こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
従業員が退職して離職票の交付を希望した場合、会社では雇用保険被保険者資格喪失届とあわせて、雇用保険被保険者離職証明書を作成してハローワークへ提出します。
離職証明書は、氏名や離職年月日だけでなく、被保険者期間、賃金支払基礎日数、賃金額、離職理由などを記載するため、初めて作成する担当者にとって迷いやすい書類です。
特に、算定対象期間の区切り方や離職理由の選び方を誤ると、退職者の基本手当の受給資格や給付内容の確認にも影響する可能性があります。
会社側からすると退職時に行う複数の手続きの一つですが、退職者側から見ると、離職後の生活に関わる重要な書類です。
そのため、過去の離職証明書をそのままコピーするのではなく、今回の退職者について賃金台帳、出勤簿、雇用契約書、退職届などを確認しながら作成することが大切です。
この記事では、企業の人事・労務担当者に向けて、ハローワークの離職票記入例を確認するときに押さえておきたいポイントを、実務の流れに沿って詳しく解説します。
- 雇用保険被保険者離職証明書と離職票の関係
- 算定対象期間や賃金支払基礎日数の書き方
- 離職理由欄と本人確認で注意するポイント
- 離職証明書の提出期限と準備する確認資料

ハローワークの離職票記入例と作成の基本
まずは、会社が作成する雇用保険被保険者離職証明書がどのような書類なのかを整理しましょう。
離職票という言葉が広く使われていますが、会社がハローワークへ提出する離職証明書と、ハローワークの処理後に退職者へ交付される離職票は役割が異なります。
さらに、離職証明書の中には、離職日からさかのぼって確認する期間と、会社の給与締切日を基準に確認する期間が並んでいます。
この2つを混同すると、賃金支払基礎日数や賃金額まで連鎖的にずれてしまいます。
その違いを理解したうえで、氏名、離職年月日、算定対象期間、賃金支払状況などを順番に確認すると、記入ミスを減らしやすくなります。
雇用保険被保険者離職証明書とは
雇用保険被保険者離職証明書は、雇用保険に加入していた従業員が離職したときに、会社がその従業員の 離職年月日、離職前の賃金、被保険者期間、離職理由などを証明するための書類 です。
一般的には、退職者が離職票の交付を希望する場合に、雇用保険被保険者資格喪失届とあわせて事業所を管轄するハローワークへ提出します。
会社が作成した離職証明書の内容をもとにハローワークで手続きが行われ、その後、離職票-1と離職票-2が退職者へ交付される流れになります。
会社が直接「離職票-2」を自由に作成して退職者へ渡すわけではありません。
会社が離職証明書を作成してハローワークへ提出し、その内容をもとに離職票が交付される、という順番で理解すると分かりやすいです。
離職証明書に記載された内容は、退職者が基本手当などの手続きをするときの重要な資料になります。
例えば離職前の賃金は、基本手当の算定に使用される賃金日額などの確認につながります。
また、離職理由についても、自己都合退職なのか、会社都合に関係する離職なのか、契約期間満了なのかといった事情によって、その後の給付の取扱いが変わる可能性があります。
このため、離職証明書は単なる会社内部の退職書類ではありません。
会社が記載した内容が、そのまま行政手続きの重要な確認資料になる書類です。
実務では、まず雇用保険被保険者資格喪失届を作成し、その後で離職証明書を作るという流れになることも多いのですが、私は退職日が決まった段階で、離職票の交付希望、退職理由、出勤簿、賃金台帳までセットで確認する方が処理しやすいと考えています。
特に給与締切日と退職日がずれているケースでは、退職後に初めて資料を集め始めると、どの期間まで賃金台帳が必要なのか分からなくなることがあります。
退職手続きのチェックリストに「離職票の要否」を入れておくとよいですよ。
なお、本人が離職票の交付を希望しない場合は、原則として離職証明書を省略できるケースがあります。
ただし、 離職日時点で59歳以上の被保険者については、本人が離職票を希望しない場合でも離職証明書を省略できません。
年齢を確認せず「本人が不要と言ったから作成しない」と処理しないよう注意してください。
退職者の年齢が59歳以上の場合は、離職票の希望の有無だけで離職証明書の要否を判断しないことが重要です。
離職証明書の記載方法については、厚生労働省が事業主向けの手引きを公開しています。
様式や取扱いは変更される可能性がありますので、実際の提出時には最新の情報を確認してください。
資格喪失手続きそのものについては、 雇用保険資格喪失届の書き方と提出期限 でも詳しく解説しています。
離職証明書と離職票-2の違い

離職証明書と離職票-2は、記載される項目が非常によく似ています。
そのため、会社の実務担当者から「会社が離職票-2を書くのですよね」と聞かれることがありますが、手続き上の位置づけを整理しておくと理解しやすくなります。
実務上は、 会社がハローワークへ提出する基礎資料が雇用保険被保険者離職証明書で、その内容をもとにハローワークから交付されるものが離職票-1・離職票-2 と考えるとよいでしょう。
| 書類 | 主に扱う人 | 役割 |
|---|---|---|
| 雇用保険被保険者離職証明書 | 会社 | 賃金、被保険者期間、離職理由などをハローワークへ証明する |
| 離職票-1 | 退職者 | 基本手当などの受給手続きで使用する |
| 離職票-2 | 退職者 | 離職前の賃金や離職理由などを確認する |
離職証明書と離職票-2の内容が似ているのは、離職証明書に記載された情報をもとに離職票-2が作られるためです。
会社の担当者が賃金額や離職理由を誤って記載すると、その内容が退職者側の離職票にも反映される可能性があります。
ここが実務で重要なポイントです。
会社では「ハローワークへ出す書類だから、多少の間違いがあっても窓口で直してもらえるだろう」と考えない方がよいです。
もちろんハローワークで内容確認は行われますが、会社には事実に基づいて正しく証明する役割があります。
一方、退職者から会社へ連絡が来るときは、「離職証明書を作ってください」ではなく「離職票をください」「離職票が届きません」と言われることが一般的です。
この場合、会社側ではまず資格喪失届を提出済みか、離職証明書も提出しているか、ハローワークの処理が完了しているか、会社が離職票を受け取っている場合は本人へ交付済みか、と順番に確認します。
「資格喪失届を提出したこと」と「離職票の発行手続きをしたこと」は同じではありません。
退職者から離職票について問い合わせがあったときは、離職証明書まで提出したかを確認してください。
現在は一定の条件を満たす場合にマイナポータルを通じて離職票が本人へ直接交付される仕組みもあります。
そのため、会社で紙の離職票を受け取り本人へ郵送する方法だけが唯一の流れとは限りません。
会社が採用している申請方法や本人の利用状況によって交付方法が異なることがあります。
ただし、会社が確認すべき根本部分は変わりません。
正しい資格喪失日、賃金、勤務状況、離職理由をもとに離職証明書を作成すること です。
この基礎資料が正確でなければ、その後の離職票も正確になりません。
書類の名前を整理するだけでも、退職手続きはかなり分かりやすくなります。
会社では「資格喪失届」「離職証明書」「離職票-1」「離職票-2」を別々の書類として整理しておくとよいでしょう。
離職証明書を会社が作成する場面
雇用保険に加入している従業員が退職した場合、会社はまず雇用保険被保険者資格喪失届を提出します。
そのうえで、退職者が離職票の交付を希望している場合には、原則として離職証明書を作成して資格喪失届とあわせて提出します。
実務で気をつけたいのは、会社側だけで「この人には離職票は必要ないだろう」と判断しないことです。
例えば、退職後すぐに別会社へ転職すると聞いている場合でも、その就職が予定どおり進むとは限りません。
内定が取り消される可能性もありますし、新しい勤務先を短期間で退職するケースもあります。
本人が離職票を希望しているのであれば、会社の推測で交付手続きを止めるべきではありません。
退職手続きを始める段階で、 離職票の交付を希望するかどうかを本人へ確認して記録しておく と、その後の手続きがスムーズです。
私は会社の退職手続きを整理するとき、退職日、退職理由、社会保険の資格喪失、雇用保険の資格喪失、離職票の要否、源泉徴収票、住民税などを一つのチェックリストにしておくことをおすすめしています。
離職票だけ別に管理すると、確認漏れが起きやすいためです。
会社側で確認しておきたい主な事項は次のとおりです。
- 雇用保険の被保険者であるか
- 正式な退職日がいつか
- 離職票の交付を希望しているか
- 離職日時点で59歳以上ではないか
- 退職理由が何であるか
- 離職前の賃金台帳と出勤簿がそろっているか
- 有期契約の場合は契約期間や更新状況を確認できるか
特に注意したいのが、 退職日と最終出勤日は必ずしも一致しない という点です。
例えば、3月15日が最後の出勤日で、その後3月31日まで年次有給休暇を取得して3月31日付で退職する場合、雇用関係は3月31日まで続いています。
離職年月日として確認するのは最終出勤日の3月15日ではなく、原則として3月31日です。
反対に、「月末退職だと思っていたが、退職届を見ると20日付になっていた」というケースもあります。
給与担当者の認識だけで処理せず、退職届、雇用契約、会社が承認した退職日などを確認してください。
最終出勤日、給与の最終締切日、退職日、資格喪失日はそれぞれ別の日になることがあります。
離職証明書はこの日付関係を整理してから作成すると間違いを防ぎやすくなります。
また、離職票を希望しない従業員についても、離職日時点で59歳以上の場合は取扱いが異なります。
本人から「次の仕事が決まっているので不要です」と言われても、会社側では年齢を確認して手続きを判断してください。
退職時は給与計算や社会保険の資格喪失など複数の事務が重なります。
特に中小企業では一人の担当者がすべて処理していることも多いため、退職者が出てから考えるのではなく、あらかじめ社内の退職手続きフローを決めておくことが有効ですよ。
氏名・被保険者番号・離職日の書き方
離職証明書には、事業所番号、被保険者番号、離職者氏名、離職年月日などの基本情報を記載します。
算定対象期間や離職理由と比べると簡単に見える部分ですが、実務では基本情報の転記ミスも珍しくありません。
特に複数の退職者をまとめて処理している場合は、別の従業員の被保険者番号を転記してしまう、資格喪失届と離職証明書で退職日が違う、といったミスに注意が必要です。
| 確認項目 | 実務上の確認ポイント | 主な確認資料 |
|---|---|---|
| 被保険者番号 | 別人の番号や健康保険の番号と混同しない | 雇用保険の資格記録、被保険者証など |
| 氏名 | 現在の雇用保険登録情報と一致しているか確認する | 資格取得記録、本人情報 |
| 離職年月日 | 最終出勤日ではなく正式な退職日を確認する | 退職届、雇用契約、退職辞令など |
| 事業所番号 | 対象者が所属する雇用保険適用事業所を確認する | 事業所の雇用保険関係書類 |
特に重要なのが、 離職証明書の離職年月日と雇用保険被保険者資格喪失届の離職年月日を一致させること です。
例えば3月20日が最終出勤日でも、3月21日から年次有給休暇を取得し、3月31日付で退職するのであれば、通常は3月31日が離職年月日となります。
この場合、退職による雇用保険の資格喪失日は原則として翌日の4月1日です。
会社では「退職日」と「資格喪失日」を同じ日として扱わないようにしてください。
3月31日退職であれば、離職年月日は3月31日、通常の資格喪失日は4月1日という関係です。
また、雇用保険被保険者番号についても注意が必要です。
雇用保険被保険者番号と、健康保険の記号番号、基礎年金番号、マイナンバーはそれぞれ別の番号です。
退職手続きでは社会保険と雇用保険を同時に処理することが多いため、書類を並べて作業していると番号を取り違えることがあります。
入力画面の項目名を見ずに数字だけをコピーするのは避けた方がよいです。
本人から「雇用保険の番号が分かりません」と言われた場合も、健康保険の番号を代用することはできません。
過去の雇用保険被保険者証や離職票などを確認し、必要に応じてハローワークへの確認を行います。
被保険者番号の確認方法については、 雇用保険被保険者番号の確認方法 も参考にしてください。
氏名についても、結婚などにより社内で使用している氏名と雇用保険上の登録情報が異なっていることがあります。
人事システムに表示されている氏名だけで判断せず、雇用保険の資格情報と一致しているか確認しましょう。
基本情報の欄は簡単に見えるため、逆に確認を省略しやすい部分です。
私は、資格喪失届を作成した後、その内容を見ながら離職証明書の基本情報を照合する方法をおすすめしています。
最初の基本情報が間違っていると、その後どれだけ賃金や離職理由を正確に記載しても訂正が必要になります。
まず「誰の」「どの事業所の」「何月何日の離職なのか」を確定させてから、期間や賃金の記載へ進みましょう。
算定対象期間と基礎日数の書き方

離職証明書の中でも、会社の担当者が最も迷いやすい部分の一つが、被保険者期間算定対象期間と賃金支払基礎日数です。
ここで最初に理解しておきたいのは、 被保険者期間算定対象期間は、会社の給与締切期間をそのまま記載する欄ではない という点です。
一般被保険者などの場合は、離職日を基準として1か月ずつ期間をさかのぼり、それぞれの期間について賃金支払の基礎となった日数を確認します。
例えば、月末退職であれば1日から末日までという分かりやすい期間になることがあります。
しかし、20日退職であれば、単純に1日から20日まで、前月1日から末日までという区切りにはなりません。
離職日を基準に1か月ずつ区切るため、退職日によって期間の形が変わります。
給与の締め日で区切る賃金支払対象期間と、被保険者期間算定対象期間を混同しないことが重要です。
離職証明書には性質の違う期間が並ぶため、最初にそれぞれの意味を理解してから記入してください。
基本手当の受給資格を確認する一般的な考え方では、原則として離職日以前2年間の中に被保険者期間が通算12か月以上あるかが確認されます。
このため、離職証明書も必要な被保険者期間を確認できるところまでさかのぼって記載することになります。
ここでいう1か月は、単純に「会社に1か月在籍していた」という意味ではありません。
その期間における賃金支払基礎日数などによって、被保険者期間として数えられるかが確認されます。
原則として、賃金支払基礎日数が11日以上ある期間を1か月として確認します。
ただし、11日に満たない期間がある場合に、その期間を直ちに無視してよいわけではありません。
一定の場合には、 賃金の支払いの基礎となった労働時間が80時間以上あるかどうか によって被保険者期間を確認する取扱いがあります。
そのため、短時間勤務者や欠勤の多い月などについては、日数だけで判断すると誤る可能性があります。
賃金支払基礎日数が11日未満の期間がある場合は、「対象外」と即断せず、80時間以上の基準が関係しないか確認してください。
また、11日以上ある月が必要数そろわない場合は、さらに前の期間までさかのぼる必要があります。
直近12か月分の行を書けば必ず足りるということではありません。
逆に言えば、離職証明書を作成するときに「直近1年の出勤簿だけあればよい」と決めてしまうと、欠勤や休職が多かった従業員では資料が不足することがあります。
実務では少し長めに賃金台帳と出勤簿を準備しておくと安心です。
賃金支払基礎日数とは
賃金支払基礎日数とは、その期間について賃金の支払いの基礎となった日数です。
ここも「実際に会社へ出勤した日数」と完全に同じではありません。
例えば、年次有給休暇を取得して賃金が支払われた日は、賃金支払基礎日数に含まれる取扱いがあります。
また、休業手当の対象となった日などについても確認が必要です。
一方で、月給者、日給者、時給者では数え方が異なることがあります。
完全月給で欠勤控除がない従業員と、実際に働いた日についてのみ賃金が発生する時給者では、同じ考え方で単純に出勤日数を転記することはできません。
| 確認する場面 | 実務上のポイント |
|---|---|
| 月給者 | 給与体系や欠勤控除の有無を確認する |
| 日給・時給者 | 実際に賃金支払いの基礎となった日を確認する |
| 年次有給休暇 | 賃金が支払われるため基礎日数に含まれる取扱いを確認する |
| 休業 | 休業手当の支払い状況などを確認する |
| 11日未満の期間 | 80時間以上の基準が関係しないか確認する |
私が実務で離職証明書を確認するときも、いきなり賃金台帳から数字を書き始めることはしません。
まず退職日を確定し、算定対象期間を縦に組み、その後で出勤簿やタイムカードを当てはめ、最後に賃金台帳を照合します。
退職日から期間を作る → 出勤簿で日数や時間を確認する → 賃金台帳で賃金を確認する という順番にすると整理しやすいですよ。
休職、産前産後休業、育児休業、長期欠勤などが含まれる場合は、通常の退職者より確認する期間が長くなったり、個別の取扱いが関係したりすることがあります。
特殊なケースでは、一般的な記入例だけで判断せず、管轄のハローワークへ確認することをおすすめします。
賃金支払状況と賃金額の書き方
離職証明書には、被保険者期間算定対象期間とは別に、会社の賃金締切日に基づく賃金支払対象期間と、その期間に対応する賃金支払基礎日数、賃金額を記載します。
ここで再度確認しておきたいのは、 離職日から1か月ごとに区切る期間と、給与締切日によって区切る期間は別物 だという点です。
例えば、毎月末締めの会社であれば、通常の完全月では1日から末日までが賃金支払対象期間になります。
一方、20日締めの会社であれば、通常は前月21日から当月20日までというように、会社の給与計算期間に合わせて記載します。
退職日が給与締切日の途中にある場合には、最後の期間は締切日の翌日から離職日までの途中期間になることがあります。
給与の「支給日」ではなく、「どの期間の労働等に対する賃金なのか」を確認することがポイントです。
例えば25日払いの会社だからといって、25日を基準に賃金支払対象期間を区切るわけではありません。
見るべきなのは給与の支払日ではなく締切日です。
末締め翌月25日払いであれば、基本的には末締めの期間を確認します。
賃金額についても、基本給だけを記載すればよいわけではありません。
月給、週給など、賃金の主たる部分が一定期間によって定められている場合には、時間外手当などを含め、その期間について支払われた賃金を確認して記載します。
一方、日給や時間給など、働いた日数や時間数によって主たる賃金が計算される場合には、離職証明書のA欄・B欄の使い分けが必要になることがあります。
| 賃金の例 | 確認の考え方 |
|---|---|
| 基本給 | 通常の賃金として確認する |
| 時間外手当 | 対象期間に対応する支給額を確認する |
| 通勤手当 | 支給方法や対象期間を確認する |
| 日給・時間給 | 日数・時間に応じて算定される主たる賃金として確認する |
| 臨時・特別な賃金 | 通常賃金と同じように一律で加算せず取扱いを確認する |
例えば月給制の社員について、賃金台帳に基本給25万円、時間外手当2万円、役職手当3万円が記録されているにもかかわらず、基本給25万円だけを離職証明書へ転記すると、実際の賃金支払状況と一致しない可能性があります。
反対に、賃金台帳に表示されているものを何でも合計すればよいわけでもありません。
賞与や臨時的な支払いなど、通常の賃金と異なる取扱いとなるものもあるため、項目の性質を確認してください。
給与ソフトの「総支給額」をそのまま離職証明書へ転記できるとは限りません。
賃金項目の内容を確認したうえで記載することが重要です。
また、退職日と給与締切日の関係によっては、離職証明書を準備する時点で最終給与がまだ確定していないことがあります。
例えば月末退職、翌月10日給与計算という会社では、退職後すぐに資格喪失手続きを進めたい一方、最終の残業代などが未確定ということもあります。
この場合、最終給与の確定を理由に手続きを長期間止めてよいとは限りません。
どのように記載・提出するかは個別の状況や申請方法によって確認が必要ですので、管轄ハローワークへ相談しながら進めるのが安全です。
離職票の発行が遅れれば、退職者が基本手当の受給手続きを開始する時期にも影響する可能性があります。
会社側の給与計算スケジュールだけで考えるのではなく、退職後の手続き全体を意識して対応しましょう。
実務では、離職証明書を作る前に、給与締切日、賃金台帳、出勤簿の3つを並べて確認するとかなり分かりやすくなります。
給与システムから数字だけを拾うより、期間と賃金の対応関係を確認することが大切です。
ハローワークの離職票記入例と提出の注意点
離職証明書の左側にある期間や賃金の記載だけでなく、離職理由、本人確認、提出期限、確認資料まで含めて正しく処理することが重要です。
特に離職理由は、会社が一方的に選択すればそのまま確定するものではありません。
退職者本人の認識と会社の認識が異なる場合には、ハローワークが双方の主張や資料を確認したうえで判断することがあります。
そのため、離職理由は「自己都合か会社都合か」という二択だけで考えず、退職に至った具体的な経緯と、それを裏付ける資料を整理して記載することが重要です。
離職理由欄の書き方と判断基準
離職理由欄は、離職証明書の中でも特に慎重な判断が必要な項目です。
自己都合退職、解雇、事業所の廃止、契約期間満了、定年、雇止めなど、退職に至った事情に応じて該当する項目を選択し、必要に応じて具体的な事情を記載します。
ここで重要なのは、 会社にとって都合のよい離職理由を選ぶのではなく、実際に起きた事実に基づいて記載すること です。
例えば、本人から退職届が提出されている場合、一般的には本人都合の退職を考えます。
しかし、退職届が提出される前に、会社が本人へ繰り返し退職を求めていた、退職以外の選択肢を実質的に与えていなかった、といった事情がある場合は、単純に「退職届があるから自己都合」と処理できないことがあります。
一方、本人が「会社都合にしてほしい」と希望したからといって、実際には自発的な転職や家庭事情による退職であるものを会社都合として記載することも適切ではありません。
離職理由は会社と本人が自由に選べるものではなく、実際の退職経緯をもとに確認されるものです。
| 離職理由の例 | 確認したい資料の例 | 実務上の確認ポイント |
|---|---|---|
| 自己都合退職 | 退職届、退職願、本人とのやり取り | 本人が自発的に退職を申し出た経緯を確認する |
| 解雇 | 解雇通知書、解雇理由を確認できる資料 | 解雇日や解雇理由を確認する |
| 契約期間満了 | 雇用契約書、更新履歴、更新時の資料 | 更新回数、通算期間、更新希望などを確認する |
| 定年 | 就業規則、雇用契約書 | 定年年齢や継続雇用の状況を確認する |
| 事業所都合による離職 | 事業縮小や廃止等を確認できる資料 | 離職に至った会社側の事情を確認する |
特に判断が難しくなりやすいのが、有期契約労働者の契約期間満了です。
「契約期間が満了した」という事実だけを見れば同じように見えても、過去の更新回数、通算契約期間、契約更新についての明示、本人が更新を希望したか、会社が更新を希望したかなどによって確認される内容が変わります。
例えば会社側が更新を提示したにもかかわらず本人が更新を希望しなかった場合と、本人は更新を希望したのに会社が更新しなかった場合とでは、事情が異なります。
このようなケースでは、最後の雇用契約書だけでなく、過去の契約更新履歴や本人とのやり取りまで確認した方がよいでしょう。
離職理由は、基本手当の受給資格、給付制限、所定給付日数などに関係する可能性があります。
「前回の退職者もこの項目だったから」という理由だけで選択しないでください。
また、離職証明書には離職に至った具体的事情を記載する欄があります。
ここを「一身上の都合」「契約満了」など短い言葉だけで済ませるのではなく、必要に応じて原因や経緯が分かるように記載します。
ハローワークが離職理由を確認するときに、会社がどのような事実をもとに判断したのか分かるようにしておくことが大切です。
会社と本人で離職理由の認識が異なる場合もあります。
その場合、会社が記載した離職理由だけで最終決定されるわけではありません。
本人から異議が示された場合などには、ハローワークが双方の主張や資料を確認して判断することがあります。
私も実務では、離職理由に迷う案件ほど「何という名称の退職か」ではなく、「誰が、いつ、何を申し出て、会社と本人がどのようなやり取りをして退職に至ったのか」を時系列で整理します。
この方が判断材料が明確になります。
本人確認と異議の有無の記載方法

離職証明書を作成するときは、会社だけで記載を完結させるのではなく、原則として離職者本人に記載内容を確認してもらうことが重要です。
離職証明書には、離職理由以外の記載内容について確認する欄と、会社が記載した離職理由について本人が異議を有するかどうかを示す欄があります。
特に重要なのが、 会社と本人で離職理由の認識が一致しているか という点です。
例えば会社では「本人から退職届が出ているので自己都合退職」と考えていたとしても、本人は「上司から辞めるように言われたので退職届を書いた」と考えていることがあります。
このようなケースで、会社側だけの判断で本人の異議を「無し」として処理することは適切ではありません。
本人に異議があること自体は、会社の記載が直ちに誤りになるという意味ではありません。
会社と本人の認識が異なる場合は、その違いを前提として、ハローワークが双方の主張や確認資料を踏まえて判断することになります。
実務では、退職日より前に離職理由だけでも本人へ確認しておくとスムーズです。
最終給与がまだ確定していないため離職証明書全体を完成できないケースでも、離職理由については退職日までに確認できることがあります。
退職後に連絡が取れなくなってから初めて確認しようとすると、会社側の事務負担も大きくなります。
会社の退職フローとして、退職届を受け取った段階で「離職票を希望するか」「会社が認識している退職理由は何か」を整理し、退職日前に本人へ確認する運用にしておくとよいでしょう。
一方、実際には離職者がすでに退職して遠方へ転居している、連絡が取れないなど、本人の確認を得ることが難しい場合もあります。
そのような場合には、本人確認を得られない理由を記載するなど、所定の方法によって手続きを進めることになります。
「本人がいないから何も書かずに提出する」という処理ではなく、確認できない事情を明確にすることが必要です。
本人確認が取れない場合の具体的な記載方法や電子申請時の添付資料は、申請方法によって異なることがあります。
最新の様式や管轄ハローワークの案内を確認してください。
電子申請の場合には、紙の離職証明書に本人が記載する場合とは異なり、離職証明書の記載内容に関する確認書や、本人の確認を得られない場合の疎明書などが関係することがあります。
特に会社が電子申請へ切り替えた直後は、紙申請の感覚で処理して添付資料が不足することがあります。
電子申請を利用している会社では、退職者本人からどのように確認を取得し、それをどのように保存・添付するかまで社内ルールとして決めておくとよいですよ。
また、本人確認は単なる形式的な署名作業ではありません。
会社としては退職理由の認識が正しいと思っていても、本人が異なる認識を持っていることを退職前に把握できれば、その時点で経緯や資料を整理できます。
退職後にハローワークから照会が来て、数か月前の出来事を調べ直すよりはるかに対応しやすくなります。
離職証明書の本人確認は、給付手続きのためだけではなく、 会社側の労務リスク管理という意味でも重要な確認工程 と考えるとよいでしょう。
離職証明書の提出期限と提出先
雇用保険被保険者資格喪失届は、原則として 被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内 に提出します。
離職票を交付する場合には、離職証明書も資格喪失届とあわせて手続きを進めるのが基本です。
通常の退職の場合、退職日の翌日に雇用保険の被保険者資格を喪失します。
そのため、実務上は 退職日の翌日が資格喪失日、その翌日から10日以内が資格喪失届等の提出期限 という順番で整理すると分かりやすいでしょう。
例えば月末退職であれば、まず翌日を資格喪失日として確認し、そこから提出期限を確認します。
ここでよくある間違いが、「退職日から10日以内」とだけ覚えてしまうことです。
雇用保険の手続きでは、退職日そのものと資格喪失日、期限を数え始める日を区別する必要があります。
期限ぎりぎりに提出しようとすると、休日や資料不足などで間に合わなくなることもありますので、退職後できるだけ早く処理する運用にしておく方が安全です。
法定期限を「処理を始める日」にしないことが大切です。
退職日が確定した時点で、離職証明書に必要な資料を準備しておきましょう。
提出先は、原則として退職者本人の住所を管轄するハローワークではなく、 会社の事業所所在地を管轄するハローワーク です。
ここも混同しやすいポイントです。
会社が雇用保険の資格喪失届や離職証明書を提出するハローワークと、退職者本人が基本手当を受給するために求職の申込みをするハローワークでは、管轄の考え方が異なります。
| 手続き | 主な手続者 | 管轄の考え方 |
|---|---|---|
| 資格喪失届・離職証明書 | 会社 | 原則として事業所所在地を管轄するハローワーク |
| 基本手当の受給手続き | 退職者本人 | 原則として本人の住居所を管轄するハローワーク |
提出方法については、ハローワーク窓口への提出のほか、電子申請などを利用できる手続きがあります。
会社で継続的に退職手続きを行うのであれば、電子申請を活用すると、窓口へ出向く時間を削減しやすくなります。
一方、離職理由が複雑で資料確認が必要なケースや、離職証明書の書き方そのものに不安がある場合は、事前に管轄ハローワークへ相談してから提出した方がスムーズなこともあります。
提出期限や確認書類については、厚生労働省の手続き一覧でも確認できます。
なお、期限の数え方や休日に当たる場合の具体的な取扱い、申請方法ごとの受付日は個別に確認した方が安全です。
「10日以内」という数字だけで最終提出日を自己判断せず、余裕を持って提出してください。
退職者にとっては、会社の手続きが終わって初めて離職票を使った受給手続きへ進めるケースがあります。
会社側では、自社の法定期限だけでなく、退職者が次の手続きを待っていることも意識して速やかに対応することが大切です。
提出時に確認する添付書類

離職証明書を提出するときは、会社が記載した離職日、賃金額、賃金支払基礎日数、離職理由などについて、内容を確認できる資料を準備します。
ここでいう資料は、すべてのケースで必ず同じものを「添付」するという意味ではありません。
窓口提出、電子申請など申請方法によって、添付するもの、提示するもの、確認を求められるものが異なる場合があります。
ただし、会社としては、離職証明書に記載した内容の根拠を説明できる状態にしておく必要があります。
一般的に確認しておきたい資料は次のとおりです。
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 雇用保険被保険者離職証明書
- 賃金台帳
- 出勤簿やタイムカード
- 労働者名簿
- 雇用契約書や労働条件通知書
- 退職届や退職願
- 離職理由を確認できる資料
この中でも、賃金台帳と出勤簿は非常に重要です。
離職証明書では、被保険者期間算定対象期間ごとの賃金支払基礎日数と、賃金締切期間ごとの賃金支払基礎日数・賃金額を記載します。
そのため、給与の数字だけ分かればよいのではなく、勤務日数や有給休暇、欠勤などの状況も確認できる必要があります。
実務では、 離職証明書を書き終えてから証拠資料を探すのではなく、最初に賃金台帳・出勤簿・退職理由資料をそろえてから作成する 方が効率的です。
この方法なら、記入途中で何度も給与担当者や現場責任者へ確認する手間を減らせます。
離職理由を確認する資料については、退職の種類によって異なります。
| 退職の状況 | 確認しておきたい資料の例 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 自己都合退職 | 退職届、退職願 | 本人が退職を申し出た日や理由 |
| 契約期間満了 | 雇用契約書、更新履歴 | 契約期間、更新回数、更新希望 |
| 解雇 | 解雇通知書など | 解雇日、解雇理由 |
| 定年 | 就業規則、雇用契約書 | 定年年齢や継続雇用の状況 |
| 退職勧奨 | 面談記録、合意書、やり取り | 誰から退職を働きかけたか、経緯 |
特に退職勧奨や雇止めなど、会社と本人で認識が分かれやすいケースでは、退職時点で資料を整理しておくことが重要です。
半年後にハローワークから確認を受けてから、「当時誰が何を話したのか」を思い出そうとしても、担当者の記憶が曖昧になっていることがあります。
面談記録、メール、チャット、雇用契約書など、離職理由を客観的に確認できる資料は、離職証明書の提出後も適切に保存しておきましょう。
また、賃金支払基礎日数が11日未満の期間が多い従業員の場合は、通常より前の期間まで出勤簿や賃金台帳が必要になることがあります。
例えば長期欠勤や休職があった場合、直近12か月分だけ用意しても必要な被保険者期間を確認できない可能性があります。
80時間基準を確認するため、日数だけでなく労働時間が分かる資料が必要になるケースもあります。
「離職票だから賃金台帳6か月分だけあればよい」と機械的に考えないでください。
勤務状況によって必要となる確認期間が変わることがあります。
電子申請では、紙で窓口へ持参する場合とは資料の提出方法が異なります。
本人確認書類や離職理由を確認する資料についても、電子データで添付することがあります。
提出する資料の種類や必要な期間は、退職者の勤務状況、離職理由、申請方法によって異なることがあります。
特殊なケースについては、提出前に管轄のハローワークへ確認しておくと、差戻しや追加資料の提出を減らしやすくなります。
ハローワークの離職票記入例まとめ
会社が離職票の手続きをするときは、単に離職証明書の空欄を上から埋めていくのではなく、退職日、勤務実績、給与計算、離職理由をそれぞれ根拠資料と照合しながら作成することが重要です。
初めて作成すると、期間の欄が多くて複雑に見えます。
ただ、実務では確認する順番を決めるとかなり整理しやすくなります。
ハローワークの離職票記入例を確認するときは、特に次の順番で進めるとよいでしょう。
- 雇用保険の被保険者番号と正式な退職日を確認する
- 離職票の交付希望と離職日時点の年齢を確認する
- 退職日から被保険者期間算定対象期間を整理する
- 出勤簿から賃金支払基礎日数を確認する
- 11日未満の期間は80時間基準が関係しないか確認する
- 給与締切日に沿って賃金支払対象期間を整理する
- 賃金台帳から賃金額を確認する
- 退職に至った事実から離職理由を判断する
- 離職者本人に記載内容と異議の有無を確認する
- 必要な確認資料をそろえる
- 期限内に管轄ハローワークへ提出する
この中でも、 算定対象期間、賃金支払基礎日数、賃金額、離職理由の4点は特に間違いやすい部分 です。
算定対象期間と給与締切期間を混同すると、基礎日数までずれてしまいます。
基礎日数を単純な出勤日数と考えると、有給休暇などを正しく反映できない可能性があります。
賃金額を給与ソフトの総支給額から機械的に転記すると、賃金項目の性質を確認できません。
さらに、離職理由については、会社が使っている「自己都合」「会社都合」という社内の呼び方だけではなく、実際に退職へ至った事実関係から判断する必要があります。
離職証明書を正確に作るポイントは、「用紙を見ること」より先に「資料をそろえること」です。
退職届、雇用契約書、出勤簿、賃金台帳をそろえてから記入を始めると、かなり処理しやすくなります。
また、本人が離職票を希望しない場合でも、離職日時点で59歳以上の場合は離職証明書を省略できない点も忘れないようにしてください。
会社では毎月何人も退職者が出るとは限らないため、離職証明書の作成に慣れにくいという事情があります。
特に従業員数が少ない会社では、前回作成したのが1年以上前ということも珍しくありません。
そのため、前回の書類を見ながら同じように作るのではなく、その都度最新の様式や取扱いを確認することが大切です。
離職証明書は、会社にとっては退職手続きの一つですが、退職者にとっては基本手当などの手続きにつながる重要な書類です。
会社側でも「とりあえず提出できればよい」ではなく、 根拠資料と離職証明書の内容が一致しているか を最後に確認してから提出しましょう。
私が実務で確認する場合も、最後に離職年月日、算定対象期間、基礎日数、賃金額、離職理由をもう一度横断的に確認します。
例えば、退職日を訂正したのに算定対象期間を直していなければ、その後の期間がすべてずれてしまいます。
賃金台帳の数字を修正した場合も、離職証明書へ修正内容が反映されているか確認が必要です。
できれば「作成した人」と「確認した人」を分けるダブルチェックが理想です。
担当者が一人しかいない会社であれば、一度作成した後に時間を置き、元資料と照合しながら再確認するだけでもミスを減らせます。
また、離職理由について本人と会社で認識が異なる場合、長期休職がある場合、複雑な給与体系がある場合、有期契約の更新状況が複雑な場合などは、一般的な記入例だけでは判断しにくいことがあります。
雇用保険の制度、様式、電子申請方法などは変更される可能性があります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別の勤務状況や退職経緯によって取扱いが変わるケースもありますので、迷う部分を推測で埋めるのではなく、管轄ハローワークへ確認することが大切です。
特に離職理由をめぐって会社と本人の認識が対立している場合や、退職勧奨、解雇、雇止めなど労務上の判断そのものが問題になっている場合には、離職証明書の書き方だけで解決しようとしない方がよいでしょう。
離職理由の判断だけでなく、退職そのものの法的な整理が必要になるケースもあります。
会社の対応に迷う場合は、最終的な判断は専門家にご相談ください。