こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
産休の計算では、休業期間だけでなく、出産手当金の見込み額、社会保険料が免除される月、産休に入る月の給与まで分けて確認する必要があります。
基本的には、出産予定日から産前休業の開始日を逆算し、実際の出産日の翌日から産後休業を計算します。
ただし、出産予定日と実際の出産日がずれると、産前休業の日数や出産手当金の支給対象日数も変わるため注意が必要です。
この記事では、これから産休に入る方と、手続きを担当する企業の双方に向けて、期間、お金、社会保険、給与の計算方法を実務的に解説します。
- 出産予定日から産休期間を計算する方法
- 出産手当金の支給額と対象日数の考え方
- 社会保険料が免除される月の確認方法
- 産休中の給与と住民税の取り扱い

産休の計算で確認する休業期間
産休は、出産前の産前休業と、出産後の産後休業に分かれます。
産前は出産予定日、産後は実際の出産日を基準にするため、同じ基準日から一括して計算するわけではありません。
まずは、それぞれの起算日と日数を分けて整理しましょう。
実務では、産休開始予定日、実際の休業開始日、出産予定日、実際の出産日、産後休業終了日という複数の日付を管理します。
似た日付が並ぶため混同しやすいのですが、どの制度がどの日付を基準にしているのかを整理すれば、計算はそれほど難しくありません。
出産予定日から産前休業を計算する
単胎妊娠の場合、産前休業は 出産予定日を含めた6週間、つまり42日前から 取得できます。
双子以上の多胎妊娠の場合は、出産予定日を含めた14週間、つまり98日前からです。
ここでいう「取得できる」とは、その日から当然に会社を休まなければならないという意味ではありません。
産前休業は、対象となる女性従業員が会社に請求することによって取得する休業です。
会社は請求を受けた場合、産前休業の対象期間中に本人を就業させることができません。
出産予定日を1日目としてさかのぼる
例えば、出産予定日が10月15日で、単胎妊娠の場合は、10月15日を含めて42日間さかのぼります。
この場合、産前休業を開始できる日は9月4日です。
日付を数えるときのポイントは、出産予定日の前日を起点にするのではなく、 出産予定日そのものを産前期間の1日として数える ことです。
カレンダー上で単純に42日を引く方法では、使用する計算ツールによって1日のずれが生じることがあります。
産前休業の基本的な計算
- 単胎妊娠:出産予定日を含めて42日前
- 多胎妊娠:出産予定日を含めて98日前
- 出産予定日当日:産前休業に含める
- 実際の取得:本人から会社への請求が必要
産休開始可能日と最終出勤日は別に考える
産前休業を開始できる日と、実際の最終出勤日が一致するとは限りません。
例えば、産前休業開始可能日が9月4日であっても、本人が9月10日まで働き、9月11日から休業を請求することも考えられます。
この場合、法令上は9月4日から休むことができますが、実際の産前休業は9月11日から始まります。
反対に、体調面の事情などから9月4日より前に仕事を休みたい場合、その期間は法定の産前休業には該当しません。
有給休暇、会社独自の休暇、欠勤、休職、母性健康管理措置など、別の取り扱いを検討します。
社労士実務では、「会社を最後に休み始めた日」をそのまま産休開始日として処理してよいかを確認します。
産前休業の開始可能日前から休んでいるケースでは、前半が有給休暇、後半が産前休業というように、勤怠上の区分を分ける必要があります。
会社への申出は余裕を持って行う
産前休業の請求方法について、法律上、必ず特定の様式を使用しなければならないというわけではありません。
ただし、企業実務では、出産予定日、産前休業の開始希望日、産後休業の予定期間、育児休業の取得予定などを記載した申出書を提出してもらうことが一般的です。
会社側は、出産予定日が分かる母子健康手帳の該当ページや医療機関の証明書などを確認する場合があります。
何を提出するかは会社の規程や運用によるため、早めに人事労務担当者へ確認してください。
産前休業の開始日は、給与の日割り計算、社会保険料免除の開始月、出産手当金の支給対象期間にも関係します。
休業日だけでなく、お金や手続きにも影響する重要な日付です。
産前産後休業の法的な取り扱いは、厚生労働省の公式情報でも確認できます。
産前6週間、多胎妊娠の場合は14週間、産後8週間という基本的な期間に加え、産前は本人の請求が必要であることが示されています。
詳しくは、 厚生労働省「産前・産後の休業について」 をご確認ください。
産休がいつからいつまでかを確認する

一般に産休と呼ばれる期間は、産前休業と産後休業を合わせたものです。
ただし、産前と産後では、取得条件と計算基準が異なります。
産前休業は出産予定日を基準に計算し、本人が請求した場合に取得します。
一方、産後休業は実際の出産日を基準に計算し、本人の請求がなくても会社が休ませなければなりません。
この違いを理解することが、産休期間を正確に計算する第一歩です。
| 区分 | 期間 | 基準日 | 取得の扱い |
|---|---|---|---|
| 産前休業 | 6週間 多胎妊娠は14週間 |
出産予定日 | 本人の請求により取得 |
| 産後休業 | 8週間 | 実際の出産日 | 原則として就業禁止 |
予定日どおりに出産した場合の基本形
単胎妊娠で予定日どおりに出産し、産前休業を初日から取得した場合は、産前42日と産後56日を合わせた98日間が基本的な産休期間となります。
例えば、出産予定日と実際の出産日が10月15日である場合、産前休業は9月4日から10月15日まで、産後休業は10月16日から12月10日までとなります。
この場合、12月11日以降に復職するか、引き続き育児休業を取得する流れです。
予定日どおりに出産した場合の例
- 出産予定日:10月15日
- 産前休業:9月4日から10月15日まで
- 実際の出産日:10月15日
- 産後休業:10月16日から12月10日まで
- 復職または育児休業開始:原則として12月11日
法定期間と実際に休んだ期間は一致しないことがある
産前休業は本人が請求した日から取得するため、必ず42日間休むとは限りません。
産前休業に入れる日より後まで勤務した場合は、その分だけ実際の休業日数が短くなります。
例えば、9月4日から産前休業を取得できる方が9月20日まで勤務した場合、実際の産前休業は9月21日からです。
法律上取得できる期間と、本人が実際に休業した期間を分けて記録する必要があります。
この違いは、特に出産手当金の計算で重要です。
出産手当金は、支給対象となり得る期間内に、実際に会社を休み、給与が支払われなかった日を対象として支給されます。
産前休業を取得できる日であっても、通常どおり勤務して給与を受けた日は対象になりません。
出産日当日は産前に含まれる
出産日当日は、産後休業ではなく産前の期間に含まれます。
産後休業の1日目は、実際の出産日の翌日です。
このルールは、給与計算や出産手当金の申請書を作成するときにも重要です。
出産日を産後休業の開始日として入力すると、終了日も1日ずれてしまいます。
会社の勤怠システムに休業期間を登録する際も、産後休業開始日は出産日の翌日として処理しましょう。
有給休暇を組み合わせる場合
産前休業の開始前に有給休暇を取得することも可能です。
例えば、法定の産前休業が9月4日からであっても、8月26日から9月3日まで有給休暇を取得し、そのまま産前休業へ入るケースがあります。
この場合、最終出勤日は8月25日、有給休暇は8月26日から9月3日、産前休業は9月4日からという区分になります。
有給休暇の期間は賃金が支払われるため、産前休業開始後に有給休暇を取得した場合は、出産手当金との調整が生じる可能性があります。
産休に入る前に有給休暇を取得する場合、最終出勤日と産前休業開始日が一致しないことがあります。
有給休暇との関係は、 産休と有給の扱いに関する解説 も参考にしてください。
従業員本人は、会社から提示された日程を確認するだけでなく、「最終出勤日」「有給休暇の開始日」「産前休業の開始日」「産後休業の終了日」「育児休業の開始日」を一覧にしておくと分かりやすいですよ。
企業側も同じ日付一覧を本人と共有することで、認識のずれを防ぎやすくなります。
出産が早い・遅い場合の計算方法
出産予定日と実際の出産日がずれた場合は、産前休業と産後休業を分けて再計算します。
ここは、従業員本人からも企業の担当者からも、実際によくある相談です。
出産予定日はあくまで予定であり、実際の出産日が前後することは珍しくありません。
そのため、産休に入る時点では予定日を基準として仮の日程を作成し、出産後に実際の日付を使って確定するという二段階の管理が必要です。
予定日より早く出産した場合
予定日より早く出産した場合、産前休業は実際の出産日までで終了します。
そのため、当初予定していた産前休業期間より短くなることがあります。
例えば、出産予定日が10月15日で、産前休業を9月4日から取得していたものの、実際には10月8日に出産した場合、産前休業は9月4日から10月8日までです。
当初の予定より7日早く出産しているため、実際の産前休業は35日となります。
産後休業は10月9日から始まり、そこから56日間を数えます。
予定日より早く出産したからといって、産後休業が10月16日から始まるわけではありません。
必ず実際の出産日の翌日から計算します。
予定日より遅く出産した場合
予定日より遅く出産した場合は、出産予定日から実際の出産日までの遅れた日数も産前の期間に加わります。
例えば、出産予定日が10月15日で、実際の出産日が10月22日だった場合、産前休業は9月4日から10月22日までとなります。
通常の42日に遅れた7日を加え、実際の産前期間は49日です。
この延長は、本人が改めて会社へ産前休業の延長を申請しなければ無効になるというものではありません。
出産に至るまで産前の状態が続くため、実際の出産日まで産前休業が継続します。
| 出産の状況 | 産前休業 | 産後休業 | 実務上の確認 |
|---|---|---|---|
| 予定日どおり | 予定日まで | 出産翌日から56日 | 予定の日程を確定 |
| 予定日より早い | 実際の出産日までで終了 | 出産翌日から56日 | 終了予定日を前倒し |
| 予定日より遅い | 遅れた日数分だけ延長 | 出産翌日から56日 | 産前期間を延長 |
出産手当金の日数も変わる
例えば、出産予定日より7日遅れて出産した場合、単胎妊娠の産前期間は最大で42日ではなく49日になります。
出産手当金についても、所定の要件を満たせば、この遅れた7日間が支給対象に含まれます。
一方、予定日より7日早く出産した場合、予定日を基準として産前休業を開始していても、実際の産前期間は35日です。
そのため、予定日どおりの98日分ではなく、産前35日と産後56日を合わせた91日分が基本的な支給対象日数の目安になります。
ただし、実際の支給日数は、働いた日、給与が支払われた日、有給休暇を取得した日などを確認して決まります。
単にカレンダー上の産休期間を数えれば、そのすべてについて出産手当金が満額支給されるわけではありません。
出産日が変わっても、産後休業は短くなりません。
産後休業は、予定日ではなく実際の出産日の翌日から56日間で計算します。
予定より早く生まれた場合も、遅く生まれた場合も同じです。
企業側は届出の修正を確認する
企業側では、出産予定日をもとに社会保険料免除の手続きをした後、実際の出産日がずれた場合に、届出内容の変更が必要になることがあります。
出産後は、実際の出産日を必ず確認しましょう。
実務では、本人から口頭で出産の連絡を受けただけで処理を終えず、出産日、単胎か多胎か、産後休業終了日、育児休業開始日を記録します。
社会保険の申出内容だけでなく、給与計算、勤怠登録、出産手当金申請書の記載期間も見直してください。
予定日から出産日がずれた場合は、複数の手続きに影響します。
一つの届出だけ修正して、給与計算や休業管理が古い日付のまま残っていることもあるため、社内で使用している管理表やシステムを一括して更新することが大切です。
多胎妊娠の産休期間を計算する

双子や三つ子などの多胎妊娠では、産前休業を取得できる期間が通常より長くなります。
単胎妊娠が出産予定日の6週間前からであるのに対し、多胎妊娠は 出産予定日の14週間前から 取得できます。
日数にすると、単胎妊娠は42日、多胎妊娠は98日です。
産後休業については、多胎妊娠であっても8週間、つまり56日で変わりません。
| 妊娠の区分 | 産前休業 | 産後休業 | 予定日どおりの場合の合計 |
|---|---|---|---|
| 単胎妊娠 | 42日 | 56日 | 98日 |
| 多胎妊娠 | 98日 | 56日 | 154日 |
多胎妊娠は産前期間が56日長い
単胎妊娠の産前42日と、多胎妊娠の産前98日を比較すると、56日の差があります。
約8週間早く産前休業に入れる計算です。
例えば、双子の出産予定日が12月10日であれば、出産予定日を含めて98日前に当たる9月4日から産前休業を取得できます。
同じ出産予定日で単胎妊娠の場合は10月30日からとなるため、開始可能日には大きな差があります。
出産予定日が12月10日の場合
- 単胎妊娠の開始可能日:10月30日
- 多胎妊娠の開始可能日:9月4日
- 産前休業開始日の差:56日
産後休業は単胎妊娠と同じ
多胎妊娠の場合に長くなるのは産前休業です。
産後休業は、単胎妊娠と同じく実際の出産日の翌日から56日間となります。
予定日どおりに出産し、法定期間の初日から休んだ場合、多胎妊娠の産休期間は産前98日と産後56日を合わせた154日です。
ただし、実際の出産が予定日より遅れれば、遅れた日数分だけさらに産前期間が長くなります。
また、双子の出産が日付をまたいだ場合など、出産日をどのように扱うか個別確認が必要になるケースもあります。
通常は最後の子を出産した日を基準として産後期間を計算する取り扱いが考えられるため、該当する場合は会社だけで判断せず、管轄機関へ確認することをおすすめします。
会社は引き継ぎを早めに始める
多胎妊娠では、単胎妊娠よりも早い時期から休業に入れるため、会社側も引き継ぎや代替要員の準備を早めに進める必要があります。
本人から妊娠の報告を受けた段階で、出産予定日と多胎妊娠であることを確認し、産休開始可能日を計算します。
そのうえで、業務の棚卸し、引き継ぎ担当者、顧客への案内、社内権限の変更、休業中の連絡方法などを整理しましょう。
多胎妊娠では体調の変化によって、予定していた引き継ぎ期間を十分に確保できない可能性もあります。
本人に無理を求めるのではなく、早期から少しずつ業務を共有しておくことがリスク管理になります。
産前休業開始前に休む場合の扱い
本人の体調や医師の指示によっては、98日前となる産前休業の開始可能日よりも前に休業が必要になることがあります。
その場合、法定の産前休業ではなく、有給休暇、欠勤、休職、傷病手当金、母性健康管理措置などの適用を検討します。
医師等から通勤緩和、休憩、勤務時間短縮、休業などの指導を受けた場合には、母性健康管理指導事項連絡カードを会社へ提出する方法もあります。
会社は本人の申し出や医師の指導内容を踏まえ、適切な措置を検討しなければなりません。
多胎妊娠の休業期間や給付については、 双子の産休と給付に関する解説 でも詳しく整理しています。
多胎妊娠の場合は、休業期間が長くなる分、出産手当金の支給対象日数や社会保険料の免除月数も単胎妊娠より多くなる可能性があります。
休業開始予定日だけでなく、収入の見込みや住民税の納付方法も早めに確認しておくと安心です。
産後休業は出産翌日から計算する
産後休業は、 実際に出産した日の翌日から8週間、56日間 です。
出産予定日がいつであったかは、産後休業の計算には影響しません。
産前休業が本人の請求によって取得する制度であるのに対し、産後休業は母体保護のための就業禁止期間です。
本人が「早く仕事に戻りたい」と希望していても、会社の判断だけで自由に復職させることはできません。
出産翌日を1日目として数える
例えば、10月15日に出産した場合は、10月16日が産後休業の1日目です。
そこから56日間を数えると、12月10日が産後休業の最終日となり、原則として12月11日以降に復職または育児休業へ移行します。
10月15日に出産した場合
- 出産日:10月15日
- 産後休業開始日:10月16日
- 産後休業終了日:12月10日
- 復職可能日:原則として12月11日
- 育児休業を取得する場合:通常は12月11日から開始
出産日を産後休業の1日目として数えてしまうと、終了日が1日早くなります。
勤怠システムや社内の休業管理表へ登録する際は、出産日の翌日を開始日として入力してください。
産後8週間は原則として就業禁止
産後休業は産前休業と異なり、本人から請求がなくても会社が休ませなければなりません。
本人が希望したとしても、原則として産後8週間が経過するまでは就業させられません。
例えば、人手不足を理由に会社が早期復職をお願いすることや、本人が在宅勤務であれば問題ないと考えて業務を行うことも慎重に考える必要があります。
在宅勤務であっても、会社の指揮命令の下で仕事をすれば就業です。
勤務場所が自宅であることを理由に、産後休業の規制から外れるわけではありません。
会社から業務上の質問をする場合も、単なる近況確認を超えて、本人に資料作成、顧客対応、指示、承認などを継続的に求めれば、実質的な就労と評価される可能性があります。
引き継ぎは可能な限り産休前に完了させ、産後休業中の連絡は必要最小限にしましょう。
産後6週間経過後の例外
例外として、産後6週間を経過した後に、次の両方を満たす場合は、一定の業務に就くことができます。
- 本人が就業を請求していること
- 医師が支障ないと認めた業務であること
会社が本人へ復職を打診し、本人が同意しただけでは要件を満たしません。
本人からの請求と、医師が支障ないと認めた業務であることの双方が必要です。
また、医師が就業可能と判断した場合でも、すべての業務に復帰できるとは限りません。
「短時間勤務であれば可能」「身体的負担の少ない事務作業に限る」など、業務内容に条件が付くこともあります。
会社は医師の判断内容を確認し、その範囲内で業務を設定する必要があります。
会社から早期復職を求めたり、本人の希望だけで産後6週間以内に働かせたりすることはできません。
母体保護に関わる重要なルールであるため、企業側は慎重な対応が必要です。
産後休業から育児休業へ移る場合
産後休業の終了後に育児休業を取得する場合は、通常、産後休業終了日の翌日から育児休業へ移行します。
産後休業と育児休業は別の制度です。
産後休業は労働基準法に基づく母体保護のための休業であり、育児休業は育児・介護休業法に基づく子を養育するための休業です。
企業側は同じ休業として一括処理せず、社会保険の申出や雇用保険の給付手続きを分けて管理します。
本人が産後休業終了後にすぐ復職する場合は、復職日、勤務時間、母乳育児のための育児時間、時間外労働や深夜業の制限なども確認しておきましょう。
育児休業を取得する場合は、申出期限や育児休業給付の申請に必要な書類を早めに案内します。
復職時期については、会社への申出内容や保育園の入園状況だけでなく、本人の体調も重要です。
法定期間が終了したから必ず復職しなければならないと単純に考えず、育児休業や会社独自の休暇制度を含めて検討してください。
産休の計算で確認するお金と手続き
産休期間が確定したら、次に出産手当金、社会保険料免除、給与、住民税を確認します。
それぞれ計算の基準が異なるため、産休期間だけを見て手取り額を判断することはできません。
ここからは、収入と負担の両面を整理します。
出産手当金は日単位、社会保険料免除は月単位、給与は会社の締日や給与規程、住民税は前年所得を基準に扱われます。
同じ産休に関係するお金でも計算単位が異なることが、中小企業の給与計算で迷いやすいポイントです。
出産手当金の計算方法を確認する
出産手当金は、健康保険の被保険者本人が、出産のために会社を休み、その期間について十分な給与を受けられない場合に支給される給付です。
産休中は、会社に給与を支払う法律上の義務がないため、無給となる企業が少なくありません。
出産手当金は、そのような休業中の所得減少を補う役割を持っています。
出産手当金を受けられる基本要件
出産手当金を受けるには、主に次の要件を確認します。
- 勤務先の健康保険の被保険者本人であること
- 出産のために仕事を休んでいること
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
- 給与が支払われても、出産手当金の日額より少ないこと
- 支給対象となる期間内の休業であること
勤務先の健康保険や共済組合に加入している本人が対象であり、家族の健康保険上の扶養に入っている方には原則として支給されません。
また、市区町村の国民健康保険には、原則として出産手当金の制度がありません。
例えば、夫の健康保険の被扶養者である方が出産した場合、出産育児一時金の対象になることはありますが、被扶養者本人に出産手当金が支給されるわけではありません。
名称が似ているため、二つの給付を混同しないようにしましょう。
支給対象期間の基本
出産手当金の支給対象となる基本的な期間は、次のとおりです。
- 単胎妊娠:出産日以前42日から出産翌日以後56日まで
- 多胎妊娠:出産日以前98日から出産翌日以後56日まで
- 予定日より遅れた場合:出産予定日から実際の出産日までの期間も対象
ただし、この期間に入っているだけで一律に支給されるわけではありません。
実際に会社を休み、その日について給与が支払われていないことが基本的な要件です。
出産手当金の概算額
1日当たりの支給額 × 支給対象となる休業日数
98日分は必ず支給されるわけではない
単胎妊娠で予定日どおりに出産し、産前42日と産後56日の全期間を無給で休んだ場合は、98日分が一つの目安になります。
しかし、産前休業開始可能日より後まで勤務した場合は、勤務した日数分だけ支給対象日数が少なくなります。
有給休暇を取得した日や、会社から通常の給与が支払われた日についても、出産手当金が支給されないか、差額支給になることがあります。
また、土曜日、日曜日、祝日など会社の所定休日であっても、支給対象期間内で要件を満たしていれば、出産手当金の対象日数に含まれる場合があります。
出産手当金は、所定労働日だけを対象とする給付ではなく、暦日単位で考える制度だからです。
そのため、「産休中の平日だけを数える」「会社の営業日だけを数える」という計算は適切ではありません。
実際の申請では、支給対象期間と給与の支払い状況を健康保険者が確認して決定します。
出産育児一時金との違い
出産手当金は、出産費用に充てる出産育児一時金とは別の制度です。
出産育児一時金は主に出産費用への給付、出産手当金は休業中の所得保障という違いがあります。
| 制度 | 主な目的 | 対象者の考え方 | 金額の考え方 |
|---|---|---|---|
| 出産手当金 | 休業中の所得保障 | 健康保険の被保険者本人 | 標準報酬月額と休業日数で計算 |
| 出産育児一時金 | 出産費用の負担軽減 | 被保険者または被扶養者 | 制度上定められた額 |
相談を受ける際には、「出産時にもらえるお金」という一括した理解ではなく、出産費用に関する給付と、会社を休んだことに対する給付を分けて説明しています。
どちらも申請が必要になるため、加入している健康保険の案内を確認してください。
標準報酬月額から支給額を求める

協会けんぽにおける出産手当金の1日当たりの支給額は、原則として次の式で計算します。
支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額の平均額 ÷ 30 × 3分の2
この計算式を見ると、現在の月給のおよそ3分の2が支給されると思われやすいのですが、厳密には現在の基本給や手取り額を基準とするわけではありません。
支給開始日前の標準報酬月額を使う点が重要です。
標準報酬月額とは何か
標準報酬月額とは、基本給そのものではありません。
基本給、通勤手当、役職手当、残業手当など、労働の対償として支給される報酬を一定の等級に当てはめた金額です。
例えば、給与の総支給額が毎月26万3,000円だったとしても、標準報酬月額が必ず26万3,000円になるわけではありません。
一定の幅ごとに設定された等級に当てはめるため、標準報酬月額は26万円などの区切られた金額になります。
また、毎月の残業時間が変動して給与額が上下していても、標準報酬月額が毎月変わるわけではありません。
原則として定時決定や随時改定などの仕組みにより決定されます。
給与明細に記載された総支給額をそのまま30で割る計算ではないため、正確な標準報酬月額は、会社の人事労務担当者や加入している健康保険へ確認する必要があります。
支給開始日とは何か
計算式にある支給開始日とは、出産手当金が最初に支給されることとなった日です。
一般的には、出産手当金の対象期間内で、最初に会社を休み、給与が支払われなかった日となります。
例えば、産前休業を取得できる初日から無給で休んだ場合は、その日が支給開始日になると考えられます。
一方、産前休業に入ってから数日間は有給休暇を使い、その後に無給となった場合は、無給となった最初の日が支給開始日になる可能性があります。
どの月までの標準報酬月額を平均するかに関係するため、有給休暇や給与支給の状況によっては計算の基準となる期間が変わることがあります。
標準報酬月額26万円の計算例
例えば、支給開始日前12カ月の標準報酬月額の平均が26万円だった場合、概算は次のようになります。
| 計算内容 | 概算額 |
|---|---|
| 26万円 ÷ 30日 | 約8,667円 |
| 約8,667円 × 3分の2 | 約5,778円 |
| 約5,778円 × 98日 | 約56万6,000円 |
この例では、1日当たりの出産手当金は約5,778円、98日分の総額は約56万6,000円となります。
ただし、実際には所定の端数処理があります。
協会けんぽでは、平均した標準報酬月額を30で割った額について10円未満を四捨五入し、その後3分の2を掛けた金額について1円未満を四捨五入する計算が示されています。
この金額は、あくまで一般的な目安です。
端数処理、実際の休業日数、標準報酬月額の履歴、給与の支給状況などによって、最終的な支給額は変わります。
被保険者期間が12カ月未満の場合
支給開始日以前の被保険者期間が12カ月未満の場合は、通常の12カ月平均をそのまま使うことができません。
協会けんぽでは、支給開始日が属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額と、協会けんぽが定める全被保険者の標準報酬月額の平均額を比較し、低い方を使う取り扱いがあります。
この基準額は改定される可能性があります。
転職して健康保険の加入期間が短い方や、入社後間もなく産休に入る方は、古い金額を使って自己計算しないようにしてください。
転職前後で健康保険の保険者が変わっている場合や、任意継続期間がある場合などは、どの標準報酬月額を計算に含められるか個別確認が必要です。
加入履歴だけを見て自己判断せず、健康保険者へ確認しましょう。
支給額の計算方法、端数処理、加入期間が12カ月未満の場合の基準は、 全国健康保険協会「出産育児一時金・出産手当金」 で最新情報をご確認ください。
給与がある場合の差額を計算する
産休中に会社から給与が支払われる場合、出産手当金と給与をそのまま両方満額で受け取れるとは限りません。
出産手当金は、会社を休んだことによる所得減少を補う給付です。
そのため、会社から十分な給与が支払われている日について、健康保険から同じ目的の給付を重ねて満額受け取る仕組みではありません。
給与が手当金日額以上か未満かを確認する
休業した1日について支払われた給与の日額が、出産手当金の日額以上であれば、その日の出産手当金は原則として支給されません。
給与の日額が出産手当金の日額を下回る場合は、差額が支給されます。
| 休業中の給与 | 出産手当金の扱い |
|---|---|
| 給与なし | 要件を満たせば全額支給 |
| 給与が手当金日額未満 | 差額を支給 |
| 給与が手当金日額以上 | 原則として支給なし |
例えば、出産手当金の日額が5,778円で、会社から休業1日当たり3,000円相当の給与が支払われた場合、単純な考え方では2,778円が差額支給の目安となります。
給与の日額が6,000円であれば、出産手当金の日額5,778円以上となるため、その日について出産手当金は原則として支給されません。
月給制では給与の対象期間を確認する
ただし、月給制の場合は、支給された給与をどの期間に対応するものとして扱うかを確認する必要があります。
例えば、月末締め翌月25日払いの会社では、産休に入った後に振り込まれた給与が、産休前に働いた期間の給与であることがあります。
振込日が産休期間中であるという理由だけで、出産手当金との調整対象になるわけではありません。
重要なのは、いつ振り込まれたかではなく、その給与がどの勤務期間に対応するものかです。
給与明細の支給対象期間、勤怠締日、欠勤控除の計算期間を確認します。
実務では、出産手当金支給申請書の事業主証明欄において、休業期間中に支払った報酬の有無や金額を会社が証明します。
給与担当者は、支給日だけで判断せず、対象期間を正確に確認してください。
各種手当が継続する場合
通勤手当、住宅手当、資格手当、役職手当などが産休中も支給される会社では、出産手当金の調整対象になる可能性があります。
例えば、基本給は無給でも、住宅手当だけが毎月支給されるケースがあります。
この場合、「基本給がないから出産手当金は全額支給される」とは限りません。
休業期間に対応して支払われる報酬があれば、その内容を申請書に正確に記載する必要があります。
一方で、産休前の勤務実績に基づく残業代や、過去の評価期間に対応する賞与など、休業期間そのものに対する給与ではないものもあります。
どの支給が調整対象になるか判断が難しい場合は、加入している健康保険へ確認しましょう。
有給休暇を使った場合
有給休暇を取得した日は、通常、会社から賃金が支払われます。
そのため、有給休暇の日については出産手当金が支給されないか、賃金額が出産手当金の日額より少ない場合に差額支給となる可能性があります。
有給休暇を取得した日は通常の賃金が支払われるため、その日の出産手当金が支給されないか、差額支給になることがあります。
短期的な受取額だけでなく、有給休暇を復職後に残す必要性も考えて判断しましょう。
有給休暇を使うかどうかは、単純に「有給休暇の方が得」「出産手当金の方が得」と決められるものではありません。
有給休暇は通常賃金が支払われるため、当面の収入は多くなりやすい一方、復職後に子どもの通院や体調不良で休むための有給休暇が減ります。
また、産休開始前に有給休暇を使う場合と、産休期間に入ってから有給休暇を使う場合では、出産手当金への影響が異なります。
本人の希望だけでなく、会社の有給休暇管理や健康保険の取り扱いを確認してください。
給与の誤申告は後日の返還につながる
出産手当金の申請後に、休業期間中の給与が支払われていたことが判明すると、支給額の再計算や返還が必要になる場合があります。
企業側は、申請時点で給与額がまだ確定していない場合、見込みで曖昧に記載するのではなく、給与計算を確定させてから証明することが基本です。
産休中に支給する手当を給与システム上で設定している場合は、その手当が休業期間に対応する報酬かどうかも確認します。
具体的な調整方法は、賃金の内容や健康保険者の審査によって異なります。
最終的な支給額は、加入している健康保険へ確認してください。
社会保険料の免除期間を計算する
産前産後休業を取得し、会社が所定の手続きをすると、産休期間中の健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。
本人負担分だけでなく、会社負担分も免除の対象です。
産休中に給与が支払われているかどうかは、社会保険料免除の要件とは別です。
産前産後休業を取得して所定の申出が行われていれば、有給の産休であっても免除対象になる可能性があります。
免除期間は月単位で計算する
免除期間は、次のルールで計算します。
- 開始:産前産後休業を開始した月
- 終了:休業終了日の翌日が属する月の前月
- 休業終了日が月末の場合:終了月まで免除
- 本人負担分と事業主負担分の両方が免除
出産手当金は原則として日単位で計算しますが、社会保険料免除は月単位です。
産休開始日が月の1日であっても月末であっても、その開始月が免除対象になる点が特徴です。
例えば、9月4日から産休を開始した場合も、9月30日から開始した場合も、所定の要件を満たせば9月分の健康保険料と厚生年金保険料が免除対象になります。
月途中で産休が終了する場合
例えば、産休期間が9月4日から12月10日までの場合、終了日の翌日は12月11日です。
終了日の翌日が属する月は12月なので、その前月である11月分までが免除対象となります。
したがって、9月、10月、11月の社会保険料が免除されます。
12月10日まで産後休業を取得していても、12月分まで免除されるわけではありません。
「終了日の属する月」ではなく、 終了日の翌日が属する月の前月 というルールで確認します。
月末に産休が終了する場合
一方、産休終了日が12月31日であれば、終了日の翌日は1月1日です。
その前月は12月となるため、12月分まで免除されます。
| 産休終了日 | 終了日の翌日 | 翌日が属する月 | 免除終了月 |
|---|---|---|---|
| 12月10日 | 12月11日 | 12月 | 11月 |
| 12月30日 | 12月31日 | 12月 | 11月 |
| 12月31日 | 1月1日 | 1月 | 12月 |
月末か月末以外かによって、免除される月数が1カ月変わる場合があります。
ただし、産後休業の終了日を保険料免除のために任意に変更することはできません。
実際の出産日と法定の産後休業期間に基づいて計算します。
会社が申出書を提出する
免除を受けるには、会社が産前産後休業取得者申出書を日本年金機構または健康保険組合へ提出します。
本人が年金事務所へ直接申請する手続きではなく、本人から産前産後休業の申出を受けた事業主が手続きを行います。
企業側は、本人から産休の申出を受けた段階で、出産予定日、休業開始予定日、休業終了予定日、単胎か多胎かを確認してください。
提出できる期間は、原則として産前産後休業中、または休業終了後の終了日から起算して1カ月以内です。
産休開始前に提出することはできないため、電子申請や事務センターへの提出時期に注意しましょう。
出産日がずれた場合は変更届を確認する
出産予定日をもとに申し出た後、実際の出産日がずれた場合は、産前産後休業取得者変更(終了)届による修正が必要になることがあります。
例えば、予定日より出産が遅れれば産前休業が延び、産後休業終了予定日も後ろへずれます。
予定日より早く出産した場合は、産前期間が短くなり、産後休業の開始日と終了日が前倒しになります。
変更後の日付によっては、社会保険料の免除終了月が変わる可能性があります。
出産後に実際の出産日を確認したら、最初に提出した申出内容と照合しましょう。
社会保険料が免除された期間も、将来の年金額を計算するときは保険料を納付した期間として扱われます。
免除を受けたことを理由に、その期間分の年金額が減る仕組みではありません。
給与明細の控除月にも注意する
会社によって、社会保険料を当月給与から控除する方法と、翌月給与から控除する方法があります。
そのため、9月分の保険料が免除になったとしても、9月支給給与の控除が必ずゼロになるとは限りません。
例えば、翌月控除の会社では、9月支給給与から8月分の社会保険料を控除し、10月支給給与から控除する予定だった9月分が免除となります。
従業員本人は、産休開始月の給与明細に社会保険料が記載されているからといって、直ちに会社の処理が誤っていると判断しないようにしてください。
企業側は、免除対象月と給与からの控除月を分けて説明すると、本人の疑問を解消しやすくなります。
社会保険料免除の反映時期について、産休前に案内しておくとよいでしょう。
産休中の給与を日割り計算する
労働基準法には、産休中の給与を会社が支払わなければならないという規定はありません。
そのため、産休中を無給としている会社が多く、無給期間の生活保障として出産手当金が設けられています。
ただし、会社の就業規則や給与規程で、産休中も一定の給与を支給すると定めている場合は、その規定に従います。
会社独自の制度として基本給の一部を支給する企業や、公務員・共済制度などで異なる取り扱いが設けられている場合もあります。
まず就業規則と給与規程を確認する
月の途中から産休に入る場合や、月の途中で産休が終了する場合は、勤務した期間の給与を日割り計算することがあります。
しかし、法律に全国一律の日割り計算式が定められているわけではありません。
会社の就業規則、給与規程、雇用契約書などに定められた方法で計算します。
実務で確認する主な規定は、産前産後休業中の賃金、欠勤控除、休職時の給与、月途中入退社の日割り、各種手当の取り扱いです。
産休中は無給とだけ規定していて、日割り方法が書かれていない会社もあります。
この場合、従来の欠勤控除方法や他の休職者に対する運用との整合性を確認する必要があります。
代表的な日割り計算方法
代表的な方法は次のとおりです。
| 計算方法 | 考え方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 暦日数による計算 | 月給をその月の暦日数で割る | 休日を含めて日数を数える |
| 所定労働日数による計算 | 月給をその月の所定労働日数で割る | 勤務予定日を基準にする |
| 年間平均による計算 | 月平均所定労働日数などを使う | 月ごとの単価変動を抑えやすい |
どの方法が常に正しいということではありません。
重要なのは、就業規則等に根拠があり、従業員ごとや月ごとに恣意的に方法を変えず、一貫して運用することです。
暦日数で控除する例
例えば、基本給24万円を暦日数30日で日割りする会社で、無給となる産休日数が10日なら、控除額の単純な目安は8万円です。
暦日数による計算例
24万円 ÷ 30日 × 10日 = 8万円
この方法では、土曜日や日曜日などの所定休日を含め、休業期間の暦日数で控除します。
月によって28日、29日、30日、31日と日数が異なるため、1日当たりの控除額も変わります。
所定労働日数で控除する例
一方、所定労働日数20日で計算する会社では、無給となる所定労働日が8日なら、控除額の目安は9万6,000円となります。
所定労働日数による計算例
24万円 ÷ 20日 × 8日 = 9万6,000円
この方法では、産休期間中の休日を控除日数に含めず、勤務する予定だった日のみを対象とすることが一般的です。
同じ月給と休業期間でも、暦日数方式とは結果が異なります。
また、シフト勤務者の場合は、その月の勤務予定が確定しているか、平均所定労働日数を使うかなど、会社の規程によって計算が変わります。
基本給と各種手当を分けて考える
給与の日割り計算では、すべての手当を同じ方法で控除するとは限りません。
例えば、基本給は日割り控除し、通勤手当は実際の通勤日数に応じて精算し、役職手当は産休開始月まで全額支給するという規程も考えられます。
住宅手当や家族手当など、勤務日数に直接連動しない手当を日割りするかどうかも会社の規程によります。
固定残業代を支給している場合、産休によって労働がない期間にも固定残業代を満額支給するのか、基本給と同じように日割り控除するのかを確認します。
固定残業代の控除方法が曖昧な会社では、産休に限らず欠勤時の給与計算でも問題が生じやすいため、給与規程の整備が必要です。
会社が都合のよい方法をその都度選ぶことは適切ではありません。
欠勤控除や休職時の日割り計算については、就業規則や給与規程に定め、継続して同じ基準で運用することが重要です。
最低賃金や過大控除にも注意する
日割り計算の結果、実際に勤務した時間に対する賃金が最低賃金を下回らないか、控除額が本来支給すべき給与を超えていないかも確認が必要です。
特に、基本給だけでなく各種手当を一律に日割り控除した結果、勤務した日数に対する賃金まで過大に減額してしまうケースがあります。
給与計算担当者は、「休業期間を無給にすること」と「勤務した期間の賃金を正しく支払うこと」を分けて考えてください。
出産手当金との調整も確認する
日割り後の給与が支給される月は、出産手当金との調整が必要になる場合があります。
例えば、産休開始月に勤務日分の給与と、休業期間に対応する固定手当が支給される場合、どの金額が出産手当金の支給対象期間に対応するのかを確認します。
会社が申請書へ記載する給与額と、給与明細の金額が一致しない場合は、その理由を説明できるようにしましょう。
給与計算担当者は、給与の支給日だけでなく、給与の対象期間、産休開始日、出産手当金の申請期間を日単位で照合することが重要です。
産休中の住民税と手続きを確認する

社会保険料には産前産後休業中の免除制度がありますが、住民税には同じような免除制度はありません。
産休によって現在の給与が減っても、住民税がすぐにゼロになるわけではない点に注意が必要です。
産休中の家計を考える際は、社会保険料が免除されることだけを見て、税金もすべてかからなくなると思わないようにしましょう。
特に住民税は、給与がなくなった後も支払いが続くため、事前の確認が大切です。
住民税は前年の所得をもとに決まる
住民税は、原則として前年の所得をもとに計算され、翌年6月から翌々年5月まで納付します。
そのため、産休に入った時点ですでに決まっている住民税は、産休中も納付しなければなりません。
例えば、2026年10月から産休に入り給与が無給になったとしても、2026年6月から2027年5月まで納める住民税は、原則として2025年の所得を基に決定されています。
2026年10月以降の収入が減ったことは、その住民税額に直ちには反映されません。
住民税の基本的な考え方
- 現在の住民税は前年の所得を基に計算される
- 産休に入っても決定済みの住民税は原則として納付する
- 産休による所得減少は翌年度以降の住民税に反映される
- 出産手当金自体は原則として非課税
給与から天引きできない場合がある
通常、会社員の住民税は、会社が毎月の給与から天引きして自治体へ納付する特別徴収という方法が使われています。
しかし、産休中に給与が支給されない場合、天引きする給与がありません。
そのため、会社と本人の間で別の納付方法を決める必要があります。
産休中の住民税については、会社の運用や自治体への届出状況により、主に次のような対応が考えられます。
- 産休前の最後の給与や賞与からまとめて控除する
- 本人が会社へ毎月振り込む
- 会社が一時的に立て替え、復職後に精算する
- 普通徴収へ切り替え、本人が納付書で支払う
どの方法を採るかは、会社の給与計算方法、産休期間、自治体への手続き状況などによって異なります。
産休に入る前に、会社の担当者へ納付方法を確認しておくと安心です。
最後の給与から一括控除する場合
産休前の最後の給与や賞与から、産休中に納付予定の住民税をまとめて控除する会社もあります。
この方法は、産休中に本人が毎月振り込む手間を減らせる一方、産休前の最後の手取り額が大きく減る可能性があります。
本人へ事前に説明せず多額を控除すると、「給与計算が間違っているのではないか」というトラブルになりやすいため、控除額と対象月をあらかじめ伝えてください。
また、給与額より一括控除額が大きい場合には、給与から全額を控除できません。
会社と本人で別の方法を検討する必要があります。
会社へ振り込む場合
特別徴収を継続し、本人が毎月会社へ住民税相当額を振り込む方法もあります。
この場合、会社は本人から受け取った金額を自治体へ納付します。
実務上は、振込期日、振込先、振込手数料の負担、本人が振り込まなかった場合の連絡方法を明確にしておく必要があります。
本人の入金が遅れても、会社の自治体への納付期限が自動的に延びるわけではありません。
会社が長期間立て替える運用をする場合は、復職後の給与から一度に控除すると本人の手取りが大きく減る可能性があります。
立替額、精算方法、毎月の控除上限について、書面で確認しておくことをおすすめします。
普通徴収へ切り替える場合
普通徴収へ切り替えた場合、自治体から本人へ納付書が送付され、本人が金融機関やコンビニエンスストアなどで納付します。
会社への振込が不要になる一方、本人が納期限を管理しなければなりません。
里帰り出産などで住民票上の住所を長期間離れる場合、納付書を確認できないこともあるため、郵便物の管理方法を考えておきましょう。
特別徴収から普通徴収へ切り替えられるか、どのような届出が必要かは自治体の取り扱いによります。
会社の担当者は、所在地の自治体へ確認してください。
出産手当金は原則として非課税
出産手当金は所得税法上、原則として非課税です。
そのため、出産手当金そのものに所得税や住民税が課税されるわけではありません。
ただし、産休前後に会社から支払われる給与や賞与は通常どおり課税対象になります。
また、産休開始月に日割り給与が支払われれば、その給与について所得税が源泉徴収される場合があります。
年の途中で産休に入り、年間の給与収入が当初の見込みより少なくなった場合、年末調整で所得税が還付される可能性があります。
年末調整の時期に会社から必要書類の提出案内が届いたら、産休中であっても期限を確認しましょう。
産休によって年間所得が減った場合、その影響は翌年度の住民税に反映されます。
現在納めている住民税が、現在の産休中の収入を基準に計算されているわけではありません。
産休前に資金計画を立てる
出産手当金は、毎月の給与と同じ日に自動的に振り込まれるものではありません。
出産後に医師や会社の証明を受けて申請し、健康保険者の審査を経て支給されます。
そのため、産休開始後しばらくは給与も出産手当金も入らない期間が生じる可能性があります。
その間も住民税、生活費、家賃、ローン、保険料、出産関連費用などの支払いは続きます。
私は相談を受ける際、出産手当金の総額だけでなく、いつ申請できるか、いつ頃の支給が見込まれるか、産休中にどの支払いが残るかを一覧にするようおすすめしています。
給付の総額が十分でも、入金までの期間に資金が不足することがあるからです。
産休の計算で迷う項目を整理する
産休の計算では、休業期間だけを求めて終わりにせず、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
- 出産予定日から産前休業の開始可能日を計算する
- 実際の出産日から産後休業の終了日を計算する
- 標準報酬月額から出産手当金の概算額を求める
- 社会保険料が免除される開始月と終了月を確認する
- 給与の日割り方法と住民税の納付方法を確認する
最初に5つの日付を整理する
まず、次の5つの日付を一覧にしてください。
- 出産予定日
- 産前休業を開始できる日
- 実際に産前休業を開始する日
- 実際の出産日
- 産後休業の終了日
出産前の段階では、実際の出産日はまだ分かりません。
そのため、出産予定日を基準に仮の日程を作成します。
出産後は、実際の出産日を使って産前休業の終了日、産後休業の開始日と終了日を確定してください。
企業側では、予定日による管理表と、出産後に確定した管理表を分けると分かりやすいです。
古い予定日を上書きしてしまうと、当初の届出内容を確認できなくなるため、変更履歴を残しておきましょう。
従業員本人が確認する項目
従業員本人は、会社から案内された産休開始日だけでなく、次の内容を確認しておきましょう。
- 産休中の給与が有給か無給か
- 月途中の給与の日割り方法
- 出産手当金の申請時期と申請方法
- 会社が申請書を準備するのか
- 社会保険料が免除される月
- 住民税をどの方法で支払うか
- 産後休業後に育児休業を取得するか
- 育児休業給付の手続きを誰が行うか
特に、出産手当金は産休開始と同時に振り込まれるわけではありません。
申請できる時期と会社の証明スケジュールを確認し、入金までの生活費を準備してください。
会社独自の出産祝金、付加給付、団体保険などがある場合もあります。
法定制度だけでなく、福利厚生制度の案内も確認しておくとよいでしょう。
企業側が確認する項目
企業側は、出産予定日を聞いた段階で休業予定期間を整理し、本人の申出、給与計算、社会保険料免除、出産手当金の事業主証明を一連の手続きとして管理することが重要です。
| 時期 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 妊娠の申出時 | 出産予定日、多胎妊娠の有無、業務上の配慮 |
| 産休前 | 開始日、給与、住民税、引き継ぎ、育児休業予定 |
| 産休開始後 | 社会保険料免除の申出、勤怠登録 |
| 出産後 | 実際の出産日、産後休業終了日、届出変更 |
| 申請時 | 出産手当金の事業主証明、給与支給状況 |
| 産後休業終了前 | 復職または育児休業への移行 |
複数の担当者が手続きを分担している会社では、人事担当者が休業日を管理し、給与担当者が日割り計算を行い、社会保険担当者が免除申出を行うことがあります。
担当者間で日付が共有されていないと、それぞれ異なる期間で処理してしまう可能性があります。
一つの管理表に、出産予定日、休業開始日、実際の出産日、産後休業終了日、育児休業開始日、各種届出日をまとめると管理しやすくなります。
予定日と出産日がずれたら全項目を見直す
特に、出産予定日と実際の出産日がずれた場合は、産休期間、出産手当金の対象期間、社会保険料免除の届出内容をそれぞれ見直す必要があります。
予定日より出産が遅れた場合は、産前休業と出産手当金の対象期間が長くなります。
予定日より早く出産した場合は、産前期間が短くなり、産後休業の開始日と終了日が前倒しになります。
次の項目をまとめて確認してください。
- 勤怠システムの産前産後休業期間
- 産前産後休業取得者申出書の変更要否
- 社会保険料の免除終了月
- 出産手当金申請書の申請期間
- 給与の日割り計算期間
- 育児休業の開始日
- 社内の復職予定日
予定日どおりに出産することを前提に、すべての処理を確定させないようにしましょう。
出産後に確定する手続きを、予定日だけで完了扱いにしないことが大切です。
計算結果は一つずつ照合する
産休や育休の計算ツールは便利ですが、入力した日付が正しくなければ結果も誤ります。
単胎と多胎の選択、出産予定日と実際の出産日の区別、出産日を産前に含める数え方などを確認してください。
また、産休期間を計算できても、出産手当金の金額、社会保険料免除、給与の日割り、住民税まで自動的に正しく算出できるとは限りません。
各制度で使う日付と計算単位が異なるためです。
本記事の計算例は、制度を理解するための一般的な目安です。
加入している健康保険、標準報酬月額、給与規程、実際の休業日数、給与の支給状況などにより結果は異なります。
産休の計算では、 休業期間、出産手当金、社会保険料免除、給与、住民税を別々に計算したうえで、最後に全体を照合する ことが重要です。
どれか一つだけを確認すると、実際の手取り額や会社の手続きに漏れが生じる可能性があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別の給与計算や社会保険手続きについて判断が難しい場合は、会社の担当者、加入先の健康保険、日本年金機構などへ確認し、 最終的な判断は専門家にご相談ください。