こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
訪問看護療養費とは、病気やけがにより自宅などで継続して療養している人が、主治医の指示に基づいて訪問看護ステーションから訪問看護を受けたときに、健康保険から給付される制度です。
名称だけを見ると、利用者の口座に給付金が振り込まれる制度のようにも見えますが、通常は保険者から訪問看護ステーションへ直接支払われます。
あなたが支払うのは、原則として健康保険の負担割合に応じた基本利用料と、交通費などの保険対象外の費用です。
また、訪問看護には医療保険と介護保険の両方が関係するため、特に要介護・要支援認定を受けている場合は、どちらの保険を使うのかが分かりにくくなります。
年齢だけで決まるわけではなく、要介護認定の有無、病気や状態、主治医の指示などを確認する必要があります。
この記事では、訪問看護療養費の基本的な仕組みから、利用できる条件、自己負担、訪問看護指示書、介護保険との優先関係まで、初めて制度を確認する方にも分かるように整理します。
- 訪問看護療養費の意味と健康保険上の仕組み
- 医療保険で訪問看護を利用できる条件
- 基本利用料や交通費などの自己負担
- 医療保険と介護保険を使い分ける考え方

訪問看護療養費とは何かをわかりやすく解説
まずは、訪問看護療養費が健康保険の中でどのような位置付けになっているのかを整理しましょう。
利用する側から見ると、主治医の指示を受けて訪問看護ステーションと契約し、自宅などで看護を受けるという流れになります。
ここでは、制度の仕組み、対象者、利用条件、指示書、自己負担まで順番に確認します。
健康保険法上の訪問看護療養費の仕組み
訪問看護療養費は、 健康保険法第88条に定められている健康保険の保険給付 です。
病気やけがにより居宅で継続して療養する必要がある人が、主治医の判断に基づき、指定訪問看護事業者が運営する訪問看護ステーションから訪問看護を受けた場合に、その費用について健康保険の給付が行われます。
ここで押さえておきたいのは、訪問看護療養費という名称の「療養費」の部分です。
健康保険には、治療用装具などでいったん医療費を支払い、後から本人が療養費を申請する仕組みもあります。
そのため、「訪問看護療養費も自分で申請して現金を受け取るのではないか」と考えやすいのですが、通常の利用方法は異なります。
訪問看護療養費は、通常は利用者が訪問看護費用の全額を立て替えて、後から保険者へ請求する仕組みではありません。
保険者が保険給付分を指定訪問看護事業者へ直接支払い、利用者は自己負担に当たる基本利用料などを訪問看護ステーションへ支払います。
健康保険法第88条では、保険者が被保険者に代わって指定訪問看護事業者へ訪問看護療養費を支払うことができ、その支払いが行われたときは、被保険者に対する訪問看護療養費の支給があったものとみなす仕組みが定められています。
そのため、 訪問看護療養費が支給されるという言葉は、「利用者の銀行口座へ給付金が振り込まれる」という意味ではない と理解しておくとよいでしょう。
たとえば、健康保険の自己負担割合が3割の人であれば、保険適用となる訪問看護については、原則として利用者が3割相当の基本利用料を負担し、保険給付に当たる部分を保険者が訪問看護ステーションへ支払うという構造です。
訪問看護の内容も、単に「自宅で看護師に様子を見てもらう」というものではありません。
健康保険法上は、居宅において行われる 療養上の世話または必要な診療の補助 が訪問看護の中心です。
具体的には、病状や血圧・体温などの状態確認、清拭や入浴など療養生活の支援、褥瘡の処置、医師の指示に基づく点滴や処置、カテーテル・在宅酸素・人工呼吸器などの管理、服薬状況の確認、リハビリテーション、本人や家族からの療養相談などが行われます。
訪問看護を行うのは看護師だけとは限りません。
制度上は、保健師、助産師、准看護師のほか、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訪問看護の一環として関わる場合もあります。
また、指定訪問看護事業者は、利用者から基本利用料などの支払いを受けたときに領収証を交付することになっています。
領収証では保険対象となる基本利用料と、それ以外の費用が区分されていることがありますので、後から高額療養費などを確認するためにも保管しておくとよいでしょう。
被保険者本人ではなく、その被扶養者である配偶者や子どもなどが指定訪問看護を受けた場合には、健康保険法上は 家族訪問看護療養費 として扱われます。
利用者側から見た基本的な仕組みは共通しています。
健康保険の訪問看護療養費について、基本利用料、高額療養費、交通費などの取扱いを公的資料で確認したい場合は、 全国健康保険協会「入院時食事療養費・入院時生活療養費・保険外併用療養費・訪問看護療養費」 も確認しておくとよいでしょう。
健康保険には、このほかにも療養の給付、高額療養費、傷病手当金、出産手当金などさまざまな保険給付があります。
健康保険全体の給付を整理したい場合は、 健康保険の給付金・保険給付の種類を整理した記事 も参考にしてください。
訪問看護療養費の対象になる人

訪問看護療養費というと、「高齢者が利用する制度」というイメージを持つ方も多いと思います。
しかし、 医療保険による訪問看護そのものに、子どもは利用できないといった年齢制限があるわけではありません。
医療保険による訪問看護の条件を満たしていれば、乳幼児や小学生などの子ども、現役世代、高齢者まで利用の対象になり得ます。
実際、医療的ケアを必要とする子どもや、難病で在宅療養を続ける若い人などにとっても重要な制度です。
対象となる典型的なケースとしては、がんなどで在宅療養を続けている人、難病のため継続的な医療管理が必要な人、退院直後で傷の処置や点滴などが必要な人、在宅酸素療法を行っている人、人工呼吸器を使用している人、経管栄養やカテーテルの管理が必要な人、褥瘡の処置が必要な人などが考えられます。
また、医療的ケアが必要な子どもや、認知症以外の精神疾患について精神科訪問看護を受けるケースなどもあります。
ただし、 病名だけを見て訪問看護療養費の対象になるかを決めるものではありません。
基本的には、病気やけがにより居宅で継続して療養を受ける状態にあり、主治医が訪問看護を必要と判断していることが重要です。
たとえば、同じ病名であっても、通院だけで十分に療養できる人と、自宅で継続的な看護や医療的管理を必要とする人では状況が異なります。
訪問看護は「この病名なら自動的に使える」という病名基準だけで運用されているわけではないということです。
対象になるかを考えるときは、年齢よりも「在宅でどのような療養が必要なのか」を確認することが大切です。
- 自宅で継続して療養する必要があるか
- 看護師等による療養上の世話や診療の補助が必要か
- 主治医が訪問看護の必要性を認めているか
- 介護保険が優先される状態ではないか
特に40歳未満の人の場合、原則として介護保険の被保険者ではないため、訪問看護が必要になれば医療保険による訪問看護が中心になります。
40歳未満でも訪問看護は利用できます。
子どもや若い配偶者などに在宅での医療的ケアが必要な場合には、医療保険による訪問看護療養費の仕組みを確認します。
また、病気や年齢によっては、小児慢性特定疾病や指定難病などの公費負担医療が利用できることもあります。
一方、65歳以上であっても「65歳になったから自動的に介護保険の訪問看護へ変わる」とは限りません。
介護保険の訪問看護との関係では、要介護・要支援認定の有無が一つの大きな判断材料になります。
65歳以上で要介護・要支援認定を受けていない人が訪問看護を必要とする場合には、医療保険で利用するケースがあります。
さらに、要介護・要支援認定を受けている人でも、末期の悪性腫瘍や一定の難病など厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合、急性増悪等により特別訪問看護指示書が交付された期間などには、医療保険による訪問看護となることがあります。
つまり、年齢、要介護認定、病名、医療処置、病状の変化を組み合わせて確認する必要があります。
私が家族の在宅療養について相談を受けるのであれば、「何歳ですか」だけで判断せず、まず要介護認定を受けているか、そのうえで現在の病気や医療処置、主治医からどのような説明を受けているかを確認します。
この順番で整理すると、医療保険と介護保険のどちらを確認すべきかが見えやすくなります。
対象疾病や医療保険・介護保険の適用関係は、個別の病状や制度上の要件によって異なります。
「同じ病名の知人が医療保険だったから自分も同じ」と判断するのではなく、主治医や訪問看護ステーションなどに確認してください。
訪問看護を受けるために必要な条件
健康保険による訪問看護療養費を利用するためには、単に「家まで看護師に来てほしい」という希望だけで利用できるわけではありません。
制度として医療保険を使う以上、 在宅療養の状態、主治医による必要性の判断、指定訪問看護事業者によるサービス提供 という要件を確認する必要があります。
基本的に確認したいのは次の3点です。
- 病気やけがにより居宅で継続して療養を受ける状態であること
- 主治医が訪問看護の必要性を認めていること
- 指定訪問看護事業者から訪問看護を受けること
健康保険法施行規則では、訪問看護療養費の対象となる基準として、病状が安定し、またはこれに準ずる状態にあり、居宅で看護師等が行う療養上の世話や必要な診療の補助を要することが定められています。
「病状が安定していないと訪問看護は一切利用できないのか」と感じるかもしれませんが、実際には急性増悪などに対して特別訪問看護指示書を用いる仕組みも設けられています。
通常時の訪問看護と、急激に状態が変化した場合の取扱いを分けて考えると分かりやすいでしょう。
訪問看護で実施される内容は、その人の状態と主治医の指示によって異なります。
たとえば、健康状態の観察、服薬管理、清拭・入浴・排泄など療養生活の支援、床ずれの処置、点滴、カテーテル管理、在宅酸素や人工呼吸器などの医療機器管理、リハビリテーション、家族への介護方法の助言などが考えられます。
ここでいう看護師等には、看護師だけでなく、保健師、助産師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が含まれます。
そのため、訪問看護ステーションから理学療法士などが訪問してリハビリテーションを行うこともあります。
実際の利用開始では、入院している病院から退院するケースであれば、主治医のほか、病院の地域医療連携室、医療ソーシャルワーカー、退院支援担当者などと相談するケースが多いでしょう。
すでに自宅で生活している場合は、かかりつけ医や訪問看護ステーションへ相談する方法があります。
要介護・要支援認定を受けている場合には、ケアマネジャーにも相談して、介護保険との関係を確認します。
退院が決まってから慌てて探すのではなく、退院前から調整しておくことが重要です。
退院当日から酸素管理、吸引、経管栄養、創傷処置などが必要になるケースでは、病院と訪問看護ステーションの間で事前に情報共有し、必要な医療材料や訪問予定などを確認しておくと在宅療養へ移行しやすくなります。
また、原則として複数の訪問看護ステーションから同時に指定訪問看護を受けることには一定の制限があります。
ただし、厚生労働大臣が定める疾病や状態など、複数のステーションの利用が認められる場合もあります。
「夜間にも対応してほしい」「専門的な処置が必要なので別のステーションにも来てもらいたい」といった希望がある場合には、自己判断で複数契約を進めるのではなく、主治医や現在の訪問看護ステーションに相談してください。
業務中や通勤途中の事故など、 労災保険の対象となる病気やけがについては、原則として健康保険ではなく労災保険との関係を確認します。
健康保険法でも、同一の傷病について労災保険などから相当する給付を受けられる場合には、健康保険の給付を行わない調整規定があります。
仕事中・通勤途中のけがが原因で訪問看護が必要になった場合は、最初に傷病の原因を明確にしておきましょう。
訪問看護を利用できるか迷うときは、「病名だけ」で考えるより、 誰が、どこで、どのような看護や医療的管理を必要としているのか を主治医へ具体的に伝えることが大切です。
訪問看護指示書の役割と利用の流れ

健康保険による訪問看護を受けるうえで欠かせないのが、 主治医が交付する訪問看護指示書 です。
訪問看護ステーションは医療・看護の専門職が在籍する事業所ですが、ステーションが独自の判断だけで医療保険による訪問看護を開始するわけではありません。
主治医が患者の状態を診察し、訪問看護の必要性を認め、その内容を訪問看護ステーションへ指示するという関係になります。
訪問看護指示書には、患者の傷病名、現在の状態、必要となる処置、留意事項、使用している医療機器など、訪問看護を行ううえで必要な情報が記載されます。
訪問看護師は、この指示書だけを機械的に実行するというより、主治医の指示を前提として本人の状態を観察し、必要に応じて主治医へ報告や相談を行いながら在宅療養を支援していきます。
利用開始までの一般的な流れ
- 主治医に訪問看護の必要性を相談する
- 主治医が訪問看護指示書を交付する
- 訪問看護ステーションと利用契約を結ぶ
- 訪問看護計画に基づいて訪問を受ける
- 利用者が基本利用料と必要な実費を支払う
退院をきっかけに利用するケースでは、本人や家族がすべてを一から手配するとは限りません。
入院先の退院支援担当者や医療ソーシャルワーカーが、主治医や地域の訪問看護ステーションと連絡を取りながら調整することもあります。
すでにケアマネジャーがいる場合には、介護保険の利用状況も確認しながら、ケアマネジャー、医師、訪問看護ステーションで調整することもあります。
通常の訪問看護指示書は、主治医が必要な指示期間を設定して交付します。
医療保険の取扱いでは、 有効期間は6か月以内 とされており、継続して訪問看護が必要であれば、主治医の判断に基づいて新たな指示書が交付されます。
つまり、一度指示書を出してもらえば、その後ずっと自動的に訪問看護が継続するというものではありません。
病状や療養環境の変化を踏まえ、定期的に必要性や指示内容を確認する仕組みです。
訪問看護指示書は、訪問看護ステーションへの「医師からの指示」です。
利用者本人が保険給付を受けるために保険者へ提出する申請書とは役割が異なります。
実務上は医療機関と訪問看護ステーションの間で交付・連携されるため、本人がすべての事務処理を行うわけではありません。
一方、急性増悪、終末期などにより、通常より頻繁な訪問看護が必要になった場合には、 特別訪問看護指示書 が重要になります。
特別訪問看護指示書が交付された場合、通常の訪問回数の取扱いとは異なり、原則として指示日から14日間の範囲で頻回の訪問看護が可能になります。
また、気管カニューレを使用している状態や、一定の重度の褥瘡など、特に継続的な管理が必要な状態では、一定の要件のもと月に2回特別訪問看護指示書を交付できる場合があります。
通常の訪問看護指示書と特別訪問看護指示書は役割が違います。
「訪問回数を増やしたいから特別指示を出してもらう」という本人の希望だけで決まるものではありません。
病状の急性増悪などを踏まえ、主治医が医学的な必要性を判断します。
在宅療養では、昨日まで安定していた人の状態が急に変化することがあります。
その際、「次の定期受診まで待つ」ことが必ずしも適切とは限りません。
訪問看護を利用している場合には、あらかじめ体調が変化したときの連絡先や対応方法を確認しておくことをおすすめします。
特に退院直後は、誰が主治医になるのか、訪問看護ステーションはどこか、最初の訪問日はいつか、夜間や休日に状態が変わった場合はどこへ連絡するのかまで確認しておくと、本人だけでなく家族の負担も軽減しやすくなります。
訪問看護療養費の自己負担と実費
訪問看護を検討している家族にとって、最も気になることの一つが「結局、毎月いくら支払うのか」ではないでしょうか。
訪問看護の費用を考えるときは、 医療保険の対象となる基本利用料と、医療保険の対象にならない実費等を分けて考える ことがポイントです。
医療保険による訪問看護では、保険適用となる部分について、利用者が健康保険上の自己負担割合に応じた基本利用料を支払います。
| 年齢など | 一般的な自己負担割合 |
|---|---|
| 義務教育就学前 | 2割 |
| 義務教育就学後から70歳未満 | 3割 |
| 70歳から74歳の一般所得者 | 2割 |
| 70歳から74歳の現役並み所得者 | 3割 |
上記は健康保険における一般的な負担割合です。
実際には、年齢、所得区分、加入している医療保険、公費負担医療の適用などによって取扱いが異なる場合があります。
また、訪問看護の費用は「1回来てもらったから一律○円」と単純に決まるものではありません。
訪問看護療養費には基本療養費、管理療養費、一定の場合の加算などがあり、訪問回数、訪問時間、利用者の状態、緊急訪問、複数名による訪問などによって保険上の費用が変わることがあります。
そのため、実際の自己負担額を知りたい場合は、インターネット上の一律の金額だけを見て判断するのではなく、利用予定の訪問看護ステーションから料金説明を受けるほうが確実です。
契約時には、「保険適用分」と「保険外負担」を分けて確認しましょう。
月額の見込みだけではなく、緊急時、夜間、長時間の訪問などが生じた場合にどのような費用になるのかも確認しておくと安心です。
そして、非常に重要なのが、 医療保険による訪問看護の基本利用料は高額療養費の対象になる という点です。
たとえば、訪問看護だけで一定額の自己負担が発生している場合だけではなく、同じ月に病院や診療所でも医療費を支払っている場合には、それらを含めて高額療養費を検討できることがあります。
ただし、高額療養費の自己負担限度額は年齢や所得区分などによって異なります。
また、世帯合算など細かなルールもありますので、「訪問看護で3割払っているから、その3割が全部戻ってくる」という意味ではありません。
高額療養費について詳しく確認したい場合は、 健康保険の高額療養費と自己負担限度額の解説 もあわせて確認してください。
交通費などは別にかかることがある
一方、訪問看護ステーションへ支払うすべての費用が健康保険の対象になるわけではありません。
代表的なのが、 交通費、おむつ代などの実費、利用者が希望して受ける一定の特別サービスに関する料金 です。
交通費の決め方も事業所によって異なります。
一定の距離までは無料としている場合もあれば、距離に応じて料金を設定している場合、自動車の利用に応じて一定額を設定している場合などがあります。
また、営業時間外の対応等について、保険上の加算とは別に利用者が希望して受ける特別サービスとして料金が設定される場合もあるため、契約書や重要事項説明書を確認することが大切です。
高額療養費の対象となる基本利用料と、保険対象外の実費を混同しないようにしましょう。
交通費、おむつ代などの保険外費用は、原則として高額療養費の対象となる医療費には含まれません。
訪問回数が多い場合は実費だけでも負担が積み上がることがあるため、月額の見込みを事前に確認しておくことをおすすめします。
さらに、指定難病の医療費助成、小児慢性特定疾病、自立支援医療など、公費負担医療の対象になる場合には、医療保険だけで利用する場合より自己負担が軽減されることがあります。
ただし、公費制度には対象疾病、年齢、所得、指定医療機関などそれぞれ別の要件があります。
「難病だから必ず無料になる」といった単純なものではありません。
費用を確認するときは、私は 基本利用料、保険外実費、高額療養費、公費負担医療 の4つを分けて整理するのが分かりやすいと思います。
請求書や領収証を受け取ったら、金額だけを見るのではなく、何が基本利用料で、何がその他の利用料なのかも確認しておきましょう。
医療保険と介護保険が途中で切り替わった場合には、特に重要な確認ポイントになります。
訪問看護療養費とは介護保険とどう違うか
訪問看護で最も分かりにくいのが、医療保険と介護保険の関係です。
同じ訪問看護ステーションを利用していても、利用者の年齢、要介護認定、病気や状態によって適用される保険が変わることがあります。
ここからは、どちらの保険が使われるのかを中心に整理します。
医療保険と介護保険はどちらを使うか
訪問看護は、医療保険でも介護保険でも利用することがあります。
そのため、「3割負担の医療保険より1割負担の介護保険を選びたい」「介護保険の限度額がいっぱいなので医療保険に変えたい」と考える方もいるかもしれません。
しかし、 医療保険と介護保険のどちらを利用するかは、本人が自由に選択する仕組みではありません。
健康保険法第55条第3項では、同一の病気やけがについて介護保険法により相当する給付を受けることができる場合には、健康保険の訪問看護療養費などを支給しないという調整規定があります。
このため、要介護または要支援の認定を受けていて、介護保険による訪問看護の対象になる人については、 原則として介護保険の訪問看護が医療保険に優先します。
| 主な状況 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 40歳未満 | 原則として医療保険 |
| 40~64歳で介護保険の対象にならない人 | 原則として医療保険 |
| 65歳以上で要介護・要支援認定なし | 医療保険の対象になり得る |
| 要介護・要支援認定あり | 原則として介護保険 |
| 要介護認定ありでも一定の疾病・状態 | 医療保険となる場合がある |
ここで特に注意したいのが、 「65歳以上なら訪問看護は必ず介護保険」という理解は正確ではない という点です。
65歳以上であっても、要介護・要支援認定を受けておらず、主治医が医療上の訪問看護を必要と判断している場合には、医療保険で訪問看護を利用するケースがあります。
逆に、40歳以上65歳未満の人でも、介護保険の第2号被保険者として特定疾病により要介護・要支援認定を受けている場合には、原則として介護保険との関係を確認します。
迷ったときは次の順番で確認すると整理しやすいです。
- 要介護・要支援認定を受けているか
- 介護保険による訪問看護の対象になるか
- 医療保険になる例外的な疾病・状態に該当するか
- 特別訪問看護指示書などが交付されていないか
厚生労働省も、医療保険と介護保険による訪問看護について、要介護・要支援者は介護保険を基本としつつ、一定の疾病や急性増悪等の場合には医療保険となる仕組みを示しています。
制度の全体像を図で確認したい場合は、 厚生労働省「訪問看護」に関する資料 も参考になります。
健康保険と介護保険そのものの対象年齢や仕組みから整理したい場合は、 健康保険と介護保険の違いを40歳・65歳の区分から整理した記事 も参考にしてください。
実際の相談でも、家族から「母は70代なので介護保険ですよね」と聞かれた場合、年齢だけでは答えを確定できません。
まず要介護認定の有無を確認し、その後に病気や医療処置、主治医の指示を確認する必要があります。
また、同じ人でもずっと同じ保険が適用されるとは限りません。
要介護認定を受けた、病状が急性増悪した、特別訪問看護指示書が出たなどの事情によって、途中で適用される制度が変化することがあります。
「先月は介護保険だったのに、今月の請求書には医療保険の訪問看護療養費と書いてある」というケースもあり得ます。
このようなときは請求ミスと決めつけず、病状や指示書などの変化がなかったかを確認してください。
要介護認定でも医療保険になる場合

要介護・要支援認定を受けている人の訪問看護は、原則として介護保険が優先されます。
しかし、ここには重要な例外があります。
介護保険の認定を受けていても、 一定の疾病や状態に該当する場合などには、医療保険による訪問看護の対象になる ことがあります。
代表的なのが、厚生労働大臣が定める疾病等に該当するケースです。
たとえば、末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、一定のパーキンソン病関連疾患、多系統萎縮症、頸髄損傷、人工呼吸器を使用している状態などが挙げられます。
これらは医療依存度が高く、頻回の訪問看護を必要とすることがあるため、要介護認定を受けている場合でも医療保険による訪問看護が行われる仕組みがあります。
疾病名だけを見て自己判断しないことが大切です。
パーキンソン病関連疾患など、病名だけではなく一定の状態や重症度が要件となるものもあります。
対象となる疾病・状態は診療報酬改定等で見直される可能性もあるため、該当するかは主治医や訪問看護ステーションに確認してください。
もう一つ重要なのが、 特別訪問看護指示書が交付された期間 です。
介護保険の訪問看護を利用していた人でも、病状が急に悪化したなどの理由で主治医が一時的に頻回の訪問看護が必要と判断し、特別訪問看護指示書を交付した場合には、その期間について医療保険による訪問看護へ切り替わることがあります。
特別訪問看護指示書による訪問看護は、原則として 指示を受けた日から14日間 が対象です。
また、気管カニューレを使用している状態や、一定の重度の褥瘡などでは、要件を満たせば月2回の交付が認められる場合があります。
これは、通常の訪問看護だけでは対応が難しい状態に対し、一時的に医療面の支援を強化する仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
さらに、認知症以外の精神疾患に対して精神科訪問看護を行う場合も、医療保険による訪問看護として取り扱われることがあります。
要介護認定があっても医療保険になる代表的な場面
- 厚生労働大臣が定める一定の疾病等に該当する場合
- 特別訪問看護指示書が交付されている期間
- 認知症以外の精神疾患に対する精神科訪問看護など
医療保険の訪問回数にもルールがある
医療保険による訪問看護は、一般的には 原則として週3日まで という基本的な回数の考え方があります。
ただし、厚生労働大臣が定める一定の疾病等に該当する人、一定の医療処置を必要とする状態にある人、特別訪問看護指示書が交付されている期間などでは、週4日以上の訪問が可能になる場合があります。
さらに、状態によっては1日に複数回の訪問が行われる場合もあります。
したがって、「医療保険では週3回しか訪問してもらえない」と一律に考えるのも正確ではありません。
一方、介護保険の訪問看護では、医療保険のように単純に「原則週3日まで」という同じ枠組みで考えるのではなく、要介護度に応じた区分支給限度基準額やケアプランなどを踏まえて利用するサービスが組み立てられます。
ここは制度の考え方そのものが異なります。
医療保険へ切り替わると、訪問回数だけではなく、利用者の自己負担、高額療養費の扱い、領収証の記載なども変わる場合があります。
家族としては、「何回利用できるか」だけでなく、 現在どちらの保険制度で訪問看護を受けているのか を確認しておくことが重要です。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
また、実際にどの保険を利用することになるかは個別の病状や認定状況によって異なるため、最終的には主治医、訪問看護ステーション、ケアマネジャーなどの専門家にご相談ください。
訪問看護療養費と療養の給付の違い
訪問看護療養費も療養の給付も、病気やけがに対して健康保険を使って医療を受けるための仕組みです。
利用者から見ると、病院で3割を支払う場合も、訪問看護で基本利用料を支払う場合も「健康保険を使っている」という点では同じなので、制度上の違いを意識する機会はあまりないかもしれません。
しかし、健康保険法上は、 療養の給付と訪問看護療養費は明確に別の保険給付 として整理されています。
療養の給付は健康保険法第63条に規定されており、診察、薬剤や治療材料の支給、処置・手術その他の治療、病院等への入院など、通常の保険診療の中心となる給付です。
一方、訪問看護療養費は健康保険法第88条に規定されており、指定訪問看護事業者による訪問看護を対象としています。
さらに健康保険法第88条では、指定訪問看護は第63条の療養の給付には含まれないことが明記されています。
| 項目 | 療養の給付 | 訪問看護療養費 |
|---|---|---|
| 主な根拠 | 健康保険法第63条 | 健康保険法第88条 |
| 主な提供主体 | 病院・診療所・薬局など | 指定訪問看護事業者 |
| 主な場所 | 医療機関など | 利用者の居宅 |
| 利用者の負担 | 一部負担金 | 基本利用料 |
| 高額療養費 | 保険適用部分が対象 | 基本利用料が対象 |
たとえば、あなたが病院で医師の診察を受け、薬局で処方薬を受け取った場合には、一般には療養の給付の仕組みが中心となります。
一方、主治医から訪問看護指示書が出され、訪問看護ステーションの看護師が自宅に訪問して看護を行った場合には、訪問看護療養費の仕組みが関係します。
制度を分けている理由を利用者が細部まで理解する必要はありませんが、領収証や高額療養費を確認するときには、この違いを知っておくと分かりやすくなります。
病院・診療所から看護師が訪問する場合は、別の仕組みになることがあります。
医療機関の看護師などが患者の自宅を訪問する場合には、医療機関側で在宅患者訪問看護・指導料などを算定することがあります。
訪問看護ステーションが行う訪問看護療養費とは制度上の請求区分が異なります。
たとえば請求書に「訪問看護療養費」と記載されている場合には、基本的には訪問看護ステーションによる指定訪問看護の仕組みを確認することになります。
一方、病院・診療所から自宅に看護師が訪問している場合は、同じ「訪問看護」という日常的な呼び方であっても、医療機関側の診療報酬として請求されている可能性があります。
利用者側の負担割合は同じように見えるため違いを感じにくいのですが、提供主体と保険上の給付区分が異なるということです。
また、訪問看護療養費について支払った基本利用料も高額療養費の対象となります。
健康保険法上も、訪問看護療養費として給付される額を控除した利用者負担について、高額療養費の仕組みが設けられています。
病院の窓口負担と訪問看護の基本利用料を別々の制度だと考えてしまい、高額療養費を見落とさないように注意しましょう。
利用者目線では、細かい法的区分を暗記する必要はありません。
「病院等での通常の保険診療」と「訪問看護ステーションによる訪問看護」は健康保険法上は別の給付だが、どちらの自己負担も高額療養費の対象になるという整理で十分です。
訪問看護費と訪問看護療養費の違い

検索していると「訪問看護費」と「訪問看護療養費」という非常によく似た言葉が出てきます。
結論から整理すると、一般的には 訪問看護療養費は医療保険、訪問看護費は介護保険 における給付・報酬の名称として区別すると理解しやすいです。
どちらも自宅などへ看護職等が訪問するサービスなので、利用者から見たサービス内容には共通する部分があります。
しかし、適用される法律、費用の計算方法、自己負担、利用回数の考え方、高額負担に対する制度などは異なります。
医療保険による訪問看護療養費では、主治医の訪問看護指示書に基づき、指定訪問看護事業者から訪問看護を受けます。
介護保険による訪問看護費では、要介護・要支援認定を受けた人について、主治医の指示に加え、ケアマネジャー等が作成するケアプランとの関係も重要になります。
| 項目 | 訪問看護療養費 | 訪問看護費 |
|---|---|---|
| 制度 | 医療保険 | 介護保険 |
| 基本的な対象 | 医療保険による訪問看護の対象者 | 要介護・要支援認定を受けた人など |
| 必要なもの | 主治医の指示書 | 主治医の指示書とケアプランなど |
| 自己負担 | 医療保険の負担割合による | 介護保険の負担割合による |
| 高額負担への制度 | 高額療養費 | 高額介護サービス費 |
ここで実務上とても大切なのが、 医療保険と介護保険では自己負担を抑えるための制度が別 だということです。
医療保険による訪問看護の基本利用料については高額療養費を確認します。
一方、介護保険の自己負担が高額になった場合には、高額介護サービス費など介護保険側の制度を確認します。
同じ訪問看護ステーションへ支払ったお金でも、どちらの保険で請求されたかによって確認する制度が変わるわけです。
月の途中で医療保険と介護保険が切り替わるケースには特に注意してください。
たとえば、介護保険で訪問看護を利用していた人に急性増悪があり、特別訪問看護指示書が交付された場合には、その期間は医療保険による訪問看護となることがあります。
この場合、同じ訪問看護ステーション、同じ看護師が訪問していたとしても、請求上は月の途中で制度が変わる可能性があります。
家族としては「今までと同じ人に来てもらっているのだから、保険も同じだろう」と考えやすいのですが、そうとは限りません。
領収証や請求書を見て、医療保険の基本利用料として請求されているのか、介護保険の自己負担なのかを確認しておくと、高額療養費などの手続きでも迷いにくくなります。
また、訪問看護について調べると、「訪問看護基本療養費Ⅰ」「訪問看護基本療養費Ⅱ」「訪問看護基本療養費Ⅲ」「包括型訪問看護療養費」といった専門的な用語が出てくることがあります。
これらは主として、訪問看護ステーションが提供したサービスについて医療保険へ請求するときに使われる報酬上の区分です。
利用者自身が「私はⅠにするかⅡにするか」と選択して申し込む給付ではありません。
利用者が最初に理解すべきなのは、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲなどの細かい請求区分ではありません。
まずは「医療保険なのか介護保険なのか」「自分の自己負担はいくらか」「保険外の実費はいくらか」「訪問回数はどのように決まっているか」を確認すれば十分です。
請求書に専門用語が多く記載されていて意味が分からない場合は、訪問看護ステーションへ説明を求めて問題ありません。
利用料金について説明を受け、基本利用料とその他の費用を区別して理解することが大切です。
訪問看護療養費とは何かを最後に整理
訪問看護療養費とは、病気やけがにより自宅などで継続して療養する人が、主治医の指示に基づいて指定訪問看護事業者から訪問看護を受けた場合に利用できる、医療保険の保険給付です。
名称だけを見ると現金で受け取る給付のように感じますが、通常は保険者が保険給付分を訪問看護ステーションへ直接支払い、利用者は自己負担に当たる基本利用料などを支払います。
- 主治医の指示 に基づいて訪問看護を受ける
- 保険者が保険給付分を訪問看護ステーションへ直接支払う
- 利用者は原則として医療保険の負担割合に応じた基本利用料を支払う
- 交通費などの実費は保険対象外になることがある
- 基本利用料は高額療養費の対象となる
- 要介護・要支援認定がある場合は原則として介護保険が優先される
- 一定の疾病や特別訪問看護指示書などでは医療保険になる場合がある
特に混乱しやすいのは、医療保険と介護保険の関係です。
「40歳未満だから医療保険」「要介護認定があるから原則介護保険」という大まかな考え方はありますが、実際には一定の疾病や状態、特別訪問看護指示書、精神科訪問看護などの例外があります。
そのため、年齢だけを見て保険制度を判断しないようにしましょう。
家族の退院を控えて訪問看護を検討している場合には、私は次の順番で確認するのが分かりやすいと考えています。
- 要介護・要支援認定を受けているか
- どの病気・状態で訪問看護が必要なのか
- 主治医からどのような指示が出ているか
- 医療保険と介護保険のどちらで請求されるか
- 基本利用料と交通費などの実費はいくらか
- 高額療養費や公費負担医療を利用できないか
この6点を整理するだけでも、「訪問看護を使うことになったが、何から確認すればよいのか分からない」という状態からかなり抜け出しやすくなります。
特に退院直後は、家族も入院手続き、退院準備、薬、医療機器、介護サービス、仕事の調整など多くのことを同時に考えなければなりません。
訪問看護の制度を家族だけですべて理解して手配しようとせず、病院の地域連携室、主治医、訪問看護ステーション、ケアマネジャーなどを頼ることが大切です。
また、働いている人が親や配偶者などの在宅療養を支える場合には、医療や介護サービスだけでなく、仕事との両立も考える必要があります。
たとえば、介護休業、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限など、育児・介護休業法上の制度が利用できる場合があります。
訪問看護が導入されたからといって、家族の介護負担が完全になくなるわけではありません。
一方で、訪問看護や介護サービスをうまく利用することで、家族がすべてのケアを抱え込まずに済む環境を作れることもあります。
社労士として従業員の家族介護について考える場合も、私は「介護休業を何日取れるか」だけではなく、 医療・介護サービスを整えながら、本人が働き続けられる体制をどう作るか という視点が重要だと思います。
訪問看護の対象となる疾病・状態、訪問回数、自己負担、高額療養費、公費負担医療などの取扱いは、制度改正や個別の状況によって異なる場合があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
特に医療保険と介護保険のどちらが適用されるかについては、病名だけで判断せず、主治医、訪問看護ステーション、ケアマネジャー、加入している保険者などへ確認してください。
最終的な判断は専門家にご相談ください。
訪問看護療養費という制度名そのものを覚えることよりも、「主治医の指示に基づいて医療保険で訪問看護を受ける仕組みであること」「要介護認定があれば介護保険が原則優先されること」「医療保険になる例外があること」「基本利用料と保険外実費を分けて確認すること」を押さえておけば、実際に訪問看護を利用するときも整理しやすくなるでしょう。