社会保険・年金

厚生年金と国民年金の違いを6項目で比較|仕組みとポイント

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

厚生年金と国民年金の大きな違いは、国民年金が公的年金の1階部分にあたり、厚生年金が会社員や公務員などに上乗せされる2階部分にあたることです。

会社員は厚生年金だけに加入しているわけではなく、国民年金にも第2号被保険者として加入しています。

そのため、会社員が国民年金と厚生年金の保険料を二重に払っているわけでもありません。

給与から厚生年金保険料が控除されている会社員については、第1号被保険者のように国民年金保険料を別途納付する仕組みではなく、公的年金制度全体の中で基礎年金部分も支えられています。

一方、自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者は、原則として国民年金保険料を自分で納めます。

この違いは毎月の保険料だけでなく、将来受け取る年金額や障害・死亡時の保障にも関係します。

この記事では、厚生年金と国民年金の違いを、加入する人、保険料、負担方法、受給額、2階建ての仕組み、退職時の切り替えという実務上重要なポイントから整理します。

  • 厚生年金と国民年金の基本的な仕組みと対象者の違い
  • 保険料の決まり方と会社負担の有無
  • 将来の受給額や障害・遺族保障の違い
  • 就職・退職・扶養変更時に必要となる年金の手続き

厚生年金と国民年金の違いを6つのポイントで比較

厚生年金と国民年金の違いを比較

まず押さえておきたいのは、厚生年金と国民年金が完全に別々の制度として横に並んでいるわけではないという点です。

日本の公的年金は、国民年金を土台として、その上に厚生年金が重なる「2階建て」の仕組みになっています。

この構造を理解せずに保険料だけを比較すると、「会社員は国民年金に入っていない」「厚生年金と国民年金を二重に払っている」「国民年金か厚生年金のどちらか好きな方を選べる」といった誤解が生じやすくなります。

実務でも、この3つは非常によく出てくる疑問です。

最初に全体像を整理してしまえば、その後の保険料や受給額の違いも理解しやすくなります。

全体像を先に比較すると、次のようになります。

比較項目 国民年金 厚生年金
主な対象者 自営業者、フリーランス、学生、無職の方など 会社員、公務員など
保険料 第1号被保険者は原則として定額 給与・賞与を基にした報酬比例
保険料の負担 第1号被保険者は原則として本人が全額負担 事業主と本人が原則折半
老後の年金 老齢基礎年金 老齢基礎年金+老齢厚生年金
制度上の位置付け 公的年金の1階部分 公的年金の2階部分
退職した場合 第1号または第3号への変更を確認 再就職して加入要件を満たせば継続

会社員は「国民年金か厚生年金のどちらか一方」ではありません。

厚生年金に加入する会社員は、国民年金では第2号被保険者となり、1階部分と2階部分の両方に加入する仕組みです。

厚生年金とは何かをわかりやすく解説

厚生年金とは、主に会社員や公務員などが加入する公的年金制度です。

日本の公的年金を建物に例えると、国民年金が1階部分、厚生年金が2階部分にあたります。

厚生年金を理解するうえでは、この「上乗せ」という考え方が非常に重要です。

つまり、会社へ就職して厚生年金に加入したからといって、国民年金との関係がなくなるわけではありません。

厚生年金の被保険者は、国民年金では第2号被保険者となります。

国民年金の基礎年金部分の上に、厚生年金による報酬比例の年金が上乗せされる と考えると分かりやすいでしょう。

厚生年金は給与や賞与と連動する

厚生年金の大きな特徴は、保険料も将来の老齢厚生年金も、現役時代の給与や賞与と関係していることです。

毎月の給与をそのまま保険料計算に使用するのではなく、報酬月額を一定の幅に区分した「標準報酬月額」を使います。

賞与についても「標準賞与額」という仕組みがあり、これらを基礎に保険料が計算されます。

そのため、基本的には給与が高くなれば厚生年金保険料の本人負担も大きくなります。

一方で、将来の老齢厚生年金についても、加入期間だけではなく加入していた期間の報酬が反映されます。

国民年金の老齢基礎年金は、基本的には保険料を納めた月数などが年金額に影響します。

これに対し厚生年金は、 「どのくらいの期間加入していたか」と「その期間にどの程度の報酬を受けていたか」の両方が重要 という違いがあります。

会社も厚生年金保険料を負担する

もう一つ重要なのが、保険料の負担方法です。

厚生年金保険料は、原則として被保険者本人と事業主が半分ずつ負担します。

給与明細に表示される厚生年金保険料は基本的に本人負担分であり、それとは別に会社も事業主負担分を負担しています。

たとえば、給与明細を見て「厚生年金が毎月かなり引かれている」と感じることがありますが、制度全体で見ると本人が表示額のすべてを負担しているわけではありません。

同程度の額を事業主も負担している点は、国民年金第1号被保険者との大きな違いです。

実務では「給与明細に厚生年金しか書いていないので、国民年金には入っていないと思っていました」という質問を受けることがあります。

厚生年金加入者は国民年金の第2号被保険者でもあるため、給与明細に「国民年金」という控除項目がないことと、国民年金に加入していないことは同じではありません。

日本年金機構も、日本の公的年金について、20歳以上60歳未満の方が加入する国民年金と、会社員・公務員が加入する厚生年金保険による2階建ての構造として整理しています。

(出典:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」)

まずは「国民年金と厚生年金は競合する制度ではなく、国民年金を土台として厚生年金が上に乗る」という関係を理解しておくと、この後の保険料や受給額の違いも整理しやすくなります。

対象者と加入できる年齢の違い

対象者と加入できる年齢の違い

国民年金と厚生年金では、加入する人の範囲が異なります。

国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の方を基本として、全国民共通の基礎年金を支える制度です。

国民年金の中では、職業や扶養関係などによって第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者に分かれます。

自営業者、フリーランス、学生、無職の方などで、第2号被保険者や第3号被保険者に該当しない方は、原則として第1号被保険者です。

会社員や公務員など厚生年金に加入している方は、第2号被保険者となります。

その第2号被保険者に扶養される一定の配偶者が、第3号被保険者です。

国民年金の区分 主な対象者 保険料の基本的な扱い
第1号被保険者 自営業者、フリーランス、学生、無職の方など 原則として自分で納付
第2号被保険者 厚生年金に加入する会社員・公務員など 厚生年金保険料として給与等から負担
第3号被保険者 第2号被保険者に扶養される一定の配偶者 本人による国民年金保険料の個別負担なし

厚生年金は原則として70歳未満が対象

一方、厚生年金では、厚生年金保険の適用事業所に常時使用される 70歳未満の方 が原則として被保険者になります。

ここで重要なのは、20歳未満でも厚生年金に加入することがあるという点です。

たとえば、高校卒業後に18歳で会社へ就職し、厚生年金の加入要件を満たしていれば、20歳になる前でも厚生年金の被保険者になります。

逆に、国民年金第1号被保険者として強制加入するのは原則20歳から60歳未満です。

このため、「国民年金は20歳から、厚生年金も20歳から」と覚えてしまうと正確ではありません。

終わりの年齢も異なり、会社で加入要件を満たして働き続ける限り、厚生年金の保険料は原則70歳になるまで払うことになるため、60歳で定年を迎えても再雇用後の働き方によって加入が続きます。

パートでも厚生年金に加入する場合がある

さらに実務上よく迷うのが、パートやアルバイトです。

「正社員なら厚生年金、パートなら国民年金」と単純に分けることはできません。

正社員より労働時間が短い方であっても、一定の加入要件を満たせば健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。

2026年9月時点では、通常の労働者の所定労働時間・所定労働日数の4分の3以上で働く場合には、原則として企業規模にかかわらず社会保険の対象となります。

また、4分の3未満であっても、一定規模以上の企業等に勤務し、週の所定労働時間など短時間労働者の加入要件を満たす場合には対象となります。

社会保険の適用拡大は今後も段階的に進む予定です。

特にパートの方の場合、「昨年まで扶養だったから今年も大丈夫」と固定的に考えるのではなく、勤務時間、雇用期間、勤務先の適用状況などをその都度確認する必要があります。

厚生年金に入るか国民年金だけにするかを、本人が自由に選べるわけではありません。

勤務先や働き方が厚生年金の加入要件を満たせば、「私は国民年金のままでいたい」と希望しても、原則として厚生年金に加入することになります。

採用時や勤務時間を変更するときには、「本人が扶養の範囲を希望しているか」だけを見るのではなく、法令上の社会保険加入要件を満たしていないかを会社側でも確認する必要があります。

実際、中小企業では「扶養内で働くと聞いていたので社会保険に入れていなかった」というケースがあります。

しかし、本人の希望と社会保険の適用要件は別問題です。

雇用契約書だけではなく、実際の所定労働時間や雇用の見込みも含めて確認することが大切です。

国民年金と厚生年金の保険料の違い

国民年金と厚生年金では、保険料の決まり方に大きな違いがあります。

国民年金の第1号被保険者が納める保険料は、基本的には所得にかかわらず一律です。

令和8年度の国民年金保険料は 月額17,920円 となっています。

たとえば、自営業者で年間所得が大きい方であっても、所得が低い方であっても、通常の国民年金保険料そのものは同じ額です。

ここが、報酬に応じて保険料が変わる厚生年金との大きな違いです。

国民年金は定額だが免除制度などがある

国民年金は定額制ですが、収入が少ない場合や失業した場合などに、単純に「払えないから払わない」という扱いにする必要はありません。

一定の要件を満たせば、保険料の全額免除、一部免除、納付猶予、学生納付特例などを利用できる場合があります。

未納のままにしておくことと、正式に免除・猶予の承認を受けることは、年金制度上まったく同じではありません。

将来の老齢基礎年金だけでなく、障害基礎年金や遺族基礎年金の保険料納付要件にも関わることがあるため、納付が難しいときほど手続きを確認することが重要です。

退職直後は収入が大きく減ることもあります。

会社員時代には給与天引きだったため意識しにくかった国民年金保険料を、自分で納付することになると負担感が大きくなるケースも少なくありません。

厚生年金は標準報酬月額と標準賞与額で決まる

厚生年金の保険料は定額ではありません。

毎月の報酬を一定の等級に区分した標準報酬月額と、賞与について算定した標準賞与額に保険料率を掛けて計算します。

厚生年金保険料率は18.3% で、通常はこの保険料を事業主と被保険者が半分ずつ負担します。

通常の本人負担は9.15%相当、事業主も9.15%相当を負担するのが基本です。

たとえば、標準報酬月額が30万円であれば、単純計算では厚生年金保険料は月額54,900円となり、通常の本人負担は27,450円、事業主負担も27,450円です。

ここで注意したいのは、「月給30万円なら必ず30万円×9.15%が給与から引かれる」とは限らないことです。

社会保険では実際の給与額そのものではなく標準報酬月額を使います。

たとえば報酬月額が一定の範囲内で変動しても、標準報酬月額の等級が変わらなければ厚生年金保険料が変わらないことがあります。

標準報酬月額は、入社時の資格取得時決定、毎年の定時決定、固定的賃金が変動した場合の随時改定などによって決まります。

そのため給与明細を見て「給与に9.15%を掛けても厚生年金保険料が一致しない」と感じても、それだけで計算誤りとはいえません。

国民年金と厚生年金は単純な金額比較ができない

国民年金が月額17,920円で、厚生年金の本人負担がそれより高ければ、「国民年金の方が安い」と感じるでしょう。

しかし、厚生年金には会社負担があります。

また、将来は老齢厚生年金が上乗せされるほか、障害厚生年金や遺族厚生年金といった保障もあります。

つまり、毎月の本人負担額だけを横に並べると、制度の一部分しか比較していないことになります。

国民年金保険料、標準報酬月額の上限、各種制度の取扱いは年度や法改正によって変わることがあります。

記事内の数値は2026年度時点の一般的な内容として捉え、 正確な情報は公式サイトをご確認ください 。

厚生年金と国民年金は両方払うのか

会社員の方から特によく聞かれるのが、「厚生年金と国民年金は両方払っているのですか」という質問です。

結論からいうと、厚生年金に加入している会社員が、給与から厚生年金保険料を控除されたうえで、さらに国民年金第1号被保険者と同じ月額17,920円を別に納めるわけではありません。

会社員は国民年金の第2号被保険者として国民年金にも加入していますが、第1号被保険者のように国民年金保険料を個別に納付する必要はありません。

ここは、「加入している制度」と「保険料をどのような方法で負担しているか」を分けて考える必要があります。

両方に加入していても二重払いではない

会社員は、制度上は国民年金と厚生年金の両方に加入しています。

一方で、保険料については給与や賞与から厚生年金保険料の本人負担分が控除されます。

さらに自宅へ国民年金の納付書が届き、同じ月について第1号被保険者として国民年金保険料まで納付する、という仕組みではありません。

したがって、 「両方に加入している」と「二つの保険料を別々に二重払いしている」は別の話 です。

この違いが分かると、給与明細に国民年金という項目がない理由も理解しやすくなります。

立場 年金上の区分 加入する制度 保険料の払い方
自営業者・フリーランスなど 第1号被保険者 国民年金 国民年金保険料を自分で納付
厚生年金に加入する会社員 第2号被保険者 国民年金+厚生年金 厚生年金保険料を給与等から負担
一定の扶養配偶者 第3号被保険者 国民年金 本人による国民年金保険料の個別負担なし

就職した後も国民年金の納付書が来た場合

実務上は、「会社へ就職して厚生年金に入ったのに国民年金の納付書が届いた」ということもあります。

この場合、納付書が届いたという事実だけで、厚生年金と国民年金の両方を払わなければならないと判断しない方がよいでしょう。

厚生年金の資格取得届が処理されるタイミングと、国民年金側の情報反映のタイミングに差が生じる場合もあります。

また、納付書がどの月分を対象としているのかも確認する必要があります。

たとえば4月1日付で厚生年金に加入した方に、3月分までの国民年金保険料の納付案内が届いているのであれば、内容として矛盾していない可能性があります。

国民年金の納付書が届いた場合は、まず「何月分の保険料か」と「厚生年金の資格取得日はいつか」を確認してください。

加入記録に疑問がある場合は、自己判断で二重に納付する前に年金事務所などへ確認することをおすすめします。

会社員は厚生年金に加入すると同時に国民年金の第2号被保険者にもなるため、会社員も国民年金に加入している仕組みを知っておくと、給与明細に国民年金の項目がない理由が分かります。

厚生年金と国民年金の受給額の差

厚生年金と国民年金の受給額の差

厚生年金と国民年金の違いを考えるうえで、最も気になるのが老後の受給額ではないでしょうか。

結論を先にいうと、厚生年金に加入した期間がある方は、受給要件を満たせば老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされるため、国民年金だけに加入してきた方とは年金額の構造が異なります。

国民年金は老齢基礎年金が基本

国民年金から支給される老齢基礎年金は、保険料納付済期間や免除期間などを基に計算されます。

20歳から60歳までの40年間、480月について必要な保険料を納付した場合には、老齢基礎年金の満額を受給できるのが基本です。

令和8年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれの方の場合、 月額70,608円 です。

昭和31年4月1日以前生まれの方については額が異なります。

ただし、これはあくまで満額です。

保険料の未納期間がある場合や、免除・納付猶予・学生納付特例を利用した期間を追納していない場合などには、実際の老齢基礎年金額が異なることがあります。

厚生年金は老齢厚生年金が上乗せされる

厚生年金へ加入していた方は、老齢基礎年金だけでなく、加入期間や報酬に応じて計算された老齢厚生年金を受給できる場合があります。

国民年金だけの場合は主に老齢基礎年金、厚生年金に加入していた場合は老齢基礎年金に老齢厚生年金が加わる というのが、受給額の差を理解する基本です。

このため、同じ40年間働いたとしても、ずっと国民年金第1号被保険者だった方と、長期間厚生年金に加入していた方とでは、老後の年金額が同じになるとは限りません。

厚生年金については、加入期間が長いほど、また報酬が高いほど、一般的には報酬比例部分の年金額も大きくなる方向に働きます。

たとえば「厚生年金に10年間だけ加入したら、その10年間は無駄になるのか」という質問がありますが、一定の受給要件を満たせば、その10年間の厚生年金加入記録も老齢厚生年金の計算に反映されます。

標準的な年金額は個人の受給額ではない

令和8年度について、日本年金機構が示している標準的な年金額は、夫婦2人分の老齢基礎年金を含めて 月額237,279円 です。

ただし、この金額を「会社員なら誰でも毎月237,279円受け取れる」と考えてはいけません。

これは、平均的な収入で40年間就業した場合など、一定のモデルを前提にした夫婦2人分の例です。

単身者1人分の厚生年金額でもなければ、すべての会社員の平均受給額でもありません。

実際の年金額は、厚生年金の加入期間、給与・賞与の水準、国民年金保険料の納付状況、生年月日などによって一人ひとり異なります。

(出典:日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」)

平均額より自分の年金記録を見る

厚生年金保険の老齢年金については、基礎年金を含めた平均月額が約15万円という統計もありますが、平均額だけで自分の老後を判断することはおすすめしません。

厚生年金の加入期間が短い方もいれば、40年以上加入している方もいます。

現役時代の報酬も大きく異なるためです。

私は相談を受ける際にも、「平均はいくらですか」という質問に対しては、平均額を参考程度に見つつ、最終的には本人の年金記録を確認するようお伝えしています。

自分自身の将来額を確認するなら、ねんきん定期便やねんきんネットを利用する方がはるかに具体的です。

厚生年金の受給額早見表を使うと、年収や加入期間ごとのおおまかな受給額のイメージをつかめます。

年金額は毎年度改定される可能性があります。

また、実際の受給額は個人の加入記録によって異なります。

記事中の金額は一般的な目安としてご覧ください。

障害年金と遺族年金の保障の違い

厚生年金と国民年金を比較するとき、多くの方が老後にもらえる年金額に注目します。

もちろん老齢年金は重要ですが、公的年金にはそれ以外にも大きな役割があります。

病気やけがによって一定の障害状態となった場合の障害年金、加入者が亡くなった場合に遺族へ支給される遺族年金です。

この保障内容にも、国民年金と厚生年金では違いがあります。

障害基礎年金と障害厚生年金の違い

国民年金には障害基礎年金があります。

初診日や保険料納付要件などの要件を満たし、一定の障害状態に該当する場合には、障害基礎年金の1級または2級が支給される可能性があります。

一方、厚生年金加入中に初診日がある場合には、一定の要件を満たすことで障害厚生年金の対象となる可能性があります。

障害厚生年金には1級・2級だけでなく 3級 があります。

また、障害厚生年金の3級より軽い一定の障害状態であっても、要件を満たす場合には障害手当金という一時金が支給されることがあります。

この違いは非常に重要です。

「厚生年金は老後の受給額が増える制度」とだけ理解していると、現役中の保障という大きな部分を見落としてしまいます。

年金という名称から老後資金だけを想像しやすいのですが、実務では 障害や死亡という現役世代のリスクにも備える社会保険 という側面が非常に重要です。

遺族基礎年金と遺族厚生年金にも違いがある

遺族年金についても、国民年金と厚生年金で制度が異なります。

遺族基礎年金は、一定の要件を満たす「子のある配偶者」または「子」が主な対象です。

そのため、夫婦だけで生活していて子がいない場合などには、遺族基礎年金の支給対象にならないことがあります。

一方、厚生年金には遺族厚生年金があります。

亡くなった方の厚生年金加入状況や保険料納付要件、遺族との関係など一定の条件を満たせば、遺族厚生年金が支給される可能性があります。

つまり、厚生年金に加入することによる保障は、本人が65歳以降に受け取る老齢厚生年金だけではありません。

保障 国民年金 厚生年金加入者
老齢 老齢基礎年金 老齢基礎年金+老齢厚生年金
障害 障害基礎年金1級・2級 障害基礎年金に加え、要件により障害厚生年金1~3級等
死亡 要件により遺族基礎年金 要件により遺族基礎年金・遺族厚生年金等

したがって、「国民年金は17,920円、厚生年金は給与からもっと引かれるから、国民年金の方が得だ」と保険料だけで判断するのは適切ではありません。

老齢給付、障害給付、遺族給付という社会保険全体の保障を見て比較する必要があります。

障害年金や遺族年金は、初診日、障害状態、保険料納付状況、死亡時の加入状況、遺族の年齢や続柄などによって結論が変わります。

個別のケースでは一般論だけで判断せず、一つずつ要件を確認する必要があります。

厚生年金と国民年金の違いと切り替え

ここからは、就職、退職、独立、扶養への加入などによって年金の加入区分が変わる場面を整理します。

年金制度は「国民年金と厚生年金のどちらが得かを比較して、自分で好きな方を選ぶ」という商品選びではありません。

現在の働き方、勤務先、労働時間、扶養関係などによって、第1号、第2号、第3号のどこに該当するのかが決まります。

特に注意したいのが、退職、再就職、独立、配偶者の扶養に入る・外れるといった生活上の変化です。

会社員の間は会社が厚生年金の届出を行ってくれますが、退職後に第1号被保険者になると本人が手続きを行う場面があります。

加入区分が変わったにもかかわらず手続きをしないままにすると、後から国民年金保険料の納付が必要になったり、年金記録の確認が必要になったりすることがあります。

会社員は国民年金にも加入している

厚生年金に加入している会社員は、国民年金の第2号被保険者でもあります。

この点は、厚生年金と国民年金の関係で最も重要なところです。

日本の公的年金を2階建てで考えると、会社員は1階の国民年金に加入し、その上で2階部分の厚生年金にも加入している状態です。

したがって、「会社員になったら国民年金をやめて厚生年金へ乗り換える」と表現すると、感覚としては分かりやすいものの、制度の説明としては少し正確さを欠きます。

第1号から第2号へ種別が変わる

たとえば大学生の間に20歳となり、国民年金第1号被保険者になっていた方が、卒業後に会社へ就職して厚生年金へ加入したとします。

この場合、国民年金そのものから脱退するのではなく、国民年金上の立場が第1号被保険者から第2号被保険者へ変わります。

第1号被保険者だったときには、自分で国民年金保険料を納付する必要があります。

第2号被保険者になると、第1号として国民年金保険料を個別に納める必要はなく、勤務先を通じて厚生年金保険料を負担する形に変わります。

実際、会社員の方から「20歳から国民年金を払っていましたが、就職したら国民年金の請求がなくなりました。国民年金を払っていない期間になるのでしょうか」と聞かれることがあります。

この場合、厚生年金に適正に加入していれば、第2号被保険者として国民年金にも加入しているため、「国民年金が未加入になった」という話ではありません。

会社員=厚生年金だけ ではなく、 会社員=国民年金の第2号+厚生年金 と理解すると、制度全体がかなり分かりやすくなります。

老後は基礎年金と厚生年金の両方を受け取る

この2階建て構造は、将来受け取る年金にもつながっています。

一定の受給要件を満たせば、厚生年金に加入していた方は老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることになります。

国民年金と厚生年金の両方から年金を受け取ることができる わけです。

ただし、「二つの保険料を別々に二重払いしたから、二つの年金をもらえる」という理解ではありません。

もともと公的年金制度が、全国民共通の基礎年金と、会社員などに上乗せされる厚生年金を組み合わせた構造になっているためです。

扶養配偶者は第3号被保険者になる

扶養配偶者は第3号被保険者になる

厚生年金に加入する第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者で、一定の要件を満たす方は、国民年金の第3号被保険者となります。

第3号被保険者の特徴は、本人が第1号被保険者のように国民年金保険料を個別に納付しなくても、国民年金の加入期間として取り扱われることです。

ここも非常に誤解が多いところです。

「保険料を自分で払っていないから年金に加入していない」ということではありません。

第3号被保険者として正式に国民年金へ加入しています。

第3号被保険者になれるのは配偶者

第3号被保険者は、厚生年金に加入している方の扶養家族なら誰でも該当するわけではありません。

対象となるのは一定の要件を満たす 配偶者 です。

たとえば会社員が親を健康保険の扶養に入れている場合でも、その親が国民年金第3号被保険者になるわけではありません。

健康保険の被扶養者と国民年金第3号被保険者は関連する制度ではありますが、対象範囲がまったく同一ではない点に注意が必要です。

130万円だけで判断しない

第3号被保険者については「年収130万円未満」という数字がよく知られています。

確かに収入要件は重要ですが、「年間収入が130万円未満であれば必ず第3号になれる」と単純に判断するのは危険です。

一般的には今後の年間収入見込みや、配偶者の収入との関係なども確認されます。

また、本人が勤務先で厚生年金の加入要件を満たした場合には、扶養を希望していても自分自身が第2号被保険者になります。

この部分は、パート勤務の方から特によく相談を受けます。

「130万円を超えなければ社会保険には入らなくていいですよね」と考えていたところ、勤務先の規模や週の所定労働時間などから厚生年金の加入対象になっていた、というケースです。

パート勤務では、扶養内を希望していても、勤務条件によって社会保険への加入が必要になることがあります。

税金上の扶養と社会保険上の扶養は別の制度 です。

同じ「扶養」という言葉だけで判断しないことが重要です。

扶養から外れるタイミングにも注意

勤務時間を増やす、時給が上がる、転職する、配偶者が退職するなど、生活状況が変われば第3号被保険者の資格にも影響する可能性があります。

たとえば、第3号被保険者本人の収入は変わっていなくても、扶養している配偶者が会社を退職して第2号被保険者でなくなれば、第3号の前提自体がなくなります。

この場合、第3号から第1号へ切り替えるなどの手続きが必要になることがあります。

中小企業の実務では、従業員本人の入退社だけではなく、配偶者の扶養追加・削除も頻繁に発生します。

本人側は「健康保険の扶養の手続きだけ」と考えがちですが、20歳以上60歳未満の配偶者であれば国民年金第3号の手続きも関係してくるため、セットで確認するのが実務上のポイントです。

退職後は国民年金へ切り替える

会社を退職して厚生年金の資格を喪失し、すぐに別の会社で厚生年金へ加入しない場合は、国民年金の加入区分を確認する必要があります。

20歳以上60歳未満の方が退職後に自営業者、フリーランス、無職などになり、配偶者の第3号被保険者にもならない場合には、原則として国民年金の第1号被保険者になります。

会社員時代は勤務先が厚生年金の資格取得・喪失手続きを行いますが、第1号被保険者になる場面では本人側の手続きが必要になります。

原則として 退職日の翌日から14日以内 に住所地の市区町村で国民年金の加入手続きを行います。

退職日の翌日に厚生年金の資格を喪失する

年金の切り替えを考える際には、「退職日」と「資格喪失日」を区別すると分かりやすくなります。

通常、会社を9月30日付で退職した場合、厚生年金の資格喪失日は10月1日です。

10月1日以降に新しい会社の厚生年金へ加入せず、第3号被保険者にもならないのであれば、国民年金第1号被保険者への変更が必要になるのが基本です。

一方、退職後に厚生年金へ加入している配偶者の扶養に入り、第3号被保険者の要件を満たす場合は、第1号ではなく第3号になる可能性があります。

この場合は、原則として配偶者の勤務先を通じて手続きを進めます。

すぐ転職する場合は扱いが異なる

退職日の翌日から新しい会社で厚生年金に加入する場合など、厚生年金の加入が途切れないケースでは、通常は本人が市区町村で第1号への切り替えをする必要はありません。

たとえば9月30日にA社を退職し、10月1日にB社へ入社して同日から厚生年金に加入する場合です。

A社での厚生年金資格を9月30日まで持ち、10月1日からB社の厚生年金資格を取得するのであれば、第1号被保険者になる空白期間はありません。

一方、A社を9月30日に退職し、B社への入社が10月15日である場合には、10月1日から10月14日まで厚生年金の被保険者ではありません。

このように、次の勤務先が決まっているかどうかではなく、 実際に厚生年金の資格が途切れている期間があるか を確認する必要があります。

「次の会社が決まっているから何もしなくてよい」とは限りません。

退職日と次の会社の資格取得日を確認し、厚生年金に加入していない期間がある場合は国民年金の手続きを確認してください。

退職すると保険料の払い方も変わる

第1号被保険者になると、会社員時代のような給与天引きではなく、自分で国民年金保険料を納めることになります。

会社員時代には、厚生年金保険料が給与から自動的に控除されていたため、年金保険料を「自分で支払う」という感覚が薄い方も多いでしょう。

退職後は納付書、口座振替など所定の方法で納めることになるため、手続きだけでなく納付方法も確認しておく必要があります。

また、退職によって収入が大きく減少し、国民年金保険料の納付が難しくなる場合には、免除や納付猶予を利用できる可能性があります。

未納のまま放置するのではなく、利用できる制度がないかを確認することが重要です。

会社員から自営業や無職になるときは、厚生年金から国民年金へ切り替えるときのデメリットとして、保険料が全額自己負担になることや、将来の年金額と障害・遺族の保障が小さくなることを事前に把握しておくことが大切です。

国民年金と厚生年金はどっちが得か

国民年金と厚生年金はどっちが得か

国民年金と厚生年金を比較すると、「結局、どちらが得なのですか」という疑問が出てきます。

これは非常によくある質問ですが、最初に押さえておきたいのは、国民年金と厚生年金は投資商品や保険商品のように自由に選択する制度ではないということです。

厚生年金の加入要件を満たして働く場合には、原則として厚生年金へ加入します。

「厚生年金の保険料が高いから国民年金にしたい」と本人が希望しても、加入要件を満たしている以上、自由に国民年金第1号被保険者を選択できるわけではありません。

保険料だけを見ると判断を誤りやすい

国民年金第1号被保険者の保険料は定額です。

一方、厚生年金は報酬に応じて保険料が決まるため、給与が高い方ほど本人負担も大きくなる傾向があります。

そのため給与明細を見て、「厚生年金は毎月3万円も引かれている。国民年金なら約1万8千円なのだから、国民年金の方が得ではないか」と考える方もいます。

しかし、この比較には会社負担が入っていません。

厚生年金では、通常は本人が負担する額と同程度を会社も負担しています。

国民年金第1号被保険者は基本的に定額保険料を自分で負担しますので、本人の給与明細に表示される金額だけを比較するのは適切ではありません。

給付まで含めて考える必要がある

厚生年金には、保険料の会社負担だけでなく、給付面でも国民年金とは異なる特徴があります。

  • 保険料を事業主と本人が原則として折半する
  • 老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされる
  • 障害厚生年金では3級など国民年金にはない保障がある
  • 一定の要件を満たす遺族には遺族厚生年金がある

このように考えると、「今月いくら払うか」だけで比較するのではなく、「どのような給付を受けられる制度なのか」まで見なければ、本当の違いは分かりません。

国民年金と厚生年金は「どちらを選ぶか」ではなく、「現在の働き方ではどの制度に加入するのか」を確認するものです。

働き方を比較するなら年金以外も見る

たとえば、会社員を辞めてフリーランスになるかどうかを検討している場合には、年金保険料だけを比べても十分ではありません。

会社員であれば、厚生年金だけでなく健康保険や雇用保険にも加入します。

会社によっては退職金、企業年金、各種手当、福利厚生などもあります。

一方、独立すれば事業所得を伸ばせる可能性や、働き方の自由度が高まる可能性があります。

したがって、会社員とフリーランスのどちらが得かという問題を、厚生年金保険料と国民年金保険料だけで結論づけることはできません。

給与、事業収入、健康保険、雇用保険、税金、経費、退職金、働き方、将来の年金などを含めた全体で考える必要があります。

扶養内勤務も目先の手取りだけで考えない

パート勤務では、「社会保険に加入すると手取りが減るから、加入しない範囲まで勤務時間を減らした方が得ですか」という相談もあります。

確かに社会保険へ加入すれば、健康保険料や厚生年金保険料の本人負担が発生し、加入直後の手取り額が減少することがあります。

一方で、厚生年金の加入期間が増えれば将来の老齢厚生年金にも反映されます。

また、傷病手当金など健康保険側の給付や、障害厚生年金などの保障が関係する場合もあります。

そのため、短期的な手取りだけを見れば「加入しない方が多く残る」という場面があったとしても、それだけで長期的な損得まで決まるわけではありません。

私が実務で説明するときも、「今の手取り」と「社会保険に加入することで得られる保障」は分けて考えてもらうようにしています。

社会保険は、支払った保険料に対して必ず何円戻ってくるかを競う金融商品ではありません。

老齢、障害、死亡、医療などの生活上のリスクを社会全体で支える保険制度という視点も必要です。

厚生年金と国民年金の違いを整理

最後に、厚生年金と国民年金の違いを整理します。

最も重要なのは、国民年金と厚生年金を「どちらか一つを選択する制度」と考えないことです。

国民年金は日本の公的年金の1階部分となる基礎的な制度で、厚生年金は会社員や公務員などに上乗せされる2階部分です。

厚生年金に加入する会社員は、国民年金に加入していないわけではありません。

国民年金では第2号被保険者となっており、 国民年金と厚生年金の両方に加入している と考えます。

6つの違いをもう一度確認

比較ポイント 国民年金 厚生年金
対象者 20歳以上60歳未満の方を基本とする基礎年金 適用事業所で働く70歳未満の方など
保険料 第1号は原則定額 標準報酬月額・標準賞与額に応じる
負担者 第1号は本人が原則全額負担 本人と事業主が原則折半
老後の給付 老齢基礎年金 老齢基礎年金+老齢厚生年金
障害・遺族保障 障害基礎年金・遺族基礎年金など 障害厚生年金・遺族厚生年金などが加わる場合がある
切り替え 退職・独立等で第1号になる場合がある 就職等で加入要件を満たせば第2号になる

また、会社員が国民年金保険料と厚生年金保険料を別々に二重払いするわけではありません。

会社員は給与や賞与を基に計算された厚生年金保険料の本人負担分を負担し、会社も原則として同額を負担します。

  • 国民年金 は公的年金の1階部分
  • 厚生年金 は会社員などに上乗せされる2階部分
  • 会社員は国民年金の第2号被保険者でもある
  • 厚生年金の保険料は会社と本人が原則折半する
  • 老後は老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされる
  • 障害・死亡時にも厚生年金独自の保障がある

就職・退職・扶養変更時は加入区分を確認する

年金制度で実務上特に気をつけたいのは、働き方が変わるタイミングです。

就職すれば、第1号から第2号へ変わることがあります。

退職・独立すれば、第2号から第1号へ変わることがあります。

配偶者の扶養に入れば第3号になる場合があり、反対に扶養から外れれば第1号や第2号へ変わる可能性があります。

こうした変更時には、「前と同じ扱いだろう」と考えず、自分が現在どの被保険者区分に該当しているのかを確認することが重要です。

特に退職時は、健康保険の任意継続や国民健康保険の手続きに目が向きやすく、国民年金の手続きを忘れることがあります。

国民健康保険と国民年金の違いは、医療保険と年金という目的だけでなく、保険料を世帯で計算するか一人ひとりに定額でかかるかにもあります。

健康保険と年金は別々に確認する癖をつけておくと安心です。

年金は老後だけの制度ではない

そして、厚生年金と国民年金を比較するときには、毎月の保険料と老後の年金額だけで判断しないことも重要です。

公的年金には、病気やけがで一定の障害状態になった場合の障害年金や、加入者が亡くなった場合の遺族年金があります。

厚生年金には国民年金にはない給付や対象範囲があり、保障の内容にも違いがあります。

そのため、 「国民年金はいくら、厚生年金はいくら」という保険料だけの比較では、厚生年金と国民年金の違いの一部分しか見えていません。

加入対象者、保険料、会社負担、将来の老齢年金、障害・遺族保障、退職時の手続きまでセットで理解することが大切です。

年金額、保険料、社会保険の適用要件などは、年度や制度改正によって変わることがあります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください 。

また、退職、独立、扶養変更、社会保険の加入判定などは個別の事情によって必要な手続きや結論が異なる場合があります。

最終的な判断は専門家にご相談ください 。

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