こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
入社してから1年未満であっても、現在の制度では育児休業を原則として取得できます。
以前は勤続期間が問題になる場面がありましたが、2022年4月の法改正によって取得要件が見直されています。
ただし、会社が労使協定を締結している場合には、勤続1年未満の従業員を育児休業の対象から除外できることがあります。
そのため、「1年未満でも必ず取れる」と考えるのではなく、勤務先の育児・介護休業規程と労使協定まで確認することが重要です。
さらに、育児休業を取得できるかどうかと、育児休業給付金を受給できるかどうかは別の問題です。
転職直後や入社後間もない方は、この2つを分けて確認すると制度を理解しやすくなります。
- 入社1年未満でも育児休業を取得できる条件
- 2022年の法改正で変更されたポイント
- 労使協定によって対象外になるケース
- 育児休業給付金と勤続期間の関係

育児休業は1年未満でも取得できる?
まずは、勤続期間が1年に満たない場合の育児休業について、現在の基本ルールから確認していきます。
特に転職直後や入社後に妊娠・出産を迎える方は、過去の制度と現在の制度を混同しないことが大切です。
「1年以上働いていなければ育休は取れない」という情報を見かけることがありますが、現在はそれだけで結論を出すことはできません。
入社1年未満でも原則取得できる
現在の育児・介護休業法では、 入社から1年未満であることだけを理由として、法律上当然に育児休業を取得できないわけではありません。
原則として、1歳未満の子を養育する労働者は育児休業制度の対象になります。
正社員だけに限定された制度でもありません。
一定の条件を満たせば、契約社員、パート、アルバイトなども対象になります。
たとえば、転職して8か月後に育児休業を開始する場合、新卒入社から10か月程度で育児休業に入る場合などでも、「勤続1年未満」という事実だけを見て育児休業の対象外と判断するものではありません。
勤続1年以上でなければ育休を取得できない、という一律のルールは現在ありません。
ここはインターネット上の情報を調べると特に迷いやすいところです。
育児・介護休業法は何度も改正されており、過去の記事や古い会社資料には「勤続1年以上」という条件がそのまま残っていることがあります。
以前は、有期雇用労働者が育児休業を申し出る際、「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」が法律上の要件とされていた時期がありました。
この過去のルールだけが切り取られて、「入社後1年間は育休を取れない」と理解されているケースがあります。
しかし、2022年4月の改正により、有期雇用労働者についてもこの勤続1年以上という法律上の要件は撤廃されています。
一方で、ここで注意したいのが 労使協定による除外 です。
会社が所定の労使協定を締結している場合には、継続して雇用された期間が1年未満の従業員からの育児休業の申出を拒むことができる場合があります。
つまり、「法律上の取得要件として1年必要」という話と、「労使協定がある会社では1年未満を除外できる」という話は別です。
この2つを分けることが、この記事の最も重要なポイントの一つです。
実務では次のように整理すると分かりやすいですよ。
| 確認事項 | 基本的な考え方 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 入社1年未満 | 原則として育児休業の対象になり得る | 労使協定の有無を確認 |
| 労使協定なし | 勤続1年未満だけを理由に除外できない | その他の取得要件を確認 |
| 労使協定あり | 勤続1年未満を除外している場合がある | 協定の対象者と申出時点を確認 |
| 有期雇用 | 有期雇用というだけでは対象外にならない | 契約終了・更新の見込みも確認 |
従業員側であれば、まず人事・総務担当者へ「勤続1年未満の従業員を育児休業の対象外とする労使協定がありますか」と確認するのが実務的です。
会社側も、「まだ1年働いていないので育休は取れません」と即答するのは避けたほうがよいでしょう。
私が会社の規程を確認するときも、育児・介護休業規程だけではなく、対応する労使協定が実際に締結されているかまで確認します。
就業規則や育児・介護休業規程に「入社1年未満は対象外」と書かれている場合でも、その記載だけで判断するのではなく、根拠となる労使協定の有無を確認することが重要です。
したがって、あなたが入社1年未満で育児休業を検討している場合には、最初から諦める必要はありません。
まず現在の会社の制度と労使協定を確認する。
この順番で進めるのが適切です。
2022年改正で変わった取得要件

育児休業と勤続1年の関係を理解するうえで重要なのが、 2022年4月1日に施行された育児・介護休業法の改正 です。
この改正前は、有期雇用労働者が育児休業を取得するための法律上の要件として、「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」が設けられていました。
そのため、以前は契約社員や期間の定めがあるパート従業員について、入社から1年経過しているかどうかを取得要件として確認する必要がありました。
2022年4月1日以降は、この 有期雇用労働者に対する勤続1年以上という法律上の要件が撤廃 されています。
| 時期 | 有期雇用労働者の勤続期間要件 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 2022年3月31日まで | 原則として引き続き1年以上の雇用が必要 | 法律上の取得要件として勤続期間を確認 |
| 2022年4月1日以降 | 法律上の勤続1年以上要件を撤廃 | 労使協定による除外の有無を別途確認 |
つまり、現在は「契約社員で入社8か月だから、法律上当然に育児休業の対象外」という考え方ではありません。
ただし、この改正を 「入社1年未満ならどの会社でも必ず育児休業を取得できるようになった」 と理解するのも正確ではありません。
2022年の改正後も、会社が労使協定を締結することによって、継続雇用1年未満の従業員を育児休業の対象から除外できる制度は残っています。
2022年改正でなくなったのは、有期雇用労働者に対する「法律上の勤続1年以上」という取得要件です。
一方、労使協定による勤続1年未満の除外制度までなくなったわけではありません。
この違いは細かいようですが、実務ではかなり重要です。
私は相談を受けたとき、「1年未満だから取れる・取れない」と最初から結論を出すのではなく、雇用形態、入社日、育児休業の申出日、労使協定の有無を順番に確認します。
また、育児休業制度には2022年10月から分割取得や出生時育児休業、いわゆる産後パパ育休が導入されるなど、その後も制度が変わっています。
さらに2025年にも育児と仕事の両立支援に関する改正が行われており、会社に古い規程が残っている場合には注意が必要です。
そのため、数年前に先輩社員が「入社1年未満だから育休を取れなかった」としても、現在のあなたにそのまま同じ扱いが適用されるとは限りません。
現在の育児休業の対象者については、厚生労働省も、労使協定を締結している場合に継続雇用1年未満の労働者などを対象外にできることを明示しています。
現在の判断手順は、「入社1年未満か」だけではなく、「現在の法律上の対象者か」「労使協定による除外があるか」をセットで確認することです。
企業側では、育児・介護休業規程だけを改定し、古い説明資料や社内申請書が残っていることもあります。
従業員から申出があった段階で、現行法に対応しているかを一度確認しておくと安心です。
転職後1年未満でも取得できる
転職してから1年たっていない場合も、基本的な考え方は同じです。
転職後の勤続期間が1年未満であることだけで、育児休業を取得できないとは限りません。
たとえば、前職を退職して新しい会社へ転職し、現在の会社に入社してから8か月後に育児休業を開始するケースを考えてみましょう。
現在の勤務先に勤続1年未満の労働者を育児休業の対象から除外する労使協定がなければ、「まだ入社8か月だから」という理由だけで育児休業の申出を拒むことはできません。
一方、勤務先が適法な労使協定を締結し、継続雇用1年未満の従業員を除外対象としている場合には、取得できない可能性があります。
前職で何年間働いていたかと、現在の会社における勤続1年未満の判定は別に考えます。
たとえば、前職で10年間勤務していた方が転職して現在の会社へ入社し、入社6か月で育児休業を申し出たとします。
前職との通算勤続年数が10年以上あったとしても、現在の事業主との雇用関係は原則として入社後6か月です。
そのため、現在の会社に勤続1年未満を除外する労使協定があれば、その協定との関係では「継続雇用1年未満」に該当する可能性があります。
ここで非常に重要なのが、 勤続1年未満かどうかは、原則として育児休業を申し出た時点で判断する という点です。
たとえば、育児休業の申出時点では入社11か月で、育児休業開始予定日には入社から1年を超えるケースがあります。
この場合、「休業開始日には1年を超えているから問題ない」とだけ考えるのは適切ではありません。
勤続1年未満を除外する労使協定がある場合は、育児休業開始日だけではなく、育児休業を申し出る時点の勤続期間を確認してください。
育児休業の申出は、原則として休業開始予定日の1か月前までに行う必要があります。
したがって、「いつ入社したか」「いつ申し出るか」「いつから育休に入るか」の3つの日付を並べて確認すると分かりやすくなります。
さらに、転職後1年未満の方は、育児休業そのものの取得可否だけではなく、育児休業給付金についても別に確認する必要があります。
ここで話が少し変わります。
育児休業給付金では、一定の条件を満たせば 前職の雇用保険の被保険者期間を通算して受給資格を判定できる場合がある ためです。
| 確認する制度 | 転職前の勤務期間 | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 育児休業の取得 | 現在の事業主との雇用期間を中心に判断 | 会社の規程・労使協定 |
| 育児休業給付金 | 一定の場合は前職の雇用保険期間を通算可能 | 会社・ハローワーク |
実際によくある相談でも、「前の会社から通算すれば1年以上働いているので、育休も給付金も大丈夫ですよね」という質問があります。
しかし、育休の取得と給付金の資格では、確認する「1年」の意味が違います。
転職後1年未満の場合ほど、 育休を取れるか、給付金をもらえるかを一つの問題として考えないこと が大切です。
有期雇用でも対象になる条件

契約社員、パート、アルバイトなど、契約期間が決められている有期雇用労働者であっても、一定の条件を満たせば育児休業を取得できます。
2022年4月以降は、有期雇用労働者についても「入社から1年以上働いていること」という法律上の取得要件はなくなりました。
そのため、「正社員ではない」「半年契約だから」という理由だけで育児休業の対象外になるわけではありません。
ただし、有期雇用労働者では、勤続期間とは別に 労働契約がいつまで続くのか を確認する必要があります。
育児休業の申出時点で、子が1歳6か月に達する日までに労働契約が終了し、その後更新されないことが明らかな場合には、育児休業の対象とならない可能性があります。
契約期間が決められていること自体が問題なのではなく、「子が1歳6か月になるまでに雇用終了・更新なしが明らかか」が重要です。
たとえば、現在の契約書が「6か月契約」になっているとしても、これまで何度も更新されており、会社から次回の更新をしないとは言われていないのであれば、契約書に現在の満了日が書かれているだけで直ちに育児休業の対象外になるとは限りません。
反対に、申出時点ですでに「今回の契約満了をもって更新しない」と明確に通知されており、その契約終了日が子が1歳6か月になるまでの間に到来する場合には、判断が変わる可能性があります。
また、契約更新回数の上限が定められているケースにも注意が必要です。
たとえば「契約更新は最大3回」と明示されており、その上限まで更新しても子が1歳6か月になる前に契約が終了することが明らかであれば、その内容を踏まえて判断します。
一方で、書面上の記載だけでは判断しきれない場合もあります。
会社から「今後も長く働いてほしい」と説明されていた、同じ立場の従業員が継続して更新されている、本人自身も過去に何度も更新されているなど、実際の雇用継続の状況を確認することがあります。
私が有期雇用の育休相談を確認するときは、少なくとも次の資料を見ます。
- 現在の雇用契約書・労働条件通知書
- 過去の契約更新通知書
- 契約更新の上限に関する記載
- 更新しない旨の通知が出ていないか
- 就業規則や育児・介護休業規程
- 勤続1年未満を除外する労使協定の有無
会社側も、「契約社員だから育休は取れません」「パートだから制度の対象外です」と雇用形態だけで回答することは避ける必要があります。
有期雇用の場合は、 法律上の対象要件、契約更新の見込み、労使協定による除外 を別々に確認してください。
一つの条件だけを見て判断すると誤りやすいところです。
また、育児休業を取得できることと、育児休業給付金を受けられることは別問題です。
有期雇用の方でも雇用保険の要件を満たせば給付対象になり得ますが、休業開始前の被保険者期間などを別途確認します。
有期雇用では確認事項が少し多くなりますが、「有期だから無理」と最初から考える必要はありません。
雇用契約の内容を具体的に確認して判断することが大切です。
労使協定で除外されるケース
入社1年未満の育児休業を考えるとき、最も重要な例外が 労使協定による適用除外 です。
会社と、その事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数代表者との間で所定の労使協定を締結している場合には、一定の労働者からの育児休業の申出を拒むことができます。
一般的な育児休業について、労使協定によって対象外とできる代表的な労働者は次のとおりです。
| 労使協定による除外対象 | 考え方 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 継続雇用1年未満 | 現在の事業主に引き続き雇用された期間が1年未満 | 原則として育児休業申出時点で判断 |
| 雇用終了が明らか | 申出の日から1年以内に雇用関係が終了することが明らか | 1歳以降の休業では期間が異なる |
| 所定労働日数が少ない | 1週間の所定労働日数が2日以下 | 雇用契約上の所定労働日数を確認 |
この中で、「育児休業1年未満」と検索している方に最も関係するのが、継続雇用1年未満の除外です。
たとえば、会社が適法な労使協定を締結し、その中で「入社1年未満の従業員から育児休業の申出があったときは、その申出を拒むことができる」と定めている場合があります。
この場合には、法律上の勤続1年以上要件が撤廃されているからといって、当然に育児休業を取得できるわけではありません。
就業規則に「勤続1年未満は育休不可」と書いてあるかだけではなく、その除外の根拠となる労使協定が実際に締結されているかまで確認することが重要です。
会社の育児・介護休業規程では、「労使協定により除外された従業員からの申出は拒むことができる」と規定していることがあります。
そのため、規程だけを見ても、実際に会社が労使協定を締結しているかまでは分からないケースがあります。
さらに重要なのが、継続雇用1年未満かどうかの判断時点です。
原則として、 育児休業を申し出た時点 で1年に満たないかを確認します。
たとえば、入社日が4月1日で、翌年3月20日に育児休業を申し出、育児休業開始予定日が翌年4月20日だったとします。
開始予定日には勤続1年を超えていますが、申出時点では1年未満です。
勤続1年未満を除外する労使協定がある会社では、この時点の確認が重要になります。
これは実務上かなり見落としやすいところです。
「育休開始時には1年たつから大丈夫だろう」と本人も会社も考えていると、申出時点の要件を見落とすことがあります。
また、労使協定そのものが適切に締結されているかという点も会社側では確認が必要です。
単に社長や人事担当者が「当社では1年未満は対象外です」と決めるだけでは、労使協定による除外にはなりません。
育児休業に関する労使協定は、就業規則とは別のものです。
会社側では、過半数代表者の選出方法を含め、適切な手続きで協定が締結されているかを確認しておきましょう。
中小企業では育児休業の申出が数年に一度ということも珍しくありません。
そのため、以前作成した育児・介護休業規程と現在の制度、労使協定の内容が一致していないケースがあります。
従業員から申出を受けてから初めて規程を確認する会社もありますが、育児休業の対象者を誤って案内するとトラブルにつながります。
会社側では、法改正のタイミングで規程と労使協定をセットで見直すことをおすすめします。
育児休業を1年未満で取る際の注意点
入社や転職から1年未満でも育児休業を取得できる可能性はありますが、実際に休業へ入るまでにはいくつか確認しておきたい点があります。
特に重要なのは、会社の労使協定による取得可否と、雇用保険の育児休業給付金の受給資格を同じ条件だと思わないことです。
ここからは、実際に確認するときの順番まで含めて整理します。
労使協定の有無を確認する方法
自分の勤務先が勤続1年未満の従業員を育児休業の対象から除外しているかを確認するには、まず会社の人事・総務担当者へ確認するのが基本です。
確認するときは、単に「私は育休を取れますか」と聞くだけではなく、もう一歩具体的に質問すると判断が早くなります。
「入社してから1年未満ですが、勤続1年未満の従業員を育児休業の対象外とする労使協定は締結されていますか」と確認すると分かりやすいです。
会社によっては、育児・介護休業規程の中に「労使協定により除外された従業員からの育児休業の申出は拒むことができる」とだけ記載しています。
この場合、規程を読んだだけでは、実際に労使協定が締結されているのか、自分がその対象なのかまでは分かりません。
そのため、私は次の順番で確認することをおすすめしています。
- 自分の正確な入社日を確認する
- 育児休業を申し出る予定日を確認する
- 育児休業の開始予定日を確認する
- 育児・介護休業規程の対象者を確認する
- 勤続1年未満を除外する労使協定の有無を確認する
- 有期雇用なら契約更新の見込みも確認する
特に注意したいのが、先ほど説明した 「1年未満かどうかの判定時点」 です。
勤続1年未満を労使協定で除外している場合、原則として育児休業を申し出た時点の勤続期間で判断します。
そのため、「育児休業開始予定日までには勤続1年になるから大丈夫」とだけ考えるのは避けましょう。
一般的な育児休業は、原則として休業開始予定日の1か月前までに申し出ます。
そのため、入社から1年になる直前に育児休業を開始する方では、申出期限との関係も含めて確認する必要があります。
| 確認する日 | 確認する理由 |
|---|---|
| 入社日 | 継続雇用期間の起算点を確認するため |
| 育児休業申出日 | 勤続1年未満の除外判定で重要になるため |
| 育児休業開始予定日 | 申出期限や実際の休業期間を確認するため |
| 子の出生日・予定日 | 取得可能期間を確認するため |
また、会社から「当社は1年未満は育休を取れません」と言われた場合には、その理由を確認してください。
「法律で決まっているから」という回答であれば、現在の制度との認識にずれがある可能性があります。
一方、「当社では労使協定によって継続雇用1年未満を除外しています」という回答であれば、協定の存在とあなたが対象になるかを確認することになります。
企業側では、従業員本人または配偶者の妊娠・出産等の申出を受けた際、育児休業制度等について個別に周知し、取得意向を確認することが求められています。
「この従業員はまだ入社1年未満だから説明しなくてよい」と最初から処理するのではなく、まず現行制度と自社の労使協定を確認するのが安全です。
労使協定の対象になるか判断が難しい場合は、入社日、申出予定日、育休開始予定日、会社の協定内容を整理したうえで確認してください。
日付が数週間違うだけで確認結果に影響するケースがあります。
実際の申出が近づいてから慌てるより、出産予定日が分かった段階で一度会社へ確認しておくと、その後の手続きを進めやすくなります。
育休と育児休業給付金は別制度

育児休業1年未満の相談で、私が特に分けて説明するのが、 育児休業を取得できるかという問題と、育児休業給付金を受給できるかという問題です。
一般にはどちらも「育休」「育休手当」とひとまとめにされやすいため、ここを混同している方はかなり多いです。
育児休業は、育児・介護休業法に基づき、一定の条件を満たす労働者が子を養育するために会社を休業できる制度です。
一方、育児休業給付金は雇用保険から支給される給付です。
会社が自社の判断で支給する手当ではありません。
| 制度 | 主な内容 | 主な確認事項 | 主な関係先 |
|---|---|---|---|
| 育児休業 | 子を養育するため会社を休業する制度 | 対象者、労使協定、雇用契約など | 勤務先 |
| 育児休業給付金 | 休業中の収入減少を補う雇用保険の給付 | 雇用保険期間、勤務実績、休業中の就業など | 勤務先・ハローワーク |
そのため、会社から「育児休業は取得できます」と言われたとしても、それだけで育児休業給付金の受給資格が確定するわけではありません。
逆に、雇用保険の加入期間が十分にあるとしても、それだけで現在の勤務先における育児休業の取得条件を満たすと判断するものでもありません。
「休めるか」と「休んでいる間に給付金を受け取れるか」は、別々に確認してください。
この違いが特に大きく表れるのが、転職後1年未満のケースです。
育児休業の取得では、現在の勤務先で勤続1年未満を除外する労使協定があるかが問題になります。
一方、育児休業給付金については、一定の条件を満たせば転職前の雇用保険の被保険者期間まで通算して確認できる場合があります。
たとえば、現在の会社に入社して9か月の方を考えてみましょう。
会社に勤続1年未満を除外する労使協定がなければ、育児休業自体は取得できる可能性があります。
しかし、初めて就職した会社で勤務9か月しかなく、育休開始前の雇用保険の被保険者期間が不足していれば、育児休業給付金は受給できない可能性があります。
逆に、転職前の会社で長期間雇用保険に加入しており、前職の期間を通算できる場合には、育児休業給付金の被保険者期間の要件を満たせることがあります。
しかし、現在の会社に勤続1年未満を除外する労使協定があれば、育児休業そのものについて別途確認が必要です。
「育休が取れる=育休手当が必ずもらえる」ではありません。
取得可否と給付金の受給資格は、制度の根拠も確認方法も異なります。
会社の人事担当者側でも、この2つを明確に分けて説明したほうがよいでしょう。
「育休は取得できます」と案内した後で給付金の要件を満たさないことが判明すると、従業員は休業中の収入を前提に家計を組んでいることがあります。
実務では、育児休業の申出を受けた段階で、休業取得の要件と雇用保険の加入履歴を並行して確認しておくと安心です。
育児休業給付金の制度全体や申請方法については、 雇用保険育児休業給付金の条件と申請方法 で詳しく整理しています。
育児休業給付金の受給要件
育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が一定の条件を満たして育児休業を取得した場合に支給される給付金です。
勤続1年未満の方が特に確認したいのが、 育児休業を開始する前の雇用保険の被保険者期間 です。
基本的な受給要件の一つとして、育児休業を開始した日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あることが必要です。
賃金支払基礎日数が11日以上ある月だけでは12か月に満たない場合には、賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある月についても確認します。
給付金では「現在の会社で1年間働いたか」そのものではなく、育児休業開始前の一定期間に必要な雇用保険の被保険者期間があるかを確認します。
このため、現在の会社に入社して10か月しか経過していないからといって、その時点で「育児休業給付金は受給できない」と決まるわけではありません。
前職で雇用保険に加入していた場合には、一定の条件のもとで前職の被保険者期間を通算できることがあります。
一方、学校卒業後に初めて就職し、入社後数か月で育児休業に入るような場合には、それ以前の雇用保険期間がないため、必要な12か月を満たせない可能性があります。
| ケース | 給付金で確認するポイント |
|---|---|
| 現在の会社で1年以上勤務 | 休業開始前2年間の対象月を確認 |
| 転職後1年未満 | 前職の雇用保険期間を通算できるか確認 |
| 初めて就職して1年未満 | 対象月が12か月に達するか確認 |
| 長期の休職等がある | 確認期間を延長できる場合がある |
さらに、育児休業給付金は被保険者期間だけ満たせばよい制度ではありません。
育児休業中の各支給単位期間について、就業日数が10日以下であることが基本です。
10日を超えて就業した場合でも、就業時間が80時間以下であれば支給対象になり得ます。
また、育児休業中に会社から賃金が支払われている場合には、その金額によって給付金が減額されたり、支給されなかったりすることがあります。
そのため、育休中に「少しだけ在宅で仕事をした」「会社から数日だけ出勤してほしいと言われた」という場合にも、勤務記録をきちんと残しておく必要があります。
賃金支払基礎日数は、単純に「出勤した日数」と一致するとは限りません。
月給制、日給制、時給制、欠勤や有給休暇の扱いなどによって確認が必要です。
給与明細だけで対象月を自己判断せず、必要に応じて賃金台帳や出勤簿まで確認してください。
また、育児休業開始前2年間に対象となる月が12か月ない場合でも、その期間中に本人の疾病や第1子の育児休業などによって引き続き30日以上賃金の支払いを受けられなかった期間があると、確認期間を延長して受給要件を判定できる場合があります。
さらに、女性が産前休業から引き続き育児休業に入る場合などには、一定の場合に産前休業開始日等を基準に改めて受給資格を確認できる仕組みもあります。
このあたりは、「休業開始前2年間だけ見て12か月なければ終わり」と単純に判断しないことが大切です。
厚生労働省では、現在の育児休業給付金について、休業開始前2年間の被保険者期間、休業中の就業日数・時間などの支給要件を案内しています。
2人目の育児休業で、1人目の育児休業から職場復帰して1年未満の場合は、単純な「復帰後の勤務月数」だけでは判断できません。
詳しくは、 育児休業給付金は2人目で復帰1年未満でも対象か で整理しています。
給付金は育児休業中の生活設計に直結します。
取得できるかどうかだけではなく、育休に入る前に受給資格まで確認しておくことをおすすめします。
転職前の雇用保険期間の扱い

転職してから1年未満で育児休業を取得する場合、育児休業給付金の受給可否を判断するうえで非常に重要になるのが、 前職の雇用保険期間を通算できるか という点です。
現在の勤務先だけを見ると、育児休業開始前に10か月しか勤務しておらず、「12か月に2か月足りないから給付金は受けられない」と考えてしまうかもしれません。
しかし、一定の条件を満たす場合には、前職で雇用保険に加入していた期間を含めて受給資格を確認できる可能性があります。
転職したからといって、雇用保険の加入実績が必ずゼロからやり直しになるわけではありません。
たとえば、前職で3年間雇用保険に加入して勤務し、退職後ほとんど期間を空けずに現在の会社へ転職し、10か月勤務した後に育児休業へ入るケースを考えてみましょう。
一定の条件を満たして前職の被保険者期間を通算できれば、現在の会社での10か月だけではなく、前職期間を含めて受給資格を確認することができます。
一方で、どのような転職でも無条件に前職期間を使えるわけではありません。
代表的なポイントの一つが、前職を離職してから再就職するまでの期間です。
前職の離職日の翌日から現在の会社へ再就職する日の前日までの期間が1年を超えている場合には、前職期間を通算できないことがあります。
また、前職の離職後に雇用保険の 基本手当の受給資格決定 を受けている場合には、その受給資格決定より前の被保険者期間を育児休業給付金の受給資格判定に使えないことがあります。
重要なのは「失業給付を実際に何日分受け取ったか」だけではありません。
基本手当の受給資格決定を受けたかどうかが確認ポイントになります。
そのため、転職歴がある方は、次の情報を一度整理してみてください。
- 前職の退職日
- 現在の会社の入社日
- 前職で雇用保険に加入していた期間
- 前職退職後にハローワークで基本手当の手続きをしたか
- 基本手当の受給資格決定を受けたか
- 現在の育児休業開始予定日
- 現在の雇用保険被保険者番号
雇用保険被保険者番号は、原則として転職しても同じ番号を引き継ぎます。
ただし、実務では前職の被保険者番号が分からず、新しい会社で別の番号が取得されているケースなどもあります。
この場合には、ハローワークで記録を統合する手続きが必要になることがあります。
会社側が育児休業給付金の初回申請を準備するときには、賃金台帳や出勤簿だけを確認するのではなく、現在の会社だけでは被保険者期間が不足する場合に前職期間を利用できないか確認することが大切です。
| 状況 | 前職期間の考え方 |
|---|---|
| 退職後すぐに再就職 | 一定の条件を満たせば通算できる可能性あり |
| 離職から再就職まで長期間空いた | 通算できない可能性あり |
| 基本手当の受給資格決定あり | 原則として決定前の期間は使えない |
| 現在の会社だけで12か月以上ある | 前職期間を確認しなくても要件を満たす場合あり |
実際の相談で「転職後11か月なので、あと1か月足りないですよね」と言われても、私はその11か月だけでは判断しません。
前職の退職日と現職の入社日、前職の雇用保険加入期間、失業給付に関する手続きの有無まで見ます。
そこまで確認すると、本人が「対象外だと思っていた」ケースでも受給資格を満たしていることがあります。
逆に、前職で長く勤務していたから必ず通算できるというものでもありません。
雇用保険の記録は個々の経歴によって結論が変わります。
転職歴があり、自分で判断しにくい場合は、会社の人事・労務担当者に前職期間があることを伝えたうえで確認してください。
必要に応じてハローワークで被保険者記録を確認するのが確実です。
育児休業は1年未満でもまず確認する
育児休業は、入社や転職から1年未満であっても原則として取得の対象になり得ます。
2022年4月の育児・介護休業法改正によって、有期雇用労働者について設けられていた法律上の勤続1年以上という取得要件は撤廃されました。
そのため、「入社1年未満だから育児休業は一切取得できない」という理解は現在の制度とは異なります。
ただし、 勤務先が労使協定を締結し、継続雇用1年未満の従業員を対象外としている場合には、育児休業の申出を拒まれる可能性があります。
さらに、有期雇用労働者の場合には、子が1歳6か月になるまでに雇用契約が終了し、更新されないことが明らかでないかも確認する必要があります。
つまり、育児休業1年未満のケースでは、「何か一つの条件を見れば答えが出る」のではなく、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
- 現在の会社に勤続1年未満を除外する労使協定があるか
- 育児休業申出日時点で勤続期間が何か月になるか
- 有期雇用の場合は契約終了が明らかになっていないか
- 育児休業の開始予定日と申出期限に問題がないか
- 育児休業給付金の雇用保険要件を満たすか
- 転職歴がある場合は前職期間を通算できるか
特に重要なのは、 育児休業の取得条件と育児休業給付金の受給条件を混同しないこと です。
育児休業の取得可否については、育児・介護休業法と現在の会社の労使協定、雇用契約などを確認します。
一方、育児休業給付金については、雇用保険の被保険者期間や休業中の就業状況などを確認します。
| 確認したいこと | 最初に見るもの |
|---|---|
| 育休を取得できるか | 育児・介護休業規程、労使協定、雇用契約 |
| 勤続1年未満で除外されるか | 労使協定、入社日、育児休業申出日 |
| 給付金を受給できるか | 雇用保険加入履歴、賃金台帳、出勤簿 |
| 前職期間を使えるか | 前職退職日、現職入社日、基本手当の手続状況 |
会社から育児休業の取得を認められたとしても、雇用保険の被保険者期間が不足していれば育児休業給付金を受給できないことがあります。
反対に、前職を含めれば給付金の被保険者期間を満たしそうでも、現在の勤務先に勤続1年未満を除外する労使協定があれば、まず育児休業そのものの取得可否を確認しなければなりません。
従業員側であれば、出産直前になって初めて確認するのではなく、妊娠・出産の予定が分かった段階で会社へ相談しておくことをおすすめします。
その際には、「育休を取れますか」だけではなく、「勤続1年未満を除外する労使協定がありますか」「育児休業給付金の受給資格も確認できますか」と分けて聞くと、必要な確認が進みやすくなります。
企業側も、単に「入社1年未満」という情報だけで回答するのは避けましょう。
私が実務で確認するときも、入社日だけではなく、育児休業の申出日、開始予定日、雇用契約、労使協定、雇用保険の加入履歴まで一つずつ整理します。
制度を分解して確認すれば、それほど複雑ではありません。
「1年」という言葉が何を意味しているかを分けることがポイントです。
育児休業では現在の会社との継続雇用期間と労使協定が問題になり、育児休業給付金では休業開始前の雇用保険の被保険者期間が問題になります。
入社や転職から1年未満だからといって、育児休業や給付金を最初から諦める必要はありません。
一方で、「法改正されたから絶対に大丈夫」と決めつけるのも適切ではありません。
あなたの勤務先にどのような労使協定があるのか、これまでの雇用保険加入期間がどうなっているのかを具体的に確認することが大切です。
育児・介護休業法や雇用保険制度は改正されることがあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別の雇用契約、労使協定、育児休業の申出時期、雇用保険加入履歴によって判断が異なる場合があるため、最終的な判断は専門家にご相談ください。