こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
36協定はいつから始まったのか、労働基準法第36条とどのような関係があるのか、旧36協定と新36協定では何が違うのか。
こうした疑問は、労務担当者や経営者の方から実際によくある相談です。
36協定とは、法定労働時間を超える残業や法定休日労働を行うために必要な労使協定です。
働き方改革、上限規制、特別条項、罰則、届出、有効期間、2024年問題などの言葉が出てくるため、初めて調べる方には少し複雑に感じられるかもしれません。
この記事では、36協定の始まりから現在の実務上の注意点まで、企業側と従業員側の双方に関係するポイントを中立的に整理します。
あなたが経営者でも、人事労務担当者でも、従業員側の立場で制度を確認したい方でも、まずは制度の全体像をつかめるように書いていきます。
- 36協定が1947年に始まった理由
- 労働基準法第36条との関係
- 旧36協定と新36協定の違い
- 企業が注意すべき実務ポイント

36協定はいつから始まったのか

まずは、36協定がいつ始まった制度なのかを確認します。
結論からいうと、36協定は戦後の労働法制の整備と深く関係しています。
単なる残業の届出書ではなく、労働時間を法律で規制する仕組みの中で作られた制度です。
ここを押さえておくと、なぜ36協定の締結や届出が必要なのか、かなり見えやすくなりますよ。
36協定の始まりは1947年

36協定は、 1947年に施行された労働基準法 とともに始まった制度です。
昭和22年のことですね。
戦後の日本では、労働者を守るための法律や制度が大きく整備されました。
その中で、労働時間についても「会社が自由に何時間でも働かせてよい」という考え方ではなく、法律で最低限のルールを決める方向に進みました。
当時の労働基準法では、法定労働時間を原則として 1日8時間、週48時間 と定めました。
現在は原則として1日8時間、週40時間ですが、36協定が始まった時点では週48時間が基準でした。
つまり、36協定は現在の週40時間制になってから急に出てきた制度ではなく、労働基準法ができた最初の段階から存在していた制度です。
ただ、法律で労働時間を決めたとしても、現実の仕事では、繁忙期、納期対応、急なトラブル、顧客対応、月末月初の事務処理など、法定労働時間を超えて働かざるを得ない場面があります。
そこで、会社と労働者側がきちんと協定を結び、労働基準監督署へ届け出た場合に限って、時間外労働や休日労働を可能にする仕組みが設けられました。
これが、いわゆる36協定です。
ここで大事なのは、36協定は「残業を自由に認めるための制度」ではないということです。
むしろ、原則として労働時間に上限を設けたうえで、例外として残業や休日労働を認めるための手続きです。
実務ではこの理解がかなり重要です。
36協定があるから安心、ではなく、36協定があるからこそ、その範囲内で適切に管理する必要があります。
36協定は、1947年の労働基準法制定とともに生まれた制度です。
名前だけが先にあったのではなく、労働時間規制の例外として作られた点が重要です。
社労士として会社の労務管理を見ていると、「36協定って最近の働き方改革でできたものですよね」と聞かれることがあります。
気持ちは分かります。
近年は上限規制や2024年問題で話題になることが多いからです。
ただ、制度の始まり自体は1947年で、近年変わったのは主に上限規制の厳格化です。
この違いを押さえると、歴史と現在の実務がつながります。
労働基準法第36条が根拠
36協定の正式な根拠は、 労働基準法第36条 です。
36協定という呼び方は、この条文番号に由来します。
実務ではサブロク協定と呼ぶことが多く、人事労務の現場ではかなり基本的な書類です。
とはいえ、名前は知っていても、なぜ第36条が必要なのかまでは意外と整理されていないこともあります。
労働基準法では、会社が従業員に法定労働時間を超えて働かせることを原則として制限しています。
現在の一般的な基準では、法定労働時間は原則として1日8時間、週40時間です。
また、法定休日は原則として週1日です。
この枠を超えて時間外労働や休日労働をさせる場合には、労働基準法第36条に基づく労使協定が必要になります。
ここでよくある誤解が、「従業員本人が残業に同意していれば問題ない」という考え方です。
もちろん、現場で本人の納得感を得ることは大切です。
ただし、法律上は本人の同意だけでは足りません。
労使協定の締結と、所轄労働基準監督署への届出が必要です。
ここを飛ばしてしまうと、たとえ残業代をきちんと支払っていても、時間外労働そのものの手続きに問題が残ることがあります。
特に中小企業では、社長と従業員の距離が近く、「みんな分かってくれているから大丈夫」と考えがちです。
ただ、労働基準法は社内の雰囲気だけで判断されるものではありません。
労働基準監督署の調査では、36協定の有無、届出日、有効期間、協定の範囲、実際の残業時間との整合性が確認されます。
労働基準法第36条で見るべきポイント
実務で見るべきポイントは、36協定を結んでいるかだけではありません。
誰が労働者代表になっているのか、代表者の選出手続きは適正か、協定の対象期間はいつからいつまでか、延長できる時間は何時間までか、特別条項の有無はどうなっているか。
このあたりをセットで確認する必要があります。
労働基準法の条文そのものを確認したい場合は、 (出典:e-Gov法令検索「労働基準法」) で最新の条文を確認できます。
法律は改正されることがあるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
36協定は、労働基準法第36条に基づく法律上の手続きです。
社内の合意や口約束だけでは、時間外労働・休日労働の根拠としては不十分です。
36協定の正式名称

36協定の正式名称は、一般的に 時間外労働・休日労働に関する協定届 とされています。
現場では36協定と呼ぶことが多いので、正式名称まで意識する機会は少ないかもしれません。
ただ、書類を作成したり、電子申請をしたり、労働基準監督署へ提出したりする場面では、正式名称を知っておくと手続きがスムーズです。
この書類は、会社が従業員に法定労働時間を超える時間外労働や法定休日労働を行わせる場合に、労使であらかじめ取り決めた内容を届け出るものです。
具体的には、時間外労働をさせる業務の種類、労働者数、1日・1か月・1年の延長時間、休日労働の内容、特別条項の有無などを記載します。
単なる形式的な紙ではなく、実際の労働時間管理の上限を示す大事な文書です。
ここで実務上よくあるのが、「36協定を作ったけれど、提出していなかった」というケースです。
これは本当に注意です。
36協定は、労使で協定を結ぶだけではなく、所轄の労働基準監督署へ届出をして初めて、時間外労働や休日労働を行わせるための手続きとして機能します。
作成したファイルを社内フォルダに保存しているだけでは足りません。
また、36協定は原則として事業場ごとに締結・届出が必要です。
本社、支店、営業所、工場、店舗などがある場合、ひとまとめにしてよいのか、それぞれ届出が必要なのかを確認する必要があります。
本社一括届出が使える場面もありますが、要件がありますので、何となくまとめて出すのは避けたいところです。
36協定で確認したい基本項目
| 確認項目 | 実務で見るポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 対象期間 | いつからいつまで有効か | 期限切れのまま残業させない |
| 労働者代表 | 適正に選出されているか | 会社が一方的に指名しない |
| 延長時間 | 月・年の上限が実態に合うか | 上限を超えた運用は違法リスク |
| 特別条項 | 臨時的な事情が明確か | 恒常的な残業の言い訳にしない |
36協定は、作成しただけでは足りません。
締結、届出、有効期間、実際の残業時間の管理まで含めて確認することが実務上のポイントです。
私が会社の労務チェックをする場合も、まず36協定の控えを見せてもらうことが多いです。
理由はシンプルで、残業の有無、勤怠管理、残業代、健康管理、労基署対応の入口になるからです。
36協定が整っていないと、その後の労務管理も崩れやすいんですよ。
制定された背景と労働改革
36協定が生まれた背景には、戦前から続いていた長時間労働の問題があります。
戦前の日本では、現在のように労働時間を広く規制する仕組みが十分ではありませんでした。
工場や事業場によっては、労働者が長い時間働くことが当たり前になりやすく、健康や生活への影響も大きかったと考えられます。
第二次世界大戦後、日本では労働関係の制度が大きく整備されました。
労働基準法は、その中核になる法律です。
労働条件の最低基準を法律で定め、使用者が一方的に不利な労働条件を押し付けることを防ぐ。
その考え方が、労働基準法の基本にあります。
36協定は、その労働基準法の中で、法定労働時間を超える労働を例外的に認める仕組みとして設けられました。
ここで少しややこしいのが、36協定には「規制」と「例外」の両方の性格があることです。
一方では、法定労働時間を超える労働を勝手にさせないための規制です。
もう一方では、会社が繁忙期や突発的な業務に対応できるよう、一定の手続きを踏めば時間外労働を可能にする例外でもあります。
実務では、この二面性を理解しておく必要があります。
会社側から見ると、36協定は業務を回すために必要な制度です。
従業員側から見ると、残業や休日労働が無制限に広がらないようにするための制度です。
どちらか一方だけに偏って考えると、運用を間違えます。
企業側の事情もありますし、従業員の健康や生活も当然大切です。
だからこそ、法令遵守を前提に、現実的な業務運営とのバランスを取る必要があります。
労働改革の中で36協定が持つ意味
36協定は、単なる届出書ではなく、会社と労働者側が時間外労働の範囲を事前に確認するための仕組みです。
つまり、会社が一方的に「忙しいから残業して」と決めるのではなく、労使でルールを決め、そのルールを行政にも届け出る流れになっています。
ここに制度としての意味があります。
実務では、36協定の内容を従業員に十分周知していない会社もあります。
協定は締結しているけれど、現場の管理職が内容を知らない。
これもよくある話です。
そうなると、現場判断で上限を超えた残業が発生したり、特別条項の回数管理が漏れたりします。
36協定は人事労務担当者だけが知っていればよい書類ではなく、管理職にも共有しておくべきルールです。
36協定の背景には、長時間労働を抑えつつ、現実の企業活動にも対応するという考え方があります。
実務では、会社を守るためにも、従業員を守るためにも、協定内容を現場まで落とし込むことが大切です。
工場法から労基法への流れ

36協定の歴史をもう少し深く理解するなら、1911年に制定された工場法にも触れておくと分かりやすいです。
工場法は、日本で初めて労働時間などに法的な規制を導入した法律とされています。
ただし、現在の労働基準法のように、すべての労働者に広く適用される包括的な法律ではありませんでした。
工場法は、主に工場で働く労働者を念頭に置いた法律で、対象となる事業場や労働者には限りがありました。
年少者や女性の保護など、当時としては重要な意味を持つ制度でしたが、社会全体の労働時間を広く統一的に規制する仕組みとしては十分ではありませんでした。
つまり、労働者保護の第一歩ではあったものの、現在の労働基準法とは制度の広がりが違います。
その後、戦後の労働改革の中で労働基準法が制定されました。
労働基準法は、労働時間、休憩、休日、賃金、割増賃金、年次有給休暇、就業規則、安全衛生につながる基礎的な考え方など、労働条件の最低基準を広く定める法律です。
この中で、時間外労働と休日労働の例外手続きとして36協定が位置づけられました。
この流れを見ると、36協定は突然出てきた制度ではなく、日本の労働者保護の歴史の中で整備されてきた仕組みだと分かります。
戦前の限定的な規制から、戦後の包括的な労働基準法へ。
その中で、労働時間に法律上の上限を置き、例外として時間外労働を認める36協定が作られたわけです。
実務で歴史を知るメリット
「歴史なんて実務に関係あるの?」と思うかもしれません。
うん、確かに日々の勤怠集計では歴史を意識する場面は少ないです。
ただ、36協定の歴史を知ると、制度の本質を間違えにくくなります。
36協定は残業を増やすための道具ではなく、法律の原則から外れる場合に、労使で条件を決めて行政に届け出るための制度です。
社労士試験の勉強でも、工場法から労働基準法への流れを理解していると、労働時間規制の考え方が頭に入りやすくなります。
企業実務でも同じです。
36協定、就業規則、勤怠管理、割増賃金、健康管理はバラバラではなく、労働時間管理という一本の線でつながっています。
36協定だけを単独で覚えるよりも、工場法から労働基準法へ進んだ流れを押さえると、社労士試験や労務実務でも理解しやすくなります。
旧36協定の上限なし問題
36協定が始まった当初は、現在のような罰則付きの明確な上限規制はありませんでした。
もちろん、労働時間の原則や36協定の届出という仕組みはありましたが、特別条項を設けることで、実務上かなり長い時間外労働が可能になっていた時期があります。
この点は、現在の36協定を理解するうえでかなり重要です。
旧36協定の問題としてよく言われるのが、特別条項を使うと残業時間が事実上青天井になりやすかったことです。
36協定は本来、法定労働時間を超える労働を例外的に認める制度です。
しかし、特別条項により「臨時的な特別の事情」がある場合には、限度時間を超える時間外労働を認める運用がされてきました。
その結果、制度上は一定の手続きがあっても、実際には長時間労働を十分に抑えられない場面がありました。
高度経済成長期以降、日本では長時間労働を前提に仕事を回す企業文化が広がった面があります。
もちろん、産業構造、人手不足、顧客対応、納期意識、管理職の働き方など、さまざまな要因があります。
36協定だけが原因という話ではありません。
ただ、旧36協定の特別条項が、長時間労働を制度面で許容しやすくしていた側面は否定しにくいかなと思います。
現在の実務では、 36協定があるから何時間でも残業させてよい という理解は通用しません。
特に、月45時間、年360時間、特別条項、年720時間、単月100時間未満、2か月から6か月平均80時間以内、月45時間超は年6か月までといった管理が必要になります。
ここを押さえずに残業を続けると、会社にとっても従業員にとっても大きなリスクになります。
旧36協定の感覚が残る会社の注意点
実際の相談でも、「昔からこのやり方で問題なかった」「繁忙期は毎年このくらい残業している」「特別条項があるから大丈夫だと思っていた」という声を聞くことがあります。
少し耳が痛い話かもしれませんが、昔の感覚のまま運用している会社は要注意です。
働き方改革後は、36協定の位置づけが大きく変わっています。
旧36協定の感覚で運用していると、現在の上限規制に対応できない可能性があります。
特別条項がある場合でも、時間数、回数、健康確保措置、実際の勤怠記録をセットで確認する必要があります。
残業時間の具体的なリスクについては、 残業50時間が続く場合の法律と現場リスク でも詳しく整理しています。
36協定の歴史を知ることは、単なる知識ではなく、今の会社の運用が古いままになっていないかを点検するきっかけになります。
36協定はいつから始まった制度が変わったのか

次に、36協定が始まった後、どのように制度が変わってきたのかを見ていきます。
特に実務で重要なのは、働き方改革によって罰則付きの上限規制が導入された点です。
過去の制度を知ることで、現在なぜ厳格な管理が求められているのかが見えてきます。
ここからは、時系列で押さえていきましょう。
1987年の労働時間短縮

1987年には、労働基準法の改正により、法定労働時間の短縮に向けた動きが進みました。
従来の週48時間制から、週40時間制へ移行していく流れです。
完全に一気に変わったわけではなく、段階的に施行され、1994年に原則週40時間制が本格化しました。
現在の労働時間管理の基礎になる大きな流れです。
この背景には、日本の労働時間が諸外国と比べて長いという国際的な批判や、生活と仕事のバランスを見直す社会的な流れがありました。
労働時間を短縮し、働きすぎを抑え、余暇や家庭生活とのバランスを取りやすくする。
そうした考え方が制度改正に反映されていきました。
実務上、この労働時間短縮の流れはかなり重要です。
法定労働時間が短くなれば、同じ働き方をしていても、法定時間外労働に該当する時間が増える可能性があります。
つまり、36協定の重要性が高まるわけです。
週48時間の時代と週40時間の時代では、会社が管理すべき残業の範囲が変わります。
中小企業の現場では、所定労働時間と法定労働時間が混同されていることがあります。
たとえば、会社の就業規則で1日7時間30分勤務と定めている場合、7時間30分を超えた時間は会社内では残業として扱うことがあります。
ただし、労働基準法上の時間外労働は、原則として1日8時間、週40時間を超えた部分です。
この違いを整理しておかないと、36協定や割増賃金の管理がずれてしまいます。
週40時間制と36協定の関係
現在の実務では、まず法定労働時間を把握し、そのうえで36協定の範囲内に収まっているかを確認します。
所定労働時間、法定労働時間、法定時間外労働、法定休日労働。
このあたりの言葉は似ていますが、意味が違います。
ここ、最初は混乱しやすいところですよ。
| 時期 | 主な内容 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 1947年 | 労働基準法制定 | 36協定の制度が始まる |
| 1987年 | 週40時間制へ改正 | 労働時間短縮の流れが進む |
| 1994年 | 週40時間制が原則化 | 現在の労働時間管理の基礎になる |
この流れを踏まえると、36協定は「昔からあるけれど、時代に合わせて重要性が高まってきた制度」といえます。
労働時間が短縮され、働き方の価値観が変わり、残業管理がより厳しく求められるようになったからです。
1998年の限度基準告示
1998年には、労働基準法第36条に関連して、時間外労働の限度基準が整備されました。
これは、36協定で定める延長時間について、一定の目安を示すものです。
現在の罰則付き上限規制の前段階として見ると分かりやすいと思います。
当時は、36協定を締結すれば時間外労働が可能になる一方で、どこまで延長できるのかについて、現在ほど強い法的な上限はありませんでした。
そこで、時間外労働の限度に関する基準が示され、原則としてどの程度までに抑えるべきかが整理されました。
ただし、この限度基準は現在のように罰則付きで厳格に適用されるものではなく、特別条項によって限度時間を超えることが可能でした。
この「特別条項で超えられる」という仕組みが、実務上は大きな論点でした。
本来、特別条項は臨時的な特別の事情がある場合に限って使うものです。
ところが、繁忙期が毎年ある、慢性的に人手不足である、通常業務が常に忙しい、といった事情で広く使われてしまうことがありました。
これでは、特別条項が例外ではなく、通常運用になってしまいます。
社労士として企業の労務管理を確認する際にも、過去の36協定を見ていると、特別条項の理由がかなり広く書かれているケースがあります。
たとえば、「業務繁忙のため」「受注増加のため」とだけ書かれていて、具体性が弱いものです。
現在の実務感覚では、もう少し具体的に、どのような臨時的事情なのかを整理しておきたいところです。
限度基準告示の実効性と限界
1998年の限度基準は、時間外労働を抑える方向性を示した点では意味がありました。
ただし、特別条項によって限度時間を超える余地が残っていたため、長時間労働を十分に抑えきれないという限界もありました。
ここが、後の働き方改革につながっていきます。
1998年の限度基準は、現在の上限規制につながる重要なステップです。
ただし、当時は特別条項を使うことで限度時間を超えられたため、実務上の抑止力には限界がありました。
ここで押さえておきたいのは、36協定の制度は最初から現在のように厳格だったわけではないということです。
段階的に規制が強化され、特に働き方改革で大きく変わりました。
会社の運用も、制度改正に合わせて更新していく必要があります。
2018年の働き方改革法

2018年には、働き方改革関連法が成立しました。
36協定に関しては、この法改正が非常に大きな転換点です。
なぜなら、時間外労働について 罰則付きの上限規制 が導入されたからです。
36協定の歴史の中でも、実務への影響がかなり大きい改正といえます。
それまでの36協定では、特別条項を使うことで事実上上限が曖昧になりやすい問題がありました。
しかし、働き方改革以降は、特別条項付き36協定を結んだ場合でも、超えてはいけない上限が法律上明確になりました。
つまり、「特別条項があるから大丈夫」という時代ではなくなったわけです。
一般的な上限としては、時間外労働は原則として月45時間、年360時間です。
臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満、2か月から6か月平均で80時間以内などの規制があります。
また、月45時間を超えられるのは、原則として年6か月までです。
ここで注意したいのは、月45時間や年360時間という数字だけを見て終わらないことです。
特別条項を使う場合には、年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内、月45時間超の回数制限など、複数の基準を同時に管理する必要があります。
勤怠システムで月ごとの残業時間だけ見ていると、複数月平均の管理が漏れることもあります。
これは実際によくある相談です。
働き方改革後の36協定では、特別条項を設けても上限があります。
月単位、年単位、複数月平均、回数制限をセットで見ること が実務上の重要ポイントです。
上限規制を管理する実務の考え方
会社としては、まず通常の36協定の範囲内で業務が回るように設計することが大切です。
月45時間を超える残業が毎月のように発生している場合、それは特別条項で処理する以前に、人員配置、業務量、納期設定、管理職の指示、業務フローを見直すサインかもしれません。
時間外労働の上限規制については、 (出典:厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」) で公式の考え方を確認できます。
制度や数値は法改正や行政資料の更新で変わる可能性がありますので、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
なお、上限規制を守っていても、従業員の健康状態に問題が出ている場合は別の対応が必要です。
法律上の上限内だから何もしなくてよい、という話ではありません。
産業医面談、医師の意見聴取、業務配分の見直し、管理職への教育など、会社としての安全配慮も重要になります。
2019年の新36協定施行
働き方改革関連法による新しい36協定のルールは、大企業では2019年4月1日から施行されました。
中小企業では2020年4月1日から施行されています。
この時期を境に、36協定は実務上かなり厳格に管理する制度へと変わりました。
新36協定の大きなポイントは、単に様式が変わっただけではありません。
特別条項を設ける場合でも、上限時間、月45時間を超えられる回数、健康確保措置、労使間の手続きなどを、より具体的に管理する必要があります。
つまり、紙を新様式に差し替えるだけでは不十分です。
実際の勤怠管理と連動させて初めて意味があります。
実務では、毎年同じように36協定を更新している会社ほど注意が必要です。
前年の協定書をコピーして、日付だけ変えて提出しているケースがあります。
もちろん、内容が実態に合っていれば問題ない場合もありますが、業務内容、人員数、繁忙期、残業実績、特別条項の必要性が変わっているなら、協定内容も見直すべきです。
また、担当者の交代があった会社では、更新漏れや様式違いが起こりやすいです。
前任者がどこに控えを保管していたのか分からない、電子申請のアカウントが分からない、労働者代表の選出手続きが残っていない。
こういう相談、けっこうあります。
36協定は毎年の手続きになりやすいからこそ、社内で管理ルールを決めておくと安心です。
新36協定では、特別条項があっても無制限に残業できるわけではありません。
特別条項は、臨時的な特別の事情がある場合に限って使うもの として管理する必要があります。
新36協定で会社が整えるべきこと
| 整える項目 | 具体的な対応 | 放置した場合のリスク |
|---|---|---|
| 届出管理 | 有効期間前に締結・届出を完了する | 届出前残業が違法となる可能性 |
| 代表者選出 | 民主的な方法で過半数代表者を選ぶ | 協定の有効性が問題になる可能性 |
| 勤怠管理 | 月・年・複数月平均を確認する | 上限超過に気づかない可能性 |
| 健康確保 | 長時間労働者への面談や業務調整を行う | 安全配慮義務上の問題が生じる可能性 |
労働基準監督署の調査では、36協定の届出状況や実際の残業時間との整合性が確認されることがあります。
監督署対応の実務については、 労働基準監督署が来る理由と調査対応の実務ポイント でも解説しています。
会社としては、36協定、勤怠記録、賃金台帳、就業規則をバラバラに管理せず、つながった資料として整えておくのが理想です。
2024年問題と猶予終了

2024年4月からは、これまで時間外労働の上限規制について猶予されていた一部の業種にも規制が適用されました。
代表的なものとして、建設業、自動車運転者、医師などがあります。
いわゆる2024年問題として取り上げられることが多い分野です。
これらの業種では、業務の性質や人手不足、地域の事情などにより、長時間労働が生じやすい実態があります。
建設業であれば工期や天候、現場移動、発注者との関係があります。
自動車運転者であれば配送ルート、荷待ち時間、交通事情、荷主との契約条件が影響します。
医師であれば地域医療、救急対応、宿日直、診療体制など、一般企業とは違う事情があります。
だからといって、上限規制を無視してよいわけではありません。
法令遵守を前提に、業務の組み立て方を見直す必要があります。
特に、取引先との関係が強い業種では、自社だけで残業削減をしようとしても限界があることがあります。
納期、発注条件、待機時間、急な仕様変更などが長時間労働の原因になっている場合は、社内努力だけでなく、取引条件の見直しも必要になるかもしれません。
実務で悩ましいのは、「法律は分かるけれど、人が足りない」「仕事を断ると売上が落ちる」「現場が回らない」という現実です。
うん、これは本当に難しいところです。
ただ、長時間労働を前提にした運用を続けると、従業員の離職、健康問題、労基署対応、未払残業代、採用難など、別の形で会社に返ってくることがあります。
短期的には大変でも、少しずつ労働時間を見える化し、業務の偏りを減らす取り組みが必要です。
2024年問題で確認したい実務項目
- 対象業種に該当するか
- 適用される上限規制の内容を確認しているか
- 36協定の様式や記載内容が現在の制度に合っているか
- 勤怠記録に待機時間や移動時間が適切に反映されているか
- 取引先や発注者との条件が長時間労働の原因になっていないか
- 健康確保措置や面談体制を整えているか
2024年問題は、36協定の書類だけで解決する話ではありません。
業務量、人員配置、取引条件、勤怠管理、健康管理をまとめて見直す必要があります。
このあたりは一般論だけで判断すると危険です。
業種別の上限規制や適用除外、経過措置、行政の最新資料を確認しながら整理する必要があります。
最終的な判断は専門家にご相談ください。
36協定はいつから始まったか総括
36協定は、1947年の労働基準法制定とともに始まった制度です。
労働基準法第36条に基づくため、36協定と呼ばれています。
制度の出発点は、法定労働時間を定める一方で、労使協定と届出により時間外労働や休日労働を例外的に認めるという仕組みでした。
その後、1987年の労働時間短縮、1998年の限度基準、2018年の働き方改革関連法、2019年以降の新36協定の施行を経て、現在は罰則付きの上限規制を前提に運用する制度へと変わっています。
つまり、36協定は昔からある制度ですが、現在の運用ルールは昔のままではありません。
ここが一番大事なところかなと思います。
企業の実務担当者や経営者の方にとって重要なのは、歴史を知ること自体ではなく、現在の36協定を適切に運用できているかを確認することです。
36協定が始まった年を知るだけでは、労務リスクは減りません。
自社の協定が有効か、実際の残業時間が協定の範囲内か、特別条項の使い方が適正か、従業員の健康管理ができているか。
ここまで確認して、初めて実務に役立ちます。
具体的には、次の点を見直しておくとよいです。
まず、36協定を事業場ごとに締結・届出しているか。
有効期間が切れていないか。
過半数代表者の選出手続きが適正か。
実際の残業時間が協定の範囲内か。
特別条項を恒常的に使っていないか。
月45時間超の回数を管理しているか。
これらは、労基署対応だけでなく、日常の労務管理でも重要です。
- 36協定を事業場ごとに締結・届出しているか
- 有効期間が切れていないか
- 過半数代表者の選出手続きが適正か
- 実際の残業時間が協定の範囲内か
- 特別条項を恒常的に使っていないか
- 月45時間超の回数を管理しているか
36協定は、会社を守るためだけの書類ではありません。
従業員の健康を守り、企業が安定して事業を続けるための基本的な労務管理の仕組みです。
採用時や労基署対応の場面でも、労働時間管理の土台として確認されやすいポイントです。
従業員から見ても、自分の働き方がどのようなルールで管理されているのかを知ることは大切です。
最後に確認しておきたい考え方
36協定は「出せば終わり」の書類ではなく、「出してから管理する」書類です。
ここを間違えると、届出はあるのに実態が伴っていない状態になります。
残業時間が多い会社では、36協定の作成だけでなく、業務の棚卸し、管理職への教育、勤怠システムの設定、残業申請ルール、健康確保措置まで見直していく必要があります。
労基署の監査で確認されやすい資料や整え方については、 労基署の監査項目と労務管理の整え方 も参考になります。
特に、36協定、就業規則、勤怠記録、賃金台帳はセットで見られやすい資料です。
36協定は、1947年に始まり、働き方改革によって大きく変わった制度です。
現在は、届出の有無だけでなく、上限時間、特別条項、実労働時間の管理まで含めて適正に運用することが求められます。
なお、この記事で紹介した内容は、一般的な制度理解を目的としたものです。
法改正や行政解釈により取扱いが変わる可能性がありますので、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別の会社の運用については、最終的な判断は専門家にご相談ください。