こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
賞与がいつ支給されるかについて、法律で全国一律の支給日が決まっているわけではありません。
民間企業では夏の6月下旬〜7月、冬の12月に支給する会社が多いものの、最終的には勤務先の就業規則や賞与規程を確認する必要があります。
「周りの会社はもうボーナスが出たのに、自分の会社はまだ出ない」「転職したばかりだけれど、次の賞与はもらえるのか」「賞与を受け取ってから退職したい」といった疑問は、実際によくある相談です。
賞与は毎月の給与とは違い、会社によって制度設計の幅がかなり大きいため、一般的な時期だけでは判断できないケースが少なくありません。
特に注意したいのが、賞与の支給日と査定期間は別だということです。
半年間働いていても支給日に退職していれば対象外になる会社がありますし、中途入社では初回の賞与が満額にならないこともあります。
反対に、支給日直前まで実際に出勤していなくても、有給休暇を取得しながら在籍しているのであれば、支給日在籍要件を満たす可能性があります。
この記事では、夏・冬の一般的なボーナス支給時期だけでなく、中途入社、退職、支給日在籍要件、決算賞与、社会保険料や税金の控除まで、実務で迷いやすいポイントを整理して解説します。
自分の賞与がいつ支給されるのかを確認したい方はもちろん、賞与制度を運用する会社側にも役立つように整理していきます。
- 夏と冬の賞与が支給される一般的な時期
- 中途入社後に賞与の対象となるタイミング
- 退職日と賞与の支給日在籍要件の関係
- 賞与から社会保険料や税金が控除される仕組み

退職後の役所手続き全体の流れは、退職後の役所手続き全体の解説でまとめて整理しています。
賞与はいつ支給される?一般的な時期
まず押さえておきたいのは、賞与には給与のような全国共通の支給日がないという点です。
夏と冬に支給する会社が多いため一定の目安はありますが、同じ業種や地域であっても会社によって支給日は異なります。
また、「賞与年2回」と求人票に書かれていても、必ず6月と12月に支給するという意味ではありません。
7月と12月の会社もあれば、8月と12月、7月と1月といった会社もあります。
決算期や人事評価の時期、給与計算のスケジュールなどによっても支給日は変わります。
ここでは、民間企業と公務員の一般的な支給時期を確認したうえで、そもそも賞与の支給日はどのように決まり、どこを見れば自分の会社の正確な支給日が分かるのかを整理します。
夏と冬のボーナスはいつ支給される?
民間企業の賞与は、一般的には 夏が6月下旬から7月ごろ、冬が12月ごろ に支給されるケースが多くなっています。
夏季賞与、冬季賞与という呼び方が一般的ですが、会社によっては上期賞与・下期賞与、夏期手当・年末手当など別の名称を使っていることもあります。
ただし、夏は6月、冬は12月と法律で決まっているわけではありません。
6月と12月に支給する会社もあれば、7月と12月、7月と1月など、会社によって設定は異なります。
給与と同じ日に振り込む会社もあれば、給与支給日とは別の日に賞与だけ振り込む会社もあります。
また、「夏・冬の年2回」という形自体が法律で決まっているわけでもありません。
年1回だけ賞与を支給する会社もありますし、夏季賞与と冬季賞与に加えて、会社の業績が良かった年度だけ決算賞与を支給する会社もあります。
反対に、毎月の給与を厚めに設計し、そもそも賞与制度を設けていない会社もあります。
そのため、「一般的にボーナスはいつですか」という質問に対しては夏と冬という目安を示せますが、「私の会社の賞与はいつですか」という質問には、一般論だけでは答えられません。
会社ごとの就業規則、賃金規程、賞与規程などを確認する必要があります。
支給日と査定期間は分けて考える
賞与を理解するときに特に重要なのが、 支給日と査定期間は別のもの だという点です。
支給日は実際に賞与が支払われる日ですが、査定期間は賞与額を決めるために勤務実績や人事評価などを見る期間をいいます。
例えば、次のような設定が考えられます。
| 賞与 | 査定期間の例 | 支給時期の例 |
|---|---|---|
| 夏季賞与 | 前年10月〜当年3月 | 6月〜7月 |
| 冬季賞与 | 当年4月〜9月 | 12月 |
この場合、7月に支給される夏のボーナスは、直前の4月から6月までの仕事だけを評価しているわけではありません。
前年10月から3月までなど、会社が定めた査定期間の勤務実績をもとに計算されます。
この違いは、中途入社や退職を考えるときに特に重要です。
例えば4月に入社して7月に賞与支給日を迎えたとしても、夏季賞与の査定期間が前年10月から3月であれば、あなたはその査定期間中に一日も勤務していません。
そのため、7月時点では会社に在籍していても、通常の夏季賞与は対象外となり、寸志だけが支給されるという運用も考えられます。
逆に、前年10月から3月までしっかり働いていた人が4月末で退職した場合、査定期間はすべて勤務していることになります。
それでも、会社の賞与規程に「賞与は支給日に在籍する者に支給する」と定められていれば、7月の賞与を受け取れない可能性があります。
このように、賞与は「どれだけ働いたか」と「支給日に対象者になっているか」という二つの視点から見る必要があります。
賞与の時期を確認するときは、「何月にもらえるのか」だけでなく、 どの期間の勤務実績が今回の賞与に反映されているのか まで確認すると、中途入社や退職時の扱いも理解しやすくなります。
賞与の基本的な見方
- 夏は6月下旬〜7月、冬は12月が一つの目安
- 年2回とは限らず、年1回や決算賞与のみの会社もある
- 支給日と査定期間は別に確認する
- 中途入社では査定期間にどれだけ在籍したかを見る
- 退職予定者は支給日在籍要件も確認する
- 最終的な支給日は勤務先の規程を確認する
賞与については「何月に出るか」だけを見るよりも、「査定期間→評価・金額決定→支給対象者確定→支給」という流れで考えると制度全体が分かりやすくなります。
特に転職や退職のタイミングで賞与が気になっている方は、この流れを押さえておくと判断しやすいかなと思います。
公務員の賞与は6月と12月が基本

公務員の場合、民間企業のボーナスに相当するものとして「期末手当」と「勤勉手当」があります。
一般的な会社員の会話ではまとめて「公務員のボーナス」と呼ばれることが多いですが、制度上はこのような名称で支給されています。
国家公務員では、一般的に 6月30日と12月10日 が支給日となっています。
そのため、民間企業と比較すると支給時期を把握しやすいのが特徴です。
国家公務員の期末・勤勉手当については、6月と12月という支給サイクルが制度として明確にされているためです。
ただし、「公務員なら誰でも必ず同じ金額を6月30日と12月10日にもらえる」という意味ではありません。
期末手当や勤勉手当の算定には基準日や在職期間、勤務成績などが関係します。
また、採用された時期や休職期間などによっても実際の支給額は変わる場合があります。
支給日が休日等に当たる場合の取扱いや対象となる職員、実際の計算方法についても適用される法令や規則を確認する必要があります。
単に「6月30日と12月10日」という日付だけを見るのではなく、自分が支給対象者となるかまで確認することが大切です。
地方公務員についても6月と12月に期末・勤勉手当を支給する自治体が一般的ですが、具体的な支給日は自治体の条例や規則などによって定められます。
したがって、 地方公務員だから必ず全国一律で6月30日と12月10日になるとは限りません。
都道府県や市区町村の職員であれば、自分が所属する自治体の給与条例や給与担当部署の案内を確認するのが確実です。
| 区分 | 一般的な支給時期 | 確認先 |
|---|---|---|
| 民間企業 | 夏6〜7月・冬12月が多い | 就業規則・賞与規程・労働契約 |
| 国家公務員 | 6月30日・12月10日が基本 | 法令・人事院等の案内 |
| 地方公務員 | 6月・12月が一般的 | 各自治体の条例・規則 |
公務員から民間企業へ転職する場合などには、この違いに注意してください。
前職では毎年ほぼ同じ日に賞与が振り込まれていたとしても、転職先の民間企業では支給月も査定期間も全く異なることがあります。
例えば、公務員として6月末に賞与を受け取った後、7月に民間企業へ転職したとします。
転職先の冬季賞与が12月に支給されるとしても、その会社の査定期間が4月から9月であれば、あなたが勤務したのは7月から9月までの一部だけです。
支給対象になったとしても満額ではなく、在籍月数などに応じた金額になる可能性があります。
反対に、民間企業から公務員へ転職した場合も同様です。
採用された直後の6月や12月だからといって、通常の在職者と同じ金額になるとは限りません。
転職直後の賞与は、民間・公務員を問わず「支給日が来るかどうか」だけで判断せず、基準日や算定期間を見る必要があります。
公務員の賞与は民間企業より支給時期が分かりやすい一方、支給額については在職期間や勤務成績などの条件があります。
採用・退職の前後に当たる場合は、支給日だけでなく自分がどの期間について算定対象となるのかまで確認するとよいでしょう。
賞与の支給時期に法律上の決まりはない
民間企業については、賞与を6月や12月に支給しなければならないという法律上のルールはありません。
それどころか、 会社に対して一律に賞与制度を設けることを義務付ける法律もありません。
そのため、賞与制度そのものがない会社で賞与が支給されないからといって、それだけで法律違反になるわけではありません。
会社によっては、年収を月例給与に振り分けて賞与を設けない賃金体系を採用している場合もあります。
例えば、年収480万円を月給30万円+賞与120万円という形にする会社もあれば、月給40万円で賞与なしとする会社も考えられます。
どちらが良いかは賃金制度の設計によるもので、賞与がないことだけを理由に不適切な賃金制度とはいえません。
一方で、ここは法律上の整理で誤解が生じやすいところです。
「賞与制度を設ける法律上の義務がないこと」と「すでに支給条件が確定している賞与を自由に払わなくてよいこと」は別の話 です。
賞与も、労働の対償として支払われるものであれば労働基準法上の賃金に該当し得ます。
ただし、通常の月例賃金とは異なり、賞与などの臨時に支払われる賃金には毎月払いの原則などについて例外があります。
つまり、賞与は毎月払う必要がないから賞与なのであって、「賞与だから会社が何をしても自由」という意味ではありません。
賞与について就業規則、賞与規程、労働契約などで具体的な支給条件が定められ、従業員に賞与を受け取る権利が発生する内容になっている場合には、その規定が重要になります。
会社が規定された条件を満たしている従業員について、合理的な理由なく一方的に不支給とすれば、労働契約上の問題に発展する可能性があります。
規程の書き方によって会社の義務は変わる
例えば、「毎年7月10日および12月10日に基本給の2か月分を支給する」と明確に定めている場合と、「会社の業績および勤務成績等を勘案し、賞与を支給することがある」と定めている場合とでは意味が大きく異なります。
前者は支給時期だけでなく支給額までかなり具体的です。
そのため、会社が後になって「今年は経営者の判断でゼロにします」と変更することには慎重な検討が必要です。
会社の業績が悪化したからといって、すでに労働条件として確定している内容を当然に消せるわけではありません。
一方、後者のように会社業績や勤務成績などを踏まえて支給の有無を決定することが明確に規定されているのであれば、業績等によって不支給となる可能性は高くなります。
ただし、この場合でも恣意的な運用をしてよいわけではありません。
ある従業員だけ合理的な理由なく対象外にするような扱いは、別の問題を生じさせることがあります。
「毎年ボーナスが出ていた=今年も必ず同額」とは限りません。
一方で、「賞与は法律上義務ではない=会社は規程を無視して自由に不支給にできる」ということでもありません。
過去の支給実績だけではなく、就業規則や賞与規程、労働契約でどの程度まで支給条件が確定しているかを確認することが重要です。
賞与そのものの法的な位置づけや給与との違いについては、 賞与とは?給与との違いや手取りの仕組み でも詳しく整理しています。
会社側では、賞与制度を設けるのであれば「いつ支給するのか」だけでなく、「誰を対象とするのか」「どの期間を査定するのか」「算定方法をどこまで固定するのか」「会社業績によって不支給とすることがあるのか」「支給日に在籍していることを条件にするのか」といった事項まで整理しておくことが大切です。
実務で問題になりやすいのは、会社が考えている制度と規程の文章が一致していないケースです。
経営者は「業績が良い年だけ出すつもり」でいるのに、就業規則には毎年支給するように読める規定が残っていることがあります。
反対に、規程上は賞与を支給できる設計になっているのに、現場では「基本給の2か月分が必ずもらえる」と説明していることもあります。
こうしたズレを作らないことが、賞与トラブルを防ぐ一番のポイントです。
賞与の支給日は会社がどう決める?

賞与の支給日は、基本的には会社が自社の賃金制度や人事評価、資金繰り、給与計算のスケジュールなどを踏まえて決めます。
法律によって夏はこの日、冬はこの日と指定されているわけではないため、企業ごとに設計できます。
とはいえ、「好きな日を適当に決めればよい」というものでもありません。
実際の運用では、査定期間を終了してから各従業員の評価を確定し、賞与額を決定し、その金額を給与計算担当者へ渡し、社会保険料や所得税を計算して振込データを作成する必要があります。
そのため、評価期間終了日と賞与支給日の間には一定の余裕を持たせるのが通常です。
例えば査定期間を9月30日までとして冬季賞与を支給する場合、10月に一次評価、11月に最終評価と賞与額の決定を行い、12月に支給するという流れであれば比較的運用しやすくなります。
一方、査定期間を11月30日までとして12月5日に賞与を支給しようとすると、人事評価から計算、承認、振込までほとんど時間がありません。
制度として決められていても、事務処理が追いつかなければミスにつながります。
賞与支給時には、会社は金額を振り込むだけではありません。
社会保険の被保険者に賞与を支給した場合には、賞与支払届の手続きも必要です。
会社側の事務スケジュールまで含めて支給日を設計する必要があります。
会社側が支給日を決めるときのポイント
| 確認項目 | 実務上のポイント |
|---|---|
| 査定期間 | 評価を確定するまでの日数を確保する |
| 評価制度 | 一次評価・二次評価・経営者承認などの工程を確認する |
| 給与計算 | 社会保険料や所得税を計算できる期間を確保する |
| 資金繰り | 賞与支給による一時的な資金負担を考慮する |
| 振込手続き | 金融機関へのデータ送信期限などを確認する |
| 就業規則 | 実際の運用と規程の支給時期を一致させる |
| 在籍要件 | どの時点で在籍している人を対象とするか明確にする |
特に中小企業で迷いやすいのが、長年の慣例だけで支給日を運用しているケースです。
「毎年だいたい7月」という運用でも、従業員側では7月10日だと思っており、経営者側では業績を見て7月末までに決めればよいと考えている、といった認識の違いが起こります。
また、賞与は会社のキャッシュフローにも大きな影響を与えます。
従業員30人に平均40万円の賞与を支給すれば、賞与額だけで1,200万円です。
さらに会社負担分の社会保険料も発生します。
売掛金の入金時期や納税時期、設備投資などと賞与支給月が重なると、利益が出ていても資金繰りが厳しくなることがあります。
そのため会社側では、単に「世間では7月と12月が多いから同じにしよう」と決めるのではなく、自社の決算期や繁忙期、評価制度、資金繰りを踏まえて支給時期を設定した方が運用しやすくなります。
賞与は金額が大きくなりやすいため、こうした小さな認識の違いが労使トラブルにつながることがあります。
会社側では、 支給時期、査定期間、支給対象者、算定方法をセットで決める のが実務上分かりやすい方法です。
また、すでに就業規則などで具体的な支給日を定めている会社が支給日を変更するときは注意が必要です。
例えば「賞与は7月10日に支給する」と規定しているにもかかわらず、資金繰りの都合で一方的に8月末へ変更するのであれば、単なる社内事務の日程変更として扱えるとは限りません。
変更する理由、既存規程、従業員への影響などを確認したうえで進める必要があります。
これから賞与制度を作る会社では、最初から具体的な日付まで固定するのか、「原則として7月および12月」のように一定の余地を持たせるのかも検討ポイントです。
柔軟性を残す場合でも、従業員にとって支給時期が分からない制度にならないよう、実際の運用とのバランスを考えることが重要です。
賞与の時期は就業規則で確認する
自分の賞与がいつ支給されるかを正確に知りたい場合、インターネットで一般的なボーナス支給日を調べるよりも、 勤務先の就業規則や賞与規程を確認するのが最も確実です。
「夏のボーナスは7月が多い」という一般論が分かっても、あなたの勤務先が6月25日なのか7月10日なのかまでは分からないからです。
会社によって名称は異なり、「就業規則」の中に賞与の条文がある場合もあれば、「賃金規程」「給与規程」「賞与規程」などを別規程として作成している場合もあります。
また、労働条件通知書や雇用契約書に賞与について記載している会社もあります。
会社によっては社内ポータル、勤怠システム、労務管理システムなどから就業規則を閲覧できるようにしていることもあります。
分からなければ、人事・総務担当者へ「賞与の支給日と査定期間を確認したい」と問い合わせればよいでしょう。
なお、就業規則は会社が作って保管しておけばよいものではなく、労働者へ周知することが重要です。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、労働基準法第89条に基づき就業規則の作成と労働基準監督署への届出が必要となります。
賞与について確認したい項目
- 賞与を支給するかどうか
- 年間の支給回数
- 夏季・冬季それぞれの支給時期
- 賞与の査定期間
- 賞与額の計算方法
- 中途入社者の取扱い
- 試用期間中の取扱い
- 休職・育休等の期間の取扱い
- 支給日在籍要件の有無
- 退職予定者の取扱い
- 会社業績による不支給の可能性
- 支給時期を変更できる規定の有無
特に見落としやすいのが、「賞与は毎年7月および12月に支給する。ただし会社の業績その他やむを得ない事情がある場合は、支給時期を変更し、または支給しないことがある」といった例外規定です。
支給月だけを見て判断するのではなく、その前後の条件も確認しましょう。
また、「賞与は会社業績、本人の勤務成績等を勘案して支給する」といった規定であれば、過去の賞与額から今年の金額を単純に推測することもできません。
昨年は基本給の2か月分だったとしても、今年も必ず同じ金額になるとは限らないためです。
会社側については、賞与などの臨時の賃金について制度を設ける場合、その内容は就業規則上の相対的必要記載事項となります。
制度を設けるのであれば、就業規則や関連規程と実際の運用を合わせておくことが重要です。
就業規則の作成・届出や規定例については、厚生労働省がモデル就業規則を公開しています。
現在のモデル就業規則にも賞与に関する規定例がありますので、会社側で制度を整理する際の一次情報として確認するとよいでしょう。
賞与がいつ支給されるか分からない場合は、まず就業規則、賃金規程、賞与規程の順に確認してみてください。
そのうえで、「支給日」「査定期間」「支給日在籍要件」の三つをセットで見るのがポイントです。
規程を見ても意味が分からない場合は、人事・総務担当者に確認するとよいでしょう。
社労士の実務では、賞与をめぐる問題は「規程がない」場合だけでなく、「規程はあるけれど実際の運用と違う」という場合にも起こります。
毎年の支給日を変更している、規程にはない独自の減額ルールを使っている、退職予定者だけ別の扱いをしている、といったケースです。
従業員側は規程を確認し、会社側は規程と実態が一致しているかを確認する。
この両方が大切です。
賞与はいつ受け取れる?ケース別の注意点
賞与の一般的な支給月が分かっても、中途入社や退職を予定している場合には、それだけでは実際にもらえるかどうかを判断できません。
重要になるのが、査定期間と支給日在籍要件です。
例えば、7月に賞与が支給される会社へ4月に入社した人と、前年からずっと勤務している人では、同じ7月の支給日を迎えても賞与額が同じとは限りません。
また、査定期間をすべて勤務した人でも、支給日前に退職すると対象外になることがあります。
ここからは、「転職したばかりでも夏のボーナスをもらえるのか」「ボーナスをもらってから退職したい場合はどう考えるのか」といった、実際によくある相談をケース別に整理します。
中途入社のボーナスはいつから対象?
中途入社した場合、入社後最初に到来する賞与支給日に必ず満額のボーナスをもらえるとは限りません。
賞与は通常、一定の査定期間における勤務実績や評価をもとに計算するため、 査定期間の途中から入社した人は在籍期間に応じて減額されたり、初回は対象外になったりすることがあります。
この点は転職時に非常に分かりにくい部分です。
例えば4月1日に入社し、会社の夏季賞与が7月10日に支給される場合、「3か月以上働いたのだからボーナスが出るだろう」と考える方もいるかもしれません。
しかし、夏季賞与の査定期間が前年10月から3月であれば、4月入社の人は今回の査定期間にまったく在籍していません。
会社によってはこのような新入社員や中途採用者に対し、「寸志」として数万円程度を支給することもあります。
しかし、これも法律上必須の制度ではありません。
初回は完全に支給対象外とし、次の冬季賞与から通常の査定対象とする会社もあります。
例えば、夏季賞与の査定期間が前年10月1日から3月31日、支給日が7月10日の会社を考えてみましょう。
| 入社時期の例 | 夏季賞与の考え方の例 |
|---|---|
| 前年10月1日以前 | 査定期間全体に在籍しており通常の査定対象となりやすい |
| 1月1日 | 査定期間の一部のみ在籍しているため按分等の可能性 |
| 4月1日 | 査定期間終了後の入社のため対象外や寸志となる可能性 |
| 6月1日 | 支給日には在籍していても査定期間には在籍していない |
これはあくまで仕組みを理解するための一例であり、実際の会社がこのように支給しなければならないわけではありません。
査定期間の途中入社でも一律一定額を支給する会社や、在籍月数に応じて「6分の3」「6分の5」などの形で按分する会社、試用期間中は対象外とする会社、一定の勤続期間を満たせば支給する会社などさまざまです。
例えば「算定期間に3か月以上在籍した者を支給対象とする」という規定があれば、査定期間中の在籍期間が2か月しかない中途入社者は対象外になる可能性があります。
一方、「算定期間の在籍月数に応じて支給する」と定めていれば、2か月分だけ按分して支給することも考えられます。
転職活動では、求人票に「賞与年2回」と書かれていると、入社後すぐに年2回満額をもらえるように感じるかもしれません。
しかし、「年2回」は会社全体の通常の支給回数を示しているだけで、 入社1年目に2回とも満額支給されることを意味するとは限りません。
この違いは年収にも影響します。
例えば月給30万円、賞与年2回・各2か月という会社であれば、通常勤務者の想定年収は480万円になります。
しかし、4月入社で夏季賞与が対象外になれば、初年度の実際の年収はその想定より低くなる可能性があります。
転職時に年収を比較する場合は、初年度と2年目以降を分けて考えると分かりやすいですよ。
採用時にも、この点はよく確認されます。
企業側からすると、「賞与年2回」とだけ説明するのではなく、初年度の取扱いや査定期間を労働条件通知書、雇用契約書、採用時の説明資料などで伝えておくと、入社後の認識違いを減らしやすくなります。
中途入社で初回のボーナスが気になる場合は、「初回はいくらですか」と金額だけを聞くよりも、「賞与の査定期間はいつからいつまでですか」「途中入社の場合はどのように計算しますか」「初回は寸志になりますか」と確認した方が制度を正確に把握できます。
転職時には聞きにくく感じるかもしれませんが、重要な労働条件の一つです。
退職前の賞与はもらえる?

「ボーナスをもらってから退職したい」という相談は実務でもよくあります。
賞与が数十万円になることもありますから、退職日が数日違うだけで賞与を受け取れるかどうかが変わるのであれば、気になるのは当然だと思います。
この場合、最初に確認するのは 賞与の支給日と退職日、そして支給日在籍要件 です。
査定期間にどれだけ勤務したかだけを確認しても結論は出ません。
例えば賞与支給日が7月10日で、就業規則に「賞与は支給日に在籍する従業員に支給する」と定められている会社を考えます。
6月30日付で退職すれば7月10日には在籍していないため、査定期間中に半年間しっかり勤務していたとしても、賞与の対象外となる可能性があります。
一方、7月10日に賞与が支給され、7月31日付で退職するのであれば、少なくとも支給日には在籍しています。
規程が単純な支給日在籍要件だけであれば、この点では条件を満たすことになります。
ただし、「支給日在籍要件を満たせば絶対に満額」ということでもありません。
賞与規程に「退職予定者については将来の貢献度等を考慮して減額する」といった別の規定がある会社もあります。
このような規定の有効性や、どの程度の減額まで認められるかについては、規定内容や具体的事情によって判断が変わります。
最終出勤日ではなく退職日を見る
ここで混同しやすいのが、最終出勤日と退職日の違いです。
有給休暇を消化している期間も、退職日が到来するまでは原則として会社に在籍しています。
例えば6月30日を最終出勤日として、その後有給休暇を取得し、7月31日付で退職するケースであれば、7月10日時点では在籍しています。
賞与規程が単純な支給日在籍要件だけであれば、最終出勤日が賞与支給日前だからという理由だけで直ちに対象外になるわけではありません。
| 項目 | 日付の例 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 最終出勤日 | 6月30日 | 実際に最後に勤務した日 |
| 有給消化 | 7月1日〜7月31日 | 原則として在籍中 |
| 賞与支給日 | 7月10日 | この日の在籍要件を確認 |
| 退職日 | 7月31日 | この日までは雇用関係が継続 |
退職届を提出した日についても同様です。
例えば6月1日に「7月31日で退職します」と退職届を出したとしても、6月1日に退職したわけではありません。
7月31日まで雇用契約が継続しているのであれば、7月10日の支給日時点では在籍しています。
このため、「退職届を出すとボーナスがもらえなくなる」という話も一律にはいえません。
会社の規程が「支給日に在籍する者」としているのか、「支給日に在籍し、かつ退職予定でない者」としているのかなどを確認する必要があります。
また、会社から支給日前に賞与支給日を突然変更された場合や、会社都合による退職、解雇など本人の意思だけでは避けられない事情で在籍要件を満たせなかった場合には、より慎重な判断が必要です。
単純に日付だけを見て結論を出すのではなく、規定内容、これまでの運用、退職に至った事情を確認します。
退職時のボーナスについては、 退職でボーナスをもらえない理由と確認すべきポイント でも詳しく解説しています。
もちろん、賞与だけを理由に退職時期を決めればよいという話ではありません。
就業規則上の退職申出期限、転職先の入社日、残っている有給休暇、健康保険や厚生年金の資格喪失日、業務の引き継ぎなどもあります。
賞与支給日の翌日に突然退職を申し出るような進め方は、法律上の賞与受給とは別に、会社との関係や引き継ぎに影響することがあります。
賞与を確認すること自体は問題ありませんが、円満な退職を考えるのであれば、支給条件だけでなく退職申出期限や引き継ぎ期間も含めて全体のスケジュールを考えることをおすすめします。
賞与の支給日在籍要件とは?
支給日在籍要件とは、 賞与の支給日に会社へ在籍していることを賞与支給の条件とするルール です。
就業規則や賞与規程では、「賞与は支給日に在籍する従業員に対して支給する」「賞与支給日に在籍している者を対象とする」といった形で定められます。
この規定があると、査定期間に働いていたかどうかだけでは賞与の支給は決まりません。
査定期間中の勤務実績が十分にあったとしても、賞与支給日の前に退職していれば支給対象外になることがあります。
初めてこの仕組みを知ると、「半年間働いた分の賞与なのに、支給日の前日に退職しただけでゼロになるのはおかしいのでは」と感じる方もいると思います。
確かに、賞与には過去の勤務に対する評価という性格があります。
ただ、それだけではなく、会社への将来的な貢献への期待や、支給時点での在籍など複数の要素を含む制度として設計されることがあります。
そのため、支給日在籍要件については裁判例でも有効性が認められてきました。
代表的なものとして大和銀行事件の最高裁判決(最高裁昭和57年10月7日判決)があり、賞与に関する支給日在籍要件を考えるうえで重要な裁判例として実務上よく参照されます。
査定期間と支給日在籍要件は二段階で確認する
賞与の対象になるかを考えるときは、次の二段階に分けると分かりやすくなります。
賞与を確認する二つのステップ
- まず、支給日に在籍しており賞与の支給対象者に該当するかを確認する
- 次に、査定期間の勤務実績などから実際の賞与額を計算する
例えば査定期間に6か月すべて勤務していたとしても、支給日前に退職して支給日在籍要件を満たさなければ、そもそも賞与対象者にならない可能性があります。
反対に、中途入社者が支給日に在籍していても、査定期間の一部しか勤務していなければ、賞与額が按分されることがあります。
具体例で考えてみましょう。
冬季賞与の査定期間が4月1日から9月30日、支給日が12月10日だとします。
Aさんは4月から9月まで6か月勤務した後、11月30日に退職しました。
Bさんは7月1日に入社し、12月10日も在籍しています。
| 従業員 | 査定期間の勤務 | 支給日の在籍 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| Aさん | 6か月すべて勤務 | 在籍していない | 在籍要件があれば対象外となる可能性 |
| Bさん | 3か月勤務 | 在籍している | 対象となっても按分される可能性 |
Aさんの方が査定期間中の勤務期間は長いのに、支給日在籍要件があるとAさんは賞与を受け取れず、Bさんは一部支給されるという結果もあり得ます。
この例を見ると、賞与は単純に「半年働いたから半年分もらえる」という制度ではないことが分かります。
ただし、「支給日在籍要件を書いておけば、どのような場合でも必ず有効」とまで考えるのは危険です。
規程が従業員へ周知されているか、これまでどのように運用していたか、会社側が恣意的に支給日を変更していないか、退職が本人の自由意思によるものかなど、個別事情が問題になることがあります。
特に、賞与支給日を毎年7月10日として運用していたのに、退職予定者だけを対象外にする目的でその年だけ7月20日に変更する、といった運用は別の問題を生じさせる可能性があります。
規程は作るだけではなく、合理的かつ一貫して運用することが重要です。
育児休業などの扱いにも注意する
支給日に在籍していることと、その期間に実際に勤務していたかどうかも別の問題です。
育児休業中の従業員は会社に在籍していますので、「支給日に出勤していない」というだけで支給日在籍要件を満たさないことにはなりません。
一方、査定期間中に育児休業などで就労していない期間があった場合、その期間を賞与計算上どのように評価するかは別途検討が必要です。
育児休業を取得したことそのものを理由として不利益に取り扱うことには法的な制限があります。
例えば半年間の査定期間のうち3か月を育児休業していた場合、実際に勤務していない3か月分を一定の方法で賞与算定の対象外とすることと、「育児休業を取ったから賞与全額を支給しない」ということは同じではありません。
会社側では、休業期間と賞与算定期間の関係を合理的に整理する必要があります。
介護休業や産前産後休業などについても、それぞれ制度の性質や法的な不利益取扱いの規制を踏まえた確認が必要です。
「実際に出勤していない」という一点だけで一律に処理しないことが大切です。
支給日在籍要件は賞与トラブルが生じやすい項目です。
会社側は就業規則や賞与規程に明確に定め、従業員に周知したうえで一貫した運用を行うことが重要です。
従業員側も、退職日を決める前に規程を確認しておくと認識違いを防ぎやすくなります。
決算賞与はいつ支給される?
通常の夏季賞与・冬季賞与とは別に、会社の業績が良かった年度に「決算賞与」を支給する企業もあります。
決算賞与についても法律上の一律の支給日はなく、 会社の決算期や業績確定のタイミングによって支給時期が異なります。
決算賞与は、一般的な夏季賞与・冬季賞与以上に会社ごとの差が大きい制度です。
通常賞与とは完全に別枠で設定する会社もあれば、年3回目の賞与として運用する会社、年度業績が一定の水準を超えたときだけ支給する会社などがあります。
例えば3月決算の会社であれば、3月前後や決算内容が見えてくる時期に決算賞与を検討するケースがあります。
しかし、すべての3月決算企業が3月に決算賞与を支給するわけではありません。
会社によっては決算前に業績見込みを踏まえて決定することもあれば、別の時期に業績連動賞与を設けている場合もあります。
また、税務上の取扱いもあるため、会社側では単に「利益が出たから決算後にボーナスを払おう」と考えるだけではなく、支給額の決定時期や通知、実際の支払い時期などを税理士と確認しながら進めることがあります。
労務面だけでなく税務面も関係する部分です。
決算賞与は毎年支給されるとは限らない
決算賞与で特に注意したいのは、前年に支給されたからといって翌年も支給されるとは限らないことです。
通常の夏季・冬季賞与以上に、会社業績や経営判断との結び付きが強い制度として設計されているケースが多くあります。
例えば就業規則に「会社の業績が著しく良好な場合、決算賞与を支給することがある」と定められているのであれば、会社業績が基準に達しなかった年度に支給されない可能性があります。
また、前年まで3年連続で決算賞与が出ていた場合でも、「3年間出たから今年も必ず出る」とは限りません。
逆に、毎年一定の条件で継続的に支給し、実質的に通常賞与と同じような運用になっている場合には、規程や実際の運用をより慎重に確認する必要があります。
転職時にも、「賞与年2回+決算賞与実績あり」という求人を見かけることがあります。
この場合の「実績あり」は、過去に決算賞与を支給したことがあるという意味であって、将来の支給を保証する表現とは限りません。
| 種類 | 一般的な特徴 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 夏季賞与 | 定期賞与として制度化されることが多い | 査定期間・夏の支給日 |
| 冬季賞与 | 定期賞与として制度化されることが多い | 査定期間・冬の支給日 |
| 決算賞与 | 会社業績に応じて支給されることが多い | 支給条件・業績基準・支給時期 |
求人票を見る側としては、「賞与年2回、前年実績5か月」と「賞与年2回+決算賞与」という表示があったとしても、決算賞与を通常の年収として確実に計算するのは避けた方が安全です。
住宅ローンや家計計画など、確実な収入を前提に考える場面では、業績連動部分を除いた金額で見ておく方が現実的です。
会社側についても、決算賞与を従業員のモチベーション向上のために使うのであれば、「どの程度の業績になったら検討するのか」「対象者は誰か」「評価はどう反映するか」といった考え方を整理しておいた方がよいでしょう。
完全な経営判断として扱うのであれば、その点が規程や従業員への説明と矛盾しないことも重要です。
また、決算賞与にも支給日在籍要件を設けることがあります。
例えば3月31日に金額を決定し、4月20日に支給する会社で、4月10日に退職した人をどう扱うのか。
こうしたケースは通常賞与と同様に、規程が曖昧だとトラブルになりやすい部分です。
決算賞与について確認するときは、「いつ支給するか」だけでなく、「毎年支給される制度なのか」「業績によって支給しないことがあるのか」「支給対象者は誰か」「支給日在籍要件があるか」まで確認しましょう。
特に転職時は、決算賞与を確定した年収として扱わないことがポイントです。
賞与から社会保険料や税金はいつ引かれる?

賞与は、会社から決定された額がそのまま銀行口座へ振り込まれるわけではありません。
一般的には、 賞与の支給時に健康保険料、厚生年金保険料、対象者の介護保険料、雇用保険料、所得税などが控除され、差し引いた金額が手取りとして振り込まれます。
例えば会社から「今回の賞与は50万円です」と説明を受けた場合でも、口座へ50万円がそのまま入るわけではありません。
健康保険や厚生年金に加入している人であれば社会保険料が控除され、さらに所得税や雇用保険料などが差し引かれます。
毎月の給与とは別に賞与明細が発行される会社が多いため、まずは総支給額と各控除項目を確認してみましょう。
「想像していたより手取りが少ない」と感じた場合も、総額と手取り額を混同しているケースは少なくありません。
社会保険料は標準賞与額をもとに計算する
健康保険と厚生年金保険では、税引前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた金額を「標準賞与額」とし、この標準賞与額に保険料率を乗じて保険料を計算します。
例えば、賞与の総支給額が500,800円であれば、標準賞与額は500,000円となります。
498,999円であれば498,000円です。
この標準賞与額が健康保険料と厚生年金保険料を計算する基礎になります。
健康保険料率は加入している健康保険制度や地域、年度などによって異なる場合があります。
また、厚生年金保険料についても被保険者負担分だけでなく会社負担分があります。
従業員の賞与明細に表示されるのは、基本的には本人が負担する部分です。
標準賞与額には上限もあります。
現行制度では、健康保険については毎年4月1日から翌年3月31日までの年度累計額573万円、厚生年金保険については1か月当たり150万円が上限とされています。
同じ月に複数回賞与が支給される場合は、その月に支給された賞与を合算して厚生年金の上限を判定します。
例えば7月5日に100万円、7月25日に80万円の賞与を同じ会社から支給された場合、厚生年金の標準賞与額はそれぞれ別々に150万円までを見るのではなく、同月の賞与を合算したうえで月150万円の上限を適用するという考え方になります。
日本年金機構では、標準賞与額の計算方法、上限、賞与支払届などについて案内しています。
社会保険料の計算や上限額は制度改正によって変更される可能性があるため、実際の給与計算時には最新情報を確認してください。
(出典:日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」)
会社側では、被保険者へ賞与を支給した場合、原則として賞与支払日から5日以内に被保険者賞与支払届を提出します。
賞与額を計算して振り込めば終わりではなく、社会保険上の手続きまで含めて賞与業務になります。
介護保険料は全員から引かれるわけではない
介護保険料についても、賞与から一律に全従業員分が控除されるわけではありません。
健康保険に加入する40歳以上65歳未満の介護保険第2号被保険者について、原則として健康保険料と合わせて計算されます。
そのため、同じ会社で同じ賞与額を受け取った従業員でも、年齢などによって控除額が違うことがあります。
39歳の従業員と45歳の従業員では、賞与総額が同じでも手取り額が同じとは限りません。
また、健康保険組合に加入している会社と協会けんぽに加入している会社などでも保険料率が異なる場合があります。
「同じ50万円の賞与なのに友人より手取りが少ない」といった比較をしても、加入制度、年齢、前月給与、扶養状況など条件が違えば手取り額は変わります。
賞与の手取り額を比較するときは、額面だけではなく、自分がどの社会保険に加入しているかも確認する必要があります。
所得税は前月給与などをもとに計算する
賞与に対する所得税は、通常、前月の社会保険料等控除後の給与額と扶養親族等の人数などをもとに、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って税率を確認し、賞与から社会保険料等を控除した後の金額に一定の率を乗じて計算します。
そのため、賞与額だけを見て「所得税は必ず10%」「ボーナスは20%引かれる」といった一律の計算はできません。
例えば同じ50万円の賞与でも、前月給与が30万円の人と60万円の人、扶養親族がいる人といない人では、源泉徴収される所得税額が異なる場合があります。
また、前月に給与の支払いがない場合や、賞与額が前月給与に比べて非常に大きい場合などには、通常とは異なる計算方法を用いるケースがあります。
賞与明細を見て所得税が想定と大きく違う場合には、この点も確認してください。
| 控除項目 | 主な計算の考え方 | 控除時期 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 標準賞与額を基礎に計算 | 原則として賞与支給時 |
| 厚生年金保険料 | 標準賞与額を基礎に計算 | 原則として賞与支給時 |
| 介護保険料 | 対象年齢等に該当する場合に計算 | 原則として賞与支給時 |
| 雇用保険料 | 賞与を含む賃金を基礎に計算 | 原則として賞与支給時 |
| 所得税 | 前月給与や扶養親族等をもとに計算 | 賞与支給時 |
なお、住民税は通常、毎月の給与から決められた月額を特別徴収する仕組みのため、一般的な賞与支給時に賞与額に応じた住民税を別途計算して控除するわけではありません。
この点も所得税との違いとしてよく質問を受けるところです。
さらに、育児休業中に賞与が支給される場合には、一定の要件を満たすことで健康保険料・厚生年金保険料が免除されることがあります。
現在の制度では、賞与保険料については、賞与を支払った月の末日を含む連続した1か月を超える育児休業等を取得していることなどが重要になります。
ここは月例保険料の免除要件と混同しやすいところです。
例えば短期間の育児休業によって毎月の社会保険料が免除になるケースがあっても、それだけで同じ月に支給された賞与の保険料まで必ず免除されるわけではありません。
詳しくは、 育休中の賞与にかかる社会保険料の免除条件 で整理しています。
社会保険料率、標準賞与額の上限、雇用保険料率、所得税の計算方法、育児休業中の免除要件などは制度改正によって変更される可能性があります。
賞与支給時の実際の計算については、 正確な情報は公式サイトをご確認ください。
従業員側からすると、まず賞与明細の「総支給額」と「差引支給額」を分けて見ることがポイントです。
会社側では、賞与支給額を決定した後、社会保険・雇用保険・所得税まで正確に計算し、必要な届出を期限内に行うところまでが賞与支給業務になります。
賞与がいつか迷ったら就業規則を確認
賞与がいつ支給されるかについて、民間企業では夏の6月下旬〜7月、冬の12月が一つの目安になります。
しかし、法律で全国共通の支給日が定められているわけではないため、 最終的な答えは勤務先の就業規則、賃金規程、賞与規程などにあります。
「一般的な会社は7月だから自分も7月だろう」「去年が12月10日だったから今年も必ず12月10日だろう」と考えるのではなく、自社の規程を確認してください。
特に会社の業績などによって支給時期を変更できる規定がある場合、前年と同じ日になるとは限りません。
特に中途入社や退職を予定している場合は、支給月だけを確認して終わらせないことが重要です。
査定期間、支給日在籍要件、中途入社者の按分ルール、退職予定者の取扱いまで確認しないと、実際に賞与を受け取れるかどうかは判断できません。
例えば「7月に賞与が出る」と分かっていても、4月入社の人が対象になるかは査定期間を見なければ分かりません。
7月10日に支給されると分かっていても、6月末退職の人が対象になるかは支給日在籍要件を見なければ分かりません。
この二つの例だけでも、支給月だけでは判断できないことが分かると思います。
| あなたの状況 | 特に確認したい項目 |
|---|---|
| 通常勤務中 | 夏・冬の支給日、査定期間 |
| 中途入社 | 査定期間、初年度の支給条件、按分の有無 |
| 退職予定 | 支給日、退職日、支給日在籍要件 |
| 育休・休職中 | 査定期間中の取扱い、社会保険料 |
| 決算賞与を確認したい | 業績条件、支給時期、支給対象者 |
会社側にとっても同じです。
賞与制度を設けるのであれば、「毎年何となく夏と冬に払っている」という運用ではなく、支給時期、査定期間、支給対象者、計算方法、支給日在籍要件、業績悪化時の取扱いなどをあらかじめ整理しておくことが重要です。
特に気を付けたいのは、就業規則に書いてある内容と実際の運用を一致させることです。
例えば規程には「7月および12月に支給する」とあるのに、実際には毎年8月と1月に支給しているのであれば、規程と実態がずれています。
こうした状態を長期間放置すると、いざ退職者が出たときなどに、どの日を基準に判断するのかで問題になりやすくなります。
実務では、賞与そのものよりも「会社は出ると思っていなかったが、従業員は当然もらえると思っていた」「従業員は支給日に在籍していると思っていたが、会社は最終出勤日を基準に判断していた」「会社は寸志のつもりだったが、中途入社者は通常賞与だと思っていた」といった認識の違いがトラブルの原因になります。
こうしたトラブルは、賞与額を大きくすることで防ぐものではありません。
制度そのものを分かりやすくして、会社と従業員が同じルールを認識している状態を作ることが重要です。
賞与がいつ支給されるかを確認するときは、次の順番で見ると分かりやすいです。
- 賞与制度そのものがあるか
- 賞与の支給日はいつか
- 今回の賞与の査定期間はいつからいつまでか
- 支給日在籍要件があるか
- 中途入社や退職などの特別な取扱いがあるか
- 業績による不支給や支給日変更の規定があるか
- 実際の賞与明細で控除内容を確認する
従業員であれば、まず自分で就業規則や賞与規程を確認し、不明点があれば人事・総務担当者へ確認してみてください。
退職時期を具体的に決める前であれば、支給日在籍要件まで確認しておくと「あと数日退職日をずらしていれば賞与が支給された」という事態を避けられる可能性があります。
企業側であれば、「賞与を出すか出さないか」だけではなく、制度設計そのものを確認してみてください。
特に中小企業では、創業時に作った就業規則の賞与規定がそのまま残り、現在の運用と全く合っていないケースがあります。
賞与の支給時期を見直す際には、査定期間や在籍要件も一緒に確認することをおすすめします。
また、賞与から控除される社会保険料や税金についても、支給額や制度によって計算結果が変わります。
インターネット上の簡易シミュレーションだけで判断せず、実際の賞与明細や会社の計算内容を確認しましょう。
「賞与はいつ?」という疑問に対する答えを一言でまとめると、 民間企業では夏6〜7月・冬12月が一般的な目安ですが、正確な日は会社の就業規則や賞与規程で確認する ということになります。
そのうえで、中途入社なら査定期間、退職予定なら支給日在籍要件を見る。
この順番で確認すると迷いにくくなります。
賞与に関する規程の有効性や退職時の支給義務については、実際の就業規則、労働契約、これまでの運用、賞与額の決定方法、退職に至った経緯などによって判断が変わることがあります。
一般的な情報だけで会社や従業員の権利義務を断定せず、個別の事情を確認することが大切です。
特に「支給日前に退職したが賞与を請求できるか」「会社が突然賞与を不支給にした」「退職予定だと伝えたら賞与を減額された」といったケースでは、規程の一文だけでは結論が出ないことがあります。
法律上の取扱いや会社とのトラブルについて個別判断が必要な場合は、 最終的な判断は専門家にご相談ください。