社会保険・年金

雇用保険料率令和8年度の一覧|労使負担と変更時期を整理

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

令和8年度の雇用保険料率は、令和7年度から引き下げられました。

一般の事業では、労働者負担が5/1,000、事業主負担が8.5/1,000、労使合計が13.5/1,000となっています。

給与計算担当者にとって特に重要なのは、料率そのものだけではありません。

一般の事業、建設の事業、農林水産・清酒製造の事業で料率が異なるほか、新しい雇用保険料率をどの給与から反映するのかも確認する必要があります。

また、雇用保険料は健康保険料や厚生年金保険料とは計算の考え方が異なります。

給与明細に表示される本人負担額だけを確認したい従業員と、会社負担まで含めて人件費を把握したい経営者・給与担当者とでは、見るべき料率も違います。

この記事では、令和8年度の雇用保険料率を事業区分ごとに整理したうえで、労働者負担と会社負担の違い、給与からの計算方法、新料率へ切り替えるタイミングまで実務目線で詳しく解説します。

  • 令和8年度の雇用保険料率一覧
  • 労働者負担と事業主負担の違い
  • 給与から雇用保険料を計算する方法
  • 新しい料率へ切り替えるタイミング

雇用保険料率、令和8年度の一覧|労使負担と変更時期

雇用保険料率、令和8年度の一覧

令和8年度、つまり令和8年4月1日から令和9年3月31日までの雇用保険料率は、一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業でそれぞれ異なります。

まずは全体像を確認しておきましょう。

給与計算で従業員から控除するのは「労働者負担」の部分です。

一方、会社では従業員から預かった金額だけでなく、事業主自身が負担する部分も含めて雇用保険料を考える必要があります。

事業の種類 労働者負担 事業主負担 労使合計
一般の事業 5/1,000 8.5/1,000 13.5/1,000
農林水産・清酒製造の事業 6/1,000 9.5/1,000 15.5/1,000
建設の事業 6/1,000 10.5/1,000 16.5/1,000

給与から天引きする際に使用するのは、表の「労働者負担」の料率です。

労使合計の13.5/1,000などを従業員の給与へそのまま掛けるわけではありません。

令和8年度の料率は厚生労働省から公表されています。

給与計算ソフトの設定を変更するときや年度更新を行うときは、最終的には必ず公式の料率表も確認しておきましょう。

(出典:厚生労働省「雇用保険料率について」)

一般の事業の雇用保険料率

令和8年度における一般の事業の雇用保険料率は、 労働者負担が5/1,000、事業主負担が8.5/1,000、労使合計が13.5/1,000 です。

割合で表すと、労働者負担は0.5%、事業主負担は0.85%、合計1.35%となります。

小売業、サービス業、製造業、医療・福祉など、農林水産・清酒製造の事業や建設の事業として特別な料率が適用される事業を除き、多くの会社ではこの一般の事業の料率を使用します。

給与計算担当者が実際に従業員の給与から控除する場合には、原則として雇用保険の対象となる賃金に5/1,000を掛けて本人負担額を計算します。

「労使合計13.5/1,000」という数字のほうが大きく表示されている資料もあるため、給与計算を始めたばかりの方は、この部分を間違えないようにしてください。

たとえば、雇用保険料の対象となる賃金が30万円であれば、単純計算では次のようになります。

300,000円 × 5/1,000 = 1,500円

したがって、一般の事業で働く従業員については、30万円に対する労働者負担分の雇用保険料は1,500円が計算上の目安です。

一方、会社側では30万円に8.5/1,000を掛けるため、事業主負担分は2,550円となります。

本人負担と会社負担を合わせると4,050円です。

従業員本人の給与明細に表示されるのは原則として1,500円の部分ですが、会社の人件費として考える場合には2,550円の事業主負担も発生しているということです。

ここは採用時の人件費シミュレーションでも重要です。

たとえば月給30万円の従業員を採用するとき、「会社の負担は30万円」と考えるのではなく、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険などの法定福利費まで含めて予算を考える必要があります。

雇用保険だけを見れば大きな金額ではありませんが、従業員数が増えれば年間の負担額は積み上がります。

雇用保険料は、健康保険料や厚生年金保険料のように標準報酬月額を使って毎月同じ金額を計算する仕組みではありません。

原則として、その都度支払われる雇用保険の対象賃金に料率を掛けて計算します。

そのため、残業代や各種手当が増減すれば、基本給が同じでも雇用保険料が変わることがあります。

給与明細を見た従業員から「先月と基本給は同じなのに雇用保険料が違うのはなぜですか」と聞かれることがありますが、残業代などを含む対象賃金の総額が変わっていれば、雇用保険料も連動して変わるわけです。

実務では、料率の設定だけではなく「何を雇用保険の対象賃金として給与ソフトに登録しているか」まで確認することが大切です。

料率が正しくても、対象賃金となる手当の設定が誤っていれば、毎月の控除額も正しくなりません。

年度初めに給与計算ソフトを確認する際は、「料率」だけではなく、各手当の雇用保険対象・対象外の設定まで一度確認しておくと安心です。

建設の事業の雇用保険料率

建設の事業の雇用保険料率

令和8年度の建設の事業では、 労働者負担が6/1,000、事業主負担が10.5/1,000、労使合計が16.5/1,000 となっています。

割合では、労働者負担0.6%、事業主負担1.05%、合計1.65%です。

一般の事業では労働者負担が0.5%、事業主負担が0.85%ですから、建設の事業では労使双方とも一般の事業より高い料率が設定されています。

たとえば、雇用保険料の対象となる賃金が30万円の場合、労働者負担は次のように計算します。

300,000円 × 6/1,000 = 1,800円

同じ30万円でも、一般の事業であれば本人負担は1,500円ですが、建設の事業では1,800円となります。

事業主負担については30万円×10.5/1,000で3,150円が計算上の目安となり、本人負担と合わせると4,950円です。

ここで実務上かなり重要なのが、 「建設会社だから建設の料率」と会社名や業種のイメージだけで判断しないこと です。

雇用保険料率を判断するときには、労働保険上、その事業がどの事業区分として成立しているかを確認します。

建設業では、一つの法人の中で本社事務所と建設工事を行っていたり、元請工事と下請工事が混在していたり、建設業以外の事業も併営していたりすることがあります。

さらに、労災保険については建設の有期事業を別に扱う場面もあるため、労働保険の仕組みに慣れていない担当者にとっては混同しやすいところです。

私が実務で料率を確認するときも、「会社のホームページに建設業と書いてあるから」という理由だけでは決めません。

労働保険の保険関係成立届、労働保険番号、前年度の年度更新申告書、労働保険事務組合へ委託している場合にはその登録内容などを確認します。

特に給与計算ソフトを新しく導入したときは注意が必要です。

初期設定で「建設業」を選択すると自動的に建設の雇用保険料率が設定されるソフトもあります。

しかし、給与ソフト上の業種選択と労働保険上の事業区分が必ずしも同じとは限りません。

事業区分を誤ると、毎月の給与控除だけでなく、年度更新で計算する雇用保険料にも影響します。

何年も誤った料率で計算していた場合には、従業員から控除した金額の過不足や会社負担額にも影響するため、単なる給与ソフトの設定ミスでは済まないことがあります。

建設業は、労働保険の成立方法自体が一般の業種より複雑になる場面があります。

自社がどの料率を使用すべきか判断できない場合は、過去の年度更新資料を確認したうえで、管轄の労働局・労働基準監督署や社会保険労務士へ確認するのが確実です。

農林水産・清酒製造の料率

令和8年度の農林水産・清酒製造の事業では、 労働者負担が6/1,000、事業主負担が9.5/1,000、労使合計が15.5/1,000 となっています。

労働者負担は建設の事業と同じ6/1,000ですが、事業主負担については建設の10.5/1,000より低い9.5/1,000です。

そのため、労使合計では農林水産・清酒製造の事業が15.5/1,000、建設の事業が16.5/1,000となります。

雇用保険料の対象となる賃金が30万円の場合、労働者負担は30万円×6/1,000で1,800円です。

事業主負担は30万円×9.5/1,000で2,850円となり、労使合計では4,650円が計算上の目安になります。

ここで注意したいのは、 「農業に関係する仕事だから必ずこの料率」「水産業だから必ず6/1,000」と、名称だけで判断しないこと です。

令和8年度の雇用保険料率の案内では、農林水産関係の事業であっても、園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖など、一般の事業の料率が適用されるものが示されています。

つまり、「農林水産」という言葉だけを見て一律に15.5/1,000を使用するわけではありません。

これは給与計算担当者が自分で業種分類を推測すると間違いやすいところです。

前年度から継続している会社であれば、まず前年の労働保険年度更新申告書や給与計算設定を確認しましょう。

ただし、前年の設定が正しいとは限らないため、事業内容に変更があった場合や、これまで一度も事業区分を確認したことがない場合には、改めて確認することをおすすめします。

また、法人で複数の事業を行っている場合も注意が必要です。

たとえば農業生産だけでなく、加工、販売、飲食、別事業などを行っている企業では、実際の事業の成立状況を確認せず「会社のメイン事業が農業だから」と判断するのは危険です。

給与計算ソフトでは、事業区分を一度登録すると毎月自動で雇用保険料を計算してくれます。

便利なのですが、 最初の設定が間違っていると、その誤りも毎月自動で繰り返される ということでもあります。

新規に会社の給与計算を引き継ぐ際には、前任者の設定をそのまま信用するのではなく、労働保険番号や年度更新資料と給与ソフトの事業区分が一致しているか確認しておくとよいですよ。

特に農林水産関係は、一般の事業の料率が適用される例外もあるため、迷った場合は自己判断で料率を固定しないことが大切です。

毎月の給与控除と年度更新の両方へ影響する項目ですので、事業の実態を踏まえて確認してください。

労働者負担と会社負担の内訳

労働者負担と会社負担の内訳

雇用保険料は、健康保険や厚生年金のような単純な労使折半ではありません。

事業主の負担割合のほうが労働者より大きい ことが特徴です。

令和8年度の一般の事業を例にすると、労働者負担は5/1,000ですが、事業主負担は8.5/1,000です。

この差が生じる大きな理由が、事業主だけが負担する「雇用保険二事業」の保険料です。

一般の事業では、事業主負担8.5/1,000のうち、5/1,000が失業等給付・育児休業給付に対応する部分で、3.5/1,000が雇用保険二事業に対応する部分です。

建設の事業では雇用保険二事業の部分が4.5/1,000となるため、事業主負担は10.5/1,000になります。

区分 労働者負担 事業主負担
一般の事業 5/1,000 5/1,000+3.5/1,000
農林水産・清酒製造 6/1,000 6/1,000+3.5/1,000
建設の事業 6/1,000 6/1,000+4.5/1,000

給与明細に表示される雇用保険料は、基本的にはこのうち労働者が負担する部分です。

会社負担分まで従業員の給与から控除するものではありません。

たとえば一般の事業で対象賃金が30万円の場合、労働者負担は1,500円です。

「会社も同じ1,500円を負担している」と思われることがありますが、実際の事業主負担は2,550円です。

労使折半ではありません。

これは健康保険・厚生年金と雇用保険をまとめて「社会保険は会社と従業員が半分ずつ」と理解していると、間違えやすいところです。

健康保険や厚生年金保険は原則として保険料を労使折半しますが、雇用保険には事業主のみが負担する部分があるため、同じ考え方にはなりません。

会社が人件費を試算するときには、この事業主負担分を見落とさないことが重要です。

特に採用計画を立てるときは、月給、賞与、通勤手当などの支給額だけでなく、健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険、労災保険といった法定福利費も合わせて見ておく必要があります。

一方、従業員から「会社も自分と同じ額を払っていますか」と聞かれた場合は、「雇用保険については会社のほうが多く負担しています」と説明するとよいでしょう。

雇用保険は「労使折半」と覚えてしまうと間違いやすい制度です。

給与計算では労働者負担率、人件費計算では事業主負担率を見る と分けて考えると整理しやすくなります。

なお、労災保険料については雇用保険とは異なり、原則として全額事業主負担です。

給与から天引きすることはありません。

給与担当者としては、「雇用保険は労使負担、労災保険は会社負担」と整理しておくと、年度更新の計算も理解しやすくなります。

給与額から雇用保険料を計算する方法

従業員の雇用保険料は、基本的に 雇用保険料の対象となる賃金総額×労働者負担の雇用保険料率 で計算します。

令和8年度の一般の事業であれば、労働者負担率は5/1,000です。

そのため、対象となる賃金が25万円なら1,250円、30万円なら1,500円、40万円なら2,000円が単純計算上の本人負担額となります。

対象賃金 一般の事業5/1,000 建設等6/1,000
200,000円 1,000円 1,200円
250,000円 1,250円 1,500円
300,000円 1,500円 1,800円
400,000円 2,000円 2,400円

上記の金額は、仕組みを分かりやすくするための 一般的な目安 です。

実際の給与計算では、まず「何が雇用保険料の対象となる賃金なのか」を確認し、そのうえで料率を掛ける必要があります。

労働保険における賃金総額には、名称にかかわらず労働の対償として支払われるものが原則として含まれます。

代表的なものとして、基本給、時間外手当、深夜手当、休日手当、役職手当、住宅手当、家族手当、通勤手当、賞与などがあります。

ここでよくある間違いが通勤手当です。

所得税では一定額まで非課税となる通勤手当がありますが、 税金で非課税だから雇用保険でも対象外になるわけではありません。

雇用保険料を計算するときは、税務上の課税・非課税とは別に考える必要があります。

一方で、一般的な退職金、結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金、実費弁償としての出張旅費や宿泊費などは、通常の賃金総額には含まれません。

ただし、名称だけでは判断できないものもあります。

実態として労働の対償なのか、実費弁償なのかによって取扱いが変わることがあるため、特殊な手当を新設するときは確認しておいたほうがよいでしょう。

雇用保険料の対象となる代表例 原則として対象とならない代表例
基本給 退職金
残業・深夜・休日手当 結婚祝金・弔慰金
役職・住宅・家族手当 災害・私傷病見舞金
通勤手当 実費弁償の出張旅費
賞与 解雇予告手当

また、雇用保険料の計算では1円未満の端数が生じる場合があります。

給与から被保険者負担分を源泉控除する一般的なケースでは、原則として被保険者負担額の端数が50銭以下なら切り捨て、50銭1厘以上なら切り上げる取扱いがあります。

ただし、労使間で慣習的な端数処理などの特約がある場合には取扱いが異なることがあります。

給与計算ソフトでは端数処理も自動で行われることが多いため、普段は意識しないかもしれません。

ただ、新しい給与ソフトへ移行した直後や、自作のExcelで給与計算を行っている会社では、この端数処理が正しく設定されているか確認しておきましょう。

雇用保険は実際の対象賃金に料率を掛けるため、給与額が変われば雇用保険料も連動して変わりやすい制度です。

健康保険料や厚生年金保険料は標準報酬月額を基礎にするため、毎月の残業代が少し変わっただけでは直ちに保険料が変わりません。

雇用保険はこの点が異なります。

給与明細の質問を受けたときには、「雇用保険はその月の対象賃金をもとに計算している」と説明すると、従業員にも伝わりやすいですよ。

雇用保険料率、令和8年度の実務対応

令和8年度の料率そのものを確認したら、次は給与計算へ正しく反映する必要があります。

実務では「新しい料率は0.5%」と把握していても、切り替える給与を1か月間違えるケースがあります。

特に月末締め翌月払いの会社では、4月1日に料率が変わるからといって、単純に4月支給給与から変更するとは限りません。

また、給与ソフトが自動アップデートされる会社でも、適用開始月が自社の締日・支給日に合っているかの確認は必要です。

ここからは、新料率をいつから使用するのか、令和7年度からどこが変わったのか、年度初めに給与担当者が確認しておきたいポイントを整理します。

雇用保険料率はいつから変更するか

令和8年度の雇用保険料率は、 令和8年4月1日から令和9年3月31日まで の保険年度について適用されます。

給与計算で特に重要なのは、「4月1日から変更」という言葉を単純に「4月に支給する給与から変更」と考えないことです。

労働保険では、賃金がどの年度に属するかについて、原則として賃金の支払日ではなく 賃金締切日 を基準に判断します。

したがって、実務上は 令和8年4月1日以降、最初に賃金締切日が到来する給与から令和8年度の雇用保険料率を使用する と整理すると分かりやすいです。

たとえば、毎月末締め・翌月25日払いの会社を考えてみましょう。

3月1日から3月31日まで働いた分を4月25日に支払う場合、賃金の締切日は3月31日です。

支給日は4月ですが、締切日は令和7年度中なので、令和7年度の雇用保険料率で計算します。

その次の4月1日から4月30日までの給与は、締切日が4月30日です。

これは令和8年度に属する賃金となるため、5月25日に支給するとしても令和8年度の新しい料率を使用します。

給与体系 締日 支給日 適用する料率
月末締め翌月25日払い 3月31日 4月25日 令和7年度
月末締め翌月25日払い 4月30日 5月25日 令和8年度
15日締め当月末払い 4月15日 4月30日 令和8年度

一方、15日締め・当月末払いの会社であれば、4月15日締めの給与は令和8年度に属するため、4月末に支払う給与から新料率を適用することになります。

このように、同じ「4月支給給与」であっても、会社によって旧料率を使う場合と新料率を使う場合があります。

給与担当者からすると少し紛らわしいところですが、「支給月ではなく締日を見る」と整理しておけば判断しやすくなります。

(出典:山形労働局「労働保険料算定基礎賃金等の報告の書き方」)

支給月だけを見て料率を切り替えないことが重要です。

特に月末締め翌月払いの会社では、4月支給給与が旧料率、5月支給給与から新料率となるケースがあります。

賞与や特殊な締め方をしている賃金がある場合は、通常給与と同じ感覚で判断せず、対象となる賃金の締切日や支払いが確定した時期を確認してください。

自社の給与体系が複雑な場合には、年度初めに一度整理しておくと、その後の年度更新までスムーズになります。

給与計算で料率を変更するタイミング

給与計算で料率を変更するタイミング

給与計算担当者が年度初めに行うべきことは、料率表を確認するだけではありません。

給与計算ソフトの設定が、どの給与から新料率へ切り替わるようになっているかまで確認する必要があります。

たとえば、月末締め翌月払いの会社では、4月30日締めの給与が5月に支払われるため、給与ソフト上では5月支給給与から新料率を設定するケースがあります。

一方、15日締め当月末払いであれば、4月15日締めの4月支給給与から新料率となります。

私が給与計算の設定を確認するときも、単に「令和8年度の料率に更新されていますか」とは見ません。

締日、支給日、賃金計算期間、新料率の適用開始給与 までセットで確認します。

給与計算担当者が確認したい項目

  • 自社の労働保険上の事業区分
  • 令和8年度の労働者負担率
  • 給与の締日と支給日
  • 新料率を適用する最初の給与
  • 給与計算ソフトの料率設定
  • 各手当の雇用保険対象・対象外設定
  • 端数処理の設定
  • 変更前後の控除額

最近のクラウド型給与計算ソフトでは、法改正に合わせて雇用保険料率が自動更新されるものも多くなっています。

しかし、「自動更新だから何もしなくてよい」と考えるのはおすすめしません。

ソフト自体には正しい料率が登録されていても、会社側が登録した締日や支給日、事業区分、適用開始月が間違っていれば、計算結果も間違います。

また、会社独自の設定で雇用保険料率を固定値にしていた場合、自動更新が反映されないこともあります。

実務では、料率変更後の最初の給与計算を行った際に、従業員を一人抽出して手計算し、ソフトの計算結果と照合する方法がおすすめです。

たとえば一般の事業で対象賃金が300,000円なら、令和8年度の本人負担は300,000円×5/1,000=1,500円です。

給与ソフト上の控除額も1,500円になっているかを確認します。

残業代や通勤手当などがある場合は、それらが対象賃金へ含まれているかも同時に見ます。

全従業員を手計算する必要はありません。

最初の給与で代表的な従業員を数人確認するだけでも、料率設定や対象賃金設定の誤りをかなり見つけやすくなります。

月給者、時給者、残業のある方など、給与パターンが異なる従業員を選ぶとなおよいでしょう。

また、従業員から「給与が同じなのに雇用保険料が変わった」と問い合わせを受けることもあります。

令和8年度は労働者負担率が引き下げられているため、対象賃金が同じであれば、基本的には本人負担額も令和7年度より小さくなります。

年度改定時は、最初の給与計算結果を前年同月や前月と比較してみるのも有効です。

料率が下がったのに雇用保険料が不自然に増えている場合は、賃金額の変化や設定内容を確認してみましょう。

給与計算は毎月同じ処理を繰り返すため、一度設定を間違えると、その後も間違ったまま処理が続きやすい業務です。

料率改定の最初の月だけ少し丁寧に確認する。

これが結果的に一番効率的かなと思います。

令和7年度からの変更点

令和8年度の雇用保険料率は、令和7年度と比べて引き下げられています。

一般の事業では、令和7年度の労使合計14.5/1,000から、令和8年度は13.5/1,000となりました。

労働者負担は5.5/1,000から5/1,000へ、事業主負担は9/1,000から8.5/1,000へ引き下げられています。

農林水産・清酒製造の事業については、労働者負担が6.5/1,000から6/1,000、事業主負担が10/1,000から9.5/1,000となり、労使合計は16.5/1,000から15.5/1,000へ下がりました。

建設の事業も同様に、労働者負担が6.5/1,000から6/1,000、事業主負担が11/1,000から10.5/1,000となり、合計では17.5/1,000から16.5/1,000へ引き下げられています。

事業区分 令和7年度 令和8年度
一般の事業 14.5/1,000 13.5/1,000 1/1,000低下
農林水産・清酒製造 16.5/1,000 15.5/1,000 1/1,000低下
建設の事業 17.5/1,000 16.5/1,000 1/1,000低下

労使合計ではいずれの事業区分も1/1,000の引き下げですが、その内訳を見ると、 労働者負担と事業主負担がそれぞれ0.5/1,000ずつ下がっています。

一般の事業で雇用保険料の対象となる賃金が30万円の場合、労働者負担は令和7年度の1,650円から、令和8年度は1,500円となり、単純計算では月150円減少します。

会社側についても、30万円に対する事業主負担は令和7年度の2,700円から、令和8年度は2,550円となり、月150円減少する計算です。

たとえば同じ条件の従業員が10人いる会社で単純化して考えると、会社負担は月1,500円、年間では18,000円程度減少する計算になります。

従業員が50人、100人と増えれば影響額も大きくなります。

もちろん実際には各従業員の賃金や賞与額が異なるため、これはあくまで目安です。

一般の事業・月30万円の場合の本人負担

令和7年度:300,000円×5.5/1,000=1,650円

令和8年度:300,000円×5/1,000=1,500円

差額:月150円減

従業員にとっては給与から控除される金額がわずかに減り、会社側にとっても法定福利費の負担がわずかに軽くなります。

ただし、「雇用保険料が下がったから会社全体の社会保険料負担も必ず減る」とは限りません。

健康保険料率や介護保険料率の変更、従業員の昇給、標準報酬月額の変更、採用人数の増減など、会社全体の法定福利費にはさまざまな要素が影響します。

雇用保険だけを切り取った場合には負担減ですが、人件費全体では別途確認が必要です。

予算や人件費計画を作る担当者は、前年の実績額をそのまま翌年度へコピーするのではなく、最新の料率を反映しておくことをおすすめします。

人数の多い会社では、わずかな料率変更でも年間予算に一定の差が出ます。

雇用保険料率が改定される理由

雇用保険料率が改定される理由

雇用保険料率は、毎年度まったく同じ数字が続くとは限りません。

雇用保険には、労働者が失業した場合の基本手当だけでなく、育児休業給付や教育訓練給付など、さまざまな給付があります。

また、事業主のみが保険料を負担する雇用保険二事業もあり、制度全体を維持するための財源として雇用保険料が使われています。

雇用保険料率は、こうした給付に必要な財源や雇用保険財政の状況などを踏まえ、法律上の仕組みに基づいて設定・見直しが行われます。

そのため、「前年がこの料率だったから今年も同じ」とは限りません。

令和8年度については、失業等給付等に対応する保険料率が引き下げられたことにより、労働者負担と事業主負担の双方が令和7年度より0.5/1,000低くなりました。

一方、事業主だけが負担する雇用保険二事業の料率については、一般の事業や農林水産・清酒製造の事業では3.5/1,000、建設の事業では4.5/1,000となっており、この部分は令和7年度から変わっていません。

つまり、令和8年度はすべての構成部分が一律に下がったわけではありません。

失業等給付・育児休業給付に対応する部分が引き下げられ、雇用保険二事業の部分は据え置かれた と理解すると整理しやすいでしょう。

一般の事業 令和7年度 令和8年度
労働者負担 5.5/1,000 5/1,000
事業主の失業等給付等部分 5.5/1,000 5/1,000
雇用保険二事業 3.5/1,000 3.5/1,000

企業の給与担当者にとっては、改定理由を細かく覚えることよりも、 雇用保険料率は毎年度確認するものだと認識しておくこと のほうが実務上重要です。

年度が変わる時期には、雇用保険料率だけでなく、健康保険料率、介護保険料率、労災保険率などについても改定の有無を確認する必要があります。

年度初めの給与計算では、法定控除に使う各種料率をまとめてチェックするルーティンを作っておくと、変更漏れを防ぎやすいですよ。

また、翌年度の料率について、正式発表よりかなり前の段階で設定を決め打ちするのは避けたほうがよいでしょう。

制度改正の検討状況や公表スケジュールによっては、確定情報が出る時期が毎年まったく同じとは限りません。

翌年度の給与計算設定を準備するときは、前年の料率をそのままコピーしたり、未確定情報だけで新年度の料率を固定したりせず、厚生労働省などから正式に公表された内容を確認してから設定してください。

特に給与計算を外部へ委託していない中小企業では、「前年と同じ設定のまま4月給与を計算していた」というケースが起こり得ます。

年度が変わったら各種保険料率を確認する。

この習慣を作っておくことが、一番シンプルな予防策です。

雇用保険料率、令和8年度の要点まとめ

令和8年度の雇用保険料率は、令和7年度より引き下げられました。

一般の事業では、労働者負担5/1,000、事業主負担8.5/1,000、労使合計13.5/1,000です。

農林水産・清酒製造の事業では、労働者負担6/1,000、事業主負担9.5/1,000、合計15.5/1,000です。

建設の事業では、労働者負担6/1,000、事業主負担10.5/1,000、合計16.5/1,000となっています。

給与計算担当者が最も注意したいのは、 労使合計の料率ではなく労働者負担率を給与控除に使用することと、新しい料率へ切り替える給与を間違えないこと です。

一般の事業であれば、給与から控除する料率は5/1,000です。

13.5/1,000は労働者と事業主を合わせた全体の料率なので、従業員本人の給与へ13.5/1,000を掛けて控除するものではありません。

また、令和8年度の新料率は令和8年4月1日から適用されますが、給与計算では賃金がどの年度に属するかを考える際、原則として賃金締切日を確認します。

月末締め翌月払いであれば、3月31日締め・4月払いの給与は令和7年度の料率、4月30日締め・5月払いの給与から令和8年度の料率となるのが基本的な考え方です。

一方、15日締め当月払いなら、4月15日締めの給与から新料率となります。

  • 一般の事業は労働者5/1,000、会社8.5/1,000
  • 農林水産・清酒製造は労働者6/1,000、会社9.5/1,000
  • 建設の事業は労働者6/1,000、会社10.5/1,000
  • 令和7年度から労使それぞれ0.5/1,000引き下げ
  • 給与計算では賃金締切日を基準に年度を確認

雇用保険料の計算では、対象賃金の確認も欠かせません。

基本給だけではなく、残業手当、通勤手当、各種手当、賞与なども原則として対象となります。

反対に、退職金や実費弁償の出張旅費などは通常は対象になりません。

そのため、正しい給与計算をするためには「正しい料率」「正しい適用開始時期」「正しい対象賃金」の3つをそろえて確認する必要があります。

私も給与計算の設定を確認するときには、新料率へ切り替えた最初の給与について、一人分でもよいので手計算と照合することをおすすめしています。

ソフトが自動計算してくれる時代だからこそ、最初の設定確認が重要です。

年度初めの確認手順は次のように整理すると分かりやすいです。

  • 厚生労働省の最新料率を確認する
  • 自社の事業区分を確認する
  • 給与締日と支給日を確認する
  • 新料率を使う最初の給与を特定する
  • 給与ソフトの料率を確認する
  • 代表者一人を手計算して照合する

この流れで確認しておけば、令和8年度の料率変更についてはかなりミスを防ぎやすくなります。

なお、この記事に記載した計算例の金額は、制度の仕組みを理解するための一般的な目安です。

実際の給与計算では、従業員ごとの賃金内容、事業区分、給与締日、端数処理、会社での慣習的な取扱いなどによって確認すべき事項が異なる場合があります。

雇用保険料率や制度の取扱いは、今後の法改正等によって変更される可能性があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください

また、自社の事業区分、対象賃金、給与計算上の適用時期などについて個別判断が必要な場合には、 最終的な判断は専門家にご相談ください

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