な支援を得られる職場と、相談できない職場では、従業員が受ける心理的負担が異なるためです。

領域 主な確認内容 職場改善につながる視点
仕事のストレス要因 仕事量、裁量、人間関係、職場環境 人員配置、業務分担、管理方法
心身のストレス反応 疲労、不安、抑うつ、身体症状 休養、相談、面接指導への案内
周囲のサポート 上司、同僚、家族等からの支援 管理職教育、相談体制、職場風土

57項目は必須ではない

57項目の調査票を必ず使用しなければならないわけではありません。

必要な三領域を含み、実施者が適切と認める調査票であれば、簡略版の23項目などを使用できる場合があります。

質問数を減らすと回答時間を短縮でき、受検者の負担を軽くできます。

一方で、確認できる項目が少なくなり、集団分析で職場の問題を詳しく把握しにくくなることがあります。

例えば、複数部署の仕事量、人間関係、裁量、上司の支援を比較して職場改善につなげたい場合は、ある程度詳細な項目が必要です。

単に受検率を上げるために短い調査票を選ぶのではなく、何を把握し、どのような改善に使うかを考えて選定しましょう。

高ストレス者の選定方法

高ストレス者の評価は、実施者が事前に定めた基準に基づいて行います。

一般的には、心身のストレス反応が著しく高い人や、一定程度のストレス反応があり、仕事の負担や周囲からの支援の状況も悪い人などが選定されます。

高ストレス者が受検者のおおむね10%程度となる基準例が示されることがありますが、 必ず受検者の10%を高ストレス者にしなければならないわけではありません

事業場ごとの基準や回答状況により、割合は変わります。

前年より高ストレス者の割合が増えた場合も、直ちに職場環境が悪化したと断定することはできません。

受検者の構成、実施時期、組織変更、調査票の変更などが影響する可能性があります。

割合だけではなく、仕事の負担や周囲の支援など、項目ごとの傾向を確認してください。

ストレスチェックは病気の診断ではありません。

高ストレスと判定されても、直ちに精神疾患があるという意味ではなく、高ストレスと判定されなければ不調がないと断定できるものでもありません。

強い不眠、食欲低下、出勤困難、自傷に関する考えなど、緊急性が疑われる状態がある場合は、ストレスチェックの判定だけに頼らず、医療機関や適切な相談先につなぐ必要があります。

紙とWebでは情報管理の注意点が異なる

紙で実施する場合は、記入済みの調査票を誰が回収するか、回答用紙をどこに保管するか、結果をどのように本人へ渡すかを決めます。

机の上や共有キャビネットへ置くような運用は避け、鍵のかかる場所へ保管してください。

Webで実施する場合は、回答データの保存先、通信の暗号化、管理者権限、パスワード、バックアップ、契約終了後のデータ削除方法などを確認します。

システム上の管理者であるという理由だけで、人事担当者が個人結果を閲覧できる状態にしてはいけません。

厚生労働省は、自社での受検、個人結果の出力、集団分析などに対応する無料の実施プログラムを提供しています。

利用する場合は、最新のバージョンと動作環境を確認し、データのバックアップやアクセス権限を適切に設定してください。

調査票を選ぶ際の視点

  • 法令上必要な三領域を含んでいるか
  • 実施者が適切な調査票と判断しているか
  • 従業員が無理なく回答できるか
  • 必要な集団分析を行えるか
  • 前年との比較を継続できるか
  • 外国人労働者に対応する言語があるか

質問票そのものよりも重要なのは、回答結果をどのように本人の気付きと職場改善へつなげるかです。

調査票の選定、高ストレス者の基準、集団分析の方法を一体として検討してください。

高ストレス者への面接指導

実施者が高ストレス者に該当し、医師による面接指導が必要であると判断した場合、その結果と面接指導に関する案内が労働者本人へ通知されます。

会社が本人より先に高ストレス判定を知る仕組みではありません。

面接指導は本人の申出から始まる

面接指導を受けるかどうかは、労働者本人が判断します。

高ストレス者に選定されたすべての人を、会社が強制的に医師の面接へ参加させる制度ではありません。

高ストレス者本人から面接指導の申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施する義務があります。

申出があったにもかかわらず、担当医師がいない、繁忙期で日程が取れないという理由で長期間放置しないようにしてください。

本人が面接指導を申し出ると、会社はその人が高ストレス者に該当したことを知ることになります。

そのため、申出によって会社へ知られることを不安に感じ、面接指導を希望しない人もいます。

申出を理由に不利益な取扱いをしないこと、会社へ共有される情報は必要な範囲に限られることを丁寧に説明する必要があります。

医師は勤務状況や心身の状態を確認する

面接指導では、医師が勤務状況、労働時間、業務の負担、疲労の蓄積、心理的な負担、心身の症状、生活状況などを確認します。

ストレスチェックの結果だけでなく、実際の働き方や本人の話を踏まえて、健康上の配慮が必要かを判断します。

会社は、医師が適切に判断できるよう、本人の同意や健康情報の取扱いに配慮しながら、勤務時間、時間外労働、深夜勤務、休日労働、業務内容などの情報を提供します。

面接指導は、精神疾患の診断や治療そのものではありません。

医師が医療機関の受診を勧めることもあります。

すでに強い症状がある場合は、面接指導の申出期限を待たず、早めに医療機関へ相談することが必要です。

医師の意見を踏まえて就業上の措置を検討する

事業者は、面接指導を行った医師から意見を聴き、必要がある場合には就業上の措置を検討します。

具体的には、労働時間の短縮、時間外労働の制限、深夜勤務の制限、出張の制限、業務内容の変更、作業の転換、配置転換、休業などが考えられます。

ただし、高ストレスと判定されたことだけを理由に、本人の意向や医師の意見を確認せず、配置転換、降格、契約更新拒否などを行うことは避けなければなりません。

本人にとって負担を減らす措置であっても、職種変更や賃金低下を伴えば、別の不利益が生じることがあります。

面接指導後に会社が確認すること

  • 医師がどのような就業上の配慮を求めているか
  • 措置の内容が本人の状態に合っているか
  • 措置の期間と見直し時期が明確になっているか
  • 業務上必要な範囲を超えて健康情報を共有していないか
  • 上司や同僚への説明がプライバシーに配慮されているか
  • 措置後のフォロー面談や再評価を行うか

健康情報の共有範囲を限定する

面接指導後、直属の上司へ一定の配慮事項を伝える必要が生じることがあります。

その場合も、本人の病名や診察内容をすべて共有するのではなく、業務上必要な情報に限定します。

例えば、「当面1か月は時間外労働を行わせない」「深夜勤務を外す」「顧客対応の件数を減らす」といった就業上の配慮を伝えれば足りる場合に、詳細な家庭事情や医療情報まで共有する必要はありません。

誰に、何を、どの目的で共有したのかを記録しておくと、情報の拡散を防ぎやすくなります。

管理職にも、部下の健康情報を同僚へ話さないこと、本人へ過度に理由を尋ねないことを説明してください。

面接指導の申出がない場合でも、会社が日常の勤怠状況、言動、相談内容などから明らかな不調を把握しているときは、何も対応しなくてよいとは限りません。

ストレスチェックとは別に、健康相談、受診勧奨、業務負担の調整などを検討する必要があります。

すでに不眠、強い不安、抑うつ、出勤困難などの症状があり、休職や退職を考える段階まで不調が進んでいる場合は、 適応障害で休職か退職かを判断する際の確認点 も参考にしてください。

高ストレス者への対応では、「面接指導を実施したか」だけでなく、その後に適切な措置を講じ、状態を確認しているかが重要です。

一度の面接や配置変更で終わらせず、医師、本人、会社の担当者が連携しながら見直していきましょう。

受検拒否と不利益取扱いの禁止

事業者にはストレスチェックを実施する義務がありますが、労働者に受検義務が課されているわけではありません。

会社は受検の機会を提供し、制度の目的を説明できますが、個々の労働者に受検を強制することはできません。

受検しないことを理由に処分できない

受検を拒否した従業員に対して、懲戒処分を行う、人事評価を下げる、賞与を減額する、不利益な配置転換を行うといった対応は避けなければなりません。

就業規則で受検を一律に義務付け、拒否した場合を懲戒事由とするような運用も慎重に考える必要があります。

労働者に受検義務がないのは、メンタルヘルス不調で治療中であり、検査への回答自体が負担になる場合など、受検を強要することが適切でないケースがあるためです。

ただし、制度を有効に活用するためには、多くの労働者が受検することが望ましいです。

会社は強制するのではなく、制度の目的、情報管理、受検するメリットを説明し、自発的な受検を促します。

未受検者への案内は方法に配慮する

会社や実施者が受検状況を確認し、未受検者へ受検を案内すること自体は可能です。

しかし、未受検者の氏名を会議で公表したり、直属の上司から何度も理由を問い詰めたりすると、実質的な強制と受け取られる可能性があります。

未受検者への案内は、実施者や実施事務従事者から個別に行う、全従業員へ一斉に期限を再案内するなど、心理的な圧力を抑えた方法を選びます。

受検しない理由を会社が詳細に聞き取る必要もありません。

対応例 考え方
全従業員へ期限を再案内する 一般的な周知として行いやすい
実施者から未受検者へ個別案内する 人事評価と切り離しやすい
管理職が理由を繰り返し尋ねる 実質的な強制となるおそれがある
未受検者名を職場で公表する プライバシーや不利益取扱いの問題が生じやすい
受検拒否を人事評価へ反映する 行うべきではない

結果提供への不同意も尊重する

本人の同意なく、ストレスチェックの個人結果を事業者へ提供することは禁止されています。

本人が会社への結果提供に同意しなかったことを理由として、不利益な取扱いを行うこともできません。

同意を取得する場合は、何のために、どの情報を、誰へ提供するのかを明確にします。

「受検した時点で会社への提供にも同意したものとする」といった曖昧な方法は避けましょう。

また、高ストレス者が医師の面接指導を申し出たことを理由とする解雇、雇止め、退職勧奨、降格なども禁止されています。

面接指導後に就業上の措置を行う場合は、医師の意見を踏まえ、本人の健康を守るために必要な措置であることを説明できるようにします。

受検しないこと、結果提供に同意しないこと、面接指導を申し出たことを理由とする不利益取扱いは認められません。

面接指導後に配置転換などを行う場合も、医師の意見、本人の状況、業務上の必要性を踏まえ、措置の理由を記録してください。

受検拒否の背景を考える

受検拒否の背景に、会社への不信感、上司との関係、ハラスメント、個人情報への不安があることもあります。

「協力的でない従業員」と決めつけるのではなく、会社側の説明や相談体制に改善すべき点がないか確認することが大切です。

例えば、以前に体調不良を相談した従業員の情報が社内に広まったことがあれば、ストレスチェックの結果も漏れるのではないかと不安を感じるのは自然です。

受検率を上げたいのであれば、制度説明だけでなく、日頃から健康情報を適切に扱う職場風土をつくる必要があります。

受検率を高めるための取組

  • 個人結果は本人へ直接通知されると説明する
  • 人事担当者が回答内容を見られない仕組みを示す
  • 受検拒否を理由に不利益取扱いをしないと明示する
  • 面接指導の申出方法を分かりやすくする
  • 集団分析から実施した改善内容を従業員へ伝える
  • 管理職にも制度の趣旨を教育する

職場のハラスメントに関する外部相談先については、 厚生労働省に関係するハラスメント相談窓口の使い方 で詳しく整理しています。

ストレスチェックを受けても何も変わらないと従業員が感じれば、翌年以降の受検率は下がりやすくなります。

集団分析を踏まえて行った業務改善や相談体制の見直しを、個人が特定されない形で従業員へ共有することも、制度への信頼につながります。

報告義務と50万円以下の罰則

報告義務と50万円以下の罰則

ストレスチェックの罰則については、制度の実施義務と労働基準監督署への報告義務を分けて考える必要があります。

インターネット上では「ストレスチェックを実施しないと50万円の罰金」と説明されることがありますが、正確には少し異なります。

実施しないこと自体には直接の罰則がない

ストレスチェックを実施しなかったこと自体に、直接対応する罰則規定はありません。

したがって、法定のストレスチェックを実施しなかった瞬間に、当然に50万円の罰金が科されるという制度ではありません。

ただし、常時50人以上の事業場には法律上の実施義務があるため、直接の罰則がないことと、実施しなくても問題がないことは同じではありません。

労働基準監督署から実施状況を確認され、改善を求められる可能性があります。

また、従業員がメンタルヘルス不調となった際に、長時間労働、過重な業務、ハラスメントなどの兆候を会社が把握しながら対応していなかった場合、ストレスチェックを実施していなかったことが、安全配慮義務違反を判断する事情の一つとして問題になる可能性もあります。

報告しない場合は罰則の対象となる

常時50人以上の労働者を使用する事業場には、年1回、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書を、所轄の労働基準監督署長へ提出する義務があります。

この報告を行わなかった場合や、虚偽の内容を報告した場合には、労働安全衛生法第120条第5号により、50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。

つまり、実施義務違反と報告義務違反は別の問題です。

50人以上の事業場における報告制度や最新の様式については、 (出典:厚生労働省「労働者数50人以上の事業者の方」) で確認できます。

行為 直接の罰則 実務上のリスク
ストレスチェックを実施しない 実施義務だけを理由とする直接の罰則はない 行政指導、安全配慮義務、従業員対応上の問題
監督署へ報告しない 50万円以下の罰金の対象となる可能性 報告義務違反として扱われる
虚偽の内容を報告する 50万円以下の罰金の対象となる可能性 事実と異なる報告を行わない
本人同意なく個人結果を取得する 法令違反となり得る プライバシー侵害や労使トラブル
面接指導の申出を理由に不利益取扱いをする 法令上禁止される 労使紛争や損害賠償の問題

報告書に個人結果は記載しない

報告書には、在籍者全員の氏名、高ストレス者の氏名、個人ごとの点数などを記載するわけではありません。

一般的には、検査の実施年月、対象労働者数、受検者数、面接指導を受けた人数、実施者の区分、集団分析の実施状況などを記載します。

対象労働者数と受検者数を混同したり、会社全体の人数を一つの事業場の報告書へ記載したりしないように注意してください。

複数の事業場がある場合は、原則として事業場ごとに報告の要否を確認します。

紙による提出のほか、電子申請を利用できる場合があります。

様式、提出方法、電子申請の操作方法は変更される可能性があるため、実際に提出する時点の情報を確認してください。

実施記録と個人結果を分けて管理する

担当者交代時には、前年の報告書控えが見つからない、検査は実施したものの監督署へ報告したか分からないということが実際にあります。

実施期間、対象者数、受検者数、面接指導者数、報告日、受付記録、次年度予定などを管理表へまとめると、担当者が交代しても確認しやすくなります。

ただし、会社の人事担当者が管理する実施記録と、実施者が管理する個人の回答・結果は分けなければなりません。

すべてのデータを同じ共有フォルダへ保存すると、人事担当者が個人結果を閲覧できる状態になる可能性があります。

会社側で管理できる情報の例

  • 実施期間と対象者数
  • 受検者数と受検率
  • 実施者の氏名や資格
  • 面接指導を実施した人数
  • 監督署への報告日と控え
  • 個人が特定されない集団分析結果

個人のストレスチェック結果や回答内容は、会社側の管理表へ一緒に保存しないでください。

本人の同意がある場合や面接指導に必要な場合であっても、利用目的と閲覧者を限定する必要があります。

罰則だけに注目すると、報告書を提出することが制度のゴールに見えてしまいます。

しかし、本来の目的は労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことです。

報告義務を確実に履行しながら、受検しやすい環境、高ストレス者への対応、職場改善まで一体的に進めましょう。

集団分析でストレスチェックを活かす

ストレスチェックが意味ないと言われる大きな理由は、従業員へ個人結果を返しただけで、その後の職場改善に活用されていないことです。

制度を実効性のあるものにするには、部署や職種など一定の集団ごとに結果を分析し、職場の課題を確認することが重要です。

集団分析は個人を探すためのものではない

集団分析では、特定の従業員が高ストレス者かどうかを確認するのではなく、仕事量、仕事の裁量、人間関係、上司や同僚からの支援などについて、組織全体の傾向を確認します。

例えば、特定の部署で仕事の量的負担が高く、上司の支援が低い傾向が出ている場合は、人員配置、業務分担、管理職の関わり方を見直すきっかけになります。

仕事量は平均的でも、裁量が低く、相談しにくい部署では、心理的な負担が高くなることもあります。

集団分析結果を見た管理職が、「誰が悪い回答をしたのか」「高ストレス者は誰か」と探すような運用は、制度の趣旨に反します。

従業員にそのような不安が広がれば、翌年から実態と異なる回答が増え、分析自体の信頼性が下がります。

分析結果だけで原因を断定しない

数値が悪い部署に問題のある上司がいるとは限りません。

繁忙期、欠員、新規事業、組織変更、設備トラブル、顧客からのクレームなど、一時的な事情が影響していることもあります。

また、数値が良い部署で問題がないとも限りません。

受検率が低い、退職者が多い、従業員が正直に回答できていないといった可能性もあります。

集団分析結果は、職場の問題を確定する証拠ではなく、課題を探るための手掛かりとして扱うのが実務的です。

勤怠データ、時間外労働、休日出勤、有給休暇の取得状況、離職率、休職者数、労災事故、ヒヤリハット、従業員へのヒアリングなどと組み合わせて背景を確認します。

分析結果の傾向 確認したい背景 改善策の例
仕事量の負担が高い 欠員、残業、担当件数、繁忙期 人員補充、業務分担、優先順位の見直し
仕事の裁量が低い 承認手続、権限、細かな指示 権限移譲、業務手順の見直し
上司の支援が低い 面談頻度、指示方法、相談体制 管理職研修、定期面談
同僚の支援が低い 業務の属人化、競争、情報共有 チーム編成、業務共有、応援体制
心身の反応が高い 長時間労働、休憩、夜勤、職場環境 労働時間削減、勤務体制の改善

個人が特定されない単位で分析する

人数の少ない部署を細かく分析すると、回答内容から個人を推測できるおそれがあります。

そのため、個人が特定されない方法で集計・分析しなければなりません。

原則として、集計・分析の単位が10人を下回る場合は、個人が特定されるおそれが高くなるため慎重な取扱いが必要です。

ただし、10人未満であっても、57項目の合計点の平均値を用いるなど、個人が特定されるおそれのない方法によって分析できる場合があります。

形式上10人以上であっても、部署内で一人だけ職種や性別、役職が異なる場合などは、回答者を推測できる可能性があります。

人数だけで安全と判断せず、組織構成や公表する項目も確認してください。

少人数部署の分析では、次のような工夫が必要です。

  • 複数部署をまとめて10人以上の集団をつくる
  • 職種や年代など細かな属性を表示しない
  • 個人を推測できる自由記載を管理職へ提供しない
  • 前年との比較でも個人の入退社に注意する
  • 実施者と分析方法を事前に確認する

改善策は具体的な行動に落とし込む

「コミュニケーションを良くする」「風通しのよい職場にする」といった抽象的な目標だけでは、職場は変わりにくいです。

誰が、何を、いつまでに行うのかを具体的にします。

例えば、上司の支援が低い部署であれば、月1回15分の個別面談を実施する、管理職向けに傾聴研修を行う、業務指示を口頭だけでなく共有ツールへ記録するなど、実行可能な行動へ落とし込みます。

仕事量の負担が高い場合は、「残業を減らす」と呼びかけるだけでは不十分です。

担当件数、繁忙時間、人員配置、承認作業、不要な報告、業務の属人化などを確認し、負担が生じている原因を取り除く必要があります。

集団分析から検討できる改善例

  • 業務量や担当件数の偏りを見直す
  • 残業や休日出勤が集中している部署を確認する
  • 管理職向けの面談・ハラスメント研修を行う
  • 相談窓口と利用方法を改めて周知する
  • 休憩の取り方やシフト編成を改善する
  • 業務を複数人で共有し属人化を減らす
  • 改善後に再度状況を確認する

改善内容を従業員へ伝える

従業員がストレスチェックへ回答しても、会社から何の反応もなければ、「回答しても意味がない」と感じます。

個人結果や部署の細かな数値を公開する必要はありませんが、全体としてどのような課題があり、会社が何を改善するのかを伝えることは重要です。

例えば、「業務量に関する負担が高い傾向があったため、繁忙時間帯の人員配置を見直します」「相談先が分かりにくいという意見を踏まえ、社内相談窓口を再周知します」といった形で共有します。

改善策を実施した後は、残業時間、休暇取得、従業員の意見、翌年の集団分析結果などを確認し、効果を評価します。

効果がなければ、原因の見立てや改善方法を見直します。

集団分析を活用する流れ

  1. 個人が特定されない方法で結果を集計する
  2. 勤怠や離職状況など他の情報と合わせて確認する
  3. 職場の課題について仮説を立てる
  4. 従業員や管理職から実態を聞き取る
  5. 具体的な改善策と担当者を決める
  6. 改善内容を従業員へ共有する
  7. 一定期間後に効果を確認する

受検率が低い状態では、回答した一部の従業員の傾向しか反映されず、分析結果の代表性が下がります。

受検率を高めるためには、結果が人事評価に利用されないこと、会社が個人回答を見られないこと、分析結果を実際の改善につなげることを継続して説明する必要があります。

ストレスチェックは、実施して報告書を提出すれば終わりではありません。

結果から職場の課題を仮説として整理し、実行可能な改善策を決め、効果を確認するところまで取り組むことで、制度の意味が生まれます。

この記事は2026年7月時点の法令や公表情報を前提に、一般的な実務を解説したものです。

制度の施行日、報告様式、集団分析の方法、行政の運用などは変更される可能性がありますので、 正確な情報は公式サイトをご確認ください

事業場の人数判定、対象者の選定、情報管理、高ストレス者への就業上の措置は、会社の規模や体制、個別事情によって判断が変わります。

具体的な運用については、 最終的な判断は専門家にご相談ください

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