こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
医師の指示でコルセットや足底装具などを作り、いったん装具代を全額支払った場合は、健康保険へ療養費を申請することで費用の一部が払い戻されることがあります。
治療用装具の申請方法では、申請書だけでなく、医師の証明書や領収書などの添付書類をそろえることが重要です。
また、装具代の全額が戻るわけではなく、健康保険で定められた基準額や自己負担割合をもとに支給額が決まります。
この記事では、協会けんぽへ申請する場合を中心に、治療用装具が療養費の対象となる条件、必要書類、療養費支給申請書の書き方、提出先、申請期限まで順番に整理します。
健康保険組合や国民健康保険に加入している方にも、基本的な考え方をつかめる内容です。
- 治療用装具の療養費が支給される条件
- 申請に必要な証明書や領収書
- 療養費支給申請書の書き方と提出先
- 申請期限や労災との違いなどの注意点

治療用装具の申請方法と必要書類
治療用装具の申請では、まず「どのような装具なら健康保険の対象になるのか」を確認する必要があります。
そのうえで、医師の指示、装具の作製・購入、装着確認、代金の支払い、療養費の申請という順番で手続きを進めます。
ここでは、制度の基本から申請までの流れを整理していきます。
治療用装具の療養費とは
治療用装具の療養費とは、病気やけがの治療のために医師が必要と認めた装具を作製・購入した場合に、患者がいったん費用を全額支払い、その後に加入している健康保険へ申請して払い戻しを受ける仕組みです。
一般的な病院受診であれば、窓口では健康保険適用後の自己負担分だけを支払います。
一方、治療用装具は装具業者へいったん全額を支払うことが多いため、 後から療養費として健康保険へ申請する という流れになります。
代表的なものとして、治療のためのコルセット、足底装具、靴型装具、膝などの装具があります。
また、一定の条件を満たすリンパ浮腫治療用の弾性ストッキングやスリーブなども、療養費の対象になることがあります。
重要なのは、単に身体を支えるための製品を購入しただけでは対象にならないという点です。
原則として、医師が診察したうえで治療上必要と判断し、その指示に基づいて作製・購入された治療用装具であることが前提になります。
オーダーメイドの装具だけでなく、一定の条件を満たした既製品の治療用装具も対象になる場合があります。
ただし、既製品リストに掲載されているからといって自動的に支給されるわけではありません。
治療上の必要性や作製・購入の経緯を踏まえて、最終的には加入している保険者が判断します。
また、医師の指示があっても、治療ではなく日常生活上の利便性、美容目的、スポーツ時の一時的な使用などを目的とするものは、健康保険の療養費とは扱いが異なります。
治療用装具の対象範囲や既製品の取扱いは細かく定められています。
制度の詳細を確認したい場合は、 厚生労働省の治療用装具に係る療養費の案内 も確認してください。
治療用装具はいくら戻る?

治療用装具を作ったときに特に多いのが、「3万円払ったので、そのうち7割がそのまま戻るのですか」という質問です。
実際には、 装具業者へ支払った金額の7割などが必ずそのまま払い戻されるわけではありません。
健康保険では、装具の種類や構造などに応じて基準となる金額が設定されています。
実際に支払った金額と、保険者が基準に基づいて算定した金額を比較し、原則として低い方の金額をもとに療養費が計算されます。
たとえば、一般的な目安として、健康保険上の計算対象となる額が3万円で、自己負担割合が3割であれば、療養費として支給される金額は約2万1,000円という考え方になります。
これは計算の仕組みを説明するための一般的な例です。
実際の支給額は、装具の種類、仕様、年齢、自己負担割合、保険者による審査などによって異なります。
反対に、装具代として5万円を支払っていても、健康保険上の基準額が3万円と判断された場合には、原則として5万円全体を基準に払い戻し額を計算するわけではありません。
基準額を超えた部分は自己負担として残ることがあります。
この点は実務でも誤解されやすいところです。
「装具代を全額立て替えた」ということと、「立て替えた金額の全額が健康保険の計算対象になる」ということは分けて考える必要があります。
また、治療用装具に係る自己負担が高額になった場合には、高額療養費との関係も確認しておきたいところです。
療養費として認められた範囲の自己負担について、高額療養費の計算対象となる場合があります。
同じ月に入院や通院などで大きな自己負担がある場合は、加入している保険者に確認してください。
高額療養費の基本的な仕組みについては、 健康保険の高額療養費と自己負担限度額 でも詳しく整理しています。
治療用装具を申請する流れ
治療用装具の申請は、装具を買ったあとに申請書だけ提出すればよいというものではありません。
医師による診察と指示から始まり、装具の作製、適合確認、支払い、療養費申請という一連の流れ があります。
基本的な手順は次のとおりです。
- 医療機関で医師の診察を受ける
- 治療上必要と判断された装具について医師の指示を受ける
- 義肢装具士などが採型・採寸を行い装具を作製する
- 医師による装着・適合の確認を受ける
- 装具業者へ代金を支払い領収書を受け取る
- 申請書と添付書類を加入している保険者へ提出する
オーダーメイド装具では、義肢装具士が身体の状態に合わせて採型や採寸を行い、装具を作製します。
既製品であっても、治療用装具として療養費の対象とするためには、治療目的や適合状況などが確認されます。
その後、医師が実際に装具を確認し、治療目的に適合していることを確認したうえで、治療用装具製作指示装着証明書などの必要書類を作成します。
装具を作った時点で手続きが完了するわけではありません。
医師による装着確認と、申請に必要な証明書の準備まで忘れずに進めることがポイントです。
実際の相談では、装具業者への支払いを済ませたあとで「健康保険に申請できると聞いたが、何を集めればよいですか」というケースがよくあります。
病院と装具業者の双方から書類を受け取る必要があるため、支払い時に療養費を申請する予定であることを確認しておくと手続きが進めやすくなります。
申請に必要な書類を確認

協会けんぽへ一般的な治療用装具の療養費を申請する場合、中心となるのは 療養費支給申請書、領収書、医師の証明書 です。
装具の種類によって追加書類が必要になるため、すべての治療用装具で必要書類が同じとは限りません。
| 書類 | 確認するポイント |
|---|---|
| 健康保険療養費支給申請書 | 治療用装具用の申請書を使用する |
| 領収書 | 装具名、種類、費用内訳などが確認できるもの |
| 治療用装具製作指示装着証明書 | 医師が治療上の必要性や装着確認を証明したもの |
| 装具の写真 | 靴型装具を申請する場合などに必要 |
領収書では、単に「装具代3万円」と記載されているだけでは十分でない場合があります。
協会けんぽでは、装具の名称や種類、内訳別の費用額、義肢装具士の氏名、オーダーメイドか既製品かといった情報が確認できることが重要です。
既製品の場合には、製品名やメーカー名などの情報も確認されます。
領収書だけで内訳が分からない場合には、装具業者へ明細書の発行を依頼しましょう。
靴型装具では、申請する現物の写真の添付を忘れやすいため注意してください。
申請書と領収書だけを送ってしまうと、追加書類の提出を求められる可能性があります。
リンパ浮腫などの治療に使用する弾性着衣では、一般的な治療用装具製作指示装着証明書ではなく、医療機関が発行する弾性着衣等装着指示書などが必要になります。
領収書についても、名称、種類、単価、購入枚数が分かるようにしておきます。
小児弱視等の治療用眼鏡やコンタクトレンズにも療養費の制度がありますが、必要書類や支給基準が一般的なコルセットや足底装具とは異なります。
対象となる装具ごとの案内を確認することが大切です。
医師の装着証明書を準備する
治療用装具の申請で重要な書類が、医師が記入する 治療用装具製作指示装着証明書 です。
この証明書は、単に「患者が装具を買った」という事実を証明する書類ではありません。
医師が診察し、その疾病や負傷の治療を進めるうえで装具が必要であると判断し、装具の作製を指示したことや、完成した装具を確認したことを示す役割があります。
主に次のような内容が記載されます。
- 患者の氏名、生年月日など
- 疾病名や症状
- 装具が治療上必要となる理由
- オーダーメイドか既製品か
- 装具の名称や基本構造
- 医師が装具を指示した日
- 完成した装具を確認した日
- 医療機関名や医師名
特に注意したいのが、 医師から装具を作るよう言われたことと、完成した装具について医師の確認を受けることは別の段階だという点 です。
装具業者から装具を受け取ったあと、病院へ戻らずそのまま使用していると、申請時に必要な装着確認が済んでいないことがあります。
医療機関から受診の案内がある場合には、その指示に従って確認を受けてください。
証明書の作成に文書料がかかる医療機関もあります。
証明書の料金そのものは、一般に治療用装具の療養費として払い戻される装具代とは別に扱われます。
料金については医療機関へ確認してください。
証明書を受け取ったら、装具名や日付などが領収書の内容と一致しているかも確認しておくと安心です。
内容に食い違いがある場合には、申請後に保険者から確認が入る可能性があります。
治療用装具の申請方法と注意点
必要書類をそろえたら、療養費支給申請書を記入して加入先へ提出します。
申請者が本人なのか家族なのか、どこへ提出するのか、いつまで申請できるのかなど、実際の手続きで迷いやすいポイントをここから整理します。
あわせて、健康保険ではなく労災保険を使うケースにも注意が必要です。
療養費支給申請書の書き方
協会けんぽへ申請する場合は、健康保険療養費支給申請書の治療用装具用の様式を使用します。
申請書では、まず被保険者の情報を記入し、その後に装具を作製した人や傷病、医療機関、装具の購入内容などを記載します。
被保険者情報を記入する
申請者は、原則として健康保険の 被保険者本人 です。
たとえば、被扶養者である子どもが足底装具を作った場合でも、療養費の申請者は健康保険に加入している被保険者となります。
子ども自身を申請者として記入するわけではありません。
申請書には、被保険者の記号・番号、生年月日、氏名、住所、電話番号などを記入します。
記号・番号を記載する場合には、通常、マイナンバーを重ねて記載する必要はありません。
マイナンバーによる申請を行う場合には、本人確認書類などが必要になることがありますので、申請方法に応じて確認してください。
装具を作った人と傷病を記入する
次に、装具を作製した対象者が被保険者本人なのか、被扶養者である家族なのかを記入します。
家族の場合には、氏名や生年月日なども記載します。
あわせて、傷病名、発病または負傷した年月日、傷病の原因などを記入します。
ここで実務上とても重要なのが、 仕事中や通勤途中のけがではないか という確認です。
申請書には、業務外、仕事中、通勤途中などを確認する項目があります。
申請理由と装具の情報を記入する
療養費申請の理由には、治療用装具を作製したためという趣旨を記載します。
さらに、診療を受けた医療機関名、所在地、医師名、治療内容、装具の指示日、装着確認日、購入日、支払った金額などを記入していきます。
装具の購入日や金額については、領収書を見ながら転記すると間違いを防ぎやすくなります。
装着指示日や確認日は医師の証明書と整合しているか確認しましょう。
申請書、医師の証明書、領収書の 氏名、装具名、日付、金額などに食い違いがないかを提出前に確認する のが実務上のポイントです。
協会けんぽへの提出先と方法

協会けんぽに加入している場合、治療用装具の療養費は、加入している協会けんぽへ申請します。
紙で申請する場合は、申請書と必要な添付書類をそろえて、加入している都道府県支部へ郵送します。
現在は、対象となる療養費について電子申請を利用できる場合もあります。
最新の申請書や提出方法については、 協会けんぽの健康保険療養費支給申請書の案内 を確認してください。
会社員の方から総務担当者へ「この書類は会社に提出するのでしょうか」と相談されることがありますが、 協会けんぽの場合、治療用装具の療養費は被保険者が直接申請することができます。
一般的な申請では、事業主が装具の必要性を証明する手続きではありません。
会社の総務担当者が書類の案内や確認を手伝うことはありますが、「会社を通さなければ申請できない」とは限りません。
一方、健康保険組合に加入している場合には、組合独自の申請書を使用したり、会社の担当部署を経由して申請したりする運用があります。
そのため、協会けんぽの申請書をそのまま使うのではなく、勤務先または加入している健康保険組合へ確認してください。
国民健康保険の場合は、市区町村の国民健康保険担当窓口へ申請するのが基本です。
国保組合へ加入している場合には、その組合が申請先となります。
つまり、治療用装具の申請では、 どこの保険者に加入しているかを最初に確認する ことが重要です。
同じ治療用装具でも、様式や提出方法が異なることがあります。
治療用装具の申請期限は2年
治療用装具の療養費には申請期限があります。
協会けんぽの場合、 治療用装具の購入費用を支払った日の翌日から2年 で、療養費を受ける権利が時効となります。
そのため、「半年前にコルセットを作ったが申請を忘れていた」という場合でも、半年経過しただけで申請できなくなるわけではありません。
必要書類を確認し、期限内であれば申請を進めることができます。
一方で、医師の証明書や領収書を後から集めるのに時間がかかるケースもあります。
特に、転院した場合や、装具を作ってから長期間経過している場合には、書類の確認が難しくなることも考えられます。
2年あるからといって申請を後回しにするのはおすすめしません。
必要書類がそろった段階で、できるだけ早めに申請しておくのが安全です。
また、「医師が装具を指示した日から2年」と考えてしまう方もいますが、治療用装具の療養費では、購入費用を支払った日の翌日が時効の起算日となる点を押さえておきましょう。
なお、時効の取扱いや必要書類は個別事情によって確認が必要になることがあります。
期限が近い場合には、自己判断で諦めず、加入している保険者へ早めに問い合わせることをおすすめします。
治療用装具が対象外になるケース
身体に装着するものであれば、すべて健康保険の療養費になるわけではありません。
治療用装具として認められるためには、病気やけがの治療を進めるうえで必要であり、医師の診察と指示に基づいて作製・購入されていることが重要です。
たとえば、次のようなケースでは対象外となる可能性があります。
- 医師の指示を受けず自分でサポーターを購入した
- ドラッグストアや通販で自己判断により購入した
- 日常生活を便利にすることが主な目的である
- 美容上の目的で作製した
- スポーツ時だけ使用することを目的としている
- 治療上必要な範囲を超えて本人の希望で仕様を追加した
よくあるのが、「病院でもサポーターを使うよう言われたので、市販品を自分で買えば申請できるのではないか」というケースです。
しかし、健康保険の治療用装具は、単に医師から「サポーターを使ってください」と言われた事実だけで判断されるものではありません。
医師による治療上の必要性の判断、義肢装具士による採型・採寸や適合調整、医師による装着確認など、装具の種類に応じた要件があります。
市販の製品を自己判断で購入してから「健康保険で戻したい」と申請しても、対象にならない可能性があります。
購入前に医師や加入している保険者へ確認しておくのが安全です。
また、既製品の治療用装具には療養費の支給対象となる製品の考え方がありますが、リストに掲載されている製品だから必ず支給される、あるいはリストにないから絶対に支給されない、と単純に判断できるものではありません。
患者の症状、治療上の必要性、装具の機能、作製・購入の経緯などを踏まえ、最終的な支給可否は保険者が審査します。
労災や補装具との違いに注意

治療用装具の費用を申請するときに、社会保険労務士として特に確認したいのが、 その病気やけがが仕事中・通勤途中に発生したものではないか という点です。
業務中や通勤途中のけがについては、原則として健康保険ではなく労災保険の対象となります。
たとえば、仕事中に転倒して骨折し、その治療のためにコルセットや装具を作った場合には、「治療用装具だから健康保険へ申請する」とすぐ判断するのではなく、労災保険による手続きを検討する必要があります。
仕事中や通勤途中のけがを健康保険で処理してしまうと、後から健康保険への返還や労災への切替手続きが必要になることがあります。
実際によくある相談として、「最初は私生活中のけがだと思って健康保険を使ったが、よく確認すると業務中の事故だった」というケースがあります。
装具代だけを見るのではなく、そもそもの傷病がどのような状況で発生したのかを確認してください。
健康保険を使ったあとに労災の可能性に気付いた場合の考え方については、 労災は後から申請できるかを解説した記事 も参考にしてください。
障害者総合支援法の補装具とは別制度
治療用装具と混同されやすいものに、障害者総合支援法による補装具があります。
健康保険の治療用装具は、原則として 病気やけがの治療過程で必要となる装具 です。
一方、障害者総合支援法による補装具は、身体機能を補完・代替し、日常生活や社会生活を支援することを目的とする制度で、申請先や支給の仕組みも異なります。
| 項目 | 治療用装具 | 補装具 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 病気やけがの治療 | 日常生活や社会生活の支援 |
| 主な制度 | 健康保険の療養費 | 障害者総合支援法 |
| 主な申請先 | 健康保険の保険者 | 市区町村 |
また、子どもが学校管理下の部活動や授業中にけがをして装具を作った場合には、健康保険の療養費だけでなく、日本スポーツ振興センターの災害共済給付との関係を確認するケースもあります。
学校管理下のけがであれば、学校にも状況を伝えておきましょう。
治療用装具の申請方法を最終確認
治療用装具の申請方法で最も大切なのは、装具を購入したあとに申請書だけを用意するのではなく、 医師による治療上の必要性の判断から、装着確認、領収書の取得までを一連の手続きとして考えること です。
最後に、申請前の確認項目を整理します。
- 医師の診察と指示に基づく治療用装具か
- 医師による装着・適合確認を受けているか
- 治療用装具製作指示装着証明書などがあるか
- 領収書に装具名や費用内訳などが記載されているか
- 靴型装具など追加の添付書類が必要ではないか
- 申請書と証明書、領収書の日付や内容が一致しているか
- 仕事中や通勤途中のけがではないか
- 装具代を支払った日の翌日から2年以内か
特に注意していただきたいのは、 装具代を全額支払ったからといって、その金額がそのまま健康保険の計算対象になるとは限らないこと です。
療養費は、保険者が定められた基準に基づいて算定し、自己負担分を除いた額が支給されます。
また、協会けんぽ、健康保険組合、国民健康保険では、使用する様式や提出先、必要書類の細かな取扱いが異なることがあります。
制度改正によって様式や運用が変更される可能性もありますので、 正確な情報は公式サイトをご確認ください。
治療用装具の申請で迷ったときは、「治療目的の装具か」「医師の証明書があるか」「領収書の内容は十分か」「健康保険と労災のどちらを使うべきか」の4点から確認すると整理しやすくなります。
個別の傷病や装具について療養費の対象になるかどうかは、最終的には加入している保険者による審査で決まります。
また、労災保険や他制度との関係まで含めて判断が難しい場合には、 最終的な判断は専門家にご相談ください。