こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
労災によるケガや病気の治療のために医療機関へ通院した場合、一定の条件を満たせば、その交通費も労災保険から支給されます。
労災保険では、こうした通院交通費を療養に必要な移送費として取り扱います。
一方で、自宅から会社へ出勤するための通常の通勤交通費まで労災保険から支給されるわけではありません。
また、通院ならどの医療機関でも、どの交通手段でも全額認められるという制度でもないため注意が必要です。
特に、自家用車で通院した場合の計算方法や、タクシー代が認められる条件、片道2kmという距離基準は、実際の相談でも迷いやすいところです。
この記事では、労災の交通費について、支給条件から計算方法、請求書類、時効まで実務の流れに沿って整理します。
- 労災で通院交通費が支給される条件
- 電車・バス・自家用車・タクシーの計算方法
- 交通費を請求するときの様式と必要書類
- 交通費が認められにくいケースと注意点

労災の休業補償の全体像については、休業(補償)給付の仕組みを整理した記事で確認できます。
労災の交通費はどこまで支給される?
労災保険で交通費が支給されるかを考えるときは、まず「何のための移動なのか」を整理することが大切です。
対象になるのは、原則として労災による負傷や疾病を治療するための通院で必要になった交通費です。
そのうえで、通院距離、通院先として選んだ医療機関、利用した交通手段、その交通手段を利用する必要性などを順番に確認していきます。
労災の交通費で最初に確認したいポイント
労災事故に遭ったから交通費がすべて支給されるのではなく、療養のために必要な移動であることが基本です。
「病院に行くために使ったお金なのだから全部出るだろう」と考えやすいのですが、労災保険は実際に支出した費用を無条件に精算する制度ではありません。
特に遠方の医療機関への通院やタクシー利用では、なぜその通院先や交通手段が必要だったのかを説明できることが重要になります。
通院交通費の支給条件は片道2km以上
労災による通院交通費は、療養(補償)等給付に含まれる 移送費 として取り扱われます。
まず確認したいのが、被災した労働者の居住地または勤務先から、治療を受ける医療機関までの距離です。
通院費の支給基準では、原則として片道2km程度を基準として判断されます。
厚生労働省のQ&Aでは「居住地又は勤務地から、原則として片道2kmを超える通院」と案内されている一方、各労働局で使用されている通院費の請求内訳書では「片道2km以上」と記載されているものもあります。
したがって、ちょうど2km前後になるケースでは、インターネット上の距離だけで自己判断せず、管轄の労働基準監督署へ確認しておくのが実務上は確実です。
(出典:厚生労働省「労災保険に関するQ&A 2-3 通院費も支給されるのでしょうか」)
2kmという基準だけで支給が決まるわけではない
たとえば、自宅から整形外科まで片道5kmあり、仕事中の転倒で負傷した足の治療のために定期的に通院しているケースを考えてみましょう。
距離だけを見れば基準を満たしているように見えますが、それだけで交通費の支給が確定するわけではありません。
その医療機関が傷病の治療に適した医療機関なのか、もっと近い場所に適切な医療機関がないのか、実際にその日に通院しているのかといった点も確認されます。
つまり、 「2km以上なら必ず支給、2km未満なら絶対に不支給」という単純な線引きではない ということです。
2km未満でも対象になる可能性がある
一方、片道2km未満だからといって、どのような場合でも交通費が認められないわけではありません。
傷病の状態などからみて交通機関を利用しなければ通院することが著しく困難である場合には、距離が短くても支給対象として検討されることがあります。
たとえば、脚を骨折して松葉杖を使用している、歩行すると症状が悪化する可能性がある、術後で長距離を歩くことが難しいといった事情がある場合です。
同じ1.5kmでも、軽い打撲で問題なく歩ける人と、下肢を骨折して歩行が難しい人では、交通機関を使う必要性がまったく違います。
距離基準を見るときの考え方
- 居住地または勤務先から医療機関までの距離を確認する
- その通院が労災による傷病の治療に必要なものか確認する
- 2km未満なら交通機関を使わなければならない事情があるか確認する
- 境界になる場合は管轄の労働基準監督署へ確認する
私が相談を受けるときも、単に「病院まで何kmありますか」と聞いて終わりにはしません。
事故の内容、負傷部位、現在の症状、通院先、交通手段、通院経路まで整理したうえで考えるようにしています。
特に2km未満でタクシーを使うようなケースでは、距離だけでなく医学的な必要性が重要になります。
医師から「徒歩での通院は避けるように」と言われているのであれば、その指示を診療記録などで確認できる状態にしておくと、後から事情を説明しやすくなります。
2km前後の場合は事前確認がおすすめです
距離基準の境界にあるケースや、2km未満でも交通機関が必要なケースでは、個別事情によって判断が分かれる可能性があります。
すでに多額の交通費を支出してから「全部認められると思っていた」となると困りますので、判断が微妙な場合は早い段階で所轄の労働基準監督署へ相談しておくことをおすすめします。
また、地図上の最短距離と実際の走行距離が異なる場合もあります。
河川、山間部、一方通行などによって実際には大きく迂回しなければならない地域もありますので、単純な直線距離ではなく、実際の合理的な通院経路が分かる資料を用意しておくとよいでしょう。
通院先の医療機関はどう選ばれる?

通院交通費では、距離と同じくらい重要なのが どの医療機関へ通院しているか です。
労災による治療であれば、本人が希望する全国どこの病院に通院しても、その交通費がすべて労災保険から支給されるという仕組みではありません。
基本的な考え方は、傷病を治療するために適切な医療機関へ、合理的な範囲で通院しているかどうかです。
そのため、まず居住地や勤務先と同じ市町村内に、その傷病を診療できる適切な医療機関があるかを確認します。
| 確認する順番 | 医療機関の考え方 | 実務上の確認ポイント |
|---|---|---|
| 第一段階 | 居住地・勤務先と同一市町村内の治療に適した医療機関 | 近隣で必要な治療を受けられるか |
| 第二段階 | 同一市町村内に適切な医療機関がない場合の隣接市町村内の医療機関 | 隣接市町村のほうが通院しやすい事情も確認 |
| 第三段階 | 同一・隣接市町村にも適切な医療機関がない場合の最寄りの適切な医療機関 | 遠方通院が必要となる医学的・地域的理由を確認 |
同じ市町村内に医療機関があれば必ずそこなのか
同じ市町村内に病院が一つでも存在すれば、それより遠い病院への交通費が一切認められないという意味ではありません。
重要なのは、その傷病の診療に適した医療機関であるかどうかです。
たとえば、一般的な整形外科治療では対応できず、手術後の専門的なリハビリテーションが必要なケースや、特定の診療科で継続的な治療が必要なケースでは、近隣の医療機関だけでは対応できないことがあります。
この場合、主治医から別の医療機関を紹介された経緯などがあれば、遠方へ通院する合理性を説明しやすくなります。
また、行政の運用上、同一市町村内に適切な医療機関があったとしても、公共交通機関の接続などから隣接市町村の医療機関のほうが利便性が高いと認められる場合があります。
自治体の境界線だけで機械的に判断するのではなく、実際の交通事情も考慮されるということです。
自己都合による遠方通院は注意が必要
一方で、近隣に十分な治療を受けられる医療機関があるにもかかわらず、「インターネットで評判がよかった」「有名な先生に診てもらいたい」「以前から知っている病院だから」といった本人の希望だけで遠方の医療機関を選択した場合は注意が必要です。
治療を受けること自体と、そこまで移動するための交通費が労災保険の支給対象になるかは、別々に考える必要があります。
実際に治療を受けているからといって、遠距離分の交通費まで当然に認められるとは限りません。
遠方の病院へ通院するときに残しておきたいもの
- 主治医から紹介されたことが分かる紹介状
- 専門的な治療が必要であることが分かる資料
- 近隣では対応できない事情
- 実際に利用した通院経路
- 公共交通機関を利用した場合の運賃記録
労災指定病院以外を受診した場合の治療費や請求方法は、交通費とはまた別に手続き上の注意があります。
詳しくは、 労災で指定病院以外を受診した場合の費用と手続き でも解説しています。
「近い病院」と「適切な病院」は必ずしも同じではありません
労災の通院交通費では、単純な距離だけでなく、その傷病に必要な診療を受けられる医療機関かどうかも重要です。
専門医への紹介など明確な理由がある場合は、その経緯を残しておくことがポイントです。
岩手県のように市町村の面積が広く、地域によって医療機関へのアクセスに差があるところでは、都市部と同じ感覚で考えられないケースも少なくありません。
「市町村内に病院があるか」だけでは判断できない場合がありますので、遠方通院になるときは、なぜその病院へ通う必要があるのかを一度整理しておくとよいでしょう。
通勤交通費と通院交通費の違い
労災の交通費について私が説明するとき、最初に整理することが多いのが、 会社へ通勤するための交通費と、労災によるケガの治療のために病院へ通う交通費は別物 という点です。
「通勤災害」という言葉があるため、事故後の通勤に必要なガソリン代や電車代まで労災保険から支給されると思われることがあります。
しかし、通常の自宅と会社との往復にかかる費用は、ここで説明している労災保険の通院交通費とは異なります。
会社へ行くための交通費は通勤手当の問題
通常、自宅から会社へ出勤し、勤務終了後に会社から自宅へ帰るための電車代、バス代、ガソリン代などについて、会社がどこまで負担するかは、会社の就業規則、賃金規程、労働契約などによって決まります。
会社によっては公共交通機関の定期券代を全額支給するところもあれば、月額上限を設けているところ、自家用車通勤について距離区分で通勤手当を定めているところもあります。
これは労災保険給付とは別のルールです。
これに対して、業務中または通勤途中の事故によって負傷し、そのケガを治療するために自宅などから整形外科へ通う場合の交通費が、労災保険上の移送費として検討されます。
| 交通費の種類 | 主な移動 | 基本的な取扱い | 誰のルールで決まるか |
|---|---|---|---|
| 通常の通勤交通費 | 自宅から会社、会社から自宅 | 労災の通院交通費ではない | 就業規則・賃金規程・労働契約など |
| 労災の通院交通費 | 自宅・勤務先などから治療先 | 一定要件で移送費の対象 | 労災保険の支給基準 |
通勤災害でも日常の通勤費が出るわけではない
ここが特に混乱しやすいところです。
たとえば、いつもの通勤経路で交通事故に遭い、通勤災害として労災保険の対象になったとします。
その後、ケガをした状態でも勤務可能で、本人が会社へ出勤するために車や電車を利用していたとしても、その通常の出勤交通費まで自動的に労災保険の通院交通費になるわけではありません。
一方、仕事が終わった後に治療のため病院へ移動した費用については、所定の要件を満たせば通院費として検討されます。
迷ったら目的で分けて考えます
- 会社へ仕事に行くための移動なのか
- 労災によるケガを治療するための移動なのか
この二つを分けるだけでも、制度の理解がかなりしやすくなります。
実際によくある相談が、「事故で足を痛めて電車通勤が難しいため、自家用車で出勤しています。
そのガソリン代は労災から出ますか」というものです。
この場合、まず会社への出勤費用と病院への通院費用を切り分けます。
会社側も、従業員から提出されたガソリン代やタクシー代を何でも「労災費用」として扱わないことが大切です。
通常の通勤手当なのか、労災保険へ請求する通院交通費なのか、会社が独自に負担する費用なのかを明確にすると、後の精算トラブルを防ぎやすくなります。
通勤途中の事故がどこまで通勤災害になるかについては、寄り道や通常と異なる経路など別の論点もあります。
詳しくは、 労災は通勤中も対象になるのか、通勤災害の認定基準と手続き も参考にしてください。
電車やバスの交通費は実費で計算

電車やバスなどの公共交通機関を利用して労災の治療に通院した場合は、基本的に 実際の通院に必要となった運賃相当額 をもとに交通費を整理します。
たとえば、自宅の最寄り駅から病院の最寄り駅まで電車で片道300円、そこから路線バスを利用して片道200円かかったとします。
往復すれば、単純計算では1回の通院につき1,000円です。
ただし、実際の請求では通院日、利用した区間、利用した交通手段などを確認していくため、単に「1か月で10回病院へ行ったので1万円」というまとめ方だけではなく、通院記録を残しておくことが大切です。
通院した日ごとに記録する
治療が1週間程度で終わるのであれば、後から通院日を思い出すことも難しくないかもしれません。
しかし、骨折や靱帯損傷などで数か月にわたってリハビリへ通うケースになると、20回、30回と通院回数が増えていきます。
私も書類を確認するときに、「この日は病院へ行ったのは分かるけれど、車だったか電車だったか覚えていない」というケースを見かけます。
こうなると、診療明細などから通院日を確認し直し、交通手段について本人の記憶をたどる作業が必要になります。
通院開始時から記録しておく項目
- 通院した年月日
- 自宅・勤務先など出発した場所
- 通院した医療機関
- 利用した電車・バスなどの区間
- 片道か往復か
- その日に負担した運賃
- 普段と異なる経路を利用した場合の理由
ICカードを使う場合も履歴を残す
現在はSuicaなどの交通系ICカードを利用している人も多く、紙の切符を購入しないケースが一般的です。
その場合でも、後から利用区間を確認できるようにICカードの利用履歴や、交通事業者の運賃が分かる情報を残しておくと整理しやすくなります。
特に、通院と私用の移動が同じ日に混在する場合には注意が必要です。
労災保険で対象となるのは療養のために必要な部分なので、私用で別の場所へ移動した費用まで含めないようにします。
通院の途中で寄り道した場合などは、通常の通院経路であればいくらだったのかを整理しておくと説明しやすいでしょう。
定期券区間と重複する場合
通勤定期券などをすでに持っており、病院への通院区間がその定期券の範囲に含まれているケースもあります。
この場合、定期券を使用したことで新たな運賃負担が発生していない区間まで、通常運賃を当然に請求できると考えるのは避けたほうがよいでしょう。
通院費は療養のために必要となった費用を補う趣旨の給付ですので、実際に追加負担が生じているかという点も含めて確認が必要です。
「運賃表の金額」と「実際に負担した金額」は同じとは限りません
定期券、回数券、割引制度などを利用している場合には、実際の負担状況が分かるようにしておきましょう。
判断が微妙なケースは、請求時に所轄の労働基準監督署へ確認するのが確実です。
また、病院から別の医療機関を紹介され、その日に検査のため移動するようなケースでは、通常の自宅と病院との往復だけでは整理できないことがあります。
そのような場合も、どこからどこへ、何のために移動したのかを記録しておくことが重要です。
公共交通機関の通院費は計算方法そのものは比較的シンプルですが、通院期間が長くなるほど記録管理が重要になります。
治療開始時に簡単な一覧表を一つ作っておくだけでも、後の請求作業はかなり楽になりますよ。
自家用車の交通費はどう計算する?
公共交通機関が十分に整っていない地域では、自家用車で医療機関へ通院するケースも多いと思います。
特に岩手県内では、自宅から最寄りの整形外科まで数km以上離れており、バスの本数も少ないという地域は珍しくありません。
そのため、私が労災の通院交通費について相談を受けるときも、自家用車を利用しているケースはよくあります。
自家用車で通院した場合に注意したいのは、 ガソリンスタンドで実際に支払ったガソリン代をそのまま請求する仕組みではない という点です。
労働局で用いられている通院費の請求内訳書では、自家用車について1kmあたり37円で算定する取扱いが示されています。
自家用車は距離を基準に計算する
たとえば、自宅から病院までの合理的な通院経路が片道10kmだったとします。
自宅から病院へ行き、その日のうちに自宅へ戻れば往復20kmです。
自家用車で片道10kmの例
10km × 2 × 37円 = 740円
同じ条件で5日通院した場合は、740円 × 5日 = 3,700円が計算上の目安になります。
この計算では、その日にガソリンを何リットル給油したか、車の実燃費が1リットル何kmだったか、ガソリン価格がいくらだったかを個別に計算するわけではありません。
SUVだから燃費が悪い、小型車だから燃費が良いといった車種ごとの差によって金額を変える方式でもありません。
そのため、ガソリンの給油レシートを集めて「この月に1万円給油したので、1万円請求します」という考え方とは異なります。
距離の根拠を残しておく
自家用車の場合、金額の計算以上に重要なのが通院距離です。
片道距離が10kmなのか12kmなのかによって、通院回数が増えるほど請求金額の差も大きくなります。
Googleマップなどの地図サービスで、自宅などから医療機関まで実際に利用している経路を表示し、距離が分かる状態で保存または印刷しておくと説明しやすくなります。
ただし、検索結果に複数ルートが表示される場合は、最も距離が長い経路を選べばよいというものではありません。
通常利用する合理的な経路を基本に整理する必要があります。
自家用車通院で残しておくと便利な記録
- 自宅などから病院までの経路図
- 片道距離
- 通院日
- 往復したか片道のみだったか
- 途中で勤務先から病院へ向かった場合はその経路
会社や家族に送迎してもらった場合
本人が自分で運転できず、家族の車や同僚の私用車で送ってもらうこともあります。
また、事故直後に会社の車で医療機関へ連れて行ってもらうケースもあります。
こうした場合は、本人が自家用車を運転したケースと費用負担の実態が異なります。
会社の車で送迎され、本人が交通費を負担していないのであれば、本人にどのような費用が生じているのかを確認する必要があります。
一方、家族や知人の私用車による送迎などについては、具体的な状況を踏まえて取り扱いを確認することになります。
特殊なケースでは、自己判断で金額を作るよりも、通院状況を説明したうえで労働基準監督署へ確認したほうが確実です。
37円という単価は提出時点で再確認してください
1kmあたり37円という算定単価を含め、行政上の取扱いや使用する様式は将来変更される可能性があります。
長期間通院している場合や過去分をまとめて請求する場合も、提出時点の案内を確認してください。
自家用車通院は、領収書が発生しない分、「何を証拠として残せばよいのか」が分かりにくいところです。
だからこそ、通院日と距離の記録が重要になります。
毎回記録するのは多少手間ですが、治療終了後に数十回分を思い出すよりは、通院の都度記録するほうが圧倒的に楽です。
労災の交通費を請求する方法と注意点
支給対象となる通院であっても、通院しただけで交通費が自動的に銀行口座へ振り込まれるわけではありません。
通院日、通院先、交通手段、距離や運賃などを整理し、労災保険の療養費用の一つとして請求する必要があります。
特にタクシー利用、遠方への通院、自家用車での長期通院では、後から交通手段の必要性や経路を説明できるようにしておくことが重要です。
ここからは、実際に交通費を請求するときの考え方と、書類を準備するときの注意点を詳しく確認していきます。
タクシー代が認められる条件
労災で病院へ通院する場合でも、 タクシー代が常に労災保険から全額支給されるわけではありません。
タクシーは電車やバスと比較して費用が高くなりやすいため、その利用に必要性があったかどうかが重要になります。
ここは実務でも特に注意してほしいところです。
「労災の治療なのだからタクシーで行っても後から全部返ってくるだろう」と考えて何度も利用し、数万円単位になった後から相談されるケースがあります。
しかし、タクシーを利用したという事実だけで支給対象になるわけではありません。
傷病の状態からタクシーが必要だったか
たとえば、下肢を骨折して公共交通機関の乗り降りが著しく困難である、医師から歩行を制限されている、車椅子を使用しており通常の路線バスでは通院が難しいといった事情が考えられます。
このような場合は、単に「タクシーのほうが楽だから利用した」というケースとは事情が違います。
医学的な観点から、他の交通手段を利用することが難しかったという事情を説明できることが重要です。
可能であれば、主治医に通院方法について相談し、歩行制限などの指示がある場合には診療記録に残るようにしておくとよいでしょう。
公共交通機関の状況も判断材料になる
本人の身体状態だけでなく、居住地域の交通事情も関係します。
都市部であれば病院の前までバスが頻繁に運行していることがありますが、地方では最寄りのバス停まで徒歩で長距離移動しなければならなかったり、1日に数本しか運行していなかったりすることがあります。
同じケガでも、利用できる公共交通機関によってタクシーの必要性は変わります。
そのため、「タクシーは絶対に対象外」「ケガをしているなら必ず対象」と一律に考えないことが重要です。
| 事情 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 歩行困難 | 傷病の程度、医師からの歩行制限など |
| 公共交通機関がない | バス・鉄道の運行状況、最寄り停留所までの距離 |
| 深夜・早朝の受診 | 緊急性と利用可能な他の交通手段 |
| 遠方通院 | その医療機関へ通院する必要性 |
領収書は必ず保管する
タクシーを利用した場合は、利用日、金額、できれば乗車区間を確認できる領収書を保管してください。
数か月後にまとめて請求するとき、銀行やクレジットカードの支払履歴に「タクシー会社3,200円」とだけ表示されていても、どの通院の費用だったのか確認できない可能性があります。
領収書を通院日ごとに保管し、通院記録と対応させておくのが理想です。
タクシーは利用前の確認が重要です
継続的にタクシーを利用する予定で費用が大きくなりそうな場合は、できれば利用を続ける前に労働基準監督署へ相談してください。
医師にも移動方法について相談し、医学的必要性がある場合にはその事情を説明できるようにしておきましょう。
「利用した後に必要性を説明する」より、「必要性を確認してから利用する」ほうがトラブルを防ぎやすいです。
また、事故当日の救急搬送、退院時の移送、通常の外来通院では、それぞれ状況が違います。
タクシーという交通手段だけを見て判断するのではなく、いつ、どこからどこまで、なぜその交通手段が必要だったのかを整理することが大切です。
通院交通費の請求書と必要書類

労災の通院交通費を請求するときは、療養に必要となった費用の一つとして手続きを進めます。
交通費だけを口頭で会社や労働基準監督署に伝えれば支給されるわけではなく、所定の請求書と通院状況を確認するための資料を準備します。
実務上は、通院した日、医療機関、利用した交通手段、距離、金額などを一覧にしておくと非常に分かりやすくなります。
まず通院日を確定する
交通費請求の基本になるのは「いつ病院へ通院したか」です。
通院日が分からなければ、交通費の回数も確定できません。
通院期間が長い場合は、病院の領収書、診療明細、診察券の予約履歴などと照合して、実際に受診した日を確認します。
リハビリで週2回、週3回と通院している人ほど、後から正確な日付を思い出すのは難しくなります。
そのうえで、各通院日にどの交通手段を利用したのかを対応させます。
| 書類・資料 | 主な内容 | 準備するときのポイント |
|---|---|---|
| 療養の費用請求書 | 移送費を含む療養費用の請求 | 業務災害と通勤災害で様式を確認 |
| 通院交通費の明細 | 通院日、経路、距離、交通手段、金額 | 通院日ごとに整理する |
| 領収書 | タクシー等の実費確認 | 利用日と通院日を対応させる |
| 通院経路が分かる地図 | 自家用車の距離等の確認 | 合理的な通常経路を示す |
| その他の説明資料 | 遠方通院や特殊な交通手段の必要性 | 必要に応じて準備する |
交通手段ごとに必要な資料が違う
公共交通機関であれば、利用区間と運賃が分かるようにします。
自家用車であれば、通院経路と距離を確認できる地図などが役立ちます。
タクシーであれば領収書の保管が特に重要です。
つまり、すべての交通手段について同じ添付書類を提出するというより、 「この金額がなぜ発生したのか」を説明できる資料をそろえる と考えると分かりやすいです。
通院開始時から一覧表を作っておく
私が実務で特におすすめしているのが、通院を始めた段階から簡単な一覧表を作る方法です。
通院記録の記載例
- 8月1日 ○○整形外科 自家用車 往復18km
- 8月5日 ○○整形外科 自家用車 往復18km
- 8月8日 ○○整形外科 バス 往復760円
- 8月12日 ○○病院 タクシー 片道2,800円・領収書あり
この程度の記録でも、数か月後の書類作成はかなり楽になります。
逆に、治療終了後に半年分を一度に整理しようとすると、病院の領収書を全部並べ、カレンダーを確認し、交通手段を思い出すところから始めることになります。
会社が手続きをサポートする場合
実際の労災手続きでは、会社の総務担当者や顧問社労士が従業員の書類作成をサポートすることも多いです。
この場合でも、実際に通院した日や交通手段を最も把握しているのは本人です。
会社側で毎月「通院交通費の一覧」を従業員から提出してもらうルールにしておくと、長期療養でも記録が途切れにくくなります。
会社が一時的に交通費を負担している場合には、会社の立替金なのか、会社独自の福利厚生として負担するのか、後に労災給付との精算を予定しているのかも整理しておきましょう。
誰が実際に費用を負担しているかが曖昧なまま進めると、二重精算につながる可能性があります。
労災保険給付全体の申請の流れについては、 労災の申請手続きと必要書類の流れ でも整理しています。
書類は「請求するとき」ではなく「通院したとき」から作り始める
これが通院交通費の手続きを楽にする一番のポイントです。
病院へ行った日に交通手段だけ記録する習慣をつけておけば、請求段階で困ることはかなり減ります。
業務災害と通勤災害で使う様式
労災の通院交通費を請求するときに使用する書類は、事故が 業務災害なのか通勤災害なのか によって異なります。
名称が似ている様式が多いため、初めて申請する人にとっては分かりにくいところです。
大きく分けると、仕事が原因で発生したケガや病気については業務災害用の様式、通勤が原因で発生したケガや病気については通勤災害用の様式を使用します。
業務災害では様式第7号
仕事中の事故など業務災害について通院交通費を請求する場合は、原則として「療養補償給付たる療養の費用請求書」に該当する 様式第7号 を使用します。
現在は複数事業労働者に関する表記なども加わり、正式な様式名称が長くなっていますが、実務上は「7号」と呼ばれることが多い書類です。
労災指定医療機関で通常の治療を受ける際に提出する様式第5号とは用途が異なります。
通院交通費は「療養の費用」の一部として請求するため、様式第7号の系統を使用するという整理です。
通勤災害では様式第16号の5
通勤途中の事故が原因となった傷病の通院交通費については、原則として 様式第16号の5 を使用します。
通勤災害の場合は、事故が発生した通勤経路、通勤方法、事故発生時の状況など、業務災害とは異なる確認事項があります。
たとえば、普段と異なる経路を利用していた場合や、途中で私用の寄り道をしていた場合には、そもそも通勤災害として認められる範囲なのかという論点が先に出てくることがあります。
| 災害の種類 | 通院交通費を請求するときの主な様式 | 代表的な事故例 |
|---|---|---|
| 業務災害 | 様式第7号 | 作業中の転倒、機械作業中の負傷など |
| 通勤災害 | 様式第16号の5 | 合理的な通勤経路上での交通事故など |
請求書だけで完結するとは限らない
様式第7号や第16号の5を提出すれば、それだけで必ず通院交通費の審査が完了するとは限りません。
通院日、利用区間、距離などを確認するための内訳書や、タクシーの領収書、自家用車の経路図など、事案に応じた資料を求められることがあります。
特に、遠方の医療機関へ何度も通院している場合や、タクシー代が高額になっている場合は、必要性を確認するために追加の説明が求められる可能性があります。
書類を提出する前のチェック
- 業務災害か通勤災害か
- 使用する様式番号は正しいか
- 通院日と請求回数が一致しているか
- 交通手段と金額の根拠が分かるか
- 必要な領収書や経路図を準備したか
最新の労災保険関係様式は厚生労働省の公式ページでダウンロードできます。
厚生労働省の案内でも、一定の要件を満たす通院交通費について、仕事が原因の場合は第7号、通勤が原因の場合は第16号の5の系統を使用することが示されています。
(出典:厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」)
古い様式を保存して使い続けないようにしましょう
労災保険の請求様式は制度改正などによって変更されることがあります。
過去に一度申請した経験がある会社でも、数年前に保存したPDFをそのまま使用するのではなく、提出時点の最新版を確認してください。
また、会社が労災事故の発生に疑問を持っているなど、事業主証明をめぐって問題になることもあります。
会社の協力が得られないからといって、その時点で労災保険の請求そのものを諦める必要があるとは限りませんので、そのような場合は労働基準監督署や専門家へ相談してください。
通院交通費の請求権は2年で時効
労災の通院交通費について、もう一つ忘れてはいけないのが 請求権の時効 です。
「労災の治療が続いている間なら、昔の交通費もいつでも請求できる」と思われることがありますが、そうではありません。
療養の費用に関する給付には時効があり、通院交通費についても、原則として費用を支出した日ごとに請求権を考える必要があります。
基本的には、それぞれの費用を支出した日の翌日から2年という期間を意識しておきます。
最後の通院日からまとめて2年ではない
ここは非常に重要です。
たとえば、2026年1月から2027年12月まで2年間にわたって通院を続けたとします。
「2027年12月に治療が終わったから、そこから2年間は全部の交通費を請求できる」と単純に考えるのは危険です。
2026年1月に支出した交通費と、2027年12月に支出した交通費では、それぞれ時効期間の起算点が異なるためです。
長期療養になれば、治療が続いている途中でも、古い交通費から順番に時効が近づいていく可能性があります。
長期通院では「治療終了後にまとめて」は避けましょう
数週間、数か月程度をまとめて整理することは実務上ありますが、年単位で放置すると古い費用から請求できなくなる可能性があります。
通院が長引いている場合は、一度現在までの交通費を整理しておくことをおすすめします。
会社に任せていても時効には注意する
実際の労災手続きでは、会社が請求書を準備してくれるケースも多いです。
そのため、本人としては「会社が全部やってくれている」と思い、交通費について特に確認していないことがあります。
ところが、会社は治療費や休業補償の請求を進めていても、本人から通院経路や交通手段の情報が提出されておらず、通院交通費だけ請求されていなかったということもあり得ます。
労災給付の請求は、給付ごとに必要な手続きが異なります。
「治療が労災扱いになっているから交通費も自動的に処理されている」とは限りません。
後から請求するなら早めに通院記録を確認する
すでに半年、1年と通院していて交通費を一度も請求していない場合は、まず過去の通院日を確認してみてください。
病院の領収書、診療明細、予約記録などを確認し、その日に利用した交通手段を整理します。
自家用車であれば通院距離、公共交通機関であれば運賃、タクシーであれば領収書が残っているかを確認します。
長期間請求していなかった場合の確認順序
- 最も古い通院日を確認する
- 通院日ごとの交通手段を整理する
- 領収書や経路図を準備する
- 時効が近い費用がないか確認する
- 早めに労働基準監督署へ提出・相談する
「もう2年近く経っているかもしれない」という場合は、自己判断で諦めてしまわず、まず具体的な支出日を確認してください。
時効の計算には個別の事情が関係する可能性もありますので、判断が微妙な場合は労働基準監督署や専門家へ早めに相談することをおすすめします。
交通費は1回あたり数百円程度のことも多いため、後回しにされがちです。
しかし、半年、1年とリハビリ通院が続けば、合計額は決して小さくありません。
通院記録を定期的に整理することが、時効対策としても非常に大切です。
交通費が認められにくいケース

労災による傷病の治療のために使った交通費であっても、すべてが無条件で支給されるわけではありません。
通院交通費で問題になりやすいのは、 その支出について療養上の必要性や合理性を説明しにくいケース です。
単純に「病院に行った」「実際に交通費を払った」という二つの事実だけで判断されるわけではありません。
どの医療機関へ、どの交通手段で、なぜそこへ通ったのかという一連の事情を見る必要があります。
代表的には、次のようなケースが考えられます。
- 自宅から会社へ通常どおり出勤するための交通費
- 近隣に適切な医療機関があるのに自己都合で遠方へ通院した場合
- 片道2km未満で交通機関を利用する特別な事情が乏しい場合
- 公共交通機関を利用できる状況で必要性を確認せず高額なタクシーを利用した場合
- 定期券などで追加負担が生じていない区間を重複して請求する場合
- 通院日や経路、利用した交通手段を確認できない場合
本人の希望だけで遠方へ通院している場合
たとえば、自宅から5kmの場所に傷病を診療できる労災指定医療機関があるにもかかわらず、「インターネットで評判が良かった」という理由だけで50km離れた病院へ毎週通院しているとします。
この場合、50km先の病院へ通う医学的な必要性があるのかが問題になります。
本人にとっては「より良い病院で治療を受けたい」という自然な気持ちかもしれませんが、それと遠距離の交通費を労災保険で負担するかどうかは別の問題です。
一方で、近隣の病院では対応できない特殊な手術を受ける必要があり、主治医から大学病院へ紹介されたというケースであれば事情は違います。
遠方通院では、 「遠いか近いか」よりも「なぜそこへ行かなければならないのか」を説明できることが重要 です。
必要性を確認せずタクシーを使い続けた場合
事故直後は足の痛みが強く、タクシーでなければ通院できなかったとしても、症状が改善した後まで同じ条件が続くとは限りません。
最初の数回はタクシーの必要性が認められる可能性があっても、歩行可能になり公共交通機関を利用できるようになった後については別に判断されることがあります。
継続的にタクシーを利用する場合は、「最初に認められたから治療終了まで全部認められる」と決めつけないことが大切です。
通院したことを確認できない場合
本人の記憶だけで「去年はだいたい週2回くらい通いました」と申告しても、正確な請求額を計算するのは困難です。
診療記録や領収書から実際の通院日を確認し、交通手段と対応させる必要があります。
また、病院へ行ったついでに私用の買い物をして大きく迂回した場合、その迂回分まで療養に必要な交通費とは言いにくいでしょう。
| 認められにくくなる要因 | 事前にできる対策 |
|---|---|
| 遠方の医療機関を自己都合で選択 | 遠方通院が必要な理由を確認する |
| 高額なタクシーを継続利用 | 医師や労働基準監督署へ事前相談する |
| 距離や経路が分からない | 地図や利用履歴を保存する |
| 通院日が分からない | 診療明細と通院記録を保管する |
| 通常通勤費と混在 | 通勤と通院を別々に記録する |
「支払った=労災から支給される」ではありません
労災の交通費では、実際にお金を使ったという事実だけではなく、その支出が療養のために必要で合理的だったかという視点が重要です。
特に高額な費用が発生する場合は、支出前に確認しておくことをおすすめします。
これは労働基準監督署が意地悪をして交通費を減らすという話ではなく、労災保険という公的な保険制度から、療養に必要な費用を給付するための確認です。
本人としても、通院先や交通手段を選ぶ段階で基準を知っていれば、後から「支給されないとは知らなかった」というトラブルを防ぎやすくなります。
私としては、遠方通院やタクシー利用など判断が微妙なケースほど、「後から聞く」のではなく「先に聞く」ことをおすすめします。
労災の交通費で迷ったときの確認ポイント
労災の交通費について迷ったときは、「労災だから交通費が出るのか」という一つの質問だけで考えないことがポイントです。
交通費の支給可否は、通院の目的、距離、医療機関、交通手段、実際の費用負担など、複数の条件を順番に確認して判断します。
ここまで説明してきた内容を、実際にあなたが通院交通費を確認するときの順番に整理してみます。
労災の交通費を確認する順番
- 労災による傷病の治療のための通院か
- 居住地または勤務先から医療機関までの距離はどの程度か
- その医療機関へ通院する合理的な理由があるか
- 電車・バス・自家用車・タクシーのどれを利用したか
- 通院日や経路、領収書などの資料が残っているか
- 2年の請求時効に近づいていないか
最初に「治療のための移動か」を確認する
まず、通常の出勤なのか、労災による傷病を治療するための通院なのかを分けます。
通常の通勤交通費であれば、基本的には会社の通勤手当のルールを確認することになります。
労災による傷病の治療のため病院へ移動したのであれば、次に距離と医療機関を確認します。
次に距離と通院先を確認する
片道2km前後の距離基準を確認し、そのうえで通院先が傷病の診療に適した医療機関かを見ます。
遠方通院の場合は、近隣で同じ治療を受けられない理由や、主治医から紹介された経緯などがあるか確認します。
距離だけを満たしていても医療機関の選び方に合理性がなければ問題になる可能性がありますし、逆に距離が短くても傷病の状態によって交通機関の利用が必要と判断される場合があります。
交通手段ごとに証拠を残す
公共交通機関なら利用区間と運賃、自家用車なら経路と距離、タクシーなら領収書と利用する必要性というように、交通手段によって残しておきたい資料が変わります。
| 交通手段 | 主な確認事項 | 残しておきたいもの |
|---|---|---|
| 電車・バス | 利用区間と運賃 | IC履歴、運賃情報、通院記録 |
| 自家用車 | 通院距離と回数 | 経路図、通院日一覧 |
| タクシー | 利用する必要性と実費 | 領収書、必要性を説明できる資料 |
労災保険給付は原則として非課税
労災保険から支給される保険給付については、労働者災害補償保険法上、原則として租税その他の公課を課すことができない取扱いとなっています。
そのため、通院に必要な移送費について労災保険から支給を受けたからといって、通常それ自体を給与所得として所得税の計算に加えるものではありません。
ただし、確定申告の医療費控除を利用する場合には、実際に負担した医療費や交通費と、保険などから補填された金額との関係を別に整理する必要があります。
「労災給付が非課税であること」と「同じ費用を医療費控除でどのように扱うか」は同じ論点ではありません。
税務上の具体的な処理まで判断する必要がある場合は、税務署または税理士へ確認してください。
会社側も立替精算を整理する
会社側では、従業員から「病院までのガソリン代を会社で払ってほしい」「タクシー代を精算してほしい」と依頼されることがあります。
この場合も、会社が独自に交通費を負担するのか、労災保険への請求をサポートするのか、会社が一時的に立て替えて後で精算するのかを明確にしておくことが大切です。
曖昧な状態で本人へ全額支払い、さらに本人が同じ交通費について労災給付を受けると、精算関係が複雑になります。
中小企業では経理担当者と労務担当者が同じ人ということも多いため、「労災の費用だから会社でとりあえず払う」と処理する前に、費用の性質を整理することをおすすめします。
会社と本人で共有しておきたいこと
通常の通勤手当、会社が独自に負担する費用、労災保険へ請求する通院交通費は別々に整理します。
誰が何を負担し、どの制度から給付を受ける予定なのかを明確にしておくと、二重払いなどのトラブルを防ぎやすくなります。
判断が難しいものほど事前に確認する
労災の通院交通費は、電車で近隣の病院へ通うようなケースであれば比較的整理しやすい制度です。
一方、遠方の専門病院への通院、片道2km未満の通院、高額なタクシー利用、複数の病院への通院などは、個別事情によって判断が変わりやすくなります。
こうしたケースで一番避けたいのは、数か月間高額な交通費を負担した後になってから「支給対象にならない可能性があります」と分かることです。
迷う費用ほど、支払った後ではなく支払う前に確認する。
これが実務では非常に大切です。
労災の交通費は、通院距離、傷病の状態、医療機関の選択、交通事情などによって最終的な判断が変わります。
この記事で説明した金額や取扱いについても、制度改正や個別の事案によって異なる可能性がありますので、 正確な情報は公式サイトをご確認ください 。
また、「このタクシー代は支給されるのか」「この遠方通院は対象になるのか」「2km前後だが請求できるのか」といった個別判断が必要な場合は、管轄の労働基準監督署へ確認してください。
労災事故そのものの手続きや会社との調整を含めて判断が難しい場合には、 最終的な判断は専門家にご相談ください 。
労災の交通費は「距離・通院先・交通手段」の3点をまず確認
通院費は労災だから自動的に支給されるものではありません。
一方で、条件を満たしているのに制度を知らず、長期間自費のままにしているケースもあります。
通院が続いているあなたは、一度これまでの通院日と交通手段を整理してみてください。