こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
有給が6割しか出ない場合でも、すぐに違法と決まるわけではありません。
会社が就業規則で平均賃金方式を定め、法律に沿って計算した結果として、通常勤務日の賃金より低く見え、6割相当になることがあります。
ただし、会社独自のルールで一律に減額している場合や、計算方法が就業規則に明記されていない場合は、実務上かなり注意が必要です。
給与明細を見て「あれ、少ないかも」と感じるのは自然なことですし、会社側も説明できる状態にしておかないと、従業員との信頼関係に影響することがあります。
この記事では、従業員側の不安にも触れながら、会社側が確認すべきポイントを社労士の実務目線で整理します。
中小企業では迷いやすいポイントなので、制度の基本、計算方法、違法になりやすい例、相談先まで順番に見ていきましょう。
- 有給が6割支給になる主な理由
- 違法になるケースと適法なケース
- 就業規則や給与明細の確認ポイント
- 会社と従業員が取るべき実務対応

有給が6割しか出ない理由

まず確認したいのは、有給休暇の日の賃金には、法律上いくつかの計算方法があるという点です。
特にパート、アルバイト、シフト制、日給制の方では、平均賃金方式の計算結果が通常勤務日の賃金より低く見え、有給が6割しか出ないと感じる相談が実際によくあります。
ここでは、違法かどうかを判断する前提として、有給休暇中の賃金の考え方を整理していきます。
6割支給は違法なのか

有給休暇を取得した日に支払われる賃金が、普段働いた日の金額より少ないと、従業員側としては「有給なのに減らされているのでは」「会社が勝手に6割にしているのでは」と不安になりますよね。
給与明細を見た瞬間に違和感を持つのは、かなり自然な反応だと思います。
会社側としても、従業員から質問を受けたときに、制度をきちんと理解していないと説明があいまいになり、かえって不信感につながることがあります。
結論からいうと、 平均賃金方式を就業規則に定め、法律に沿って正しく計算した結果として6割相当になっている場合は、直ちに違法とはいえません 。
有給休暇中の賃金は、法律上、通常勤務した場合の賃金を必ずそのまま払う方法だけに限定されているわけではありません。
平均賃金方式を採用している場合には、直近3か月の賃金や暦日数、労働日数をもとに計算するため、結果として通常の1日分の賃金より低くなることがあります。
ただし、ここで大事なのは「6割なら何でもよい」という話ではないことです。
会社が「うちは有給は一律6割です」「パートは有給を半額で払います」「アルバイトは有給を通常時給の80%にします」といった独自のルールで運用している場合は、法律で認められた計算方法に基づいているかを確認しなければなりません。
実務上、昔からの慣習で処理している会社ほど、この点が抜けやすいです。
労働基準法では、有給休暇中の賃金について、平均賃金、通常の賃金、標準報酬日額を基準とする方法のいずれかによる支払いが予定されています。
年次有給休暇を取得した日の賃金については、厚生労働省の事業者向けQ&Aでも、3つの方法のいずれかにより支払う必要があると説明されています(出典: 厚生労働省「年次有給休暇を取得した日の賃金について」 )。
つまり、判断の順番としては、まず「会社がどの計算方法を採用しているか」を確認し、次に「その方法が就業規則などに書かれているか」を確認し、最後に「実際の計算がそのルールどおりか」を見ることになります。
ここを飛ばして、金額だけを見て違法か適法かを判断するのは危ないです。
実務上のポイント
6割という数字だけで違法か適法かは判断できません。
確認すべきなのは、就業規則にどの計算方法が定められているか、実際の計算がその方法どおりに行われているかです。
会社側は説明できる根拠を残し、従業員側は給与明細だけでなく計算根拠まで確認するとよいですよ。
会社側が最初に見るべき資料
会社側でまず確認する資料は、就業規則、賃金規程、雇用契約書、賃金台帳、勤怠記録です。
有給休暇の賃金計算は、給与計算ソフトの設定だけで完結するものではありません。
規程上の定めと、実際の給与計算が合っているか。
ここが重要です。
有給休暇の賃金計算方法
労働基準法では、有給休暇中の賃金について、主に3つの方法が認められています。
会社は、どの方法で支払うのかを就業規則や賃金規程に定め、その定めに沿って運用する必要があります。
ここがあいまいだと、従業員から見れば「なぜこの金額なのか」が分かりませんし、会社側も説明に困ってしまいます。
少しややこしいところですが、ここを押さえると有給が6割しか出ないと感じる理由がかなり見えやすくなります。
| 計算方法 | 概要 | 実務上の特徴 | 起こりやすい誤解 |
|---|---|---|---|
| 通常賃金方式 | その日に所定労働時間働いたものとして通常どおり賃金を支払う方法 | 月給制の正社員で多く使われる | 有給を取っても給与が変わらないため、問題になりにくい |
| 平均賃金方式 | 原則として直近3か月の賃金をもとに平均賃金を計算する方法 | シフト制、日給制、時給制などで使われることがある | 通常勤務日の賃金より低く見え、6割支給と感じやすい |
| 標準報酬日額方式 | 健康保険の標準報酬月額を30で割った額を基準にする方法 | 労使協定が必要で実務上は少ない | 採用には手続きが必要な点が見落とされやすい |
通常賃金方式は、所定労働時間を働いたものとして賃金を支払う方法です。
月給制の正社員では、この方法が採用されている会社が多い印象です。
たとえば月給制で、毎月の給与が固定されている場合、有給を1日取っても月給がそのまま支払われるため、従業員側も「有給で給与が減った」と感じにくいです。
説明もシンプルなので、中小企業では運用しやすい方法かなと思います。
一方、平均賃金方式は、直近3か月の賃金総額をもとに計算する方法です。
通常賃金方式と違い、実際にその日に働く予定だった時間分をそのまま払う考え方ではありません。
直近3か月の賃金や日数を使うため、残業が多い月、シフトが少ない月、欠勤があった月などが含まれると、結果が従業員の感覚とずれることがあります。
ここが「有給なのに少ない」と感じやすいポイントです。
標準報酬日額方式は、健康保険法の標準報酬月額を30で割った額を基準にする方法です。
ただし、この方法を使うには、就業規則への記載だけでなく、労働者の過半数代表者などとの書面による労使協定が必要です。
実務上はあまり見かけませんが、制度としては存在します。
会社側で特に大切なのは、 どの方法を採用するかをその都度バラバラに選べない という点です。
ある従業員には通常賃金方式、別の従業員には平均賃金方式、といった運用をする場合でも、就業規則や賃金規程で対象者や計算方法を明確に整理しておく必要があります。
給与計算担当者の判断で毎回有利・不利を見て選ぶような運用は、トラブルのもとです。
中小企業でよくある実務の迷い
月給者は通常賃金方式、時給者は平均賃金方式という運用をしている会社もあります。
この運用自体が直ちに問題というわけではありませんが、就業規則で対象者と計算方法が分かるようになっているかが大事です。
従業員に説明できないルールは、現場でかなり揉めやすいですよ。
また、賃金計算方法は一度決めれば永久に見直さなくてよいものではありません。
従業員構成が変わったり、パート・アルバイトが増えたり、シフト制を導入したりすると、従来の規定では実態に合わなくなることがあります。
給与計算の正確性だけでなく、従業員への説明のしやすさも含めて、定期的に確認した方が安心です。
平均賃金方式の仕組み

有給が6割しか出ないと感じる場面で、特に関係しやすいのが平均賃金方式です。
平均賃金は、原則として直近3か月間に支払われた賃金総額を、その期間の総暦日数で割って計算します。
ここでいう暦日数とは、実際に働いた日だけではなく、休日も含めたカレンダー上の日数です。
たとえば3か月で92日あるなら、働いた日数が50日でも、まずは92日で割る考え方になります。
この時点で、時給制や日給制の方には少し違和感が出やすいです。
なぜなら、働いていない休日まで含めて割るため、1日あたりの金額が低く見えるからです。
そこで、日給制、時間給制、出来高払制などの場合には、通常の平均賃金だけでは低くなりすぎることを防ぐため、労働日数をもとにした最低保証額も計算します。
そして、通常の平均賃金と最低保証額を比較し、高い方を使います。
平均賃金方式の基本イメージ
- 通常の平均賃金は、直近3か月の賃金総額を暦日数で割って計算
- 最低保証額は、直近3か月の賃金総額を労働日数で割り、60%を掛けて計算
- 実際には、通常の平均賃金と最低保証額のうち高い方を使う
たとえば、直近3か月の賃金総額が30万円、対象期間の暦日数が92日、労働日数が50日の場合を考えます。
通常の平均賃金は30万円を92日で割るため、約3,261円です。
一方、最低保証額は30万円を50日で割り、さらに60%を掛けるため3,600円です。
この場合は、3,600円の方が高いため、有給1日分の賃金として3,600円が使われます。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 通常の平均賃金 | 300,000円 ÷ 92日 | 約3,261円 |
| 最低保証額 | 300,000円 ÷ 50日 × 60% | 3,600円 |
| 有給1日分の支給額 | 高い方を採用 | 3,600円 |
この例では、通常の勤務日に6,000円程度の賃金を受け取っている方から見ると、有給1日分が3,600円なので「6割しか出ない」と感じます。
これは感覚としては当然です。
ただ、会社が平均賃金方式を適法に採用していて、計算も正しく行っているのであれば、法律上予定されている計算結果としてそうなることがあります。
ただし、平均賃金の計算で何を賃金総額に含めるのか、どの3か月を対象にするのか、産休・育休・欠勤・休業などの期間が含まれる場合にどう扱うのかは、個別に確認が必要です。
特に、支給日ベースで見るのか、算定事由発生日以前3か月で見るのかなど、給与計算の現場では細かい論点が出てきます。
会社側が「だいたいこのくらい」で処理してしまうと、後から説明ができなくなります。
また、平均賃金方式は必ず従業員に不利になるわけではありません。
直近3か月に残業代や手当が多く含まれている場合には、通常賃金方式より高くなることもあります。
ここも誤解されやすいところです。
平均賃金方式は「6割にするための制度」ではなく、一定期間の賃金実績をもとに1日あたりの賃金を計算する制度。
結果として低く見えることもあれば、高くなることもあります。
説明するときのコツ
従業員へ説明するときは、「法律で6割だからです」と言うより、「当社は平均賃金方式で、直近3か月の賃金と日数をもとに計算しています」と伝えた方が誤解が少ないです。
6割という言葉だけが一人歩きすると、かなり不信感が出やすいですよ。
パートやアルバイトの注意点
パートやアルバイトでは、月によって勤務日数や勤務時間が変わることが珍しくありません。
シフトが多い月もあれば、少ない月もありますし、本人の都合で勤務日を減らす月もあります。
繁忙期と閑散期で勤務時間が大きく変わる職場もありますよね。
こうした働き方では、平均賃金方式の計算結果が、従業員本人の感覚とずれやすくなります。
特に時給制の場合、従業員側は「有給を取った日は、本来入っていたシフトの時間分が出るはず」と考えやすいです。
たとえば、通常なら6時間勤務の予定だった日に有給を取った場合、時給1,000円なら6,000円が支払われると思う方は多いです。
これは通常賃金方式なら近い考え方になりますが、会社が平均賃金方式を採用している場合は、実際のシフト予定時間ではなく、直近3か月の賃金や日数を基準に計算します。
そのため、シフト制のパートやアルバイトでは、同じ有給1日でも、本人が想像していた金額と実際の支給額が違うことがあります。
たとえば、直近3か月のうち1か月だけ勤務日数が少なかった場合、平均賃金の計算に影響することがあります。
逆に、直近3か月に残業や長時間勤務が多かった場合は、普段より高く見えることもあります。
一定ではない働き方だからこそ、説明が必要なんです。
会社側は、採用時や雇用契約書の説明時に、有給休暇の付与日数だけでなく、 有給取得日の賃金をどの方法で計算するのか も確認しておくとトラブルを防ぎやすくなります。
採用時によく確認しますが、有給の日数や取得方法は説明していても、賃金計算方法までは説明できていない会社が少なくありません。
後から給与明細を見て質問が出る典型例です。
注意点
パートやアルバイトだから有給を6割にしてよい、という考え方ではありません。
雇用形態に関係なく、法律で認められた計算方法に沿って支払う必要があります。
時給者だから低くしてよい、短時間勤務だから有給を軽く扱ってよい、ということではありません。
シフト制で説明不足になりやすい場面
シフト制で特に揉めやすいのは、「有給を取った日が何時間勤務扱いになるのか」という点です。
通常賃金方式なら、所定労働時間をどう見るかが問題になります。
平均賃金方式なら、その日のシフト時間ではなく平均賃金が基準になるため、従業員の期待額と差が出ます。
会社側は、勤務予定表、有給申請書、給与計算のルールがつながっているかを確認しておくとよいです。
また、パートやアルバイトの有給休暇では、比例付与のルールも関係します。
週の所定労働日数や年間の所定労働日数によって、有給休暇の日数が変わることがあります。
日数の管理と賃金計算は別の論点ですが、現場ではまとめて質問されることが多いです。
会社側は、付与日数、取得単位、賃金計算方法をセットで説明できるようにしておくと、かなり安心です。
実務でよくある相談
「パートさんから有給の金額が少ないと言われた」という相談は実際によくあります。
多くの場合、制度そのものが間違っているというより、就業規則の記載、給与明細の表示、事前説明のどこかが不足しています。
計算が合っていても、説明が足りないとトラブルになる。
ここが実務の難しいところです。
休業手当との違い

有給が6割しか出ないという相談では、休業手当の60%と混同されているケースもよくあります。
どちらも6割という数字が出てくるため、従業員側だけでなく、会社側の担当者も混乱しやすいところです。
「有給も休業手当も、結局60%でいいんですよね」と聞かれることがありますが、これはかなり危ない理解です。
制度の目的も、発生する場面も、根拠条文も違います。
有給休暇の賃金は、従業員が年次有給休暇を取得した日に、会社がどのように賃金を支払うかという問題です。
労働基準法第39条に基づき、通常賃金方式、平均賃金方式、標準報酬日額方式のいずれかで支払います。
一方、休業手当は、会社側の責任で従業員を休ませた場合に、平均賃金の60%以上を支払う制度です。
根拠は労働基準法第26条です。
つまり、有給休暇は従業員が持っている休暇の権利を使う場面であり、休業手当は会社都合で働けなかった場面の生活保障に近い制度です。
どちらも賃金に関係しますが、まったく同じものではありません。
ここを混同してしまうと、社内説明が不正確になりますし、場合によっては給与計算そのものを誤る可能性もあります。
| 項目 | 有給休暇の賃金 | 休業手当 |
|---|---|---|
| 根拠 | 労働基準法第39条 | 労働基準法第26条 |
| 発生場面 | 従業員が年次有給休暇を取得した日 | 会社都合で従業員を休業させた日 |
| 支払方法 | 通常賃金、平均賃金、標準報酬日額のいずれか | 平均賃金の60%以上 |
| 6割の意味 | 平均賃金方式の最低保証計算で出ることがある | 休業手当として最低限支払う割合 |
| よくある誤解 | 有給は必ず6割でよいと思ってしまう | 有給の計算にもそのまま使えると思ってしまう |
社内説明をするときは、「有給だから休業手当の60%を払っています」という説明は避けた方がよいです。
制度が違うため、説明として不正確ですし、従業員から「では休業扱いなのですか」「有給ではないのですか」と聞かれたときに答えづらくなります。
正しくは、「当社では有給休暇中の賃金を平均賃金方式で計算しており、その最低保証計算の結果としてこの金額になっています」という説明になります。
また、会社都合の休業が発生したときに、従業員へ有給休暇を使わせるような運用にも注意が必要です。
従業員本人が希望して有給を使う場合と、会社が休業手当の支払いを避けるために有給を使わせる場合では、実務上の意味合いが違います。
従業員の有給休暇は本人の権利ですから、会社都合の休業処理と混ぜてしまうと、後で大きなトラブルになることがあります。
覚え方
有給休暇は「休暇を取った日の賃金」、休業手当は「会社都合で働けなかった日の補償」です。
同じ6割という数字が出てきても、制度は別物。
ここは会社の担当者ほどしっかり区別しておきたいポイントです。
労働基準法の条文を確認する場合は、年次有給休暇、休業手当、不利益取扱いの根拠をまとめて確認できるe-Gov法令検索が便利です(出典: e-Gov法令検索「労働基準法」 )。
ただし、条文だけを読んでも実務上の判断が難しいことは多いので、具体的な運用は個別に確認した方がよいかなと思います。
有給が6割しか出ない時の実務確認

ここからは、会社側の実務担当者や経営者が実際に確認すべきポイントを整理します。
従業員から問い合わせを受けたときは、感覚的に説明するのではなく、就業規則、賃金規程、給与明細、賃金台帳を順番に確認することが大切です。
従業員側も、会社に確認するときは「なぜ少ないのですか」だけでなく、「どの計算方法ですか」と聞くと話が進みやすいですよ。
就業規則で確認する内容
最初に確認すべきなのは、就業規則や賃金規程に有給休暇中の賃金計算方法が明記されているかどうかです。
労働基準法上、有給休暇中の賃金については、法律で認められた方法に基づいて支払う必要があります。
そして、会社がどの方法を採用するのかは、就業規則などであらかじめ定めておくことが実務上とても重要です。
ここが書かれていない会社は意外とあります。
就業規則には「年次有給休暇を与える」と書いてあるけれど、有給取得日の賃金をどう払うかまでは書いていない。
あるいは、正社員用の規定には書いてあるけれど、パートタイマー就業規則には書いていない。
こういうケースは、中小企業では珍しくありません。
実務上は、次のような記載があるかを確認します。
- 有給休暇中の賃金を通常賃金方式で支払うのか
- 平均賃金方式で支払うのか
- 標準報酬日額方式を使う場合、労使協定があるのか
- 正社員、パート、アルバイトで計算方法が違うのか
- 所定労働時間が変動する従業員の扱いが整理されているのか
- 給与計算の実務が規定と一致しているのか
就業規則に計算方法が書かれていないまま、給与計算ソフトや過去の慣行だけで処理している会社もあります。
この場合、従業員から説明を求められたときに根拠を示しにくくなります。
計算がたまたま合っていたとしても、「会社のルールとしてどこに書いてありますか」と聞かれると困るわけです。
また、就業規則に書いてあっても、従業員に周知されていなければ問題になります。
就業規則は作成して保管しておけば終わりではありません。
従業員が確認できる状態にしておく必要があります。
紙で備え付ける、社内共有フォルダに置く、クラウドで閲覧できるようにするなど、会社の実態に合った方法で周知することが大切です。
有給休暇の付与や管理については、同じ有給制度の実務として、 有給1年目の付与日数と入社半年後の条件 もあわせて確認しておくと、制度全体を整理しやすくなります。
有給の話は、付与日数、取得義務、賃金計算、時季変更権などがつながっているため、1つだけ見ても全体像がつかみにくいんですよ。
会社側の確認ポイント
有給の賃金計算は、給与計算担当者だけの問題ではありません。
就業規則、雇用契約書、勤怠管理、給与計算がつながっているかを確認することが大切です。
規程に書いてある内容と、実際の給与計算が違っている場合は、早めに見直した方がよいです。
規程を見直すときの実務感覚
規程を見直すときは、単に「平均賃金で支払う」とだけ書くのではなく、対象者や計算の考え方が現場で分かるようにしておくと便利です。
もちろん、細かすぎる計算式を全部書き込むと運用が硬直化することもありますが、少なくとも通常賃金方式なのか平均賃金方式なのかは明確にしておくべきです。
会社の規模が小さいうちほど、こういう基本整備が後で効いてきます。
賃金台帳と給与明細の見方

従業員から「有給が6割しか出ていないのでは」と相談された場合、給与明細だけを見ても正確に判断できないことがあります。
給与明細には、有給取得日数や有給手当の金額が表示されていても、その計算に使った直近3か月の賃金総額、暦日数、労働日数までは表示されていないことが多いからです。
ここ、かなり見落とされがちです。
会社側では、賃金台帳、勤怠記録、給与計算資料を照合し、どの期間を対象にして計算したのかを説明できるようにしておく必要があります。
従業員側も、給与明細の有給欄だけで判断せず、計算根拠を会社に確認するのが現実的です。
「金額が少ない気がします」ではなく、「有給取得日の賃金は通常賃金方式ですか、平均賃金方式ですか」と聞くと、確認がかなり具体的になります。
実務では、次のようなズレがトラブルの原因になりやすいです。
- 有給取得日の単価が通常勤務日の時給と違う
- 直近3か月に欠勤やシフト減が含まれている
- 残業代や各種手当をどこまで含めているか不明確
- 給与明細に計算根拠が表示されていない
- 就業規則上の計算方法と給与ソフトの設定が違う
- パート、アルバイト、日給者で処理が統一されていない
平均賃金方式を使う会社では、従業員から質問されたときに「法律で決まっています」とだけ伝えるのでは不十分です。
どの賃金を合計し、どの日数で割り、なぜその金額になるのかを具体的に説明できる状態にしておくと、納得感が高まります。
もちろん、すべての従業員に毎回詳細な計算表を渡す必要まではないかもしれませんが、問い合わせがあったときに資料を出せる状態は必要です。
| 確認資料 | 見るポイント | よくあるミス |
|---|---|---|
| 給与明細 | 有給日数、有給手当、欠勤控除の有無 | 有給なのに欠勤控除が残っている |
| 賃金台帳 | 直近3か月の賃金総額、手当、残業代 | 算定に含めるべき賃金が漏れている |
| 勤怠記録 | 実労働日数、所定労働日数、有給取得日 | 労働日数のカウントが給与計算と合わない |
| 就業規則 | 有給休暇中の賃金計算方法 | 規程にない方法で給与計算している |
会社側の実務としては、従業員から問い合わせがあったときに、まず給与明細の表示を確認し、次に賃金台帳と勤怠記録を見ます。
そのうえで、就業規則上の計算方法と照らし合わせます。
給与計算ソフトの設定だけ見ても、根拠としては弱いです。
ソフトはあくまで道具なので、設定が規程と合っているかを人が確認しなければなりません。
また、従業員側の立場では、感情的に「違法ですよね」と詰めるより、まず資料を確認する方が話が進みます。
会社側も、従業員から質問されたときに防御的になりすぎず、「計算方法を確認して説明します」と対応するだけで、かなり印象が変わります。
労務トラブルは、制度の問題だけでなく、説明不足から大きくなることが多いです。
説明資料を残しておくメリット
平均賃金方式を採用している会社では、有給取得日の賃金計算について、簡単な計算メモを残しておくと便利です。
後から同じ従業員に説明する場合、担当者が変わった場合、労働基準監督署から確認された場合にも役立ちます。
記録。
地味ですが大事です。
最低賃金を下回る場合
有給休暇中の賃金を計算した結果、金額が低く見える場合でも、最低賃金との関係は慎重に確認が必要です。
最低賃金は都道府県ごとに定められており、改定されることがあります。
特に時給制のパートやアルバイトでは、有給取得日の賃金を時間換算したときに、最低賃金との関係で問題がないかを確認しておくことが大切です。
最低賃金との関係は、単に「1日分の有給手当が少ないから違法」と直結するわけではありません。
賃金形態や計算方法、所定労働時間、対象となる賃金の範囲を見ながら判断する必要があります。
ただ、会社側の実務としては、最低賃金が改定されたタイミングで、通常の時給だけでなく、有給休暇中の賃金計算にも影響がないか確認しておいた方が安心です。
特に注意したいのは、最低賃金ギリギリで雇用しているパート・アルバイトが多い職場です。
飲食業、小売業、介護、清掃、製造補助など、時給制の従業員が多い業種では、最低賃金の改定によって給与単価を見直すことがあります。
その際、有給取得日の賃金計算だけ古い設定のままになっていると、思わぬトラブルにつながることがあります。
最低賃金は変動します
最低賃金額は都道府県ごとに異なり、改定されることがあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
特に給与計算ソフトの単価設定、雇用契約書の時給、就業規則の賃金規定は、改定時期にあわせて見直すのがおすすめです。
会社側が確認したい実務ポイント
会社側では、最低賃金改定の時期に、対象者の時給、月給者の時間換算額、固定残業代を含む賃金設計、有給休暇中の賃金計算をまとめて確認するとよいです。
最低賃金は通常の労働時間に対する賃金だけを見ればよいと思われがちですが、労務管理全体に影響します。
特に、手当を含めるかどうか、除外すべき賃金がないかといった点は、個別に見ないと判断を誤ることがあります。
従業員側が確認する場合は、まず自分の都道府県の最低賃金を確認し、給与明細上の時給や有給手当がどう計算されているかを会社に聞いてみるとよいです。
ただし、平均賃金方式の場合は、単純に「有給1日分 ÷ その日の予定時間」で最低賃金を判断できるとは限りません。
勤務実態や賃金制度によって確認方法が変わるため、不安がある場合は専門家や労働相談窓口に確認するのが無難です。
実務上は、最低賃金の問題と有給の6割問題が同時に出てくることがあります。
たとえば、もともとの時給が低めで、シフトも少なく、平均賃金方式で有給手当を計算している場合です。
このようなケースでは、会社側が「平均賃金方式だから大丈夫」とだけ考えず、最低賃金、就業規則、実際の賃金計算をあわせて確認する必要があります。
最低賃金チェックの考え方
最低賃金は毎年のように見直される可能性があります。
会社側は改定時期に給与単価だけを見るのではなく、有給休暇中の賃金計算、欠勤控除、各種手当の扱いまで確認しておくと安心です。
後回しにすると、地味にリスクが積み上がります。
独自減額が違法となる例

有給休暇中の賃金について、法律で認められていない独自ルールで減額している場合は、労働基準法違反となる可能性があります。
実務で注意したいのは、会社としては「昔からこうしている」「パートはこの扱いで統一している」「他社もこんな感じだと思う」と考えていても、法律上の根拠がない場合です。
慣習と適法性は別物です。
特に中小企業では、創業時からの給与計算ルールがそのまま残っていることがあります。
たとえば、以前の担当者が決めた計算方法をそのまま使っている、給与計算ソフトに昔設定した単価が残っている、パート用の雇用契約書に古い文言が残っている、といったケースです。
悪意がなくても、結果として法律に沿わない運用になっていることがあります。
たとえば、次のようなルールは注意が必要です。
- 有給は一律で通常賃金の半額とする
- アルバイトの有給は一律6割とする
- 有給を取った日は基本給だけ支払い、手当はすべて除外する
- 有給取得日を欠勤扱いにして賃金を支払わない
- 就業規則にない計算方法を給与計算担当者の判断で使う
- 忙しい時期に有給を取った場合だけ低い単価で計算する
- 正社員には満額支給し、パートには根拠なく低く支給する
もちろん、手当の性質や賃金体系によって、どこまでを計算に含めるかは個別に確認が必要です。
すべての手当を必ず同じように扱うとは限りません。
ただし、会社が独自に不利な計算方法を作り、従業員へ十分に周知しないまま運用することは大きなリスクになります。
特に「有給を取ると損をする」と従業員が感じる制度は、職場の不満につながりやすいです。
違法リスクが高まりやすいパターン
「一律」「慣例」「担当者判断」で有給手当を減らしている場合は要注意です。
法律で認められた計算方法に基づいているか、就業規則に書かれているか、従業員に周知されているかを必ず確認してください。
有給の制度設計や付与ルールを見直す場合は、 有給を入社後すぐ付与する制度設計と実務上の注意点 のように、就業規則との整合性を含めて確認することが重要です。
有給は賃金計算だけでなく、付与時期、前倒し付与、計画的付与、取得義務などとも関係します。
部分的に直すと、別のところで矛盾が出ることがあります。
会社がやっておきたい見直し手順
会社側で見直す場合は、まず現行の就業規則と賃金規程を確認します。
次に、実際の給与計算が規定どおりになっているかを確認します。
その後、パート・アルバイト・日給者・月給者など雇用区分ごとに、計算方法が整理されているかを見ます。
最後に、従業員へ説明できる資料や給与明細の表示を整える。
この順番が現実的です。
従業員側から見ると、会社の独自減額かどうかは、給与明細だけでは分からないことが多いです。
そのため、就業規則の該当部分や計算方法を確認することが第一歩になります。
会社に聞いても説明があいまいな場合は、労働基準監督署や専門家に相談する選択肢もあります。
対立から入るより、まず事実確認。
これが一番です。
賞与査定での不利益取扱い
有給休暇を取得したことを理由に、賞与査定や人事評価で不利益に扱うことにも注意が必要です。
労働基準法第136条では、有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないとされています。
この論点は、有給取得日の賃金そのものとは別ですが、従業員からの相談ではセットで出てくることが多いです。
たとえば、会社が有給休暇を取得した日を欠勤と同じように扱い、皆勤手当を不支給にしたり、賞与査定を機械的に下げたりする場合があります。
従業員からすれば、「有給を使っただけなのに評価が下がった」「休む権利があるのに損をした」と感じます。
これは不満が大きくなりやすいですし、会社側としても慎重に整理すべきポイントです。
一方で、賞与には会社業績、本人の成果、勤務態度、評価期間中の貢献度など、さまざまな要素が含まれることがあります。
そのため、個別の賞与査定がすべて直ちに違法といえるわけではありません。
たとえば、成果評価や業績評価の結果として賞与額が変動すること自体は、多くの会社で行われています。
ただし、 有給取得そのものを不利益評価の理由にしていないか は慎重に確認すべきです。
実務上難しいのは、評価制度の中に「出勤率」「勤怠状況」「皆勤」などの項目がある場合です。
ここで有給休暇を欠勤と同じ扱いにしてしまうと、従業員から見れば有給取得を理由に不利益を受けたように見えます。
会社側としては、評価項目の目的を明確にし、有給休暇の取得を直接マイナス評価にしていないか確認する必要があります。
実務家としての見方
中小企業では、賞与規程が簡素なまま運用されていることがあります。
「社長の判断」「勤務態度を総合評価」といった形です。
柔軟に見える一方で、従業員から見て有給を取ると損をする制度に見える場合は、説明方法や規程の見直しが必要になることがあります。
賞与規程で確認したい部分
賞与規程を見るときは、欠勤、遅刻、早退、有給休暇、休職、休業をどのように扱っているかを確認します。
特に、算定期間中の出勤率を賞与額に反映する制度では、有給休暇を欠勤扱いにしていないかが重要です。
規程上の文言だけでなく、実際の査定シートや運用も確認する必要があります。
また、皆勤手当や精勤手当も注意が必要です。
有給休暇を取得したことを理由に皆勤手当を不支給にする運用は、トラブルになりやすいです。
会社側としては、手当の趣旨を整理し、有給取得者を不当に不利に扱っていないか確認しましょう。
従業員側も、賞与や手当が減った場合には、すぐに感情的になるのではなく、どの評価項目が理由なのかを確認するとよいです。
有給休暇は、法律上認められた労働者の権利です。
会社が人員不足で大変なこともありますし、現場の調整が難しいことも分かります。
ただ、その負担を従業員の賞与や評価にそのまま反映してしまうと、制度としてかなり危うくなります。
会社側は、取得しやすい仕組みと公正な評価制度を両立させることが大事です。
労働基準監督署への相談

従業員側が会社へ確認しても説明が不十分な場合や、会社側が自社の運用に不安を感じる場合は、外部の相談窓口を利用する方法があります。
労働基準監督署、都道府県労働局の総合労働相談コーナー、社会保険労務士、弁護士などが相談先になります。
自分だけで抱え込まなくて大丈夫です。
制度が複雑なので、確認しながら進めるのが普通です。
会社側としては、従業員が労働基準監督署へ相談に行くことを過度に恐れる必要はありません。
むしろ、疑問を放置して不信感が大きくなる前に、制度の根拠と計算内容を整理し、説明できる状態にしておくことが大切です。
説明できる状態であれば、相談が入ったとしても事実関係を落ち着いて確認できます。
従業員側が相談する場合は、給与明細、雇用契約書、就業規則の該当部分、勤務シフト、勤怠記録などを手元に準備しておくと、相談がスムーズになります。
「有給が少ない気がする」という相談だけでは、相談先も判断しづらいです。
いつ有給を取得したのか、その日の支給額はいくらか、会社はどの計算方法と説明しているのか、直近3か月の勤務状況はどうだったのか。
このあたりが分かると、かなり具体的に確認できます。
| 相談前に準備するもの | 確認できる内容 | 会社側の対応にも役立つ理由 |
|---|---|---|
| 給与明細 | 有給手当、欠勤控除、支給額 | 実際の支給内容を確認できる |
| 雇用契約書 | 時給、所定労働時間、所定労働日数 | 通常賃金方式の確認に役立つ |
| 就業規則 | 有給休暇中の賃金計算方法 | 会社の根拠規定を確認できる |
| 勤怠記録 | 労働日数、有給取得日、シフト | 平均賃金方式の確認に役立つ |
| 会社からの説明メモ | 会社がどのように説明したか | 認識のズレを整理できる |
会社側も、従業員から相談や問い合わせがあった段階で、賃金台帳や計算根拠を整理しておくことが大切です。
もし計算ミスが見つかった場合は、早めに訂正し、不足分があれば支払う対応が必要になることがあります。
ミスを認めたくない気持ちは分かりますが、労務管理では、早めに修正した方が結果的に傷が浅く済むことが多いです。
相談先を選ぶときは、何を確認したいかで変わります。
法律違反の可能性を確認したい場合は労働基準監督署や労働局、会社の規程や運用を整えたい場合は社会保険労務士、未払い賃金の請求や紛争性が強い場合は弁護士が候補になります。
会社側・従業員側のどちらであっても、事実関係を整理してから相談した方が話が早いです。
個別判断が必要です
労務問題は、就業規則の文言、賃金体系、勤務実態、過去の運用によって結論が変わることがあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
最終的な判断は専門家にご相談ください。
相談前に会社へ確認してもよいこと
従業員側であれば、いきなり外部へ相談する前に、会社へ「有給休暇中の賃金計算方法を教えてください」「就業規則のどこに書かれていますか」「今回の有給手当の計算根拠を確認できますか」と聞いてみるのもよいです。
会社側がきちんと説明してくれれば、それで解決することもあります。
逆に、説明があいまいで資料も出てこない場合は、外部相談を検討する流れになります。
有給が6割しか出ない時のまとめ
有給が6割しか出ないと感じたときは、まず違法だと決めつけるのではなく、会社がどの計算方法を採用しているかを確認することが大切です。
平均賃金方式を就業規則に定め、法律に沿って計算した結果であれば、通常勤務日の賃金より低く見えることがあります。
これは会社が勝手に6割へ減らしているというより、平均賃金方式の仕組みによってそう見える場合がある、という理解が近いです。
一方で、就業規則に計算方法がない、従業員に周知されていない、法律にない独自ルールで一律減額している、最低賃金との関係に問題があるといった場合は、実務上の見直しが必要です。
特に「有給は一律6割」「パートは半額」「昔からこの計算」という運用は、そのまま続ける前に根拠を確認した方がよいです。
なんとなくの運用。
ここが一番危ないです。
会社側は、就業規則、賃金規程、雇用契約書、給与明細、賃金台帳を一体で確認し、従業員に説明できる状態を整えておきましょう。
給与計算担当者だけで抱えるのではなく、経営者、人事担当者、現場責任者も含めて、有給休暇の基本ルールを共有しておくことが大切です。
従業員側も、給与明細だけで判断せず、計算根拠を確認することが大切です。
最後に確認したいこと
- 有給休暇中の賃金計算方法が就業規則にあるか
- 通常賃金方式、平均賃金方式、標準報酬日額方式のどれか
- 給与明細と賃金台帳の計算が一致しているか
- 最低賃金や不利益取扱いの問題がないか
- 従業員へ説明できる資料や根拠が残っているか
- パートやアルバイトにも分かりやすく説明できるか
有給休暇は、従業員にとって大切な権利であり、会社にとっても適切な労務管理が求められる制度です。
従業員が安心して有給を使えることは、職場の信頼関係にもつながります。
一方で、会社側にも給与計算を正確に行い、制度を説明できる体制を整える責任があります。
私が実務で見ていても、有給のトラブルは、悪意というより「説明不足」「規程不足」「給与計算の設定ミス」から起きることが多いです。
だからこそ、早めに確認すれば改善できるケースも多いです。
有給が6割しか出ないと感じたときは、金額だけを見るのではなく、計算方法、規程、実際の運用を順番に確認してみてください。
会社と従業員の両方に伝えたいこと
会社側は「制度どおりだから」で終わらせず、従業員に分かる言葉で説明すること。
従業員側は「少ないから違法」と決めつけず、まず計算方法を確認すること。
この2つだけでも、かなりトラブルは減らせます。
金額や制度は改定されることがあるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
個別の賃金計算、就業規則の記載、過去分の不足支給の有無、賞与査定との関係などは、会社ごとの事情によって判断が変わります。
最終的な判断は専門家にご相談ください。