こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
介護のハラスメント義務化はいつからなのかという疑問は、2021年から始まった職場内ハラスメント対策と、2026年10月1日から予定されているカスタマーハラスメント対策を分けて整理すると理解しやすくなります。
介護事業所では、すでにパワハラやセクハラへの方針明確化、相談窓口の整備などが求められています。
そのうえで、利用者や家族からのカスハラについても、今後はより明確に対応体制を整える必要があります。
なお、ハラスメント対策の基本的な枠組みは、介護に限らず他の業種と共通しています。方針の明確化、相談窓口の設置、研修の実施、事後対応という流れは同じです。
ただし介護現場には、認知症による言動とハラスメントの区別、正当な理由なくサービスを拒否できないという制約、訪問時の密室性、運営規程・重要事項説明書への反映義務など、他業種にはない特有の事情があります。
この記事では、共通の枠組みを確認しつつ、介護ならではの対応ポイントを整理します。
実務では、いつから何が義務なのかをあいまいにしたまま、就業規則、運営規程、重要事項説明書、研修、相談対応がバラバラになっているケースがあります。
この記事では、介護事業所の管理者や担当者が、今すぐ確認すべきポイントを時系列で整理します。
- 介護ハラスメント対策が義務化された時期
- 2021年から必要なパワハラ・セクハラ対策
- 2026年から重要になるカスハラ対策
- 運営規程や重要事項説明書の見直しポイント

介護ハラスメント義務化はいつから

まず押さえておきたいのは、介護現場のハラスメント対策は一度にすべて義務化されたわけではないという点です。
大きく分けると、2021年の介護報酬改定による職場内ハラスメント対策、2026年10月1日からのカスタマーハラスメント対策、そして介護報酬上の運営規程や重要事項説明書への反映という流れで整理できます。
特に介護事業所では、一般企業の労務管理だけでなく、介護保険サービスとしての運営基準、利用者・家族との契約関係、サービス提供拒否の制限、認知症による行動との区別などが重なります。
そのため、単に法律上の義務化時期だけを確認するのではなく、現場でどの書類を直し、誰に周知し、相談が来たときに誰が判断するのかまで決めておくことが大切です。
実務上のポイント
介護事業所では、まず2021年から求められているパワハラ・セクハラ対策が整っているかを確認し、そのうえで2026年以降のカスハラ対策に備える順番が現実的です。
すでに職場内ハラスメント対策が未整備であれば、カスハラ対応だけを先に作っても全体の体制としては弱くなります。
| 時期 | 主な内容 | 確認すべき事項 | 実務で見直す書類 |
|---|---|---|---|
| 2021年4月 | 職場内ハラスメント対策の義務化 | 方針明確化、相談窓口、周知啓発 | 就業規則、ハラスメント防止規程、研修資料 |
| 2026年10月1日 | カスハラ対策の義務化 | 対応方針、相談体制、研修、事後対応 | カスハラ対応方針、相談記録様式、職員マニュアル |
| 2026年度以降 | 介護報酬上の対応強化 | 運営規程、重要事項説明書の見直し | 運営規程、重要事項説明書、契約時説明資料 |
2021年から職場内対策が義務化

介護事業所におけるハラスメント対策は、令和3年度介護報酬改定をきっかけに、2021年4月から大きく整理されました。
ここで中心になったのは、職場内のパワーハラスメントやセクシャルハラスメントへの対策です。
介護のハラスメント義務化という言葉だけを見ると、利用者や家族からのカスハラを思い浮かべる方も多いのですが、まず先に確認すべきなのは、事業所内部の職場環境に関するハラスメント対策です。
介護現場では、職員同士、上司と部下、管理者と現場職員の関係が密接になりやすく、少人数の事業所では人間関係の問題が表面化しにくいことがあります。
訪問介護であればサービス提供責任者と登録ヘルパー、施設系であればユニットリーダーと介護職員、通所系であれば生活相談員や看護職との連携など、役割の違いがそのまま人間関係の力関係になってしまうこともあります。
そのため、単に問題が起きたら対応するという考え方ではなく、 事業所としてハラスメントを防止するための体制をあらかじめ整えること が重要になります。
2021年から求められている対策は、抽象的な努力目標ではありません。
ハラスメントに関する方針を明確にし、職員へ周知し、相談窓口を整備することが実務上の基本になります。
中小規模の介護事業所では、就業規則や職務規程には記載があるものの、職員に十分伝わっていないというケースもあります。
特に、入職時に一度だけ説明して終わり、研修記録が残っていない、相談窓口の担当者が古いままになっている、という状態はよく見かけます。
ここで大切なのは、書類を作成すること自体が目的ではないという点です。
職員が困ったときに誰へ相談すればよいのか、相談したことで不利益な扱いを受けないのか、管理者がどのように対応するのかまで、現場で使える形にしておく必要があります。
たとえば、相談窓口を掲示していても、夜勤専従者や登録ヘルパーがその掲示を見る機会が少なければ、実際には機能しません。
介護職員から見ると、事業所にはハラスメント対策を整える責任があります。
一方で、事業所側から見ると、相談を受けた後の事実確認、関係者への配慮、再発防止まで含めた運用が必要です。
実際によくある相談ですが、制度だけ整えても、現場の管理者が対応方法を知らなければ、かえって問題が大きくなることがあります。
相談を受けた管理者が、本人の了解なく相手方へすぐ伝えてしまったり、職場内で噂のように広がってしまったりすると、二次被害につながります。
厚生労働省も介護現場におけるハラスメント対策に関する資料を公表しており、令和3年度介護報酬改定において、介護サービス事業者に適切なハラスメント対策を求める流れが示されています。
制度の全体像を確認する場合は、一次情報として 厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策」 を確認しておくとよいです。
2021年対応の確認ポイント
- ハラスメント防止方針が文書化されているか
- 職員へ周知した記録が残っているか
- 相談窓口の担当者が現状に合っているか
- 相談後の事実確認手順が決まっているか
- 管理者やリーダー層が対応方法を理解しているか
介護パワハラ義務化の内容
介護事業所におけるパワハラ対策では、上司や先輩職員など、優越的な関係を背景にした言動が問題になります。
たとえば、人格を否定する発言、必要以上に強い叱責、無視、過大な業務の押し付け、逆に仕事を与えない扱いなどが考えられます。
介護パワハラ義務化の内容を考えるときは、単に暴言を禁止するだけでなく、日常的な指導、申し送り、シフト調整、業務分担の中に問題が潜んでいないかを見る必要があります。
介護現場では、緊急対応や人手不足の影響で、指示の言い方が強くなったり、経験の浅い職員に厳しい言葉が向けられたりする場面があります。
もちろん、利用者の安全を守るために必要な指導まで禁止されるわけではありません。
転倒リスク、誤薬、感染対策、身体拘束、虐待防止など、介護現場には厳しく確認しなければならない場面があります。
しかし、業務上必要な指導と、人格を傷つける言動は分けて考える必要があります。
介護パワハラ義務化で重要なのは、管理者が指導とハラスメントの違いを説明できる状態にしておくことです。
単に怒鳴らないという話ではなく、指導の目的、内容、回数、場所、相手への影響を含めて判断されます。
たとえば、ミスの再発防止のために事実を確認し、改善策を一緒に考える指導は必要です。
一方で、他の職員の前で人格を否定する、過去の失敗を何度も持ち出す、勤務のたびに威圧的な態度を取るような対応は、業務指導の範囲を超える可能性があります。
事業所としては、就業規則やハラスメント防止規程にパワハラを許さない方針を明記し、管理者向けの研修を行うことが実務上有効です。
特に介護事業所では、現場リーダーやサービス提供責任者が事実上の指導役になることも多いため、管理職だけでなくリーダー層への周知も欠かせません。
役職名が管理職ではなくても、シフトを決める、業務を割り振る、新人を指導する立場であれば、職員に与える影響は大きくなります。
また、職員側から相談があった場合には、すぐに一方の言い分だけで判断するのではなく、記録、シフト、周囲の聞き取り、過去の指導状況などを確認することが大切です。
感情的に処分を急ぐと、別の労務トラブルにつながることもあります。
逆に、相談を受けても何もせず放置すれば、安全配慮義務や職場環境配慮の観点から問題になります。
社労士の実務でも、最初の相談対応を誤ったことで、退職、メンタル不調、労基署相談、損害賠償請求の話に進んでしまうケースがあります。
介護パワハラ対策では、管理者が職員に対して何をしてはいけないかだけでなく、どのように指導すればよいのかを示すことも大切です。
注意するときは事実を中心にする、改善してほしい行動を具体的に伝える、人前で必要以上に叱責しない、感情的な言葉を避ける、記録を残す。
こうした基本をリーダー層が共有しているだけでも、職場の空気はかなり変わります。
ハラスメントの種類を整理したい場合は、職場で問題になりやすいハラスメントの全体像を解説した ハラスメントの種類と実務上の優先順位 も参考になります。
| 場面 | 必要な指導になりやすい例 | パワハラ問題になりやすい例 |
|---|---|---|
| 介助ミス | 事実を確認し再発防止策を話し合う | 人格否定や長時間の叱責をする |
| 遅刻・欠勤 | 勤務ルールと改善方法を説明する | 皆の前で見せしめのように責める |
| 新人指導 | 手順を具体的に教え、記録を確認する | 仕事を教えずに放置する |
| 業務分担 | 経験や能力に応じて段階的に任せる | 特定職員だけに過大な業務を集中させる |
介護セクハラ義務化の内容
介護セクハラ義務化の内容としては、性的な言動によって職員の働く環境が害されることを防ぐための体制整備が中心になります。
職員同士の性的な冗談、容姿への発言、不必要な身体接触、交際の強要、性的な噂を流す行為などは、介護現場でも問題になります。
セクハラは、明確な身体接触がある場合だけでなく、言葉や視線、メッセージ、職場内の雰囲気によっても成立し得るため、軽く扱わないことが大切です。
介護の仕事は、身体介助や生活支援など、利用者の身体や私生活に近い場面で業務を行う特徴があります。
そのため、職員同士の会話でも、境界線があいまいになりやすい場面があります。
たとえば、利用者対応の延長で身体に関する話題が多くなり、それが職員個人の容姿や私生活への発言にまで広がってしまうことがあります。
だからこそ、事業所としては、何が不適切な言動にあたるのかを具体的に示す必要があります。
セクハラ対策では、被害を受けた職員が相談しやすい環境づくりが非常に重要です。
小規模事業所では、相談窓口の担当者が加害者に近い立場であったり、相談内容がすぐに職場内に広まる不安があったりします。
このような場合、外部相談窓口や法人本部の担当者を併用することも検討すべきです。
特に、同性の担当者に相談したい、直属の上司には相談しにくい、勤務先の管理者そのものが関係しているといったケースを想定しておく必要があります。
また、セクハラの相談は、被害者がすぐに明確な証拠を示せないこともあります。
事業所としては、相談の初期段階で否定したり、冗談だったのではないかと軽く扱ったりしないことが大切です。
実務では、最初の対応のまずさが、二次被害や離職につながることがあります。
たとえば、相談者に対して「気にしすぎではないか」「相手に悪気はないと思う」と言ってしまうと、相談者は職場に守ってもらえないと感じます。
介護セクハラ対策では、利用者や家族からの性的言動もあわせて整理しておくと実務に合います。
2021年時点の義務化の中心は職場内ハラスメントですが、介護現場では利用者からの身体接触、性的発言、訪問時の不適切な服装や行動なども実際に問題になります。
カスハラ対策が本格化する2026年以降を見据えると、職員同士のセクハラと利用者等からのセクハラを別項目としてマニュアルに入れておくと、現場職員が相談しやすくなります。
実務上は、相談を受けたら、相談者の安全確保、勤務調整、担当変更、複数名対応、記録の保存、関係者への聞き取りを段階的に進めます。
特に訪問介護では、一人で利用者宅に入るため、性的な発言や接触が続く場合には、担当者を一人で行かせ続けること自体がリスクになります。
事業所としては、職員個人の我慢に頼らず、組織として対応する姿勢を明確にする必要があります。
注意点
セクハラの相談を受けたときは、事実確認と相談者保護を並行して行う必要があります。
相談したことを理由にシフトを不利にする、周囲に不用意に話す、本人の了解なく加害者へ直接伝えるといった対応は避けるべきです。
小規模事業所ほど情報が広まりやすいため、誰がどこまで情報を共有するのかを最初に決めることが重要です。
方針明確化と周知の義務

介護事業所のハラスメント対策で最初に整えるべきものが、方針の明確化です。
これは、事業所としてハラスメントを許さないこと、ハラスメントが確認された場合には厳正に対応すること、相談者に不利益な取り扱いをしないことを明らかにする取り組みです。
方針があいまいなままだと、現場職員は「これは相談してよい問題なのか」「管理者は対応してくれるのか」と迷ってしまいます。
方針明確化は、就業規則、服務規律、ハラスメント防止規程、職員向けマニュアルなどに記載する形が一般的です。
ただし、規程に書いてあるだけでは十分とはいえません。
職員が内容を理解していなければ、実務上は機能しにくいからです。
社労士として規程整備の相談を受ける中でも、書類は一通りあるのに、現場職員がその存在を知らないというケースは珍しくありません。
そのため、採用時、入職時研修、定期研修、管理者会議などで繰り返し周知することが重要です。
特に介護事業所では、常勤、非常勤、登録ヘルパー、夜勤専従など、働き方が多様です。
全員が同じタイミングで研修を受けられるとは限らないため、書面配布、動画研修、チェックリスト、個別面談、掲示、グループウェアなどを組み合わせると実務に落とし込みやすくなります。
周知の内容としては、パワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児介護休業等に関するハラスメント、利用者や家族からのカスハラを分けて説明すると、職員が理解しやすくなります。
すべてをハラスメントという一言でまとめると、どこに相談すればよいのか、どのような対応になるのかが見えにくくなります。
特に介護現場では、職場内の問題と利用者対応の問題が混ざりやすいため、分類して説明することが大切です。
方針を作成するときは、禁止する行為だけを並べるのではなく、事業所が何を守るために対策を行うのかを明確にしましょう。
たとえば、職員が安心して働ける環境を整えること、利用者へ安定したサービスを提供すること、相談者を守ること、事実確認を適正に行うこと、再発防止に取り組むことなどです。
このような目的を入れると、単なる懲戒規定ではなく、職場づくりの方針として伝わりやすくなります。
また、周知したことを記録に残すことも重要です。
研修の参加者名簿、配布資料、理解度確認のチェックシート、欠席者へのフォロー記録などがあると、後から「事業所として必要な周知を行っていたか」を説明しやすくなります。
介護事業所では、行政指導や実地指導の場面で書類の整備状況を確認されることもあるため、実施した取り組みを見える形で残しておくことはリスク管理にもなります。
方針に入れたい主な項目
- ハラスメントを禁止する基本姿勢
- 対象となる言動の具体例
- 相談窓口と担当者
- 相談者への不利益取扱いの禁止
- 事実確認と再発防止の流れ
- 管理者やリーダー層の責任
- 利用者や家族からの言動への対応方針
周知で使いやすい方法
- 入職時オリエンテーションで説明する
- 年1回以上の職員研修に組み込む
- 相談窓口を職員用掲示板に掲示する
- 登録ヘルパーには書面やオンラインで共有する
- 管理者会議で対応事例を振り返る
相談窓口と対応体制の整備
ハラスメント対策では、相談窓口の設置が非常に重要です。
職員が被害を受けたときに、誰に、どのような方法で相談できるのかが分からなければ、制度はあっても機能しません。
介護職員は、利用者対応、家族対応、職員間の人間関係、シフト、人手不足など複数のストレスを抱えやすい仕事です。
そのため、早い段階で相談できる窓口があるかどうかは、離職防止にも関係します。
相談窓口は、管理者、人事担当者、法人本部、外部専門家などが担当することがあります。
小規模の介護事業所では専任の人事担当者を置くことが難しいため、管理者が窓口になるケースもありますが、その場合でも、相談相手を複数用意することが望ましいです。
たとえば、事業所内の管理者、法人代表、外部の社労士や弁護士など、相談内容に応じて選べる状態にしておくと、職員は相談しやすくなります。
たとえば、直属の上司がハラスメントの当事者になる可能性もあります。
そのときに、相談先が直属の上司だけでは、職員は声を上げにくくなります。
実務では、事業所内の窓口に加えて、法人代表、外部社労士、弁護士、産業保健スタッフなどにつなげられる体制があると安心です。
特に、セクハラやメンタル不調を伴う相談では、相談者が誰に話すかを選べることが大切です。
相談を受けた後は、相談内容を記録し、必要に応じて事実確認を行い、被害職員の就業環境を守る措置を検討します。
加害者とされる側にも言い分を確認する必要があるため、決めつけではなく、冷静な手順が求められます。
ただし、相談者の安全確保が必要な場合は、事実確認の完了を待たずに、勤務場所の調整、担当変更、複数対応などの暫定措置を取ることもあります。
介護現場では、ハラスメントの相談が人員配置、シフト、利用者対応、家族対応と密接に関係することがあります。
そのため、相談窓口だけを置くのではなく、相談後にどのような部署や担当者が連携するのかまで決めておくことが大切です。
訪問介護で利用者からの暴言が問題になった場合、サービス提供責任者、管理者、ケアマネジャー、家族、地域包括支援センターとの連携が必要になることがあります。
相談窓口の整備では、秘密保持と不利益取扱いの禁止を明確にすることも欠かせません。
相談した職員が、その後にシフトを減らされる、担当を外される、周囲から孤立するような扱いを受ければ、相談制度への信頼は一気に失われます。
もちろん、事実確認のために一定の情報共有が必要になることはありますが、その場合でも、共有範囲は必要最小限にするべきです。
また、相談窓口には初動対応のマニュアルが必要です。
相談を受けた担当者が、どのように話を聞くか、どの情報を記録するか、緊急性をどう判断するか、誰へ報告するかを理解していなければ、相談者を不安にさせてしまいます。
管理者研修では、ハラスメントの定義だけでなく、相談の聞き方まで扱うことをおすすめします。
相談窓口の実務メモ
相談窓口は、設置しただけでは足りません。
職員が入職したとき、研修を行うとき、掲示物を更新するときなどに、繰り返し周知することが必要です。
また、担当者が退職・異動した場合には、掲示やマニュアルも必ず更新しましょう。
古い担当者名のまま放置されている相談窓口は、実務上ほとんど機能しません。
| 相談対応の段階 | 主な対応 | 注意点 |
|---|---|---|
| 受付 | 相談者の話を落ち着いて聞く | 否定せず、秘密保持を説明する |
| 記録 | 日時、場所、相手、言動、影響を記録する | 評価ではなく事実を中心に残す |
| 安全確保 | 勤務調整や複数対応を検討する | 緊急性が高い場合は早く動く |
| 事実確認 | 関係者へ聞き取りを行う | 必要最小限の範囲で共有する |
| 再発防止 | 指導、配置、研修、ルール見直しを行う | 相談者へのフォローも忘れない |
カスハラ対策は2026年から
介護現場で特に関心が高まっているのが、利用者や家族からのカスタマーハラスメントです。
カスハラ対策は、2021年時点では介護事業所にとって望ましい取り組みという位置づけで整理されていましたが、2026年10月1日からは、改正労働施策総合推進法により、全事業主に対してカスハラ防止のための雇用管理上の措置が義務化される予定です。
介護ハラスメント義務化はいつからかを調べている方が混乱しやすいのは、2021年の義務化と2026年の義務化が別の段階の話だからです。
介護事業者も当然この対象に含まれます。
つまり、介護カスタマーハラスメント義務化はいつからかと聞かれた場合、法律上のカスハラ対策義務としては2026年10月1日からと整理できます。
ただし、介護事業所では2021年からすでにハラスメント防止の体制整備が求められているため、カスハラだけを切り離して考えるのではなく、既存のハラスメント対策に追加して整備するのが自然です。
カスハラとは、利用者や家族などからの不当・過剰な要求や言動によって、職員の就業環境が害される行為をいいます。
介護現場では、暴言、威圧的な態度、長時間の電話、過度な謝罪要求、サービス範囲を超える要求、性的な発言や接触などが問題になることがあります。
訪問介護では自宅という密室性、施設では長期的な利用関係、通所介護では家族送迎時のやり取りなど、サービス種別によって発生しやすい場面が異なります。
ただし、介護現場では認知症や疾病による言動との区別が必要です。
すべての暴言や暴力を直ちにカスハラとして扱うのではなく、利用者の状態、行為の頻度、職員への影響、家族の関与、サービス提供の継続可能性などを総合的に見て判断する必要があります。
この点が、一般の小売業や飲食業などのカスハラ対応と大きく異なるところです。
2026年に向けて介護事業所が準備すべきことは、まずカスハラの定義と対応方針を作ることです。
次に、相談窓口、記録様式、職員研修、利用者・家族への説明方法、サービス継続が難しい場合の手順を整えます。
特に、現場職員が「どこまで我慢すべきか」を個人で判断している状態は危険です。
職員が我慢を続けた結果、急な退職やメンタル不調につながることもあります。
また、カスハラ対策は利用者や家族を拒絶するためのものではありません。
正当な苦情や要望は、サービス改善の重要な情報です。
一方で、暴言、威圧、過度な要求、職員個人への攻撃が続く場合には、職員の安全と尊厳を守る必要があります。
介護事業所としては、利用者保護と職員保護の両方を考えたバランスのよい対応が求められます。
改正内容の一次情報を確認する場合は、 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」 を確認してください。
制度改正や施行日、介護報酬上の取り扱いは今後の通知や改定内容によって確認が必要になるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
最終的な判断は専門家にご相談ください。
カスハラ対策で整えるもの
- カスハラの定義と判断基準
- 事業所としての対応方針
- 職員が相談できる窓口
- 記録様式と報告ルート
- 利用者・家族への説明文
- サービス継続が難しい場合の協議手順
介護のハラスメント義務化はいつから

ここからは、2026年以降のカスハラ対策を中心に、介護事業所が実際に見直すべき書類や対応手順を整理します。
特に、運営規程、重要事項説明書、相談記録、職員研修、利用者・家族への説明は、現場運用と直結するため早めの準備が必要です。
介護事業所のハラスメント対策は、労務管理だけで完結しません。
運営基準、契約説明、ケアマネジャーとの連携、家族対応、職員配置、記録管理がつながって初めて実務で機能します。
ここからの内容は、管理者や法人本部の担当者だけでなく、サービス提供責任者、生活相談員、施設長、現場リーダーにも確認してほしい部分です。
2026年に向けて確認したいこと
- 利用者や家族からのハラスメントの定義
- 職員が相談できる窓口
- 事業所としての対応手順
- 運営規程と重要事項説明書の記載
- 認知症による言動との区別
介護カスハラ義務化の対象

介護カスハラ義務化の対象は、介護事業所を含むすべての事業主です。
訪問介護、通所介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、居宅介護支援、訪問看護、グループホームなど、サービス種別を問わず、職員を雇用している事業者は対応が必要になります。
法人の規模が小さいから対象外という考え方は基本的にできません。
介護事業所の場合、カスハラの相手方は一般的な店舗や窓口業務とは少し異なります。
利用者本人だけでなく、家族、身元引受人、後見人、近隣住民、関係機関の担当者など、サービス提供に関わる多様な相手からの言動が問題になることがあります。
たとえば、利用者本人は穏やかでも、家族から毎日のように長時間の電話がある、サービス範囲外の対応を当然のように求められる、職員個人を名指しして攻撃されるといったケースもあります。
実務上は、誰からの言動を対象とするかを広めに整理しておくことが大切です。
利用者本人からの暴言だけでなく、家族からの過度な要求、頻繁な電話、職員個人への攻撃、サービス範囲を超えた依頼なども、職員の就業環境を害する場合には対応が必要になります。
特に訪問系サービスでは、利用者宅という閉じた空間で起きるため、職員が被害を申告しにくいことがあります。
一方で、利用者や家族からの正当な苦情や要望までカスハラとして排除してはいけません。
介護サービスでは、利用者の生活や健康に関わるため、不安や不満が強く表れることもあります。
事業所側に改善すべき点がある苦情と、社会通念上相当な範囲を超える言動を分ける視点が必要です。
ここを誤ると、利用者保護の観点から問題になる可能性があります。
たとえば、訪問時間の遅れ、職員の説明不足、記録の不備、連絡ミス、介助方法への不安などは、まず事業所側が内容を確認すべき苦情です。
一方で、長時間にわたり怒鳴り続ける、土下座を要求する、職員個人の人格を攻撃する、契約外の家事を強要する、性的な発言や接触を繰り返すような場合は、カスハラとして対応を検討すべき場面になります。
介護カスハラ対策の対象を考えるときは、職員の雇用形態にも注意が必要です。
常勤職員だけでなく、非常勤、パート、登録ヘルパー、派遣職員、委託先の職員が現場に入る場合もあります。
事業所として直接雇用している職員はもちろん、現場で一緒に働く関係者が被害を受けた場合の連携方法も決めておくと、対応が遅れにくくなります。
| 区分 | 対応の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 正当な苦情 | サービス改善として受け止める | 記録し、必要に応じて説明・改善する |
| 不当要求 | 対応範囲を明確にする | 管理者が窓口を一本化する |
| 暴言・威圧 | 職員保護を優先する | 複数対応や面談記録を残す |
| 性的言動 | 安全確保と配置変更を検討する | 一人対応を避ける |
| 長時間拘束 | 対応時間と連絡方法を決める | 電話・面談の記録を残す |
| 契約外要求 | サービス範囲を説明する | ケアマネジャーと連携する |
運営規程への追記が必要
介護報酬上の取り扱いとして、今後はカスハラ対応を運営規程に明記することが重要になります。
運営規程は、事業所の基本的な運営方針やサービス提供のルールを定める書類です。
ここにカスハラへの対応姿勢を入れることで、職員、利用者、家族に対して、事業所としての方針を示しやすくなります。
介護ハラスメント義務化がいつからかを確認した後は、実際に運営規程をどう直すかまで進める必要があります。
運営規程に記載する場合は、単にカスハラを禁止しますと書くだけではなく、職員の安全と尊厳を守り、適切な介護サービスを継続するために対応するという趣旨を明確にすることが大切です。
介護事業所では、利用者支援と職員保護の両立が求められるため、表現のバランスが重要です。
利用者や家族に対して攻撃的な文面にするのではなく、職員の安全確保とサービス継続のためのルールとして位置づけるのが現実的です。
たとえば、暴言、威圧的言動、身体的暴力、性的言動、過度な要求、長時間の拘束、業務範囲を超える要求などを例示し、これらが継続する場合には、サービス提供方法の見直し、担当者変更、複数名対応、関係機関への相談、契約上の対応を検討することを定めておくと実務に使いやすくなります。
ここで大切なのは、いきなりサービス終了という書き方にしないことです。
ただし、介護サービスでは、正当な理由なくサービス提供を拒否することはできません。
カスハラ対応としてサービスの停止や契約解除を検討する場合には、記録、改善要請、関係機関との協議、代替手段の検討など、慎重な手順が必要です。
特に訪問介護や居宅介護支援では、サービスが途切れることにより利用者の生活に影響が出る可能性があります。
職員の安全確保と利用者の生活支援をどう両立するか、事前に考えておく必要があります。
運営規程を見直す際は、ハラスメント対応だけでなく、苦情対応、事故発生時の対応、虐待防止、身体拘束、感染症対策、業務継続計画など、他の規程との整合性も確認しましょう。
カスハラ対応だけが独立していると、現場で判断に迷います。
たとえば、利用者からの暴力があった場合、事故報告、虐待防止、職員安全確保、ケアプラン見直しのどれにつなげるかが整理されていないと、対応が遅れます。
また、運営規程の変更には、指定権者への届出や事業所内での周知が必要になる場合があります。
自治体ごとの運用も確認が必要です。
書類を直して終わりではなく、管理者、職員、利用者・家族へどのように説明するかまで計画しておくとよいです。
中小企業では迷いやすいポイントですが、規程改定と現場運用をセットで考えることが大切ですよ。
運営規程の注意点
カスハラ対応を記載する目的は、利用者や家族を一方的に排除することではありません。
職員の安全を守りながら、適切な介護サービスを継続するためのルールを明確にすることです。
強すぎる表現にすると、利用者や家族との信頼関係を損なう可能性もあるため、文言は慎重に整えましょう。
運営規程に入れる文言の方向性
- 職員の安全と尊厳を守る目的を明記する
- 社会通念上相当な範囲を超える言動を対象にする
- 事業所として対応方法を協議することを示す
- 必要に応じて関係機関と連携することを示す
- サービス継続が困難な場合の手順を定める
重要事項説明書への記載
重要事項説明書は、利用者や家族に対して、サービス内容、費用、運営方針、苦情対応などを説明するための書類です。
カスハラ対策を現場で機能させるためには、運営規程だけでなく、重要事項説明書にも利用者・家族向けの記載を入れることが重要です。
なぜなら、職員向けの内部規程だけでは、利用者や家族に事業所の方針が伝わらないからです。
記載の仕方としては、禁止事項を強く並べるよりも、安心してサービスを提供し続けるためのお願いとして表現する方が実務に合います。
介護サービスは、利用者や家族との信頼関係のうえに成り立つため、最初から対立的な表現にすると、説明時に不安や反発を招くことがあります。
特に契約時は、利用者や家族も介護への不安を抱えていることが多いため、伝え方には配慮が必要です。
たとえば、利用者様またはご家族等からの言動のうち、社会通念上相当な範囲を超えるものについては、職員の安全確保および適切なサービス提供のため、対応方法の見直しをお願いする場合があります、というような表現が考えられます。
このように、禁止ではなく協力依頼の形にすると、事業所の姿勢が柔らかく伝わります。
重要事項説明書に記載する場合は、どのような言動が問題になるのか、問題が発生した場合にどのような流れで協議するのか、職員個人ではなく事業所として対応することを明確にしておくとよいです。
訪問介護など一人で対応するサービスでは、特に職員個人に負担が集中しない仕組みが必要です。
職員が利用者や家族に直接注意し続けるのではなく、管理者が窓口となって説明する体制を作りましょう。
また、2025年4月以降は重要事項説明書等の電子掲示への対応も求められています。
カスハラに関する記載を追加した場合には、紙の書類だけでなく、掲示や電子掲示の内容も更新する必要があります。
紙の重要事項説明書だけを直して、ウェブ上や事業所内掲示が古いままだと、説明内容が一致しません。
こうした細かい不一致は、実地指導や利用者対応の場面で問題になることがあります。
重要事項説明書にカスハラ対応を入れるときは、苦情対応の項目との関係も整理しておくべきです。
利用者や家族には、正当な苦情や相談をする権利があります。
したがって、カスハラ対策の文言が、苦情を言ってはいけないという印象にならないよう注意が必要です。
苦情は真摯に受け止める一方で、職員の人格を否定する発言や過度な要求には組織として対応する、という線引きを示すことが大切です。
契約時の説明では、重要事項説明書を読み上げるだけでなく、職員を守るための規定であること、適切なサービス提供を続けるためのお願いであることを一言添えるとよいです。
家族側も、どのような言動が問題になるのかを事前に知っていれば、感情的なトラブルを防ぎやすくなります。
社労士の実務目線では、説明した記録を残すことも重要です。
署名や同意書、説明日、説明者の記録を整えておきましょう。
記載例の考え方
重要事項説明書では、利用者や家族を責める表現ではなく、職員の安全確保とサービス継続のための協力依頼として記載するのが実務上なじみやすいです。
強制的・威圧的な文言よりも、具体例と対応手順を穏やかに示す方が、契約時の説明にも使いやすくなります。
重要事項説明書で整理したい項目
- 職員の安全確保に関する基本方針
- 社会通念上相当な範囲を超える言動の例
- 問題が発生した場合の協議方法
- 担当者変更や複数対応の可能性
- 関係機関と連携する場合があること
- 正当な苦情や相談は妨げないこと
利用者ハラスメント対応手順

利用者ハラスメント対応では、事前に手順を決めておくことが重要です。
現場で暴言や威圧的な言動が起きたときに、その場の職員だけで判断すると、対応がばらつき、職員の不安も大きくなります。
特に介護現場では、利用者との関係性が長期化しやすく、職員が「これくらいは我慢しなければ」と抱え込んでしまうことがあります。
まず必要なのは記録です。
いつ、どこで、誰が、どのような言動を受けたのか、職員にどのような影響があったのか、周囲に誰がいたのかを記録します。
感情的な評価だけでなく、できるだけ客観的な事実を残すことがポイントです。
たとえば、「怖かった」とだけ書くのではなく、「大声で約10分間、職員の人格を否定する発言があった」「退出しようとした職員の腕をつかんだ」というように、後から状況が分かる形にします。
次に、管理者や相談窓口へ報告する流れを明確にします。
訪問介護では、職員が一人で利用者宅に入ることが多いため、報告が遅れると危険が高まることがあります。
緊急性がある場合には、訪問を中止する、複数名で対応する、担当者を変更する、関係機関へ相談するなどの対応が必要です。
命や身体の安全に関わる場合は、通常の苦情対応とは切り分けて考える必要があります。
そのうえで、利用者や家族へ説明を行います。
ここでは、職員個人が感情的に抗議するのではなく、事業所として、どのような言動がサービス提供上の支障になっているのかを説明します。
必要に応じて、ケアマネジャー、地域包括支援センター、行政、医療機関などとも連携します。
介護サービスは、事業所だけで完結しないことが多いため、関係者との情報共有が重要です。
利用者ハラスメント対応では、対応レベルを段階化しておくと現場で使いやすくなります。
軽微な言動であれば、記録と注意喚起で足りる場合があります。
一方、暴力や性的接触、長時間の拘束、脅迫に近い発言がある場合は、速やかに管理者が関与し、サービス提供方法を見直す必要があります。
すべてを同じ対応にすると、軽いケースでは過剰対応になり、重いケースでは対応が遅れます。
また、家族からのカスハラでは、電話対応のルールを決めることが効果的です。
長時間の電話、繰り返しの苦情、同じ内容の過度な確認が続く場合は、対応時間、担当窓口、連絡方法を明確にしましょう。
職員個人の携帯電話で対応している場合は特に注意が必要です。
業務時間外の連絡が常態化すると、職員の負担が大きくなります。
基本的な対応ステップ
- 発生した言動を記録する
- 管理者や相談窓口へ報告する
- 職員の安全確保を優先する
- 利用者や家族へ事業所として説明する
- 関係機関と連携して対応方針を決める
- 再発防止策を検討する
| 対応レベル | 想定される状況 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 軽度 | 一時的な強い口調、単発の不満 | 記録、管理者共有、必要に応じて説明 |
| 中度 | 暴言の反復、長時間電話、過度な要求 | 窓口一本化、家族説明、ケアマネ連携 |
| 重度 | 暴力、性的接触、脅迫、訪問継続困難 | 安全確保、複数対応、行政・警察等への相談検討 |
サービス拒否や契約解除を検討する場合は、正当な理由があるか、代替手段を検討したか、手順を踏んでいるかが重要になります。
事業所として職員を守ることは当然必要ですが、介護サービスには利用者の生活を支える側面もあります。
そのため、記録、改善要請、関係機関との協議、家族への説明、ケアプランの見直しなどを積み上げることが大切です。
最終的な判断は専門家にご相談ください。
認知症ハラスメントとの区別
介護現場で特に難しいのが、認知症による行動・心理症状とハラスメントの区別です。
認知症の影響で暴言、暴力、拒否、性的な言動が見られることがありますが、本人に明確な加害意思がない場合もあります。
そのため、一般的なカスハラと同じ枠組みだけで判断すると、介護現場の実態に合わないことがあります。
ここは、管理者も現場職員も悩みやすいところです。
ただし、認知症による言動であれば職員が我慢しなければならない、ということではありません。
本人に悪意がないとしても、職員が叩かれる、蹴られる、性的な接触を受ける、強い恐怖を感じるという状況を放置してよいわけではありません。
職員の安全が守られなければ、安定した介護サービスを継続することも難しくなります。
認知症による言動はハラスメントと評価しない場合でも、職員を守る対応は必要です。
たとえば、複数名対応、同性介助、訪問時間の調整、環境調整、医療機関への相談、ケアプランの見直し、家族への説明などが考えられます。
本人の病状として理解しつつ、職員の安全配慮を行う。
この両方が必要です。
実務では、認知症だから仕方がないという言葉で現場の被害を片付けてしまうと、職員の離職やメンタル不調につながります。
一方で、利用者本人の病状や生活背景を無視して、すぐに問題行動として扱うことも適切ではありません。
だからこそ、記録とチーム対応が重要になります。
いつ、どのような場面で、どの職員に、どのような行動が起きたのかを記録すると、発生しやすい条件が見えてくることがあります。
事業所としては、認知症BPSDとカスハラの違いを研修で扱い、現場職員が一人で抱え込まない仕組みを作ることが必要です。
特に訪問系サービスでは、職員が単独で判断しないよう、報告基準を明確にしておくべきです。
暴言や暴力があったときに、職員が「利用者さんの病気だから報告してはいけない」と感じてしまうと、危険な状況が見逃されます。
認知症による言動がある場合は、医療職やケアマネジャーとの連携も重要です。
薬の影響、痛み、不安、環境変化、生活リズム、家族関係などが背景にあることもあります。
介護職員だけで原因を判断するのではなく、チームで情報を共有し、ケアの方法を見直す視点が必要です。
カスハラかどうかを決めることだけに意識が向くと、本来必要なケアの見直しが遅れてしまうことがあります。
一方で、家族が認知症を理由にすべてを事業所へ押し付けるような場合には、家族への説明も必要です。
本人に悪意がなくても、職員が危険にさらされている場合には、サービス提供方法の見直しや家族の協力が必要になることがあります。
認知症ハラスメントとの区別では、本人の責任追及ではなく、安全な支援体制をどう作るかという視点が重要かなと思います。
区別の視点
- 本人の疾病や認知機能の状態
- 言動の頻度と継続性
- 職員への身体的・精神的影響
- 家族や関係者の対応状況
- サービス提供を継続できる安全性
- 医療職やケアマネジャーとの連携状況
認知症対応の注意点
認知症による行動は、本人の意思だけでコントロールできない場合があります。
そのため、本人を責める表現は避けるべきです。
ただし、職員の安全が損なわれている場合は、病状への理解とは別に、複数対応や環境調整などの安全対策を行う必要があります。
介護ハラスメント義務化はいつからのまとめ
介護ハラスメント義務化はいつからかを整理すると、まず2021年4月から、介護事業所にはパワハラやセクハラなど職場内ハラスメントへの対策が求められています。
具体的には、方針の明確化、職員への周知啓発、相談窓口の設置、適切な対応体制の整備が基本です。
ここが未整備のままでは、2026年以降のカスハラ対策に進んでも、事業所全体のハラスメント対応としては不十分になりやすいです。
そして、利用者や家族からのカスタマーハラスメントについては、2026年10月1日から改正労働施策総合推進法により、全事業主に対して防止措置が義務化される予定です。
介護事業所も例外ではありません。
介護カスハラ義務化では、職員を守るための相談体制、研修、事後対応、再発防止策を整えることが求められます。
さらに、介護報酬上の対応として、運営規程や重要事項説明書にカスハラへの対応を反映することも重要になります。
特に介護現場では、利用者・家族との関係、認知症BPSDとの区別、サービス提供拒否の可否など、一般企業とは異なる実務上の難しさがあります。
そのため、単にカスハラ禁止と書くだけでは不十分で、記録、相談、説明、関係機関連携まで含めた手順が必要です。
事業所としては、まず2021年から必要な職場内ハラスメント対策が整っているかを確認し、次に2026年以降のカスハラ対策として、方針、相談窓口、研修、記録、運営規程、重要事項説明書を見直す流れが現実的です。
特に、現場職員が利用者や家族からの暴言・過度な要求を一人で抱えている場合は、早めに組織対応へ切り替えるべきです。
介護事業所の管理者にとって大切なのは、職員を守ることと、利用者への適切なサービス提供を対立させないことです。
職員が安心して働ける環境があってこそ、利用者への安定したサービス提供が可能になります。
ハラスメント対策は、単なる法令対応ではなく、人材確保、離職防止、サービス品質の維持にもつながる取り組みです。
最後に、制度改正への対応は、書類の修正だけで終わらせないことが重要です。
就業規則や運営規程を直す、重要事項説明書へ記載する、職員へ研修する、相談窓口を周知する、発生時の記録様式を整える、管理者が対応手順を理解する。
この一連の流れがそろって、初めて実務で使える対策になります。
最後に確認したいポイント
- 2021年から職場内ハラスメント対策は必要
- 2026年10月1日からカスハラ対策が義務化予定
- 運営規程と重要事項説明書の見直しが重要
- 認知症による言動とハラスメントは分けて考える
- サービス停止や契約解除は慎重な手順が必要
- 相談窓口と記録様式を現場で使える形にする
| 確認項目 | 未対応の場合のリスク | 優先度 |
|---|---|---|
| ハラスメント防止方針 | 事業所の基本姿勢を説明できない | 高 |
| 相談窓口 | 職員が被害を抱え込みやすい | 高 |
| 職員研修 | 現場判断がばらつく | 高 |
| 運営規程 | 事業所としての対応方針が不明確になる | 中 |
| 重要事項説明書 | 利用者・家族へ方針を説明しにくい | 中 |
| 記録様式 | 後から事実関係を確認しにくい | 高 |
制度改正の内容や施行時期は、今後の通知や公式資料で確認が必要です。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
また、個別の事業所でどこまで対応すべきか、利用者対応をどう進めるべきかは状況によって異なります。
最終的な判断は専門家にご相談ください。