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雇用保険の週20時間計算方法を社労士が実務目線で解説

こんにちは。もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

パートやアルバイトを採用するとき、雇用保険の週20時間の計算方法で迷う会社は少なくありません。

特に、所定労働時間、実労働時間、シフト制、月87時間、31日以上の雇用見込み、社会保険との違い、休憩時間の扱いなどは、採用時によく確認する実務上のポイントです。

この記事では、雇用保険の加入条件を確認しながら、週単位、月単位、変形労働時間制、シフト制の場合にどのように週20時間を判断するのかを整理します。

人事・総務担当者や経営者の方が、雇用契約書や労働条件通知書を確認しながら実務で判断できるよう、できるだけ分かりやすく解説します。

  • 雇用保険の週20時間要件
  • 月87時間の計算根拠
  • シフト制や変形労働時間制の判断
  • 社会保険との違いと実務対応

雇用保険の週20時間計算方法

雇用保険の週20時間計算方法を理解する

雇用保険の週20時間計算方法を理解する

まずは、雇用保険でいう週20時間の意味を整理します。

実務では、実際に働いた時間だけを見て判断してしまうケースがありますが、雇用保険では原則として契約上の所定労働時間をもとに考えます。

ここを最初に押さえておくと、その後の判断がかなりラクになります。

週20時間という言葉だけを見ると単純そうですが、月単位契約、シフト制、休憩時間、残業、欠勤などが絡むと、実務では意外と迷いやすいんですよ。

雇用保険の加入要件を確認

雇用保険の加入要件を確認

雇用保険の加入判断では、一般的に 週の所定労働時間が20時間以上 であり、かつ 31日以上の雇用見込み があるかどうかを確認します。

パート、アルバイト、契約社員など名称にかかわらず、要件を満たす場合は加入対象になり得ます。

まず大事なのは、「正社員かどうか」ではなく、「雇用保険の要件に当てはまるかどうか」で見ることです。

実務では、短時間勤務者について「パートだから雇用保険は不要ですよね」と相談されることがあります。

気持ちは分かります。短時間勤務だと社会保険や雇用保険の対象外というイメージを持ちやすいですよね。

ただ、雇用保険は雇用形態の名称だけで決まるものではありません。

たとえば、1日4時間で週5日勤務するパート社員は、4時間×5日で週20時間です。

1日5時間で週4日勤務するアルバイトも、5時間×4日で週20時間です。

このような場合、31日以上の雇用見込みがあれば、原則として雇用保険の加入対象として確認することになります。

逆に、週3日、1日6時間勤務であれば18時間ですので、週20時間には届きません。

また、雇用見込みの31日以上という点も大切です。

「最初は1か月未満の短期契約」としていても、更新の可能性がある場合や、実態として31日以上引き続き雇用される見込みがある場合には、加入対象として確認が必要になることがあります。

ここは契約書の期間だけを形式的に見るのではなく、更新の有無や採用時の説明も含めて考えます。

雇用保険は、社会保険と異なり、企業規模や月額賃金だけで判断する制度ではありません。まずは週20時間以上か、31日以上の雇用見込みがあるかを確認します。

なお、昼間学生など一部の方は適用除外となる場合があります。

学生アルバイトを採用する場合は、学生区分や勤務実態もあわせて確認してください。

通信制、定時制、休学中、卒業見込みで卒業後も引き続き雇用予定など、学生といっても判断が分かれることがあります。

実務で最初に確認する資料

私が会社から相談を受けたときは、まず雇用契約書、労働条件通知書、勤務予定表、シフト表を確認します。

給与明細や勤怠実績だけを先に見るより、契約上どう働くことになっているのかを確認した方が判断しやすいからです。

雇用保険制度の基本情報は、厚生労働省の案内でも確認できます。

制度改正や最新の取扱いが関係する場合は、必ず一次情報も確認してください。(出典: 厚生労働省「雇用保険制度」

所定労働時間で計算する理由

雇用保険の週20時間を判断するときの基本は、 実際に働いた時間ではなく、雇用契約書や就業規則で定められた所定労働時間 です。

ここが一番つまずきやすいところかなと思います。

所定労働時間とは、会社と従業員の間であらかじめ決めた「働くことになっている時間」です。

たとえば、雇用契約書に「月曜から金曜まで、10時から14時、休憩なし」と書かれていれば、1日4時間、週5日で週20時間です。

実際にある週で体調不良により1日休んだとしても、契約上の所定労働時間が週20時間であること自体は変わりません。

一方、実労働時間は、実際に働いた時間です。残業があれば増えますし、欠勤や早退があれば減ります。

給与計算では実労働時間が重要になりますが、雇用保険の加入判断では、まず所定労働時間を見ます。

ここを混同すると、「今月は実労働が少なかったから雇用保険を外す」「残業で一時的に20時間を超えたからすぐ加入する」といった不安定な運用になってしまいます。

たとえば、契約上は週18時間勤務で、たまたま繁忙期に残業が多く週22時間働いた場合でも、ただちに雇用保険の加入対象と判断するわけではありません。

反対に、契約上は週20時間勤務で、欠勤や有給休暇の取得により実際の出勤時間が少ない週があっても、所定労働時間が20時間以上であれば加入要件を満たす方向で確認します。

ただし、ここで注意してほしいのは、契約書だけ整えていれば何でもよいわけではないという点です。

契約上は週18時間なのに、毎週のように25時間働いている。しかも今後もその働き方が続く。

こうなると、実態に合わせて契約内容を見直す必要があります。書面と実態がずれている状態は、労務管理上もあまり良くありません。

私が採用時によく確認するのは、勤務実績よりも先に、労働条件通知書にどのような時間が書かれているかです。

「シフトによる」とだけ記載されていると、後から判断に迷いやすくなります。

採用時は忙しくて、つい簡単な記載で済ませたくなるものですが、後から困るのは会社側です。

残業、遅刻、早退、欠勤、有給休暇の取得だけで、所定労働時間そのものが変わるわけではありません。

実務では、契約上の時間と実際の勤怠を分けて確認しましょう。

所定労働時間を明確にする書き方

労働条件通知書には、勤務日、始業終業時刻、休憩時間、週または月の所定労働時間をできるだけ具体的に書くのがおすすめです。

固定シフトなら「月・水・金、9時から16時、休憩1時間」のように書けます。

シフト制なら「週平均20時間程度」「月90時間程度」など、判断の軸になる時間を記載しておくと実務が安定します。

所定労働時間の管理は、雇用保険だけでなく、年次有給休暇、社会保険、残業管理、就業規則の適用にも関係します。

採用時に丁寧に決めておく価値はかなり大きいですよ。

週単位契約の計算方法

週単位契約の計算方法

週単位で勤務日数と1日の勤務時間が決まっている場合は、計算は比較的シンプルです。

休憩時間を除いた1日の所定労働時間に、週の勤務日数を掛けて判断します。

週の所定労働時間=1日の所定労働時間×週の勤務日数 です。

この計算式自体は難しくありません。

ただ、実務では「勤務時間帯」と「労働時間」を混同しやすいので、そこだけ注意してください。

たとえば、10時から15時まで勤務で休憩なしなら、1日の所定労働時間は5時間です。

これを週4日勤務するなら、5時間×4日=20時間となり、雇用保険の週20時間要件に届きます。

9時から17時まで勤務で休憩1時間なら、拘束時間は8時間ですが、労働時間は7時間です。この場合、週3日勤務なら7時間×3日=21時間となります。

会社の現場では、「9時から17時だから8時間」とざっくり見てしまうことがあります。

ただ、休憩時間は労働時間に含めません。雇用保険の加入判断をするときも、休憩を除いた所定労働時間で考えるのが基本です。

勤務パターン 計算 週所定労働時間 判断
1日5時間、週4日 5時間×4日 20時間 加入対象の目安
1日4時間、週5日 4時間×5日 20時間 加入対象の目安
1日6時間、週3日 6時間×3日 18時間 対象外の目安
1日5時間、週5日 5時間×5日 25時間 加入対象の目安

週単位契約で注意したいのは、曜日ごとに勤務時間が違うケースです。

たとえば、月曜は4時間、水曜は6時間、金曜は5時間、土曜は5時間という契約なら、合計は20時間です。

この場合は、1日あたりの平均ではなく、各曜日の所定労働時間を合計して判断します。

また、「週3日から週5日の間で勤務」「1日4時間から6時間程度」など、幅のある契約も実務では見かけます。

このような書き方だと、週20時間以上なのか未満なのかが分かりづらくなります。

採用時点で週20時間以上働く見込みがあるなら、その旨を契約書に明記した方が安全です。

逆に、週20時間未満の契約であれば、その前提が勤務実態と合っているかを定期的に見直しましょう。

固定シフトの場合は、曜日ごとの勤務時間を一覧にして合計するだけで判断できます。

計算は簡単でも、休憩時間の控除と契約書の記載確認は忘れないようにしましょう。

週20時間ちょうどの場合

週20時間ちょうどの場合は、週20時間以上に該当します。「20時間を超える」ではなく「20時間以上」と考えるのがポイントです。

1日4時間で週5日、1日5時間で週4日などは、ちょうど20時間ですので、31日以上の雇用見込みなど他の要件もあわせて確認します。

週19時間45分のような契約は、週20時間には届きません。

ただし、実態として毎週20時間以上働く見込みがあるなら、契約内容の見直しを検討してください。

月単位契約の計算方法

月単位で所定労働時間が決まっている場合は、1か月の所定労働時間を週に換算して判断します。

実務では、月の勤務時間で契約するパートやシフト勤務の方でよく使う考え方です。

週の所定労働時間=1か月の所定労働時間×12÷52 で計算します。

別の言い方をすると、1か月の所定労働時間を4.333で割るイメージです。

これは、1年を52週、1年を12か月として、月の時間を週平均に直す考え方です。

たとえば、月90時間の契約であれば、90時間×12÷52=約20.77時間です。

週20時間以上の目安になります。月80時間であれば、80時間×12÷52=約18.46時間ですので、

週20時間未満の目安です。月単位契約では、この換算をしないと、週20時間に届いているのか判断しづらいんですよ。

月の所定労働時間 週換算 判断
月100時間 100×12÷52=約23.1時間 加入対象の目安
月90時間 90×12÷52=約20.8時間 加入対象の目安
月87時間 87×12÷52=約20.1時間 加入対象の目安
月80時間 80×12÷52=約18.5時間 対象外の目安

月単位契約の場合、月80時間なのか、月90時間なのかで雇用保険の判断が変わります。

採用時に「だいたい週4日くらい」と口頭で済ませず、月の所定労働時間や週平均時間を雇用契約書に明記しておくと、後日の確認がしやすくなります。

特にシフト制では、週によって勤務日数が変わります。

ある週は16時間、別の週は24時間というように波がある場合でも、月の所定労働時間が明確であれば、月単位から週平均に換算して判断できます。

これが契約書に書かれていないと、過去の実績や今後の見込みを見て判断することになり、会社と従業員の認識がずれることがあります。

月単位契約で確認したいポイント

月単位契約を使う場合は、月の所定労働時間、シフト作成のルール、休憩時間、休日の考え方を整理しておくとよいです。

たとえば、「月90時間程度」とだけ書くより、「月90時間程度、勤務日はシフト表により決定、休憩時間は勤務時間に応じて付与」といった形の方が、実務上の説明がしやすくなります。

月単位契約では、月の所定労働時間を週平均に直して判断します。

月90時間前後になると週20時間を超える可能性が高いため、採用時点で雇用保険の手続き要否を確認しておきましょう。

なお、月の実労働時間が毎月大きく変動する場合は、「契約上の月所定労働時間」と「実際のシフト」が合っているかも確認してください。

契約は月80時間なのに、実態は毎月100時間前後働いているのであれば、雇用保険だけでなく、労働条件の明示や人員計画の面でも見直しが必要です。

月87時間が目安となる根拠

月87時間が目安となる根拠

雇用保険の週20時間を月単位に直すと、月87時間が一つの目安になります。

計算の考え方は、1年を52週として、週20時間を年間に直し、それを12か月で割るものです。

20時間×52週=1,040時間、1,040時間÷12か月=約86.67時間です。

そのため、実務上は 月87時間以上 が週20時間相当の目安として使われます。

少し細かい数字ですが、ここを理解しておくと、月80時間、月85時間、月90時間などの契約を見たときに判断しやすくなります。

ただし、月87時間はあくまで一般的な目安です。

厳密には86.67時間ですので、月86時間40分前後のような細かい設定では、丸め方だけで判断が変わるように見えることもあります。

実務では、契約書の記載、シフトの組み方、今後の勤務見込みを含めて確認します。

月87時間は便利な目安ですが、あくまで一般的な換算です。

勤務パターンや契約内容によっては、個別に確認が必要です。

特に注意したいのは、「月87時間未満なら必ず対象外」と機械的に決めつけないことです。

週単位の所定労働時間が明確に20時間以上であれば、月の見え方だけで判断するのではなく、契約内容全体を確認します。

たとえば、毎週月曜から金曜まで4時間勤務する契約なら、週20時間です。

月によって暦の日数が違うため、月の時間だけを見ると増減して見えることがありますが、週単位契約としては週20時間です。

反対に、月87時間を少し超えていても、臨時的な増加なのか、継続的な所定労働時間なのかを確認する必要があります。

たまたま人手不足で今月だけ多く入ってもらっただけなら、所定労働時間が変わったとはいえない場合があります。

一方で、今後も継続して月90時間前後の勤務を予定しているなら、雇用保険の加入手続きを検討すべきです。

なぜ52週で計算するのか

1年は365日で、7日で割ると約52.14週です。実務上の換算では52週を用いるため、月の所定労働時間を週平均へ直すときに「12÷52」を使います。

計算式だけ見ると少し分かりにくいですが、要するに「月の時間を年間時間にして、それを週平均に戻す」ということです。

月単位契約で迷ったら、まず月の所定労働時間に12を掛け、52で割ってみてください。

その数字が20時間以上かどうかが、最初の判断材料になります。

会社としては、月87時間という目安を人員配置や採用条件の設計にも使えます。

たとえば、雇用保険に加入する前提で月90時間契約にするのか、週20時間未満の短時間勤務として月80時間程度にするのか。

どちらが良い悪いではなく、業務量、本人の希望、法令上の手続き、保険料負担を整理して決めることが大切です。

変形労働時間制の計算方法

4週間を単位とする変形労働時間制の場合は、4週間の所定労働時間の合計を4で割って、1週間あたりの所定労働時間を確認します。

変形労働時間制は、週によって勤務時間に差が出る職場で使われることが多いため、単純に「ある週だけ20時間を超えたか」では判断しません。

たとえば、第1週16時間、第2週24時間、第3週20時間、第4週20時間であれば、合計80時間です。

80時間÷4=20時間となるため、週平均20時間として加入対象の目安になります。

一方で、第1週16時間、第2週20時間、第3週16時間、第4週20時間であれば、合計72時間です。72時間÷4=18時間となり、週20時間未満の目安になります。

変形労働時間制では、対象期間の中で忙しい週と比較的落ち着いている週を組み合わせます。

小売業、飲食業、介護、医療、製造業などでは、繁忙日や曜日によって労働時間が変わりやすいですよね。

そのため、週ごとの数字だけを見ると判断を誤る可能性があります。

例1 例2
第1週 16時間 16時間
第2週 24時間 20時間
第3週 20時間 16時間
第4週 20時間 20時間
合計 80時間 72時間
週平均 20時間 18時間
判断 加入対象の目安 対象外の目安

ここで重要なのは、変形労働時間制を使っているつもりでも、制度として正しく整備されているかどうかです。

就業規則や労使協定、勤務カレンダー、シフト表などが整っていないと、そもそも労務管理上の説明が難しくなることがあります。

雇用保険の週20時間判断だけでなく、労働時間管理全体として確認した方がいいです。

変形労働時間制では、特定の週だけ20時間を超えるかではなく、対象期間の平均で確認します。

勤務表、就業規則、労使協定、雇用契約書の整合性を確認しましょう。

変形労働時間制でありがちなズレ

実務でありがちなのは、シフト表では4週間平均20時間以上になっているのに、雇用契約書では「週3日程度」「シフトによる」としか書かれていないケースです。

この状態だと、加入判断の根拠があいまいになります。

会社としては、4週間の所定労働時間の合計や週平均時間を説明できるようにしておくことが大切です。

また、変形労働時間制では、事前に勤務日や勤務時間を特定しておくことが重要になります。

毎回場当たり的にシフトを増やしていると、所定労働時間なのか、臨時の追加勤務なのかが分かりづらくなります。

結果として、雇用保険の取得時期や労働条件の変更時期で迷うことにもつながります。

変形労働時間制を採用している会社では、雇用保険の判断だけでなく、労働時間制度そのものが適切に運用されているかもセットで確認すると安心です。

雇用保険の週20時間計算方法と実務対応

雇用保険の週20時間計算方法と実務対応

ここからは、実務で迷いやすいシフト制、残業、休憩、欠勤、有給休暇、社会保険との違いを整理します。

採用時や契約更新時に確認しておくと、後からの手続き漏れを防ぎやすくなります。

実際の現場では、計算式そのものよりも、「この人は加入対象として扱うべきか」「いつから手続きするべきか」「契約書をどう書けばよいか」で迷うことが多いです。

ここからは、会社の実務担当者がそのまま確認に使えるように、少し踏み込んで説明します。

シフト制の判断方法

シフト制の判断方法

シフト制で勤務時間が毎週変わる場合でも、最初に確認するのは雇用契約書や労働条件通知書です。

そこに「週平均20時間」「月90時間」などの記載があれば、その内容をもとに判断します。

シフト制だからといって、雇用保険の判断ができないわけではありません。

契約書に具体的な時間がなく、「シフトによる」とだけ書かれている場合は、採用時の合意内容や勤務実績、今後の見込みを踏まえて判断する必要があります。

実際によくある相談ですが、シフト制の会社ほど、契約書の書き方が大事になります。

少し面倒に感じるかもですが、ここを整えておくと後がラクです。

たとえば、採用後1か月の勤務実績が月90時間で、翌月以降も同程度の勤務が見込まれる場合は、週20時間以上として扱う方向で確認することがあります。

反対に、繁忙期だけ一時的に増えた勤務で、通常は週20時間未満という場合は、契約内容や勤務見込みを慎重に見ます。

シフト制で判断が難しくなるのは、「毎週の時間が固定されていない」からです。

ある週は12時間、次の週は28時間、その次は18時間というように変動すると、週単位だけで見ると判断がぶれます。

そのため、契約上の週平均時間や月所定労働時間が重要になります。

シフト制で契約書に入れたい情報

シフト制であっても、次のような情報はできるだけ契約書に入れておくことをおすすめします。

勤務日や始業終業時刻を完全に固定できない場合でも、週平均または月平均の時間を示すことで、雇用保険の判断がしやすくなります。

  • 週平均の所定労働時間
  • 月の所定労働時間の目安
  • シフトの決定方法
  • 休憩時間の扱い
  • 契約時間を変更する場合の手続き

たとえば、「勤務日はシフト表により決定し、週平均20時間程度とする」「月の所定労働時間は90時間程度とする」といった書き方です。

もちろん、実際の勤務実態と合っていることが前提です。

契約書に月80時間と書いているのに、毎月120時間働いている状態では、書類と実態がずれてしまいます。

シフト制の会社では、人手不足や急な欠員対応で勤務時間が増えることがあります。

単発の増加ならまだしも、それが続く場合は、雇用契約を見直すタイミングです。

雇用保険の加入漏れを防ぐ意味でも、月ごとの実労働時間を確認し、契約時間とのズレをチェックしましょう。

「シフトによる」とだけ書いてある契約書は、判断の根拠として弱くなりがちです。

週平均時間や月所定労働時間を補足しておくと、会社にも従業員にも分かりやすい契約になります。

実労働時間との違い

所定労働時間と実労働時間は、似ていますが実務上は別のものです。

所定労働時間は、契約や就業規則で定められた勤務すべき時間です。

実労働時間は、実際に働いた時間です。この違いを押さえておくと、雇用保険の判断でかなり迷いにくくなります。

雇用保険の週20時間の計算では、原則として所定労働時間を見ます。

たとえば、契約上は週20時間勤務で、ある週に体調不良で1日休んだとしても、契約上の週20時間という前提は変わりません。

給与計算では欠勤控除が発生するかもしれませんが、雇用保険の加入要件の判断とは分けて考えます。

一方で、契約上は週15時間なのに、毎月のように週25時間前後働いている場合は、実態として契約内容を見直すべき場面があります。

会社としては、単に「契約書では週15時間だから」と放置するのではなく、実際の働き方に合わせて契約変更や雇用保険手続きを検討することが大切です。

ここは少しややこしいですよね。ポイントは、「一時的な実労働時間の増減」と「継続的な勤務実態の変化」を分けることです。

たまたま1週だけ多く働いたのか、今後もずっと多く働く予定なのか。この違いで、会社が取るべき対応は変わります。

ケース 考え方 実務対応
契約は週20時間、欠勤で実労働が減少 所定労働時間は変わらない 加入継続が基本
契約は週18時間、一時的な残業で週22時間 一時的なら所定労働時間は変わらない 契約実態を確認
契約は週18時間、毎週25時間勤務が継続 実態が変わっている可能性 契約変更と加入手続きを検討
契約変更で週20時間未満へ減少 所定労働時間が変更 資格喪失の要否を確認

実労働時間は、実態確認の材料としてとても重要です。ただし、それだけで毎月加入・喪失を繰り返すような運用は現実的ではありません。

まずは所定労働時間で判断し、実態が継続的に変わっている場合に契約内容を見直す。

これが実務上は安定した考え方かなと思います。

勤怠実績を確認するタイミング

私が実務でおすすめしているのは、契約更新時やシフト変更時に、直近数か月の勤怠実績を確認することです。

特に、週20時間未満の契約者が実態として20時間以上働いていないか、逆に週20時間以上の契約者が継続的に短時間化していないかを見ます。

所定労働時間は加入判断の基本、実労働時間は実態確認の材料。この2つを分けて見ると、雇用保険の判断がかなり整理しやすくなります。

残業や休憩時間の扱い

残業や休憩時間の扱い

残業や時間外労働は、原則として週20時間の所定労働時間には含めません。

通常の契約が週18時間で、たまたま残業により週22時間になった場合でも、それだけで直ちに加入対象とするわけではありません。

ここは会社からの相談でも本当によく出ます。

ただし、残業が常態化し、実質的に週20時間以上働くことが前提になっている場合は注意が必要です。

その場合は、所定労働時間そのものを見直し、雇用契約書を変更したうえで、雇用保険の資格取得手続きを検討します。

要するに、残業が一時的なものなのか、働き方そのものが変わったのかを見るわけです。

たとえば、週18時間契約の方が、毎週のように追加シフトに入り、3か月続けて週22時間から25時間働いているような場合、契約上の週18時間という設定が実態に合っていない可能性があります。

このような状態を放置すると、雇用保険の加入漏れだけでなく、労働条件の説明不足にもつながります。

また、休憩時間は所定労働時間に含めません。

9時から18時まで勤務して休憩が1時間ある場合、労働時間は8時間です。

10時から15時まで勤務して休憩30分がある場合、労働時間は4.5時間です

。勤務時間帯だけを見て判断すると、計算を間違えることがあります。

勤務時間帯 休憩 所定労働時間
10時から15時 なし 5時間
10時から15時 30分 4.5時間
9時から17時 1時間 7時間
9時から18時 1時間 8時間

残業を含めて週20時間を超えるかではなく、契約上の労働時間が週20時間以上かを確認します。

ただし、実態と契約がずれている場合は、契約内容の見直しが必要です。

休憩時間の設定にも注意

休憩時間は、雇用保険の週20時間計算だけでなく、労働基準法上の休憩付与にも関係します。

勤務時間が6時間を超える場合、8時間を超える場合で休憩のルールが変わります。

短時間勤務者だからといって、休憩の管理を曖昧にしてよいわけではありません。

実務では、シフト表に「9時から16時」とだけ書かれていて、休憩があるのかないのか分からないケースがあります。

この場合、週20時間の計算にも影響します。雇用契約書、シフト表、勤怠記録で休憩時間の扱いをそろえておくと、後から説明しやすいです。

休憩を除くと週20時間未満になるのか、休憩なしなら週20時間以上になるのかで判断が変わることがあります。

ボーダー付近の契約では、休憩時間の記載を特に丁寧に確認しましょう。

欠勤や有給取得の影響

欠勤、遅刻、早退、有給休暇の取得は、原則として所定労働時間の計算そのものには影響しません。

契約上、週20時間勤務の方が有給休暇を取得したからといって、その週だけ雇用保険の加入要件を満たさなくなるわけではありません。

中小企業では、給与計算の結果だけを見て「今月は勤務時間が少ないから雇用保険を外してよいのでは」と相談されることがあります。

しかし、雇用保険の加入要否は、毎月の実労働時間だけで出し入れするものではありません。

ここを誤ると、加入と喪失を頻繁に繰り返すような不安定な管理になってしまいます。

たとえば、週20時間契約の従業員が、子どもの体調不良で欠勤した月があったとします。

その月の実労働時間が少なくても、雇用契約上の週20時間勤務が継続しているのであれば、雇用保険の加入を外す理由には通常なりません。

有給休暇を取得した場合も同様です。有給休暇は、労働義務のある日に取得するものですので、契約上の所定労働時間が消えるわけではありません。

一方で、育児、介護、本人の希望、会社の業務量減少などにより、契約上の勤務時間を継続的に週20時間未満へ変更する場合は、雇用保険の資格喪失が必要になることがあります。

この場合も、単発の欠勤ではなく、契約変更の有無を確認することが大切です。

一時的な減少と契約変更の違い

一時的な欠勤や有給取得は、所定労働時間を変えるものではありません。

これに対して、本人と会社が合意して「来月から週16時間勤務に変更する」とした場合は、所定労働時間が変わります。

この違いがとても大事です。

状況 所定労働時間への影響 確認ポイント
有給休暇を取得 原則として変わらない 契約時間はそのままか
体調不良で欠勤 原則として変わらない 一時的な欠勤か
本人希望で勤務日を減らす 変更の可能性あり 契約変更日と変更後の時間
業務量減少で継続的に短時間化 変更の可能性あり 合意内容と書面化

欠勤や有給取得で実労働時間が減っただけなら、所定労働時間は通常変わりません。

雇用保険の資格喪失を考える前に、契約内容が変更されたのかを確認しましょう。

また、勤務時間を減らす場合は、会社の都合なのか、本人の希望なのか、双方の合意があるのかも重要です。

労働条件の変更は、雇用保険だけの問題ではありません。

従業員にとっては収入や生活にも関わる話ですので、口頭で済ませず、変更後の労働条件を書面で確認することをおすすめします。

社会保険の週20時間との違い

社会保険の週20時間との違い

雇用保険と社会保険は、どちらも週20時間という言葉が出てくるため混同しやすい制度です。

ただし、判断要件は同じではありません。ここは本当に間違えやすいところです。

雇用保険では、一般的に週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあるかが重要です。

一方、社会保険の短時間労働者の要件では、週20時間以上に加えて、賃金、雇用見込み、学生でないこと、事業所規模などの要件も確認します。

つまり、「週20時間以上だから必ず社会保険にも加入」というわけではありませんし、「社会保険に入らないから雇用保険にも入らない」というわけでもありません。

制度ごとに加入条件が違います。ここを分けて考えることが、実務ではかなり重要です。

項目 雇用保険 社会保険
週の所定労働時間 20時間以上が目安 20時間以上が要件の一つ
雇用見込み 31日以上 2か月を超える見込みなど
企業規模 原則として問わない 短時間労働者要件で関係
賃金要件 原則として問わない 月額賃金要件あり
学生の扱い 昼間学生などは適用除外に注意 学生でないことが要件の一つ

社会保険の週20時間や加入条件については、 社会保険への加入条件を社労士が解説 でも詳しく整理しています。

また、勤務時間が週20時間を超えたり超えなかったりするケースは、 社会保険で週20時間を超えたり超えなかったりする際の注意点 も参考になります。

雇用保険に入るから社会保険にも必ず入る、社会保険に入らないから雇用保険にも入らない、という単純な関係ではありません。

採用時には、それぞれの制度ごとに要件を分けて確認しましょう。

実務で起こりやすい組み合わせ

たとえば、従業員数が少ない会社で、週20時間以上働くパート社員を採用する場合、雇用保険は加入対象になる一方で、社会保険の短時間労働者としては対象外になることがあります。

反対に、社会保険の適用拡大対象となる事業所では、週20時間以上、賃金要件、雇用見込み、学生でないことなどを総合して確認する必要があります。

同じ週20時間でも、雇用保険と社会保険では確認する条件が違います。

採用時には、雇用保険チェックと社会保険チェックを別々に行うのがおすすめです。

また、社会保険では令和6年10月以降、短時間労働者の適用対象となる企業規模が変わっています。

今後も制度改正が行われる可能性がありますので、会社の規模、従業員数、賃金、学生区分などは最新情報で確認してください。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

雇用保険の週20時間計算方法まとめ

雇用保険の週20時間計算方法で大切なのは、まず 所定労働時間で判断する という基本を押さえることです。

週単位で決まっている場合は、1日の所定労働時間に週の勤務日数を掛けます。

月単位で決まっている場合は、月の所定労働時間に12を掛け、52で割って週換算します。

月87時間は、週20時間を月に換算した一般的な目安です。

ただし、勤務パターンや契約内容によって判断が変わることがありますので、月87時間だけで機械的に判断しないよう注意してください。

特に、固定シフトなのか、月単位契約なのか、シフト制なのかで見るべきポイントが変わります。

シフト制の場合は、雇用契約書や労働条件通知書に週平均時間や月所定労働時間を明記しておくことが重要です。

記載があいまいな場合は、勤務実績や今後の見込みを踏まえて判断します。

契約書に「シフトによる」とだけ書いている場合は、できるだけ早めに見直した方がいいかもしれません。

実務では、採用時に「週何時間働く契約なのか」「31日以上の雇用見込みがあるのか」「社会保険とは別に雇用保険の要件を満たすのか」を確認しておくと、手続き漏れを防ぎやすくなります。

実務チェックリスト

  • 雇用契約書に週または月の所定労働時間が書かれているか
  • 休憩時間を除いて週20時間以上になるか
  • 月単位契約なら月所定労働時間を12倍して52で割ったか
  • 31日以上の雇用見込みがあるか
  • 昼間学生など適用除外に該当しないか
  • シフト制の場合、週平均または月平均の勤務見込みが明確か
  • 残業が常態化して契約時間と実態がずれていないか
  • 社会保険とは別に雇用保険の要件を確認したか

なお、雇用保険は制度改正により、2028年10月1日から週の所定労働時間の要件が20時間以上から10時間以上へ拡大される予定です。

今後の実務対応では、短時間勤務者の雇用契約やシフト管理も早めに見直しておくと安心です。

短時間勤務者が多い会社では、対象者数、保険料、手続き件数、シフト設計への影響を少しずつ確認しておくとよいですね。

2028年10月1日施行予定の雇用保険の適用拡大については、厚生労働省の資料でも示されています。

今後の実務対応に関わるため、最新情報を確認しておきましょう。(出典: 厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和10年10月1日施行分)について」

最後に、雇用保険の判断は、数字だけでなく契約内容と勤務実態の両方を見ることが大切です。

週20時間、月87時間、31日以上の雇用見込みといった基準を押さえつつ、会社の実態に合った書面整備を行ってください。

制度内容は改正や運用変更があり得ます。正確な情報は公式サイトをご確認ください。

また、個別の契約内容や勤務実態によって判断が分かれることがありますので、最終的な判断は専門家にご相談ください。

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