労災

労災で骨折後に出勤すると休業補償はどうなる?実務で確認

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

労災による骨折の治療中でも、主治医が就労可能と判断し、会社と勤務内容を調整できれば出勤することは可能です。

ただし、一部でも出勤した日は、勤務時間や支払われた賃金額によって休業補償給付の金額が変わることがあります。

特に、午前中に通院して午後から働く場合や、半日だけ出勤する場合は、単純に休業補償がすべて打ち切られるわけではありません。

実際には、働けなかった時間とその日に支払われた賃金の状況に応じて、一部休業として給付を受けられる可能性があります。

一方で、骨折が治りきっていない段階で無理に復帰すると、症状の悪化や再受傷につながるおそれがあります。

出勤できるかどうかは、補償の有無だけでなく、主治医の意見、実際の仕事内容、通勤方法、会社が用意できる配慮を含めて判断することが大切です。

労災で骨折した方からは、「少しでも出勤すると休業補償が止まるのか」「通院のため半休を取った日は給付が出るのか」「ギプスを着けたまま復帰してよいのか」といった相談をよく受けます。

制度と医学的な復帰判断を分けて考えると、整理しやすくなります。

  • 骨折の治療中に出勤できる条件
  • 半休や一部出勤時の休業補償の扱い
  • 骨折後に職場復帰する時期の考え方
  • 試し出勤中の賃金と労災保険の注意点

労災で骨折後に出勤する条件と休業補償

労災で骨折後に出勤する際の補償

労災による骨折で休業している期間中に出勤すると、休業補償給付がすぐに終了すると思われることがあります。

しかし、実際の取扱いは、丸一日勤務したのか、一部の時間だけ働いたのか、会社からいくら賃金を受けたのかによって異なります。

休業補償給付は、単に会社を欠勤したという事実だけで決まるものではありません。

労災による負傷の療養のために労働できなかったことと、その休業部分について賃金を受けていないことが重要です。

ここでは、出勤しながら通院するケース、半日だけ働くケース、有給休暇を取得したケース、待期期間中に一部出勤したケースなど、実務上よく問題になる場面を順番に整理します。

出勤しながら通院できる条件

骨折の療養中であっても、出勤しながら通院すること自体は禁止されていません。

午前中に病院で診察やリハビリを受け、午後から会社で勤務する働き方や、通常は勤務しながら週に一度だけ通院のため早退する働き方も考えられます。

労災の治療中であることと、まったく働けない状態であることは必ずしも同じではありません。

骨が完全に癒合する前であっても、患部に負担をかけない業務であれば、医師が制限付きの勤務を認めることがあります。

反対に、痛みが弱くなったとしても、仕事内容によっては復帰が早すぎる場合があります。

たとえば、足首を骨折した人が座った状態で行う事務作業に戻る場合と、倉庫内で一日中歩き回る作業に戻る場合では、同じ骨折でも復帰の判断は大きく変わります。

手首の骨折でも、電話応対を中心とする仕事と、工具を握って作業する仕事とでは負担が異なります。

本人の感覚だけで出勤を決めない

出勤できるかどうかを本人の感覚だけで決めるのは避けたほうがよいでしょう。

痛み止めを服用していると、一時的に症状が軽く感じられることがあります。

また、職場では問題なく過ごせても、往復の通勤によって腫れや痛みが強くなることもあります。

実務上は、「自宅では歩けるようになったので出勤したい」という申し出があっても、通勤時間、職場内の移動距離、階段の有無、休憩を取れる環境などまで確認します。

勤務中だけでなく、出勤して帰宅するまでを一つの負担として考える必要があります。

出勤を再開する前に確認したいのは、主治医が認める就業範囲です。

  • 一日何時間まで勤務できるか
  • 立ち仕事や長時間の歩行が可能か
  • 階段の上り下りに制限があるか
  • 重量物を持ち上げられるか
  • 自動車やフォークリフトを運転できるか
  • 患部を使う反復動作が可能か
  • 通勤時の混雑や長距離移動に耐えられるか
  • 勤務後に通院やリハビリを続けられるか

診断書には具体的な制限を記載してもらう

医師がデスクワークなら可能と判断していても、会社で実際に行う仕事が倉庫作業や運搬作業であれば、そのまま復帰できるとは限りません。

診断書には、単に「就業可能」と記載してもらうだけでなく、必要に応じて業務上の制限も記載してもらうと調整しやすくなります。

たとえば、「一日4時間まで」「立位作業を避ける」「重量物の取扱いを禁止する」「右手を使用する反復作業を避ける」「自動車運転を控える」といった内容です。

会社は医療機関ではないため、診断名だけを見ても、どこまで仕事を任せてよいか判断できないことがあります。

本人が主治医へ仕事内容を十分に伝えていないと、医師は一般的な事務作業を想定して就業可能と判断しているかもしれません。

受診時には、実際の業務内容を箇条書きにしたメモを持参する方法も有効です。

会社は勤務条件を記録しておく

会社側も、本人から出勤の希望があったという理由だけで通常業務へ戻すのではなく、医師の意見を踏まえて勤務時間や担当業務を決める必要があります。

中小企業では、復帰時の業務内容を口頭だけで決めるケースもありますが、後日の認識違いを防ぐため、当面の勤務条件を書面やメールに残しておくことをおすすめします。

記録する内容としては、勤務時間、休憩時間、担当する作業、禁止する作業、残業の可否、次回の見直し日などが挙げられます。

本人の体調に変化があった場合の連絡先や、途中で勤務を中止する基準も決めておくと安心です。

出勤を認めた後も、痛みや腫れが強くなった場合は、当初の計画にこだわらず勤務時間や業務内容を見直してください。

復帰計画は、一度決めたら変更できないものではありません。

また、労災の療養を続けながら出勤したとしても、治療が必要である限り、療養補償給付または療養給付が直ちに終了するわけではありません。

治療の必要性と労働できる範囲は、別々に判断されます。

つまり、通院を続けながら働くことは十分にあり得ます。

ただし、通院日の休業補償については、その日の労働状況と賃金の支払い状況を個別に確認する必要があります。

一部出勤でも休業補償は出るか

一部出勤でも休業補償は出るか

午前中に通院して午後から出勤した場合など、所定労働時間の一部だけ休業した日についても、一定の要件を満たせば休業補償給付の対象になる可能性があります。

ここで大切なのは、半日出勤したという理由だけで、その日の休業補償が一律にゼロになるわけではないという点です。

反対に、半日休んだから必ず半日分の給付が支給されるとも限りません。

実際に働いた時間、その日に支払われる賃金、休んだ理由を総合して判断されます。

休業補償給付の3つの要件

休業補償給付または休業給付は、基本的に次の3つの条件を満たす日について支給されます。

  • 業務上または通勤による負傷や疾病の療養中であること
  • 療養のため労働することができないこと
  • 休業した部分について賃金を受けていないこと

そのため、単に私用で遅刻した場合や、骨折とは無関係の事情で早退した場合は、労災の休業補償の対象にはなりません。

休んだ時間が、労災による骨折の診察、治療、リハビリ、療養上必要な安静などによるものである必要があります。

また、骨折後に一度でも会社へ行けば、その日以降の休業補償がすべて打ち切られるという仕組みでもありません。

働けなかった時間があり、その部分について賃金が支払われていなければ、一部休業として給付を受けられる余地があります。

厚生労働省も、出勤しながら週に一度通院している場合について、支給要件を満たせば通院日のみ休業補償給付の対象になり得ると案内しています。

具体的な考え方は、 厚生労働省「出勤しながら週に1回は通院していますが、休業(補償)等給付をもらえますか」 で確認できます。

休業補償給付では、単に出勤したかどうかだけでなく、 その日にどの程度働き、実労働分としていくら賃金を受けたか が重要になります。

半日出勤の典型例

たとえば、所定労働時間が午前8時30分から午後5時30分までの8時間で、午前中に骨折の診察とリハビリを受け、午後1時から4時間勤務したとします。

午前中の4時間分について欠勤控除が行われ、午後の実労働4時間分だけ賃金が支払われるのであれば、働けなかった部分を基礎として給付を受けられる可能性があります。

一方、会社が福利厚生として通院時間も有給扱いにし、一日分の賃金を全額支払っている場合は、その日に賃金を受けていないとはいえないため、通常は同じ日の休業補償給付を受けられません。

また、月給制の社員について欠勤控除を行わない会社では、本人は半日休んでいても給与が減らないことがあります。

この場合も、賃金台帳上の処理だけでなく、その賃金が休業した部分を含めて支払われているのかを確認する必要があります。

週に一度の通院でも請求できる可能性がある

骨折後に通常勤務へ戻ったものの、週に一度、平日の午後に通院するケースもあります。

この場合、他の日に通常どおり働いているからといって、通院日の一部休業まで当然に対象外になるわけではありません。

通院が労災による骨折の療養に必要であり、その時間について労働できず、賃金も受けていなければ、通院日の休業部分のみを請求できる可能性があります。

反対に、会社の所定休日に通院できるにもかかわらず、本人の都合だけで勤務時間中に受診したような場合は、療養のため労働できなかったと評価されるか慎重な確認が必要です。

一部休業を申請するときに残しておきたい記録

  • 実際の出勤時刻と退勤時刻
  • 通院した医療機関と受診時間
  • その日に行った業務内容
  • 欠勤控除された時間と金額
  • 有給休暇を使用した時間の有無
  • 会社から支払われた賃金の内訳

実際の請求では、出勤簿、タイムカード、賃金台帳などによって、出勤時間と賃金額を確認できるようにする必要があります。

従業員本人と会社の説明が食い違うと、労働基準監督署から追加の確認を受けることもあります。

特に、勤怠上は一日出勤になっているものの、実際には途中で通院しているケースや、月給を満額支給した後に遡って欠勤控除するケースでは、申請内容との整合性に注意してください。

通院した時間や勤務した時間を日ごとに正確に記録しておきましょう。

半休時の休業補償の計算方法

所定労働時間の一部だけ働いた日は、その日の給付基礎日額から、実際に働いた部分に対して支払われる賃金額を差し引いて計算します。

ただし、一般的な会社の半日欠勤控除と、労災保険上の一部休業の計算は、必ずしも同じではありません。

会社が給与計算で用いる時間単価と、労災保険の給付基礎日額は異なる仕組みによって算出されるためです。

一部休業日の基本的な計算式

(給付基礎日額-実労働に対して支払われた賃金額)×80%

80%の内訳は、休業補償給付または休業給付の60%と、休業特別支給金の20%です。

法律上の本体給付が60%、社会復帰促進等事業として支給される特別支給金が20%という構成になります。

半日勤務した場合の計算例

たとえば、給付基礎日額が1万円で、所定労働時間8時間のうち4時間だけ出勤し、実労働分として5,000円の賃金が支払われたとします。

この場合の計算例は次のとおりです。

項目 計算内容 金額
給付基礎日額 労災保険上の1日当たりの基礎額 10,000円
実労働分の賃金 4時間の勤務に対して支払われる賃金 5,000円
賃金控除後の額 10,000円-5,000円 5,000円
休業補償給付 5,000円×60% 3,000円
休業特別支給金 5,000円×20% 1,000円
労災保険からの支給合計 3,000円+1,000円 4,000円

この例では、会社から支払われる5,000円と、労災保険から支給される4,000円を合わせて、合計9,000円になる計算です。

ただし、これは仕組みを分かりやすく説明するための単純化した例であり、すべての半日勤務が同じ金額になるわけではありません。

給付基礎日額は単純な日割りではない

実際の給付基礎日額は、原則として労働基準法上の平均賃金に相当する額を基礎として算定されます。

一般には、災害発生日以前3か月間に支払われた賃金総額を、その期間の暦日数で割って計算しますが、賃金締切日の有無や最低保障などにより計算方法が変わることがあります。

たとえば、月給30万円だから給付基礎日額が必ず1万円になるとは限りません。

算定期間が89日なのか92日なのかでも金額は変わりますし、時間外手当や各種手当のうち、どの賃金を算入するかも確認が必要です。

また、臨時に支払われた賃金や3か月を超える期間ごとに支払われる賃金などは、通常の平均賃金の算定から除外されることがあります。

賞与を単純に3か月へ割り戻して計算するわけではありません。

月給を所定労働日数や30日で割った金額と、労災保険上の給付基礎日額は別の考え方です。

給与担当者が独自に見込み額を算出し、本人へ確定額として案内しないよう注意してください。

支払われる賃金の範囲にも注意する

一部休業日の計算では、実労働に対して支払われる賃金額が差し引かれます。

基本給だけでなく、その日の労働に対応する手当がある場合は、その取扱いも確認する必要があります。

一方で、通勤手当や家族手当など、その日の実労働時間に直接対応しない手当をどのように扱うかは、賃金制度や支給実態によって確認が必要です。

会社側で一律に判断せず、請求書を提出する労働基準監督署へ相談するのが確実です。

時間給の労働者であれば、実際に勤務した時間数に時間給を掛けた額が分かりやすいですが、月給制では欠勤控除の計算方法が会社ごとに異なります。

月給制だから一部休業を請求できないわけではありませんが、実労働分に対応する賃金額を説明できるようにしておく必要があります。

給与締切後に修正する場合

給与計算の締切後に労災申請が決まり、すでに一日分の賃金を支払っているケースもあります。

その場合、翌月給与で欠勤控除を行うのか、過払い分を精算するのかなど、会社の処理を明確にする必要があります。

賃金台帳上は満額支給のままなのに、休業補償給付の請求書では無給と記載すると、内容が一致しません。

実務では、いつの給与でどの金額を控除したのかを説明できる資料を用意します。

半日休業の請求では、勤怠記録と賃金台帳だけでなく、給与の計算根拠を示す資料も残しておくと手続きが進みやすくなります。

また、所定労働時間の一部について休業補償を請求する場合は、休業給付の請求書に加え、部分算定日に関する資料の提出を求められることがあります。

使用する様式や添付資料は事案によって異なる可能性があるため、提出前に管轄の労働基準監督署へ確認してください。

有給休暇を使った日の扱い

有給休暇を使った日の扱い

骨折の治療や通院のために仕事を休み、その日を有給休暇として処理した場合は、原則としてその日の休業補償給付を受けることはできません。

有給休暇を取得すると、会社から有給休暇に対応する賃金が支払われます。

そのため、休業補償給付の要件である「賃金を受けていないこと」を満たさなくなるためです。

労災になったから有給休暇を取得できないわけではありません。

本人が希望し、年次有給休暇の取得要件を満たしていれば、労災による休業日に有給休暇を取得することは可能です。

ただし、有給休暇の賃金と休業補償給付を同じ日について重複して受け取ることは、基本的にはできません。

休業補償給付は、収入が減少した休業日を補うための給付であるため、会社から賃金が支払われた部分まで重ねて補償する仕組みではないからです。

有給休暇を使うかどうかは本人の判断

労災による休業だからといって、会社が本人の意思を確認せず、当然に年次有給休暇へ振り替えることは適切ではありません。

年次有給休暇は、原則として労働者が請求する時季に取得する制度です。

実務上は、労災かどうかまだ分からない段階で、欠勤による収入減を避けるために本人が有給休暇を希望することがあります。

その後、労災と認められた場合に、有給休暇を取り消して休業補償給付を請求したいという相談もあります。

このような変更が可能かどうかは、すでに給与計算が確定しているか、会社が有給休暇の取消しに応じるか、賃金の返還や精算をどのように行うかによって異なります。

後から処理を変更すると勤怠、給与、労災請求をすべて修正する必要があるため、できるだけ給与締切前に方針を決めておくことが望ましいです。

待期期間だけ有給休暇を使う方法

休業期間の全日について、有給休暇か休業補償給付のどちらか一方を選び続ける必要はありません。

待期期間だけ有給休暇を利用し、4日目以降は休業補償給付を請求するなど、日ごとに処理を分けることは可能です。

休業の最初の3日間は、労災保険から休業補償給付が支給されない待期期間です。

そのため、通勤災害で会社から休業補償がなく、収入が途切れることを避けるために、本人が待期期間だけ有給休暇を取得することがあります。

業務災害の場合は、待期期間について会社に労働基準法上の休業補償義務があるため、有給休暇を使うかどうかは、その補償額や本人の希望を踏まえて検討します。

年次有給休暇を使えば通常は有給休暇の賃金が支払われますが、貴重な有給休暇の日数を消化することになります。

本人にとってどちらが有利かは、会社の就業規則、有給休暇中の賃金の計算方法、会社独自の補償制度などによって異なります。

会社は一方的に誘導せず、それぞれの取扱いを説明したうえで本人の希望を確認するとよいでしょう。

時間単位有給休暇を使った場合

会社が労使協定に基づく時間単位年休制度を導入している場合、通院時間だけ時間単位の有給休暇を取得することもあります。

この場合、有給休暇を取得して賃金が支払われた時間については、原則として休業補償給付の対象になりません。

たとえば、8時間勤務のうち2時間を時間単位年休として取得し、残り6時間を勤務した場合、2時間分について会社から賃金が支払われています。

そのため、その2時間を無給の一部休業として請求することは通常できません。

一方、時間単位年休を使わず、2時間分を欠勤控除した場合には、その時間が労災による療養のための休業であれば、一部休業として取り扱われる可能性があります。

勤怠システム上の区分が「通院」「特別休暇」「有給」「欠勤」のどれになっているかだけでなく、実際に賃金が支払われたかどうかを必ず確認してください。

有給休暇と労災給付の関係については、 労災中の有給休暇と休業補償の併用ルール でも詳しく解説しています。

会社側では、給与計算を確定した後に本人から労災申請の希望を伝えられ、処理の変更が必要になることがあります。

欠勤、有給休暇、一部出勤のどれとして処理するのかは、給与計算前に本人と確認しておくと実務がスムーズです。

待期期間3日間の補償ルール

労災保険の休業補償給付または休業給付は、休業初日から支給されるわけではありません。

休業の最初の3日間は待期期間となり、労災保険からの給付は原則として4日目から支給されます。

待期期間は、健康保険の傷病手当金にある待期と混同されやすいところです。

労災保険の休業給付では、業務災害または通勤災害による負傷の療養のため労働できず、賃金を受けていない日を確認します。

暦日で3日間を数える

待期期間は、会社の所定労働日だけで数えるのではなく、療養のため労働できない状態が続いていれば、土曜日、日曜日、祝日などを含む暦日で数えます。

たとえば、金曜日に業務中の事故で骨折し、その日から労働できなかった場合は、金曜日、土曜日、日曜日の3日間で待期が完成し、支給要件を満たせば月曜日から労災保険の休業補償給付が支給対象になります。

ただし、金曜日に事故が起きた後も所定労働時間の終わりまで通常どおり働いた場合、その日を待期の初日として数えられるかは、実際に労働不能となった時間や賃金の支払い状況によって確認が必要です。

事故当日に早退した場合も、早退した部分について賃金を受けているかどうかなどを見ます。

単に事故が発生した日から自動的に3日を数えると考えないほうがよいでしょう。

業務災害と通勤災害の違い

業務災害と通勤災害では、待期期間中の会社の補償義務が異なります。

災害の種類 待期期間中の取扱い 実務上の確認事項
業務災害 会社が原則として平均賃金の60%を休業補償として支払う 平均賃金の算定と休業日数を確認する
通勤災害 労働基準法上の会社の休業補償義務はない 就業規則、特別休暇、有給休暇の取扱いを確認する

業務災害の場合、待期期間中の補償は労災保険から支給されるものではなく、労働基準法に基づいて会社が負担するものです。

会社が任意に支払う見舞金とは異なり、業務上の負傷により療養のため労働できない場合の法定補償です。

一方、通勤途中に転倒して骨折したケースなどの通勤災害には、労働基準法上の休業補償義務は適用されません。

会社独自の休業補償制度や有給の特別休暇制度がなければ、最初の3日間が無給になることがあります。

通勤災害でも4日目以降は、所定の要件を満たせば労災保険の休業給付を受けられます。

最初の3日間だけ取扱いが異なる点に注意してください。

待期期間中に一部出勤した場合

待期期間中に一部出勤した日があると、待期がいつ完成するのか分かりにくくなります。

たとえば、事故の翌日に2時間だけ出勤し、残りの時間を休んだ場合、その日が待期日として扱われるかは、労働できなかった範囲や賃金の支払い状況によって判断されます。

一部休業でも待期日として認められる可能性はありますが、通常勤務した日を待期日として数えることはできません。

数え方を誤ると、休業給付の請求開始日もずれてしまいます。

待期期間中に一部出勤、有給休暇、会社独自の補償が混在している場合は、日ごとの勤怠と賃金を整理したうえで、管轄の労働基準監督署へ確認するのが確実です。

休日も支給対象になることがある

待期が完成した後は、療養のため労働できず、賃金を受けていない状態が続いていれば、会社の所定休日についても休業補償給付の対象になることがあります。

月曜日から金曜日まで勤務する会社で、金曜日まで休業し、土曜日と日曜日も療養のため労働できない状態であれば、休日分も含めて給付される可能性があります。

所定労働日だけを請求する制度ではありません。

ただし、途中で通常勤務へ復帰した後の休日や、医師が労働可能と判断している期間については、同じようには扱われません。

休業補償給付をいつまで請求できるかは、治療中であることだけでなく、労働できない状態が続いているかを確認します。

待期期間や休日の取扱いは、休業開始日、一部出勤、有給休暇、給与の支払い状況によって結果が変わることがあります。

会社側は、事故発生日からの勤怠を時系列で一覧にしておくと確認しやすくなります。

労災で骨折後に出勤する時期と注意点

休業補償給付を受けられるかどうかと、医学的に出勤しても問題がないかどうかは別の問題です。

補償が減ることを心配して早く復帰したり、反対に給付を受けるために必要以上に復帰を遅らせたりするのは適切ではありません。

骨折後の復帰では、「仕事ができるか」という一点だけではなく、「安全に通勤できるか」「一日の勤務を継続できるか」「帰宅後も治療を続けられるか」「周囲の従業員に危険が及ばないか」まで確認する必要があります。

ここからは、骨折した部位や仕事内容による復帰時期の違い、主治医へ確認する内容、リハビリ出勤を実施する際の注意点を解説します。

骨折部位別の職場復帰目安

骨折後にいつから出勤できるかは、骨折した部位、骨折の程度、手術の有無、年齢、基礎疾患、通勤方法、仕事内容などによって大きく異なります。

そのため、「手首の骨折なら何週間」「足首の骨折なら何か月」と一律に決めることはできません。

同じ部位の骨折でも、ひびに近い安定した骨折と、骨が大きくずれて手術を要した骨折とでは、治療経過が異なります。

また、レントゲン上の状態が良好でも、痛み、腫れ、可動域の制限、筋力低下が残ることがあります。

反対に、骨が完全に癒合する前でも、患部を使わない仕事であれば制限付きで勤務できる場合があります。

上肢の骨折

一般的には、手首や腕などの上肢を骨折した場合でも、デスクワーク中心であれば、ギプスを着けた状態で比較的早い時期に復帰できることがあります。

ただし、パソコン入力、筆記、書類整理、電話の受話器を持つ動作などに支障があれば、通常どおりの勤務は難しくなります。

利き手を骨折した場合は、反対側の手で代替できる業務がどの程度あるかも確認します。

入力速度が大きく低下するのであれば、仕事量を減らしたり、音声入力を使ったりする配慮も考えられます。

製造業や整備業など、工具を握る、部品を固定する、機械を操作するといった業務では、握力や細かな動作の回復が必要です。

骨が安定していても、十分な力を出せなければ事故につながることがあります。

下肢の骨折

足首、すね、膝周辺などの下肢を骨折した場合は、通勤そのものが大きな負担になります。

職場では座って仕事ができても、駅まで歩く、階段を利用する、満員電車で立つといった行動が難しいことがあります。

松葉づえを使っている間は、雨天時の路面、冬季の凍結、駅の混雑なども大きなリスクです。

盛岡を含む積雪地域では、夏季には問題なく通勤できる状態でも、冬季は同じ移動方法が危険になることがあります。

自動車通勤の場合も、右足の骨折でアクセルやブレーキを操作できるか、乗り降りが安全にできるかを確認します。

本人が運転できると感じていても、急ブレーキを踏めるかどうかは別の問題です。

医師の許可がない段階で運転を再開するのは避けたほうがよいでしょう。

骨折部位ごとの確認事項

骨折部位 復帰時に確認したい動作 会社で考えられる配慮
手首・腕 パソコン操作、筆記、荷物の持ち運び、工具の操作 片手でできる業務、入力作業の軽減、重量物作業の免除
細かな作業、つまむ動作、キーボード入力、機械操作 作業速度の調整、危険な機械操作の禁止
肋骨 深呼吸、咳、体をひねる動作、持ち上げ動作 重量物作業の免除、休憩回数の増加
足首・すね 歩行、階段、立ち仕事、車両運転 座位作業、駐車場所の変更、在宅勤務
膝周辺 しゃがむ、階段、長時間の立位、方向転換 低い場所での作業免除、移動距離の短縮
腰椎・骨盤 長時間座る、前屈、車両運転、重量物の運搬 姿勢変更の機会、短時間勤務、持ち上げ作業の禁止

一般的な治癒期間だけで判断しない

骨折の固定期間は一般的に数週間程度、骨が安定するまでには数か月程度を要するケースがありますが、これはあくまで一般的な目安です。

骨折の状態によっては、より長期間の治療やリハビリが必要になることもあります。

骨が完全に治る時期と、制限付きで仕事へ戻れる時期は同じではありません。

職場で患部に負担をかけずに働けるのであれば、治療を続けながら段階的に復帰できる場合があります。

反対に、骨の癒合が進んでいても、長期間の固定によって筋力が低下し、以前と同じ作業ができないことがあります。

現場作業へ戻る前には、業務で必要となる動作を安全に行えるか確認することが重要です。

インターネット上の一般的な復帰期間は参考にはなりますが、あなたの骨折部位、手術内容、仕事内容にそのまま当てはめることはできません。

復帰時期は主治医の診断を前提にしてください。

建設業、運送業、介護職、製造業など、身体への負担が大きい仕事では、デスクワークより慎重な判断が必要です。

無理に現場へ戻ると、転倒や再骨折だけでなく、運転事故、機械への巻き込まれ、利用者の転倒など、周囲の人を巻き込む事故につながる可能性もあります。

復帰の目安は、診断名だけではなく、実際の業務を安全に遂行できる状態かどうかで考える必要があります。

主治医へ確認すべき復帰条件

主治医へ確認すべき復帰条件

職場復帰を検討するときは、主治医に「仕事へ戻ってよいですか」とだけ質問するのではなく、実際の仕事内容を具体的に伝えることが重要です。

医師は骨折の状態や治療経過を把握していますが、患者が職場でどのような動作をしているのかまでは詳しく知らないことがあります。

単に事務職と伝えていても、実際には来客対応、書類の運搬、車での外出、階段の上り下り、倉庫での荷物整理が含まれているかもしれません。

反対に、現場職と伝えていても、一時的に事務作業へ変更できる会社であれば、通常業務より早い時期に制限付きで復帰できる可能性があります。

会社でどのような代替業務を用意できるかも主治医へ伝えると、具体的な意見を得やすくなります。

主治医へ伝えておきたい内容

  • 一日の所定労働時間と休憩時間
  • 座り仕事と立ち仕事の割合
  • 一日に歩く距離や階段の使用頻度
  • 重量物を扱う頻度と重量
  • 車両や機械の運転の有無
  • 危険な場所での作業の有無
  • 通勤時間と通勤方法
  • 在宅勤務が可能か
  • 会社で用意できる軽作業の内容

就業可否だけでなく制限内容を確認する

主治医には、単に出勤できるかどうかだけでなく、次のような具体的な条件を確認すると、会社との調整がしやすくなります。

  • 一日何時間から復帰できるか
  • 連続して座れる時間はどの程度か
  • 残業や休日出勤を控える必要があるか
  • 立ち作業や歩行時間に制限があるか
  • 持ち上げられる重量に制限があるか
  • 自動車や機械の運転が可能か
  • 松葉づえや装具をいつまで使用するか
  • いつ再診し、勤務条件を見直すか

「軽作業なら可能」という表現だけでは、会社が何を任せてよいか判断しにくいことがあります。

本人は椅子に座って行う作業だけを軽作業と考え、会社は重量物を扱わない現場作業まで軽作業に含めることがあります。

こうした認識のずれを防ぐには、「5キログラム以上の物を持たない」「一時間を超える連続歩行を避ける」「脚立作業は禁止する」など、避けるべき動作を具体的にしておくことが有効です。

診断書の内容と実際の業務を照合する

会社側は診断書を受け取った後、その文言だけを見て復帰を決めるのではなく、実際の職務と照合します。

診断書に「デスクワーク可」と書かれていても、本人の席が2階にありエレベーターがない、トイレまで長い距離を歩く必要があるといった事情があれば、追加の配慮が必要です。

また、会社が用意しようとしている業務が、主治医の想定する軽作業に該当するか分からない場合は、本人を通じて主治医に再確認する方法があります。

必要に応じて、本人の同意を得たうえで産業医や会社側の医師が情報を整理することも考えられます。

診断書は復帰判断の重要な資料ですが、診断書だけで自動的に通常勤務へ戻すものではありません。

会社は職場の危険性や具体的な業務負担も踏まえて判断します。

会社と本人で段階的な復帰計画を作る

主治医が制限付き勤務を認めた場合は、会社と本人で段階的な復帰計画を作ります。

たとえば、最初の一週間は一日4時間の事務作業、次の一週間は6時間、その後に通常勤務へ戻すといった方法です。

ただし、あらかじめ決めたスケジュールどおりに必ず勤務時間を延ばす必要はありません。

痛みや腫れが強くなった場合は、同じ勤務時間を継続したり、一段階戻したりすることも必要です。

復帰計画には、次回の面談日、主治医へ再確認する時期、通常勤務へ戻す条件、勤務中止の基準などを記載しておくとよいでしょう。

会社が本人の希望だけを根拠に復帰を急がせることは避けましょう。

再受傷した場合、会社がどのような医学的情報を確認し、どのような配慮を行ったかが問題になる可能性があります。

本人も症状を正確に伝える

早く復帰したいという気持ちから、本人が痛みや不安を小さく伝えることがあります。

しかし、復帰後に勤務を継続できなくなれば、再度休業することになり、結果的に治療が長引くかもしれません。

主治医には、通勤後に腫れが増える、30分座ると痛む、階段を下りるときに不安があるなど、具体的な症状を伝えてください。

会社にも、無理な作業があれば早めに申し出ることが大切です。

会社側は診断書を受け取った後、本人と面談し、医師の制限を実際の業務へ落とし込む必要があります。

必要に応じて産業医や社会保険労務士なども交え、復帰計画を整理するとよいでしょう。

リハビリ出勤と試し出勤の違い

骨折などで長期間休業した後、いきなり通常勤務へ戻るのではなく、短時間から段階的に職場へ慣らしていく方法として、リハビリ出勤や試し出勤が行われることがあります。

リハビリ出勤と試し出勤は、法律で統一された制度名ではありません。

会社によって名称や運用内容が異なり、同じ言葉でも、実際に業務を行う制度と、職場へ来るだけで業務を行わない制度があります。

そのため、「当社では試し出勤と呼んでいるから無給」「リハビリ出勤だから労働時間ではない」と名称だけで判断することはできません。

実際に何をしているのか、会社の指示を受けているのか、成果物を提出しているのかを確認します。

通勤訓練型の試し出勤

通勤訓練型は、決められた時間に自宅を出て、通常の通勤経路で会社付近まで移動し、そのまま帰宅する方法です。

職場内には入らず、通勤そのものに耐えられるかを確認します。

下肢を骨折した場合は、職場で働く能力が戻っていても、駅まで歩く、電車に乗る、階段を使うという通勤動作に不安が残ることがあります。

このような場合に、いきなり勤務を始める前の段階として実施することがあります。

ただし、通勤訓練中の移動が、通常の労働者としての通勤と同じように労災保険上の通勤として扱われるとは限りません。

休職中で業務に従事しておらず、会社の指揮命令下にない場合は、事故時の取扱いが問題になります。

職場滞在型の試し出勤

職場滞在型は、会社へ来て一定時間過ごすものの、具体的な業務は行わない方法です。

自席に座る、同僚と会話する、休憩室で過ごすなど、職場環境に慣れることを目的とします。

この場合も、会社から資料作成や電話対応を依頼すると、単なる滞在ではなく労務提供と評価される可能性があります。

本人が自発的に手伝ったように見えても、会社がそれを黙認し、業務の成果を受け取っていれば、無給でよいとは限りません。

短時間勤務型のリハビリ出勤

短時間勤務型は、実際に軽い業務を行いながら、一日2時間、4時間、6時間と勤務時間を延ばしていく方法です。

この方法では、会社の指揮命令を受けて仕事をするため、通常は労働時間として扱い、賃金を支払う必要があります。

短時間勤務の期間中に賃金を受ける場合、休業補償給付との調整も必要です。

働いた部分に対して賃金が支払われ、働けなかった部分が無給であれば、一部休業として給付を受けられる可能性があります。

実施方法 主な内容 労務提供の有無 注意点
通勤訓練型 職場付近まで往復する 通常はなし 移動中の事故の取扱いを確認する
職場滞在型 職場で一定時間過ごす 原則としてなし 業務を行わせないよう明確にする
短時間勤務型 軽作業を短時間行う あり 賃金と休業補償給付を調整する
段階的業務復帰型 業務量や責任を徐々に戻す あり 業務範囲と評価日を決める

名称より実態を確認する

重要なのは、制度の名称ではなく、 その時間に実質的な労務提供があるかどうか です。

会社の指揮命令を受けて書類作成、電話対応、商品整理、データ入力などの業務を行うのであれば、リハビリという名称であっても、労働時間として扱う必要がある可能性が高くなります。

一方、復帰可能性を確認するために職場へ来て一定時間過ごすだけで、業務指示を受けず、会社に具体的な成果を提供しない場合は、通常の労働とは異なる扱いになることがあります。

リハビリ出勤や試し出勤を実施するときは、名称だけで判断せず、勤務時間、作業内容、賃金、交通費、事故時の取扱いを事前に書面で決めておくことが重要です。

試し出勤の実施要領を作る

会社が制度として試し出勤を行う場合は、対象者、申請方法、主治医の意見の確認、実施期間、賃金、交通費、事故時の対応、通常勤務へ移行する条件などを定めておくとよいでしょう。

個別の合意書には、業務を行わない試し出勤なのか、短時間勤務として業務を行うのかを明記します。

業務を行わない制度であれば、本人にも資料作成や電話応対をしないよう説明し、上司や同僚にも共有する必要があります。

厚生労働省委託事業の「こころの耳」でも、試し出勤について、業務を命じる場合には賃金の支払いが必要となることや、業務に従事しない場合には労災保険が適用されない可能性があることが説明されています。

精神疾患からの復職を念頭に置いたQ&Aですが、制度の名称より実態で判断するという考え方は、骨折後の試し出勤を設計する際にも参考になります。

詳しくは、 こころの耳「復職前の試し出勤時の労災補償や傷病手当金等の注意点」 をご確認ください。

制度を長期間曖昧に続けるのも望ましくありません。

試し出勤を始める前に、実施期間、評価日、通常勤務へ移行する条件を設定し、主治医の意見も踏まえて定期的に見直しましょう。

試し出勤中の賃金と労災適用

試し出勤中の賃金と労災適用

試し出勤中に賃金を支払う必要があるかどうかは、本人が実質的に労働しているかによって判断されます。

会社が作業内容を指示し、本人がその指示に従って通常業務や軽作業を行っている場合は、会社の指揮命令下で労務を提供していると判断される可能性が高くなります。

この場合は、原則として労働時間に応じた賃金の支払いが必要です。

会社が「リハビリだから無給」と説明していたとしても、実際に電話対応、資料作成、接客、データ入力、商品の検品などを行わせていれば、名称や当事者間の合意だけで賃金の支払いを免れることはできません。

労務提供があれば賃金が必要になる

労働時間に該当するかどうかは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたかという実態で判断します。

本人の作業量が少ないことや、通常より成果が低いことだけで、労働時間ではなくなるわけではありません。

たとえば、試し出勤中の社員に「無理のない範囲で電話を取ってください」「届いた郵便物を部署ごとに分けてください」と指示した場合、それは軽作業であっても業務です。

会社がその労務の提供を受けている以上、賃金の支払いが必要になる可能性が高いでしょう。

反対に、本人が自席に座って職場環境に慣れるだけであり、会社から業務指示を出さず、成果物も受け取らないのであれば、通常の労務提供とは異なる取扱いになり得ます。

無給の試し出勤中に通常業務や会社に利益をもたらす作業を行わせる運用は、未払い賃金の問題につながる可能性があります。

試し出勤中の事故と労災保険

指揮命令下で業務を行っている時間に事故が起きた場合は、業務との関係を踏まえ、労災保険の対象となる可能性があります。

たとえば、短時間勤務中に会社の指示で書類を運び、階段で転倒した場合や、軽作業中に機械で指を負傷した場合は、試し出勤という名称であっても、業務災害として判断される余地があります。

一方で、本人が業務を行わず、通勤訓練や職場への滞在だけを目的としている場合には、労働者としての業務遂行中とは評価されず、事故が起きた際に通常の業務災害として扱われない可能性があります。

通勤途中の事故についても、休職中の訓練として会社へ向かっていた場合に、通常の就業のための通勤と同様に扱われるとは限りません。

試し出勤を始める前に、事故時の取扱いを説明し、必要に応じて会社独自の保険や補償制度も検討します。

休業補償給付との調整

試し出勤で実際に働き、その時間に対応する賃金を受けた場合は、休業補償給付の計算にも影響します。

働いた部分について賃金が支払われ、残りの部分について労災による骨折のため労働できず無給であれば、一部休業として給付を受けられる可能性があります。

たとえば、所定8時間のところ4時間だけ試し出勤として勤務し、4時間分の賃金を受けた場合は、給付基礎日額から実労働分の賃金を控除した額を基礎として計算することがあります。

反対に、会社が試し出勤中も一日分の賃金を満額支払っていれば、賃金を受けていないという要件を満たさず、その日の休業補償給付が支給されない可能性があります。

試し出勤の賃金額を会社が任意に低く設定すれば、その分を労災保険が補ってくれるという制度でもありません。

最低賃金や労働契約上の賃金を下回らないかも確認が必要です。

試し出勤を始める前に明確にしたい事項

  • 業務を行う制度か、職場に慣れるだけの制度か
  • 実施する曜日と時間帯
  • 具体的に行う作業と禁止する作業
  • 会社の指示を受ける範囲
  • 賃金の有無と計算方法
  • 交通費を支給するか
  • 勤怠をどの区分で記録するか
  • 事故が起きた場合の連絡方法
  • 休業補償給付との調整方法
  • 実施期間と次回の評価日
  • 通常勤務へ移行する条件

無給とする場合は業務をさせない

試し出勤を無給で実施するのであれば、業務を行わない制度として明確に運用する必要があります。

本人だけでなく、直属の上司や同僚にも、仕事を依頼してはいけないことを共有します。

現場では、本人が職場にいると、つい「この書類だけ確認してほしい」「電話が鳴ったら取ってほしい」と頼みたくなるものです。

しかし、それを繰り返すと、実態として労働していたと評価される可能性があります。

本人が自発的に作業を始めた場合も、会社は放置せず、試し出勤の目的を改めて説明する必要があります。

業務をさせない制度と、短時間勤務として業務を行わせる制度を混在させないことが重要です。

記録を残すことが重要

会社は、試し出勤の日程、滞在時間、本人が行ったこと、業務指示の有無、賃金支払いの有無を記録しておきましょう。

短時間勤務として実施する場合は、通常の勤怠管理と同じように始業・終業時刻を記録します。

本人にとっても、無給なのか有給なのか分からないまま出勤を始めることは避けるべきです。

休業補償給付の請求内容と実際の勤務状況が食い違うと、追加資料の提出や説明が必要になることがあります。

試し出勤の合意書には、制度名だけでなく、実際に業務を行うか、賃金を支払うか、事故時にどう対応するかを具体的に記載してください。

会社は給与計算担当者だけでなく、現場の上司、労災申請を担当する部署、人事労務担当者とも情報を共有しておきましょう。

現場では業務をしていたのに、給与担当者は無給の職場滞在だと認識していたという食い違いは、避けなければなりません。

労災で骨折後に出勤する際の要点

労災で骨折した後でも、治療を続けながら出勤することは可能です。

午前中に通院して午後から働く場合や、半日だけ勤務する場合でも、休んだ時間について賃金を受けていなければ、一部休業として休業補償給付を受けられる可能性があります。

ただし、出勤した日の給付額は、実際に働いた時間と支払われた賃金額によって変わります。

有給休暇を取得して通常の賃金を受けた日は、原則として同じ日の休業補償給付を受けることはできません。

また、休業補償を受けられるかどうかだけで出勤時期を決めるのは適切ではありません。

骨折の回復状態、仕事で必要となる動作、通勤時の安全性、会社が用意できる軽作業などを確認し、主治医の意見を踏まえて判断する必要があります。

労災による骨折後の出勤で大切なポイント

  • 出勤の可否は主治医の判断を前提にする
  • 診断書には可能な業務と禁止する動作を記載してもらう
  • 勤務時間と業務上の制限を会社と共有する
  • 一部出勤日は実働時間と賃金額を記録する
  • 通院時間が有給か無給かを確認する
  • 有給休暇と休業補償給付を重複させない
  • 待期期間は業務災害と通勤災害を分けて考える
  • 試し出勤の賃金と業務内容を書面で決める

従業員本人が行う確認

あなたが骨折した本人であれば、まず主治医へ実際の仕事内容を伝え、どの程度まで働けるかを確認してください。

「仕事をしてよい」という回答だけではなく、勤務時間、歩行、立ち作業、運転、重量物作業などの制限を具体的に確認することが大切です。

次に、会社へ診断書や医師の意見を提出し、どのような勤務なら可能かを相談します。

通院のため半休を取る場合は、その時間を欠勤、有給休暇、会社独自の特別休暇のどれとして扱うのか確認してください。

休業補償給付を請求する予定であれば、出勤時刻、退勤時刻、通院時間、賃金の支払い状況を日ごとに残しておきましょう。

給与明細だけでは、実労働時間に対応する賃金が分からないこともあります。

会社が行う確認

会社側は、本人の復帰希望だけで通常勤務へ戻さず、主治医の意見と職場の実態を照合します。

本人の職種名だけで判断せず、実際の動作、移動距離、危険作業、通勤方法まで確認してください。

一部出勤を認める場合は、勤務時間、担当業務、賃金の計算方法、欠勤控除、通院時間の扱いを明確にします。

勤怠担当者、給与担当者、労災申請担当者で情報を共有し、請求書と賃金台帳に食い違いが生じないようにします。

リハビリ出勤や試し出勤を行う場合は、実際に業務をさせるのか、職場に慣れるだけなのかを明確にしてください。

業務をさせるのであれば、賃金の支払いと労働時間管理が必要になる可能性が高くなります。

確認する場面 従業員本人の確認事項 会社の確認事項
出勤再開前 主治医の許可と就業制限 制限に合う業務を用意できるか
一部出勤時 勤務時間と通院時間を記録する 実労働分の賃金を明確にする
有給休暇使用時 休業補償との重複がないか確認する 本人の希望を確認して勤怠処理する
試し出勤時 業務、賃金、事故時の扱いを確認する 実態に応じて労働時間を管理する
通常勤務への復帰時 症状悪化がないか申告する 制限解除を確認し段階的に業務を戻す

骨折後の復帰を急がない

骨折後の復帰時期は、部位や仕事内容によって大きく異なります。

デスクワークで早期復帰できる人もいれば、現場作業のため数か月の療養が必要になる人もいます。

治療期間や復帰時期に関する数値は、あくまで一般的な目安として考えてください。

会社側も、本人が出勤を希望しているからという理由だけで通常業務へ戻すのではなく、医師の意見を確認し、必要に応じて短時間勤務や軽作業を設定することが重要です。

一度復帰した後に痛みや腫れが強くなった場合は、復帰に失敗したと考える必要はありません。

勤務時間や業務内容が現在の回復状態に合っていなかった可能性があります。

主治医と会社へ状況を伝え、勤務条件を見直してください。

骨折後の出勤判断は、補償額だけで決めないでください。

無理な復帰によって再受傷すると、治療が長引くだけでなく、職場で新たな事故を起こすおそれがあります。

制度の取扱いは個別に確認する

休業補償給付の計算、待期期間の完成、一部休業日の申請方法は、個別の勤怠状況や賃金の支払い方によって取扱いが変わることがあります。

特に、月給制で欠勤控除をしていない場合、時間単位有給休暇を使った場合、待期期間中に一部出勤した場合、試し出勤中に軽作業を行った場合は、単純な判断が難しくなります。

会社の就業規則や賃金規程によっても処理が異なるため、他社の事例をそのまま当てはめることはできません。

正確な情報は厚生労働省の公式サイトや管轄の労働基準監督署でご確認ください。

判断が難しい場合は、会社の人事労務担当者、管轄の労働基準監督署、主治医、産業医、社会保険労務士などへ早めに相談することをおすすめします。

最終的な判断は専門家にご相談ください。

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