こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
退職給付金と失業手当は、どちらも退職後に受け取る可能性があるお金ですが、まったく別の制度です。
退職給付金は勤務先の退職金制度などに基づいて支給されるもので、失業手当は雇用保険から再就職までの生活を支えるために支給されます。
そのため、一定の条件を満たしていれば、退職給付金と失業手当を両方受け取ることができます。
退職金を受け取ったことだけを理由として、失業手当が減額される仕組みでもありません。
ただし、退職給付金は会社によって制度や支給条件が異なり、失業手当にも受給資格や待期期間があります。
退職後の資金計画を立てるときは、この2つを同じものとして考えず、それぞれの仕組みを分けて確認することが大切です。
実際の相談でも、「退職金をもらうと失業手当が減るのですか」「退職金がある会社では失業手当を申請できないのですか」と聞かれることがあります。
結論からいえば、そのように一方を受け取ったことで、もう一方が当然に受け取れなくなる関係ではありません。
この記事では、退職給付金と失業手当について、支給元や目的、受け取る時期、受給条件、待期期間まで順番に整理します。
退職前後のお金の流れを考えるときに、何を会社へ確認し、何をハローワークで確認すればよいのかまで把握しておきましょう。
- 退職給付金と失業手当の基本的な違い
- それぞれの支給元と支給される目的
- 退職金と失業手当を両方受け取れるか
- 失業手当の受給条件と待期期間

退職給付金と失業手当の違いを比較
退職給付金と失業手当の違いを理解するときは、まず「誰が支給するのか」「何のためのお金なのか」「いつ受け取れるのか」を分けて考えると整理しやすくなります。
退職後に受け取るお金という点では似ていますが、制度の成り立ちも受給条件も異なります。
特に重要なのは、「退職したことをきっかけとして受け取る」という共通点だけを見て、同じ制度だと考えないことです。
退職給付金は勤務先の制度を確認するのが基本である一方、失業手当は雇用保険制度の要件を確認します。
まずは全体像から見ていきましょう。
支給元は会社と雇用保険で異なる
退職給付金と失業手当の大きな違いの一つが、 支給される制度そのものが異なる ことです。
この記事でいう退職給付金は、勤務先が設けている退職金や退職手当に相当するものを指します。
退職金制度を設けるかどうかは原則として会社ごとの判断であり、すべての会社に一律の退職金制度が存在するわけではありません。
会社に退職金制度がある場合は、就業規則や退職金規程などで、対象となる従業員、勤続年数、計算方法、自己都合退職と会社都合退職の扱い、支給時期などが定められているのが一般的です。
例えば、「勤続3年以上の正社員を対象とする」「退職時の基本給に勤続年数ごとの支給率を乗じる」「自己都合退職の場合は一定の支給率を適用する」といった形です。
どのような条件が設定されているかは会社によって異なるため、別の会社に勤務している友人や家族の退職金制度をそのまま自分にも当てはめることはできません。
一方、失業手当は、正式には雇用保険の「基本手当」と呼ばれる公的な給付です。
勤務していた会社が独自に支給するものではなく、雇用保険制度に基づいて支給され、手続きの窓口は原則として住所地を管轄するハローワークとなります。
会社は、従業員が退職すると雇用保険の資格喪失や離職証明書に関する手続きを行いますが、実際に失業手当を受けるための求職申込みや受給資格の確認は、退職した本人がハローワークで進めることになります。
退職給付金は振込元が会社とは限らない
ここで一つ補足しておきたいのが、「退職給付金は会社から支給される」という説明です。
制度上の出発点は勤務先の退職給付制度ですが、実際のお金の振込元が会社そのものとは限りません。
会社が中小企業退職金共済を利用している場合や、外部の企業年金制度などを利用している場合には、制度を運営する機関から本人へ支給されることがあります。
そのため、正確には「勤務先が設けている退職給付制度に基づく給付」と考えるのがよいでしょう。
これに対して失業手当は雇用保険制度による給付です。
この制度上の違いを押さえることが重要です。
| 比較項目 | 退職給付金 | 失業手当 |
|---|---|---|
| 制度 | 勤務先の退職金制度など | 雇用保険制度 |
| 主な窓口 | 勤務先・退職金制度の運営機関など | ハローワーク |
| 主な条件 | 会社の退職金規程など | 雇用保険の受給要件 |
| 主な目的 | 退職に伴う給付 | 失業中の生活と再就職の支援 |
| 主な確認書類 | 就業規則・退職金規程など | 離職票・受給資格に関する書類など |
会社が中小企業退職金共済など外部の制度を利用している場合、実際の振込元が会社そのものではないこともあります。
ただし、失業手当とは別制度であるという基本的な整理は変わりません。
実務でも、「会社からもらう退職金」と「ハローワークでもらう失業保険」が一つの制度だと思っている方は珍しくありません。
まずは支給元が違うという点を押さえると、その後の手続きも理解しやすくなります。
退職時には、会社から源泉徴収票や離職票、健康保険に関する書類など、複数の書類を受け取ることになります。
書類が一度に届くため混乱しやすいのですが、「退職金は勤務先の制度」「失業手当は雇用保険」と分けて整理すれば、どこへ問い合わせればよいかも見えやすくなりますよ。
目的は退職給付と求職支援で異なる

退職給付金と失業手当では、支給される目的にも大きな違いがあります。
退職給付金は、勤務先の制度に基づき、長年勤務した従業員への功労的な意味や、退職後の生活資金としての役割などを持つものです。
どのような考え方で制度を設計するかは会社ごとに異なるため、勤続年数によって金額が増える制度もあれば、ポイント制や別の計算方法を採用している会社もあります。
例えば、長期勤務を促す目的から勤続年数が長くなるほど支給率を高く設定している会社もありますし、役職や職務、資格、在籍期間などに応じてポイントを積み上げる制度もあります。
企業年金と組み合わせて退職後の生活保障を設計している会社もあり、退職給付金の位置付けは一律ではありません。
これに対して失業手当は、 仕事を辞めたこと自体への報奨として支払われるお金ではありません。
失業中の生活を安定させながら、新しい仕事を探して再就職することを支援するための制度です。
この違いは、失業手当の受給条件を考えるうえでも重要です。
単に「会社を辞めた」というだけでは失業手当を受け取れるとは限らず、働く意思と能力があり、求職活動をしているにもかかわらず職業に就いていない状態であることなどが求められます。
退職しただけでは失業手当の対象とは限らない
例えば、定年退職後に「半年ほど旅行をして、その後に仕事を探したい」と考えている方がいたとします。
この場合、退職して収入がなくなったとしても、現時点ですぐに就職する意思がないのであれば、失業手当の考え方では単純に「失業しているから受給できる」とは整理できません。
また、病気やけがなどによって、しばらく働けない状態にある場合も同様です。
雇用保険の基本手当は「生活費がなくなった人なら誰でも受け取れる制度」ではなく、あくまで再就職を目指している方を対象とした制度だからです。
反対に、退職給付金については、退職後すぐに再就職するかどうかが直接の支給条件ではないことが一般的です。
勤務先の規程に「勤続3年以上」などの要件があり、その要件を満たしていれば、翌日から別の会社で働く場合でも退職金が支給されることがあります。
退職給付金は退職に伴って受け取るお金、失業手当は再就職までを支えるお金 と整理すると分かりやすいでしょう。
例えば、退職後すぐに別の会社への就職が決まっている方は、勤務先の規程上の条件を満たせば退職給付金を受け取れることがあります。
一方で、すでに再就職先が決まっており失業状態ではない場合には、一般的な意味での失業手当とは扱いが異なります。
同じ「退職後のお金」でも、制度の目的が違うため、それぞれ別々に受給資格を確認する必要があります。
退職後の家計を考えるときにも、この目的の違いは重要です。
退職金はまとまった金額が支給される場合がありますが、老後資金として残したい方もいるでしょう。
一方、失業手当は再就職までの一定期間の生活を支える役割があります。
それぞれを同じ財布として考えるのではなく、いつまでに再就職する予定なのか、毎月の固定費はいくらなのかまで整理しておくと、退職後の資金計画を立てやすくなります。
支給時期と受け取り方が異なる
退職後の生活設計を考えるうえでは、いつお金が入ってくるのかも重要です。
退職給付金と失業手当では、支給されるタイミングも異なります。
退職給付金は、退職後1〜2か月程度で振り込まれる会社も見られますが、 全国一律の支給日が決められているわけではありません。
実際の支給時期は、勤務先の就業規則、退職金規程、退職金共済や企業年金などの制度によって異なります。
会社によっては退職日の翌月に支給することもあれば、退職金の計算や社内決裁、外部制度への請求手続きなどの関係で一定期間を要する場合もあります。
そのため「退職した翌月には必ず退職金が入る」と考えて生活費を組むのはおすすめできません。
そのため、退職日が決まった段階で、人事・総務担当者に「退職金制度の対象になるか」「支給予定日はいつか」「本人による請求手続きが必要か」を確認しておくと安心です。
失業手当は申請から入金まで段階がある
一方、失業手当は、退職しただけで自動的に振り込まれるものではありません。
離職票などを準備したうえでハローワークに求職の申込みを行い、受給資格の確認を受ける必要があります。
その後も、待期や失業認定など所定の手続きを経て、基本手当が支給されます。
つまり、「退職日=失業手当の支給開始日」ではありません。
さらに、受給資格の決定後には7日間の待期があります。
失業手当については、退職日から単純に7日経過すれば支給されるわけではない点に注意してください。
例えば、3月31日に退職し、離職票が届いたのが4月10日、ハローワークで求職申込みをしたのが4月12日だった場合、3月31日から7日間を数えて「もう待期は終わっている」とは考えません。
待期はハローワークでの受給手続きとの関係で進むため、失業手当を受けたい場合には離職票を受け取った後、必要以上に手続きを遅らせないことが重要です。
退職直後から失業手当が振り込まれると考えて資金計画を立てると、実際の入金までに生活費が不足することがあります。
退職金の支給日と失業手当の手続き日程は別々に確認しておきましょう。
退職直後に必要なお金も見込んでおく
退職後は、収入が止まる一方で支払いがすぐになくなるわけではありません。
健康保険を国民健康保険や任意継続へ切り替える場合の保険料、国民年金保険料、住民税、住宅ローンや家賃、クレジットカードの支払いなどが続きます。
特に住民税は前年の所得をもとに負担する仕組みであるため、退職後に現在の収入が大きく減っていても支払いが発生することがあります。
退職金や失業手当を「いくらもらえるか」だけではなく、「いつ振り込まれるか」まで確認することが大切です。
私も退職相談では、給付額だけではなく、退職後1〜2か月程度の手元資金をどう確保するかまで見ておくことをおすすめしています。
制度上もらえることと、必要なタイミングで現金が手元にあることは別の話だからです。
退職後には、失業手当以外にも健康保険、年金、住民税などの手続きが関係します。
全体の流れを確認したい方は、 退職後の役所手続きと確認ポイント も参考にしてください。
退職給付金は会社ごとに制度が異なる

退職給付金について特に注意したいのは、会社によって制度内容が大きく異なることです。
「会社を退職すれば必ず退職金がもらえる」と考えている方もいますが、退職金制度そのものを設けることがすべての会社に義務付けられているわけではありません。
まずは勤務先に退職金制度があるかどうかを確認する必要があります。
労働基準法上も、会社が退職手当について定めを設ける場合には、適用される労働者の範囲や退職手当の決定・計算・支払方法、支払時期などを就業規則へ記載することとされています。
つまり、「すべての会社が退職金を支給しなければならない」という仕組みではなく、制度を設けた会社ではそのルールを明確にするという考え方です。
(出典:厚生労働省「確かめよう労働条件 就業規則で、記載が必須な事項はありますか?
」)
制度が設けられている場合でも、すべての退職者が同じ条件で受け取れるとは限りません。
例えば、一定以上の勤続年数を支給条件としている会社や、正社員のみを対象としている会社、自己都合退職と会社都合退職で支給率を変えている会社などがあります。
まず確認したいのは対象者と勤続年数
退職金制度で最初に見たいのが、誰が対象になるかです。
例えば「正社員として勤続3年以上の者」と規定されていれば、勤続2年11か月で退職した方は原則としてその条件を満たさないことになります。
また、契約社員やパートタイマーについて別の規程が設けられていることもあります。
入社から退職までのすべての期間が勤続年数として計算されるとも限りません。
休職期間をどのように扱うのか、再雇用された場合の期間を通算するのかなども会社の制度によって異なります。
計算方法や退職理由も確認する
退職金の計算方法もさまざまです。
退職時の基本給に勤続年数別の支給率を掛ける制度もありますし、毎年の職務や等級などに応じてポイントを付与し、その累計ポイントをもとに計算する会社もあります。
また、自己都合退職と会社都合退職、定年退職などで支給率を分けているケースもあります。
「同じ勤続20年だから同じ退職金」とは限らない点に注意してください。
確認したいのは、主に次のような項目です。
- 退職金制度の対象となる従業員の範囲
- 必要となる勤続年数
- 退職金の計算方法
- 自己都合退職と会社都合退職の違い
- 退職金の支払時期
- 本人による請求手続きの有無
実務では、入社時には退職金制度の細かい内容まで確認しておらず、退職するときになって初めて規程を見るケースも少なくありません。
退職給付金について確認するときは、インターネット上の一般的な金額ではなく、 あなたの勤務先の就業規則や退職金規程 を確認することが最も重要です。
退職前に会社へ確認しておくとスムーズ
退職日が決まったら、人事や総務へ「私は退職金の対象になりますか」「支給予定日はいつですか」「何か請求書を書く必要がありますか」と確認しておくとよいでしょう。
会社が外部の退職金共済制度などを利用している場合、本人が請求書へ署名したり、振込先口座を届け出たりする手続きが必要になる場合があります。
会社側の手続きだけで自動的にすべて完了するとは限りません。
また、退職金の見込額を退職後の住宅ローン返済や生活費に充てる予定であれば、概算額だけでなく支給日も確認しておくことをおすすめします。
予定していた時期より入金が遅れると、資金繰りが厳しくなることがあるからです。
また、会社が退職金共済や企業年金などを利用している場合には、勤務先だけではなく制度の運営機関で手続きが必要になることもあります。
退職前に必要書類を確認しておくと、退職後の手続きがスムーズです。
失業手当とは雇用保険の基本手当
一般に「失業手当」「失業保険」と呼ばれているものの中心が、雇用保険の基本手当です。
基本手当は、雇用保険に加入していた方が離職し、再就職する意思と能力があるにもかかわらず仕事に就けていない場合に、一定の要件を満たすことで支給されます。
退職すれば自動的にもらえる給付ではない という点は重要です。
失業手当を受けるためには、住所地を管轄するハローワークで求職の申込みを行い、受給資格の決定を受け、その後も原則として失業の認定を受けながら求職活動を続けます。
厚生労働省の案内でも、基本手当については、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることなどが受給要件として示されています。
(出典:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」)
離職票を使って受給手続きを進める
申請時には離職票が重要な書類となります。
離職票には退職前の賃金や離職理由などが記載されており、ハローワークが受給資格や給付内容を確認する際の基礎資料となります。
特に離職理由は重要です。
自己都合退職なのか、解雇や倒産などによる離職なのか、一定のやむを得ない事情による離職なのかによって、受給資格や給付制限、所定給付日数などの扱いに影響する可能性があります。
会社が離職票に記載した離職理由と、本人が認識している退職理由が異なる場合には、そのまま諦める必要はありません。
ハローワークで実際の事情を説明し、必要に応じて確認資料を提出することになります。
基本手当は一括でもらう制度ではない
退職金との違いとして押さえておきたいのが、失業手当は通常、退職金のように「退職時にまとまった金額を一度受け取って終わる」という制度ではないことです。
失業認定を受けながら、基本手当日額に支給対象となる日数を掛けた金額が支給されていきます。
所定給付日数は雇用保険の加入期間、年齢、離職理由などによって異なります。
また、基本手当日額についても退職時の退職金額をもとに決めるわけではありません。
退職前の一定期間の賃金を基礎として算定されます。
この点からも、退職金と失業手当が別々の仕組みで動いていることが分かります。
手続きを進めると雇用保険受給資格者証などを使用することになります。
書類の見方や役割については、 雇用保険受給資格者証の見方と使い方 で詳しく整理しています。
「失業手当」という名称から、失業したことに対する一時金のように感じるかもしれませんが、実際には再就職を前提とした雇用保険の給付です。
受給できる日数や金額は、退職前の賃金、年齢、雇用保険の加入期間、離職理由などによって異なります。
具体的な受給額だけを先に考えるのではなく、まず自分に受給資格があるかを確認することが大切です。
失業手当の金額や上限額などは制度改正や毎年度の見直しによって変わる可能性があります。
インターネットで過去の金額を見つけても、その数字を現在の受給額としてそのまま使わず、退職時点の最新情報を確認してください。
退職給付金と失業手当の違いと受給条件
制度の違いが分かったところで、次に気になるのは「結局、両方もらえるのか」という点でしょう。
結論として、退職給付金と失業手当は別制度なので、それぞれの条件を満たしていれば両方受け取ることができます。
ただし、失業手当については受給条件や待期期間を正しく理解しておく必要があります。
ここからは、「退職金を受け取ったら失業手当が減るのか」「どのくらい雇用保険へ加入していればよいのか」「7日間の待期とはいつから数えるのか」まで、退職前後に特に疑問が出やすい部分を具体的に解説します。
退職金と失業手当は両方もらえる
退職金と失業手当は、原則として それぞれの受給条件を満たしていれば両方受け取ることができます。
退職金は会社の退職金制度に基づく給付であり、失業手当は雇用保険制度に基づく給付です。
支給される目的も制度も異なるため、「退職金を受け取ったら失業手当を申請できない」という関係にはなっていません。
例えば、長年勤務した会社を退職し、会社の退職金規程に基づいて退職金を受け取った方が、その後ハローワークで求職の申込みを行い、失業手当の受給要件を満たしていれば、失業手当を受け取ることも可能です。
退職金をもらうか失業手当をもらうか、どちらか一方を選ぶ制度ではありません。
それぞれ別々に条件を確認する
ただし、「両方受け取れる」ということと、「退職した人なら誰でも両方受け取れる」ということは別です。
退職金については勤務先の制度上の支給条件を満たす必要があります。
失業手当については、雇用保険の加入期間や失業状態などの受給条件を満たし、ハローワークで所定の手続きを行う必要があります。
例えば、勤務先の退職金規程で「勤続3年以上」が支給条件になっている方が勤続2年で退職した場合には、原則としてその規程上の退職金の対象にならないことがあります。
一方、雇用保険について必要な被保険者期間などを満たしていれば、失業手当については受給資格が認められる可能性があります。
逆のケースもあります。
勤務先の退職金制度上は退職金を受け取れるとしても、退職後すぐ別の会社へ入社することが決まっていて失業状態にならなければ、基本手当を通常どおり受け取るという話にはなりません。
退職金の有無と雇用保険加入は別問題
「うちの会社には退職金があるから失業保険はない」「退職金がない会社だから失業保険が多くなる」といった関係もありません。
退職金制度の有無は勤務先の制度設計の問題です。
一方、雇用保険については、雇用保険の適用要件に該当して加入していたかどうかが問題になります。
そのため、退職金制度が非常に充実している会社であっても雇用保険の受給要件を満たせば基本手当の対象になり得ますし、退職金制度がまったくない会社に勤務していたからといって失業手当が上乗せされる仕組みでもありません。
退職後のお金を整理するときは、「会社から受け取るもの」「雇用保険から受け取るもの」「健康保険や年金で自分が支払うもの」を分けて一覧にすると分かりやすくなります。
そのため、退職前には勤務先に退職金制度を確認し、退職後は離職票が届き次第、必要に応じてハローワークで手続きを進めるというように、それぞれ別の手続きとして考えるのが実務上分かりやすいです。
特に退職後すぐ再就職する予定がない方は、退職金の支給予定日、失業手当の手続き開始時期、健康保険や年金の支払時期を一緒にカレンダーへ落としておくとよいでしょう。
お金が「もらえるかどうか」と「いつ手元に入るか」を分けて考えることがポイントです。
退職金で失業手当は減額されない

退職金を多く受け取った場合、「その分だけ失業手当が少なくなるのではないか」と心配される方もいます。
しかし、 退職金を受け取ったこと自体を理由として、雇用保険の基本手当が減額される仕組みではありません。
退職金は勤務先の退職金制度などから支給されるもので、失業手当は退職前の賃金や雇用保険の加入状況、離職理由などをもとに判断される別制度だからです。
例えば、会社からまとまった退職金が振り込まれたとしても、「退職金を100万円受け取ったから失業手当を100万円分減らす」という計算は行いません。
退職金が500万円ある人と退職金がない人を比べて、「退職金が多い方は資産があるから基本手当を減額する」という資産審査を行う仕組みでもありません。
失業手当は生活保護のように現在の預貯金額を基準として受給可否を判断する制度ではないからです。
基本手当の金額は退職前の賃金が基礎
基本手当日額は、基本的には退職前の一定期間に支払われた賃金から計算される賃金日額を基礎として決まります。
年齢ごとの上限額などもあるため、退職前の月給と同額がそのまま支給されるものではありません。
ここで計算の基礎になる「賃金」と、会社から退職時に支給される「退職金」は分けて考えます。
そのため、退職金の金額が高いという理由だけで基本手当日額が下がるわけではありません。
ここは、退職後の生活資金を考えるうえで重要なポイントです。
退職金を当面の生活費として確保しながら、失業手当を受給して再就職活動を行うということも制度上は考えられます。
受給中に働いた場合は別の論点
ただし、失業手当の受給中に就職した場合や、アルバイト・内職・事業などを行った場合には、就労状況や収入について申告が必要となり、基本手当の支給に影響することがあります。
退職金とは別の論点として考えてください。
ここは退職金との違いとして非常に重要です。
すでに退職前の勤務に対する制度として受け取った退職金と、失業手当を受給している期間中に新しく働いて得た賃金や収入では、扱いが異なります。
失業認定の対象期間中に働いた場合には、働いた日、労働時間、収入などを申告します。
働き方によってはその日の基本手当が支給されなかったり、収入額などとの関係で調整されたりすることがあります。
また、再就職して雇用保険の被保険者になるような働き方を始めれば、そもそも「失業の状態」ではなくなる可能性があります。
開業して事業に専念する場合も同様に、基本手当との関係を確認する必要があります。
失業認定の際には、働いた日や収入を正確に申告することが大切です。
「少額だから申告しなくてもよい」「友人の仕事を少し手伝っただけだから大丈夫」と自己判断するのではなく、判断に迷う場合はハローワークで確認してください。
退職金を受け取ったこと と、 失業手当の受給中に新たに働いて収入を得たこと は、雇用保険上まったく同じ論点ではありません。
ここを分けて考えると理解しやすいですよ。
失業手当には受給条件がある
失業手当は、退職した方全員に自動的に支給されるわけではありません。
基本的には、離職前に一定期間雇用保険へ加入していたことに加えて、現在「失業の状態」にあることが必要です。
ここでいう失業の状態とは、単に会社に在籍していない状態を意味するわけではありません。
働く意思と能力があり、実際に仕事を探しているにもかかわらず、職業に就いていない状態 であることが重要です。
そのため、退職後しばらく働くつもりがなく休養する方や、すぐに働くことができない事情がある方などは、一般的な失業手当の受給要件との関係を確認する必要があります。
原則は離職前2年間に12か月以上
一般的な受給資格では、原則として離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12か月以上あることが必要です。
ただし、倒産や解雇などにより離職した特定受給資格者や、一定の事情によって離職した特定理由離職者については、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも受給資格を満たすことがあります。
ここで注意したいのが、「会社に12か月在籍したから必ず12か月として数えられる」とは限らないことです。
雇用保険上の被保険者期間には、賃金支払基礎日数や労働時間による計算ルールがあります。
短期間の休職や欠勤が多かった期間がある方などは、単純な在籍月数だけでは判断できないことがあります。
働ける状態であることも必要
例えば、退職後すぐに就職する意思はあるものの、病気やけがによって当面働くことができない場合には、通常の意味で「いつでも就職できる能力がある」とはいえないことがあります。
妊娠や出産、育児などの事情ですぐに就職できない場合も同様です。
一定の場合には受給期間を延長する制度があるため、「今すぐ働けないから全部なくなる」と考えるのではなく、ハローワークへ事情を説明して確認してください。
また、定年退職を機に半年程度ゆっくりしたいという方もいます。
この場合も、休養中はすぐに就職する意思がある状態とは異なるため、受給手続きを始める時期を含めて確認する必要があります。
離職理由も確認しておく
失業手当では、自己都合退職か会社都合退職かという違いも重要です。
ただし、本人が「会社都合だと思う」「自己都合だと思う」と言うだけで最終的な離職理由が決まるわけではありません。
会社が作成する離職証明書や本人の主張、必要な資料などを踏まえて、ハローワークが離職理由を確認します。
退職勧奨、雇止め、労働条件の著しい相違、長時間労働、家族の介護など、事情によっては単純な自己都合退職とは異なる扱いになる可能性があります。
離職票の離職理由に疑問がある場合には、そのままにせず受給手続きの際に相談してください。
実務上は、次の点を確認すると整理しやすいです。
- 退職前に雇用保険へ加入していたか
- 必要な被保険者期間を満たしているか
- 現在すぐに働くことができる状態か
- 再就職する意思があるか
- ハローワークで求職申込みをしているか
給与から雇用保険料が引かれていたのに、退職後に未加入だったことが分かるケースもあります。
そのような場合は、 雇用保険料が引かれているのに未加入だった場合の対処法 も確認してみてください。
受給資格は離職理由や雇用保険の加入記録などによって個別に判断されます。
勤務期間だけを見て自己判断せず、離職票の内容も含めて確認することが大切です。
特に転職回数が多い方の場合、複数の会社での雇用保険加入期間を通算して受給資格を満たすこともあります。
一方、以前の離職で基本手当を受給している場合などは、その後の期間の扱いが変わることがあります。
「前の会社6か月、今の会社8か月だからどうなるのか」といったケースは、一見すると分かりにくいですよね。
こうした場合は過去の雇用保険加入歴も含めてハローワークで確認するのが確実です。
失業手当には7日間の待期期間がある

失業手当の手続きをすると、すぐ翌日から基本手当が支給されるわけではありません。
ハローワークで離職票を提出して求職の申込みを行い、受給資格が決定した後には、原則として 失業状態にある7日間の待期 があります。
この待期は、自己都合退職か会社都合退職かにかかわらず設けられるものです。
特に誤解しやすいのが、「退職日から7日間待てばよい」という点です。
7日間の待期は、単純に会社を辞めた翌日から自動的に始まるものではありません。
ハローワークで離職票の提出と求職申込みを行い、受給資格の決定を受ける手続きとの関係で進むため、離職票が届いた後も何も手続きをしなければ、その間に待期が自動的に終わるという考え方ではありません。
待期と給付制限は別の期間
特に自己都合退職の方が混同しやすいのが、「7日間の待期」と「給付制限」です。
待期は原則として離職理由にかかわらず設けられる期間です。
一方、正当な理由のない自己都合退職などでは、待期満了後にさらに給付制限が適用される場合があります。
2025年4月1日以降に退職した方について、正当な理由のない自己都合退職による給付制限は原則1か月となっています。
ただし、過去の自己都合退職の回数や離職理由によって3か月となる場合があるほか、一定の教育訓練等を受ける場合には給付制限が解除される仕組みもあります。
制度改正前の記事では「自己都合退職なら2か月待つ」と説明されているものもありますが、現在の制度と異なる場合があります。
古い情報だけを見て判断しないようにしてください。
| 期間 | 概要 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 待期 | 失業状態にある日が通算7日に達するまで基本手当が支給されない | 原則として受給資格者 |
| 給付制限 | 待期満了後も一定期間基本手当が支給されない場合がある | 正当な理由のない自己都合退職など一定の場合 |
失業手当を受ける予定であれば、 離職票が届いたら必要書類を準備し、早めにハローワークで手続きを進める ことが基本です。
待期中に働く場合は注意する
待期は「失業している日」が通算して7日に達するまでの期間です。
そのため、待期中に仕事をした場合には、働き方によって待期の完成が後ろへずれることがあります。
退職した直後に短期のアルバイトを予定している方は、「収入が少額だから関係ない」と考えず、いつ、何時間程度働くのかをハローワークへ伝えて確認するのが安全です。
失業手当では、就労した事実を正しく申告することが非常に重要です。
勤務先から給与を受け取る仕事だけではなく、事業の手伝いや内職などについても申告が必要になる場合があります。
実際の振込は待期終了直後とは限らない
7日間の待期が終わったからといって、その翌日に銀行口座へ基本手当が入金されるわけではありません。
失業認定など所定の手続きがあり、認定された支給対象日数について支給処理が行われます。
また、給付制限がある方は、その期間中は原則として基本手当の支給対象になりません。
そのため、退職後の家計を組む際には、「7日後からお金が入る」という前提ではなく、実際の初回入金まで一定の期間があるものとして準備しておくほうが安全です。
退職後すぐに失業手当を生活費へ充てる予定の場合は、初回支給までの家賃、住宅ローン、保険料、税金、生活費などを別途確保できるか確認しておきましょう。
また、自己都合退職など一定のケースでは、7日間の待期とは別に給付制限が関係することがあります。
給付制限の期間や取扱いは制度改正によって変更されることがあるため、過去の記事や古い情報だけで判断しないようにしてください。
失業手当の待期や給付制限については、離職日や離職理由によって確認事項が変わることがあります。
具体的な取扱いは、前掲の厚生労働省の案内や住所地を管轄するハローワークで最新情報を確認してください。
退職給付金と失業手当の違いまとめ
退職給付金と失業手当は、どちらも退職後に受け取る可能性があるため混同されやすい制度ですが、仕組みは明確に異なります。
退職給付金は、勤務先が設けている退職金制度などに基づいて支給されます。
制度の有無、対象者、計算方法、支給時期などは会社によって異なるため、あなたの勤務先の就業規則や退職金規程を確認することが基本です。
一方、失業手当は雇用保険の基本手当であり、失業中の生活を支えながら再就職を促進することを目的とした公的な制度です。
ハローワークで求職の申込みを行い、雇用保険の加入期間や失業状態などの受給要件を満たす必要があります。
この2つについて一番覚えておいていただきたいのは、 退職給付金と失業手当はどちらか一方を選択する制度ではない という点です。
勤務先の退職金規程上の条件を満たして退職金を受け取り、同時に雇用保険の基本手当の受給要件を満たしているのであれば、両方を受け取ることができます。
また、退職金を受け取ったこと自体を理由として基本手当が減額される仕組みでもありません。
退職前と退職後で確認先を分ける
退職前には、まず勤務先へ退職金制度について確認するとよいでしょう。
- 自分は退職金の対象になるか
- 退職金はいくらくらいになる見込みか
- いつ支給される予定か
- 本人が行う請求手続きはあるか
退職後、失業手当を希望する場合には、離職票などを確認し、ハローワークで求職申込みと受給手続きを行います。
- 雇用保険の被保険者期間を満たしているか
- 離職票の離職理由が実態と一致しているか
- 現在すぐに就職できる状態か
- 7日間の待期や給付制限がどうなるか
このように、確認先と確認内容を分ければ、退職給付金と失業手当を混同しにくくなります。
| 確認ポイント | 退職給付金 | 失業手当 |
|---|---|---|
| 制度の性質 | 勤務先の退職金制度など | 雇用保険の公的給付 |
| 目的 | 退職に伴う給付 | 失業中の生活・再就職支援 |
| 主な確認先 | 勤務先の規程・担当部署 | ハローワーク |
| 主な確認条件 | 対象者・勤続年数・計算方法など | 被保険者期間・失業状態・離職理由など |
| 両方の受給 | それぞれの条件を満たせば両方受給できる | |
| 退職金による減額 | 退職金を受け取ったこと自体で基本手当が減額される仕組みではない | |
| 待期期間 | 会社の規程による | 受給手続き後に失業状態にある7日間の待期がある |
| 支給時期 | 会社や制度ごとに異なる | 待期・失業認定・給付制限などにより異なる |
特に重要なのは、 退職金を受け取ったからといって失業手当を諦める必要はない という点です。
それぞれ別の制度として条件を確認してください。
また、「退職金はいくらもらえるか」「失業手当はいくらもらえるか」だけではなく、実際にいつ振り込まれるのかまで確認しておくことが重要です。
退職直後には健康保険、年金、住民税などの負担も続くため、手元資金が一時的に不足しないように準備しておきましょう。
退職前は勤務先の退職金規程を確認し、退職後は離職票を確認してハローワークの手続きを進める。
この2本立てで考えると整理しやすいですよ。
退職前には会社へ退職金制度と支給予定日を確認し、退職後は離職票などの必要書類を準備して、失業手当を受ける予定であれば早めにハローワークで手続きを進めるとよいでしょう。
なお、失業手当の給付制限や基本手当日額などは制度改正によって変更されることがあります。
また、退職金についても勤務先ごとの規程によって取扱いが異なります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
退職金制度の内容、離職理由、雇用保険の加入期間、就労状況などによって個別の取扱いが変わる場合があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別事情を踏まえた最終的な判断は専門家にご相談ください。