こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
仕事中や通勤中の事故による骨折が労災と認められれば、治療費だけでなく、仕事を休んだ期間の休業補償や、症状固定後に障害が残った場合の障害補償などを受けられる可能性があります。
骨折は治療が長期になることもあり、「治療費はいつまで労災になるのか」「休業中はいくら受け取れるのか」「関節が動きにくいまま残ったらどうなるのか」といった不安が出やすいケガです。
また、仕事中の転倒による骨折と、繰り返しの負荷による疲労骨折では、労災認定で確認されるポイントも異なります。
通勤中の骨折についても、業務災害とは一部取扱いが違います。
この記事では、骨折したときの労災認定の考え方から、治療費、休業補償、後遺障害、申請手続きまで、実務で特に確認しておきたいポイントを順番に整理します。
- 骨折が労災として認められる基本的な考え方
- 治療費と休業補償の内容や支給期間
- 骨折後に障害が残った場合の労災給付
- 労災申請に必要な書類と会社への対応

労災保険の全体像については、労災の認定基準・給付内容・申請の流れを整理した記事で確認できます。
労災で骨折したときに受けられる補償
労災で骨折した場合、補償は治療費だけではありません。
療養のため働けない期間については休業に関する給付があり、治療後に一定の障害が残れば障害に関する給付を受けられる可能性があります。
まずは、骨折が労災になる条件と、それぞれの給付がどの段階で関係してくるのかを整理しておきましょう。
仕事中の骨折が労災になる認定基準
仕事中に骨折したからといって、事故の場所だけで自動的に労災になるわけではありません。
業務災害に該当するかどうかは、基本的に 業務遂行性と業務起因性 という2つの視点から判断されます。
業務遂行性とは、簡単にいえば会社の支配・管理下にある状態で発生した災害かという点です。
通常の勤務時間中に工場内で転倒した、建設現場で足場から落下した、倉庫で荷物の下敷きになったといったケースでは、この点は比較的分かりやすいでしょう。
もう一つの業務起因性は、その骨折が仕事に伴う危険によって発生したものかという考え方です。
たとえば、床が濡れていて作業中に転倒した場合や、重量物を運搬中にバランスを崩して骨折した場合などは、業務との関係を確認しやすいケースです。
労災かどうかを最終的に判断するのは会社ではなく、請求を受けた労働基準監督署長です。
一方で、勤務時間中であっても、仕事とは関係のない私的な行為によって負傷した場合などは、業務災害と認められないことがあります。
事故前後に何をしていたのか、どのような設備や作業が原因だったのかを具体的に整理することが重要です。
実務では「会社の中で起きたから労災」「会社が労災ではないと言ったから労災ではない」という単純な判断をしてしまうケースがあります。
しかし、本来は事故の状況を客観的に整理して判断する必要があります。
労災認定の考え方を詳しく確認したい方は、 労災の認定基準と業務災害・通勤災害の判断ポイント も参考にしてください。
骨折の治療費は労災保険で補償される

骨折が業務災害または通勤災害として労災保険の対象になれば、必要な治療について療養(補償)等給付を受けられます。
一般的には、診察、レントゲンやCTなどの検査、処置、手術、入院、投薬など、労災による骨折の治療に必要と認められる費用が対象となります。
労災保険指定医療機関を利用する場合は、原則として窓口で治療費を立て替える必要はありません。
業務災害であれば様式第5号、通勤災害であれば様式第16号の3などを医療機関へ提出し、医療機関が労災保険へ請求する仕組みです。
| 受診先 | 治療費の基本的な扱い | 代表的な請求書 |
|---|---|---|
| 労災指定医療機関 | 原則として窓口負担なし | 業務災害は様式第5号など |
| 指定医療機関以外 | いったん費用を負担し後日請求 | 業務災害は様式第7号など |
救急搬送された病院が労災指定医療機関ではないケースもあります。
その場合でも、指定病院ではないという理由だけで労災保険が使えなくなるわけではありません。
いったん治療費を支払い、後から療養の費用を請求する方法があります。
また、事故直後に労災であることを伝えず健康保険証を使用してしまうケースも実際によくあります。
この場合には、医療機関や健康保険の保険者と調整し、労災保険へ切り替える手続きが必要になることがあります。
仕事中や通勤中の事故で受診するときは、受付の段階で「仕事中の事故です」「通勤途中の事故です」と伝えておくと、その後の手続きを整理しやすくなります。
指定病院以外を受診した場合の立替払いや様式の違いについては、 労災で指定病院以外を受診した場合の費用と手続き で詳しく解説しています。
骨折の休業補償はいくらもらえる?
骨折によって仕事を休み、その期間について賃金を受けられない場合には、一定の要件を満たすことで休業(補償)等給付の対象になります。
一般的には、休業1日につき 給付基礎日額の60%に相当する休業(補償)等給付 が支給され、さらに 給付基礎日額の20%に相当する休業特別支給金 が加わります。
そのため、合計すると給付基礎日額の80%相当が一つの目安です。
| 給付 | 一般的な支給割合 |
|---|---|
| 休業(補償)等給付 | 給付基礎日額の60% |
| 休業特別支給金 | 給付基礎日額の20% |
| 合計 | 給付基礎日額の80%相当 |
給付基礎日額は、原則として労働基準法上の平均賃金に相当する額を基礎として計算します。
事故発生日以前の一定期間に支払われた賃金を基に計算するため、単純に現在の月給を30日で割ればよいとは限りません。
たとえば月給制でも、賃金締切日や事故日、対象となる賃金の内容によって計算方法が変わります。
賞与など、通常の給付基礎日額の算定にそのまま含まれない賃金もあります。
「給与の8割がそのまま振り込まれる」と考えると実際の金額とずれることがあります。
80%という数字は、あくまで給付基礎日額に対する一般的な割合です。
また、有給休暇を取得して通常の賃金を受けた日については、「賃金を受けない日」という休業(補償)等給付の要件との関係を確認する必要があります。
同じ休業日について、有給休暇の賃金と労災の休業給付を単純に二重で受け取る制度ではありません。
実際の支給額は賃金の支払状況や就労状況によって異なるため、個別の金額を確認する場合には給与明細や賃金台帳などを基に計算することが大切です。
骨折の休業補償はいつまで続く?
骨折した場合に「休業補償は3か月まで」「半年で終了する」といった一律の期間が決まっているわけではありません。
休業(補償)等給付を受けるためには、基本的に 労災による傷病の療養のため働くことができず、そのため賃金を受けていないこと などの要件を満たしている必要があります。
その状態が続いていれば、骨折から一定期間が経過したという理由だけで直ちに終了するものではありません。
一方、骨折が治癒した場合や、医学上一般に認められた治療を続けてもこれ以上の改善が期待できない状態、いわゆる症状固定に至った場合には、その後も治療を続けながら休業補償を受け続けるという扱いではなくなります。
症状固定後に痛み、変形、関節の可動域制限などが残っている場合は、休業補償ではなく障害(補償)等給付の対象になるかを確認する段階へ移ります。
骨折の治療期間は、骨折した部位、骨折の程度、手術の有無、年齢、合併症、リハビリの状況などによって大きく異なります。
単純骨折と粉砕骨折、関節内骨折などを同じ期間で考えることはできません。
医学的な治療見込みについては主治医へ確認することが基本です。治療途中で一部出勤や短時間勤務に切り替える場合の休業補償の扱いは、 労災で骨折後に出勤すると休業補償はどうなる?実務で確認 で詳しく解説しています。
また、療養開始から1年6か月を経過しても治癒しておらず、傷病の程度が傷病等級第1級から第3級に該当する場合には、傷病(補償)等年金の対象になることがあります。
1年6か月経過しただけで、自動的にすべての休業補償が終了するわけではありません。
傷病の状態が傷病等級に該当するかどうかによって取扱いが異なります。
休業補償の終了条件や1年6か月経過後の取扱いは、 労災の休業補償はいつまで受けられるのか でも詳しく整理しています。
通勤災害の骨折は待期期間に注意

通勤途中に転倒して骨折した場合や、出勤途中に交通事故で骨折した場合も、労災保険上の通勤に該当すれば通勤災害として給付を受けられる可能性があります。
ただし、仕事中の事故による業務災害と通勤災害では、休業初日から3日目までの取扱いに違いがあります。
休業(補償)等給付は、原則として休業4日目から労災保険の支給対象となります。
最初の3日間は「待期期間」と呼ばれ、労災保険から休業に関する給付は支給されません。
| 区分 | 休業1~3日目 | 休業4日目以降 |
|---|---|---|
| 業務災害 | 原則として事業主が平均賃金の60%を休業補償 | 労災保険の休業補償給付 |
| 通勤災害 | 事業主に労基法上の休業補償義務なし | 労災保険の休業給付 |
業務災害では、労働基準法に基づき、使用者が待期期間について休業補償を行うのが原則です。
労災について別の角度から確認したい場合は、労災の休業補償はいくら?計算方法と申請手続きを解説した記事も参考にしてください。
一方、通勤災害は労働基準法上の「業務上」の災害ではないため、会社に同じ休業補償義務はありません。
会社の就業規則や独自制度によって別途補償される場合はあります。
さらに、通勤災害で療養給付を受ける場合には、原則として一部負担金200円が設けられており、休業給付が支給される場合には最初の支給時に調整されます。
一定の例外もあるため、個別の取扱いは確認が必要です。
通勤災害では、どこで転倒したかだけでなく、住居と就業場所との間を合理的な経路・方法で移動していたか、途中で私的な逸脱や中断がなかったかも確認されます。
特に会社へ届け出た通勤ルートと実際のルートが違うケースでは、「届出と違うから対象外」と即断せず、労災保険上の合理的な経路・方法に該当するかを確認することが重要です。
疲労骨折は業務起因性がポイント
転倒や落下など、一度の事故によって骨折したケースと比べると、疲労骨折は労災認定で確認すべき点が多くなりやすい傷病です。
疲労骨折は、骨に繰り返し負荷が加わることによって生じます。
そのため、診断名が疲労骨折だからといって、直ちに仕事が原因と判断されるわけではありません。
仕事による負荷と骨折との関係を具体的に整理する必要があります。
たとえば、重量物を長時間運搬する仕事、特定の部位に反復して強い負荷がかかる作業、走行や歩行を長時間繰り返す仕事などでは、実際にどの程度の負荷が、どのくらいの期間続いていたのかが重要になります。
疲労骨折では、 仕事内容、勤務時間、作業頻度、重量、歩行・走行距離、症状が出始めた時期 などをできるだけ具体的に整理しておくことが大切です。
一方で、スポーツやトレーニングを日常的に行っている場合、既往症がある場合などは、仕事以外の負荷との関係も確認される可能性があります。
業務以外の要因があるから直ちに労災にならないという意味ではありませんが、仕事による負荷との因果関係を判断するための材料になります。
実務では、事故型の骨折であれば「○月○日○時ごろ、倉庫で荷物を持ち上げた際に転倒した」と事故を特定できます。
一方、疲労骨折では発症の原因となる一つの出来事を特定できないことも多いため、業務内容を時系列で整理することが特に重要です。
医師に仕事内容を正確に伝えることも欠かせません。
医学的な診断と業務上の負荷の両面から確認されるため、仕事内容を曖昧にしたままでは判断材料が不足することがあります。
骨折の労災申請と後遺障害への対応
骨折は骨が癒合すればすべて終了とは限りません。
関節の動きに制限が残ったり、骨が変形したまま癒合したり、痛みやしびれが残ったりすることがあります。
ここからは、症状固定後の障害補償と、実際に労災給付を請求する手続きを整理します。
後遺障害が残れば障害補償の対象
骨折の治療を続けても、事故前とまったく同じ状態まで回復しないことがあります。
労災保険では、医学上一般に認められた治療を行っても、それ以上の改善が期待できない状態を「治癒」として扱い、一般には症状固定と呼ばれます。
症状固定後に一定の障害が残っている場合には、障害(補償)等給付を請求できる可能性があります。
重要なのは、 骨折したという事実だけで障害等級が認定されるわけではない という点です。
確認されるのは、治療を終えた後にどのような身体障害が残っているかです。
たとえば、骨はつながっていても足首が十分に曲がらない、左右の脚の長さに差が残った、骨が変形した状態で癒合した、骨折した部分に強い痛みやしびれが残ったといったケースでは、障害等級に該当するかを検討します。
交通事故では「後遺障害」という表現をよく使いますが、労災保険では法令上「障害(補償)等給付」として障害等級を認定する仕組みです。
症状固定の時期は、その後の給付に関わる重要なポイントです。
ただし、労働者本人や会社が「もう半年たったから症状固定」と決めるものではありません。
医学的な治療経過を踏まえる必要があるため、まずは主治医と治療状況について十分に確認することが大切です。
また、「まだ痛いから症状固定ではない」とも限りません。
痛みが残っていても、治療によって改善する見込みがなく症状が安定している場合には、労災保険上の治癒として取り扱われることがあります。
その場合には、残存症状について障害給付の対象となるかを確認していきます。
骨折で認定される後遺障害等級

労災保険の障害等級は、第1級から第14級まで設けられています。
一般に、第1級から第7級までに該当する場合は年金、第8級から第14級までに該当する場合は一時金として障害(補償)等給付が支給されます。
ただし、骨折だから何級という決まり方ではありません。
骨折した部位と、症状固定後に残った障害の程度によって判断されます。
| 骨折後に残る障害の例 | 確認される主な内容 |
|---|---|
| 変形障害 | 骨が一定程度変形した状態で癒合しているか |
| 短縮障害 | 骨折によって左右の手足の長さに差が生じているか |
| 関節の機能障害 | 関節の可動域がどの程度制限されているか |
| 偽関節 | 骨が正常に癒合せず異常な可動性などが残っているか |
| 神経症状 | 痛みやしびれについて医学的な所見が確認できるか |
たとえば関節の機能障害では、単に「以前より動かしにくい気がする」という自己申告だけではなく、医師による関節可動域の測定など客観的な所見が重要になります。
また、同じ骨折によって複数の障害が残った場合には、それぞれを単純に足し合わせるのではなく、労災保険の障害等級認定基準に基づく併合や派生関係などの考え方によって最終的な等級が判断されます。
「骨折で痛みが残れば必ず12級」「しびれがあれば14級」といった形で、症状名だけから等級を断定することはできません。
障害の認定では、診断内容、画像所見、可動域測定、治療経過などを総合的に確認します。
等級によって給付内容も大きく変わるため、障害が残りそうな場合は、症状固定前から主治医へ現在の症状を具体的に伝えておくことが重要です。
慰謝料や見舞金は労災給付と別制度
骨折の労災について調べると、「慰謝料はいくらになるのか」という情報を目にすることがあります。
しかし、ここは労災保険と民事上の損害賠償を分けて考える必要があります。
労災保険そのものに、精神的な苦痛を理由とする一般的な慰謝料という給付項目はありません。
労災保険は、治療、休業、障害、遺族への補償などを法律に基づいて行う社会保険制度です。
一方、会社に安全配慮義務違反などがあり、民事上の損害賠償責任が成立する場合には、会社へ慰謝料などを請求できる可能性があります。
また、通勤中の交通事故のように第三者が加害者となる災害では、その第三者に対する損害賠償の問題が生じることがあります。
労災保険から給付を受けることと、会社や第三者へ損害賠償を請求することは別の制度です。
第三者行為災害では、労災保険と損害賠償との間で支給調整が行われる場合があるため、同じ損害について単純に両方から二重に全額受け取れるものではありません。
また、会社から独自の見舞金が支払われる場合もあります。
こちらも労災保険の法定給付とは別であり、会社の就業規則、慶弔規程、災害補償規程、福利厚生制度などによって内容が異なります。
そのため、「骨折なら会社から見舞金が○万円もらえる」という全国共通の制度はありません。
会社独自の制度があるかどうかは勤務先の規程を確認してください。
労災保険の請求や社会保険・労務に関する手続きは社労士が扱う分野ですが、慰謝料などの民事上の損害賠償請求について具体的な対応を検討する場合は弁護士の領域となります。
どの制度の話をしているのかを分けて考えることが重要です。
骨折の労災申請に必要な書類と流れ
骨折した場合の労災手続きは、一枚の「労災申請書」を提出すればすべての給付が自動的に受けられる仕組みではありません。
受けようとする給付や、業務災害か通勤災害かによって使用する様式が異なります。
基本的には、まず医療機関を受診するときに仕事中または通勤中の事故であることを伝えます。
そのうえで、治療費の請求、休業に関する請求などを必要に応じて進めていきます。
| 手続き | 業務災害の代表的な様式 | 通勤災害の代表的な様式 |
|---|---|---|
| 指定医療機関で治療 | 様式第5号 | 様式第16号の3 |
| 治療費を立て替えて請求 | 様式第7号 | 様式第16号の5 |
| 休業に関する給付 | 様式第8号 | 様式第16号の6 |
| 障害に関する給付 | 様式第10号 | 様式第16号の7 |
休業に関する請求では、医師に療養のため労働できなかった期間を証明してもらう必要があります。
また、会社側にも事故発生状況や賃金などについて確認・証明してもらう項目があります。
事故が発生した直後には、日時、場所、仕事内容、事故の経緯、目撃者、負傷した部位などをできるだけ具体的に記録しておくことをおすすめします。
時間がたってから書類を作成すると、「どちらの足から滑ったのか」「何キロ程度の荷物を持っていたのか」といった細かな状況が分からなくなることがあります。
骨折では治療が長期化することもあるため、診療明細、領収書、会社との連絡内容なども整理して保管しておくと、その後の手続きを進めやすくなります。
労災保険の各種請求書は、労働基準監督署の窓口のほか、 厚生労働省の労災保険給付関係の主要様式ダウンロードページ からも確認できます。
使用する様式は事故の内容や受診先などによって異なる場合があります。
制度や様式は変更されることもあるため、 正確な情報は公式サイトをご確認ください。
会社が労災申請に協力しない場合

実務で比較的多いのが、「会社から労災ではないと言われた」「申請書に会社が証明してくれない」という相談です。
まず押さえておきたいのは、 会社が労災だと認めなければ申請できないという制度ではない という点です。
労災保険給付について支給・不支給を判断するのは、会社ではなく労働基準監督署長です。
会社には、請求書の中で事故発生状況などについて事業主として証明する欄があります。
しかし、会社が証明を拒否している場合でも、それだけを理由として労働者が労災保険を請求できなくなるわけではありません。
事業主証明を受けられない場合でも、その事情を労働基準監督署へ説明して請求を進めることができます。
会社側としても、「自社では労災ではないと思う」という理由だけで、労働者が申請すること自体を妨げる対応は適切ではありません。
会社として事故状況について異なる認識があるのであれば、その事実関係を整理したうえで説明することと、労災保険の請求そのものを妨げることは分けて考える必要があります。
また、労災保険の請求と「労働者死傷病報告」は別の手続きです。
業務上の災害によって労働者が死亡または休業した場合には、事業者側に労働者死傷病報告の提出が必要となるケースがあります。
提出すべき労働者死傷病報告を故意に提出しなかったり、虚偽の内容を報告したりする、いわゆる労災かくしは認められません。
会社と事故原因について意見が食い違っていることと、労災かくしは同じ意味ではありません。
個別の状況を確認せず、単に会社が証明を拒否しただけで直ちに労災かくしと断定するのは避けるべきです。
会社の事業主証明を得られない場合の取扱いについては、 厚生労働省の労災保険に関する公式Q&A でも案内されています。
申請を拒否されて困っている場合には、事故の日時や状況、会社とのやり取りなどを整理したうえで、所轄の労働基準監督署や専門家へ相談するとよいでしょう。
労災で骨折したときの補償と手続きまとめ
仕事中や通勤中に骨折した場合、一定の要件を満たせば労災保険による補償を受けられます。
労災指定医療機関で治療を受ける場合には、原則として治療費の窓口負担なく療養給付を受けられます。
骨折によって働けず賃金を受けられない期間については、休業4日目以降、一般的には給付基礎日額の80%相当となる休業(補償)等給付と休業特別支給金の対象になる可能性があります。
ただし、業務災害と通勤災害では待期期間の取扱いが異なります。
業務災害では最初の3日間について事業主による休業補償が原則として必要ですが、通勤災害には同じ法律上の義務はありません。
また、骨折後に関節の可動域制限、変形、短縮、痛みやしびれなどが残った場合には、症状固定後に障害(補償)等給付の対象となる可能性があります。
骨折の労災では「治療中の補償」と「症状固定後の障害補償」を時間軸で分けて考えると、制度を理解しやすくなります。
一方、労災保険には一般的な慰謝料は含まれていません。
会社や第三者への慰謝料・損害賠償請求と、労災保険による治療費・休業補償・障害補償は別の制度として整理する必要があります。
特に疲労骨折や事故原因について会社と認識が異なるケース、長期休業となるケース、症状固定後に障害が残るケースでは、個別の事情によって判断が変わります。
この記事で紹介した金額や取扱いは一般的な制度を基にしたものであり、実際の支給額や認定結果は事故状況、賃金、治療経過、残存障害などによって異なります。
制度や様式は改正される可能性もあるため、 正確な情報は公式サイトをご確認ください。
また、個別の労災認定や給付、会社との対応について判断に迷う場合は、 最終的な判断は専門家にご相談ください。