退職・解雇

任意継続すると年金はどうなる?退職後の手続きと注意点

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

会社を退職して健康保険を任意継続しても、厚生年金まで任意継続されるわけではありません。

任意継続は健康保険だけの制度であり、厚生年金の資格は退職によって原則として喪失します。

そのため、20歳以上60歳未満で再就職しない方は、原則として国民年金第1号被保険者への切り替えが必要です。

また、配偶者の扶養に入る場合や、60歳以上で退職する場合では年金の扱いが変わります。

退職時は健康保険の手続きに意識が向きやすく、年金の切り替えを忘れてしまうこともあります。

この記事では、任意継続すると年金はどうなるのか、退職後に必要な手続きや保険料、配偶者への影響まで順番に整理します。

  • 健康保険の任意継続と厚生年金の関係
  • 退職後に加入する年金制度の判断方法
  • 国民年金への切り替え期限と必要書類
  • 任意継続と国民年金を合わせた負担の考え方

任意継続すると年金はどうなる?退職後の手続きを社労士が解説

任意継続すると年金はどうなるのか

最初に、健康保険と年金を分けて考えることが重要です。

在職中は健康保険と厚生年金の保険料が給与からまとめて控除され、加入や資格喪失の手続きも勤務先が行うため、本人から見ると一つの制度のように感じやすいところがあります。

しかし、退職後は健康保険と年金で選択肢も手続き先も異なります。

任意継続を選んだからといって、退職前の社会保険の状態が丸ごと維持されるわけではありません。

ここでは、任意継続を選んだ後の年金の基本的な扱いから確認します。

任意継続は健康保険だけの制度

健康保険の任意継続とは、退職などによって勤務先の健康保険の被保険者資格を失った方が、一定の要件を満たす場合に、退職前に加入していた健康保険へ引き続き加入できる制度です。

協会けんぽの場合は、資格喪失日の前日までに健康保険の被保険者期間が継続して2か月以上あること、そして原則として 資格喪失日から20日以内 に任意継続被保険者資格取得申出書を提出することが主な加入要件です。

退職による資格喪失日は通常、退職日の翌日になります。

任意継続の加入期間は原則として最長2年間です。

ただし、現在は本人の申出によって途中で資格を喪失する仕組みもありますので、「一度任意継続を選んだら必ず2年間続けなければならない」という制度ではありません。

退職後の所得や家族構成が変わり、翌年度以降は国民健康保険のほうが負担を抑えられるケースもあります。

任意継続で継続するのは健康保険であり、厚生年金ではありません。

退職後の手続きを考えるときは、「医療保険」と「年金」をいったん別々に整理するのがポイントです。

ここが今回の一番重要なポイントです。

在職中は健康保険と厚生年金の手続きを勤務先がまとめて行い、それぞれの保険料が給与から同時に控除されています。

そのため、退職後に「健康保険は任意継続にしました」と聞くと、社会保険そのものを継続しているような感覚になりやすいですよね。

しかし、制度上はそうではありません。

健康保険の任意継続は、あくまで退職後の 医療保険の加入先を確保するための仕組み です。

老後の年金や障害年金、遺族年金につながる公的年金の資格を継続する制度ではありません。

退職後の健康保険については、一般的に「任意継続」「国民健康保険」「家族が加入する健康保険の被扶養者」という選択肢があります。

一方、年金については、本人の年齢、再就職の有無、配偶者の加入状況などによって、厚生年金、国民年金第1号、国民年金第3号などのどこに該当するかを判断します。

制度 退職後の主な扱い 主な確認先
健康保険 任意継続、国民健康保険、家族の扶養などから検討 協会けんぽ・健康保険組合・市区町村・家族の勤務先
厚生年金 退職により原則として資格喪失 勤務先・日本年金機構
国民年金 年齢や家族状況に応じて第1号・第3号などへ切り替え 市区町村・年金事務所・配偶者の勤務先

たとえば、58歳で会社を退職し、再就職せず、健康保険について任意継続を選んだとします。

この場合、健康保険は任意継続になりますが、年金については原則として国民年金第1号被保険者への切り替えが必要です。

任意継続の保険料とは別に、国民年金保険料を納付することになります。

逆に、退職後に厚生年金へ加入している配偶者の扶養に入ることができれば、健康保険は配偶者の被扶養者、年金は要件を満たせば第3号被保険者という組み合わせになることもあります。

このように、健康保険と年金の組み合わせは一通りではありません。

実務上は「任意継続にするか国保にするか」だけを比較して相談が終わってしまうと、年金の切り替えが抜けることがあります。

退職後の社会保険は、健康保険の加入先と年金の種別を2本立てで確認するのが基本です。

つまり、健康保険について任意継続を選んだ時点で、退職後の社会保険手続きがすべて終わったわけではありません。

医療保険をどうするかと、年金をどうするかは別々に確認する 必要があります。

協会けんぽの任意継続の加入要件や手続期限については、公式情報でも確認できます。

制度改正や運用変更が行われる可能性がありますので、申請時には最新情報を確認してください。

(出典: 全国健康保険協会「任意継続」

厚生年金は退職すると資格を失う

厚生年金は退職すると資格を失う

会社員として厚生年金に加入している方は、原則として退職日の翌日に厚生年金の被保険者資格を失います。

たとえば3月31日付で会社を退職した場合、通常は4月1日が厚生年金の資格喪失日です。

健康保険も同様に会社員としての資格を喪失しますが、その後の健康保険については任意継続という選択肢があります。

一方、厚生年金には健康保険と同じ意味での任意継続制度はありません。

したがって、「これまで会社と折半していた厚生年金保険料を、退職後は自分が全額払えば厚生年金を続けられる」という仕組みにはなっていません。

健康保険を任意継続していることと、厚生年金に加入していることは別です。

任意継続の資格確認書等を持っていても、それを理由に厚生年金の第2号被保険者であり続けるわけではありません。

会社員として厚生年金に加入している間、その人は国民年金制度上では第2号被保険者という位置づけになります。

退職して厚生年金の資格を失えば第2号被保険者ではなくなるため、その後にどの年金区分へ移るのかを確認する必要があります。

退職後の状況 年金の扱い
再就職せず、20歳以上60歳未満 原則として国民年金第1号
自営業・フリーランスになる 原則として国民年金第1号
厚生年金加入者である配偶者の扶養に入る 要件を満たせば国民年金第3号
別の会社へ再就職する 加入要件を満たせば新しい勤務先で厚生年金
60歳以上で退職する 国民年金の強制加入は原則終了。任意加入等を個別に検討

退職してすぐ別の会社へ入社する場合は、新しい会社で厚生年金の加入要件を満たせば、その勤務先で資格取得の手続きを行います。

そのため、退職後に必ず国民年金第1号になるわけではありません。

ここで重要なのは、 退職後の予定を基準に年金区分を判断すること です。

「今まで厚生年金だったから、今後も厚生年金」とは限りませんし、「任意継続を選んだから社会保険のまま」という考え方でもありません。

会社員は給与明細を見ると「健康保険」「介護保険」「厚生年金」などが同じ欄に並んでいます。

そのため、全部まとめて一つの社会保険だと理解している方も少なくありません。

実務ではまず、それぞれ別の保険制度であることを整理すると退職後の手続きが理解しやすくなります。

実際によくあるのが、「退職後も任意継続の保険料を毎月払っているので、年金もそこに含まれていると思っていた」というケースです。

しかし、任意継続の保険料として納付しているのは健康保険に関する保険料です。

国民年金第1号被保険者になった場合には、任意継続保険料とは別に国民年金保険料を納付する必要があります。

特に、退職金や失業給付などで当面の生活費を確保し、半年や1年ほど再就職しない予定の方は注意してください。

健康保険の任意継続だけ済ませた状態で年金を放置すると、その空白期間について後から国民年金の手続きが必要になることがあります。

また、次の会社への入社が決まっている場合でも、前職の退職日と新しい会社の資格取得日がつながっているとは限りません。

数週間、数か月の空白がある場合は、その期間について国民年金第1号への加入が必要になることがあります。

私は退職時の相談では、健康保険の選択と合わせて「次に厚生年金へ入る予定日はいつか」「配偶者の扶養に入る予定はあるか」「本人は60歳未満か」を確認します。

ここを押さえると、退職後の年金区分はかなり整理しやすくなります。

60歳未満は国民年金へ切り替える

日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の方は、厚生年金に加入しておらず、第3号被保険者にも該当しない場合、原則として国民年金第1号被保険者になります。

典型的なのは、会社を退職した後、すぐには再就職せず無職になる場合や、個人事業主・フリーランスとして働き始める場合です。

このケースでは、健康保険を任意継続にしたとしても、年金については国民年金へ切り替えます。

退職後の状況 年金の一般的な扱い 国民年金保険料
再就職せず無職になる 国民年金第1号 本人が納付
個人事業を始める 原則として国民年金第1号 本人が納付
配偶者の扶養に入る 要件を満たせば国民年金第3号 本人による個別納付なし
別の会社へ再就職する 加入要件を満たせば厚生年金 原則として給与から厚生年金保険料を控除

第1号被保険者になると、国民年金保険料を自分で納付します。

令和8年度、つまり2026年4月から2027年3月までの国民年金保険料は、 月額17,920円 です。

国民年金保険料は年度ごとに見直されるため、この記事を読む時期によって金額が異なる可能性があります。

納付方法についても、納付書だけではありません。

口座振替、クレジットカード、電子納付などを利用でき、一定期間分を前納することで割引を受けられる方法もあります。

また、第1号被保険者の方には、一定の条件のもとで月額400円の付加保険料を上乗せする仕組みもあります。

将来の老齢基礎年金を増やす選択肢の一つですが、国民年金基金との関係などもありますので、加入状況を確認したうえで検討します。

令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円ですが、これは 任意継続の健康保険料とは完全に別の支払い です。

たとえば、任意継続の健康保険料が月3万円で、本人が国民年金第1号になる場合、単純計算では毎月約4万8,000円の負担になります。

さらに、退職した本人に扶養されていた配偶者も第3号から第1号になる場合には、配偶者分の国民年金保険料も加わります。

退職後は給与収入がなくなる一方、社会保険料が自分の口座から直接出ていく形になります。

このため、在職中よりも負担感が大きくなりやすいところです。

ただし、退職によって所得が減少し、国民年金保険料の支払いが難しくなる場合には、保険料免除制度や納付猶予制度を利用できる可能性があります。

特に失業した方については、免除審査において失業等を理由とした特例が利用できる場合があります。

「前年は会社員で年収が高かったから免除は無理だろう」と自己判断せず、退職した事実を伝えて確認してみることをおすすめします。

国民年金保険料を払うのが難しいからといって、何も手続きをせず未納にするのは避けたいところです。

免除や納付猶予の承認を受けた期間と、単純な未納期間では、老齢基礎年金だけでなく障害基礎年金や遺族基礎年金の受給要件に関する扱いも異なります。

なお、国民年金保険料や免除制度の要件は年度や本人の状況によって変わります。

金額だけを見て判断するのではなく、現在の年齢、前年所得、配偶者の所得、失業の有無などを確認してください。

令和8年度の保険料額や納付方法など、最新の制度内容については日本年金機構の公式情報を確認できます。

(出典: 日本年金機構「国民年金保険料」

配偶者の第3号被保険者にも注意

配偶者の第3号被保険者にも注意

退職時に特に見落としやすいのが、配偶者の国民年金です。

ここは「自分が配偶者の扶養に入る場合」と「自分が退職することで配偶者の第3号資格がなくなる場合」の2方向から考える必要があります。

健康保険では退職後も任意継続の被扶養者として家族を残せる場合があるため、「妻や夫もこれまでどおり扶養のまま」と考えやすいのですが、国民年金の第3号被保険者には別の条件があります。

自分が配偶者の扶養に入る場合

退職した本人が20歳以上60歳未満で、配偶者が厚生年金に加入しており、その配偶者に扶養されるなどの要件を満たす場合には、国民年金第3号被保険者になれる可能性があります。

第3号被保険者になれば、本人が国民年金保険料を個別に納付する必要はありません。

第3号被保険者である期間は、老齢基礎年金を計算するうえでも保険料納付済期間として扱われます。

手続きは原則として、厚生年金に加入している配偶者の勤務先を通じて行います。

本人が市区町村へ行って第1号被保険者として加入するケースとは手続経路が異なります。

この場合、健康保険についても配偶者が加入している健康保険の被扶養者になれるのであれば、任意継続そのものが不要になる可能性があります。

たとえば妻が会社員で厚生年金と健康保険に加入しており、退職した夫が妻の扶養要件を満たす場合、夫は健康保険では妻の被扶養者、年金では第3号被保険者となれる可能性があります。

この場合、夫が任意継続保険料と国民年金保険料をそれぞれ支払うケースと比べて、家計負担が大きく変わります。

ただし、「年収130万円未満なら必ず扶養に入れる」と単純に判断できるわけではありません。

健康保険の被扶養者認定では今後の収入見込みや生計維持関係などが確認されますし、加入している健康保険によって提出を求められる資料も異なります。

退職後に配偶者の扶養へ入れる可能性がある方は、任意継続を申し込む前に配偶者の勤務先へ確認しておくとよいでしょう。

退職した本人に扶養されていた配偶者がいる場合

一方で、退職した本人が会社員で、その配偶者が国民年金第3号被保険者だった場合には、より注意が必要です。

退職した本人が厚生年金の第2号被保険者でなくなると、その配偶者も原則として第3号被保険者ではいられなくなります。

たとえば夫が会社員で、妻が20歳以上60歳未満の専業主婦だったケースを考えます。

在職中は夫が第2号被保険者、妻が第3号被保険者です。

夫が会社を退職して厚生年金を喪失すると、夫は原則として第1号へ、妻も第3号の要件を満たさなくなるため原則として第1号へ切り替えることになります。

このとき、夫が健康保険を任意継続し、妻が健康保険上は任意継続被保険者である夫の被扶養者として残れることがあります。

ここが非常に混乱しやすいところです。

健康保険の被扶養者と、国民年金第3号被保険者は同じ制度ではありません。

健康保険では扶養のままでも、年金では第1号への切り替えが必要になることがあります。

つまり、「任意継続でも妻を扶養に入れられたから、妻の年金も第3号のまま」と考えるのは誤りです。

夫が厚生年金を抜けているのであれば、妻自身が別の勤務先で厚生年金に加入するなどの事情がない限り、妻についても国民年金第1号への切り替えを確認する必要があります。

退職前後 本人 配偶者
退職前 厚生年金第2号 条件を満たせば第3号
退職後・再就職なし 20歳以上60歳未満なら原則第1号 20歳以上60歳未満なら原則第1号
健康保険 任意継続を選択可能 要件を満たせば任意継続の被扶養者として継続可能

夫婦とも第1号になると、国民年金保険料も原則としてそれぞれに発生します。

令和8年度の保険料で単純計算すれば、夫婦2人分で月額35,840円です。

これに任意継続の健康保険料が加わるため、退職前に想像していた以上の固定費になることがあります。

退職相談では本人の任意継続保険料だけを計算しがちですが、配偶者が第3号だった世帯では、 配偶者の年金保険料まで含めた家計負担 を確認することが重要です。

私も退職後の保険を整理するときには、本人だけではなく「配偶者は今、第3号ですか」と確認します。

この一問で、退職後に必要な手続きや家計負担が大きく変わることがあるからです。

60歳以降は年金の扱いが変わる

60歳以上で退職する場合は、20歳以上60歳未満の方と同じように「必ず国民年金第1号へ切り替えて保険料を払う」という扱いにはなりません。

国民年金の強制加入は原則として20歳以上60歳未満です。

そのため、60歳以降に会社を退職して厚生年金の資格を喪失した場合、原則として国民年金第1号被保険者になって毎月の国民年金保険料を納付する義務はありません。

たとえば62歳で定年退職し、その後は働かないという方であれば、健康保険については任意継続や国民健康保険などを選ぶ必要がありますが、年金については20歳以上60歳未満の退職者と同じ第1号への切り替えを行うわけではありません。

60歳未満で退職する場合と、60歳以降に退職する場合では、国民年金の考え方が大きく異なります。

ただし、60歳になったら年金について何も検討する必要がないという意味でもありません。

60歳時点で、老齢基礎年金の満額の基礎となる40年間の納付済期間等に不足がある場合や、老齢基礎年金を受給するために必要な受給資格期間が不足している場合には、一定の条件のもとで国民年金へ 任意加入 できることがあります。

原則として、日本国内に住所がある60歳以上65歳未満の方などで、厚生年金に加入していないことなどの要件を満たす場合が対象となります。

受給資格期間を満たしていない一定の方については、65歳以降の特例的な任意加入が関係する場合もあります。

任意加入は、今回の健康保険の「任意継続」とはまったく別の制度です。

名称 対象となる制度 主な目的
健康保険の任意継続 健康保険 退職後も一定期間、退職前の健康保険を継続する
国民年金の任意加入 国民年金 60歳以降などに加入期間を増やし、年金額や受給資格を確保する

名前に「任意」が入っているため混同しやすいのですが、制度の目的も手続きもまったく異なります。

60歳以降に任意加入すべきかは、これまでの加入月数、未納期間、免除期間、厚生年金への今後の加入予定、老齢基礎年金の見込額などを確認して判断します。

「60歳で退職したら全員が任意加入したほうがよい」という制度ではありません。

たとえば60歳までに国民年金の保険料納付済期間等が480月に届いていなければ、任意加入によって老齢基礎年金を満額に近づけられる可能性があります。

一方で、60歳以降も会社員として厚生年金へ加入する場合などは、任意加入できないケースがあります。

任意加入を検討するときは、まず「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などで自分の加入記録を確認するのが基本です。

何月分不足しているのかが分からないまま、「何となく入ったほうが得そう」と判断するのはおすすめしません。

60歳前後の納付期間や任意加入については、 国民年金はいつまで払う?60歳以降の任意加入も整理でも詳しく解説しています。

また、60歳以降も別の会社へ就職し、厚生年金の加入要件を満たせば、原則としてその勤務先で厚生年金に加入します。

65歳前から老齢厚生年金を受給している方などでは、在職老齢年金との関係も出てきます。

退職によって在職状態でなくなった結果、支給停止額が変わるケースもありますので、年金をすでに受給している方は受給状況も合わせて確認するとよいでしょう。

退職年齢だけで判断せず、 これまでの年金記録と、その後の働き方をセットで確認する ことが大切です。

任意継続すると年金はどうなる?手続き編

任意継続と年金が別の制度だと分かれば、次は実際の手続きです。

退職後は健康保険、年金、雇用保険、場合によっては税金関係など複数の手続きが重なるため、期限と必要書類を整理して進めることが重要です。

特に任意継続は申請期限が短く、国民年金にも届出期限があります。

「退職したら役所へ行けば全部終わる」というものではないので、手続き先も含めて確認しましょう。

ここからは国民年金への切り替えを中心に、実務上の注意点を確認します。

国民年金は退職後14日以内に手続き

会社を退職して厚生年金から国民年金第1号被保険者へ切り替える場合は、原則として 退職日の翌日から14日以内 に手続きを行います。

手続き先は、住所地の市区町村役場の国民年金担当窓口です。

年金事務所でも相談できます。

また、対象となる手続きについてはマイナポータルを利用した電子申請も可能です。

一方、退職した本人が厚生年金に加入している配偶者の扶養に入り、第3号被保険者になる場合は、本人が市役所で第1号の加入手続きをするのではなく、原則として配偶者の勤務先を通じて第3号被保険者に関する届出を行います。

退職後の状況 年金 主な手続き先
再就職しない 第1号 住所地の市区町村
自営業・フリーランス 原則第1号 住所地の市区町村
配偶者の扶養に入る 要件を満たせば第3号 配偶者の勤務先
すぐ別会社へ就職 厚生年金 新しい勤務先

「14日を過ぎたら国民年金に加入できなくなる」という意味ではありません。

届出が遅れても、本来第1号被保険者である期間がなくなるわけではないため、後から資格関係を整理することになります。

場合によっては過去の期間について保険料の納付が必要になります。

そのため、「期限を過ぎてしまったから、もう何もしなくてよい」と考えるのは逆です。

気づいた時点で市区町村や年金事務所へ相談してください。

健康保険の任意継続は原則として資格喪失日から20日以内、国民年金第1号への切り替えは原則として退職日の翌日から14日以内です。

同じ退職後の手続きでも期限が異なります。

また、退職日から次の就職日まで期間が空く場合には、その空白期間の年金資格を確認することが重要です。

たとえば3月31日に退職して4月1日に新しい会社へ入社し、同日から厚生年金に加入するのであれば、通常は間に第1号期間は生じません。

一方、3月31日に退職して5月15日に次の会社へ入社するようなケースでは、その間について国民年金第1号となる期間が生じることがあります。

「次の会社が決まっているから国民年金は関係ない」と考えるのではなく、 前職の資格喪失日と新しい勤務先の資格取得日を日付で確認する ことが大切です。

なお、公的年金の保険料は月単位で取り扱うため、同じ月の中で資格が変わるケースでは、その月の最終的な加入状況などによって保険料の扱いが変わることがあります。

転職間隔が短い場合ほど、「何日空いたら何円」と自己判断せず、年金事務所等で資格記録を確認すると確実です。

実務で退職日と入社日を確認するときは、「最終出勤日」ではなく正式な退職日を見ることが重要です。

有給休暇を消化している場合、最後に会社へ出勤した日と退職日は一致しないことがあります。

また、第3号へ切り替える場合には、配偶者の勤務先で被扶養者認定と年金の届出を同時に確認するケースが一般的です。

健康保険の扶養認定に必要な所得証明や離職票等を求められる場合もありますので、早めに勤務先へ相談しましょう。

退職後は「健康保険」「年金」「雇用保険」で窓口が異なることがあります。

手続き漏れを防ぐためには、退職後に何を選択するのかを先に決め、それぞれの期限を一覧にしておくのがおすすめです。

年金の切り替えに必要な書類

年金の切り替えに必要な書類

国民年金第1号被保険者への切り替えでは、国民年金被保険者関係届書などによって手続きを行います。

必要書類は本人の状況や手続方法によって異なりますが、窓口で手続きする場合には、基礎年金番号やマイナンバー、本人確認ができるもの、退職日を確認できる資料などを準備しておくとスムーズです。

一般的には、次のようなものを確認しておきます。

  • 基礎年金番号通知書や年金手帳など基礎年金番号が分かるもの
  • マイナンバーカードなど本人確認に使用できるもの
  • 退職日や厚生年金の資格喪失日を確認できる書類
  • 離職票、退職証明書、資格喪失に関する証明書など
  • 手続き先から個別に案内された書類

マイナンバーを使用して手続きする場合と基礎年金番号を使用する場合、電子申請を行う場合などで必要となるものは変わります。

また、退職した事実や資格喪失日が行政側で確認できる状態になっていれば書類を一部省略できることもありますが、退職直後で情報連携が済んでいない時期には、退職日を確認できる資料があると手続きが進みやすくなります。

自治体や本人の状況、マイナンバーとの連携状況などによって必要書類が異なることがあります。

「ネットでこの書類だけと書いてあったから大丈夫」と決めつけず、実際に手続きをする市区町村や年金事務所の案内を確認してから準備すると手戻りを防ぎやすくなります。

特に退職直後は、会社から離職票がまだ届いていないというケースがあります。

離職票は会社から直接交付されるというより、会社が離職に関する手続きをした後に交付されるため、退職日当日に必ず手元にあるものではありません。

一方で、退職証明書など別の書類によって退職日を確認できる場合もあります。

国民年金の手続きのためにどの資料を使えるかは、実際の窓口で確認してください。

確認したい情報 書類の例
本人の年金番号 基礎年金番号通知書、年金手帳など
本人確認・個人番号 マイナンバーカードなど
退職日・資格喪失日 離職票、退職証明書、資格喪失に関する証明書など
免除等を申請する場合 失業を確認できる書類など、申請内容に応じた資料

会社側としても、退職者が次の制度へ円滑に切り替えられるよう、退職日や資格喪失の事実が分かる資料を速やかに準備することが重要です。

私は会社から退職手続きの相談を受ける場合、本人から求められてから考えるのではなく、健康保険、年金、雇用保険で退職者が次に必要となる書類を意識して手続きを進めます。

退職者側にとっては、会社を辞めた直後に複数の役所や保険者へ手続きを行うことになるため、必要書類が遅れると負担が大きくなるからです。

実務では、健康保険の任意継続の申請期限と国民年金の手続期限が異なる点にも注意します。

任意継続については原則20日以内、国民年金第1号への切り替えは原則14日以内です。

「退職後の社会保険手続き」という一つの期限ではありません。

期限の起算日や必要書類は、退職理由、年齢、再就職、配偶者の扶養などによって変わることがあります。

退職前に「自分は退職後どの健康保険と年金に入るのか」を決めておくと、必要書類を会社へ早めに依頼できます。

健康保険と年金の保険料を確認する

退職後に健康保険を任意継続し、年金が国民年金第1号になる場合には、健康保険料と国民年金保険料をそれぞれ自分で負担します。

退職前は健康保険料も厚生年金保険料も給与から控除されているため、毎月の手取り額だけを見ていると実際にどの程度の社会保険料を負担していたのか意識しにくいかもしれません。

ところが退職すると、任意継続の保険料や国民年金保険料を自分で直接納付するようになるため、一気に負担感が大きくなります。

協会けんぽの任意継続では、在職中に会社が負担していた健康保険料の事業主負担がなくなるため、退職前に給与から控除されていた健康保険料の概ね2倍程度になるケースが一般的です。

ただし、任意継続の標準報酬月額には上限があり、退職時の標準報酬月額、加入していた健康保険、都道府県ごとの保険料率、40歳以上65歳未満の場合の介護保険料などによって実際の金額は変わります。

そのため、「在職中に健康保険料が2万円だったから任意継続は必ず4万円」と機械的に計算するのは適切ではありません。

国民年金については、令和8年度の保険料は月額17,920円です。

たとえば任意継続の健康保険料が月額3万円だった場合、本人が国民年金第1号であれば、単純計算で月額47,920円となります。

年間では約57万5,000円です。

これはあくまで計算例であり、実際の任意継続保険料が3万円になるという意味ではありません。

健康保険料は加入先や標準報酬月額などによって異なり、国民年金保険料も年度ごとに改定されます。

数値はあくまで一般的な目安として考え、実際の負担額は退職時点の情報で確認してください。

さらに注意したいのが、夫婦とも20歳以上60歳未満で、会社員だった本人の退職に伴って配偶者も第3号から第1号になるケースです。

令和8年度の国民年金保険料で考えると、夫婦2人なら月額35,840円です。

仮に任意継続保険料が月3万円なら、健康保険と夫婦2人分の国民年金を合わせて月65,840円となります。

退職後の家計を考えるときには、かなり大きな固定費ですよね。

そのため、任意継続が得かどうかを判断するときには、本人の健康保険料だけを比較するのでは不十分です。

確認項目 確認する内容 主な注意点
任意継続保険料 退職後に本人が負担する月額 事業主負担がなくなり、介護保険料が加わる場合もある
国民健康保険料 自治体で試算した場合の負担額 前年所得や世帯構成などで変動する
本人の国民年金 第1号になる場合の保険料 年度ごとに保険料額が改定される
配偶者の国民年金 第3号から第1号になるか 健康保険の扶養と混同しない
家族の健康保険 被扶養者として認定できるか 収入見込みなど扶養要件を確認する

国民健康保険料についても注意が必要です。

国民健康保険料は前年所得などを基礎として計算されるため、退職直後は「今年は収入がなくなるから国保は安いだろう」と思っても、前年の給与所得が反映されて高額になることがあります。

一方、翌年度になると所得の減少が反映され、国民健康保険のほうが任意継続より安くなるケースもあります。

現在の任意継続制度では本人の申出による資格喪失も可能になっているため、退職時だけでなく翌年度にも保険料を比較する価値があります。

また、健康保険の被扶養者になれるのであれば、被扶養者本人について健康保険料を個別負担しないため、任意継続や国民健康保険より大幅に負担を抑えられるケースがあります。

令和8年度の具体的な国民年金保険料や前納については、 令和8年度国民年金保険料はいくら?月額と前納割引のポイントでも整理しています。

退職後の保険を比較するときは、 「任意継続はいくらか」ではなく、「家族全体で健康保険と年金に毎月いくら払うか」 まで計算するのがポイントです。

退職前後は「任意継続だけの金額」ではなく、健康保険、本人の年金、配偶者の年金を合わせた総額で比較することをおすすめします。

切り替え忘れは未納リスクがある

切り替え忘れは未納リスクがある

健康保険を任意継続したことで安心し、国民年金の切り替えをしないままにしてしまうと、本来第1号被保険者である期間について後から資格や保険料を整理する必要があります。

市区町村や日本年金機構から国民年金加入に関する案内が届くこともありますが、「何もしなくても必ず自動的に正しい状態へ切り替わる」と考えないほうが安全です。

会社員だった期間については会社が厚生年金の資格取得・資格喪失手続きを行いますが、退職後に第1号被保険者になる場合は、原則として本人側で必要な届出を行います。

国民年金保険料が未納のままになると、その期間は原則として老齢基礎年金の年金額に反映されません。

ただし、問題は老後の年金額だけではありません。

国民年金は「老後の年金だけ」の制度ではありません。

未納期間は、病気やけがで障害が残った場合の障害基礎年金や、被保険者が死亡した場合の遺族基礎年金について、保険料納付要件の判定に影響することがあります。

障害年金や遺族年金には、一定の保険料納付要件があります。

そのため、万一の事故や病気が起きた後になってから過去の未納期間を解消しようとしても、間に合わないケースがあります。

ここが「払えるときに後から払えばよい」と単純に考えてはいけない理由です。

通常の国民年金保険料は、納付期限から2年を経過すると時効によって納付できなくなるのが原則です。

一方、保険料免除、納付猶予、学生納付特例などの正式な承認を受けた期間については、一定の条件のもとで10年以内の追納が可能です。

状態 受給資格期間 老齢基礎年金額 後からの納付
保険料納付済 算入される 反映される 不要
全額免除 算入される 一定割合が反映される 一定期間内は追納可能
納付猶予 算入される 追納しなければ原則反映されない 一定期間内は追納可能
未納 原則算入されない 反映されない 通常は納付期限から2年以内

したがって、「今は払えないから数年後にまとめて払えばよい」と自己判断するのは危険です。

払えない事情があるのであれば、未納のまま放置するのではなく、免除や納付猶予の申請ができないかを確認するのが重要です。

退職によって収入がなくなった方については、失業等を理由とする免除の特例を利用できる場合もあります。

免除と納付猶予は「保険料を払っていない」という見た目は似ていますが、何も手続きをしていない未納とは年金制度上の扱いが大きく異なります。

支払いが難しいときほど、手続きをする意味があります。

現在は厚生年金に加入していても、過去に転職と転職の間が空いていた時期や、退職後に国民年金の切り替えを忘れていた期間が未納として残ることがあります。

詳しくは、 厚生年金を払っているのに国民年金が未納になる原因と対処法 でも解説しています。

もう一つ注意したいのが、配偶者の第3号被保険者の切り替え忘れです。

会社員だった本人が退職したにもかかわらず、その配偶者について第3号から第1号への変更が行われていないと、後になって年金記録を確認した際に空白や不整合が判明することがあります。

「夫の任意継続で妻も扶養のままだから大丈夫」と思っていたケースは、制度を知らなければ十分起こり得ます。

退職時には、本人だけではなく配偶者についても、年金記録がどの区分になるのか確認しておきましょう。

すでに切り替えを忘れていたことに気づいた場合も、そのままにせず、市区町村や年金事務所へ相談してください。

いつ退職したのか、その後どの勤務先で厚生年金に加入したのか、配偶者の状況はどうだったのかを確認すれば、必要な手続きを整理できます。

任意継続すると年金はどうなるか整理

任意継続すると年金はどうなるのかという疑問について、最も重要なのは 「任意継続は健康保険だけの制度」 という点です。

会社を退職すると、健康保険と厚生年金の被保険者資格は原則として退職日の翌日に喪失します。

その後、健康保険については任意継続を選ぶことができますが、厚生年金までそのまま継続されるわけではありません。

20歳以上60歳未満で再就職せず、厚生年金に加入する配偶者の扶養にも入らないのであれば、原則として国民年金第1号被保険者への切り替えが必要です。

  • 任意継続は健康保険の制度
  • 厚生年金には健康保険と同じ任意継続制度はない
  • 20歳以上60歳未満で再就職しなければ原則として国民年金第1号へ切り替える
  • 配偶者の扶養に入れば要件を満たすことで第3号になる場合がある
  • 退職者に扶養されていた配偶者も第3号から外れる可能性がある
  • 国民年金第1号への切り替えは原則として退職日の翌日から14日以内
  • 60歳以上では国民年金の強制加入が原則終了し、必要に応じて任意加入を検討する

退職後の手続きでは、健康保険を任意継続にするか、国民健康保険にするかという比較に目が向きがちです。

しかし、家計への影響を正確に把握するためには、国民年金の負担や配偶者の年金区分まで確認する必要があります。

確認する順番 確認内容
健康保険 任意継続・国民健康保険・家族の扶養のどれを選ぶか
本人の年金 第1号・第3号・再就職先の厚生年金のどれに該当するか
配偶者の年金 現在第3号なら退職後も資格を維持できるか
毎月の負担 健康保険料と本人・配偶者の年金保険料を合計する
手続期限 任意継続と国民年金で期限が異なることを確認する

たとえば、55歳の会社員が退職し、しばらく再就職せず、妻が専業主婦だった場合を考えます。

本人が健康保険を任意継続すれば、健康保険上は妻を被扶養者として継続できる可能性があります。

しかし、年金では本人が第1号となり、妻も第3号ではいられなくなるため、原則として夫婦とも第1号への切り替えを検討することになります。

つまり、「健康保険は家族2人で任意継続、年金は夫婦それぞれ第1号」という組み合わせもあり得るわけです。

逆に、退職した本人が厚生年金に加入している配偶者の扶養に入れるなら、健康保険では配偶者の被扶養者、年金では第3号となり、任意継続自体が不要になる可能性があります。

この違いだけでも、退職後の毎月の負担額は大きく変わります。

私が退職時の社会保険を確認するときも、健康保険と年金は必ず分けて整理します。

「本人は何歳か」「すぐ再就職するか」「配偶者は第3号か」「配偶者自身が厚生年金に入っているか」の4点を確認すると、必要な手続きの大枠が見えやすくなります。

また、退職後に国民年金保険料の支払いが難しい場合には、単純に未納にするのではなく、免除や納付猶予を利用できないかを確認してください。

60歳以上で退職する方については国民年金の強制加入が原則終了しているため、60歳未満の方と同じ手続きをするわけではありません。

加入月数が不足している場合には任意加入という別の選択肢があります。

このように、任意継続すると年金はどうなるのかについては、「任意継続だからこうなる」と一つの答えで考えるのではなく、 健康保険の選択と年金の加入区分を切り分け、そのうえで年齢・再就職・配偶者の状況を当てはめる ことが大切です。

社会保険制度の要件、保険料額、申請方法、提出書類などは改正されることがあります。

また、健康保険組合によって任意継続の具体的な取扱いが異なる場合もあります。

退職後の手続きは、退職日の翌日から動き始めるものが多く、任意継続のように期限の短い制度もあります。

できれば退職してから考え始めるのではなく、退職日が決まった段階で「健康保険をどうするか」「年金をどうするか」「配偶者の扱いはどうなるか」「毎月いくら必要になるか」を確認しておくのがおすすめです。

特に専業の配偶者がいる場合は、本人の任意継続だけで手続きが終わったと思わず、配偶者の第3号資格まで確認してください。

また、制度の要件、保険料額、手続方法は今後も変更される可能性があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

個別の加入記録、家族構成、退職後の収入、再就職予定などによって必要な手続きや有利な選択肢が変わる場合には、 最終的な判断は専門家にご相談ください。

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