こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
出産予定日を基準に育児休業や産後パパ育休を申し出ていても、実際の出産日が予定日どおりになるとは限りません。
特に男性の場合、予定日より早く生まれるか、遅く生まれるかによって、休業できる期間や開始日の調整が必要になることがあります。
出産日がずれたときは、まず実際の出産日と現在会社へ申し出ている休業期間を確認し、必要であれば開始予定日の変更を会社へ連絡します。
産後パパ育休では、出産予定日と実際の出産日の前後関係によって「出生後8週間」に相当する対象期間も変わるため、単純に当初の日程をそのまま使えばよいとは限りません。
また、「予定日より早く生まれた場合」と「予定日より遅く生まれた場合」では考え方が同じではありません。
早く生まれた場合には育休開始日の繰上げが問題になりやすく、遅く生まれた場合には、出産予定日から実際の出生日までを含めて取得可能期間がどのように扱われるかを確認する必要があります。
これは実務でも迷いやすいポイントです。
本人は「予定日を会社に伝えているから自動的に変更される」と考え、会社は「申出書に書かれた日付どおり処理すればよい」と考えてしまうことがあります。
しかし、育児休業の申出、勤怠、雇用保険の給付、社会保険料免除などは、それぞれ実際の日付をもとに処理していく必要があります。
この記事では、予定日より早く生まれた場合と遅く生まれた場合に分け、産後パパ育休の対象期間、育休開始日の変更、会社への手続き、育児休業給付への影響まで実務的に整理します。
- 出産予定日と実際の出産日がずれた場合の育休の考え方
- 産後パパ育休の8週間と28日の数え方
- 育休開始予定日を変更するときの会社への手続き
- 出産日の変更が育児休業給付へ与える影響

出産予定日とずれた場合の育休の基本
出産予定日と実際の出産日がずれたときに最初に確認したいのは、 産後パパ育休の「取得できる期間」と、実際に申し出ている「休業期間」は別のもの だという点です。
特に男性は、出産予定日を基準に仕事の引き継ぎや休業日程を決めていることが多いため、出産が前後すると予定を組み直す必要が出てきます。
制度上取得できる期間の中に入っているからといって、自動的に会社を休めるわけではありません。
反対に、最初に申し出た日程と出産日がずれたからといって、直ちに育休が取れなくなるわけでもありません。
まず制度上の期間を確認し、その後に本人が会社へ申し出ている開始予定日・終了予定日を確認する。
この二段階で考えると整理しやすくなります。
産後パパ育休の8週間はどう数える?
産後パパ育休は、正式には出生時育児休業といい、原則として子どもの出生直後の一定期間に、通算28日まで取得できる制度です。
通常の1歳までの育児休業とは別枠で利用でき、2回に分けて取得することもできます。
産後パパ育休を理解するうえで、まず区別しておきたいのが「8週間」と「28日」です。
どちらも産後パパ育休の説明では頻繁に出てくる数字ですが、意味はまったく同じではありません。
8週間は取得できる期間の範囲
「8週間」は、産後パパ育休をいつ取得できるかという 取得可能期間の範囲 を表します。
原則として子どもの出生後8週間以内ですが、出産予定日と実際の出生日がずれた場合には、そのずれによって対象期間が調整されます。
ここで少し分かりにくいのが、単純に「実際に生まれた日から8週間」とだけ覚えてしまうと、予定日と出生日が異なったケースで正しく計算できないことです。
基本的には、出産予定日と実際の出産日のうち早い日から、遅い日を基準とした8週間の期間までが産後パパ育休の対象期間になります。
| 出産の状況 | 対象期間の始まり | 対象期間の終わり |
|---|---|---|
| 予定日どおりに出生 | 出生日 | 出生日を基準とした8週間後 |
| 予定日より早く出生 | 実際の出生日 | 出産予定日を基準とした8週間後 |
| 予定日より遅く出生 | 出産予定日 | 実際の出生日を基準とした8週間後 |
たとえば、出産予定日が6月10日で、6月1日に生まれた場合を考えてみます。
通常の「6月1日から8週間」という考え方ではなく、産後パパ育休を取得できる期間は6月1日から始まり、終わりについては出産予定日の6月10日を基準として確認します。
反対に、6月10日の予定日だった子どもが6月18日に生まれた場合には、取得可能期間の始まりは6月10日、終わりは実際の出生日である6月18日を基準として後ろへ延びます。
この仕組みは、出産日が予定から前後したことだけによって、労働者が当初想定していた出生直後の休業機会を失わないようにするためのものです。
28日は実際に取得できる上限
一方、「28日」は実際に産後パパ育休として取得できる休業日数の上限です。
つまり、予定日と出生日が10日ずれて、制度上の対象期間が通常より10日長くなったとしても、産後パパ育休を38日取得できるわけではありません。
あくまで広がった取得可能期間の中から、合計28日以内の休業期間を設定します。
8週間は「いつ休めるか」の範囲、28日は「何日休めるか」の上限です。
この2つを分けて考えると、出産予定日と出生日がずれた場合でも整理しやすくなります。
また、産後パパ育休は子1人につき2回まで分割できます。
ただし、2回に分割して取得する場合には、原則として最初の申出時に2回分をまとめて申し出る必要があります。
1回目を取得した後になってから「やはりもう1回取りたい」と申し出た場合、会社が法律上その申出を受けなければならないとは限らないため注意が必要です。
希望どおりの日から産後パパ育休を取得するための申出は原則として休業開始予定日の2週間前までですが、出産予定日より早く出生した場合などには開始予定日の繰上げ変更に関する特例があります。
制度の基本的な取得期間や申出期限については、厚生労働省も産後パパ育休の特設ページで案内しています。
最新の制度内容を確認する場合は、 厚生労働省「産後パパ育休」 も確認してください。
産後パパ育休そのものの対象者、申出期限、分割取得などの基本をさらに詳しく確認したい場合は、 産後パパ育休制度の28日・分割取得・給付金の仕組み もあわせて確認してください。
予定日より早く生まれた場合の育休

出産予定日より早く子どもが生まれた場合、産後パパ育休の対象期間は 実際の出生日から始まります 。
一方、対象期間の終わりは、実際の出生日ではなく、もともとの出産予定日を基準とした8週間後までとなります。
このケースで実務上特に重要なのは、「産後パパ育休を取得できる期間が前へ広がったこと」と、「すでに会社へ申し出ている休業開始日は自動的には前へ動かないこと」を分けて考える点です。
早く生まれても申出済みの開始日が自動変更されるわけではない
たとえば、出産予定日が6月10日で、実際には6月1日に生まれたとします。
この場合、産後パパ育休を取得できる期間の始まりは6月1日です。
一方、終わりは6月1日から単純に8週間とするのではなく、6月10日の予定日を基準に確認します。
しかし、あなたが会社に「6月10日から産後パパ育休を取得します」と申し出ていた場合、子どもが6月1日に生まれたという事実だけで、会社への申出が自動的に「6月1日開始」に書き換わるわけではありません。
当初の申出どおりに進めれば、6月10日が休業開始予定日のままです。
そのため、「出産後すぐに休みたい」と考えている場合には、開始予定日を前へ動かす手続きが必要になります。
これは実際によくある相談です。
男性従業員の場合、出産予定日を基準として有給休暇や産後パパ育休、通常の育児休業を組み合わせ、職場の引き継ぎまで済ませていることがあります。
その予定が1週間、2週間と前倒しになると、家庭だけでなく会社側の人員配置にも影響します。
出産予定日6月10日、産後パパ育休開始予定日6月10日、実際の出生日6月1日という場合、6月1日から休みたいのであれば、会社に開始予定日の繰上げを申し出ることを検討します。
出産直後に休みたいなら会社へすぐ連絡する
出産予定日前に子どもが生まれたことは、育児休業や産後パパ育休について、開始予定日を繰り上げることが認められる代表的な事情です。
ただし、法律上の変更ルールがあるからといって、会社に何も連絡せず勤務を休んでよいわけではありません。
出産が早まったことが分かったら、できるだけ早く上司や人事担当者へ連絡し、少なくとも「実際の出生日」「当初の休業開始予定日」「いつから休業したいのか」を伝えるのが実務的です。
会社に指定様式がある場合には、その後に休業期間変更申出書などを提出します。
急な出産では、出生当日に正式な社内書類を準備できないこともありますから、まず電話やメールなどで連絡し、正式な書類は会社の指示に従って提出する形でもよいでしょう。
出産が早まった場合、本人が「制度上は今日から取得できる」と考え、会社が「申出では来週からになっている」と考えることで認識が食い違うことがあります。
実際の出生日と希望する休業開始日が変わった時点で、双方が日付を確認することが重要です。
特に夫婦で出生直後の育児を分担する予定にしている場合、数日の違いでも負担は大きく変わります。
退院時期、上の子の送迎、出生届などの手続き、夜間の育児などを考えると、「予定日まで出勤するのか」は家庭にとって大きな問題ですよね。
会社側も、男性従業員から出産予定日に合わせた育休の申出を受けた段階で、「予定日より早く生まれたときの連絡先」「開始日を変更する場合の様式」を案内しておくと処理がスムーズです。
出生後に初めて制度を調べ始めるより、事前に変更フローまで決めておくことを私はおすすめしています。
予定日より遅く生まれた場合の育休
反対に、出産予定日を過ぎても子どもが生まれない場合もあります。
この場合、産後パパ育休の対象期間は 出産予定日から始まり、実際の出生日を基準とした8週間後まで となります。
早く生まれた場合と同じように、「早い方を始期、遅い方を基準に終期を考える」と整理すると分かりやすいでしょう。
予定日より遅れた場合は対象期間の終わりも後ろへ延びる
たとえば、出産予定日が6月10日、実際の出生日が6月18日だった場合を考えます。
産後パパ育休の取得可能期間は、出産予定日の6月10日から始まり、実際に生まれた6月18日を基準として8週間後まで続きます。
したがって、「予定日を過ぎた8日間分だけ、産後パパ育休を取得できるチャンスが失われる」という仕組みではありません。
これは、出産予定日を基準に仕事の調整をしていた労働者が、出産が遅れたことだけを理由に出生直後の休業期間を実質的に短くされないための調整です。
予定日より遅く生まれた場合は、 始期は出産予定日、終期は実際の出生日を基準として確認 します。
出産の遅れによって、取得可能期間そのものが一方的に短くなるわけではありません。
予定日から出生日までの取扱いは誤解しやすい
ここは特に誤解が多い部分です。
「産後パパ育休なのだから、子どもが生まれるまでは絶対に取得できないのではないか」と考えやすいのですが、出産予定日より実際の出生日が遅くなった場合、法律上の出生時育児休業の取得可能期間は出産予定日から始まる仕組みになっています。
したがって、出産予定日から実際の出生日までの間に休業を開始するケースも制度上想定されています。
たとえば、6月10日から産後パパ育休を取得する申出をしていたところ、実際の出産が6月18日になった場合、「6月10日から17日までの期間は必ず産後パパ育休ではなくなる」と一律に判断するのは適切ではありません。
一方で、「出産がまだだから6月10日からは通常勤務し、実際に生まれた6月18日から休みたい」と考える方もいるでしょう。
この場合には、当初申し出ていた休業期間を短縮したり、開始日を後ろへ動かしたりすることになります。
この変更は、予定日前に出生した場合の「開始予定日の繰上げ」とは扱いが異なります。
法律上、産後パパ育休の開始予定日を後ろにずらす変更や終了予定日を前へ動かす変更は、労働者の一方的な変更申出だけで当然にできる仕組みとはなっていません。
そのため、当初の開始日を後ろへ変更したい場合は、会社の規程や運用を確認し、会社と相談して日程を調整することが重要です。
予定日より遅れた場合は、会社に連絡せず自己判断で出勤へ切り替えたり、休業開始日を後ろへ動かしたりしないようにしましょう。
当初の申出内容、会社の勤怠処理、雇用保険の給付申請を一致させる必要があります。
また、出生日が確定した後は、その日付を会社へ速やかに伝えてください。
会社では実際の出生日を確認したうえで、取得可能期間、育児休業給付、出生後休業支援給付、社会保険料免除などに必要な日付を整理します。
予定日より遅れたケースは、「最初から予定日開始で休む予定だったのか」「出生したら休む予定だったのか」によって本人の希望も異なります。
会社側も機械的に処理せず、本人が当初どのような日程を希望していたのかまで確認すると、後から修正が発生しにくくなります。
男性と女性で育休への影響が違う理由

出産予定日がずれた場合の影響は、男性と出産した女性とでは大きく異なります。
その理由は、出産した女性には育児休業の前に労働基準法上の産後休業がある一方、男性には産後休業がないからです。
女性は実際の出産日を基準に産後休業が始まる
女性の場合、出産後には労働基準法による産後休業があります。
原則として、 実際の出産日の翌日から8週間は産後休業 となり、その後に育児休業へ移る流れです。
たとえば、出産予定日が6月10日だったものの、6月1日に出産したとします。
この場合、産後休業は予定日ではなく実際の出産日に連動して始まり、その産後休業が終了した後に育児休業へ移ります。
反対に、予定日が6月10日で実際の出産が6月18日になった場合には、産前休業が実際の出産日まで延び、産後休業は6月19日から始まることになります。
つまり、出産した女性の場合には、予定日と実際の出生日がずれたとしても、「実際の出産→産後休業→育児休業」という基本的な順序は変わりません。
女性の場合は予定日そのものより、 実際の出産日を基準に産後休業とその後の育児休業の日程が動く と考えると分かりやすいです。
もちろん、会社側では実際の出産日が変われば産後休業の終了日や育児休業の開始日を修正する必要があります。
しかし、本人が「予定より早く生まれたので、明日から育児休業へ変更したい」といった調整をするケースは通常ありません。
まず産後休業があるためです。
男性は出産日のずれが休業開始日に直結しやすい
一方、男性には出産した女性に適用される産後休業がありません。
そのため、出産予定日に合わせて産後パパ育休や通常の育児休業を取得する予定を立てていると、予定日と実際の出生日のずれがそのまま「いつから会社を休むのか」という問題につながります。
たとえば、6月10日から休業すると決めて引き継ぎをしていたところ、6月1日に子どもが生まれれば、「6月1日から休むのか、それとも予定どおり6月10日まで働くのか」という判断が必要になります。
逆に6月10日が予定日なのに6月18日まで出生しなかった場合には、「6月10日から予定どおり休むのか、出生に合わせて日程を組み直すのか」が問題になります。
出産日のずれが休業日程に直接影響しやすいのは男性です。
特に産後パパ育休を取得する場合は、出産後に予定日と実出産日を確認し、会社へ申出済みの日程と照合してください。
また、男性は産後パパ育休と通常の育児休業を組み合わせることもできます。
たとえば出生直後に産後パパ育休を取得し、その後いったん復職し、数か月後に通常の育児休業を取得するといった使い方も可能です。
このように制度の選択肢が多い分、出産予定日が変わったときには「産後パパ育休のどの部分を変更するのか」「通常の育児休業の日程まで変えるのか」を整理する必要があります。
なお、一般的に出産した女性は産後休業の対象となるため、産後パパ育休を通常の形で利用するケースは想定されていません。
養子縁組など、産後休業をしていない女性については取扱いが異なる場合があります。
会社側としても、女性の産前産後休業と育児休業、男性の産後パパ育休と通常の育児休業を一つの「育休」としてまとめて管理すると、日付を誤りやすくなります。
制度ごとに開始日・終了日・申出期限を分けて管理することが重要です。
産後パパ育休は合計28日まで取得可能
出産予定日と実際の出産日がずれると産後パパ育休を取得できる対象期間が長くなることがありますが、 取得できる産後パパ育休そのものは通算28日まで です。
この「対象期間が延びること」と「休業できる日数が増えること」を混同しないことが大切です。
対象期間が長くても28日の上限は変わらない
たとえば、予定日より10日早く子どもが生まれた場合、産後パパ育休を取得できる期間の幅は通常より長くなります。
しかし、「8週間に予定日との差10日を足して、合計38日休める」という意味ではありません。
産後パパ育休は、その対象期間の中から最大28日を選んで取得する制度です。
同じことは予定日より遅れて生まれた場合にもいえます。
出産が10日遅れれば対象期間の終わりも後ろへ動きますが、実際に産後パパ育休として取得できる日数は通算28日以内です。
| 取得例 | 1回目 | 2回目 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 連続取得 | 28日 | なし | 28日 |
| 2週間ずつ | 14日 | 14日 | 28日 |
| 出産直後を長めに取得 | 21日 | 7日 | 28日 |
28日は所定労働日だけを数えるわけではない
もう一つよくある疑問が、土日や祝日を28日の中に含めるのかという点です。
産後パパ育休の4週間、つまり28日は、基本的には暦日で考えます。
そのため、土日休みの会社だからといって、平日だけを28日分休める制度ではありません。
たとえば月曜日から翌週の日曜日まで7日間を産後パパ育休として設定した場合、土曜日と日曜日がもともとの休日であっても、休業期間としては7日間です。
「28日分の勤務日を休める」という理解をしていると、想定していたより早く上限に達することがあります。
産後パパ育休の日数と、実際に会社を休む所定労働日数は一致するとは限りません。
特にシフト勤務や土日休みの会社では、休業期間を設定するときに暦日と勤務日を混同しないようにしてください。
分割するなら出産日のずれを踏まえて組み直す
産後パパ育休は2回まで分割できます。
たとえば、当初は「出産予定日から14日間」「その3週間後から14日間」という計画を立てていたとしても、実際の出産日が大きく前後すれば、家族が本当に休業を必要とする時期も変わるかもしれません。
早く生まれた場合には退院直後を手厚くするため1回目を前倒しする、遅く生まれた場合には取得可能期間の終期が後ろへ動くことを踏まえて2回目の日程を見直す、といった対応も考えられます。
ただし、すでに申し出た2回分の日程を自由に何度でも変更できるわけではありません。
開始予定日の繰上げや終了予定日の繰下げについては変更できる回数や申出期限がありますし、開始日の繰下げなどは会社との合意が必要になる場合があります。
出産日がずれたときは、「あと何日残っているか」だけでなく、 取得可能期間のどこに28日を配置するのが家庭にとって最もよいか という視点で考えることがポイントです。
私は相談を受ける際も、単に「28日取れます」と説明するのではなく、配偶者の退院時期、上の子の有無、本人の繁忙期、通常の育児休業を続けて取得するかなどを一緒に確認します。
制度上取れる日と、本当に休みたい日は同じとは限らないからです。
土日や分割取得を含めた具体的な数え方は、 出生時育児休業28日の数え方と分割取得のポイント で詳しく整理しています。
出産予定日とずれた場合の育休手続き
出産日が予定からずれた場合、制度上の対象期間を確認するだけでは足りません。
すでに会社へ提出した申出内容と実際に取得したい休業日程が異なるのであれば、会社への変更手続きが必要です。
ここからは、出産後にどのような順番で確認すればよいかを整理します。
実務では、「制度として変更できるか」と「会社にどの書類をいつ出すか」の両方を確認する必要があります。
また、会社側では休業申出だけでなく、勤怠、給与、雇用保険、社会保険の手続きまで日付を合わせていく必要があります。
育休開始日は1回だけ繰り上げできる
出産予定日より早く子どもが生まれた場合など、法律上定められた事情が生じたときは、すでに申し出ている育児休業の開始予定日を前へ動かすことができます。
この仕組みが「開始予定日の繰上げ変更」です。
予定日前の出生は代表的な繰上げ理由
1歳までの育児休業では、 1回の育児休業の申出につき、開始予定日の繰上げ変更は原則として1回 認められています。
産後パパ育休についても、出産予定日前に子どもが出生した場合などには、休業1回につき1回、開始予定日の繰上げ変更が可能です。
たとえば次のようなケースです。
出産予定日:6月10日
当初の育休開始予定日:6月10日
実際の出生日:6月1日
希望する変更後の開始日:6月1日
この場合、当初の6月10日開始を6月1日へ繰り上げる申出を検討します。
「出産予定日より早く生まれる」という出来事は本人が自由に選べるものではありません。
そのため、通常の育休申出とは異なる変更ルールが設けられています。
希望どおりの日に変更するなら1週間前が原則
開始予定日の繰上げ変更について、労働者が希望する日から休業を開始するためには、原則として 変更後の休業開始予定日の1週間前まで に変更を申し出ます。
ただ、ここで「出産が突然1週間早まったのに、1週間前に申し出るのは無理ではないか」と感じる方も多いでしょう。
そのとおりで、予定日前の出生では変更後の開始日の1週間前に申出をすることが物理的にできないケースがあります。
だからといって、 1週間前までに申し出られなかったという理由だけで、開始予定日の繰上げ変更そのものができなくなるわけではありません。
申出が遅れた場合には、会社が一定の範囲で休業開始日を指定できる仕組みになっています。
「1週間前に申出ができなかった=繰上げできない」ではありません。
ただし、必ず本人の希望日から開始できるとも限らず、会社による開始日の指定が問題になります。
まずは出生したことをすぐ会社へ伝える
実務では、細かな条文を確認してから連絡するよりも、まず出生したことと希望する休業開始日を会社へ伝えることを優先するとよいでしょう。
たとえば「本日出産しました。
予定日は6月10日でしたが、本日から産後パパ育休へ変更したいです」と人事担当者へ連絡します。
そのうえで、会社の育児・介護休業規程に定める変更申出書などを提出します。
会社によってはメール等による申出を認めている場合もあります。
また、産後パパ育休を2回に分割している場合は、どちらの休業の開始予定日を変更するのかも明確にしておきます。
「1回目だけ前倒しして2回目はそのまま」「1回目の終了日も変更したい」など、変更内容によって必要な対応が異なるからです。
会社側では、変更申出を受けたら、変更後の開始予定日と終了予定日を労働者へ通知し、勤怠管理にも反映させます。
特に出生当日から休業を希望している場合には、現場の上司、人事、給与担当者の情報共有を早めに行うことが大切です。
申出が遅れた場合は会社が開始日を指定

育児休業開始予定日の繰上げを希望したものの、変更後の開始予定日の1週間前までに申し出ることができなかった場合、会社は一定の範囲で実際の育児休業開始日を指定することができます。
この会社による指定は、出産が早まったケースでは非常に重要です。
会社が自由に開始日を決められるわけではない
会社が開始日を指定できると聞くと、「繁忙期だから2週間後にしてください」「代わりの人が見つかるまで育休は待ってください」といった対応もできるように感じるかもしれません。
しかし、会社が自由に好きな日を指定できる制度ではありません。
出産予定日前に子どもが出生したなど、開始予定日の繰上げが認められる特別な事情があり、変更の申出が1週間前より遅れた場合には、基本的に 変更後に本人が希望した開始日以後、変更申出日の翌日から起算して1週間を経過する日まで の範囲で会社が開始日を指定します。
そのため、会社が「人手不足だから1か月後にする」と一方的に変更することは、この開始日指定のルールとは別の話です。
会社が開始日を指定できるのは、法律で定められた範囲内です。
業務が忙しい、人員が足りないといった事情だけで、繰上げ変更を自由に拒否したり、長期間延期したりできるものではありません。
従業員も自己判断で休業を始めない
一方で、従業員側も「法律で育休を取れるのだから、今日から出勤しなくてよい」と自己判断するのは避けた方がよいでしょう。
育児休業は、会社へ休業の開始日と終了日を明らかにして申し出る制度です。
変更する場合にも、変更の申出を行い、その結果として休業日程を確定させる必要があります。
特に「今日出産したので明日から休みたい」というケースでは、本人の希望する開始日と会社が法令上指定できる開始日との関係を確認する必要があります。
会社が希望日からの取得を認めるのであれば、法律上の最低基準より労働者に有利な取扱いをすること自体に問題はありません。
そのため、中小企業の実務では、業務の引き継ぎができており会社も対応可能であれば、本人の希望日から休業を認める運用も考えられます。
会社側は通知まで含めて処理する
会社側で注意したいのは、本人から変更申出を受けただけで処理を終わらせないことです。
変更後の休業開始予定日、終了予定日などについて会社から本人へ通知し、その日付を勤怠システム、給与計算、社会保険、雇用保険の担当者にも共有します。
特に給与締切日をまたぐ場合、変更連絡が給与担当者に伝わっていないと、休業期間中の賃金を通常勤務として計算してしまうことがあります。
そうなると、後で給与の修正だけでなく、育児休業給付の申請内容も確認し直さなければならない可能性があります。
会社側は、「本人から人事へ連絡」「上司へ共有」「勤怠の修正」「給与担当へ共有」「雇用保険・社会保険の日付確認」までを一つのフローにしておくと処理漏れを防ぎやすくなります。
私は会社の育児・介護休業規程を確認するときも、制度の文言だけでなく、実際に出産が予定より前後したときに誰へ連絡するのかまで決められているかを見るようにしています。
制度が整っていても、現場の手続きが決まっていなければ、いざというときに迷ってしまうためです。
育児休業申出書は出産後に変更する
出産前に育児休業を申し出る場合、申出書には出産予定日を記載することがあります。
また、休業開始予定日や終了予定日も、予定日を基準に決めていることが少なくありません。
その後、実際の出産日が予定日からずれれば、会社が把握している情報と実際の状況に違いが生じます。
出産後は実際の出生日を会社へ伝える
まず会社に伝える必要があるのは、実際の出生日です。
出産予定日はあくまで予定ですから、出生後の給付や社会保険関係の手続きでは実際の出生日を確認する場面があります。
出産後は、少なくとも次の情報を会社へ伝えておくとよいでしょう。
- 実際の出産日
- 子どもの氏名
- 当初の育休開始予定日
- 変更を希望する育休開始日・終了日
- 産後パパ育休を分割する場合の各休業期間
子どもの氏名がまだ決まっていない、出生届の提出前であるといった場合には、まず出生日と休業日程の変更だけを会社へ連絡し、後日不足する情報を提出する運用になることもあります。
会社によって使う書類は異なる
会社によっては、最初に提出した育児休業申出書そのものを書き直すのではなく、「育児休業期間変更申出書」「出生時育児休業期間変更申出書」など別の様式を使用します。
法律上必要となる事項を満たしていれば、会社独自の様式を定めることも可能です。
そのため、インターネットで見つけた様式を自己判断で提出するより、まず会社に所定様式があるか確認した方が確実です。
また、会社は申出内容を確認するため、必要最小限の範囲で証明書類の提出を求めることができます。
実務では母子健康手帳の出生届出済証明のページなどによって出生年月日を確認することがあります。
必要な確認書類は会社の運用や手続き内容によって異なります。
個人情報を含む書類でもあるため、会社から求められた範囲を確認して提出してください。
育児休業申出書そのものの基本的な書き方や申出期限については、 育児休業申出書の記入例と提出期限 で詳しく解説しています。
申出書だけでなく勤怠・給与・給付の日付も合わせる
会社側も、出生日の変更情報を受けた後は、単に申出書の紙を差し替えれば終わりではありません。
実際の休業期間は、勤怠管理、給与計算、雇用保険の出生時育児休業給付金や育児休業給付金、健康保険・厚生年金保険の育児休業等期間中の社会保険料免除などにも関係します。
| 確認する項目 | 主に確認する日付 |
|---|---|
| 育児休業の社内申出 | 実際の休業開始日・終了日 |
| 勤怠管理 | 休業日・出勤日 |
| 給与計算 | 休業期間中の賃金支払い状況 |
| 雇用保険の給付 | 出生日・予定日・実際の休業期間 |
| 社会保険料免除 | 育児休業等の開始日・終了日 |
出産日が確定したら「会社へ知らせれば終わり」ではなく、申出済みの休業期間と実際に休みたい期間が一致しているかまで確認することが重要です。
特に中小企業では、人事専任者がいないこともあり、本人と会社の双方が「予定日がずれただけだから、後で帳尻を合わせればよいだろう」と考えてしまうことがあります。
しかし、給与計算が終わった後、あるいは雇用保険の給付申請をした後に日付の違いが分かると、訂正の手間が大きくなります。
出産直後は本人も忙しい時期ですが、少なくとも出生日と休業開始日の変更だけは早めに会社へ伝えておくと安心です。
育児休業給付金への影響を確認する

出産予定日と実際の出産日がずれると、育児休業給付の対象となる休業期間にも影響することがあります。
特に産後パパ育休を取得する男性では、出生日と出産予定日の前後関係が、出生時育児休業給付金や出生後休業支援給付金の対象期間を確認するうえで重要です。
給付は当初の予定ではなく実際の休業状況で確認する
産後パパ育休を取得して一定の要件を満たす場合には、雇用保険から出生時育児休業給付金が支給されます。
給付の手続きでは、最初に会社へ伝えていた「休む予定」だけを見るのではありません。
実際にいつからいつまで休業したのか、休業中にどの程度就業したのか、会社から賃金が支払われているかなど、実際の状況をもとに支給要件を確認します。
そのため、出産予定日より早く生まれ、産後パパ育休を予定より前倒ししたのであれば、会社側でも実際の休業期間をもとに申請する必要があります。
反対に、予定日より出生が遅れたケースで、予定日から休業している場合には、出産予定日と実際の出生日の両方が重要になることがあります。
「会社へ最初に提出した予定日」と「実際に取得した休業日」が違う場合は、給付申請も実際の休業状況に合わせて確認することが重要です。
出生後休業支援給付金は14日要件にも注意する
2025年4月からは、出生直後の育児休業を後押しするため、出生後休業支援給付金が設けられています。
一定の対象期間内に本人が育児休業給付の対象となる休業を通算14日以上取得し、原則として配偶者についても一定期間内に14日以上の育児休業を取得するなどの要件を満たすと、出生時育児休業給付金または育児休業給付金に上乗せして支給されます。
配偶者が専業主婦・専業主夫である場合、ひとり親である場合など、配偶者の育児休業取得を要件としないケースもあります。
そのため「夫婦とも必ず14日取らなければ一切対象にならない」と覚えるのも正確ではありません。
現在の制度では、出生後休業支援給付金は休業開始時賃金日額の13%相当を、対象となる休業について最大28日間支給する仕組みです。
出生時育児休業給付金などの67%相当と合わせると給付率80%となり、社会保険料免除や非課税であることを踏まえて「手取り10割相当」と案内されています。
ただし、実際の支給額には休業開始時賃金日額の上限や休業中の賃金支払いなどが関係するため、すべての人が休業前の手取り額と完全に同じ金額になるという意味ではありません。
出産日のずれで14日の日程を外さないよう確認する
夫婦で出生後休業支援給付金の受給も考えながら育休日程を決めている場合、出産日のずれには特に注意が必要です。
たとえば「出産予定日から夫が14日休む」と計画していたところ、実際の出生が大きく前後すると、本人が本当に休みたい期間も変わるでしょう。
休業期間を変更した結果、対象期間内の育児休業が14日に満たなくなれば、出生後休業支援給付金の支給要件にも影響する可能性があります。
出生後休業支援給付金は、単に「14日会社を休んだか」だけで判断される制度ではありません。
本人の育児休業給付の支給対象となる休業か、配偶者の状況、対象期間、休業中の賃金など、複数の要件を確認する必要があります。
また、予定日より早く生まれた場合や遅く生まれた場合には、対象期間の計算にも出産予定日が使用されます。
特に予定日より遅れて出生し、実際の出生日より前から育児休業を開始している場合などは、出産予定日の確認が必要になる場合があります。
育児休業等給付の支給要件や最新の手続きについては、 厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」 で最新情報を確認してください。
社会保険料免除とは別に確認する
さらに注意したいのが、雇用保険から支給される育児休業給付と、健康保険・厚生年金保険の育児休業等期間中の保険料免除は別制度だという点です。
「育児休業給付金が出る期間だから社会保険料も必ず免除される」「社会保険料が免除されたから給付金も必ず出る」という関係ではありません。
出産日や休業開始日がずれた場合には、雇用保険の給付手続きだけでなく、社会保険側で届け出ている育児休業等の開始日・終了日も確認する必要があります。
特に月末をまたいで開始日や終了日が変わる場合には、社会保険料免除の結果に影響する可能性もあるため、会社の担当者へ変更後の日程を正確に伝えてください。
制度の支給率、上限額、支給要件、申請様式などは今後改正される可能性があります。
金額を前提に家計を組む場合は、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
出産予定日とずれた場合の育休まとめ
出産予定日とずれた場合の育休で最も重要なのは、 出産予定日と実際の出産日のどちらが先だったのかを確認し、そのうえで会社へ申し出ている休業期間を見直すこと です。
予定日と出生日のずれは珍しいことではありませんが、男性の産後パパ育休では、そのずれが取得可能期間や休業開始日に直接関係します。
まず早く生まれたか遅く生まれたかを確認する
産後パパ育休では、予定日より早く生まれた場合と遅く生まれた場合で対象期間の考え方が変わります。
| 確認項目 | 予定日より早い場合 | 予定日より遅い場合 |
|---|---|---|
| 対象期間の開始 | 実際の出生日 | 出産予定日 |
| 対象期間の終期 | 出産予定日を基準に確認 | 実際の出生日を基準に確認 |
| 開始日の対応 | 繰上げ変更を検討 | 当初申出と希望日程を再確認 |
| 会社への対応 | 実際の出生日と変更後の日程を速やかに連絡 | |
予定日より早く生まれた場合は、取得可能期間が実際の出生日から始まります。
予定日開始で会社へ申し出ていたものの、実際の出生日から休みたいのであれば、開始予定日の繰上げ変更を検討します。
一方、予定日より遅く生まれた場合は、産後パパ育休の取得可能期間の始まりは出産予定日となり、終わりは実際の出生日を基準として後ろへ延びます。
この場合、当初申し出た予定日から休業するのか、実際の出生に合わせて日程を変更したいのかによって、会社との調整内容が変わります。
出産後は4つの順番で確認する
出産日が予定とずれた場合は、何から確認すればよいか迷いやすいため、次の順番で整理すると分かりやすいです。
実際の出産日を確認する → 申出済みの休業日程と比較する → 必要なら会社へ変更を申し出る → 給付金や社会保険の手続きを確認する
最初に確認するのは、実際の出生日と出産予定日です。
次に、あなたが会社へ提出した育児休業申出書や出生時育児休業申出書を見て、開始予定日と終了予定日を確認します。
両者を比較して、当初の申出どおりで問題なければ、そのまま進めることもあります。
反対に、出産が早まったため休業開始日を前倒ししたい、出産が遅れたため当初の日程を変更したいという場合には、速やかに会社へ連絡します。
最後に、実際の休業期間に合わせ、会社側で雇用保険の育児休業等給付や社会保険料免除などの手続きを確認します。
会社側も予定日のずれを前提に準備する
会社の人事・労務担当者にもお伝えしたいのは、出産予定日はあくまで予定だという当たり前の前提を、社内手続きにも反映させておくことです。
男性従業員から出産予定日を開始日とする産後パパ育休の申出を受けた場合には、予定日前に生まれたとき、予定日を過ぎたときの両方を想定しておくとよいでしょう。
- 出産日が変わった場合の連絡先を案内する
- 休業期間変更申出の社内様式を用意する
- 上司・人事・給与担当者の情報共有方法を決める
- 雇用保険と社会保険の日付を再確認する
こうした流れを事前に決めておけば、出産直後の従業員へ何度も確認を求める必要も減ります。
会社にとっても、給与計算や給付申請を後から訂正するリスクを下げられます。
予定どおりに生まれないことを前提に考える
出産予定日とずれた場合の育休は、制度だけを見ると少し複雑です。
しかし、「出産予定日は変わる可能性がある」「産後パパ育休には取得可能期間と実際の申出期間がある」「日程が変われば会社へ連絡する」という3点を押さえておけば、必要な対応は整理できます。
特に男性が出産予定日から産後パパ育休を取得する場合には、出産前の段階で会社へ「予定より早く生まれた場合はどう連絡するか」まで確認しておくと安心です。
また、出生後休業支援給付金などを見込んで夫婦の育休日程を組んでいるのであれば、実際の出産日が確定した段階でもう一度日数を確認してください。
数日の変更でも、対象期間や14日という取得日数の確認に影響する可能性があります。
育児休業や産後パパ育休は、実際の出生日、出産予定日、申出日、希望する休業開始日などによって個別の取扱いが変わることがあります。
また、育児休業等給付の支給要件や金額は法改正によって変更される可能性があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
会社の規程やすでに提出している申出内容によって具体的な手続きも異なるため、勤務先の人事・労務担当者にも早めに確認することをおすすめします。
開始日の変更が認められるか、会社がどの日を指定できるか、給付金の対象期間をどのように計算するかなど、個別の状況によって判断が難しい場合は、最終的な判断は専門家にご相談ください。