こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
選定療養費とは、患者が選択する一定の保険外の療養について、通常の保険診療とは別に負担する特別の料金です。
一般に病院の窓口で選定療養費と案内されるものの多くは、紹介状を持たずに一定規模以上の大病院を受診した場合などに支払う特別の料金を指します。
初診では医科7,000円以上、歯科5,000円以上、再診では医科3,000円以上、歯科1,900円以上が制度上の目安となっています。
ただし、実際の徴収額は病院によって異なり、7,700円や11,000円などの金額を設定している医療機関もあります。
一方で、紹介状がある場合や救急患者など、選定療養費がかからないケースもあります。
救急車で搬送された場合や子どもの受診、一度支払った料金が返金されるのかなど、窓口で初めて請求されると分かりにくい点も少なくありません。
この記事では、一般に選定療養費と呼ばれる大病院の初診・再診時の特別料金を中心に、制度の目的、金額、紹介状との関係、かからない場合、救急搬送時の扱いまで順番に整理します。
- 選定療養費が設けられている理由と基本的な仕組み
- 初診・再診で支払う金額と対象となる病院
- 紹介状や救急受診など選定療養費がかからないケース
- 救急搬送・子どもの受診・返金に関する注意点

選定療養費とは?仕組みと金額
まず、選定療養費がどのような制度なのかを整理します。
特に押さえておきたいのは、病院が独自に理由なく上乗せしている料金ではなく、医療機関の役割分担を進めるために設けられている制度だという点です。
また、制度上の選定療養には、大病院の初診・再診以外にも差額ベッド、予約診療、時間外診療、長期収載品などがあります。
この記事では、その中でも検索する方が最も疑問を持ちやすい大病院を紹介状なしで受診した場合の特別料金を中心に見ていきます。
選定療養費はなぜかかるのか
選定療養費が設けられている大きな理由は、 診療所や中小病院と大病院の役割分担を進めるため です。
大学病院や地域の基幹病院には、専門的な検査や高度な治療、手術、救急医療などを担う役割があります。
一方で、風邪や比較的軽いけが、生活習慣病の継続的な管理などは、地域の診療所やクリニックで対応できるケースも少なくありません。
もし症状の程度にかかわらず多くの患者が最初から大病院へ集中すると、専門的な医療を必要とする患者の診察まで混雑し、大病院が本来担うべき機能に影響する可能性があります。
そのため、日常的な診療は地域の医療機関、高度・専門的な診療は大病院という役割分担を進める仕組みの一つとして、紹介状なしで一定の大病院を受診する患者に特別の料金を求める制度が設けられています。
まず地域の医療機関で診てもらう流れが基本
制度が想定している基本的な流れは、まず地域の診療所やクリニックなどを受診し、専門的な検査や治療が必要であれば、医師から適切な大病院へ紹介してもらうというものです。
紹介状には、現在の症状だけでなく、それまでの治療経過、検査結果、服薬内容などが記載されます。
大病院側も患者の情報を把握しやすくなるため、単に料金を節約するという意味だけではなく、診療を円滑につなぐ役割があります。
反対に、大病院で必要な治療が一段落した後は、地域の診療所などへ戻ることもあります。
これがいわゆる逆紹介です。
初診時だけでなく再診時にも選定療養費の仕組みが設けられているのは、この地域医療機関と大病院との間の往復を進めるという考え方が背景にあります。
選定療養費のポイント
大病院に患者が集中することを防ぎ、地域の医療機関と大病院の機能分担を進めるための仕組み と考えると分かりやすいでしょう。
選定療養費は紹介状を持たないことへの罰金ではない
窓口で数千円から1万円程度の料金を請求されると、「紹介状がないだけで、なぜこんなに払わなければならないのか」と感じる方もいると思います。
ただ、選定療養費は病院が患者に対してペナルティーを科しているわけではありません。
国の制度として一定の大病院に定額負担を求める仕組みが設けられており、対象となる医療機関では一定額以上を徴収することが求められる場合があります。
したがって、「病院が勝手に作った謎の料金」という理解も、「紹介状を忘れた罰金」という理解も正確ではありません。
制度の目的は、患者の受診行動を地域の医療機関と大病院の機能に合わせて整理することにあります。
選定療養という言葉自体はもっと広い
もう一つ重要なのが、 選定療養費という言葉が必ず大病院の紹介状なし受診だけを意味するわけではない ことです。
選定療養とは、保険外併用療養費制度の中で、将来的に保険へ導入することを前提とせず、患者自身の選択によって利用する一定の療養を指します。
たとえば、差額ベッドと呼ばれる特別の療養環境、予約診療、時間外診療、180日を超える入院、制限回数を超える医療行為、一定の長期収載品なども選定療養に含まれます。
制度全体の位置付けについては、厚生労働省も保険外併用療養費制度の中で選定療養の類型を整理しています。
詳しい制度区分を確認したい場合は、 厚生労働省「保険外併用療養費制度について」 が一次情報になります。
ただし、患者が病院のホームページや会計窓口で「選定療養費」という言葉に出会う場面では、紹介状なしで大病院を受診した場合の特別料金を意味しているケースが多いため、本記事でもこの意味を中心に説明しています。
選定療養費の対象となる病院

紹介状を持たずに病院を受診したからといって、すべての医療機関で選定療養費が発生するわけではありません。
大病院の初診・再診に関する特別料金については、病院の機能や一般病床数などによって取扱いが異なります。
代表的なのが、 特定機能病院、一般病床200床以上の地域医療支援病院、一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関 です。
| 医療機関の種類 | 主な役割 | 選定療養費との関係 |
|---|---|---|
| 特定機能病院 | 高度な医療、研究、医療従事者の研修などを担う病院 | 紹介状なしの初診等について一定の定額負担が求められる対象 |
| 地域医療支援病院 | 地域の診療所などを支援し、紹介患者や救急患者を受け入れる病院 | 一般病床200床以上など一定の要件を満たす場合に対象 |
| 紹介受診重点医療機関 | 紹介患者を中心に専門的な外来診療を行う医療機関 | 一般病床200床以上など一定の要件を満たす場合に対象 |
| その他の一定規模の病院 | 地域の一般病院など | 要件を満たす場合、選定療養として特別料金を設定していることがある |
必ず徴収する病院と設定できる病院は同じではない
ここは制度を理解するうえで少し重要なポイントです。
一般病床が200床以上ある病院だからといって、すべてが同じルールで強制的に同じ金額を徴収しているわけではありません。
一定の特定機能病院、地域医療支援病院、紹介受診重点医療機関については、国が大病院への患者集中を防ぐ観点から、紹介状なしで受診する患者について一定額以上の負担を求める仕組みを設けています。
一方、それ以外の一般病床200床以上の病院でも、選定療養として初診・再診の特別料金を設定することがあります。
つまり、「200床以上なら必ず同じ」「大学病院だけが対象」といった単純な区分ではありません。
病院名だけでは判断しにくい
患者の立場から難しいのは、病院名を見ただけでは、その医療機関がどの制度上の区分に該当するのか分かりにくいことです。
たとえば、「○○総合病院」という名称でも、地域医療支援病院に指定されている場合もあれば、そうではない場合もあります。
また、紹介受診重点医療機関として公表されている医療機関もあります。
そのため、「この病院は大きそうだから選定療養費がかかるはず」「地方の病院だからかからないはず」と外観や名称だけで判断しない方がよいでしょう。
受診前に確認しておきたい項目
- 紹介状なしで初診を受け付けているか
- 選定療養費はいくらか
- 紹介状が必要な診療科か
- 予約が必要か
- 健診結果や画像データなど持参すべき資料があるか
特に大学病院や地域の基幹病院を受診するときは、病院のホームページにある「初診の方へ」「紹介状をお持ちでない方へ」「選定療養費」「外来受診のご案内」といったページを確認するのがおすすめです。
紹介状がなければ予約自体を受け付けない診療科もあれば、受診はできるものの選定療養費が発生する診療科もあります。
この点は選定療養費の有無とは別に確認する必要があります。
対象となる医療機関の区分や指定状況は変更される可能性があります。
病床数や過去の受診経験だけで判断せず、受診予定の病院が現在公表している情報を確認してください。
初診時の選定療養費はいくらか
紹介状を持たずに対象となる大病院を初診で受診する場合には、通常の診療費とは別に特別の料金が発生します。
制度上の最低額として押さえておきたいのは、 医科7,000円以上、歯科5,000円以上 という金額です。
ただし、「以上」という点が重要であり、全国すべての対象病院が同じ金額を請求するわけではありません。
| 区分 | 初診時の制度上の金額 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 医科 | 7,000円以上 | 病院によって7,700円、11,000円など異なる場合がある |
| 歯科 | 5,000円以上 | 医科とは最低額が異なる |
7,000円ちょうどとは限らない
検索すると「選定療養費7,000円」という情報を目にすることがありますが、実際に会計窓口で7,700円や11,000円などを請求され、「話が違うのでは」と感じる方もいると思います。
これは7,000円が全国一律の料金ではなく、制度上の最低額として設定されているためです。
医療機関は制度上必要となる金額以上で特別料金を設定することがあり、さらに表示方法によっては消費税を含んだ金額が案内されています。
したがって、「7,000円と書いてあったから、必ず7,000円だけ」と考えるのではなく、 実際に受診する病院が現在設定している金額を確認する 必要があります。
選定療養費と通常の診療費は別です。
選定療養費を支払えば診療費が不要になるわけではありません。
診察、検査、処方などの保険診療について通常の自己負担が発生し、それとは別に選定療養費を支払う仕組みです。
通常の3割負担に単純に足すだけではない
大病院を紹介状なしで受診する場合の定額負担については、2022年10月から制度が見直され、特別料金の引上げとあわせて、初診・再診の一部を保険給付の範囲から控除する仕組みが導入されています。
そのため、たとえば医科の初診で「普段なら診療費の3割負担だから、そこに7,000円を足せばよい」と単純に計算すると、実際の会計額と一致しないことがあります。
患者からすると少し分かりにくい仕組みですが、重要なのは、選定療養費が通常の保険診療の自己負担とは別枠で存在しているということです。
初診とは単純にその病院へ行く1回目とは限らない
もう一つ注意したいのが「初診」の考え方です。
日常会話では「その病院へ初めて行った日」と考えがちですが、診療報酬上の初診・再診の扱いは、過去の治療経過や受診状況などによって判断されます。
以前その病院に通ったことがあるから、必ず再診扱いになるとは限りません。
逆に、別の診療科だから必ず選定療養費が発生するとも限りません。
過去に受診歴があり、今回が初診時選定療養費の対象になるか分からない場合は、予約時や受付時に確認するのが確実です。
金額だけでなく総額を考えましょう。
大病院を受診するときは、選定療養費だけでなく、診察・検査・画像診断・処方などの通常の診療費も発生します。
受診前に把握できるのは主に選定療養費の部分であり、最終的な支払総額は診療内容によって変わります。
なお、制度上の金額や病院ごとの設定額は今後変更される可能性があります。
ここで示している金額は現在の制度を理解するための一般的な目安として考え、正確な金額は受診予定の病院で確認してください。
再診時の選定療養費はいくらか

選定療養費は、初めて大病院を受診するときだけの制度ではありません。
大病院で専門的な治療を受けた後、病院側から地域の診療所などへ紹介する旨を伝えられたにもかかわらず、患者が自分の希望で引き続きその大病院を受診する場合には、再診時にも特別の料金が発生することがあります。
| 区分 | 再診時の制度上の金額 |
|---|---|
| 医科 | 3,000円以上 |
| 歯科 | 1,900円以上 |
初診時と同様、この金額は病院ごとの実際の請求額が全国一律であることを意味しません。
医療機関が設定している金額を個別に確認する必要があります。
2回目の受診だから発生するわけではない
再診時の選定療養費で特に誤解されやすいのが、 「大病院へ2回目に行ったら3,000円以上かかる」という制度ではない ことです。
たとえば、大学病院で手術を受け、その後も経過観察や専門的な治療を継続する必要がある患者について、病院側が引き続き診療を行っている間まで一律に再診時選定療養費が発生するわけではありません。
ポイントになるのは、大病院側から「今後は地域の医療機関で診療を受けることができます」「近くのクリニックへ紹介します」といった案内があり、それでも患者自身が大病院での診療継続を希望するような場面です。
逆紹介を進めるための仕組み
大病院から地域の診療所などへ患者を紹介することは、一般に逆紹介と呼ばれています。
たとえば、大病院で詳しい検査を行い、重い病気ではないことが確認できた後の日常的な投薬管理まで大病院で続ける必要がなければ、地域のかかりつけ医へ診療を引き継ぐことがあります。
このような患者が大病院に残り続けると、新たに高度・専門的な診療を必要とする患者の受入れにも影響するため、初診時だけでなく再診時にも定額負担の仕組みが設けられています。
初診と再診では対象となる理由が異なります。
- 初診:主に紹介状なしで対象となる大病院を直接受診する場合
- 再診:地域の医療機関への紹介を申し出られた後も大病院での受診を希望する場合
医師から地域の病院を勧められたら確認する
診察時に医師から「次回から近くのクリニックで診てもらいましょう」と言われた場合、その時点で突然選定療養費が請求されるという意味ではありません。
ただし、その後も大病院を希望して受診する場合には、再診時の特別料金が関係する可能性があります。
このような案内を受けたときは、「次回もこの病院を受診した場合は選定療養費がかかりますか」「紹介先はどこになりますか」と確認しておくとよいでしょう。
実務でも、医療制度は「患者が行きたい病院へずっと通えばよい」という単純な仕組みではありません。
医療機関ごとに役割があり、その役割に沿った受診を促す仕組みの一つが再診時の選定療養費だと理解すると分かりやすいかなと思います。
病院側から地域の医療機関への紹介を提案された場合でも、病状や治療内容によって取扱いは異なります。
再診時選定療養費の対象になるかどうかは、実際に受診している医療機関へ確認してください。
紹介状があれば選定療養費は不要か
対象となる大病院を初診で受診するときでも、 他の医療機関からの紹介状を持参している場合には、原則として紹介状なし受診に対する選定療養費の対象にはなりません。
そのため、急を要しない症状で大学病院や地域の基幹病院を受診したい場合には、最初に地域の診療所などを受診し、必要に応じて紹介状を書いてもらうのが基本的な流れです。
紹介状は単なる料金割引券ではない
ここでいう紹介状は、通常、医師が作成する診療情報提供書です。
診療情報提供書には、患者の症状、これまでの治療経過、検査結果、既往歴、服用している薬、紹介先で確認してほしい事項などが記載されます。
受診先の医師はこれらの情報を踏まえて診療を開始できるため、同じ検査を一から繰り返す必要がなくなる場合もあります。
つまり、紹介状は選定療養費を回避するためだけの書類ではありません。
地域の医師から専門医へ診療情報をつなぐことが本来の役割 です。
紹介状を作成してもらう場合には、診療情報提供料などについて通常の保険診療上の自己負担が発生することがあります。
それでも、診療経過や検査情報を受診先へ引き継げるため、単純に選定療養費との金額差だけで考えないことが重要です。
紹介状があっても予約が不要になるとは限らない
紹介状についてもう一つ注意したいのが、 「紹介状があること」と「すぐ受診できること」は別問題 だという点です。
大学病院などでは、紹介状を持っていても事前予約が必要な診療科があります。
紹介元の医療機関から予約を取ってもらう方式や、患者本人が予約センターへ連絡する方式など、病院によって運用は異なります。
また、診療科によっては紹介状が必須となっており、選定療養費を支払えば紹介状なしでも必ず受診できるというわけではありません。
したがって、紹介状を書いてもらったら、「どの病院の何科宛てなのか」「予約は必要なのか」「紹介状以外に画像データや検査結果を持参する必要があるのか」まで確認しておくとスムーズです。
健康診断で要精密検査となった場合
会社の健康診断で異常を指摘され、「大きな病院で詳しく調べてもらった方がよいのでは」と考える方もいます。
この場合、健診結果を持っていきなり大学病院へ行くよりも、まず受診予定の病院が健診結果だけで受け付けているのか、紹介状が必要なのかを確認した方がよいでしょう。
制度上、特定健診やがん検診などの結果から精密検査を指示されている患者について、選定療養費を徴収しない扱いとなる場合もありますが、すべての健康診断結果について一律に同じ扱いになると考えるべきではありません。
人事労務の実務でも、「健診で再検査になった従業員を病院へ行かせれば会社としては終わり」とするのではなく、本人が受診しやすいよう、健診結果を持参することや必要に応じてかかりつけ医へ相談することまで案内できると丁寧です。
大病院を受診する前の確認手順
- 受診予定の診療科を確認する
- 紹介状が必要か確認する
- 紹介状なしの場合の選定療養費を確認する
- 予約が必要か確認する
- 健診結果や検査データなど必要書類を確認する
紹介状の取扱いは医療機関によって異なります。
紹介状があればあらゆる特別料金が必ず免除されるという意味でもありませんので、実際の受診条件は病院の案内を確認してください。
選定療養費とは?かからない場合と返金
選定療養費について特に多い疑問が、「紹介状がなければ必ず支払うのか」という点です。
実際には、紹介状がなくても徴収の対象にならないケースがあります。
また、救急車で搬送された場合はどうなるのか、子どもの医療費助成が使えるのか、一度支払った料金は戻ってくるのかなど、個別の状況によって扱いが異なる部分もあります。
ここからは、例外と注意点を中心に整理します。
選定療養費がかからない場合
対象となる大病院を紹介状なしで受診しても、一定の場合には選定療養費の徴収対象から外れます。
代表的なケースには、 救急患者、公費負担医療の対象となる一定の患者、災害の被災者、労災患者など があります。
また、国の制度上、病院が特別料金を徴収しないことができるケースも定められています。
つまり、「紹介状がない=例外なく選定療養費」という仕組みではありません。
代表的な対象外・徴収しないことがあるケース
- 緊急性がある救急患者として受診する場合
- 一定の公費負担医療の対象となっている場合
- 災害による被災者として受診する場合
- 業務災害や通勤災害として労災保険の対象となる場合
- 同じ病院の別の診療科から院内紹介される場合
- 特定健診やがん検診などの結果から精密検査を指示された場合
- 一定の救急医療事業や周産期医療事業で休日・夜間に受診する場合
- 外来を受診した後、そのまま入院となる場合
ただし、これらに似た状況であれば自動的にすべて対象外になるという意味ではありません。
実際の受診状況や医療機関の制度上の取扱いによって判断されます。
「自分は例外に当てはまるはず」と自己判断しないことが重要です。
同じように見える受診でも、緊急性、紹介経路、公費制度の種類、受診した診療科などによって取扱いが変わることがあります。
分からない場合は受付または会計窓口へ確認してください。
労災の場合は健康保険とは別の制度
社会保険労務士として特に注意していただきたいのが、仕事中や通勤途中のけがです。
たとえば、勤務中に転倒して骨折した、作業中に機械で手を負傷した、通勤途中に交通事故に遭ったという場合、業務災害または通勤災害として労災保険の対象になる可能性があります。
この場合、通常の私傷病として健康保険を使って受診するケースとは制度が異なります。
労災として取り扱われる患者については、大病院の紹介状なし受診に対する定額負担についても通常の健康保険患者とは異なる扱いとなります。
仕事中のけがであれば、病院の窓口で「仕事中にけがをした」と明確に伝えてください。
会社にも事故の状況を報告し、労災保険の手続きを確認することが重要です。
健康保険か労災保険かを本人の都合で選ぶわけではありません。
仕事や通勤が原因のけがは、原則として労災保険の対象になるかどうかを確認します。
「会社に迷惑をかけたくないから健康保険を使う」といった処理は適切ではありません。
公費負担医療も制度によって扱いが異なる
公費負担医療を利用している場合も、すべての公費制度について選定療養費が一律に同じ扱いになるわけではありません。
また、自治体独自の医療費助成と、国の公費負担医療を同じものとして考えない方がよいでしょう。
特に子どもの医療費助成については後ほど詳しく説明しますが、保険診療の自己負担が助成されても、選定療養費などの保険外負担までは助成されないことがあります。
このあたりは制度名が似ていて分かりにくいところです。
受給者証を持っている場合は、受付時に提示したうえで、選定療養費も対象になるのか確認してください。
正確な判断は患者ごとの事情によって変わります。
病院の案内や加入している保険制度などを確認し、必要に応じて関係機関へ相談してください。
救急車でも選定療養費はかかるのか

原則として、緊急性があり救急患者として大病院を受診する場合には、紹介状なし受診の選定療養費は徴収対象外となります。
しかし、ここで注意したいのが、 「救急患者であること」と「救急車で病院へ運ばれたこと」は必ずしも同じ意味ではない という点です。
救急車を利用したからという理由だけで、全国どこの病院でも必ず選定療養費が免除されると考えるのは適切ではありません。
茨城県では緊急性がない救急搬送で徴収する運用がある
具体例として分かりやすいのが茨城県です。
茨城県では2024年12月2日から、救急車で搬送された患者についても、救急車を要請した時点で緊急性が認められない場合には、県内の一部の大病院で選定療養費を徴収する運用を開始しています。
ここで重要なのは、 救急車の利用料金を徴収しているわけではない という点です。
茨城県の仕組み
救急車そのものを有料化した制度ではありません。
緊急性が認められない状態で救急車により一定の大病院へ搬送された場合、その病院が選定療養費を徴収する仕組みです。
茨城県の公式案内では、緊急性のある症状については引き続き選定療養費を徴収しないとしており、緊急の場合にはためらわず救急車を要請するよう案内しています。
現在の具体的な対象病院や運用は、 茨城県「救急搬送における選定療養費の徴収について」 で確認できます。
「救急車なら無料」と覚えない
たとえば、夜間に体調が悪くなったものの、緊急性は低く、自分で受診できる状態だった場合と、突然意識を失ったり激しい胸痛が出たりして救急搬送が必要になった場合では、医療上の緊急性が異なります。
選定療養費の対象外となる救急患者という考え方も、この緊急性を前提としています。
そのため、交通手段として救急車を利用したという事実だけで判断するものではありません。
一方で、患者本人が緊急性を正確に判断できるとは限りません。
特に胸の強い痛み、呼吸困難、意識障害、麻痺、大量出血など、生命にかかわる可能性がある症状については、選定療養費を心配して救急要請を控えるべきではありません。
費用より安全を優先してください。
緊急性が疑われる状況で、「選定療養費がかかるかもしれないから」と救急車を呼ばない判断をするのは適切ではありません。
生命や身体への危険がある場合は必要な救急要請を優先してください。
地域によって運用が異なる
茨城県の例は全国一律の制度運用ではありません。
救急搬送時にどのようなケースで選定療養費を徴収するかは、地域や医療機関によって異なる場合があります。
また、救急隊が搬送先を選ぶ際には、患者の症状、病院の受入状況、必要な診療科などが考慮されます。
「選定療養費がかからない病院へ運んでほしい」と患者が自由に搬送先を指定できるとは限りません。
救急搬送後に選定療養費を請求され、なぜ対象になったのか分からない場合は、受診した病院へ徴収理由を確認してください。
制度の運用に関する質問であれば、自治体の担当部署の案内も確認するとよいでしょう。
子どもにも選定療養費はかかるのか
子どもだからという理由だけで、選定療養費が全国一律に免除されるわけではありません。
多くの自治体では、子どもの保険診療にかかる自己負担について、医療費助成制度を設けています。
そのため、普段の病院受診では窓口負担が無料または非常に少額になっている家庭も多いでしょう。
しかし、 子どもの医療費助成と選定療養費は別の制度 です。
医療費助成があっても保険外負担まで無料とは限らない
自治体の子ども医療費助成は、一般に健康保険が適用される医療費の自己負担部分を対象として設計されています。
一方、大病院を紹介状なしで受診した場合の特別料金は、通常の保険診療の自己負担とは性質が異なります。
そのため、受給者証を提示すれば保険診療部分の自己負担は助成されても、選定療養費については別途支払いが必要になる場合があります。
「子どもは医療費が無料だから、大病院でもすべて無料」とは限りません。
選定療養費が自治体の助成対象になるかどうかは制度によって異なります。
お住まいの自治体と受診予定の病院の案内を確認してください。
子どもの急病では救急患者としての扱いも関係する
一方、子どもが急病となり、緊急性のある救急患者として大病院を受診する場合には、そもそも大病院の初診に関する選定療養費の徴収対象外となることがあります。
そのため、「子どもだから無料」なのか、「救急患者だから対象外」なのか、「自治体の助成で負担がない」のかは、分けて考える必要があります。
この違いを理解していないと、以前は夜間の救急受診で費用がかからなかったから、次回も紹介状なしで大学病院へ行って無料だろう、と誤解してしまう可能性があります。
子どもの受診では3つを分けて確認しましょう。
- 健康保険が適用される通常の診療費
- 自治体による子ども医療費助成
- 大病院受診時の選定療養費など保険外の負担
休日・夜間は費用だけで受診判断をしない
特に子どもは、夜間や休日に突然高熱を出したり、嘔吐したり、けがをしたりすることがあります。
保護者としては「大病院へ行った方がよいのか」「朝まで待ってよいのか」「選定療養費がかかるのか」と迷いますよね。
ただし、受診の必要性と選定療養費の問題は分けて考えてください。
緊急性が高い症状であれば、費用を理由に必要な受診を控えるべきではありません。
反対に、緊急性が低く翌日の診療でもよい場合には、地域の小児科や休日当番医などを利用することで、大病院への患者集中を避けることにもつながります。
子どもの医療費助成は自治体によって対象年齢、所得要件、一部負担金、県外受診時の扱いなどが異なります。
選定療養費の取扱いについても一律ではありません。
具体的な負担を確認するときは、「子ども医療費助成が使えますか」だけではなく、 「紹介状なしで受診した場合の選定療養費も助成対象ですか」 と具体的に確認すると、認識のずれを防ぎやすくなります。
選定療養費は戻ってくるのか

一度選定療養費を支払った方が最も気になるのが、「あとから健康保険へ申請すれば戻ってくるのではないか」という点だと思います。
結論からいうと、正当に徴収された大病院受診時の選定療養費については、 通常の健康保険給付として後から自動的に返金される性質の料金ではありません。
高額療養費にそのまま含めることはできない
高額療養費制度は、健康保険が適用される医療費について、1か月の自己負担額が一定の上限を超えた場合に負担を軽減する制度です。
一方、大病院を紹介状なしで受診した場合の選定療養費は、通常の保険診療に対する自己負担とは区別される特別の料金です。
そのため、選定療養費の金額をそのまま高額療養費の自己負担額へ加算し、上限を超えた分が払い戻されるという仕組みではありません。
たとえば、入院や手術などで医療費が高くなり、その月に大病院の選定療養費も支払ったとしても、高額療養費の対象となる部分と選定療養費は分けて確認する必要があります。
高額療養費の計算方法については、 健康保険の高額療養費の仕組みと自己負担限度額 で詳しく解説しています。
健康保険から自動的に返金される制度ではない
健康保険には、高額療養費のほか、傷病手当金、出産育児一時金、出産手当金、療養費など、さまざまな給付があります。
しかし、「選定療養費を支払った」という理由だけで、後日健康保険へ領収書を送れば同額が返ってくる制度はありません。
健康保険から受けられる代表的な給付について確認したい場合は、 健康保険の給付金一覧と申請方法 も参考にしてください。
健康保険の「療養費」と「選定療養費」は別物です。
名前に「療養費」と付いているため混同しやすいのですが、健康保険の療養費として後から払い戻しを受ける制度と、大病院受診時の選定療養費は同じものではありません。
病院独自の取扱いで返金されることはある
ただし、 一度支払った選定療養費は、どのような場合でも絶対に返金されないという意味ではありません。
医療機関によっては、一定の条件を満たした場合に返金する取扱いを設けていることがあります。
たとえば、受付時には紹介状を提出できなかったものの、病院が定める期限内に紹介状を提出した場合や、後から確認した結果、本来は選定療養費の徴収対象外となる受診だった場合などです。
ただし、これは全国一律の返金制度ではありません。
「後日紹介状を持っていけば必ず返金される」と考えないようにしてください。
返金の可能性を確認するときは、領収書を保管してください。
会計窓口へ、選定療養費を徴収した理由、後から紹介状を提出した場合の取扱い、返金制度の有無、手続期限などを確認するとよいでしょう。
医療費控除は健康保険の返金とは別の話
「選定療養費は医療費控除で戻るのか」という検索も多くありますが、ここも制度を分けて考える必要があります。
医療費控除は健康保険制度ではなく所得税の制度です。
そのため、仮に税務上の医療費控除の対象となる支出があったとしても、「支払った選定療養費そのものが健康保険から返金される」ということではありません。
また、医療費控除の対象になるかどうかは、支払った費用の性質や診療上の必要性などによって確認する必要があります。
税務上の判断については領収書を保管し、国税庁の最新情報や税務署、税理士などへ確認してください。
選定療養費の返金を考えるときは、まず「病院が返金する可能性があるのか」「健康保険の給付対象なのか」「税務上の医療費控除の話なのか」を分けることが重要です。
選定療養費とは何かを最後に整理
選定療養費とは、患者の選択によって一定の保険外の療養を受ける場合に負担する特別の料金です。
その中でも一般の方が目にする機会が多いのが、 紹介状を持たずに一定規模以上の大病院を受診した場合の特別料金 です。
大病院の選定療養費は、単に患者の負担を増やすために設けられているものではありません。
日常的な診療は地域の診療所やクリニック、高度・専門的な医療や救急医療は大病院という役割分担を進めることが制度の背景にあります。
まず押さえたいのは紹介状と病院の役割
急を要しない症状で大学病院や地域の基幹病院へ行こうとしているのであれば、最初から大病院へ直接行くのではなく、地域の医療機関で診察を受けることが基本です。
そこで専門的な検査や治療が必要と判断されれば、紹介状を書いてもらい、適切な大病院へつないでもらえます。
この流れで受診すれば、選定療養費の負担を避けられるだけでなく、これまでの診療情報を大病院へ引き継ぐことができます。
反対に、大病院での専門的な治療が終了した後は、地域の医療機関へ戻ることがあります。
再診時の選定療養費は、この逆紹介を進める仕組みと関係しています。
最後にポイントを整理します。
- 選定療養には大病院の初診・再診以外にも複数の種類がある
- 紹介状なしで一定の大病院を受診すると特別料金が発生することがある
- 初診は医科7,000円以上、歯科5,000円以上が一般的な制度上の目安
- 再診は医科3,000円以上、歯科1,900円以上が一般的な制度上の目安
- 実際の金額は病院によって異なる
- 紹介状がある場合は原則として初診時の特別料金の対象にならない
- 救急患者や一定の公費負担医療、労災などは対象外となる場合がある
- 救急車で搬送されても地域や状況によって徴収されるケースがある
- 子どもの医療費助成があっても選定療養費まで無料とは限らない
- 正当に徴収された料金が健康保険から自動的に戻る仕組みではない
これから大病院を受診する場合の確認事項
これから大病院を受診しようとしている場合は、選定療養費がかかるかどうかだけを調べるのではなく、受診方法全体を確認することをおすすめします。
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 紹介状は必要か | 選定療養費だけでなく、紹介状がなければ受診できない診療科もあるため |
| 選定療養費はいくらか | 病院ごとに実際の設定金額が異なるため |
| 予約は必要か | 紹介状があっても事前予約が必要な場合があるため |
| 持参書類は何か | 紹介状、健診結果、画像データ、お薬手帳などが必要な場合があるため |
| 救急時の取扱い | 時間外受診や救急搬送の取扱いが通常の外来と異なる場合があるため |
急を要しない症状であれば、最初に地域の診療所やかかりつけ医へ相談し、必要に応じて適切な大病院を紹介してもらう方法が基本です。
健康保険そのものの仕組みから確認したい場合は、 健康保険の仕組み・種類・給付内容の解説 もあわせて確認してみてください。
請求された理由が分からない場合は確認する
実際に病院の窓口で選定療養費を請求され、「なぜ自分が対象なのか分からない」ということもあると思います。
その場合は、選定療養費という言葉だけで判断せず、「紹介状がなかったためなのか」「再診時の定額負担なのか」「時間外診療など別の選定療養なのか」を確認してください。
選定療養には複数の種類があるため、同じ選定療養費という案内でも、この記事で中心的に説明してきた大病院の初診・再診とは別の料金を意味している場合があります。
領収書や診療明細書、病院から渡された案内は保管しておきましょう。
後から徴収理由や返金の可否を確認するときにも役立ちます。
なお、選定療養の対象となる医療機関、金額、徴収しない場合の取扱いなどは、制度改正や病院ごとの運用によって変わる可能性があります。
この記事で紹介した金額も一般的な目安としてお考えください。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別事情によって判断が変わることがあります。
選定療養費が発生するかどうかは、受診する医療機関、紹介状の有無、診療科、救急性、労災や公費負担医療の該当状況などによって異なります。
実際の受診については医療機関へ、健康保険については加入している保険者へ、税務上の医療費控除については税務署や税理士へ確認してください。
最終的な判断は専門家にご相談ください。