こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
育休後に職場へ復職せず、そのまま退職することは法律上可能です。
育休を取得した以上、必ず一度は復職しなければならないというルールはありません。
ただし、育児休業給付金は職場復帰を前提とした給付であるため、退職をいつ決めたのかによって扱いが変わります。
育休の当初から退職を予定していた場合は支給対象になりませんが、受給資格確認後に退職することになった場合は支給対象となり、2025年4月1日以降の退職であれば退職日まで支給対象になります。
また、受給資格確認の時点で退職が予定されていた場合を除けば、それまで受け取った育児休業給付金を、退職したという理由だけで返す必要はありません。
ここで大切なのは、「育休後に辞めた」という結果だけを見ないことです。
育休を取得した当初は復職する予定だったのか、受給資格確認後に事情が変わったのか、いつ退職の意思が固まったのかによって整理する必要があります。
この記事では、育休後や育休中の退職を考えている方に向けて、退職できるのか、給付金はいつまで受け取れるのか、返還が必要になるケース、会社への伝え方と退職時の手続きを順番に整理します。
- 育休から復職せず退職できるか
- 退職すると育児休業給付金がいつまで支給されるか
- 受給済みの給付金を返還する必要があるか
- 会社への伝え方と退職時に必要な手続き

育休後に退職できる?法律と給付金の基本
育休後の退職では、「会社を辞められるか」という労働契約上の問題と、「育児休業給付金を受け取れるか」という雇用保険上の問題を分けて考えることが重要です。
退職そのものが禁止されているわけではありませんが、給付金については退職を決めた時期が大きなポイントになります。
この二つを混同すると、「育休後に退職したから給付金を全部返さなければならない」「一度復職しなければ退職できない」といった誤解につながります。
育児休業の対象者・期間・給付金の全体像は、 育児休業とは何か、対象者・期間・給付金をまとめた解説 で整理しています。
復職せずそのまま退職しても問題ない
育児・介護休業法には、育児休業を取得した労働者について、育休終了後に必ず一度会社へ復帰しなければならないという規定はありません。
そのため、育休を取得した後に事情が変わり、復職せずに退職するという選択自体が法律で禁止されているわけではありません。
たとえば、育休取得時には復職する予定だったものの、保育所への入所が決まらない、子どもの体調や家庭環境が変わった、配偶者との役割分担が変わった、復職後の勤務時間では育児との両立が難しいと判断した、といった理由から育休中に今後の働き方を見直すことはあり得ます。
重要なのは、そうした事情の変化によって後から退職を選ぶことと、最初から退職する予定で育休を取得することを分けて考えることです。
無期雇用と有期雇用では退職ルールが異なる
退職については、雇用契約に期間の定めがあるかどうかも確認する必要があります。
正社員など、期間の定めのない雇用契約については、民法627条1項により、労働者はいつでも解約の申入れをすることができ、原則として申入れから2週間を経過すると雇用契約が終了します。
一方、契約社員などの有期雇用で、契約期間の途中に退職しようとする場合は同じ2週間ルールをそのまま当てはめることはできません。
民法628条では、期間を定めた契約について「やむを得ない事由」がある場合に直ちに契約を解除できるという別の規定が置かれています。
有期契約では契約期間や更新状況などによって整理が変わるため、途中退職を考えている場合は個別に確認したほうが安全です。
就業規則の退職手続きも確認しておきましょう。
会社の就業規則では、「退職する場合は1か月前までに申し出る」など、社内の手続きとして退職申出の時期を定めていることがあります。
民法上の退職の効力と就業規則上の手続きをどう整理するかは個別事情も関係するため、一律に「就業規則は無視してよい」と考えるのはおすすめできません。
円満に進めるのであれば、退職を決めた時点で就業規則を確認し、可能な範囲で早めに会社へ連絡しておくとよいでしょう。
育休中は会社へ出勤していないため、「会社が退職を認めてくれなければ辞められないのでは」と考えることもあるかもしれません。
しかし、少なくとも期間の定めのない雇用について、退職の効力そのものが会社の承認によって初めて発生する仕組みではありません。
ただし、退職日をいつにするかは育児休業給付金、社会保険、雇用保険などにも影響します。
単に「最短で辞められる日」だけで決めるのではなく、希望する退職日と各制度の手続きを一緒に確認しておくことが実務上は重要です。
「育休を取得したから辞められない」ということではありません。
まずは「退職できるか」という労働契約の問題と、「育児休業給付金をどこまで受け取れるか」という雇用保険の問題を切り分けて考えましょう。
育休は職場復帰を前提とした制度

退職自体は禁止されていませんが、育児休業給付金については別の考え方が必要です。
厚生労働省は、育児休業給付について 育児休業終了後の職場復帰を前提とした給付金 と明確に説明しています。
ここでいう「職場復帰を前提」という言葉は、「給付金を一度受け取った以上、必ず1日でも復職しなければならない」という意味ではありません。
育児休業を取得して給付金を受ける段階で、職場へ戻ることを前提としていたかという制度の趣旨を示しています。
そのため、育児休業を取得する当初からすでに退職することが決まっており、職場復帰を予定していない場合は、育児休業給付金の支給対象にはなりません。
出生後休業支援給付金についても、当初から退職を予定している場合は支給対象外とされています。
反対に、育休を開始した時点では復職する予定で、その後、育児休業給付金の受給資格確認を受けてから家庭の事情などが変わり、退職することになった場合は支給対象になります。
つまり、最終的に復職したかどうかだけで支給の適否が決まるわけではありません。
受給資格確認後なら何でも支給されるわけではない
ここは誤解しやすいところです。
「受給資格確認後に退職することになった場合は支給対象」というルールは、受給資格確認を受けた後なら、その後の状況に関係なく無条件で給付金が支払われるという意味ではありません。
育児休業給付金には、もともと各支給単位期間についての支給要件があります。
育休中に一定以上就業していないこと、休業期間中に会社から支払われた賃金の状況など、通常の支給要件を満たしていることが前提です。
そのうえで、受給資格確認後に退職することとなり、支給対象期間中に退職した場合は、現在の制度では退職日までが支給対象になるという整理です。
整理すると、確認する順番は次のとおりです。
- 育休の当初から退職する予定だったか
- 育児休業給付金の受給資格確認後に退職が決まったか
- 通常の育児休業給付金の支給要件を満たしているか
- 支給対象期間中の何日に退職するのか
特に「復職しなかった=給付金を不正に受け取った」という単純な整理はしないことが重要です。
受給資格確認後に事情が変わって退職することになったケースと、育休取得の当初から退職する予定だったケースでは、制度上の扱いが異なります。
厚生労働省のQ&Aでは、受給資格確認後に退職することになった場合の支給、退職日までの支給、受給済み給付の返還について明確に示されています。
会社から退職を強要された場合の注意点
ここまで説明したのは、本人が自分の意思で育休後の退職を選択する場合です。
一方、あなた自身は復職したいのに、会社側から育児休業を取得したことを理由として退職を迫られている場合は、まったく別の問題として考える必要があります。
育児・介護休業法10条では、育児休業を申し出たことや実際に取得したことを理由として、労働者を解雇したり、その他の不利益な取扱いをしたりすることを禁止しています。
厚生労働省の指針でも、不利益な取扱いの例として退職の強要が挙げられています。
ここで注意したいのは、会社が形式上「退職を命令した」場合だけが問題になるわけではないという点です。
たとえば、本人が退職届を提出していたとしても、その背景に強い圧力があり、本人の真意に基づく退職とはいえない場合には、退職の強要として問題になる可能性があります。
「育休を取った人を元の職場に戻す余裕はない」「長く休んだのだから辞めてもらいたい」「復職するなら以前とは大きく異なる不利な条件を受け入れてほしい」など、育休取得を理由とした扱いになっている場合は、単純な自己都合退職として処理する前に状況を整理したほうがよいでしょう。
退職の意思が自分のものかを確認する
まず確認したいのは、「自分自身が退職したいのか」「本当は復職したいが、会社から言われたため退職しようとしているのか」という点です。
前者であれば通常の退職手続きを進めることになりますが、後者であれば、すぐに退職届を提出することで後から経緯を説明しにくくなることがあります。
本当は復職したい場合は、退職届を出す前に整理しましょう。
会社から退職を求められた日時、誰から何を言われたのか、メールやチャットなどのやり取りがあるかを記録しておくことが大切です。
本人の真意に基づかない退職を求められている場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)などへ相談する方法があります。
会社側も、育休中の社員から退職について相談を受けたときは注意が必要です。
「どうせ復職できないだろうから辞めたほうがよい」など、会社から結論を誘導するような対応は避けるべきです。
本人から明確な退職の意思表示があったのか、単に今後の働き方について相談している段階なのかを分けて確認することが重要です。
一方、本人自身が退職を決めて申し出ているにもかかわらず、「育休を取得したのだから一度は復職しなければ退職を認めない」と会社が一律に扱うのも適切ではありません。
期間の定めのない雇用であれば、民法上の退職ルールも関係します。
育休後の退職では、従業員側にも会社側にも感情的な行き違いが起こりやすいため、「本人の退職意思」と「会社からの退職勧奨・強要」を明確に区別して進めることがポイントです。
退職すると給付金はいつまで支給される?
育児休業給付金の受給資格確認を受けた後に退職することになり、通常の支給要件を満たしている場合、2025年4月1日以降の退職については 退職日までが育児休業給付金の支給対象 となります。
この点は、育休後の退職を調べる際に特に注意してほしいところです。
以前は、支給単位期間の途中で退職すると、退職日を含む支給単位期間の一つ前の支給単位期間までしか支給されない取扱いでした。
そのため、古い記事や社内資料を見ると、「退職する月の給付は出ない」「退職日を含む支給単位期間は対象外」といった説明が残っていることがあります。
しかし、2025年4月1日以降に退職した方については取扱いが変更されており、支給対象期間中に退職した場合は退職日までが支給対象です。
社内で社員へ説明したり手続きを進めたりするときは、旧ルールをそのまま使用しないよう注意が必要です。
退職日まで支給される具体例
たとえば、育児休業の開始日が2026年6月6日の場合を考えてみましょう。
育児休業給付金の支給単位期間は、原則として育休開始日を基準に1か月ごとに区切ります。
この例なら、6月6日から7月5日、7月6日から8月5日という形で続いていきます。
その後も同様に区切り、12月6日から2027年1月5日までが一つの支給単位期間になっているとします。
この方が2026年12月20日に退職した場合、現在のルールでは12月6日から12月20日までの 15日分が支給対象となる期間 です。
| 退職時期 | 育児休業給付金の扱い | 例 |
|---|---|---|
| 2025年4月1日以降 | 支給対象期間中であれば退職日まで | 12月20日退職なら12月20日まで |
| 2025年3月31日以前 | 退職日を含む支給単位期間の一つ前まで | 同じ区切りなら11月6日~12月5日まで |
同じ12月20日の退職でも、旧ルールであれば退職日を含む12月6日から翌年1月5日の支給単位期間は対象とならず、その一つ前の11月6日から12月5日までが最後の対象期間でした。
現在はこの部分が変更されています。
受給資格確認後でも通常の支給要件は必要
なお、「受給資格確認後に退職することになった」という事実だけで、退職日まで必ず満額が支給されるわけではありません。
育児休業給付金には、支給単位期間中の就業日数・就業時間や、会社から支払われた賃金などについて通常の支給要件があります。
たとえば、育休中に就業した日数や時間が支給要件の範囲を超えていたり、会社から一定以上の賃金が支払われていたりする場合には、給付額が減額されたり支給されなかったりすることがあります。
退職に関する特例と、通常の支給要件は別に確認する必要があります。
「退職日まで対象」と「退職日まで必ず同額が出る」は同じ意味ではありません。
退職日までは制度上の支給対象期間に含まれますが、実際の支給額は、その期間の就業状況や賃金など通常の支給要件を踏まえて決まります。
退職日の翌日以降は、その勤務先で育児休業をしている状態ではなくなるため、育児休業給付金の支給対象にはなりません。
退職日が決まったら、最後の支給単位期間がどこまでになるのかを会社の担当者と確認しておくとよいでしょう。
受給した給付金は返還が必要?

育休後に退職すると、「今まで受け取った育児休業給付金を全部返さなければならないのではないか」と不安になる方もいると思います。
しかし、育休後に退職したという理由だけで、それまでの給付金を一律に返還する仕組みではありません。
厚生労働省のQ&Aでは、 育児休業給付の受給資格確認時点で退職が予定されていた場合を除き、それまで受給した育児休業給付を返金する必要はない とされています。
ここで非常に重要なのが、返還の判断基準を「退職理由がやむを得なかったかどうか」と考えないことです。
インターネット上では、「保育園に入れなかったなどのやむを得ない事情なら返さなくてよい」という説明を見ることがありますが、公式Q&Aで示されている基準は、 受給資格確認時点で退職が予定されていたかどうか です。
たとえば、育休を取得したときは復職するつもりで、会社にもその前提で育休を申し出ていたものの、その後に保育所への入所が決まらなかった、子どもの体調や家庭環境が変わった、家族で働き方を話し合った結果として退職することになったという場合があります。
このように受給資格確認後に退職が決まったのであれば、退職したという結果だけを理由として、それまで正当に受け取った給付金を返す必要はありません。
当初から退職予定だった場合は分けて考える
一方、育児休業を取得する当初から「育休が終わったら会社を辞める」と決めており、職場復帰を予定していなかった場合は別です。
育児休業給付は職場復帰を前提とした給付であるため、当初から退職を予定している場合はそもそも支給対象ではありません。
「育休後に辞めれば返金」ではありません。
返還が問題になるのは、単に最終的に退職したからではなく、受給資格確認時点ですでに退職が予定されていたケースです。
結果だけを見て、育休中に受け取った給付をすべて返さなければならないと考える必要はありません。
また、退職予定を隠して給付を受けていた場合には、不正受給として別の問題が生じる可能性があります。
ただし、不正受給の判断や返還・納付命令については個別事情を踏まえる必要があり、「復職しなかった」という事実だけで直ちに不正受給になるわけではありません。
不正受給の事例と注意点は、 育児休業給付金の不正受給事例と注意点 で整理しています。
もし「育休を取った時点ですでに退職を考えていたが、どの程度具体的に決まっていたか分からない」「受給資格確認の時点で会社へ退職の相談をしていた」といった事情がある場合は、自己判断で返金の要否を決めるのではなく、勤務先やハローワークへ事実関係を説明して確認するのが安全です。
退職を決めた時期で扱いが変わる
育休後の退職と育児休業給付金の関係を整理するときは、「最終的に復職したか」という結果だけを見るより、 いつ退職することが決まったのか を時系列で確認するのが最も分かりやすい方法です。
特に、育児休業給付金の支給可否については「育休の当初から退職を予定していたか」、受給済み給付の返還については「受給資格確認時点で退職が予定されていたか」という公式Q&Aの表現を押さえておく必要があります。
この二つは似ていますが、「育休中に退職を決めれば大丈夫」と単純にまとめないほうが安全です。
退職を考え始めた時期、退職の意思が具体的に固まった時期、会社へ伝えた時期、受給資格確認が行われた時期を順番に並べると整理しやすくなります。
| 退職を決めた時期・状況 | 育児休業給付金 | 受給済み給付の返金 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 育休を取る当初から退職を予定 | 原則として支給対象外 | 返金が問題になる可能性あり | 職場復帰を予定していたか |
| 受給資格確認後に退職が決定 | 通常の支給要件を満たせば、2025年4月1日以降の退職は退職日まで対象 | 原則不要 | 退職を決めた時期を確認 |
| 育休終了日に合わせて退職 | 受給資格確認時点で退職予定でなければ退職日まで対象 | 原則不要 | 最初から予定していた退職かを確認 |
| 2025年3月31日以前に退職 | 旧ルールにより一つ前の支給単位期間まで | 受給資格確認時点で退職予定でなければ原則不要 | 現在の制度と混同しない |
時系列を書き出すと判断しやすい
判断に迷う場合は、頭の中だけで考えず、日付を並べてみるとよいでしょう。
たとえば「6月6日に育休開始」「7月に受給資格確認」「10月に保育所の状況を踏まえて家族で退職を検討」「11月10日に退職を決定」「11月15日に会社へ申出」「12月20日に退職」という形です。
このように時系列にすると、育休を開始した時点ですでに退職を予定していたケースなのか、受給資格確認後に事情が変わって退職することになったケースなのかが見えやすくなります。
会社側も「退職日」だけを確認して終わらせないことが重要です。
育休中の社員から退職の申出を受けた場合は、退職日を確定するだけでなく、育児休業給付金の受給資格確認が済んでいるか、最後の支給申請をどこまで行うかを確認します。
退職予定だった時期について疑義がある場合は、会社だけで判断せずハローワークへ確認したほうが安全です。
一方で、会社が本人に対して「育休中に辞めるなら今までの給付金を全部返さなければならない」と一律に説明するのも正確ではありません。
育児休業給付金は会社が自社の判断で返還を決定するものではなく、雇用保険の制度として支給要件に照らして判断されます。
育休後の退職では、退職日そのもの以上に「いつ退職が決まったか」が重要な確認事項になる、という点を押さえておきましょう。
育休後の退職で必要な伝え方と手続き
退職を決めた後は、会社へ意思を伝えて終わりではありません。
育児休業給付金の最終申請、健康保険・厚生年金、雇用保険、離職票、会社から借りている物の返却など、複数の手続きが同時に動きます。
特に育休中は普段のように会社へ出勤していないため、「誰に連絡すればよいのか」「最後の給付申請はどうなるのか」「保険証はいつまで使えるのか」といった点が見えにくくなりがちです。
退職の意思が固まったら、退職日を決めるだけでなく、その日を基準に何の手続きが必要になるのかを順番に整理すると進めやすくなります。
退職はいつまでに会社へ伝える?
期間の定めのない雇用契約では、民法627条1項により、原則として退職の申入れから2週間を経過すると雇用契約が終了します。
ただし、これは「育休中なら会社へ2週間前に言えば、ほかは何も考えなくてよい」という意味ではありません。
実際の会社では、就業規則に「退職希望日の1か月前までに申し出る」など、退職手続きのルールを設けていることがあります。
また、会社は育休中の社員が復職することを前提として人員配置や代替要員の調整を行っていることもあります。
そのため、退職することを決めたのであれば、就業規則を確認したうえで、可能な範囲で早めに会社へ伝えるのが実務上はスムーズです。
退職日ぎりぎりになって初めて連絡すると、育児休業給付金の最終申請、社会保険の資格喪失、離職票、会社物品の返却などを短期間で処理することになります。
最初に退職日を仮決めして逆算する
進め方としては、まず「いつ退職したいのか」を仮に決め、その日から逆算して確認する方法が分かりやすいです。
退職日は育児休業の終了予定日と同日にするのか、それより前にするのかによって給付の対象期間も変わります。
確認する順番
- 希望する退職日を決める
- 無期雇用か有期雇用かを確認する
- 就業規則の退職申出期限を確認する
- 直属の上司または人事へ退職の意思を伝える
- 育児休業給付金の最後の申請を確認する
- 社会保険と雇用保険の退職手続きを確認する
育休中で会社へ出向くことが難しい場合は、電話やオンライン面談など、直接意思を伝えられる方法を会社と相談するとよいでしょう。
そのうえで、会社から退職届などの提出を求められた場合は、郵送や社内システムなど指定された方法で進めます。
メールだけで退職の意思を送ることが法律上常に無効になるという意味ではありませんが、退職日や本人の意思をめぐる認識のずれを防ぐ意味では、まず上司や人事と話したうえで記録を残しておく方法が安心です。
なお、有期雇用で契約期間の途中に退職したい場合は、期間の定めのない雇用と同じ「2週間前」の説明だけで判断しないようにしてください。
契約期間や退職理由などを確認し、必要に応じて専門家へ相談するとよいでしょう。
育休中に退職を伝えるときのポイント

会社へ退職を伝える際は、事情を必要以上に詳しく説明する必要はありません。
まず伝えるべきなのは、 退職する意思と希望する退職日 です。
そのうえで、必要に応じて退職を決めた理由を簡潔に説明するとよいでしょう。
たとえば、保育所に入れなかった、子どもの体調との関係で復職が難しくなった、家庭内の育児体制を見直したといった事情がある場合でも、プライベートな内容をすべて細かく説明する必要はありません。
「家庭の事情により復職が難しくなったため」といった伝え方でも構いません。
一方で、「退職しようか迷っています」という相談と、「〇月〇日で退職したいです」という正式な意思表示は意味が異なります。
育児休業給付金では退職を決めた時期も重要になるため、自分自身の中でも、まだ選択肢を検討している段階なのか、退職の意思が固まっているのかを整理してから会社へ連絡するとよいでしょう。
伝える内容を先に整理する
- 退職する意思
- 希望する退職日
- 退職理由の簡潔な説明
- 退職手続きに必要な書類
- 貸与品の返却方法
- 育児休業給付金の最後の申請方法
育休中は、会社があなたの復職時期に合わせて人員配置を考えている可能性があります。
そのため、これまで育休取得に対応してもらったことへのお礼を一言添えたうえで、退職手続きを相談すると、実務的にも話を進めやすくなります。
育休中に退職を伝える例
育児休業中にご配慮いただき、ありがとうございます。
復職に向けて準備を進めてきましたが、家庭の状況を踏まえて復職が難しいと判断し、〇月〇日付で退職させていただきたく、ご連絡しました。
直前のご相談となり申し訳ありません。
必要な手続きや書類、貸与品の返却方法などについてご案内いただけますでしょうか。
保育所に入れなかったことなど、具体的な理由を伝えたい場合は「保育所の入所が決まらず、今後の家庭の状況を検討した結果」などと加えてもよいでしょう。
なお、会社から「育休を取ったのだから一度は復帰してください」と言われることがあるかもしれませんが、先ほど説明したとおり、育休終了後に必ず一度復職しなければ退職できないという法律上のルールはありません。
会社の説明に疑問がある場合は、退職日や雇用契約の内容を整理して確認してください。
また、会社から退職を促されている場合と、自分から退職を申し出る場合は明確に分ける必要があります。
本当は復職したいにもかかわらず会社から退職を求められているのであれば、安易に自己都合退職として書類を提出せず、前のセクションで説明した不利益取扱いの問題も含めて確認しましょう。
退職時の育児休業給付金の手続き
育児休業給付金の申請は、原則として勤務先の事業主を経由して、事業所を管轄するハローワークへ行います。
本人が希望すれば本人が直接申請することもできますが、通常は会社が賃金台帳や出勤簿などを用意して申請を進めます。
育児休業給付金の受給資格確認後に退職することになった場合は、通常の支給要件を満たすことを前提として、2025年4月1日以降の退職であれば退職日までが支給対象です。
そのため、退職が決まったら、 最後の支給申請をいつ、どの期間まで行うのか を会社へ確認しておくことが重要です。
育児休業給付金は、原則として育休開始日から1か月ごとの支給単位期間を基準として申請します。
退職日がその支給単位期間の途中にある場合でも、現在の制度では退職日までが支給対象期間になります。
退職日が決まったら会社が確認する流れ
- 本人と正式な退職日を確定する
- 受給資格確認後の退職であるかを確認する
- 最後の支給単位期間と退職日を確認する
- 退職日までの育児休業給付金の申請を進める
- 健康保険・厚生年金の資格喪失手続きを行う
- 雇用保険の資格喪失と離職票の手続きを行う
- 貸与品や書類の返却を確認する
育休開始時には復職する予定だったものの、後から事情が変わり退職することになったのであれば、その事実を隠す必要はありません。
むしろ退職日を会社へ正確に伝え、実際の退職日に基づいて最後の支給申請を行うことが大切です。
会社側では、給付申請のたびに本人の署名を取得する運用をしているケースもありますが、本人が申請内容を確認して会社と合意し、「記載内容に関する確認書・申請等に関する同意書」を作成・保存している場合には、一定の申請について本人署名を省略できる取扱いがあります。
退職間際に本人と連絡が取りにくくなることも考えられるため、会社側は継続申請の方法をあらかじめ確認しておくと手続きが滞りにくくなります。
ただし、退職時の最終支給申請について、実際にどの欄へ何を記載するかなどの細かな処理は、申請時点の様式やハローワークの取扱いを確認してください。
特に支給単位期間の途中で退職する場合は、会社側だけで推測して処理しないほうが安全です。
失業保険は育児休業給付金とは別制度
退職後に受ける可能性がある失業保険の基本手当は、育児休業給付金とは別の制度で、働く意思と能力があることなど基本手当側の受給要件を別に確認する必要があります。
育児のためすぐには働けない場合は、受給期間延長の制度が関係することがあります。
受給条件や受給期間延長については、 育休後に退職したときの失業保険の受給条件と延長手続き で詳しく解説しています。
退職日だけ決めて、最後の育児休業給付金を忘れないようにしましょう。
退職が決まったときは、会社の退職手続きだけでなく、「育児休業給付金はどの期間まで申請済みか」「退職日までの最後の申請を誰が行うか」もセットで確認しておくと手続き漏れを防げます。
健康保険と厚生年金の切替えを確認する

会社を退職すると、それまで勤務先で加入していた健康保険と厚生年金保険の被保険者資格を失います。
退職による 資格喪失日は退職日の翌日 です。
たとえば3月31日付で退職した場合は、4月1日が健康保険・厚生年金保険の資格喪失日になります。
退職日までは原則として勤務先の社会保険の被保険者ですが、翌日以降については新しい健康保険や年金の加入関係を整える必要があります。
会社側は、退職による資格喪失の事実が発生した後、健康保険・厚生年金保険の資格喪失届を提出します。
退職する本人も、会社に任せればすべて終わるわけではなく、退職後にどの健康保険へ加入するのかを決めなければなりません。
退職後の健康保険を決めておく
退職後の健康保険には、大きく分けると、国民健康保険へ加入する方法、一定の要件を満たして配偶者などの健康保険の被扶養者になる方法、退職前の健康保険を任意継続する方法などがあります。
どの方法が利用できるか、どの方法が有利かは家族構成、今後の収入、加入していた健康保険、退職後の働き方などによって変わります。
「育休中だったから自動的に配偶者の扶養へ切り替わる」という仕組みではありません。
| 確認事項 | 退職時の基本的な考え方 |
|---|---|
| 健康保険・厚生年金の資格 | 原則として退職日の翌日に喪失 |
| 会社の手続き | 資格喪失届を提出 |
| 退職後の健康保険 | 国民健康保険・扶養・任意継続などを検討 |
| 退職後の年金 | 再就職しない場合は国民年金等の手続きを確認 |
厚生年金についても、退職後すぐ別の会社へ就職して厚生年金へ加入する場合を除き、国民年金への切替えや、配偶者の扶養に入る場合の第3号被保険者の手続きなどを確認する必要があります。
育休中の社会保険料免除とは別に考える
育児休業中は、一定の要件を満たして会社が申出を行うことで健康保険・厚生年金保険料が免除される制度があります。
そのため、「育休中に退職するなら退職月も当然すべて免除になるのでは」と考えるかもしれません。
しかし、育児休業による保険料免除の期間と、退職による資格喪失は別の制度です。
退職月の具体的な保険料の扱いは、育児休業等の終了時期や資格喪失日との関係もあるため、個別に確認したほうが安全です。
育休中の社会保険料免除と退職時の資格喪失は分けて確認してください。
「育休中だから社会保険料はすべて免除」「月末退職だから必ずこうなる」と一つの情報だけで判断せず、退職日と資格喪失日、育児休業の終了日を並べて会社や年金事務所へ確認するのが確実です。
また、退職日の翌日から今までの健康保険証等をそのまま使用できるわけではありません。
資格喪失後に旧資格で医療機関を受診すると、後から医療費の精算が必要になることもあります。
退職前に、新しい健康保険へどのように切り替えるのかまで確認しておくと安心です。
退職日の設定では、育児休業給付金がいつまで対象になるかだけに注目しがちですが、健康保険や年金の切替日も連動します。
家族全体の保険関係も含めて、退職後の空白が生じないよう準備しておきましょう。
育休後に退職する前に確認したい制度
育休後の退職を考えている場合、最終的に退職するかどうかを決める前に、「退職以外の方法で今の問題を解決できないか」を一度確認しておくことも大切です。
これは、育休を取ったのだから無理にでも復職したほうがよいという意味ではありません。
退職は生活や収入、社会保険などにも影響する大きな選択です。
利用できる制度を知らないまま退職し、後になって「この制度が利用できるなら働き続けられたかもしれない」と気付くことは避けたいところです。
保育所に入れないなら育休延長を確認する
保育所に入れないことが復職できない主な理由であれば、一定の要件を満たすことで育児休業を1歳6か月まで、さらに必要な場合には2歳まで延長できる制度があります。
ただし、「保育園に入れなかった」という結果だけで自動的に育児休業給付金も延長されるわけではありません。
特に2025年4月以降は、保育所等に入れないことを理由として育児休業給付金の支給対象期間を延長する際、速やかな職場復帰のために保育所等の利用申込みを行っていることが確認される仕組みに変わっています。
利用申込書の写しや入所保留通知書などが必要になるため、退職を決める前に「延長できる可能性があるか」「必要な申込みをしているか」を確認してみてもよいでしょう。
働き方が理由なら両立支援制度も確認する
復職できない理由が「フルタイム勤務では保育園の送迎に間に合わない」「残業があると育児との両立が難しい」といった働き方にある場合は、短時間勤務制度や所定外労働の制限など、育児と仕事を両立するための制度が利用できないか確認する方法もあります。
また、一定の要件を満たす2歳未満の子を養育する労働者が育児のために時短勤務を行い、賃金が低下した場合には、育児時短就業給付金の対象になる可能性もあります。
ここでは詳細には踏み込みませんが、「フルタイムで復職するか、退職するか」の二択だけではないということは知っておくとよいでしょう。
もちろん、こうした制度を確認したうえで、家庭の事情や今後の生活を考え、退職することが最も適切だと判断することもあります。
その場合、必要以上に「育休を取ったのに辞めてしまってよいのか」と考える必要はありません。
育休後の退職で最後に確認するポイント
育休後の退職で最も重要なのは、退職を決めた時期を整理することです。
- 復職せず退職すること自体は禁止されていない
- 無期雇用と有期雇用では退職ルールが異なる
- 育休の当初から退職予定なら育児休業給付金は支給対象外
- 受給資格確認後に退職が決まり、通常の支給要件を満たせば退職日まで支給対象
- 2025年4月1日以降の退職は退職日までが対象
- 受給資格確認時点で退職予定だった場合を除き、受給済み給付の返金は原則不要
- 退職が決まったら最後の給付申請と社会保険の切替えまで確認する
育休後に退職する場合は、「退職する」と会社へ伝えるだけで終わりにせず、退職日、育児休業給付金の最後の申請、健康保険・厚生年金、雇用保険、離職票などを一つずつ確認して進めてください。
会社側も、育休中の社員から退職の申出を受けたときは、退職を引き止めたり促したりすることに意識を向けるより、まず本人の意思を確認し、退職日、最後の育児休業給付金の申請、社会保険・雇用保険の資格喪失などを漏れなく処理することが重要です。
また、育児休業給付金については、「復職しなかったから返還」「退職月は支給されない」といった過去の説明が現在の制度と合わなくなっていることがあります。
2025年4月1日以降の退職では退職日まで支給対象になるため、古い社内マニュアルやインターネット上の記事を参考にするときは情報の時点も確認してください。
個別事情によって判断が変わる場合があります。
特に、有期雇用契約の途中退職、受給資格確認前後で退職の意思が固まった時期が曖昧な場合、育休中に就業や賃金支払いがある場合、社会保険料の取扱いなどは、一律に判断できないことがあります。
制度の取扱いは法改正や運用変更によって変わることがあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
退職を決めた時期や給付金の申請状況、雇用契約の内容によって判断が分かれるケースでは、自己判断だけで処理せず、最終的な判断は専門家にご相談ください。