こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
雇用保険の基本手当を受けるためには、原則として離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要です。
倒産・解雇などによる特定受給資格者や特定理由離職者に該当する場合は、離職日以前1年間に通算6か月以上でも受給資格を満たす可能性があります。
ここで注意したいのは、単純に会社に在籍していた期間を数えるわけではないことです。
基本手当の受給資格では、離職日から1か月ごとに区切り、一定の勤務実績がある月を被保険者期間として数えます。
また、転職して勤務先が変わっていても、一定の条件を満たせば前職と現在の勤務先の期間を通算して判断できる場合があります。
一方で、雇用保険では「受給資格を判断する被保険者期間」と「所定給付日数などに関係する算定基礎期間」で通算の考え方が異なります。
ここを混同すると、「前職の期間が使えると思っていたのに使えなかった」「1年間働いたのに12か月として数えられなかった」といった行き違いが起こりやすくなります。
この記事では、加入期間と被保険者期間の違い、12か月・6か月の受給要件、11日・80時間の数え方、転職した場合の通算まで実務目線で整理します。
- 雇用保険の加入期間と被保険者期間の違い
- 基本手当に必要な12か月・6か月の考え方
- 11日・80時間による被保険者期間の数え方
- 転職や空白期間がある場合の通算ルール

雇用保険の加入期間は通算できる?
雇用保険の期間を考えるときは、まず「何のために期間を数えているのか」を整理することが重要です。
失業手当の受給資格を確認するときに使う被保険者期間と、所定給付日数などを確認するときに使う算定基礎期間は、似ているようで別の概念です。
特に「1年間働いたから失業手当をもらえるはず」という考え方は、実務では注意が必要です。
基本手当の受給資格では、在籍した年月だけではなく、月ごとの勤務実績を確認します。
反対に、所定給付日数を考える場面では、雇用保険の被保険者であった期間をどこまで通算できるかという別のルールが関係します。
まずはこの二つを切り分けると、その後の11日・80時間の基準や転職時の通算もかなり理解しやすくなります。
加入期間と被保険者期間は別のもの
雇用保険について相談を受けていると、「雇用保険に1年間加入していたので、失業手当はもらえますよね」という質問がよくあります。
このとき最初に整理したいのが、日常的に使う 加入期間と、基本手当の受給資格を判定する被保険者期間は同じものではない という点です。
そもそも「加入期間」という言葉は、日常会話では分かりやすいのですが、基本手当の受給資格を判定するときには、法律上の「被保険者期間」を確認します。
一方、基本手当を何日受けられるかという所定給付日数などでは「算定基礎期間」という別の期間が関係します。
| 区分 | 被保険者期間 | 算定基礎期間 |
|---|---|---|
| 主な用途 | 基本手当の受給資格判定 | 所定給付日数などの判定 |
| 基本的な考え方 | 1か月ごとに勤務実績を確認 | 原則として被保険者だった期間を確認 |
| 重要な基準 | 11日以上、または一定の場合に80時間以上 | 過去の被保険者期間・空白期間・給付歴などを確認 |
| 代表的な疑問 | 失業手当を受ける資格があるか | 雇用保険に何年加入していた扱いになるか |
基本手当を受けられるかどうかを判断するときに重要なのは 被保険者期間 です。
離職日から1か月ずつさかのぼり、その区間ごとに賃金支払基礎日数などを確認して、受給資格上の「1か月」として数えられるかを判定します。
そのため、実際に会社へ12か月在籍していても、被保険者期間が必ず12か月になるとは限りません。
在籍期間と被保険者期間がずれることがある
例えば、1年間在籍していても、途中に長期間の欠勤や無給期間があり、11日基準や80時間基準を満たさない区間があれば、その区間は基本手当の受給資格を判定する被保険者期間に算入されないことがあります。
逆に、「出勤日数が少ないから対象外だろう」と考えていても、有給休暇などが賃金支払基礎日数に含まれたり、11日未満でも一定の場合に80時間以上という基準で算入できたりすることがあります。
実務上のポイント
「1年間会社に在籍していた」という事実だけでは、被保険者期間が12か月あるとは限りません。
受給資格を確認するときは、在籍年月ではなく、離職票に記載された被保険者期間算定対象期間や賃金支払基礎日数などを確認することが基本です。
雇用保険の加入要件とも別の話
さらに、「そもそも雇用保険に加入する条件」と「基本手当を受けるための被保険者期間」も別の話です。
雇用保険の適用では、原則として週の所定労働時間などの加入要件を確認します。
一方、この記事で中心的に扱っているのは、すでに雇用保険の被保険者であった方について、離職後に基本手当を受けられるだけの被保険者期間があるかという問題です。
「週20時間以上働いているから失業手当を受けられる」「雇用保険に加入していたから必ず受給できる」という関係ではありません。
加入していたことを前提に、その中から受給資格上何か月の被保険者期間があるかを改めて確認します。
この区別を最初に理解しておけば、これから説明する12か月要件や転職時の通算を判断するときにも迷いにくくなります。
失業の受給資格は原則12か月必要

一般的な離職者が雇用保険の基本手当を受けるには、原則として 離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上 必要です。
ここでいう「2年間」は、単に雇用保険へ2年間加入していなければならないという意味ではありません。
離職日からさかのぼって、受給資格の判定に使用できる被保険者期間を探す範囲です。
これを算定対象期間といいます。
したがって、2年間の中に転職があって勤務先が複数に分かれていても、それだけで不利になるわけではありません。
それぞれの離職票などから被保険者期間として数えられる月を確認し、通算して12か月以上になるかを見ていきます。
原則的な受給資格
- 離職の日以前2年間を確認する
- その中に被保険者期間が通算12か月以上必要
- 被保険者期間は単なる在籍期間ではない
- 現在、雇用保険上の失業の状態にあることも必要
12か月は連続している必要はない
「通算12か月」ですので、必ず同じ会社で連続して12か月働かなければならないわけではありません。
例えば、A社で被保険者期間が8か月あり、その後に転職してB社で5か月の被保険者期間がある場合、過去の受給資格や算定対象期間などに問題がなければ、複数の離職票に係る被保険者期間を確認して受給資格を判定することがあります。
この例では、単純なイメージとしては8か月+5か月で13か月です。
ただし、実際にはA社・B社それぞれについて「在籍何か月」という数字をそのまま足すのではなく、雇用保険法上の被保険者期間として何か月認められるかを確認します。
被保険者期間があっても失業状態でなければ受給できない
また、12か月要件を満たせば自動的に基本手当が振り込まれるわけではありません。
基本手当は、離職した方の生活を支えながら再就職を促進するための給付です。
そのため、働く意思と能力があり、求職活動をしているにもかかわらず就職できていないという「失業」の状態にあることが必要です。
例えば、離職後しばらく働く意思がない場合や、病気などによってすぐに働くことができない場合には、被保険者期間が12か月以上あっても、その時点では通常の基本手当の受給条件を満たさないことがあります。
「12か月ある=必ず基本手当を受給できる」ではありません。
被保険者期間は受給資格を確認する重要な要件の一つですが、失業状態や求職申込みなど、ほかの要件もあわせて確認されます。
基本手当の受給資格については、厚生労働省が原則として離職前2年間に被保険者期間12か月以上必要であることなどを案内しています。
制度の最新情報は公式情報で確認しておくと安心です。
(出典:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」)
基本手当全体の条件や申請の流れについては、 失業手当のもらい方|条件・金額・申請手順のポイント で詳しく整理しています。
特定理由離職者などは6か月でも可
基本手当の受給資格は原則12か月ですが、すべての離職者に同じ基準が適用されるわけではありません。
特定受給資格者や特定理由離職者 に該当する場合には、原則の12か月要件を満たさなくても、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格を満たす可能性があります。
そのため、「半年しか雇用保険に入っていないから失業手当は絶対にもらえない」と決めつけるのも適切ではありません。
離職理由によって適用される基準が変わるためです。
| 離職者の区分 | 確認する期間 | 必要な被保険者期間 |
|---|---|---|
| 一般の離職者 | 離職日前2年間 | 通算12か月以上 |
| 特定受給資格者・特定理由離職者 | 離職日前1年間 | 通算6か月以上でも可 |
特定受給資格者と特定理由離職者
特定受給資格者には、倒産や解雇など、本人の意思だけでは避けにくい事情で離職した方などが含まれます。
特定理由離職者についても、有期労働契約が一定の事情で更新されなかった場合や、正当な理由のある自己都合による離職など、制度上定められたケースがあります。
ただし、ここで注意していただきたいのは、会社が離職時に「会社都合ですよ」と説明したから自動的に特定受給資格者になるわけでも、本人が「やむを得ず辞めた」と考えているだけで特定理由離職者になるわけでもないことです。
離職理由については、離職票の記載内容、本人と会社双方の主張、雇用契約書、更新の経緯、退職に至った事情などを踏まえ、最終的にはハローワークで確認されます。
6か月要件でも数え方は同じ
6か月要件が適用される場合でも、「会社に6か月在籍したか」だけを見るわけではありません。
受給資格上の被保険者期間として、11日以上の賃金支払基礎日数がある区間などを数え、その合計が6か月以上あるかを確認します。
必要な場合には後述する80時間基準も関係します。
例えば6か月間在籍していても、そのうち1か月について賃金支払基礎日数・時間数が基準を満たさなければ、被保険者期間としては5か月しかないという可能性があります。
6か月在籍していれば必ず受給できるわけではありません。
まず特定受給資格者・特定理由離職者などに該当するかを確認し、そのうえで受給資格上の被保険者期間が6か月以上あるかを判断します。
離職理由について会社と認識が異なる場合や、契約更新を希望していたのに更新されなかった場合などは、事情が分かる資料を整理してハローワークへ相談することが重要です。
実務でも「自己都合と記載されているから仕方がない」と考えている方がいますが、実際の離職事情と離職票の内容に相違がある場合には確認できる余地があります。
反対に、単に本人が納得できないというだけで区分が変更されるものでもありません。
事実関係を整理して確認する姿勢が大切です。
会社都合による失業手当の条件については、 会社都合の失業手当はいつから?
給付日数と条件を実務で確認も参考にしてください。
被保険者期間は11日以上で数える

基本手当の受給資格で使う被保険者期間は、暦月の1日から末日までを単純に数えるわけではありません。
原則として 離職日を基準として1か月ごとに区切り 、その区間に賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある場合、その区間を被保険者期間1か月として数えます。
この「1か月ごとに区切る」という考え方が、被保険者期間を理解するうえで非常に重要です。
離職日を基準に1か月ずつさかのぼる
例えば10月15日に離職した場合は、おおむね次のようにさかのぼって確認します。
- 9月16日から10月15日
- 8月16日から9月15日
- 7月16日から8月15日
- 6月16日から7月15日
会社の給与計算が毎月1日から末日までであっても、受給資格の被保険者期間は給与の締日に合わせて単純に数えるわけではありません。
離職日を起点として1か月ずつ区切るため、給与明細の「何月分」という表示だけを見ても正確に判断できない場合があります。
賃金支払基礎日数は実出勤日数だけではない
次に確認するのが「賃金支払基礎日数」です。
名称からすると実際に出勤した日だけを数えるように感じますが、必ずしもそうではありません。
賃金支払基礎日数とは、その名のとおり賃金の支払いの基礎となった日数です。
一般的には、実際に勤務した日だけでなく、有給休暇を取得して賃金が支払われた日や、休業手当の支払対象となった日などが含まれることがあります。
給与形態によって計算の見方も異なるため、「出勤簿の出勤日が10日だった」という一点だけで判断しないことが重要です。
出勤日数と賃金支払基礎日数は必ずしも同じではありません。
例えば実出勤が10日でも、有給休暇を取得した日が賃金支払基礎日数に含まれ、結果として11日以上になることがあります。
反対に、会社へ在籍していても無給欠勤が続いている場合などは、在籍日数をそのまま賃金支払基礎日数として考えることはできません。
1か月未満の端数が出る場合
入社日と離職日の関係によっては、最後に1か月未満の端数期間が残ることがあります。
この場合も、一定の条件を満たせば2分の1か月の被保険者期間として計算されることがあります。
基本的には、被保険者となった日から最初の区切りの前日までの期間が15日以上あり、かつその期間について賃金支払基礎日数が11日以上あるかなどを確認します。
つまり、被保険者期間は必ず整数の「1か月、2か月、3か月」だけになるとは限りません。
被保険者期間が11か月半や5か月半など、受給資格の基準ぎりぎりになる場合には、自己計算だけで結論を出さない方がよいでしょう。
離職票の記載内容や資格取得日・資格喪失日をもとに、ハローワークで正確に確認することをおすすめします。
私も実務で離職票を確認するときは、「何か月在籍していたか」ではなく、各被保険者期間算定対象期間と賃金支払基礎日数を一つずつ確認します。
特にシフト勤務、休職、欠勤、有給休暇が多い方は、カレンダー上の在籍期間と受給資格上の被保険者期間がずれることがあります。
11日未満でも80時間以上なら算入
勤務日数が11日に届かない月があるからといって、すぐに被保険者期間へ算入できないと判断する必要はありません。
現在の制度では、11日以上という日数基準だけで必要な被保険者期間に達しない場合、 賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上ある期間 についても被保険者期間として計算できる仕組みがあります。
この時間数基準は、令和2年8月1日以降の離職について設けられた重要なルールです。
短い日数で長時間働く方などが、日数基準だけでは不利になることを考慮した仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
まず11日基準で数え、足りない場合に80時間を確認する
ここは少し細かいのですが、実務上大切なポイントです。
「11日以上または80時間以上だから、最初からどちらか好きな方で数える」というより、法律上はまず11日以上の期間を被保険者期間として計算し、それだけでは受給資格に必要な12か月または6か月に達しない場合に、80時間以上の期間も含めて確認するという構造になっています。
読者の立場では、 11日未満の月があっても、80時間以上なら受給資格につながる可能性がある と覚えておけばよいでしょう。
| 勤務例 | 勤務実績 | 考え方 |
|---|---|---|
| 週4日程度勤務 | 月12日勤務 | 11日以上のため1か月になり得る |
| 1日10時間を8日勤務 | 8日・80時間 | 11日未満でも時間基準で算入できる可能性 |
| 1日9時間を9日勤務 | 9日・81時間 | 時間基準を満たす可能性 |
| 1日6時間を6日勤務 | 6日・36時間 | 日数・時間とも基準未満 |
例えば1日10時間の勤務を月8日行っている場合、勤務日数だけを見ると11日に届きません。
しかし、賃金支払の基礎となった時間が10時間×8日=80時間となるので、日数基準だけでは必要月数に届かない場合に、時間基準によって1か月として扱われる可能性があります。
シフト勤務では特に確認したい
80時間基準が特に重要になるのは、シフト制で1か月の勤務日数が少ない方です。
例えば、長時間勤務を週2回程度行う働き方では、毎月の出勤日数が8日から10日程度になることがあります。
この場合、「毎月11日未満だから被保険者期間にはならない」と考えてしまうと、実際の受給資格を過小評価する可能性があります。
逆に、11日未満であり、時間数も80時間未満であれば、その期間については1か月として数えられない可能性があります。
11日未満の期間がある場合は、80時間以上になっていないかも確認しましょう。
特に「あと1か月あれば12か月になる」「6か月要件まであと少し」という方は、勤務日数だけで諦めず、離職票や勤務記録を確認することが重要です。
なお、ここで確認するのも単純な「会社にいた時間」ではなく、賃金の支払の基礎となった時間数です。
休憩時間や賃金支払いの対象とならない時間などを自己流で足し上げると誤差が出る可能性があります。
受給資格がぎりぎりの場合は、給与明細だけではなく、離職票、出勤簿、タイムカードなど会社が作成した記録も含めて確認するとよいでしょう。
制度は今後改正される可能性もあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
雇用保険の加入期間を通算する条件
現在の会社だけでは被保険者期間が足りなくても、前職の期間を含めて判断できる場合があります。
転職しただけで、それまでの雇用保険の記録が当然にゼロになるわけではありません。
一方で、ここからは用語の区別がさらに重要になります。
基本手当の受給資格に使う「被保険者期間」と、所定給付日数などに使う「算定基礎期間」では、過去の期間をどこまで使えるかについて異なるルールがあります。
「空白が1年を超えたらリセット」「給付を受けたらリセット」という説明を見かけることがありますが、それだけを覚えると判断を誤ることがあります。
ここからは、転職を繰り返している方が特に迷いやすいポイントを、受給資格と算定基礎期間を分けながら確認します。
転職しても被保険者期間は通算できる
雇用保険は、勤務先が変わるたびにすべての被保険者期間がゼロから始まる制度ではありません。
基本手当の受給資格を判定するときは、離職日前の算定対象期間に含まれる複数の勤務先の被保険者期間を確認し、通算して12か月または6か月になるかを見ることがあります。
したがって、現在の勤務先で数か月しか働いていないからといって、その勤務先だけで受給資格の有無を判断するのは適切ではありません。
前職の離職票も使って確認する場合がある
例えば、A社で被保険者期間が8か月あり、その後にB社へ転職してB社で5か月働いて離職したとします。
A社の離職だけでは原則の12か月要件を満たしておらず、その後B社の離職日から見た算定対象期間にA社の被保険者期間も含まれているのであれば、A社とB社の離職票を使って順次被保険者期間を確認することがあります。
イメージ
A社の被保険者期間8か月+B社の被保険者期間5か月=合計13か月となるのであれば、他の要件も満たすことで原則12か月の受給資格要件を満たす可能性があります。
ただし、「A社に8か月在籍した」「B社に5か月在籍した」という在籍月数をそのまま足すわけではありません。
それぞれの離職について、11日基準・80時間基準などを用いて受給資格上の被保険者期間が何か月あるかを確認する必要があります。
被保険者番号は原則として引き継ぐ
雇用保険の被保険者番号は、基本的には勤務先が変わっても同じ番号を使用します。
採用時の手続きをしていると、前職の雇用保険被保険者証が見つからない、被保険者番号が分からないというケースは珍しくありません。
その場合も、会社側が資格取得届を出す際に、氏名、生年月日、前職などの情報から過去の記録を確認できる場合があります。
そのため、被保険者証を紛失したから過去の加入記録まで消えてしまうわけではありません。
被保険者番号が新しくなったように見えても、そのままにしない方がよいケースがあります。
同一人物について複数の記録が存在している場合などは、ハローワークで確認が必要になることがあります。
過去の勤務先が分かる資料や被保険者証、離職票などが手元にあれば保管しておきましょう。
また、複数の離職歴がある場合には、過去の離職についてすでに基本手当の受給資格決定を受けているかどうかなども関係します。
この点は単純な「転職したかどうか」だけでは判断できません。
私が相談を受けた場合も、まず現在の会社の加入期間だけを見るのではなく、直近数年間の勤務先、各入退社日、離職票の有無、過去にハローワークで受給手続きをしているかを時系列で整理します。
雇用保険の通算は、この時系列整理が非常に重要です。
空白期間が1年を超えると通算できない

雇用保険の加入期間を調べていると、「転職の空白期間が1年を超えると、それまでの加入期間はリセットされる」という説明を目にすることがあります。
この説明は特に 算定基礎期間 を考える場面では重要ですが、基本手当の受給資格に使う「被保険者期間」と完全に同じ意味で捉えないことが大切です。
算定基礎期間では1年超の空白が重要
所定給付日数などを決める際に使用する算定基礎期間については、前の被保険者資格喪失から次の資格取得までに1年を超える空白がある場合、その空白より前の被保険者であった期間は原則として通算されません。
例えば、A社で5年間雇用保険に加入した後、1年を超えて雇用保険の被保険者ではない期間が続き、その後B社へ就職した場合、B社を離職した際の算定基礎期間についてA社時代の期間をそのまま合算することはできません。
| ケース | 算定基礎期間の考え方 |
|---|---|
| A社離職後6か月でB社へ加入 | 他の要件を満たせば前後を通算できる |
| A社離職後1年を超えてB社へ加入 | 原則として空白前の期間は通算しない |
| 空白中は雇用保険未加入のアルバイト | その期間自体は被保険者期間にならない |
受給資格の被保険者期間では算定対象期間を見る
一方、基本手当を受けられるかという受給資格では、原則として離職日前2年間に被保険者期間が12か月以上あるかを確認します。
したがって、受給資格については「1年を超えた瞬間に過去の被保険者期間という記録そのものが消える」と理解するのは正確ではありません。
まず離職日前2年間という算定対象期間の中に、受給資格の判定に使える被保険者期間がどれだけ残っているかを確認します。
ただし、1年を超えて雇用保険に加入していない期間があると、通常は離職日前2年間の中に12か月の被保険者期間を確保すること自体が難しくなります。
そのため、結果として前職の期間を使って12か月要件を満たせないケースが多くなります。
「空白1年」という基準だけで受給資格を判断しないでください。
受給資格では離職日前2年間の被保険者期間、算定基礎期間では資格喪失と再取得の間の空白など、それぞれ別のルールを確認する必要があります。
空白期間中のアルバイトにも注意
空白期間中にアルバイトをしていたとしても、その働き方が雇用保険の被保険者にならないものであれば、その期間を被保険者期間として足すことはできません。
逆に、本人は「単なるアルバイトだから雇用保険には入っていない」と思っていても、実際には加入要件を満たして資格取得されている場合もあります。
過去の記録が不明な場合には、ハローワークで被保険者記録を確認することができます。
転職回数が多い方の場合は、頭の中だけで計算しようとすると混乱しやすいので、勤務先、入社日、離職日、雇用保険の加入有無を時系列で一覧にすると判断しやすくなります。
基本手当の受給で加入期間はリセット
過去の勤務期間を通算するときは、空白期間だけでなく、過去に雇用保険の受給資格を取得したことや、基本手当などの給付を受けたことがあるかも非常に重要です。
一般には「失業手当をもらうと雇用保険の加入期間がリセットされる」と説明されることが多いのですが、ここも 受給資格に使う被保険者期間と、所定給付日数に使う算定基礎期間を分けて理解する必要があります。
算定基礎期間は給付を受けたかが重要
算定基礎期間については、過去に基本手当や特例一時金など一定の給付を受けた場合、その給付に係る離職以前の被保険者であった期間は、その後の算定基礎期間に含まれない取扱いになります。
再就職手当など、基本手当に相当する給付を受けている場合についても注意が必要です。
「転職したからリセット」ではありません。
転職そのものではなく、空白期間、過去の給付歴、どの期間を何の目的で計算しているかによって通算の可否が変わります。
被保険者期間では過去の受給資格も確認する
さらに注意したいのが、基本手当の受給資格判定に使う被保険者期間です。
雇用保険法では、最後に被保険者となった日前に過去の離職について基本手当の受給資格などを取得したことがある場合、その受給資格に係る離職以前の被保険者であった期間を、新しい受給資格の被保険者期間として重ねて使わない仕組みになっています。
そのため、 「実際に基本手当を1日受給したかどうか」だけで、新しい受給資格に過去の期間を使えるかを判断するのは危険です。
受給手続きをしたが、基本手当を受け取る前に再就職したケースは特に確認が必要です。
過去に受給資格決定を受けているか、どの離職に基づく資格なのか、給付を実際に受けているかによって、確認すべき制度上の期間が異なります。
「1円も受給していないから前職分は必ず使える」と自己判断せず、ハローワークで過去の受給資格記録を確認してください。
具体例で考える
例えばA社で長期間働いた後に離職し、ハローワークで基本手当の受給手続きを行い、その後B社へ再就職したケースを考えます。
B社を再び離職したとき、「A社の勤務期間が長かったから、今回も全部足せるだろう」と考えたくなりますが、過去のA社離職について受給資格がどのように処理されているか、給付を受けているかによって扱いが変わります。
一方、A社の被保険者期間が短く、その離職時点ではそもそも受給資格を満たさず、その後B社へ就職したようなケースでは、B社離職時の算定対象期間の中でA社とB社の被保険者期間を通算して受給資格を判定することがあります。
この違いは、単に「失業手当をもらった・もらっていない」という二択だけでは説明しきれません。
雇用保険法では、基本手当の受給資格に使用する被保険者期間と、所定給付日数に使用する算定基礎期間についてそれぞれ規定されています。
厳密な取扱いを確認したい場合は法令そのものも確認できます。
(出典:厚生労働省「雇用保険法」第13条・第14条・第22条)
実務では、過去に失業給付の手続きをした記憶がある方には、「いつ離職したか」「ハローワークで受給資格決定を受けたか」「基本手当を受けたか」「再就職手当を受けたか」まで確認することが大切です。
算定対象期間は延長できる場合がある
基本手当の受給資格では、原則として離職日前2年間の中に被保険者期間が12か月以上あるかを確認します。
しかし、病気やけが、出産、育児など一定の事情によって長期間賃金を受けられなかった方に、機械的に離職前2年間だけを適用すると、本来受給資格を得られるはずだった期間が計算から外れてしまうことがあります。
そこで、一定の理由により 引き続き30日以上、賃金の支払を受けることができなかった期間 がある場合には、その日数を算定対象期間に加算できる仕組みがあります。
最大4年間までさかのぼれる場合がある
一般の離職者については通常、離職日前2年間が算定対象期間です。
しかし、法律上認められる理由で30日以上継続して賃金の支払いを受けることができなかった場合、その日数を2年間に加算し、一定の場合には最大4年間まで算定対象期間を広げることができます。
算定対象期間の延長が関係する可能性がある事情
- 病気やけがで長期間賃金を受けられなかった
- 出産に伴い長期間賃金を受けられなかった
- 育児など一定の理由で長期間賃金を受けられなかった
- その他、制度上認められる理由がある
例えば、離職日前2年間だけを見ると被保険者期間が10か月しかなくても、その前に長期間の休業があり算定対象期間の延長が認められるのであれば、さらに前の被保険者期間まで確認できる可能性があります。
そのため、「2年以上前に働いた期間だから絶対に使えない」と最初から除外するのは早い場合があります。
休職していたというだけで自動的に延長されるわけではない
注意したいのは、「会社を休んでいた期間が30日以上あれば何でも延長できる」という制度ではないことです。
疾病、負傷など制度上の一定の理由により、引き続き30日以上賃金の支払いを受けることができなかったことなどが要件となります。
そのため、有給で休職していた場合、休業中も賃金が支払われていた場合、単なる自己都合による欠勤である場合などは、同じように扱われるとは限りません。
実際に確認するときは、休業期間だけでなく、休業理由、賃金の支給状況、会社の記録などを整理しておくことが重要です。
算定対象期間の延長と受給期間の延長は別の制度です。
算定対象期間の延長は、「受給資格を判断するために過去の被保険者期間をどこまでさかのぼって確認できるか」という制度です。
一方、受給期間の延長は、離職後に病気・けが・妊娠・出産・育児などによってすぐ働けない場合に、基本手当を受けられる期間を延ばす制度です。
離職前の事情と離職後の事情を分ける
この二つは名前が似ているため、相談でも非常に混同されやすいところです。
離職する前に長期間休業していたため「12か月の被保険者期間が足りない」という問題では、算定対象期間の延長が関係する可能性があります。
一方、すでに離職した後で「今は病気のためすぐ働けないので、求職活動を開始できない」という問題であれば、受給期間の延長を検討する場面です。
どちらも「延長」という言葉を使いますが、解決しようとしている問題が違います。
長期休業がある方については、いつからいつまで休んでいたか、その期間に賃金が支払われたか、どのような理由だったかを整理してハローワークへ確認するとスムーズです。
受給資格がないと思っていた方でも、算定対象期間を延長することで結果が変わる可能性があります。
離職票で被保険者期間を確認する

自分の被保険者期間が何か月あるのか確認したい場合は、まず 雇用保険被保険者離職票-2 を確認しましょう。
離職票-2には、被保険者期間算定対象期間、賃金支払基礎日数、賃金額、離職理由など、基本手当の受給資格や給付額を確認するための重要な情報が記載されています。
「自分は12か月あるだろうか」と考えるとき、記憶だけで勤務日数を数えるより、まず離職票の記載内容を見ることが実務的です。
| 確認する項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 被保険者期間算定対象期間 | 離職日からさかのぼった各期間 |
| 賃金支払基礎日数 | 原則として11日以上あるかを確認 |
| 賃金支払基礎時間数 | 必要な場合に80時間基準を確認 |
| 資格取得日 | いつから被保険者だったかを確認 |
| 離職理由 | 12か月要件か6か月要件かに関係する可能性 |
離職票-2は勤務実態と照らして確認する
会社側は離職証明書を作成する際、賃金台帳、出勤簿、雇用契約の内容などをもとに、被保険者期間算定対象期間や賃金支払基礎日数を記載します。
離職した本人も、離職票が届いたら「会社が作った書類だから間違いないだろう」とそのままにするのではなく、自分の勤務実態と大きく違っていないか確認しておくことをおすすめします。
特に、長期欠勤、有給休暇、休業、勤務日数の変動などがある場合には、月ごとの数字に疑問がないか見てください。
次のような場合は特に確認しましょう。
- 12か月要件ぎりぎりになりそう
- 6か月要件ぎりぎりになりそう
- 11日未満の期間が複数ある
- 80時間基準を使えそうな期間がある
- 有給休暇を多く取得した月がある
- 前職の離職票も通算する必要がある
転職歴があるなら前職の離職票も確認する
現在の勤務先だけでは12か月に足りない場合でも、過去の被保険者期間を使用できるケースがあります。
その場合には、直近の離職票だけでなく、その前の勤務先の離職票も必要になることがあります。
複数社で勤務していた方は、過去の離職票を処分せず保管しておくとよいでしょう。
手元に離職票がない、そもそも交付を受けた記憶がないという場合には、ハローワークへ相談してください。
過去の雇用保険記録が分からない場合
「何年も前の会社なので被保険者番号が分からない」「会社名は覚えているが加入していたか分からない」という相談もあります。
このような場合でも、過去の被保険者記録についてハローワークで確認できることがあります。
本人確認書類や過去の勤務先が分かる資料など、案内された書類を準備して相談するとよいでしょう。
また、被保険者番号が複数あるように見える場合や、転職先で新しい番号が付いているように見える場合も、自己判断で「前の記録は消えた」と考えず確認することが重要です。
離職票の数字に疑問がある場合は、そのまま受給資格がないと諦めないでください。
給与明細、タイムカード、出勤簿の写し、雇用契約書など勤務実態が分かる資料があれば整理し、ハローワークへ相談しましょう。
離職票の見方や受け取り方については、 ハローワークの離職票とは?
受け取り方と失業保険手続きを整理で詳しく解説しています。
実務では、離職票を見ればすべて一瞬で分かるというより、「離職票の数字と実際の勤務状況に矛盾がないか」を確認することが大切です。
特に受給資格が1か月差で決まる方にとっては、一つの期間の取扱いが重要になることがあります。
雇用保険の加入期間通算を確認しよう
雇用保険の加入期間を通算できるか確認するときは、単純に勤務した会社の在籍期間を足すのではなく、まず 基本手当の受給資格に使う被保険者期間 と 被保険者であった期間を表す算定基礎期間 を分けて考えることが重要です。
ここまで見てきたとおり、「加入期間」という一つの言葉だけで考えようとすると、12か月要件、1年の空白、過去の受給資格、所定給付日数など異なる制度のルールが混ざってしまいます。
- 一般の離職者は原則として離職日前2年間に被保険者期間12か月以上
- 特定受給資格者・特定理由離職者などは離職日前1年間に6か月以上でも可
- 被保険者期間は原則11日以上の区間を1か月として数える
- 11日基準だけで足りない場合は80時間以上の時間基準も確認する
- 転職しただけで被保険者期間が直ちにゼロになるわけではない
- 算定基礎期間では1年を超える空白が通算に影響する
- 過去の受給資格や基本手当等の給付歴も確認する
- 病気や出産などがあれば算定対象期間を延長できる場合がある
まず確認する順番を決める
自分が基本手当を受けられるか知りたい場合には、私は次の順番で整理するのが分かりやすいと考えています。
- 今回の離職日を確認する
- 原則2年間の算定対象期間を確認する
- 離職票ごとに被保険者期間を確認する
- 11日以上の期間を数える
- 足りなければ80時間以上の期間を確認する
- 過去の勤務先の被保険者期間を使用できるか確認する
- 過去の受給資格や給付歴を確認する
- 離職理由によって6か月要件が使えるか確認する
- 長期休業があれば算定対象期間の延長も確認する
この順番に整理すると、「加入期間が何年あるか」という曖昧な問いから、「今回の基本手当の受給資格を満たす被保険者期間が何か月あるか」という具体的な問いに変えることができます。
よくある三つの思い込み
私が実務で特に注意しているのは、 「1年間働いたから12か月ある」「転職したから前職分は使えない」「11日働いていない月は絶対に数えられない」という思い込み です。
いずれも必ずしも正しくありません。
1年間在籍していても受給資格上の被保険者期間が12か月に届かない場合がありますし、複数の勤務先の被保険者期間を通算して受給資格を確認することもあります。
また、11日未満でも一定の場合には80時間基準によって被保険者期間として扱われる可能性があります。
反対に、長期間雇用保険へ加入していた経験があるからといって、そのすべてを今回の離職で利用できるとも限りません。
過去の受給資格、給付歴、算定対象期間、空白期間などによって扱いが変わります。
迷ったときに用意したいもの
- 現在の勤務先の離職票
- 前職の離職票
- 雇用保険被保険者証
- 勤務先と入退社日をまとめたメモ
- 過去に基本手当等を受けた時期が分かる資料
- 必要に応じて給与明細や勤務記録
これらを整理しておけば、ハローワークへ相談するときも「前の会社がいつだったか分からない」「給付を受けたのが何年前だったか分からない」という状態を避けやすくなります。
制度上の期間計算は、個別の勤務歴によって結果が変わります。
この記事で示した12か月、6か月、11日、80時間、1年などの数値は、現行制度を理解するための一般的な基準です。
実際の受給資格については、離職日、資格取得日、資格喪失日、賃金支払基礎日数、過去の受給資格や給付歴などを確認する必要があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
最終的な判断は専門家にご相談ください。
特に、被保険者期間が12か月または6か月ぎりぎりの場合、複数回の転職がある場合、過去に失業給付の手続きをしたことがある場合、長期休業がある場合、離職理由について会社と認識が異なる場合は、自分だけで結論を出さないことをおすすめします。
雇用保険の期間計算は、一つひとつのルール自体はそれほど難しくありません。
しかし、「被保険者期間」「算定対象期間」「算定基礎期間」「受給期間」という似た言葉が同時に出てくることで分かりにくくなっています。
まずは今回知りたいのが「基本手当を受けられるか」なのか、「何年間加入した扱いになるか」なのかを切り分け、離職票をもとに順番に確認していきましょう。