育児休業

育休中の住民税はどう払う?金額・払い方・翌年の変化を整理

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

育休中で給与がなくなったり大きく減ったりしても、住民税は原則として支払いが続きます。

住民税は現在の給与ではなく、前年の所得をもとに計算されるためです。

そのため、育児休業給付金を受け取っていても、育休に入った直後は思った以上に住民税の負担を感じることがあります。

毎月の給与から住民税が天引きされていた方ほど、「給与が出ないのに、なぜ住民税だけ支払うのだろう」と疑問に感じやすいところです。

一方で、育休によって給与所得が減った年の状況は翌年度の住民税に反映されるため、翌年以降に税額が下がることもあります。

育休が年をまたぐ場合には、最初の年度とその次の年度で負担感が大きく変わることも珍しくありません。

この記事では、育休中の住民税はいくらになるのか、どのように払うのか、普通徴収への切替や育休明けの手続きまで、従業員の方を中心に実務目線で整理します。

これから育休に入る方は、休業中の家計を考えるためにも、住民税の決定通知書や給与明細を手元に置きながら確認してみてください。

  • 育休中も住民税を払う理由
  • 育休中の住民税額と翌年の変化
  • 普通徴収や一括徴収による払い方
  • 育休明けの手続きと納付が難しい場合の対応

育休中の住民税はどう払う?金額・払い方・翌年の変化

育休中の住民税はなぜ払う必要がある?

育休中の住民税を理解するときは、まず「今の収入」と「今払っている住民税」を切り離して考えることが大切です。

育休に入った時点で給与がなくなっても、住民税が同時にゼロになるわけではありません。

これは住民税の計算と納付に時間差があるためです。

ここでは、住民税が決まる仕組みから、育児休業給付金の税務上の扱い、育休翌年の住民税、年をまたいで休業する場合の考え方まで順番に確認していきます。

住民税は前年の所得をもとに決まる

個人の住民税は、基本的に 前年の1月1日から12月31日までの所得をもとに計算され、その結果を翌年度に納める仕組み です。

会社員の場合、会社が給与から住民税を差し引く特別徴収が一般的で、原則として6月から翌年5月までの給与から分割して徴収されます。

ここで重要なのは、6月以降に給与から引かれている住民税が、その月の給与に対して計算されているわけではないという点です。

例えば2026年6月から2027年5月までに納める住民税は、基本的には2025年中の所得をもとに決められています。

そのため、2026年4月から育休に入り給与がなくなったとしても、2025年に通常どおり勤務して一定の給与を得ていれば、その所得をもとにした住民税の納税義務は残ります。

実際によくあるのが、「育休で給料が出なくなったので、税金も止まると思っていた」というケースです。

所得税は給与が支給された際に源泉徴収されるため、無給になれば給与から引かれる所得税も通常はなくなります。

その感覚で住民税を見てしまうと、育休中に届いた納付書を見て驚くことになります。

育休に入ったから新たに住民税が発生しているのではありません。

前年に得た所得に対する住民税を、育休中の時期に納めていると考えると仕組みを理解しやすくなります。

所得税と住民税では負担が変わる時期が違う

所得税と住民税の違いを整理すると、育休中の家計も見通しやすくなります。

所得税は基本的にその年の所得に対応するため、育休によって給与が減れば比較的早く負担も小さくなります。

一方、住民税には前年所得が反映されるため、収入が減少してから税負担が下がるまでに時間差があります。

項目 所得税 住民税
主な計算の考え方 その年の所得をもとに計算 前年の所得をもとに計算
給与がなくなった直後 給与からの源泉徴収は通常なくなる 前年所得に対する納付が続くことがある
育休による所得減少の影響 その年の所得税に反映 主に翌年度の住民税に反映

また、育休中は一定の要件を満たせば健康保険料と厚生年金保険料の免除制度があります。

このため、「育休中は社会保険料が免除されるのだから、住民税も免除されるのでは」と考える方もいますが、両者はまったく別の制度です。

社会保険料が免除されることと、住民税を払わなくてよいことは別の話 です。

育休前の家計と育休中の家計を比較するときは、給与の減少だけではなく、住民税がどの方法で、あといくら残っているのかまで確認しておく必要があります。

私が実務で説明するときも、「育休開始月の給与がいくらになるか」だけではなく、「現在毎月いくら住民税を天引きされているか」を一緒に確認するようにしています。

育休開始後に慌てないためには、最後の給与明細と住民税の税額決定通知書を確認しておくことが第一歩です。

育児休業給付金には住民税がかからない

育児休業給付金には住民税がかからない

育休中の収入を考えるうえで重要なのが、雇用保険から支給される育児休業等給付です。

育児休業給付金や出生時育児休業給付金、出生後休業支援給付金などは、会社から支給される通常の給与とは性質が異なり、原則として 非課税所得 として扱われます。

そのため、育児休業給付として受け取った金額そのものに所得税や住民税が課税されるわけではありません。

例えば、育休期間中に雇用保険からまとまった金額が口座へ振り込まれていても、その給付額を給与収入と同じように年間所得へ加算して、翌年度の住民税を計算するものではありません。

この点は育休中の税金を考えるときの重要なポイントです。

「年間で口座に300万円入ってきた」という事実だけを見ても、その300万円すべてが税金の計算対象とは限りません。

会社から支給された給与や賞与なのか、雇用保険からの育児休業等給付なのか、健康保険から支給される出産手当金などなのかによって、税務上の取扱いが変わります。

育休中のお金は「いくら受け取ったか」だけでなく、「何として受け取ったお金なのか」を分けて考えることが大切です。

翌年の住民税が下がる理由を正しく理解する

ここでよくある誤解が、「育児休業給付金が非課税だから、翌年の住民税が安くなる」という説明です。

完全に間違いというわけではありませんが、もう少し正確に整理した方がよいでしょう。

翌年度の住民税が下がる主な理由は、 育休によってその年の課税対象となる給与所得が減少するから です。

そして、育児休業等給付は非課税なので、減った給与を給付金の金額で埋めて所得計算をすることもありません。

この二つを分けて理解すると、住民税の仕組みがかなり分かりやすくなります。

例えば、通常勤務なら1年間で給与500万円を受け取る人が、年の途中から育休に入り、その年の給与が200万円まで減ったとします。

育休中に雇用保険から給付を受け取っていても、その給付金を給与500万円になるまで足し戻して住民税を計算するわけではありません。

一方、育休中でも会社から給与や賞与が支払われる場合は、その給与等については通常どおり課税対象となり得ます。

会社によっては育休期間中にも独自の手当を支給する場合がありますので、すべての入金を一律に「育休中のお金だから非課税」と判断するのも適切ではありません。

厚生労働省も、育児休業等給付について非課税所得であり課税対象にならないことを案内しています。

制度や給付の名称、支給要件は改正されることがありますので、最新の情報を確認したい場合は (出典:厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」) をご確認ください。

育休中にどのようなお金を受け取るのかを全体から確認したい方は、 育休中の給料・給付金・税金・保険料の解説 もあわせて確認してみてください。

給与、育児休業給付、社会保険料、税金を別々に整理すると、実際の手取りを把握しやすくなります。

育休中の住民税はいくらになる?

育休中の住民税がいくらになるかは、「育休を取ると年間○万円」と一律に決まるものではありません。

住民税は前年の所得をもとに計算するため、前年の給与収入が高ければ育休中でも比較的大きな金額になることがありますし、前年の所得が少なければ税額も小さくなる可能性があります。

さらに、同じ年収でも税額が必ず同じになるわけではありません。

社会保険料控除、生命保険料控除、扶養関係、配偶者控除、医療費控除、住宅ローン控除など、個人ごとの状況によって税額は変わります。

自治体による取扱いや、均等割・森林環境税などの影響もあるため、単純に年収へ一定割合を掛けて正確な金額を出すことはできません。

まず税額決定通知書を確認する

これから育休に入る会社員の方が現在の住民税を確認するときに、最も分かりやすい資料が 給与所得等に係る住民税の特別徴収税額決定通知書 です。

通常は毎年5月から6月頃に会社を通じて通知され、その年度の住民税の年税額や月ごとの特別徴収額を確認できます。

給与明細にも毎月差し引かれている住民税は記載されていますが、育休開始後に残っている金額まで把握するには、税額決定通知書と照らし合わせて確認した方が分かりやすいでしょう。

確認する項目 見るもの 確認できる内容
年間の住民税額 特別徴収税額決定通知書 その年度の年税額
毎月の天引き額 給与明細 現在の特別徴収額
既に納付した金額 給与明細など これまで給与から徴収された額
育休後の残額 会社または市区町村へ確認 普通徴収などへ切り替わる金額

例えば、毎月1万8,000円の住民税が給与から天引きされている方であれば、単純計算では12か月で約21万6,000円です。

仮に年度の途中で育休に入り、まだ数か月分の特別徴収が残っている場合、その未徴収分を何らかの方法で納める必要があります。

ただし、この21万6,000円という数字はあくまで計算例です。

「年収500万円なら住民税は必ずこのくらい」といった判断はできません。

特に住宅ローン控除や扶養状況などによって住民税額が変わることがあるため、一般的なシミュレーションだけで家計を決めるのは避けた方がよいでしょう。

住民税の金額を確認するときは、ネット上の年収別モデルより、あなた自身の特別徴収税額決定通知書を優先してください。

ここで示した金額はあくまで一般的な目安です。

実際の税額は前年所得や所得控除、居住する自治体などによって異なります。

実務では、育休中の資金計画について「育児休業給付が何%支給されるか」ばかりに目が向きやすいのですが、実際には住民税の支払い方法も手取り感に影響します。

育休前の給与明細で住民税が毎月2万円程度引かれているのであれば、休業後もその負担を家計から出す前提で考えておく方が安全です。

また、普通徴収へ切り替わると、毎月2万円ずつではなく、複数月分がまとまった納付額として表示される場合があります。

年間負担が急に増えたわけではなくても、一回あたりの支払額が大きく見えることがありますので、育休前に納付方法まで確認しておきましょう。

育休翌年は住民税が下がることがある

育休翌年は住民税が下がることがある

育休中の住民税について、「育休に入った翌年は住民税が安くなる」と聞いたことがある方もいるでしょう。

これは一定の場合にはそのとおりですが、育休を取得しただけで一律に住民税が下がるわけではありません。

正確には、 育休によってその年の課税対象となる給与所得が減れば、その減少した所得をもとに翌年度の住民税が計算されるため、結果として税額が下がる可能性がある という仕組みです。

育休に入る月によって翌年度への影響は変わる

例えば、1月から3月まで通常勤務をして、4月から12月まで育休を取得したケースを考えてみます。

この年に会社から支給される給与が主に1月から3月までであれば、1年間フルタイムで勤務した年と比較して年間の給与所得は大きく減る可能性があります。

育児休業等給付は非課税なので、その給付額を給与収入へ加えて住民税を計算することも通常ありません。

そのため、この年の所得をもとに計算する翌年度の住民税は、フル勤務した年より低くなる可能性が高くなります。

一方、10月や11月から育休に入った場合はどうでしょうか。

その年の1月から9月、あるいは10月まで通常どおり給与を受け取っているため、年間の給与所得はそれほど大きく減らない場合があります。

その結果、「育休を取ったのに翌年度の住民税が思ったほど下がらない」ということもあります。

育休の入り方 その年の給与所得 翌年度の住民税への影響
年の早い時期から長期育休 大きく減りやすい 下がる可能性が比較的大きい
年の後半から育休 一定額残りやすい 下がり幅が小さい場合がある
短期間のみ育休 大きく変わらない場合がある 住民税も大きく変わらない場合がある

翌年の住民税が下がるかどうかは「何か月育休を取ったか」だけではなく、その年に実際にどれだけ課税対象となる所得があったかで決まります。

また、育休の途中で一時的に給与が支給された場合や、賞与が支給された場合、年の途中で復職した場合などは、その給与等もその年の所得として考える必要があります。

「4月から育休だから4月以降は全部所得ゼロ」と単純に考えず、その年の源泉徴収票に最終的にどれだけ給与収入が記載されるのかを見ると理解しやすいでしょう。

所得が一定基準以下になった場合には、翌年度の住民税について所得割が発生しなかったり、非課税となったりする可能性もあります。

ただし、非課税となる基準は扶養人数などによって変わりますし、自治体の案内を確認する必要があります。

なお、育休中の年末調整でも育児休業給付は給与収入として扱いません。

年末調整との関係を整理したい方は、 育休中の年末調整と育児休業給付の扱い で詳しく解説しています。

育休中の家計を考える場合には、「今年の住民税がいくらか」だけではなく、翌年6月以降の住民税がどう変わりそうかまで想定しておくと、復職前後の資金計画も立てやすくなります。

育休が年をまたぐ場合の住民税

育休中の住民税で特に分かりにくいのが、育休が1年以上続き、複数の年や年度をまたぐケースです。

育休そのものは一続きでも、住民税は前年所得をもとに毎年度計算し直されるため、育休期間中に税額が変わることがあります。

この場合は、「今払っている住民税が、いつの所得をもとに計算されているのか」を時系列で整理すると理解しやすくなります。

育休1年目の負担が大きくなりやすい理由

例えば、ある年の1月から12月まで通常どおり勤務し、翌年の初めから育休に入ったとします。

育休開始後は給与がほとんど支払われなくても、その年の6月から支払う住民税は前年のフル勤務時の所得をもとに計算されています。

つまり、育休1年目は「現在は収入が減っているのに、住民税は休業前の収入水準を反映している」という状態になりやすいわけです。

この時期が、育休中に最も住民税の負担を感じやすいタイミングの一つです。

その後、育休によって給与所得が大きく減った年の所得をもとに、次の年度の住民税が計算されます。

そのため、育休が長期間続いている場合には、育休2年目の6月以降から住民税が大きく下がることがあります。

時期 住民税の計算に使われる所得 負担のイメージ
育休1年目 育休前の前年所得 フル勤務時の所得が反映されやすい
育休2年目 育休で給与が減った年の所得 税額が下がる可能性がある
復職した年 前年の育休期間中の所得 比較的低い場合がある
その翌年度 復職後の所得を含む前年所得 再び税額が上がることがある

復職後にも時間差がある

この時間差は復職した後にも続きます。

例えば、前年のほとんどを育休で過ごし、今年4月にフルタイムで復職した場合、今年6月からの住民税は前年の低い所得をもとに計算されるため、復職後の給与水準と比べて住民税がかなり低く感じられる場合があります。

しかし、その年に復職して給与所得が増えれば、その所得は翌年度の住民税に反映されます。

翌年6月になると住民税が再び上がり、「突然手取りが減った」と感じることがあります。

これは税率が突然上がったというより、復職した年の所得が1年遅れて反映された結果です。

育休中から復職後までを見ると、収入と住民税の動きにはタイムラグがあります。

育休1年目は収入が少ないのに住民税が高く、復職直後は給与が戻っているのに住民税が低い、といった逆転が起こることがあります。

連続して育休を取得する場合などは、給与所得が非常に少ない年が続くこともあります。

その結果、翌年度の住民税がかなり低くなったり、所得や扶養状況などによっては非課税となったりする可能性もあります。

ただし、住民税の非課税基準は一律ではありません。

私が育休中のお金を説明するときも、単年度の数字だけではなく、 育休に入る年、育休1年目、翌年度、復職する年、その翌年度 というように時系列で見ることをおすすめしています。

長期の育休ほど、この見方が重要になります。

育休中の住民税の払い方と手続き

次に、実際に育休中の住民税をどのように支払うのかを確認します。

通常の会社員は給与から住民税を天引きする特別徴収ですが、無給の育休では天引きする給与がありません。

そのため、会社が自治体へ必要な届出を行い、普通徴収へ切り替えるなどの対応が必要になることがあります。

ただし、育休中の徴収方法は会社の給与支給状況や自治体への届出内容によっても変わります。

「育休なら必ずこの方法」と決めつけず、休業前に会社へ確認しておくことが重要です。

普通徴収へ切り替えて自分で納付する

会社員の住民税は、通常は会社が毎月の給与から差し引いて市区町村へ納める特別徴収です。

従業員自身が毎月市役所へ納めに行く必要はなく、給与明細に「住民税」「市県民税」などとして控除額が記載されています。

しかし、育休に入って給与が支給されなくなると、会社は給与から住民税を差し引くことができません。

そのため、会社が市区町村へ 給与所得者異動届出書 を提出し、未徴収となっている住民税を普通徴収へ切り替える対応が行われることがあります。

普通徴収へ切り替わると、原則として本人が市区町村から送られてくる納税通知書や納付書などを使って住民税を納めます。

給与から毎月少しずつ引かれていたときとは異なり、普通徴収では複数月分に相当する金額をまとめて納める形になることがあるため、一回あたりの負担額が大きく見える点には注意が必要です。

普通徴収になったら納付書を必ず確認する

普通徴収の納期や支払方法は自治体によって異なります。

一般的には年数回に分けて納付する形が取られますが、金融機関、コンビニ、口座振替、スマートフォン決済など、利用できる納付方法も自治体ごとに違います。

育休に入る本人が市役所へ行って特別徴収を止めるのではなく、会社側が給与所得者異動届出書などによって必要な届出を行うのが基本的な流れです。

会社側の実務としても、育休開始日だけを登録して終わりではありません。

給与の支給がなくなる場合には、住民税をその後どのように徴収するかを確認し、必要な自治体手続きを行う必要があります。

従業員の立場では、育休に入る前に総務や給与担当者へ、「育休中の住民税は普通徴収になりますか」「納付書は自宅に届きますか」「最後の給与で何月分まで徴収されますか」と確認しておくと分かりやすいでしょう。

育休に入れば必ず自動的に普通徴収へ変わるわけではありません。

会社から一部給与が支給される場合や、会社が住民税相当額を本人から受け取って特別徴収を継続する運用など、実際の処理が異なる場合があります。

特に注意したいのが、普通徴収への切替時期と納付書が届く時期のズレです。

育休に入った直後には何も届かず、「住民税は払わなくてよくなったのかな」と思っていたところ、後からまとまった納付書が届くことがあります。

納付書が届く前であっても納税義務そのものが消えたとは限りません。

育休前の給与明細で毎月住民税が引かれていた方は、何らかの方法で残額を納める可能性があると考え、一定額を家計から確保しておくと安心です。

私が会社側へ案内するときも、育休前の説明項目に住民税を入れておくことをおすすめしています。

社会保険料の免除や育児休業給付は説明していても、住民税の話だけ抜けていると、休業開始後に本人から問い合わせが来やすいポイントだからです。

一括徴収で残額をまとめて納付する

一括徴収で残額をまとめて納付する

育休に入る際には、状況によって、最後の給与や賞与などからその年度の住民税の未徴収額をまとめて徴収する取扱いが検討されることもあります。

いわゆる一括徴収です。

一括徴収ができれば、育休中に普通徴収の納付書を何度も管理する必要がなくなり、本人にとっては支払い忘れを防ぎやすくなるメリットがあります。

一方で、住民税の残額を一度に給与から差し引くため、育休直前の手取り額が大きく減る可能性があります。

例えば、毎月の住民税が2万円で未徴収分が6か月残っていると仮定すれば、単純計算では12万円です。

通常であれば数か月かけて負担する金額を一度に差し引けば、最後の給与が想定よりかなり少なくなることがあります。

方法 メリット 注意点
普通徴収 納期ごとに分けて支払いできる 自分で納付管理が必要
一括徴収 育休中の納付管理を減らせる 直前の給与等の手取りが大きく減ることがある
会社で特別徴収を継続 会社経由で管理できる場合がある 会社の運用や給与支給状況による

退職時の一括徴収と混同しない

ここで注意したいのが、退職した従業員について適用される一括徴収のルールと、育児休業によって一時的に給与の支払いがなくなるケースを単純に同じものとして扱わないことです。

住民税の解説では「1月から4月に退職した場合は未徴収税額を一括徴収する」といった説明を目にすることがありますが、これは主として退職などに関する取扱いです。

育休は雇用関係が終了する退職とは異なります。

「1月から4月に育休へ入ったから必ず一括徴収になる」などと、育休開始月だけで判断するのは避けてください。

実際にどの徴収方法になるかは、給与や賞与の支給状況、会社の処理、市区町村への届出内容などを確認する必要があります。

また、一括徴収をしようとしても、最後の給与や賞与から社会保険料、所得税その他の控除を行った結果、住民税の残額をすべて差し引けるだけの金額が残らないケースも考えられます。

その場合には、残額について別の納付方法を確認する必要があります。

従業員としては、「一括徴収と普通徴収のどちらが得か」というより、 税額そのものは基本的に同じで、いつ、どのように払うかが違う と考えるとよいでしょう。

一括徴収にしたから住民税が安くなるわけではありません。

実務上は、育休に入る前に会社から未徴収額の概算を案内し、どのような形で納付する予定なのか共有しておくとトラブルを防ぎやすくなります。

本人も、最後の給与が大きく減る可能性があるなら事前に家計へ織り込むことができます。

育休に入ってから突然「今月の手取りがほとんどない」「市役所からまとまった納付書が届いた」とならないよう、給与担当者へ早めに確認しておくことをおすすめします。

育休明けは特別徴収へ戻す

育休中に住民税を普通徴収へ切り替えていた場合、職場へ復帰して給与の支払いが再開したからといって、必ず復職した月から自動的に住民税の給与天引きが再開されるわけではありません。

普通徴収から給与による特別徴収へ戻す場合には、一般的に勤務先から市区町村へ切替に関する届出を行い、市区町村から会社へ特別徴収する税額が通知された後、給与天引きが始まります。

そのため、4月に復職したから4月給与から必ず住民税が引かれる、というわけではありません。

会社の届出時期、市区町村の処理時期、給与計算の締切などによって、実際の開始月がずれることがあります。

普通徴収の納付書が残っている場合は要注意

復職時に特に注意してほしいのが、手元に普通徴収の納付書が残っている場合です。

会社からの特別徴収へ切り替える予定だからといって、現在持っている納付書をすべて破棄してよいとは限りません。

普通徴収のうち、すでに納期限が到来している分については特別徴収への切替対象にならない場合があります。

また、会社がどの期分から切り替えるかによって、自分で支払う必要がある分と給与から引かれる分が分かれます。

会社から住民税が引かれていないから支払わなくてよい、とは限りません。

普通徴収の納付書が残っている場合は、どの期分まで自分で納付し、どこから会社の特別徴収になるのかを確認してください。

逆に、すでに自分で納付した普通徴収分を会社側でも誤って特別徴収してしまうような行き違いを防ぐためにも、復職時には納付済額を会社へ伝えておくとよいでしょう。

復職後の住民税が低くても翌年は変わることがある

もう一つ、育休明けに知っておきたいのが税額そのものの変化です。

前年の大部分を育休で過ごして給与所得が少なかった場合、復職した年の住民税は低くなっている可能性があります。

例えば4月に復職し、6月から新年度の住民税が始まったところ、「フルタイム勤務時より住民税がかなり安い」と感じることがあります。

しかし、この金額は前年の育休期間中の所得を反映したものです。

現在の給与水準を反映した住民税ではありません。

復職してその年の給与所得が増えれば、その所得は翌年度の住民税に反映されます。

したがって、翌年6月から住民税が大きく増えることがあります。

復職直後は、給与収入が戻っている一方で住民税がまだ低いため、手取りが比較的多く感じられることがあります。

その状態を今後も続く手取り額だと考えず、翌年度の住民税増加も見込んで家計を組んでおくと安心です。

会社側でも、育休復職者について給与計算を再開する際には、社会保険料だけでなく住民税の徴収状況を確認する必要があります。

休業前の特別徴収データをそのまま復活させるのではなく、現在どのような課税・徴収状態になっているのかを確認することが大切です。

従業員の方も、復職初月の給与明細を見る際には、基本給や社会保険料だけでなく「住民税」の欄まで確認してみてください。

引かれていなければ、会社がこれから切替手続きをするのか、それとも普通徴収を継続するのかを確認しておくと納付漏れを防げます。

住民税の減免や徴収猶予を相談する

育休中に住民税の支払いが厳しくなった場合でも、納付書をそのまま放置することは避けてください。

住民税には納期限があり、期限までに納付しなければ督促や延滞金などの対象となる可能性があります。

さらに未納状態が長く続けば、法令に基づく滞納処分の対象となることもあります。

まず押さえておきたいのは、 育児休業を取得したことだけを理由として全国一律に住民税が免除される制度はない という点です。

社会保険料の育児休業期間中の免除制度と混同しやすいのですが、住民税では考え方が異なります。

また、「前年より今年の収入が大きく減ったから、住民税も減免してもらえるはず」とも限りません。

減免制度の対象や要件は自治体ごとに定められており、本人の所得状況だけでなく、収入が減少した理由、資産状況、納期限など、さまざまな条件を確認する場合があります。

盛岡市では育児休業そのものは減免理由にならない

例えば盛岡市では、市民税・県民税・森林環境税の減免制度について、予測できない理由によって収入が減少し、納付が著しく困難になった場合などを対象としています。

一方で、育児休業は「予測できない理由」には該当しないものとして案内されています。

したがって、盛岡市の場合、 育休で給与が減ったという理由だけで当然に住民税の減免を受けられるわけではありません。

ここは育休中の住民税について特に誤解されやすいところです。

盛岡市で減免要件を確認する場合は、最新の案内を (出典:盛岡市「市民税・県民税・森林環境税の減免制度」) で確認してください。

払えないときほど納期限前に相談する

減免の対象にならない場合でも、事情によっては納税について相談できる余地があります。

税の徴収猶予などについては、災害、病気、事業の休廃止その他一定の事情がある場合に制度の対象となる可能性がありますが、具体的な要件は自治体へ確認する必要があります。

大切なのは、「払えないからそのままにする」のではなく、支払いが難しいと分かった時点で市区町村の納税担当窓口へ相談することです。

住民税の納付が難しい場合は、納期限を過ぎるまで待つのではなく、できるだけ早く自治体へ相談してください。

利用できる制度があるかどうか、必要な申請、今後の納付方法などを個別に確認することが重要です。

育休1年目は、前年のフル勤務時の所得をもとにした住民税を、育児休業給付を中心とする収入の中から支払うことがあります。

そのため、「住民税が発生すること自体は分かっていたけれど、実際の納付額を見ると家計的に厳しい」というケースは十分考えられます。

そのような場合には、家族内での資金繰りを見直すことも必要ですが、税金については自治体の制度が関係しますので、インターネット上の一般論だけで「減免される」「分割できる」と判断しない方が安全です。

減免・徴収猶予・納税相談の要件や取扱いは自治体や個別事情によって異なります。

申請期限が設けられている制度もありますので、納付書を放置せず、住所地の市区町村へ直接確認してください。

また、転居した場合などは、どの自治体がその年度の住民税を課税しているのかにも注意が必要です。

原則として住民税はその年度の基準日時点の住所地に関係するため、育休中に引っ越したからといって、現在住んでいる自治体だけを見ればよいとは限りません。

手元の納税通知書に記載されている自治体と連絡先を確認すると確実です。

産休中と育休中の住民税の違い

産休中と育休中の住民税の違い

産休中と育休中では、住民税そのものの基本的な計算ルールが変わるわけではありません。

産休であっても育休であっても、前年の所得をもとに住民税が計算されるため、休業に入ったことだけを理由としてその年度の住民税が自動的になくなるわけではありません。

では何が違うのかというと、実際には 休業期間の長さと、年や年度をまたぐ可能性 が大きなポイントになります。

産休は比較的短く、育休は長期化しやすい

産前産後休業は、原則として産前6週間、産後8週間という法定の期間を中心とした制度です。

実際には出産日によって産前休業の日数が変わることがありますが、育児休業と比較すれば一定の期間に収まりやすい制度です。

産休後すぐに職場復帰する場合であれば、給与が支給されない期間が比較的短く、会社の運用によっては住民税の徴収方法を大きく変更せずに対応できるケースもあります。

一方、育児休業は原則として子が1歳になるまで取得でき、一定の要件を満たせば1歳6か月、2歳まで延長されることがあります。

さらに夫婦それぞれの取得方法や分割取得などもあり、休業期間が長期にわたりやすい制度です。

そのため、育休では給与のない状態が長くなり、住民税を普通徴収へ切り替えたり、年度をまたいで納付したり、翌年度の住民税額そのものが大きく変わったりするケースが増えます。

項目 産休 育休
住民税の基本ルール 前年所得をもとに課税 前年所得をもとに課税
社会保険料 所定の期間は免除制度あり 一定の要件で免除制度あり
休業期間 比較的限定されている 長期化する場合がある
普通徴収への切替 給与状況によって対応 無給期間が長いと対応が必要になりやすい
翌年度の住民税 給与所得の減少幅により変化 長期休業では大きく下がる場合がある

産休からそのまま育休へ入る場合は一連で考える

実際には、女性従業員の場合は産休だけ取得して復職するより、産後休業終了後にそのまま育児休業へ入るケースが多くあります。

その場合、「産休中の住民税」「育休中の住民税」と完全に切り分けるより、休業開始から復職までの給与支給状況を一連で確認した方が実務的です。

例えば産前休業に入った時点では有給休暇や会社独自の制度によって給与が支給され、産後休業中は出産手当金を受給し、その後育児休業給付へ移行することもあります。

どの時期に給与があり、どこから無給になるのかによって、住民税を給与から控除できる期間も変わります。

「産休だから普通徴収」「育休だから普通徴収」と制度名だけで判断するのではなく、実際に給与が支払われるかどうかと、会社がどのような徴収方法を取るかを確認することが重要です。

男性が産後パパ育休や通常の育児休業を取得する場合も、住民税の基本的な考え方は同じです。

男性だから住民税の取扱いが変わるわけではありません。

ただし、男性の場合は数日から数週間といった比較的短期間の育休取得も多く、休業期間中を含めても通常どおり給与から住民税を徴収できる場合があります。

逆に数か月以上の長期育休を取れば、女性の長期育休と同様に普通徴収への切替などを検討する場面が出てきます。

会社側にとっても、産休・育休に入る従業員の住民税は迷いやすいポイントです。

休業開始日だけではなく、最終給与の支給日、賞与の有無、復職予定、住民税の未徴収額などを合わせて確認しておくと処理ミスを防ぎやすくなります。

育休中の住民税は早めに確認しよう

育休中の住民税で最も大切なのは、 育休に入る前に「いくら残っていて、どう払うのか」を確認しておくこと です。

育休中に住民税が発生すること自体を知らないまま休業へ入ると、給与がなくなった後にまとまった納付書が届き、家計へ大きな影響が出ることがあります。

まず、給与明細で現在毎月いくら住民税が差し引かれているかを確認しましょう。

次に、住民税の特別徴収税額決定通知書があれば、その年度の年税額や月割額を確認します。

そのうえで、会社の給与担当者へ育休中の徴収方法を確認すれば、大まかな支払スケジュールを把握できます。

育休前に確認しておきたいこと

  • 育休中も前年所得に対する住民税は原則として支払う
  • 現在の住民税の月額と年間税額を確認する
  • 育休開始後に普通徴収へ切り替わるか会社へ確認する
  • 最後の給与等からまとめて徴収される可能性を確認する
  • 育児休業給付は非課税で住民税の所得計算には通常含まれない
  • 育休が長ければ翌年度の住民税が下がる可能性がある
  • 復職後は特別徴収への切替時期を会社へ確認する

特に育休1年目は、フルタイムで働いていた前年の所得が住民税に反映されていることが多く、育児休業給付を中心とした家計の中では負担が大きく感じられます。

「育休中は社会保険料が免除されるから、思ったより手取りは減らない」と考えていても、住民税を別に支払えば、その分だけ実際に使えるお金は減ります。

一方で、育休によって給与所得が減った年の状況は、その翌年度の住民税へ反映されます。

長期間の育休であれば翌年度の住民税が大きく下がる可能性がありますし、復職した後もしばらくは育休中の低い所得をもとにした住民税が続くことがあります。

その後、復職して給与が戻った年の所得が翌年度に反映されれば、住民税も再び上がります。

つまり、育休中の住民税は「今いくら払うか」という一点だけではなく、 育休前・育休中・翌年度・復職後まで時系列で考えること が重要です。

ふるさと納税にも注意する

育休によって所得が減る年は、住民税だけでなく、ふるさと納税の控除上限額にも影響します。

前年まで毎年同じくらいの金額をふるさと納税していた方でも、育休によってその年の給与収入が大きく減れば、自己負担2,000円で収まりやすい寄附額の目安も小さくなる可能性があります。

ここでも育児休業給付を給与と同じように年収へ足して考えないことが重要です。

例年と同じ感覚で寄附すると控除上限を超える可能性がありますので、 育休中のふるさと納税と上限額の考え方 も確認しておくと家計全体を整理しやすくなります。

育休中のお金を整理するときは、「給与」「育児休業等給付」「社会保険料」「所得税」「住民税」を別々に確認してください。

すべてをまとめて「手取りが何割になる」と考えるより、実際の資金繰りを正確に把握できます。

また、住民税の税額、普通徴収の納期限、利用できる支払方法、減免や徴収猶予の要件などは、自治体や年度、個別事情によって異なります。

特に制度改正があった場合には過去の記事や古い資料と現在の取扱いが異なることもあります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください。

会社の住民税処理について分からない場合は勤務先の総務・給与担当者へ、納税通知書や普通徴収、減免・徴収猶予については課税している市区町村へ確認するのが基本です。

税額計算や所得控除について個別の税務判断が必要な場合には、税理士や自治体の税務担当窓口への確認も検討してください。

また、育児休業や社会保険、会社側の手続きまで含めて判断に迷う場合には、社会保険労務士などの専門家へ相談する方法もあります。

個別の給与状況や育休期間、会社の給与処理によって必要な対応は変わりますので、 最終的な判断は専門家にご相談ください。

-育児休業