こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
基本給20万円の残業代を調べているあなたは、残業20時間や残業40時間ならいくらになるのか、時間単価の計算方法は合っているのか、固定残業代やみなし残業が給与に含まれている場合に問題がないのか、気になっているのではないでしょうか。
給与明細を見ると、基本給、残業手当、固定残業代、役職手当、通勤手当など、いろいろな項目が並んでいますよね。
どれを残業代の計算に入れるのか、どの時間にどの割増率を使うのかは、初めて見るとけっこう分かりにくいところです。
残業代は、基本給だけを見ればよいわけではありません。
月平均所定労働時間、割増率、算定基礎に入れる手当、深夜残業、休日出勤、月60時間超の扱いまで確認して、はじめて実務上の判断ができます。
実際に、企業の給与計算や労務相談では、基本給込みの残業代、固定残業代の超過分、未払い残業代、給与明細の見方に関する相談がよくあります。
会社側としては未払いを防ぐために、従業員側としては自分の給与を納得して確認するために、まずは計算の考え方を押さえることが大事かなと思います。
この記事では、基本給20万円の場合の残業代の目安と、会社側・従業員側の双方が確認すべき実務ポイントを、できるだけ現場目線で整理します。
- 基本給20万円の場合の残業代の目安
- 時間単価と月平均所定労働時間の考え方
- 固定残業代や手当を確認する実務ポイント
- 未払い残業代を防ぐための確認事項

基本給20万円の残業代計算

まずは、基本給20万円の場合に残業代がどのように計算されるのかを確認します。
ここで大切なのは、月給をそのまま残業時間に掛けるのではなく、いったん 1時間あたりの賃金 に直してから、法律上の割増率を掛けるという点です。
以下の金額は、年間休日120日、1日の所定労働時間8時間、諸手当なしという前提で計算した一般的な目安です。
会社ごとの就業規則、雇用契約、年間休日、手当の内容によって金額は変わります。
つまり、基本給20万円という同じ条件でも、会社によって残業代の額が同じになるとは限りません。
給与計算の実務では、まず計算式を確認し、次に月平均所定労働時間を確認し、最後に残業時間の種類ごとに割増率を当てはめます。
この順番で見ると、給与明細のどこを確認すればよいかも分かりやすくなりますよ。
残業代の基本計算式

残業代は、基本的に次の流れで計算します。
残業代 = 1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間数
月給制の場合でも、残業代を計算するときは月給をそのまま使うのではなく、まず1時間あたりの賃金を出します。
そのうえで、時間外労働、休日労働、深夜労働の種類に応じた割増率を掛けます。
ここが一番の基本です。
たとえば、法定時間外労働で月60時間以内の部分は、原則として25%以上の割増です。
通常の時間単価に1.25を掛けて計算します。
法定休日労働であれば35%以上、深夜労働であれば25%以上の割増が必要です。
さらに、深夜に時間外労働をした場合は、時間外割増25%と深夜割増25%が重なるため、合計で50%以上の割増になります。
ここで注意したいのが、残業という言葉の使い方です。
日常会話では、定時後に働いた時間をすべて残業と呼ぶことが多いですよね。
ただ、法律上の計算では、法定労働時間を超えた時間外労働なのか、会社の所定労働時間を超えただけなのか、法定休日に働いたのか、深夜時間帯に働いたのかを分けて考えます。
たとえば、会社の所定労働時間が1日7時間で、ある日に8時間働いた場合、会社の定時は超えていますが、法定労働時間である1日8時間は超えていません。
この1時間をどう扱うかは、就業規則や賃金規程の定めも確認する必要があります。
一方で、1日8時間を超えた部分や、週40時間を超えた部分は、原則として法定時間外労働として割増賃金の対象になります。
実務では、勤怠システム上の残業時間と、法律上の割増対象時間が完全に同じとは限りません。
給与計算担当者の方は、勤怠の集計ルールと賃金規程のルールがズレていないかを確認しておくと安心です。
また、割増率は会社が自由に下げられるものではありません。
法律で定められた率を下回ることはできず、就業規則や労働契約でそれより高い率を定めている場合は、会社の定めに従って計算します。
つまり、最低ラインは法律、実際の支給額は会社の規程も見る、という流れです。
残業代の計算でトラブルになりやすいのは、残業時間そのものよりも、実は 時間単価の出し方 と 割増率の当てはめ方 です。
基本給20万円という数字だけで判断せず、時間単価、割増率、残業時間数の3つをセットで見るようにしてください。
時間単価の出し方
基本給20万円で諸手当がない場合、1時間あたりの賃金は次のように計算します。
1時間あたりの賃金 = 月給の算定基礎額 ÷ 月平均所定労働時間
たとえば、年間休日120日、1日の所定労働時間8時間の場合、月平均所定労働時間はおおむね163.3時間です。
この場合、基本給20万円を163.3時間で割ると、1時間あたりの賃金は約1,224円になります。
この1,224円が、残業代計算の出発点です。
この1,224円に、法定時間外労働であれば1.25、深夜残業であれば時間外と深夜の合計として1.50、法定休日労働であれば1.35を掛けていきます。
たとえば、1時間だけ法定時間外労働をした場合は、1,224円×1.25で約1,530円が1時間分の残業代の目安になります。
ただし、実務で気をつけたいのは、月給の算定基礎額が本当に20万円だけでよいのか、という点です。
基本給20万円に加えて、役職手当、資格手当、職務手当、営業手当などが毎月固定で支給されている場合、それらを算定基礎に含める必要があるケースがあります。
そうなると、時間単価は1,224円より高くなります。
逆に、通勤手当や家族手当、住宅手当など、一定の条件を満たせば割増賃金の基礎から除外できる賃金もあります。
ただし、名称だけで除外できるわけではありません。
たとえば住宅手当という名前でも、住宅事情に関係なく全員に一律で支給しているなら、除外できない可能性があります。
ここ、実際によくある相談です。
基本給20万円でも、年間休日が少ない会社では月平均所定労働時間が長くなり、時間単価が下がることがあります。
反対に、年間休日が多い会社や1日の所定労働時間が短い会社では、時間単価が高くなることがあります。
つまり、同じ基本給20万円でも、会社の休日数や勤務時間によって残業代は変わります。
時間単価を見るときの確認順
まず、雇用契約書や労働条件通知書で基本給を確認します。
次に、給与明細で毎月支給されている手当を確認します。
そのうえで、就業規則や賃金規程を見て、どの手当を割増賃金の算定基礎に含める扱いにしているかを見ます。
最後に、年間休日と1日の所定労働時間から月平均所定労働時間を確認します。
時間単価の確認は、基本給、手当、年間休日、所定労働時間の4点セットで見るのが実務的です。
会社側としては、給与計算ソフトに登録している単価が、最新の賃金規程や労働条件通知書と一致しているかを確認してください。
従業員側としては、給与明細に残業単価が表示されている場合、その単価が基本給だけで計算されていないかを見るとよいですよ。
月平均所定労働時間とは

月平均所定労働時間とは、会社で定められた1か月あたりの平均的な労働時間のことです。
月給制の残業代計算では、この時間数を使って1時間あたりの賃金を計算します。
ここがズレると、残業代の単価も全部ズレてしまいます。
一般的には、次の式で求めます。
月平均所定労働時間 = (365日 - 年間休日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12か月
たとえば、年間休日120日、1日8時間勤務であれば、365日から120日を引いた245日が年間の所定労働日数の目安です。
これに8時間を掛けると年間所定労働時間は1,960時間になります。
これを12か月で割ると、月平均所定労働時間は約163.3時間です。
| 年間休日 | 1日の所定労働時間 | 月平均所定労働時間の目安 | 基本給20万円の時間単価目安 |
|---|---|---|---|
| 120日 | 8時間 | 約163.3時間 | 約1,224円 |
| 125日 | 8時間 | 約160時間 | 約1,250円 |
| 105日 | 8時間 | 約173.3時間 | 約1,154円 |
| 120日 | 7.5時間 | 約153.1時間 | 約1,306円 |
表を見ると分かるように、基本給が同じ20万円でも、月平均所定労働時間が違うと時間単価が変わります。
年間休日125日の会社なら時間単価は約1,250円、年間休日105日の会社なら約1,154円です。
これだけ差が出ると、月20時間、月40時間の残業代にもはっきり影響します。
中小企業では、給与計算ソフトに昔から登録されている月平均所定労働時間をそのまま使い続けているケースもあります。
会社の年間休日が変わった、1日の所定労働時間を変更した、完全週休2日制に移行した、祝日を休みにした、といった変更があった場合は、月平均所定労働時間も見直しが必要になることがあります。
また、月平均所定労働時間は、単に会社が都合よく決めればよい数字ではありません。
就業規則、年間休日カレンダー、労働条件通知書、実際の勤務体系と整合している必要があります。
たとえば、労働条件通知書では年間休日120日と書いているのに、給与計算では年間休日105日相当の月平均所定労働時間を使っているような場合、説明が難しくなります。
給与計算を見直すとき、私はまず年間休日カレンダーと賃金規程を並べて確認します。
月平均所定労働時間は地味ですが、残業代計算の土台。
ここが古いままだと、毎月の残業代が継続的にズレる可能性があります。
残業代の計算方法について、より基本から確認したい場合は、 残業代は1時間でいくらが平均?
統計と計算方法を社労士が解説も参考になります。
残業20時間の目安
基本給20万円、月平均所定労働時間163.3時間、時間単価約1,224円という前提では、月20時間の法定時間外労働に対する残業代は、次のように計算します。
1,224円 × 1.25 × 20時間 = 30,600円
したがって、基本給20万円で月20時間の時間外労働がある場合、残業代の目安は約30,600円です。
月給と合わせると、額面ではおおむね230,600円になります。
もちろん、ここから社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税などが控除されるため、手取り額とは違います。
月20時間の残業というと、1か月の営業日を20日とした場合、1日あたり平均1時間程度の残業です。
感覚としてはそこまで長時間に見えないかもしれません。
ただ、給与計算上は毎月3万円前後の差になります。
年間で見ると、30,600円×12か月で367,200円。
かなり大きいですよね。
ただし、これは諸手当がない前提です。
役職手当、資格手当、技能手当、皆勤手当などが割増賃金の算定基礎に入る場合は、時間単価が上がり、残業代も増えます。
たとえば、基本給20万円に資格手当2万円を加えた22万円が算定基礎になる場合、時間単価は約1,347円となり、月20時間の法定時間外労働は約33,675円になります。
| 算定基礎額 | 時間単価目安 | 月20時間の残業代目安 |
|---|---|---|
| 200,000円 | 約1,224円 | 約30,600円 |
| 220,000円 | 約1,347円 | 約33,675円 |
| 250,000円 | 約1,531円 | 約38,275円 |
会社側の実務では、給与明細に表示される残業時間と、勤怠システム上の実労働時間が一致しているかを確認しておくことが重要です。
特に、端数処理、休憩時間、申請制残業、持ち帰り作業、始業前作業などがある会社では、実態とのズレが出やすくなります。
従業員側も、自分の出退勤記録、残業申請、給与明細を照らし合わせると、計算の違和感に気づきやすくなります。
残業代が少ない気がする場合、まずは感覚だけで判断せず、時間単価、残業時間、割増率を分けて確認するとよいです。
残業20時間分の固定残業代がある場合でも、実際の残業が20時間を超えた月は、超過分の追加支給が必要になることがあります。
月20時間は、固定残業代の設定でもよく見かける時間数です。
求人票や雇用契約書に固定残業代20時間分と書かれている場合は、その金額が法定の計算額を下回っていないか、さらに20時間を超えた場合の追加払いが明記されているかを確認しておきましょう。
残業40時間の目安

同じ前提で、月40時間の法定時間外労働がある場合の残業代は、次のように計算します。
1,224円 × 1.25 × 40時間 = 61,200円
基本給20万円で月40時間の時間外労働がある場合、残業代の目安は約61,200円です。
基本給20万円に残業代を加えると、額面ではおおむね261,200円になります。
月40時間になると、給与額への影響も大きくなりますし、会社側の人件費にもはっきり反映されます。
月40時間の残業は、1か月の営業日を20日とすると、1日あたり平均2時間程度の残業です。
毎日2時間残る状態が続くと、本人の負担もかなり大きくなります。
給与計算としては残業代を払えば終わり、と思われがちですが、実務ではそれだけでは足りません。
健康管理、業務量、人員配置、管理職の指示、36協定の上限管理まで見ていく必要があります。
一方で、従業員側から見ると、月40時間働いているのに残業代が6万円前後に届いていない場合、時間単価や残業時間の集計に疑問が出るかもしれません。
ただし、固定残業代がある、所定内残業が混ざっている、休憩時間が控除されている、遅刻早退と相殺されているように見える処理があるなど、給与明細だけでは判断しにくい場合もあります。
実際の労務相談では、残業時間が月30時間から40時間を超え始めると、給与計算だけでなく、業務量、人員配置、管理職の指示の出し方まで確認することが多くなります。
単なる計算問題ではなく、職場運用の問題になってくるからです。
月40時間で会社側が見るべきポイント
会社側では、まず36協定の範囲内で時間外労働が行われているかを確認します。
次に、勤怠記録と実態が合っているか、残業申請をしていない時間に業務をしていないか、管理職が黙認していないかを見ます。
さらに、固定残業代を導入している会社では、固定時間を超えた分を追加支給しているかが重要です。
給与計算担当者だけでなく、現場の管理職にも労働時間管理の意識を持ってもらう必要があります。
給与計算担当者が正しく計算しようとしても、現場で正確な勤怠が記録されていなければ、正しい残業代は出せません。
従業員側が確認しやすいポイント
従業員側では、給与明細の残業時間数、残業単価、固定残業代の有無を確認します。
勤怠システムがある場合は、自分の打刻時間や承認済み残業時間も見てください。
もし給与明細に残業時間が表示されていない場合は、会社に計算根拠を確認したほうがよい場面もあります。
残業代を払っているつもりでも、残業時間の記録が曖昧だと、後から説明が難しくなります。
一方で、会社側から見ると、人件費だけでなく、長時間労働による健康管理や36協定の管理も重要になります。
残業代を払えばよいという問題ではなく、 労働時間そのものを適正に管理すること が必要です。
月40時間が続いている場合は、人員補充、業務フローの見直し、繁忙期対応のルール化なども検討したいところです。
月60時間超の割増率
法定時間外労働が月60時間を超える場合、60時間を超えた部分については、50%以上の割増率が必要です。
2023年4月からは、中小企業にもこの扱いが適用されています。
ここは制度改正の影響が大きい部分なので、会社側の給与計算担当者や経営者の方は特に注意したいところです。
基本給20万円、時間単価約1,224円、月80時間の法定時間外労働があった場合は、60時間までの部分と、60時間を超える20時間の部分を分けて計算します。
| 区分 | 割増率 | 計算式 | 残業代の目安 |
|---|---|---|---|
| 60時間まで | 25%以上 | 1,224円 × 1.25 × 60時間 | 91,800円 |
| 60時間超20時間 | 50%以上 | 1,224円 × 1.50 × 20時間 | 36,720円 |
| 合計 | --- | 91,800円 + 36,720円 | 128,520円 |
ここで注意したいのは、月60時間を超えたら全時間が1.50倍になるわけではないという点です。
原則として、 60時間を超えた部分 が50%以上の割増対象になります。
上の例でいえば、最初の60時間は1.25倍、残り20時間が1.50倍です。
さらに、月60時間を超える時間外労働が深夜時間帯に行われた場合は、深夜割増25%も重なります。
この場合、60時間超の時間外割増50%と深夜割増25%を合わせて、75%以上の割増になる場面があります。
かなり大きいですよね。
月60時間超の残業は、残業代の問題だけでなく、健康管理、36協定、過重労働対策の問題として見る必要があります。
給与計算の実務では、月60時間を超えたかどうかを、毎月の起算日から正しく集計する必要があります。
たとえば、給与締め日が月末締めなのか、15日締めなのかによって、集計期間の考え方も変わります。
給与ソフトの設定が古いままだと、60時間超の割増率が自動で反映されないこともあるため、制度改正後に設定を見直していない会社は要確認です。
また、法定休日労働の時間は、月60時間超の時間外労働時間の算定に含めない扱いがあります。
一方で、法定休日ではない休日に行った労働が時間外労働として扱われる場合は、月60時間の算定に含まれることがあります。
このあたりは少しややこしいですが、実務上は非常に重要です。
月60時間超の割増率や制度の正確な情報は、 (出典:厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」) など、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
月60時間超の残業が発生している会社では、給与計算、36協定、健康管理の3つをセットで見直すことをおすすめします。
基本給20万円の残業代実務

ここからは、基本給20万円の残業代を実務で確認するときの注意点を整理します。
残業代の計算では、基本給の金額だけでなく、手当、固定残業代、給与明細、労働契約書、就業規則の記載が重要になります。
企業側にとっては、未払い残業代を防ぐための管理ポイントです。
従業員側にとっては、自分の給与が正しく計算されているかを確認する視点になります。
お互いに疑い合うのではなく、ルールと記録に沿って確認するのが一番現実的です。
特に中小企業では、昔からの給与規程や慣習が残っていることがあります。
基本給込み、手当込み、固定残業代込みといった運用は、説明が曖昧なまま続けるとトラブルになりやすいので、ここで整理しておきましょう。
算定基礎に含む手当

残業代の計算では、基本給だけを算定基礎にすればよいとは限りません。
原則として、労働の対価として支払われる各種手当は、割増賃金の算定基礎に含めて考えます。
ここを間違えると、毎月の残業代が少しずつ不足することになり、後からまとまった未払いとして問題になることがあります。
たとえば、次のような手当は、実務上、算定基礎に含める必要があるケースが多いです。
- 役職手当
- 資格手当
- 技能手当
- 精勤手当・皆勤手当
- 危険手当
- 一律定額の営業手当
- 職務手当
- 業務手当
たとえば、基本給20万円に加えて資格手当2万円が毎月支給されており、その手当が除外賃金にあたらない場合、残業代の算定基礎は20万円ではなく22万円で考える必要があります。
算定基礎が20万円なら時間単価は約1,224円ですが、22万円なら約1,347円です。
月40時間の残業なら、約5,000円ほど差が出る計算になります。
| 給与項目 | 金額例 | 算定基礎に入る可能性 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 基本給 | 200,000円 | 高い | 通常は算定基礎に含める |
| 資格手当 | 20,000円 | 高い | 資格保有に応じた固定支給か確認 |
| 役職手当 | 30,000円 | 高い | 管理監督者性とは別に確認 |
| 営業手当 | 15,000円 | 内容による | 固定残業代の性質がないか確認 |
特に注意したいのが、営業手当や業務手当です。
会社によっては、営業手当という名前で固定残業代のような扱いをしていることがあります。
しかし、固定残業代として扱うなら、残業代部分であること、何時間分なのか、いくらなのか、超過分を支払うのかを明確にしておく必要があります。
単に営業手当とだけ書いてある場合、残業代の算定基礎から外せるとは限りません。
手当の名称だけで判断するのは危険です。
給与規程上の名称よりも、実際にどのような条件で支払われているかが重要です。
名前ではなく実態。
ここがポイントです。
会社側では、給与規程や賃金台帳を確認し、どの手当を残業代計算に含めているかを説明できる状態にしておくことが大切です。
もし給与計算ソフトでは基本給だけを算定基礎にしているのに、実際には役職手当や資格手当を毎月固定で支給している場合、見直しが必要になるかもしれません。
従業員側としては、給与明細を見て、基本給以外に毎月固定で支給されている手当があるか確認してください。
その手当が残業代の単価に反映されていないように見える場合は、すぐに対立的に考えるのではなく、まず会社に計算方法を確認するのが現実的です。
割増賃金の基礎となる賃金の考え方については、 (出典:厚生労働省・都道府県労働局「割増賃金の基礎となる賃金について」) でも、除外できる賃金は限定的に示されています。
除外できる手当
割増賃金の算定基礎から除外できる賃金は、法律上、限定的に定められています。
代表的なものは、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、賞与などの1か月を超える期間ごとに支払う賃金です。
ただし、これらの名称が付いていれば必ず除外できるわけではありません。
ここは本当に大事です。
たとえば、家族手当という名前でも、扶養家族の有無や人数に関係なく全員に一律で支給している場合は、除外できない可能性があります。
通勤手当も、実費や距離に応じて支給されているなら除外しやすいですが、通勤距離に関係なく全員に一律支給している場合は注意が必要です。
住宅手当も同じです。
賃貸か持ち家か、家賃額はいくらかといった住宅事情に応じて変動する手当であれば除外できる余地がありますが、全社員に一律1万円を支給しているだけであれば、算定基礎に含める必要が出てきます。
名前は住宅手当でも、実態は一律手当というケースですね。
| 手当名 | 除外しやすい例 | 除外に注意が必要な例 |
|---|---|---|
| 家族手当 | 扶養家族の人数に応じて支給 | 家族の有無に関係なく全員一律支給 |
| 通勤手当 | 実費相当額や距離に応じて支給 | 通勤距離に関係なく全員一律支給 |
| 住宅手当 | 家賃額や住宅状況に応じて支給 | 住宅事情に関係なく全員一律支給 |
| 賞与 | 1か月を超える期間ごとに支給 | 毎月固定で賞与名目の手当を支給 |
採用時や給与規程の見直し時には、手当の名称だけでなく、支給条件まで確認します。
ここは中小企業では迷いやすいポイントです。
昔からある手当をそのまま使っている会社ほど、名称と実態が合っていないことがあります。
私が実務で確認するときは、手当名、支給対象者、支給額の決め方、欠勤時の控除の有無、給与規程の記載、給与明細の表示をセットで見ます。
どれか一つだけ見ても判断しにくいです。
会社側にとって重要なのは、除外するなら除外できる根拠を説明できることです。
通勤手当なら通勤経路や定期代、住宅手当なら住宅状況や家賃、家族手当なら扶養人数など、個人的事情に応じて支給されていることが分かる資料があると説明しやすくなります。
従業員側にとっては、給与明細に家族手当や住宅手当という名前があるからといって、すぐに算定基礎から除外されるものだと決めつけないことが大切です。
支給条件を確認し、全員一律なのか、個人事情に応じて変動しているのかを見ると、判断の方向性が見えてきます。
除外できる手当は限定列挙です。
迷ったときは、除外できるかどうかを慎重に確認する姿勢が安全です。
この部分は、会社の給与設計そのものに関わります。
新しく手当を作る場合も、残業代の算定基礎に入るのか、入らない設計にできるのかを事前に確認しておくと、後から慌てずに済みますよ。
固定残業代の確認点

固定残業代とは、あらかじめ一定時間分の残業代を毎月固定額で支払う制度です。
求人票では、基本給20万円に加えて固定残業代3万円、20時間分などと記載されることがあります。
固定残業代は、うまく設計すれば給与の見通しを立てやすい制度ですが、運用を間違えると未払い残業代トラブルになりやすい制度でもあります。
固定残業代が実務上有効に運用されるためには、少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 基本給と固定残業代が明確に区分されていること
- 固定残業代の対象時間数と金額が明示されていること
- 固定時間を超えた残業には追加で残業代を支払うこと
- 労働条件通知書、雇用契約書、就業規則、給与明細で確認できること
固定残業代があるからといって、何時間残業させても追加払いが不要になるわけではありません。
固定時間を超えた場合は、超過分の残業代を別途支払う必要があります。
ここを誤解している会社は、まだあります。
固定残業代は残業代の前払いに近い考え方であって、残業代を免除する制度ではありません。
基本給に残業代を含むという説明だけで、金額や時間数が不明確な場合は、トラブルになりやすい運用です。
固定残業代で確認する書類
まず確認するのは、労働条件通知書や雇用契約書です。
ここに、基本給、固定残業代の金額、固定残業時間数、超過分を追加支給することが書かれているかを見ます。
次に、就業規則や賃金規程で、固定残業代の計算方法や支給ルールが定められているかを確認します。
最後に、給与明細で毎月きちんと区分表示されているかを見ます。
| 確認書類 | 見るポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 求人票 | 基本給と固定残業代の区分 | 求職者に誤解を与えない表示か |
| 雇用契約書 | 時間数、金額、超過分支給 | 口頭説明だけにしない |
| 就業規則 | 制度の根拠と計算方法 | 給与明細と整合しているか |
| 給与明細 | 固定残業代の表示 | 基本給に埋もれていないか |
求人票で固定残業代を表示する場合は、固定残業代を除いた基本給、固定残業代の時間数と金額、超過分を追加支給することの明示が求められます。
採用時によく確認しますが、求人票と雇用契約書の記載が違っているケースもあります。
これは本当に避けたいところです。
また、固定残業代の対象時間が多すぎる場合も注意が必要です。
たとえば、月80時間分、月100時間分の固定残業代を設定していると、給与計算以前に長時間労働を前提にした制度として問題視される可能性があります。
法律上の上限規制や健康管理の観点からも、現実的な時間数かどうかを見直したほうがよいです。
固定残業代は、明確な区分、時間数と金額の明示、超過分支給の3点が実務上の重要ポイントです。
従業員側は、固定残業代がある場合でも、実際の残業時間が固定時間を超えていないかを確認してください。
会社側は、固定時間内に収まっているかどうかを毎月確認し、超えた場合は自動的に追加支給できる仕組みにしておくと安全です。
基本給込み残業代の注意
実務で特に注意が必要なのが、基本給込みで残業代を払っているという説明です。
たとえば、会社が基本給20万円に残業代も含まれていると説明している場合でも、残業代部分の金額と対象時間が明確でなければ、適切な固定残業代とはいえない可能性があります。
残業代を含める運用自体が直ちにすべて違法というわけではありません。
しかし、基本給部分と固定残業代部分が区別されていない、何時間分なのか分からない、超過分を支払っていないという状態は、未払い残業代のリスクにつながります。
ここは会社側も従業員側も誤解しやすいところです。
たとえば、求人票に月給20万円、残業代含むとだけ書かれている場合、求職者から見ると、基本給が20万円なのか、基本給と固定残業代を合わせて20万円なのか分かりません。
もし後者であれば、固定残業代を除いた基本給はいくらなのか、何時間分の残業代なのか、超過分は支払われるのかを明示する必要があります。
月給20万円と基本給20万円は、実務上まったく同じ意味とは限りません。
月給20万円の中に固定残業代が含まれている場合、固定残業代を除いた基本給は20万円より低い可能性があります。
よくある危ない表示
- 月給20万円以上、残業代含む
- 基本給20万円、みなし残業あり
- 営業手当に残業代を含む
- 残業代は給与に含まれているため別途支給なし
これらの表示は、すべてが直ちに問題というわけではありません。
ただし、時間数、金額、超過分支給のルールが不明確な場合は、後から説明が難しくなります。
会社側としては、求人票、雇用契約書、就業規則、給与明細で同じ説明になっているか確認してください。
会社側としては、労働条件通知書や雇用契約書に、基本給、固定残業代、対象時間、超過分支給の有無を明確に記載することが重要です。
給与明細でも、基本給と固定残業代を分けて表示しておく方が、従業員への説明もしやすくなります。
従業員側としては、給与明細に残業代がどのように表示されているか、固定残業時間を超えた月に追加支給があるかを確認するとよいでしょう。
もし、毎月かなり残業しているのに、給与明細の支給額がほとんど変わらない場合は、固定残業代の範囲内なのか、超過分が未払いになっていないかを確認する価値があります。
固定残業代の実務では、書類上の記載と実際の給与計算が一致していることが重要です。
私が企業側の相談でよくお伝えするのは、固定残業代を導入するなら、見た目の月給を高く見せるためではなく、制度として説明できる形に整えることが先ですよ、ということです。
採用時に曖昧な説明をすると、入社後の不信感につながります。
逆に、きちんと明示して運用していれば、会社にとっても従業員にとっても分かりやすい制度になります。
未払い残業代の時効

未払い残業代がある場合、いつまでも請求できるわけではありません。
2020年4月1日以降に発生した賃金請求権については、消滅時効期間が5年に延長されつつ、当分の間は3年とされています。
少し分かりにくいですが、実務上はまず3年を一つの目安として確認することが多いです。
実務上は、給料日の翌日から時効が進むと考えるのが基本です。
たとえば、2025年6月支給分の残業代であれば、原則として2028年6月ごろまでが一つの目安になります。
ただし、実際の起算点や請求の可否は、給与規程、支払日、個別事情によって確認が必要です。
未払い残業代を確認する場合は、次の資料が重要です。
- タイムカードや勤怠システムの記録
- 入退館記録やパソコンのログ
- 業務メールやチャットの送信時刻
- 給与明細
- 労働条件通知書や雇用契約書
- 就業規則や賃金規程
- 残業申請書や承認記録
- シフト表や業務日報
会社側としては、賃金台帳や労働時間の記録を適切に保存し、残業代計算の根拠を説明できる状態にしておくことが大切です。
従業員側としては、感情的な主張だけでなく、日付、時間、金額、資料を整理して確認することが現実的です。
いきなり大きな話にせず、まずは事実関係の整理から。
これが大事です。
会社側の予防策
会社側では、まず勤怠記録を正確に残すことが出発点です。
打刻漏れが多い、残業申請と実打刻が違う、管理職がサービス残業を黙認している、始業前作業が記録されていないといった状態は、後から大きなリスクになります。
給与計算の前に、労働時間の記録を整える必要があります。
次に、残業代の計算根拠を説明できるようにしておきます。
月平均所定労働時間、算定基礎に含める手当、割増率、固定残業代の超過分支給などを、賃金規程や給与明細と一致させることが大切です。
担当者の頭の中だけにルールがある状態は危険です。
従業員側の確認方法
従業員側では、給与明細だけでなく、勤怠記録と雇用契約書を一緒に確認してください。
残業時間が給与明細に表示されていない場合や、固定残業代の対象時間が分からない場合は、会社に確認してもよい場面です。
確認するときは、何月分の、何時間分の、どの手当について知りたいのかを整理して伝えると、話が進みやすくなります。
未払い残業代の問題は、労使双方にとって負担が大きいテーマです。
早めに記録を確認し、誤りがあれば早期に修正することが現実的です。
労働基準監督署や労働局への相談先に迷う場合は、 労働基準監督署と労働局の違いを問題別に社労士が実務解説 も参考になります。
未払い賃金の時効については制度変更の影響を受ける可能性があるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
また、個別事案では労働時間の認定や証拠関係によって結論が変わるため、最終的な判断は専門家にご相談ください。
基本給20万円の残業代まとめ
基本給20万円の残業代は、年間休日120日、1日8時間勤務、月平均所定労働時間163.3時間、諸手当なしという前提で考えると、時間単価は約1,224円です。
この場合、月20時間の時間外労働なら約30,600円、月40時間なら約61,200円が一般的な目安になります。
ただし、実際の残業代は、月平均所定労働時間、割増率、手当の内容、固定残業代の有無、深夜労働や法定休日労働の有無によって変わります。
基本給20万円という数字だけで正確な残業代を判断することはできません。
ここは少し面倒ですが、給与を正しく見るうえでは避けて通れないところです。
基本給20万円の残業代を確認するときは、時間単価、算定基礎、割増率、固定残業代、勤怠記録の5つを順番に見ることが大切です。
| 確認項目 | 見る資料 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 時間単価 | 給与明細、賃金規程 | 基本給だけでなく手当も確認 |
| 月平均所定労働時間 | 就業規則、年間休日カレンダー | 古い設定のままになっていないか確認 |
| 割増率 | 就業規則、給与計算設定 | 時間外、深夜、休日、60時間超を分ける |
| 固定残業代 | 雇用契約書、給与明細 | 時間数、金額、超過分支給を確認 |
| 勤怠記録 | タイムカード、勤怠システム | 実労働時間と給与計算の整合性を見る |
企業の実務担当者や経営者の方は、給与計算ソフトの設定、賃金規程、労働条件通知書、求人票、給与明細の表示が一貫しているかを確認してください。
特に、固定残業代を導入している会社、手当の種類が多い会社、年間休日や勤務時間を変更した会社は、残業代計算の見直しをおすすめします。
従業員の方は、給与明細だけで判断せず、雇用契約書や勤怠記録と合わせて確認すると、疑問点を整理しやすくなります。
残業代が合っているか不安な場合は、まず基本給、手当、残業時間、割増率を分けてメモしてみてください。
それだけでも、会社に質問しやすくなります。
会社側と従業員側で立場は違いますが、目指すところは同じです。
働いた時間を正しく記録し、決められたルールに沿って賃金を支払うこと。
シンプルですが、これが信頼関係の土台になります。
残業代の相談では、最初から大きなトラブルになっているケースばかりではありません。
単価の設定ミス、固定残業代の説明不足、手当の扱いの誤解など、早めに直せるものも多いです。
気づいた段階で確認することが大切です。
残業代は、会社にとっても従業員にとっても生活と経営に直結する重要なテーマです。
一般的な計算例はあくまで目安として扱い、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別の労働条件や具体的な請求・是正の判断については、最終的な判断は専門家にご相談ください。