こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
長期収載品の選定療養とは、後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある先発医薬品について、患者が希望して先発医薬品を選ぶ場合に、通常の1~3割の自己負担とは別に特別の料金を支払う仕組みです。
この制度は2024年10月に始まり、2026年6月1日からは特別の料金が、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当から2分の1相当に引き上げられています。
そのため、以前と同じ先発医薬品を処方してもらっている方でも、2026年6月以降に窓口で支払う金額が増えていることがあります。
一方で、対象となる先発医薬品を使えば必ず特別の料金が発生するわけではありません。
医療上先発医薬品が必要と判断される場合や、後発医薬品の在庫がないなど、後発医薬品を提供することが難しい場合には、選定療養の対象外となることがあります。
薬局で突然「先発医薬品を希望すると追加料金がかかります」と説明されると、「これまでと同じ薬なのになぜ高くなるのか」「ジェネリックに変更しなければならないのか」「医師が先発品を必要だと言っている場合も払うのか」と疑問に感じる方も多いかなと思います。
制度上は、単に先発医薬品か後発医薬品かを見るだけでは足りません。
対象医薬品なのか、患者本人の希望なのか、医療上の必要性があるのか、後発医薬品を実際に提供できるのか、といった事情を分けて考える必要があります。
この記事では、長期収載品と選定療養の違いから、2026年6月の変更、特別の料金の計算方法、対象外となるケース、自分の薬が対象か確認する方法まで、患者側から見て分かりやすい順番で整理します。
- 長期収載品の選定療養がどのような制度なのか
- 2026年6月から患者負担がどう変わったのか
- 特別の料金がかからないケース
- 対象医薬品や窓口負担の確認方法

選定療養で長期収載品を選ぶ仕組み
まず押さえておきたいのは、長期収載品と選定療養は同じ意味の言葉ではないという点です。
長期収載品は医薬品側の区分、選定療養は医療保険制度上の費用負担の仕組みです。
この2つを一緒に理解しようとすると制度が分かりにくくなりやすいため、最初に切り分けて考えると整理しやすくなります。
また、2026年6月以降は患者が負担する特別の料金が見直されています。
インターネット上には2024年10月の制度開始時点の「価格差の4分の1」という説明も残っているため、いつの制度を説明している情報なのかにも注意が必要です。
ここでは最初に制度の土台を確認し、その後、実際にいくら負担することになるのかを具体的に見ていきます。
長期収載品と選定療養の違い
長期収載品とは、基本的には後発医薬品であるジェネリック医薬品が存在する先発医薬品を指します。
先発医薬品は、新しい有効成分などについて開発され、承認を受けて販売された医薬品です。
その後、一定の期間を経て、同じ有効成分を使った後発医薬品が販売されることがあります。
こうして後発医薬品が存在するようになった先発医薬品のうち、制度上一定の要件に当てはまるものが、長期収載品の選定療養の対象になります。
ここで注意したいのは、「ジェネリックが存在する先発医薬品なら、すべて自動的に特別の料金がかかる」というわけではないことです。
制度上の対象となる医薬品は厚生労働省がリストとして公表しており、個別の薬が対象かどうかは、その時点の対象医薬品リストで確認する必要があります。
一方、 選定療養は医薬品の名前ではなく、医療保険制度上の仕組み です。
選定療養は、患者自身の選択によって通常の保険診療とは別の費用負担が発生する仕組みで、長期収載品以外にも差額ベッドなどが知られています。
長期収載品の場合には、後発医薬品を利用できる状況であるにもかかわらず、患者本人の希望によって対象となる先発医薬品を選択したときに、通常の保険診療の自己負担とは別に特別の料金を支払うことになります。
簡単に整理すると、長期収載品は「薬の種類」、選定療養は「患者負担の仕組み」です。
この2つを分けて考えると、「先発品だから必ず追加料金」「ジェネリックなら必ず無料」といった単純な制度ではないことが分かります。
例えば、ある先発医薬品が選定療養の対象となる長期収載品だったとしても、医師が治療上その先発医薬品を使う必要があると判断している場合には、患者の自由な選択によって先発医薬品を選んだケースとは扱いが異なります。
反対に、医療上は後発医薬品を使用できる状態で、患者が「長年使っているから先発品がよい」「何となく先発品のほうが安心する」といった理由で先発医薬品を希望する場合には、選定療養となる可能性があります。
つまり実際の判断では、 対象となる薬か、患者希望か、医療上の必要性があるか、後発医薬品を提供できるか という複数の要素を見る必要があります。
| 確認する項目 | 意味 |
|---|---|
| 対象医薬品か | 厚生労働省が公表する対象医薬品に該当するか |
| 患者希望か | 患者自身の希望で先発医薬品を選んでいるか |
| 医療上必要か | 医師等が先発医薬品を使う必要性を判断しているか |
| 後発品を提供できるか | 在庫や供給状況などから後発医薬品を用意できるか |
健康保険制度では、医療費について単純に「3割だけ払えばよい」と考えると分かりにくい場面があります。
保険給付の対象となる部分と、選定療養として保険給付の外で負担する部分を分けて考える必要があるためです。
健康保険そのものの仕組みから確認したい場合は、 健康保険とは何かをわかりやすく整理した解説 も参考にしてください。
患者側としては、制度名を細かく暗記する必要はありません。
薬局で説明を受けたときに、「この薬は選定療養の対象なのか」「なぜ特別の料金がかかるのか」を確認できれば、かなり整理しやすくなります。
2026年6月から何が変わったか

長期収載品の選定療養は、2024年10月から始まりました。
制度開始当初は、後発医薬品がある対象の先発医薬品について、患者の希望によって先発医薬品を使用する場合、 先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当 が特別の料金とされていました。
その後、制度が見直され、 2026年6月1日からは、特別の料金が価格差の2分の1相当へ引き上げられています。
したがって、「長期収載品の選定療養は価格差の4分の1」と覚えている方は注意が必要です。
4分の1という数字は制度開始時点では正しいのですが、2026年6月以降の現在の取扱いとは異なります。
| 期間 | 特別の料金の基準 | ポイント |
|---|---|---|
| 2024年9月まで | 制度なし | 長期収載品の選定療養による特別の料金なし |
| 2024年10月~2026年5月 | 価格差の4分の1相当 | 制度開始時の負担水準 |
| 2026年6月以降 | 価格差の2分の1相当 | 現在の負担水準 |
例えば、先発医薬品と後発医薬品との価格差が100円だったとします。
2026年5月までは、その4分の1相当である25円が特別の料金の基礎となっていました。
2026年6月以降は、その2分の1相当である50円が基礎になります。
ただし、実際の患者負担額が単純に25円から50円へ増えるという意味ではありません。
後ほど詳しく説明しますが、選定療養では、特別の料金に相当する部分を除いた金額について通常の1~3割などの保険診療の自己負担を計算し、さらに特別の料金には消費税が加算されます。
そのため、制度改正によっていくら負担が増えたのかを知りたい場合には、 特別の料金だけではなく、保険部分の自己負担との合計額を見る必要があります。
また、薬局で「今月から薬代が高くなりました」と言われた場合でも、原因が必ずこの制度だけとは限りません。
処方された薬の数量が変わった、別の薬が追加された、薬価が変わった、調剤内容が変わったといった別の要因も考えられます。
実務でも、金額が変わったときには「制度が変わったから」と一括りにせず、何が変わったのかを分解して確認することが大切です。
領収書や明細書を見ると、選定療養による特別の料金が発生しているか確認しやすくなります。
2026年6月以降の制度を確認するときは「価格差の2分の1相当」が現在の基準です。
インターネット上には制度開始時の4分の1という説明が残っていることがありますので、情報の作成日や適用時期を確認してください。
制度改正の内容や対象医薬品については、厚生労働省が公式情報を公表しています。
最新の取扱いを確認するときは一次情報を見るのが確実です。
(出典:厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」)
2026年6月より前から同じ先発医薬品を継続している方ほど、以前の支払額との違いに気づきやすい制度改正です。
「同じ薬なのに高くなった」と感じた場合には、まず選定療養の特別の料金が含まれているかを確認してみてください。
特別の料金はいくらかかるのか
長期収載品の選定療養で最も気になるのが、「結局いくら追加で支払うのか」という点ではないでしょうか。
ここでまず注意したいのは、 先発医薬品の価格の半分を追加で払う制度ではない ということです。
2026年6月以降の特別の料金は、先発医薬品そのものの価格ではなく、 先発医薬品と後発医薬品との価格差の2分の1相当 を基準に計算します。
例えば、先発医薬品が1錠100円、比較対象となる後発医薬品が1錠60円だった場合を考えてみます。
先発医薬品100円-後発医薬品60円=価格差40円
40円×2分の1=20円相当
この20円相当が、2026年6月以降の特別の料金を計算する基礎になります。
ここで「100円の半分だから50円ではないのか」と思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。
2分の1にする対象は、100円という先発医薬品全体の価格ではなく、先発医薬品と後発医薬品との 価格差40円 です。
さらに、後発医薬品が複数販売されている場合には、どの後発医薬品と比較するのかという問題があります。
制度上は、後発医薬品が複数ある場合、原則として 薬価が最も高い後発医薬品との価格差 を使って計算します。
そのため、患者が薬局で実際に受け取る可能性のある最も安いジェネリックとの価格差が、そのまま特別の料金の基準になるとは限りません。
| 先発医薬品 | 比較する後発医薬品 | 価格差 | 2分の1相当 |
|---|---|---|---|
| 100円 | 60円 | 40円 | 20円相当 |
| 200円 | 120円 | 80円 | 40円相当 |
| 500円 | 250円 | 250円 | 125円相当 |
ただし、ここまでの金額はあくまで制度の仕組みを理解するための単純化した例です。
実際の費用は、薬の数量、薬価、診療報酬上の点数への換算、端数処理などによって変わります。
また、 特別の料金は課税対象 です。
そのため、算出された特別の料金に消費税相当額を加えて支払います。
例えば、特別の料金の基礎となる額が20円であれば、単純化すると消費税込みでは22円相当となります。
ただし、実際の窓口での金額は診療報酬上の計算や端数処理を経るため、必ずこの数字になるわけではありません。
「価格差の2分の1=そのまま窓口で追加される金額」とは限りません。
特別の料金には消費税がかかり、一方で先発医薬品のうち保険給付の対象となる部分も変わるため、最終的には保険部分と選定療養部分を合わせて考えます。
もう一つ重要なのは、同じ薬でも処方される日数や錠数が多ければ、特別の料金の総額も大きくなりやすいことです。
1錠当たりでは数十円の差でも、毎日服用する薬を30日分、60日分、90日分と処方されれば、合計額としては無視できない金額になることがあります。
そのため、継続的に服用する薬について先発医薬品を希望する場合には、「1錠当たりいくらか」だけではなく、 今回の処方全体で特別の料金がいくらになるのか を薬局で確認すると分かりやすいですよ。
費用負担が気になるからといって、自己判断で薬を変更したり服用を中断したりするのは避けてください。
先発医薬品と後発医薬品のどちらを使用するか迷う場合には、治療上の問題がないかを医師や薬剤師に相談したうえで判断することが大切です。
患者負担額の計算方法と具体例

長期収載品の選定療養では、「価格差の2分の1」という数字だけを見ると、実際の患者負担額を誤解しやすいところがあります。
患者が最終的に窓口で支払う金額は、特別の料金だけではありません。
基本的には、 選定療養として支払う特別の料金と、健康保険が適用される部分についての通常の自己負担額を合計 して考えます。
2026年6月以降について、先発医薬品が500円、後発医薬品が250円、健康保険の自己負担割合が3割という例で確認してみましょう。
まず、先発医薬品と後発医薬品の価格差は250円です。
その2分の1である125円相当が、特別の料金を計算する基礎になります。
次に、先発医薬品500円から、この125円相当を除いた375円が保険対象となる部分です。
3割負担の場合、この部分について112.5円を患者が負担する計算になります。
さらに、特別の料金125円には消費税相当額が加算されます。
単純化した例では137.5円です。
| 計算項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 先発品と後発品の価格差 | 500円-250円 | 250円 |
| 特別の料金の基礎額 | 250円×2分の1 | 125円 |
| 特別の料金・税込 | 125円×1.1 | 137.5円 |
| 保険対象となる部分 | 500円-125円 | 375円 |
| 保険部分の3割負担 | 375円×30% | 112.5円 |
| 自己負担合計 | 137.5円+112.5円 | 250円 |
この例では、患者が希望して先発医薬品を使用した場合の自己負担額は250円です。
一方、250円の後発医薬品を使用した場合には、3割負担なら75円が自己負担の目安になります。
先発医薬品を希望した場合:250円
後発医薬品を使用した場合:75円
差額:175円
ここが非常に重要です。
先発品と後発品の価格差は250円で、その2分の1は125円ですが、患者負担の差は175円になります。
「価格差の2分の1だから、後発医薬品を選ぶ場合より125円だけ高くなる」と考えると計算がずれます。
理由は、特別の料金には消費税が加わる一方で、健康保険が適用される部分についても通常の自己負担が発生するためです。
また、2026年5月までと2026年6月以降を比較すると、この例では先発医薬品を希望した場合の自己負担額が200円から250円へ増える計算になります。
つまり制度改正による増加額は50円です。
| ケース | 自己負担額の例 |
|---|---|
| 2024年9月以前に先発品を使用 | 150円 |
| 2024年10月~2026年5月に先発品を希望 | 200円 |
| 2026年6月以降に先発品を希望 | 250円 |
| 後発品250円を使用 | 75円 |
こうして並べると、「制度改正前と比べていくら増えたのか」と「ジェネリックを使った場合と比べていくら高いのか」は別の数字だと分かります。
患者側ではこの2つが混同されやすいところです。
2026年6月の改正だけによる増加額を知りたいなら、改正前後を比較します。
一方、「先発品を希望したことでどの程度負担が増えているのか」を知りたいなら、後発医薬品を使用した場合と比較する必要があります。
協会けんぽでも、この500円と250円の例を使って2026年6月以降の自己負担額を説明しています。
ここで示した金額は制度を理解するための一般的な計算例です。
実際の支払額は、薬価、数量、自己負担割合、診療報酬上の計算、消費税、端数処理などによって異なります。
具体的な金額は医療機関や薬局で確認してください。
実際によくあるのは、「薬局で支払額が高くなったが、何が原因なのか分からない」というケースです。
その場合には、以前の領収書と今回の領収書を比較し、選定療養の特別の料金が発生しているかを確認すると原因を切り分けやすくなります。
長期収載品の対象品目一覧の調べ方
長期収載品の選定療養について調べると、「自分が飲んでいる薬も対象なのか」が最終的には最も重要になります。
ここで注意したいのは、 先発医薬品だからといって、すべてが自動的に選定療養の対象になるわけではない という点です。
制度上の対象となる医薬品は、厚生労働省が対象医薬品リストとして公表しています。
個別の商品名や薬価などが掲載されていますので、正確に確認したい場合にはこのリストを見るのが基本です。
対象品目を決める考え方としては、後発医薬品が発売されてから一定期間が経過している長期収載品や、後発医薬品への置き換えが一定程度進んでいる長期収載品などが対象になります。
ただし、一般の患者がこの基準から自分で対象かどうかを判定する必要はありません。
実際には、厚生労働省が公表している対象医薬品リストを見るか、医師や薬剤師に確認するほうが確実です。
自分の薬が対象か調べるときは、制度の条件から推測するのではなく、現在の対象医薬品リストで確認するのが基本です。
対象医薬品のリストは、薬価改定や制度改正などに伴って更新されることがあります。
そのため、「去年は対象ではなかったはず」「以前、薬剤師から対象外と言われた」という記憶だけで判断すると、現在の取扱いとずれてしまう可能性があります。
特に2026年は、薬価改定や6月からの選定療養の見直しがありますので、古い一覧表を保存している場合には注意してください。
患者本人が確認するときには、まずお薬手帳や薬の袋、薬局でもらった明細などから薬の商品名を確認するとよいでしょう。
| 確認方法 | 確認できること | おすすめの場面 |
|---|---|---|
| お薬手帳を見る | 処方された薬の商品名 | 自分の薬の名前が分からないとき |
| 薬局で確認する | 選定療養の対象か、後発品があるか | 最も手軽に確認したいとき |
| 厚生労働省の対象リストを見る | 対象医薬品の公式情報 | 自分でも正式な情報を確認したいとき |
| 領収書・明細書を見る | 特別の料金が発生しているか | 窓口負担が増えた理由を確認するとき |
薬の商品名は似た名称が多く、含量や剤形まで含めると一般の方には見分けにくいことがあります。
例えば同じ有効成分でも、錠剤、カプセル、OD錠など剤形が異なったり、含量が複数あったりします。
そのため、厚生労働省の一覧を見ても判断できない場合には、無理に自分で結論を出す必要はありません。
薬局で「この薬は長期収載品の選定療養の対象ですか」「ジェネリックに変えた場合はいくらくらい違いますか」と聞けば、かなり具体的に確認できます。
お薬手帳を持参して相談すると、過去の薬との比較もしやすくなります。
また、自分の薬が対象医薬品だったとしても、それだけで特別の料金が発生すると決まるわけではありません。
次に確認するのは、 先発医薬品を使う理由 です。
医療上の必要性があって先発医薬品を使用しているのか、患者本人の希望によって選んでいるのかによって取扱いが変わります。
対象品目一覧はあくまで「この薬が制度の対象となり得るか」を確認するものです。
実際に今回の処方で選定療養になるかどうかは、個別の処方や調剤の状況まで含めて判断されます。
その意味では、「対象品目一覧に載っていた=必ず追加料金」と考えないことが大切です。
長期収載品の選定療養で確認する点
長期収載品の選定療養では、「先発医薬品を使えば必ず追加料金がかかる」という理解も正確ではありません。
制度が想定しているのは、後発医薬品を使用できるにもかかわらず、患者自身の選択によって対象となる先発医薬品を使用するケースです。
そのため、医療上の必要性がある場合や、後発医薬品を提供できない場合など、患者の単なる希望とは異なる事情があれば取扱いが変わります。
ここからは、特別の料金がかからない主なケースと、患者として医師や薬剤師に確認しておきたいポイントを詳しく整理します。
特別の料金がかからない対象外ケース
長期収載品の選定療養で特別の料金が発生する基本的な場面は、 後発医薬品を使用できる状況で、患者自身の希望によって対象となる先発医薬品を選択する場合 です。
したがって、先発医薬品を使用したという事実だけで、必ず特別の料金を支払うことになるわけではありません。
代表的な対象外ケースとしては、次のようなものがあります。
- 医師が医療上先発医薬品を使用する必要があると判断した場合
- 後発医薬品の在庫がないなど、後発医薬品を提供することが困難な場合
- その他、制度上患者本人の自由な選択による使用とは扱われない場合
最も分かりやすいのは、医師が「この患者には先発医薬品を使う必要がある」と医学的に判断しているケースです。
例えば、先発医薬品と後発医薬品で効能・効果の範囲に違いがあり、治療上先発医薬品が必要になる場合があります。
また、以前に後発医薬品へ変更したところ、副作用や治療上の問題が生じたといった事情があれば、医師が先発医薬品を継続する必要性を判断することがあります。
一方、「昔からこの薬を飲んでいるから変えたくない」「先発品のほうが何となく安心できる」といった患者本人の好みだけで先発医薬品を希望する場合には、医療上必要な場合とは区別して考えられます。
先発医薬品を強く希望すれば特別の料金がかからなくなる、という制度ではありません。
患者本人の希望と、医師等が判断する医療上の必要性は別のものとして考える必要があります。
もう一つ大きな対象外ケースが、後発医薬品を提供できない場合です。
例えば、患者はジェネリックでも構わないと考えているのに、薬局側に在庫がなく、先発医薬品を調剤せざるを得ない場合があります。
このようなケースまで「患者が先発品を選んだ」と扱うのは適切ではないため、患者希望による選定療養とは取扱いが異なります。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 患者が先発品を希望 | 選定療養となる可能性がある |
| 医療上先発品が必要 | 選定療養の対象外となる場合がある |
| 後発品の在庫がない | 患者希望ではないため対象外となる場合がある |
実務的には、「先発医薬品を使ったか」ではなく、 なぜ先発医薬品を使ったのか を見ることが重要です。
また、公費負担医療などが関係している場合には、制度や自治体などによって取扱いを確認する必要があります。
公費で医療費が助成されているから、選定療養の特別の料金も必ず助成されるとは限りません。
このあたりは制度ごとの確認が必要になりますので、対象となる方は医療機関、薬局、加入している医療保険、自治体の窓口などに確認してください。
患者側としては、薬局で特別の料金が発生すると言われたときに、「これは私が先発品を希望したことによる料金ですか」と聞いてみるのが分かりやすいでしょう。
理由が分かれば、自分が対象になる仕組みも理解しやすくなります。
医療上必要と判断された場合の扱い

先発医薬品を使用する医療上の必要性がある場合には、患者が自由に先発医薬品を選択したケースとは扱いが異なります。
つまり、 医師が治療上先発医薬品を使用する必要があると判断した場合には、長期収載品の選定療養による特別の料金がかからない場合があります。
ここは患者にとって非常に重要なところです。
「先発医薬品を使えば追加料金」という説明だけを見ると、病気の状態に関係なく必ず負担が増えるように感じますが、制度はそこまで単純ではありません。
医療上の必要性が考えられる例としては、先発医薬品と後発医薬品で承認されている効能・効果に違いがあり、患者の治療では先発医薬品が必要になるケースがあります。
また、後発医薬品を実際に使用した結果、副作用が生じたり、治療上の問題が生じたりしたため、医師が先発医薬品へ戻す必要があると判断することも考えられます。
さらに、剤形などの違いが服薬に影響し、適切な治療を継続できないと判断されるケースもあります。
ただし、ここで注意したいのは、 患者本人が「飲みやすい」「こちらの色が好き」「以前から使っているので安心する」と感じることだけで、自動的に医療上必要と認められるわけではない ということです。
「この理由を伝えれば特別の料金が免除される」という制度ではありません。
医療上の必要性は、患者の症状、治療経過、薬の性質などを踏まえて医師等が判断します。
持病で長年同じ先発医薬品を服用している方ほど、ジェネリックへ変更することに不安を感じることがあります。
そうした不安自体を我慢する必要はありません。
ただし、患者自身で「ジェネリックは絶対に使えない」と決めるのではなく、これまでの治療経過や過去に薬を変更したときの症状などを具体的に医師へ伝えることが大切です。
例えば、「以前ジェネリックへ変更したときにこのような症状が出た」「錠剤の形が変わると服薬を継続することが難しい」「現在の先発医薬品で症状が安定しているが、切り替えて問題ないか」といった形で相談すると、医師側も医学的な観点から判断しやすくなります。
先発医薬品を続けたい事情がある場合は、単に「先発品希望」と伝えるだけではなく、 なぜ変更に不安があるのか、これまでにどのような治療経過があったのか を医師に伝えることが重要です。
薬局で初めて選定療養について説明を受け、「医師には何も言われなかった」と戸惑うケースもあるでしょう。
その場合も、薬剤師に事情を伝えてください。
必要に応じて処方内容について確認が行われることもあります。
私が制度を説明するときにも、「患者の希望」と「医療上の必要性」を混同しないようにしています。
同じ先発医薬品を使用するという結果であっても、その理由によって健康保険上の取扱いが変わるからです。
なお、先発医薬品か後発医薬品かという選択は、費用だけで決める問題ではありません。
治療内容に関する判断は医師や薬剤師へ相談し、自己判断で服用を中止したり、薬を変更したりしないようにしてください。
ジェネリックの在庫がない場合
後発医薬品を希望していても、薬局の在庫や供給状況によって、その場でジェネリック医薬品を用意できないことがあります。
このような場合には、患者が積極的に先発医薬品を選択したわけではありません。
後発医薬品の在庫がないなど、後発医薬品を提供することが困難な事情がある場合には、患者本人の希望で先発医薬品を選んだケースとは扱いが異なります。
そのため、薬局側の事情によって先発医薬品を調剤せざるを得ない場合には、選定療養による特別の料金の対象外となることがあります。
ここは、患者側からすると分かりにくいポイントです。
例えば、薬局で「今日はジェネリックがないので先発品になります」と言われたとします。
この場合、あなたが先発医薬品を希望したわけではありません。
一方、「ジェネリックもありますがどちらにしますか」と説明され、医療上の必要性が特にない状態で「先発品にしてください」と選択した場合には、患者希望による選定療養となる可能性があります。
| 薬局での状況 | 考え方 |
|---|---|
| ジェネリックもあるが患者が先発品を希望 | 選定療養となる可能性がある |
| ジェネリックの在庫がなく先発品を調剤 | 患者希望ではないため対象外となる場合がある |
| 医療上の理由から先発品を使用 | 医療上必要な場合として対象外となる場合がある |
医薬品の供給状況は常に一定とは限りません。
同じ薬局、同じ薬であっても、ある月にはジェネリックを用意でき、別の月には供給事情によって用意できないということも考えられます。
したがって、「先月は特別の料金がかからなかったから今月も同じ」とは限りませんし、その逆もあり得ます。
また、普段利用している薬局に在庫がなくても、別の薬局では後発医薬品を用意できる可能性があります。
ただし、薬局を変更するべきかどうかは、薬の受取時期や継続的な服薬管理なども関係しますので、単純に料金だけで判断する必要はありません。
後発医薬品を希望しているのに先発医薬品が調剤される場合は、「今回はジェネリックの在庫がないためですか」「選定療養の特別の料金はかかりますか」と確認すると状況を整理しやすくなります。
特に、「前回と同じ薬なのに今月だけ金額が違う」という場合には、在庫状況だけでなく、薬価、処方日数、処方された医薬品そのもの、選定療養の有無など複数の原因が考えられます。
領収書や明細書を前回分と比較し、分からなければ薬局で聞いてみてください。
薬局側では今回の調剤内容を確認できますので、患者本人が制度を一から計算するより確実です。
私としては、患者側が「追加料金を取られた」とだけ捉えるよりも、 なぜその先発医薬品になったのかを確認する ことが最も重要だと考えています。
本人が希望したのか、医療上必要だったのか、供給上の事情だったのか。
この理由を確認すれば、選定療養の取扱いもかなり分かりやすくなります。
高額療養費の対象になるのか
長期収載品を患者の希望によって使用した場合に支払う特別の料金について、「医療費なのだから、高額になれば高額療養費で戻ってくるのではないか」と考える方もいるかもしれません。
しかし、ここは通常の健康保険の自己負担と分けて考える必要があります。
長期収載品の選定療養による特別の料金は、保険給付の対象外となる部分であるため、高額療養費を計算するときの自己負担額には含まれません。
高額療養費制度は、健康保険が適用される医療について、1か月の患者自己負担が一定の上限を超えた場合に、超えた部分を支給することで負担を軽減する制度です。
一方、長期収載品の特別の料金は、患者自身が対象となる先発医薬品を選択したことによる選定療養の負担です。
健康保険から給付される部分の自己負担とは性質が違います。
例えば、入院や高額な治療などによって、その月の保険診療分の自己負担が高額療養費の自己負担限度額に達していたとします。
その場合でも、患者希望によって長期収載品を使用したことによる特別の料金まで、高額療養費の限度額の中に含まれるわけではありません。
高額療養費の自己負担上限に達していれば、長期収載品の特別の料金も支払わなくてよい、という仕組みではありません。
ここは実務上かなり誤解されやすいところです。
健康保険から見れば、「医療機関や薬局で支払った金額のすべて」が高額療養費の対象になるわけではありません。
差額ベッド代、食事に関する一定の自己負担など、健康保険の高額療養費の計算に含まれない費用があります。
長期収載品の選定療養による特別の料金についても、通常の保険診療分とは切り分けて考えます。
| 費用 | 高額療養費との関係 |
|---|---|
| 健康保険が適用される部分の自己負担 | 高額療養費の計算対象となり得る |
| 長期収載品の特別の料金 | 高額療養費の計算には含まれない |
そのため、持病などで毎月の医療費が高く、高額療養費制度を利用している方ほど注意が必要です。
「どうせ自己負担上限に達しているから先発医薬品を選んでも負担は増えない」と考えてしまうと、実際の窓口負担との間にズレが生じる可能性があります。
高額療養費の仕組みや所得区分ごとの自己負担限度額について詳しく確認したい場合は、 健康保険の高額療養費制度の解説 で整理しています。
また、健康保険には医療費の負担軽減だけでなく、病気やけがで仕事を休んだ場合の傷病手当金、出産に関する給付など複数の制度があります。
全体像を確認したい場合は、 健康保険の給付金一覧 も参考にしてください。
なお、健康保険組合によっては法定の健康保険給付に加えて独自の付加給付を設けている場合があります。
ただし、どの費用まで対象とするかは保険者ごとの制度によって異なります。
「健康保険組合から何か戻るはず」と自己判断せず、加入している健康保険組合の規程や案内を確認してください。
社会保険の制度は、同じ窓口で支払うお金であっても、保険給付の対象かどうかによって扱いが大きく変わります。
長期収載品の特別の料金についても、通常の3割負担などとは別の費用だと理解しておくと、高額療養費との関係を整理しやすくなります。
医師や薬剤師に確認したいポイント

長期収載品の選定療養について調べ始めると、対象品目、薬価、価格差、医療上の必要性、在庫状況など、確認する項目が多く出てきます。
ただ、患者本人がこれらをすべて調べて判断する必要はありません。
実際に処方されている薬については、医師や薬剤師に確認するのが最も確実です。
特に確認しておきたいのは、次の点です。
- 現在使っている先発医薬品が選定療養の対象か
- 後発医薬品へ変更できるか
- 先発医薬品を使う医療上の必要性があるか
- 後発医薬品の在庫や供給状況に問題がないか
- 先発医薬品を希望した場合の特別の料金はいくらか
まず、診察時に先発医薬品を続けたい事情がある場合には、医師に相談してください。
特に、過去にジェネリックへ変更した際に体調の変化があった、副作用があった、服用が難しくなったなど具体的な経験がある場合は、その内容を伝えることが重要です。
単に「先発品がいいです」と伝える場合と、過去の治療経過を説明したうえで医師が必要性を判断する場合とでは、制度上の意味が異なります。
次に、薬局では具体的な薬と料金について確認できます。
薬局では、例えば次のように聞くと分かりやすいでしょう。
- この薬は長期収載品の選定療養の対象ですか
- ジェネリックに変更できますか
- 先発品を選ぶと特別の料金はいくらですか
- 今回はジェネリックの在庫がありますか
- 前回より支払額が増えた理由は何ですか
ジェネリック医薬品への変更について、添加物、錠剤の大きさ、形、味、飲みやすさなどが気になる方もいるでしょう。
有効成分が同じであっても、製品によって添加物や剤形などに違いがある場合があります。
その違いが自分の服薬に影響するか不安な場合は、薬剤師に具体的に確認してください。
「ジェネリックは全部同じだから何も聞かなくてよい」「先発品なら必ず安全」といった極端な考え方ではなく、自分が使用する薬について個別に確認するのが実務的です。
また、窓口負担が増えた理由が分からない場合には、領収書や明細書を捨てずに確認してください。
| 確認したいこと | 相談先の目安 |
|---|---|
| 先発医薬品が治療上必要か | 医師 |
| ジェネリックとの違いや飲み方 | 医師・薬剤師 |
| 対象薬か、特別の料金はいくらか | 薬剤師・医療機関 |
| ジェネリックの在庫があるか | 薬局 |
| 窓口負担が増えた理由 | 医療機関・薬局 |
私が社会保険制度を確認するときにも、結果だけではなく「なぜその取扱いになったのか」を見るようにしています。
長期収載品についても同じです。
「先発品を使った」という結果だけでは判断できません。
患者の希望なのか、医療上の必要性なのか、後発品の供給上の問題なのか を確認することで、選定療養になる理由が見えてきます。
また、会社の健康保険担当者が従業員から相談を受けることもあるかもしれません。
その場合、会社側で「これは対象」「これは対象外」と医学的な判断をするのは適切ではありません。
制度の一般的な仕組みを説明したうえで、薬の選択や医療上の必要性については医師・薬剤師へ、個別の保険給付については加入している保険者へ確認してもらうのがよいでしょう。
費用が気になる場合でも、自己判断で薬を中断したり、処方された薬の飲み方を変えたりしないことが大切です。
料金の問題と治療上の判断は分けて考えてください。
選定療養と長期収載品の要点まとめ
長期収載品の選定療養は、後発医薬品がある対象の先発医薬品について、患者自身の希望で先発医薬品を選択した場合に、通常の健康保険の自己負担とは別に特別の料金を支払う制度です。
制度は2024年10月に始まり、 2026年6月1日からは、先発医薬品と後発医薬品の価格差の2分の1相当が特別の料金の基準 となっています。
2026年5月までは価格差の4分の1相当でしたので、以前から同じ先発医薬品を患者希望で使用している方は、2026年6月以降に窓口負担が増えている可能性があります。
ただし、制度を理解するときに最も重要なのは、「先発医薬品を使ったら必ず追加料金」と考えないことです。
- 長期収載品は後発医薬品がある先発医薬品を中心とする区分
- 患者の希望で対象の先発品を選ぶと特別の料金が発生する
- 2026年6月以降は価格差の2分の1相当が基準
- 特別の料金には消費税が加算される
- 医療上必要な場合は対象外となることがある
- 後発医薬品を提供できない場合も対象外となることがある
- 特別の料金は高額療養費の計算には含まれない
また、価格差の2分の1という数字だけを見て、実際の自己負担額を計算しないようにしてください。
患者が支払う金額は、特別の料金だけではなく、健康保険が適用される部分の1~3割などの自己負担と合わせて決まります。
さらに、特別の料金には消費税も加算されます。
制度を確認するときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 自分の薬が選定療養の対象医薬品か
- 先発医薬品を使う理由は患者希望か
- 医療上先発医薬品が必要ではないか
- 後発医薬品を実際に提供できる状況か
- 先発品を希望した場合の特別の料金はいくらか
特に大切なのは、 なぜ先発医薬品を使用しているのか という点です。
患者本人が希望して使用しているのか、医師が治療上必要と判断しているのか、ジェネリックの在庫がなく先発医薬品を使わざるを得ないのかによって、選定療養の取扱いが変わります。
また、持病で長期間薬を服用している方の場合、1回の負担差は小さく見えても、毎月継続すると年間では一定の金額になることがあります。
だからといって、料金だけを理由に自己判断でジェネリックへ変更したり、服薬を止めたりするのは適切ではありません。
医療上の問題がないかを確認したうえで判断してください。
窓口負担が増えた理由が分からない場合は、まず領収書や明細書を確認し、薬局で「選定療養の特別の料金が含まれていますか」と尋ねてみるとよいでしょう。
自分の薬が対象か分からない場合には、厚生労働省が公表する最新の対象医薬品リストを確認するか、処方医や薬剤師に確認してください。
薬価、対象医薬品、制度の取扱いは改定される可能性があります。
この記事で示した数値や計算例は制度を理解するための一般的な目安です。
実際の負担額や最新の対象医薬品については、 正確な情報は公式サイトをご確認ください。
また、先発医薬品を使用する医療上の必要性は、患者ごとの病状や治療経過によって異なります。
薬の変更や治療に関する判断は自己判断で行わず、医師や薬剤師に確認してください。
公費負担医療や健康保険組合独自の制度など、個別の制度が関係する場合もあります。
個別事情を含めた 最終的な判断は専門家にご相談ください。