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フレックスタイム制でコアタイムなし導入時の実務注意点

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

フレックスタイム制でコアタイムなしの働き方は、完全フレックスやスーパーフレックスとも呼ばれ、柔軟な勤務制度として注目されています。

一方で、コアタイムありとの違い、フレキシブルタイムの考え方、清算期間、労使協定、就業規則、残業代、勤怠管理、デメリット、導入手続きなど、実務では確認すべき点がかなり多いです。

「自由に出勤できる制度なら、細かい管理はいらないのでは」と感じる方もいますよね。

ですが、実務ではむしろ逆で、自由度が高い制度ほど、会社側のルールづくりと労働時間管理が大切になります。

この記事では、企業の経営者や人事労務担当者が、法令遵守を前提にコアタイムなしのフレックスタイム制を検討・運用できるよう、実務目線で整理します。

  • コアタイムなしの基本的な仕組み
  • 導入に必要な就業規則と労使協定
  • 残業代と清算期間の考え方
  • 勤怠管理と運用上の注意点
フレックスタイム制でコアタイムなしの実務

フレックスタイム制でコアタイムなしとは

フレックスタイム制でコアタイムなしとは

まずは、フレックスタイム制でコアタイムなしとはどのような制度なのか、基本の仕組みから確認します。

制度の名前だけを見ると自由度が高く見えますが、実務では「自由に働ける制度」と「会社が労働時間を管理しなくてよい制度」はまったく別物です。

完全フレックスの基本

完全フレックスの基本

フレックスタイム制とは、一定の清算期間についてあらかじめ総労働時間を定め、その範囲内で労働者が日々の始業時刻と終業時刻を自ら決める制度です。

労働基準法上の制度であり、単なる会社独自の福利厚生ではありません。

ここを最初に押さえておくと、制度設計のズレがかなり減りますよ。

その中でも、コアタイムなしの制度は、1日のうち必ず勤務しなければならない時間帯を設けない形です。

一般に、完全フレックスやスーパーフレックスと呼ばれることもあります。

たとえば、通常のフレックスタイム制では「10時から15時までは必ず勤務」といったコアタイムを置くことがあります。

一方、コアタイムなしの場合は、そのような必須勤務時間帯を設けず、労働者がより広い裁量で出退勤を決められます。

ただし、コアタイムなしでも、働くべき時間がゼロになるわけではありません。

清算期間内にあらかじめ定められた総労働時間を満たすことが前提です。

たとえば、1か月単位で清算期間を設定している会社であれば、その1か月の中で必要な労働時間を満たしているかを確認します。

毎日同じ時間に出勤しなくてもよい一方で、月全体の労働時間はきちんと見ます。

実務上のポイントは、清算期間内の総労働時間を満たすことです。

コアタイムがないからといって、働く時間そのものがなくなるわけではありません。

会社側としては、柔軟な働き方を認めながらも、清算期間、総労働時間、休日、休憩、深夜労働、法定休日労働などをきちんと整理する必要があります。

採用時によく確認しますが、この部分が曖昧なまま求人票や雇用契約書に「フレックス」とだけ書かれていると、入社後のトラブルにつながりやすいです。

自由度と管理責任はセット

コアタイムなしの制度は、従業員にとってはかなり魅力的です。

育児や介護、通院、混雑時間帯を避けた通勤などにも対応しやすくなります。

ただ、会社側から見ると、誰がいつ働いているのか、どの時間が労働時間なのか、業務に支障が出ていないかを確認する仕組みが必要です。

ここを「本人に任せているから大丈夫」としてしまうと、未払い残業や長時間労働の見落としにつながるかもです。

フレックスタイム制の制度概要や導入手続きについては、厚生労働省の資料も確認しておくと安心です。

制度導入時は、 厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」 もあわせて確認してください。

コアタイムありとの違い

コアタイムありのフレックスタイム制では、労働者が自由に出退勤できる時間帯と、必ず勤務しなければならない時間帯が分かれます。

この必ず勤務する時間帯がコアタイムです。

たとえば「コアタイムは11時から15時」「始業は7時から11時の間で自由」「終業は15時から20時の間で自由」といった設計が考えられます。

一方、コアタイムなしの場合は、原則として必ず勤務しなければならない時間帯を設けません。

そのため、子育て、介護、通院、通勤ラッシュの回避、集中しやすい時間帯での勤務など、個人の事情に合わせた働き方を実現しやすくなります。

働く側からすると、かなりありがたい制度ですよね。

ただし、ここで注意したいのは、 コアタイムなしは「会社の業務指示を一切受けない」という意味ではない という点です。

業務上必要な会議、顧客対応、チーム内の連携、納期管理などは当然に残ります。

会社として事業を運営している以上、完全に各自バラバラでよいという話にはなりません。

項目 コアタイムあり コアタイムなし
必ず勤務する時間帯 あり 原則なし
出退勤の自由度 一定の範囲で自由 より広い範囲で自由
会議設定 コアタイム内に設定しやすい 別途ルールが必要
勤怠管理 比較的管理しやすい より丁寧な管理が必要

コアタイムなしでも、所定休日はあらかじめ定めておく必要があります。

また、出勤日を完全に自由にする場合でも、業務運営に支障が出ないよう、勤務予定の共有や連絡ルールを整えることが重要です。

中小企業では、制度導入時に「社員が好きなときに来て好きなときに帰る制度」と説明してしまうことがあります。

これは少し危険です。

正しくは、清算期間内の総労働時間を前提に、始業・終業時刻の決定を労働者に委ねる制度です。

業務量が多いのに本人の裁量だけにしてしまうと、結果として深夜や休日に仕事が寄ってしまうこともあります。

業務上の必要性とのバランス

コアタイムなしを運用するなら、会議のルールや連絡可能時間の目安を決めておくとよいです。

たとえば「定例会議は原則13時から16時の間に設定する」「緊急連絡はチャットと電話を併用する」「前日までに翌日の勤務予定をカレンダーへ入れる」などです。

制度上はコアタイムなしでも、業務上の共通時間をゆるく決めることは可能です。

ここを上手に設計すると、自由さと仕事の進めやすさを両立しやすくなります。

導入に必要な法的要件

導入に必要な法的要件

フレックスタイム制を導入するには、主に2つの手続きが必要です。

ひとつは就業規則などへの定め、もうひとつは労使協定の締結です。

「制度として便利そうだから、来月から始めよう」という気持ちは分かりますが、法律上の土台を整えないまま始めるのはおすすめできません。

就業規則では、始業時刻と終業時刻について労働者の自主的決定に委ねる旨を定めます。

常時10人以上の労働者を使用する事業場では就業規則の作成・届出義務がありますので、制度導入時には就業規則の改定もセットで確認するのが基本です。

10人未満の事業場であっても、制度運用の明確化という意味では、労働条件通知書や社内規程でルールを残しておくほうが実務上は安心です。

労使協定は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数代表者との間で締結します。

ここを曖昧にすると、制度の根拠そのものが弱くなります。

特に過半数代表者の選出方法は見落とされがちです。

会社が一方的に指名した人ではなく、適切な手続きで選ばれた代表者である必要があります。

フレックスタイム制は、会社が一方的に「明日からフレックスです」と決めるだけでは足りません。

就業規則と労使協定の両方を確認することが、実務上の出発点です。

また、フレックスタイム制の労使協定と、時間外・休日労働に関する36協定は役割が異なります。

制度導入の相談では、この2つを混同しているケースが実際によくあります。

フレックス導入の考え方については、 フレックスタイムの勘違いを社労士が解説|残業代と遅刻の基本 でも詳しく整理しています。

導入前に確認したい書類

導入前には、就業規則、賃金規程、雇用契約書、労働条件通知書、勤怠管理ルール、給与計算ルールを横断的に確認します。

フレックスタイム制の記載だけを追加しても、賃金規程の残業代計算や欠勤控除の扱いと矛盾していると、現場で混乱します。

特に、固定残業代を導入している会社、月給者と時給者が混在している会社、在宅勤務と組み合わせる会社では、事前確認がかなり大事です。

制度導入時に従業員説明を省略すると、「どこまで自由なのか」「不足時間はどうなるのか」「遅刻扱いはあるのか」といった疑問が残ります。

あとから個別対応で処理しようとすると、かえって不公平感が出やすいです。

労使協定で定める項目

フレックスタイム制の労使協定では、対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間における総労働時間、標準となる1日の労働時間などを定めます。

コアタイムやフレキシブルタイムは、設定する場合に定める項目です。

つまり、コアタイムなしであれば、コアタイムを設定しない形で協定を作ることになります。

コアタイムなしの場合でも、標準となる1日の労働時間の定めは必要です。

これは年次有給休暇を取得した日などに、何時間労働したものとして扱うかを判断するために使われます。

ここを定めていないと、有給休暇を取った日の労働時間換算で迷いやすくなります。

地味ですが、給与計算ではかなり重要な項目です。

協定項目 実務上の確認点
対象となる労働者の範囲 全社員なのか、特定部署・特定職種なのかを明確にする
清算期間 最長3か月の範囲で、起算日も含めて定める
総労働時間 清算期間内に働くべき所定労働時間を定める
標準となる1日の労働時間 有給休暇取得時などの時間数として使う
コアタイム コアタイムなしの場合は設定しない
フレキシブルタイム 必要に応じて始業・終業可能な時間帯を定める

実務では、対象者の範囲を曖昧にしないことが大切です。

たとえば、営業職だけなのか、事務職も含めるのか、管理監督者をどう扱うのかを整理しておかないと、運用開始後に不公平感が出やすくなります。

「あの部署は自由なのに、うちはなぜ対象外なのか」という声が出ることもあります。

制度の対象外にする場合は、業務上の理由を説明できる状態にしておくとよいです。

また、労使協定を締結して終わりではありません。

従業員に制度内容を説明し、勤怠入力の方法、勤務予定の共有方法、不足時間が出た場合の扱いなどを周知するところまで含めて導入準備と考えるべきです。

制度の紙は整っているのに、現場が理解していない。

これは本当によくある相談です。

不足時間の扱いも決めておく

清算期間の終了時に、実労働時間が総労働時間に満たない場合があります。

この不足時間をどう扱うかは、就業規則や労使協定、賃金規程との整合性を見ながら整理します。

一般的には、不足分を賃金から控除する方法、翌清算期間へ繰り越す方法、有給休暇を充当する方法などが考えられます。

ただし、有給休暇を会社が一方的に充当するのは避けるべきです。

本人の意思確認が必要になります。

労使協定では「何を書くか」だけでなく、「実際に運用できる内容か」も見ます。

現場で管理できないルールを作ると、結局守られない規程になってしまいます。

シンプルだけど漏れがない設計。

これが大事です。

清算期間と届出の注意点

清算期間と届出の注意点

清算期間とは、フレックスタイム制において労働者が働くべき総労働時間を定める期間です。

清算期間の上限は3か月です。

2019年4月の法改正により、従来より長い期間での運用が可能になりました。

繁忙期と閑散期の波がある会社にとっては、使いやすくなった制度といえます。

清算期間が1か月以内であれば、フレックスタイム制の労使協定について労働基準監督署への届出は不要です。

一方、清算期間が1か月を超える場合は、所轄の労働基準監督署長への届出が必要です。

届出が必要なケースで提出を忘れると、制度運用上のリスクになります。

ここは事務手続きとしても忘れず確認したいところです。

清算期間を1か月超にする場合は、届出の有無だけでなく、月ごとの労働時間管理も重要です。

期間全体では帳尻が合っていても、特定の月に過度な長時間労働が集中すると、別の問題が生じる可能性があります。

清算期間を3か月にすると、繁忙期と閑散期をならしやすいメリットがあります。

たとえば、月初や月末が忙しい会社、季節によって業務量が変わる会社では、ある月に多めに働き、別の月で少なめに働くといった調整がしやすくなります。

とはいえ、給与計算や残業代の判定は複雑になります。

中小企業では迷いやすいポイントですので、システムで対応できるか、給与計算担当者がルールを理解しているかを事前に確認しておく必要があります。

清算期間を長くするほど管理は難しくなる

清算期間が長いほど、柔軟性は増えます。

ただ、その分だけ労働時間の集計、時間外労働の判定、不足時間の処理、月ごとの過重労働チェックが難しくなります。

とくに「3か月で帳尻が合えばよい」と誤解してしまうと、特定の月に労働時間が膨らみすぎるリスクがあります。

健康管理の面でも、毎月の労働時間推移は確認しておきたいところです。

清算期間 届出 実務上の特徴
1か月以内 原則不要 給与計算との相性がよく、導入しやすい
1か月超から3か月以内 必要 柔軟性は高いが、労働時間管理が複雑

なお、制度や届出様式は変更される可能性があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください

特に導入直前には、厚生労働省や所轄労働基準監督署の情報を確認することをおすすめします。

実務では、「制度設計」「届出」「給与計算」「勤怠管理」を別々に考えず、ひとつの流れとして確認するとミスが減ります。

残業代と給与計算の考え方

フレックスタイム制では、原則として1日ごとに「8時間を超えたからすぐ残業」と判断するのではなく、清算期間全体で時間外労働を判定します。

ここが通常の固定時間制と大きく違うところです。

少しややこしいですよね。

ただ、この考え方を押さえると、給与計算の全体像が見えやすくなります。

たとえば、清算期間が1か月の場合、法定労働時間の総枠は、一般的には「40時間×清算期間の暦日数÷7」で考えます。

31日の月であれば、40時間×31日÷7で、約177.1時間がひとつの目安になります。

この月に実労働時間が180時間であれば、法定労働時間の総枠を超える約2.9時間が時間外労働として扱われる可能性があります。

ただし、個別の労働条件や清算期間の設定により扱いが変わるため、あくまで一般的な目安として考えてください。

区分 一般的な割増率の目安 確認ポイント
時間外労働 25%以上 清算期間の総枠を超えた時間を確認
深夜労働 25%以上 22時から翌5時の勤務を確認
法定休日労働 35%以上 法定休日に労働した時間を確認
月60時間超の時間外労働 50%以上 対象範囲や企業規模に応じて確認

清算期間が1か月を超える場合は、さらに注意が必要です。

毎月ごとの判定と清算期間全体での判定を組み合わせて考える必要があり、手作業での計算はミスが起きやすくなります。

特に3か月清算の場合、「最終月でまとめて調整すればよい」と考えてしまうと、途中月の労働時間が過大になっていることを見落とす可能性があります。

固定残業代を導入している会社では、フレックスタイム制との関係を明確にしておくことも重要です。

固定残業代があるからといって、実際の時間外労働の把握や不足分の精算が不要になるわけではありません。

固定残業代が何時間分なのか、どの割増賃金を含むのか、超過分はどう精算するのかを、就業規則や雇用契約書で明確にしておく必要があります。

不足時間が出た場合の給与処理

清算期間終了時に実労働時間が総労働時間に足りない場合、不足時間の扱いも問題になります。

会社としては、ノーワーク・ノーペイの考え方により賃金控除を検討することがあります。

ただし、控除の根拠や計算方法が就業規則や賃金規程に定められていないと、説明が難しくなります。

また、翌清算期間へ繰り越す場合も、法定労働時間の枠を超えないように注意が必要です。

給与計算では、深夜労働や法定休日労働はフレックスタイム制でも別途確認が必要です。

自由な働き方を認めるほど、勤怠記録の正確性が重要になります。

実務では、勤怠システムの設定が制度に合っていないこともあります。

通常勤務用の設定のままフレックスタイム制を始めると、日ごとの残業判定や不足時間の扱いが意図しない形で表示されることがあります。

導入前に、給与計算担当者、勤怠システム担当者、社労士などで計算ルールを確認しておくと安心です。

フレックスタイム制でコアタイムなしの実務

フレックスタイム制でコアタイムなしの実務

ここからは、企業がコアタイムなしのフレックスタイム制を導入・運用する際の実務ポイントを見ていきます。

メリットだけでなく、デメリットや管理上の注意点も把握しておくことで、制度を形だけで終わらせず、働きやすさと法令遵守の両立につなげやすくなります。

企業が導入するメリット

企業が導入するメリット

企業がコアタイムなしのフレックスタイム制を導入する大きなメリットは、人材確保や離職防止につながりやすい点です。

柔軟な働き方を求める人は増えており、求人票や採用面談でも勤務時間の柔軟性はよく確認される項目です。

特に、子育て中の方、介護と仕事を両立している方、通勤時間が長い方、集中できる時間帯に働きたい方にとって、制度の魅力は大きいです。

専門職、企画職、IT系職種、事務系の一部業務など、成果や納期で仕事を管理しやすい職種では、勤務時間を固定しないことで、本人の集中しやすい時間帯に仕事を進められる可能性があります。

朝に集中できる人、夜のほうが作業しやすい人、家族の予定に合わせて働きたい人など、働き方の幅が広がります。

これは採用面でもかなり強いメッセージになります。

また、従業員に一定の裁量を与えることで、自律的に働く意識が高まりやすくなります。

会社が細かく出退勤を指示するよりも、本人が業務量と締切を見ながら時間配分を考えるため、タイムマネジメントの意識が育つこともあります。

もちろん全員にすぐ合うわけではありませんが、うまく運用できる職場では、無駄な待機時間や移動時間を減らせる可能性があります。

コアタイムなしの制度は、単なる福利厚生ではなく、採用・定着・生産性向上の施策として設計することが大切です。

ただし、制度を導入するだけで生産性が上がるわけではありません。

業務の目的、期限、成果物、連絡方法、会議設定のルールを明確にして、自由度と責任のバランスを整える必要があります。

実際の相談でも、制度設計より運用ルールのほうで悩む会社は多いです。

採用時のアピールにもなる

求人票に「フレックスタイム制」「コアタイムなし」と書く場合、単に制度名だけを書くよりも、どのような運用なのかを具体的に示すと応募者に伝わりやすくなります。

たとえば、清算期間、勤務予定の共有方法、リモートワークとの併用可否、会議時間の考え方などです。

採用時によく確認しますが、応募者は「本当に使える制度なのか」を見ています。

名前だけの制度ではなく、実際に使える制度として説明できることが大事です。

制度の魅力を打ち出すときは、同時にルールも説明しましょう。

「自由です」だけだと期待値が上がりすぎます。

「自由度は高いけれど、勤務予定の共有と労働時間の記録は必要です」と伝えるほうが、入社後のズレを防ぎやすいです。

従業員にとってのメリット

従業員にとってのメリットは、生活事情に合わせて働きやすくなることです。

育児や介護、通院、家族の送迎、自己研さんなど、固定時間勤務では調整しにくい事情がある場合、コアタイムなしのフレックスタイム制は大きな助けになります。

毎日9時に必ず出勤しなければならない働き方だと、家庭の事情がある方には負担が大きいこともありますよね。

また、通勤ラッシュを避けられる点も実務上は大きなメリットです。

朝の混雑を避けて出勤できれば、心身の負担が軽くなり、結果として仕事への集中力が高まることもあります。

地方でも、冬場の道路事情や公共交通機関の本数など、通勤時間に影響する事情はあります。

盛岡周辺でも、季節や天候によって通勤に余裕を持ちたい場面はありますよね。

さらに、自分が集中しやすい時間帯に仕事を進められるため、業務の質が上がる可能性もあります。

朝型の人は早朝から、夜に集中しやすい人は遅めの時間帯に、といった柔軟性が出ます。

特に資料作成、設計、企画、分析、プログラミングなど、まとまった集中時間が必要な仕事では、働く時間帯を自分で選べることが成果に影響することもあります。

ただし、深夜時間帯に働く場合は、深夜労働の割増賃金や健康管理の問題が生じます。

労働者が自由に選んだ時間帯であっても、会社側の労働時間管理義務がなくなるわけではありません。

従業員側にも、勤務予定を共有する、会議に参加できる時間を明示する、清算期間内の労働時間を自分でも確認する、といった自己管理が求められます。

自由度が高い制度ほど、会社と従業員の双方にルール理解が必要です。

ここを丁寧に説明しないと、「自由に働いてよいはずなのに、なぜ予定を出す必要があるのか」という不満が出ることもあります。

働きやすさと自己管理

コアタイムなしの制度では、従業員が自分の労働時間を意識することも大切です。

清算期間の終盤になって「時間が足りない」「逆に働きすぎている」と気づくと、調整が難しくなります。

そのため、週ごとに労働時間の残りを確認する、勤務予定を早めに共有する、業務量が多いときは上司に相談する、といった運用が現実的です。

会社が管理し、従業員も把握する。

両輪です。

従業員にとっての本当のメリットは、単に遅く出勤できることではなく、仕事と生活の調整幅が広がることです。

制度の目的を共有しておくと、乱れた運用になりにくいです。

導入時のデメリット

導入時のデメリット

コアタイムなしのフレックスタイム制には、デメリットもあります。

代表的なのは、コミュニケーション不足です。

勤務時間が人によって大きくずれると、会議が設定しにくい、相談したい相手が不在、意思決定が遅れるといった問題が起こりやすくなります。

ここは本当に実務で悩みやすいところです。

また、顧客対応や取引先対応がある業務では、相手方の営業時間に合わせる必要があります。

社内だけで完結する仕事であれば柔軟にしやすいですが、外部との連携が多い仕事では、完全な自由運用は難しいことがあります。

たとえば、顧客から午前中に連絡が多い業務なのに、担当者が毎日午後から勤務する運用だと、対応遅れが発生するかもしれません。

勤怠管理が複雑になる点も見逃せません。

社員ごとに始業・終業時刻が異なるため、出退勤の記録、休憩時間、深夜労働、休日労働、清算期間内の過不足時間などを正確に集計する必要があります。

さらに、在宅勤務と組み合わせる場合は、実際にいつ業務を開始し、いつ終了したのかをどう確認するかも問題になります。

制度導入後に多いトラブルは、「自由にした結果、誰がいつ働いているのか分からない」という状態です。

これは従業員の問題というより、会社側の運用設計が不足しているケースが少なくありません。

有給休暇の取得率が下がる可能性にも注意が必要です。

働く時間を自分で調整できるため、従業員が有給休暇を使う必要性を感じにくくなることがあります。

しかし、有給休暇は労働者の権利であり、会社には年5日の取得義務が問題となる場面もあります。

フレックスタイム制だからといって、有給休暇管理を緩めてよいわけではありません。

評価面でも工夫が必要です。

労働時間が見えにくくなると、「遅い時間まで働いている人が頑張っている」といった感覚的な評価に流れることがあります。

成果、プロセス、協力姿勢、納期遵守など、評価軸を整理しておくことが重要です。

ここを曖昧にすると、自由に働く人ほど評価されにくい、あるいは見えやすい人だけが評価されるという不公平感が出ます。

デメリットは事前設計で減らせる

デメリットをゼロにすることは難しいですが、事前設計でかなり減らせます。

たとえば、会議の推奨時間帯を決める、緊急時の連絡ルートを決める、勤務予定をカレンダーで共有する、勤怠締め前に労働時間を確認する、評価基準を明文化するなどです。

制度の自由度を守るためにも、最低限の共通ルールは必要です。

よくあるデメリット 実務上の対策
連絡が取りにくい 勤務予定と連絡可能時間を共有する
会議を組みにくい 会議推奨時間帯を決める
勤怠集計が複雑 勤怠管理システムを活用する
評価が曖昧になる 成果物や期限、役割を明確にする

勤怠管理で注意すべき点

フレックスタイム制でコアタイムなしを導入する場合、勤怠管理は非常に重要です。

始業・終業を労働者に委ねる制度であっても、会社には労働時間を適正に把握する義務があります。

ここは誤解されやすいですが、「本人に任せているから会社は知らなくてよい」という扱いにはなりません。

出退勤の記録については、タイムカード、ICカード、勤怠管理システム、パソコンのログなど、客観的な記録を活用することが望ましいです。

自己申告だけに頼る場合でも、実態とずれていないか確認する仕組みが必要です。

たとえば、勤怠申告は9時から18時なのに、PCログが毎日22時まで残っている場合、その差をどう見るかが問題になります。

厚生労働省も、使用者が労働時間を適正に把握するため、労働日ごとの始業・終業時刻を確認し記録する必要があると示しています。

勤怠管理の基本を確認する際は、 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」 も参考になります。

特に注意したいのは、次のような項目です。

  • 清算期間内の総労働時間を満たしているか
  • 法定労働時間の総枠を超えていないか
  • 深夜労働や法定休日労働が発生していないか
  • 休憩時間が適切に取得されているか
  • 勤務予定と実労働時間に大きな乖離がないか

中小企業では、Excelで管理しているケースもありますが、清算期間が長くなるほど計算が複雑になります。

従業員数が増える場合や、深夜・休日勤務が混在する場合は、勤怠管理システムの導入を検討したほうが安全です。

Excelが悪いわけではありませんが、計算式の崩れ、入力漏れ、集計ミスが起きやすいです。

労働基準監督署の調査でも、労働時間の記録は確認されやすいポイントです。

労働時間管理の基本については、 労基署の監査項目と労務管理の整え方を社労士が詳しく解説 も参考になります。

勤務予定と実績の両方を見る

コアタイムなしの運用では、勤務予定と実績の両方を見ることが大切です。

勤務予定だけでは実際の労働時間は分かりませんし、実績だけではチーム内の連携がしにくくなります。

たとえば、前週末までに翌週の勤務予定を共有し、月中で労働時間の進捗を確認し、月末前に過不足を調整する。

こうした流れを作ると、制度がかなり安定します。

コアタイムなしの運用では、Googleカレンダーなどで勤務予定を共有する、定例会議の候補時間をあらかじめ決める、連絡可能時間を明示するなど、労務管理と業務管理の両方を整えることが実務上は効果的です。

勤怠記録が曖昧なままだと、未払い残業代、長時間労働、健康管理、安全配慮義務の問題につながる可能性があります。

自由な制度ほど、記録はきっちり。

これが実務の基本です。

導入が難しい職種

導入が難しい職種

コアタイムなしのフレックスタイム制は、すべての業種・職種に向いているわけではありません。

導入しやすい職種もあれば、慎重に検討すべき職種もあります。

制度として人気があるからといって、全社一律で導入すると現場が回らなくなることもあります。

ここは冷静に見たほうがよいです。

たとえば、工場の生産ラインのように、チーム全体が同じ時間に稼働する必要がある職場では、個人ごとに出退勤を自由にすると業務が回らなくなる可能性があります。

前工程と後工程が連動している場合、ひとりの勤務時間がずれるだけで全体の流れに影響します。

接客、小売、医療、福祉、コールセンターなど、一定時間に人員配置が必要な職場も同様です。

外回り営業や顧客対応が中心の職種でも、取引先の営業時間に合わせる必要があります。

社内制度としてはコアタイムなしにしていても、実際には顧客対応の時間帯に勤務が集中することがあります。

この場合、制度上の自由度と業務上の制約にギャップが生まれます。

従業員からすると「自由と聞いていたのに、結局いつも同じ時間に働いている」と感じるかもしれません。

導入が難しい職種例 注意点
製造ライン 一斉稼働や工程管理が必要になりやすい
接客・小売 営業時間に合わせたシフト管理が必要
医療・福祉 利用者対応や緊急対応が発生しやすい
外部対応中心の営業 顧客の稼働時間に合わせる必要がある

このような職種では、完全にコアタイムなしにするよりも、部署ごとに対象者を限定する、フレキシブルタイムを設定する、一部の日だけ柔軟勤務を認めるなど、段階的な設計が現実的です。

たとえば、接客部門はシフト制を基本にし、バックオフィス部門だけフレックスタイム制を導入する方法もあります。

全員に同じ制度を適用しないと不公平というわけではなく、業務の性質に応じた合理的な区分が大切です。

対象者を分けるときの注意

対象者を限定する場合は、なぜその部署・職種が対象なのか、なぜ別の部署・職種は対象外なのかを説明できるようにしておくとよいです。

単に「この部署は管理しやすいから」「あの人には向いていないから」といった曖昧な理由では、不満が出やすくなります。

業務の独立性、顧客対応の必要性、チーム稼働の有無、勤怠管理の実現可能性などを基準に整理しましょう。

制度は、会社の実態に合わせて設計する必要があります。

流行しているから導入するのではなく、業務内容、人員体制、顧客対応、勤怠管理の負担を踏まえて判断することが大切です。

導入が難しい職種でも、柔軟な働き方をまったく認められないわけではありません。

時差出勤、短時間勤務、半日単位の有給休暇、在宅勤務の一部導入など、別の制度で対応できることもあります。

フレックスタイム制にこだわりすぎず、目的に合った制度を選ぶ発想が大事かなと思います。

フレックスタイム制でコアタイムなしのまとめ

フレックスタイム制でコアタイムなしの制度は、従業員にとって柔軟に働きやすく、企業にとっても人材確保や生産性向上につながる可能性があります。

一方で、導入には就業規則への定め、労使協定の締結、清算期間の設定、総労働時間の管理、残業代の計算、勤怠記録の整備が必要です。

自由度の高い制度ほど、土台づくりが大切です。

特に大切なのは、 コアタイムなしは労働時間管理を不要にする制度ではない ということです。

むしろ、自由度が高いからこそ、会社は客観的な勤怠記録、勤務予定の共有、残業代の精算、深夜・休日労働の確認を丁寧に行う必要があります。

「本人に任せているから会社は関与しない」という運用は、労務リスクが高くなりやすいです。

導入を検討する際は、制度設計、就業規則、労使協定、勤怠管理、給与計算を一体で確認しましょう。

どれかひとつでも曖昧なまま進めると、後から労務トラブルにつながる可能性があります。

実務上は、まず対象者を決め、清算期間を決め、総労働時間と標準となる1日の労働時間を定め、就業規則と労使協定を整えます。

そのうえで、勤怠管理システムや勤務予定の共有方法を確認し、従業員へ制度説明を行います。

ここまでやって、ようやく安心して運用できる状態に近づきます。

少し手間はかかりますが、最初に整えておくほうが後々ラクです。

確認項目 見るべきポイント
制度目的 採用、定着、生産性向上など目的を明確にする
対象者 部署や職種ごとの適性を確認する
就業規則 始業・終業時刻を自主決定に委ねる旨を定める
労使協定 清算期間、総労働時間、標準労働時間などを定める
勤怠管理 始業・終業、深夜、休日、過不足を記録する
給与計算 時間外労働、不足時間、固定残業代との関係を確認する

また、制度や割増率、届出方法、公式様式などは変更される可能性があります。

正確な情報は公式サイトをご確認ください

実際に導入する場合や、自社の運用が適法か判断に迷う場合は、 最終的な判断は専門家にご相談ください

会社ごとに勤務実態や給与体系が違うため、一般論だけで判断しきれない場面もあります。

もりおか社会保険労務士事務所では、企業の実態に合わせた労働時間制度の整理、就業規則の見直し、労使協定の確認、勤怠管理の実務対応について、法令遵守を前提にした現実的な運用を大切にしています。

フレックスタイム制でコアタイムなしを導入するなら、「制度を作る」だけでなく、「現場で無理なく回る」ことまで見ていきましょう。

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