社会保険・年金

社会保険の電子申請のやり方|GビズIDから提出まで実務で確認

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

関連して、社会保険は社会保険を脱退手続きしてくれない場合に確認すべき期限と相談先について整理した記事でも整理しています。

社会保険の電子申請を始める場合は、まず申請方法を決め、GビズIDなどの認証手段を準備したうえで、届書作成プログラムなどから届出を作成・送信するという順番で進めます。

これまで資格取得届や算定基礎届を紙で提出していた会社では、「GビズIDはどう取得するのか」「届書作成プログラムはどこから入れるのか」「実際にどの画面から申請するのか」と、最初の設定で迷うことが少なくありません。

電子申請という言葉だけを見ると難しそうに感じますが、社会保険手続きそのものが別の制度になるわけではありません。

これまで紙に記入していた情報を電子データとして作成し、オンラインで年金事務所へ届け出ると考えると理解しやすいかなと思います。

この記事では、中小企業の人事・総務担当者が社会保険の電子申請へ切り替えることを想定し、準備から届書作成、電子申請、申請後の確認までを実務の流れに沿って解説します。

  • 社会保険を電子申請する3つの方法
  • GビズIDの取得から利用開始までの流れ
  • 届書作成プログラムで申請する具体的な手順
  • 資格取得届や算定基礎届を申請するときの注意点

社会保険の電子申請のやり方|GビズIDから提出まで

社会保険の電子申請、そのやり方と準備

社会保険の電子申請を始める前に確認したいのは、どのシステムを使うか、認証手段をどうするかという2点です。

紙の届出をそのままパソコンから送るというだけではなく、申請方法によって準備する環境や操作方法が変わります。

特に初めて電子申請を導入する会社では、操作方法だけを先に調べるよりも、「どの方法で申請するのか」「誰のアカウントを使うのか」「どのパソコンから申請するのか」を先に決める方がスムーズです。

まずは全体像から整理していきましょう。

電子申請は3つの方法から選べる

健康保険・厚生年金保険の手続きを電子申請する方法は、大きく分けると 届書作成プログラム、e-Gov、市販の労務管理ソフト の3つがあります。

どれを使っても「電子申請」という点では同じですが、実際の操作方法や得意な手続き、従業員情報の管理方法には違いがあります。

初めて電子申請へ切り替える場合は、単純に「無料だから」「有名だから」で選ぶよりも、自社で毎月どのくらい社会保険手続きが発生するのかを考えて選ぶことが重要です。

申請方法 特徴 向いている会社
届書作成プログラム 日本年金機構が無料で提供 費用を抑えて電子申請を始めたい会社
e-Gov 幅広い行政手続きをオンライン申請できる 社会保険以外の手続きも行う会社
労務管理ソフト 従業員・給与データから届出を作成しやすい 入退社や手続き件数が多い会社

初めて電子申請へ切り替える中小企業で、できるだけ追加費用をかけたくないのであれば、 GビズIDと日本年金機構の届書作成プログラムを組み合わせる方法 が一つの選択肢です。

届書作成プログラムでは、資格取得届、資格喪失届、算定基礎届、月額変更届、賞与支払届、被扶養者(異動)届、国民年金第3号被保険者関係届など、企業で使用頻度の高い主要な届出を作成できます。

会社を設立した後の日常的な社会保険事務という意味では、かなりの範囲をカバーできます。

たとえば従業員を採用したときは資格取得届、退職したときは資格喪失届、給与が大きく変わったときは月額変更届、毎年の定時決定では算定基礎届というように、企業の労務担当者が繰り返し行う手続きに対応しています。

すべての社会保険手続きに対応しているわけではありません。

届書作成プログラムで作成できない手続きについては、e-Govや対応する労務管理ソフト、紙による手続きなどを検討する必要があります。

一方、すでに給与計算ソフトや人事労務クラウドを利用している会社では、そのシステムに電子申請機能があるかを先に確認した方がよいでしょう。

たとえば従業員の氏名、生年月日、住所、標準報酬月額、基礎年金番号などを人事システムですでに管理している場合、同じ情報を届書作成プログラムへ再入力するのは二重作業になります。

人事データと電子申請機能が連携していれば、入力の手間だけでなく転記ミスも減らせます。

実務で考えると、数人規模の会社と数十人・数百人規模の会社では最適な方法が違います。

年に数回しか社会保険手続きが発生しない会社なら無料の届書作成プログラムでも十分な場合がありますが、毎月複数人の入退社がある会社では、労務管理ソフトと連携した方が結果的に担当者の負担を抑えられることもあります。

電子申請の方法を決めるときは、「申請できるか」だけではなく「従業員情報を何度入力することになるか」まで考えるのがポイントです。

社会保険手続きを継続的に電子化するのであれば、単発の申請方法ではなく、採用時の従業員情報の取得、給与計算、社会保険手続き、通知書の保存までを一連の業務として考えると、どの方法が自社に合っているのか判断しやすくなります。

電子申請が義務化される法人とは

電子申請が義務化される法人とは

社会保険の電子申請はすべての会社に義務付けられているわけではありませんが、一定の法人については、2020年4月から一部の社会保険手続きで電子申請が義務化されています。

この点については「従業員が多い会社は電子申請が義務」「大企業はすべての社会保険手続きを電子で出さなければならない」と理解されていることがありますが、少し整理が必要です。

対象となる法人を確認するときは、主に次の区分を確認します。

  • 資本金や出資金などが一定額を超える法人
  • 相互会社
  • 投資法人
  • 特定目的会社

一般的な株式会社などでは、 資本金等が1億円を超えるかどうか が確認ポイントの一つになります。

ここで重要なのは、単純な従業員数ではなく、法人の種類や資本金等によって義務化対象を判定するという点です。

社会保険とはについて基本から確認したい場合は、社会保険とは?仕組み・種類・広義と狭義の違いについて整理した記事も参考にしてください。

また、電子申請義務化の対象となるのは社会保険に関するすべての書類ではなく、制度上指定された届出です。

代表的なものとして、被保険者報酬月額算定基礎届、被保険者報酬月額変更届、被保険者賞与支払届などがあります。

「電子申請義務化対象法人=すべての社会保険届を電子申請」という意味ではありません。

対象法人の範囲と、電子申請が義務付けられている届出の範囲は分けて確認する必要があります。

私が実務で確認するときも、「会社の規模が大きいから対象だろう」「従業員が多いから義務化されているだろう」といった感覚では判断しません。

まず法人区分や資本金等の状況を確認し、そのうえで今回提出する届書が電子申請義務化の対象手続きなのかを確認します。

会社そのものが義務化対象に該当するかという問題と、提出しようとしている手続きが義務化対象かという問題は別だからです。

一方で、資本金1億円以下の中小企業など、法律上電子申請が義務付けられていない会社でも電子申請は利用できます。

むしろ実務上は、義務化されているから電子申請をするというより、 郵送、印刷、窓口提出、控えの管理といった事務負担を減らす目的で任意に電子化する会社 も多いです。

たとえば毎月入退社がある会社では、その都度資格取得届や資格喪失届を印刷して封筒を準備し、郵送する作業が発生します。

電子申請であれば、申請データを作成して送信し、その後の処理状況もパソコン上で確認できます。

また、算定基礎届のように対象者数が多くなる手続きでは、電子化の効果がより大きくなります。

従業員が20人、30人と増えてくると、紙の届出を一人ずつ作成する運用は担当者にとってかなりの負担です。

義務化の対象外だから紙申請を続けなければならないわけではありません。

中小企業でも電子申請へ任意に切り替えることができます。

なお、義務化対象となる法人の範囲や対象届出については制度改正等により変更される可能性があります。

申請時には必ず最新の公式情報で確認するようにしてください。

GビズIDの取得方法と準備書類

届書作成プログラムから電子申請する場合には、認証手段を準備します。

代表的なのが GビズID です。

GビズIDは、社会保険手続きだけの専用アカウントではありません。

法人や個人事業主が複数の行政サービスを利用するときに使用できる共通の認証サービスで、社会保険・労働保険の電子申請だけでなく、各種行政手続きでも利用されています。

これまで電子申請をしたことがない会社では、「年金事務所の専用IDを取得するのだろう」と考えることがありますが、GビズIDは日本年金機構だけで使用するアカウントではありません。

初めて利用する場合には、まず法人代表者または個人事業主を基礎とするアカウントを準備します。

社内の担当者が実際の申請操作を行う場合には、会社のアカウント管理方法もあわせて考えておくことが大切です。

GビズID取得のおおまかな流れ

  1. GビズIDの公式サイトへアクセスする
  2. アカウント作成の手続きを開始する
  3. 法人情報や代表者情報などを入力する
  4. 案内に従って本人確認を行う
  5. 審査・登録完了後に利用を開始する

本人確認の方法や必要書類は、利用する申請方法によって異なります。

マイナンバーカード等を利用したオンラインでの手続きが利用できる場合もあれば、書類を用いた手続きが必要となる場合もあります。

以前の情報だけを見て「必ず印鑑証明書を郵送しなければならない」と決めつけない方がよいでしょう。

GビズIDの申請方法は変更されることがありますので、実際に取得するときは公式画面で現在利用できる方法を確認してください。

また、会社でGビズIDを取得するときに意外と重要なのが、 誰のメールアドレスや電話番号で管理するか です。

担当者個人のメールアドレスや携帯電話だけに依存した運用にすると、その担当者が退職・異動した際にアカウント管理で困る可能性があります。

代表者が取得するアカウントと、実際に社会保険申請を行う担当者の権限をどう管理するかを、最初に整理しておくとよいですよ。

電子申請への切り替えを予定しているなら、GビズIDの取得は早めに進めておくのが実務上のポイントです。

利用開始までに必要な期間は申請方法や審査状況によって異なります。

算定基礎届や賞与支払届など、提出時期が分かっている手続きの直前に初めて取得しようとすると、予定どおり電子申請できない可能性があります。

私が電子申請への切り替えを案内するときも、最初に届書作成プログラムを触ってもらうより、まずGビズIDの取得状況を確認します。

プログラムの操作を覚えても、認証できなければ最終的な申請まで進めないためです。

会社で準備しておきたいもの

  • 法人番号や法人の基本情報
  • 代表者に関する情報
  • 本人確認に必要となる書類や電子的な認証手段
  • 登録に利用するメールアドレス
  • 認証時に利用するスマートフォン等
  • 社内でのアカウント管理ルール

GビズIDを取得できたら、IDやパスワードだけでなく、認証に利用する端末や担当者も含めて管理してください。

社会保険の電子申請では従業員の個人情報を扱うため、誰でも利用できる状態にしておくのは適切ではありません。

現在のアカウント区分、本人確認方法、取得手順については、必ず最新情報を確認してください。

(出典:デジタル庁「GビズID」)

届書作成プログラムのインストール

届書作成プログラムのインストール

GビズIDなどの認証手段を準備したら、次は日本年金機構が提供している 届書作成プログラム をパソコンへインストールします。

届書作成プログラムは、日本年金機構が無料で提供しているソフトウェアです。

資格取得届や資格喪失届、算定基礎届、月額変更届、賞与支払届などをパソコン上で作成し、電子申請へつなげることができます。

「電子申請をするために高額な労務管理システムを購入しなければならないのか」と相談されることがありますが、主要な社会保険手続きを行うだけであれば、まず無料の届書作成プログラムを試すという方法があります。

インストール前に確認すること

  • 使用するパソコンが最新の動作環境を満たしているか
  • 社内のセキュリティ設定でインストールが制限されていないか
  • 電子申請を行う担当者のパソコンで利用できるか
  • すでに旧バージョンが入っている場合は更新が必要か

特に会社支給のパソコンでは、総務担当者自身にソフトウェアのインストール権限がないケースがあります。

その場合、ダウンロードまではできてもインストール時に管理者パスワードを求められて進めなくなることがあります。

電子申請の導入日を決めている場合には、直前になって情報システム担当者へ依頼するのではなく、事前にインストールの可否を確認しておいた方が安全です。

初回だけでなく更新時にも注意する

届書作成プログラムは、一度インストールすれば永久に同じ状態で利用できるとは限りません。

社会保険制度の改正、届書様式の変更、システム仕様の変更などに伴って、プログラムが更新されることがあります。

そのため、半年ぶり、1年ぶりにプログラムを起動して算定基礎届を提出するといった場合には、 申請を始める前に現在のプログラムが最新の状態になっているか確認する ことをおすすめします。

古い環境のまま作業を開始すると、データを入力した後で更新が必要だと分かり、余計な作業が発生することもあります。

会社のパソコン環境では、OSやセキュリティソフト、社内ネットワークの設定によって正常に利用できないことがあります。

インストールできない、電子申請画面へ進めない、認証がうまくいかないといった場合には、制度上の問題ではなくパソコン環境が原因になっている可能性もあります。

また、電子申請を特定の1台のパソコンに依存させる場合には、担当者が休んだときやパソコンが故障したときの運用も考えておきましょう。

特に資格取得届や資格喪失届は提出期限がありますので、「担当者のパソコンでしか申請できない」という状態は実務上のリスクになります。

最初に操作説明書も確認する

届書作成プログラムには操作説明書等が用意されています。

初めて利用するときは、いきなり本番の資格取得届を作るよりも、基本的な画面構成やデータ保存方法を確認しておくとよいでしょう。

社会保険手続きに詳しい担当者でも、ソフトの操作に慣れていなければ入力場所を間違えることがあります。

逆にパソコン操作に詳しくても、社会保険上どの金額を入力すべきか分からなければ正しい届出にはなりません。

届書作成プログラムを使いこなすには、「システム操作」と「社会保険の制度判断」の両方が必要です。

届書作成プログラムの対応届書、動作環境、最新版のダウンロード方法、操作説明書については、申請前に公式ページを確認してください。

(出典:日本年金機構「電子申請(届書作成プログラム)」)

GビズIDで利用開始する手順

届書作成プログラムのインストールまで終わったら、実際に電子申請を行える状態へ設定します。

ここでよくある誤解が、「GビズIDを取得して届書作成プログラムをインストールすれば、あとは自動的に会社情報や従業員情報が表示される」というものです。

実際には、認証環境を整えたうえで、申請に必要となる事業所情報や被保険者情報を正しく準備する必要があります。

初回利用時に確認したい情報

  • 事業所整理記号
  • 事業所番号
  • 事業所名称
  • 所在地
  • 事業主情報
  • 申請に使用するGビズID

事業所整理記号や事業所番号は、会社名だけで判断するものではありません。

日本年金機構から交付されている通知書などを確認し、自社の適用事業所として登録されている情報と一致させる必要があります。

特に複数の事業所を持つ法人では、本社と支店で適用事業所が分かれているケースがあります。

そのような会社では、どの事業所の届出を作成しているのかを確認せずに操作すると、誤った事業所情報で申請してしまう可能性があります。

電子申請の導入作業では、 認証環境を整える作業と、届書を正しく作成する作業は別物 と考えると分かりやすくなります。

GビズIDは「誰が申請しているのか」を認証するための仕組みです。

一方、資格取得日、標準報酬月額、被扶養者の認定要件など、届出内容の正しさを保証してくれるものではありません。

たとえばGビズIDで問題なくログインできたとしても、資格取得日を1日間違えて入力すれば、誤った資格取得届を送ることになります。

認証が成功したことと、申請内容が正しいことは分けて考えてください。

初回は本番前に操作の流れを確認する

実務では「GビズIDでログインできたので準備完了」と思っていたところ、実際に申請しようとして事業所情報や従業員情報の入力方法で止まることがあります。

そのため、資格取得届の提出期限当日に初めて届書作成プログラムを開くのはおすすめしません。

電子申請を導入すると決めたら、実際の提出期限より前にプログラムを起動し、どの画面から届書を作成するのか、どこで電子申請データを作るのか、認証画面がどのように表示されるのかまで確認しておくと安心です。

本番前に確認する目的は、架空の申請を送信することではありません。

送信直前までの画面や必要な情報を確認し、実際の申請日に迷わない状態を作っておく という意味です。

担当者が複数いる会社は運用ルールも決める

従業員数が増えてくると、一人の担当者だけで社会保険事務を行わない会社もあります。

その場合、「届書を作成する人」「内容を確認する人」「実際に送信する人」「処理完了を確認する人」を決めておくとミスを防ぎやすくなります。

紙申請では、作成者とは別の上司が押印前にチェックするという会社もあります。

電子申請へ変更したからといって、この確認工程までなくしてしまう必要はありません。

むしろ送信ボタンを押すだけで申請できるからこそ、送信前に誰が内容を確認するのかを明確にしておくことが重要です。

電子申請は送信作業を簡単にしますが、社会保険手続きそのものの責任までシステムに移るわけではありません。

届出内容の確認体制は、紙申請と同様に会社側で整えておきましょう。

初回設定の段階でここまで整理しておくと、その後の資格取得届、資格喪失届、算定基礎届などを同じルールで処理できるようになり、電子申請を単なる便利ツールではなく社内の標準業務として運用しやすくなります。

社会保険の電子申請、やり方を手順で解説

ここからは、実際に届書を作成して提出するときの流れを確認します。

電子申請でも、資格取得日や報酬月額などの判断基準が変わるわけではありません。

まず届出内容を正しく判断し、その後にシステムへ入力するという順番が基本です。

特に注意したいのは、「システムでエラーが出なかった=社会保険上も正しい」というわけではないことです。

電子申請はあくまで提出方法ですので、申請内容そのものは担当者が確認する必要があります。

資格取得届を電子申請する流れ

従業員を採用し、健康保険・厚生年金保険の加入対象となる場合には、資格取得届を提出します。

電子申請へ切り替えても、最初に確認するのは「この従業員が社会保険の加入対象になるのか」「資格取得日はいつなのか」という制度上の判断です。

正社員であれば加入対象になるケースが多いですが、パート・アルバイトなど短時間労働者の場合には、所定労働時間や所定労働日数、企業規模等の要件を確認しなければならない場合があります。

つまり、電子申請の操作を始める前に資格取得届そのものを正しく作れる状態にしておく必要があります。

届書作成プログラムを利用する場合のおおまかな流れは次のとおりです。

  1. 届書作成プログラムを起動する
  2. 届書の作成メニューを開く
  3. 資格取得届を選択する
  4. 被保険者情報を入力する
  5. 入力内容を確認する
  6. 電子申請用のデータを作成する
  7. GビズIDなどで認証する
  8. 申請データを送信する

入力する前に従業員情報をそろえる

資格取得届では、氏名、生年月日、資格取得年月日、個人番号または基礎年金番号、報酬月額などの情報が必要になります。

採用初日に担当者が本人へ一つずつ聞きながら入力するよりも、入社手続きの段階で必要情報をまとめて取得する仕組みにしておいた方が効率的です。

特に氏名の漢字、生年月日、個人番号などは、誤入力すると後の手続きにも影響します。

従業員から提出された情報と会社がシステムへ登録した情報を照合することが大切です。

報酬月額は基本給だけではない

中でも実務で間違いやすいのが 報酬月額 です。

資格取得時の報酬月額は、単純に基本給だけを入力するものではありません。

基本給のほか、役職手当、職務手当、住宅手当、通勤手当など、社会保険上の報酬に含まれるものを確認し、資格取得時点で予定されている報酬を基に算定します。

たとえば基本給が20万円、通勤手当が1万円、毎月固定で支給される職務手当が2万円なら、基本給20万円だけを見て報酬月額を判断するのは適切ではありません。

電子申請には入力チェック機能がありますが、制度上の判断まで自動的に正しく行ってくれるわけではありません。

たとえば報酬月額そのものを誤って計算して入力すれば、形式上送信できても届出内容は誤ったままです。

扶養家族がいる場合も確認する

新入社員に配偶者や子どもなどの扶養家族がいる場合には、本人の資格取得届だけで社会保険手続きが完了しないことがあります。

健康保険の被扶養者に該当する家族については、被扶養者(異動)届などの手続きが必要です。

また、配偶者が国民年金第3号被保険者に該当する場合には、関連する届出も必要になります。

採用時の社会保険手続きでは、 本人の資格取得、扶養家族、給与控除開始の3点をセットで確認 すると漏れを防ぎやすくなります。

電子申請を導入すると、資格取得届を送信する作業そのものは効率化できます。

しかし、その後に給与システムへ標準報酬月額を登録し、適切な月から社会保険料を控除するところまで会社の業務は続きます。

私は資格取得手続きを確認するときも、「届出を出したか」だけではなく、「扶養手続きは必要ないか」「給与計算への反映はいつからか」まで含めて考えます。

電子申請を導入するなら、この前後の業務まで一つの流れとして整理しておくと、担当者の負担をかなり減らせます。

算定基礎届を電子申請する流れ

算定基礎届を電子申請する流れ

算定基礎届も、届書作成プログラムを利用して電子申請できる代表的な届出です。

算定基礎届は、原則として毎年一定時点の被保険者について、4月・5月・6月に支払った報酬を基に、その後の標準報酬月額を決定するための重要な手続きです。

対象となる従業員が多い会社ほど、一人ずつ紙で届書を作成する負担が大きくなるため、電子申請のメリットを感じやすい手続きの一つです。

算定基礎届の基本的な作業順序

  1. 算定対象者を確認する
  2. 4月・5月・6月に支払った報酬を確認する
  3. 各月の支払基礎日数を確認する
  4. 対象となる月から報酬月額を算定する
  5. 届書作成プログラムへ入力する
  6. 入力内容をチェックする
  7. 電子申請用データを作成する
  8. GビズIDなどで認証して送信する

算定基礎届で注意したいのは、 給与データをそのまま取り込めば終わりではない という点です。

4月・5月・6月の給与データが正しくても、すべての従業員について単純平均すればよいわけではありません。

最初に対象者を確認する

たとえば、途中入社した人、退職予定者、育児休業中の人、休職している人、欠勤が多かった人、短時間労働者などがいる場合には、それぞれ算定基礎届上どのように取り扱うのかを確認する必要があります。

また、昇給や降給などの固定的賃金の変動があり、随時改定の要件を満たす場合には、算定基礎届とは別に月額変更届の対象になる可能性があります。

このため、いきなり4月から6月までの給与を集計するのではなく、まず「誰を算定するのか」を確認した方が安全です。

報酬に含めるものを確認する

算定基礎届の報酬には、基本給だけではなく、残業手当、通勤手当、各種手当など社会保険上の報酬に該当するものを含めて考えます。

給与計算ソフトの設定が適切であれば集計しやすいですが、新しく導入した手当や非課税通勤費などが社会保険集計から漏れていないかは確認しておいた方がよいでしょう。

私が算定基礎届を確認するときは、最初から金額を入力するのではなく、 対象者の確定→報酬の確認→支払基礎日数→月額変更の有無 という順番で確認します。

この順番にすると、電子申請でも紙申請でもミスを減らしやすくなります。

電子申請前に一覧で最終確認する

算定基礎届は対象者が多いため、一人ずつ入力画面だけを見ていると全体的な異常に気付きにくいことがあります。

たとえば前年と比べて標準報酬月額が大幅に上がっている人が複数いる、特定の手当が全員分集計されていない、一人だけ報酬が極端に少ないといった場合には、一覧で見ることで気付きやすくなります。

電子申請で大量の届出を一度に処理できることはメリットですが、誤ったデータも一度に送信できてしまいます。

送信前には対象者一覧や報酬額を俯瞰して確認する工程を入れておきましょう。

算定基礎届は例年提出時期が決まっているため、初めて電子申請へ移行する会社では、その直前にGビズID取得やプログラム設定を始めるのではなく、早めに電子申請環境を準備しておくことをおすすめします。

特に給与担当者が一人しかいない中小企業では、算定基礎届の作成、通常の給与計算、賞与計算などが同じ時期に重なることがあります。

電子申請そのものよりも、初期設定に時間を取られて通常業務が遅れるケースを避けるためにも、導入時期には余裕を持たせてください。

申請後の処理状況を確認する方法

電子申請は、申請データを送信した時点で作業を終わらせないことが重要です。

紙申請の場合でも、郵便ポストへ投函した時点で行政側の処理が完了するわけではありません。

電子申請も同じで、送信した後に受付、審査、処理完了という流れがあります。

届書作成プログラム等から申請した後は、申請状況を確認し、送信した届出が正常に受け付けられているか、審査が進んでいるか、返戻などが発生していないかを確認しましょう。

申請後に確認しておきたい項目

  • 申請データが正常に送信されているか
  • 受付状況や審査状況に問題がないか
  • 返戻や補正の依頼が出ていないか
  • 処理完了後の通知を確認したか
  • 給与計算や社内手続きへ反映したか

実務では、 送信したことと手続きが完了したことは同じではありません。

この点は電子申請に切り替えた直後ほど注意が必要です。

紙申請では控えに受付印をもらったり、郵送記録を保管したりしていた会社でも、電子申請になると「送信ボタンを押したので終わり」と考えやすくなります。

返戻を見落とさない

申請内容に不備がある場合には、電子申請でも返戻されることがあります。

たとえば資格取得届で必要情報に誤りがある、事業所情報が一致しない、添付が必要な手続きで必要書類が不足しているといった場合には、補正や再申請が必要になる可能性があります。

返戻に気付かずそのままにしていると、本来の資格取得日から手続きが遅れたり、従業員への案内が遅れたりする原因になります。

申請後は「送信済み」の記録だけで管理せず、 処理完了まで確認する運用 にしておきましょう。

担当者が複数いる会社では、誰が申請し、誰が完了確認をするのかまで決めておくと安全です。

電子通知の保存ルールを決める

電子申請では、処理完了後に電子データで通知を受け取ることがあります。

その場合、ダウンロードしただけでパソコンの「ダウンロード」フォルダに放置してしまうと、数か月後に必要になったとき探せなくなります。

保存方法は会社ごとに決めればよいですが、たとえば次のような方法があります。

  • 従業員ごとの電子フォルダへ保存する
  • 年度ごとの社会保険手続きフォルダへ保存する
  • 資格取得・資格喪失・算定など手続き種類ごとに分ける
  • 労務管理システムの従業員情報へ紐付ける

私としては、電子申請へ切り替えるのであれば、紙をPDF化して保管するのではなく、通知書まで含めて最初から電子データで管理できる仕組みを作った方が効果を感じやすいと思います。

給与担当者への連携も忘れない

社会保険手続きが完了しても、その結果を給与計算へ反映しなければ会社の実務は完了しません。

資格取得、資格喪失、標準報酬月額の改定などは、社会保険料の控除開始・終了や控除額に関係します。

電子申請の業務フローは「申請する」で終わらず、「処理完了を確認する→結果を保存する→給与計算へ反映する」まで設計しておくことが重要です。

担当者が一人なら頭の中で管理できることもありますが、会社が大きくなると情報共有が必要です。

社会保険担当と給与担当が別の場合には、処理完了時にどのように連絡するのかまで決めておきましょう。

e-Govを使う場合の申請方法

社会保険の電子申請は、届書作成プログラムだけでなく e-Gov から行うこともできます。

e-Govは国の行政手続きをオンラインで行うための仕組みで、健康保険・厚生年金保険だけではなく、雇用保険や労働保険を含む幅広い行政手続きを電子申請できます。

届書作成プログラムとe-Govの違いが分かりにくいという相談もありますが、イメージとしては、届書作成プログラムは日本年金機構の主要な社会保険届出を作成しやすくした専用ツール、e-Govはより幅広い行政手続きを扱う電子申請の入口と考えると分かりやすいでしょう。

e-Govを利用する基本的な流れ

  1. e-Gov電子申請へアクセスする
  2. 必要な利用環境を準備する
  3. 対象となる手続きを検索する
  4. 申請内容を入力する
  5. 必要に応じて添付書類を登録する
  6. 認証して申請する
  7. 申請後の状況や通知を確認する

e-Govでは対象となる行政手続きを検索し、その手続きに必要な情報を入力して申請します。

社会保険だけでなく雇用保険なども扱う企業では、e-Govを利用する場面が出てきます。

届書作成プログラムにない手続きを確認する

届書作成プログラムは便利ですが、すべての社会保険関係手続きを作成できるわけではありません。

そのため、「届書作成プログラムの一覧に目的の届出がないから電子申請できない」と判断する前に、e-Govで対象となる電子申請手続きが用意されているかを確認する価値があります。

同じ「社会保険の電子申請」でも、すべてを一つの画面から行うとは限りません。

手続きによって届書作成プログラム、e-Gov、労務管理ソフトなどを使い分ける ことがあります。

毎回の操作量も考えて選ぶ

一方、資格取得届や資格喪失届、算定基礎届など、同じ手続きを繰り返し行う企業では、毎回e-Gov上で対象手続きを探すよりも、届書作成プログラムや労務管理ソフトを中心に運用した方が分かりやすい場合があります。

特に従業員数が多い会社では、「申請できるかどうか」以上に、申請までに何回入力しなければならないかが重要になります。

たとえば給与計算システムにすでに氏名、住所、報酬、社会保険情報が登録されているのであれば、その情報を電子申請へ連携できる労務管理ソフトを使った方が効率的な場合があります。

どの電子申請方法が一番優れているかではなく、自社の手続き件数と現在使っているシステムに合っているかで判断してください。

電子申請方法を社内で統一する

もう一つ実務上気を付けたいのが、担当者ごとに申請方法がバラバラになることです。

一人は届書作成プログラム、一人はe-Gov、一人は紙申請という状態になると、「どこを見れば処理状況が分かるのか」「公文書をどこへ保存したのか」が分かりにくくなります。

例外的な手続きだけe-Gov、それ以外は届書作成プログラムというように、自社の基本ルールを決めておくと管理しやすくなります。

e-Govの対象手続きや画面構成は変更される可能性がありますので、利用時にはe-Gov公式サイトで最新の情報を確認してください。

電子申請のメリットと注意点

電子申請のメリットと注意点

社会保険を電子申請へ切り替える大きなメリットは、年金事務所の窓口へ出向いたり、届書を印刷して郵送したりする作業を減らせることです。

紙申請では、届書を作成した後に印刷し、必要書類をそろえ、封筒を準備し、郵送記録を残すといった作業が必要になります。

1回あたりの作業時間はそれほど長くなくても、資格取得や資格喪失が毎月発生する会社では年間でかなりの時間になります。

項目 電子申請 紙による申請
提出場所 インターネットから申請 郵送・窓口等
郵送費 原則不要 発生する
入力チェック システムによるチェックあり 基本的に作成者が確認
処理状況 オンラインで確認可能なものがある 提出方法によって確認方法が異なる
導入準備 認証・システム設定が必要 比較的少ない

郵送・移動の手間を減らせる

入社・退社が多い会社では、毎回印刷して郵送する必要がなくなるだけでも負担軽減につながります。

年金事務所の窓口へ持参している会社であれば、担当者の移動時間も減らせます。

オンラインで申請できれば、窓口の受付時間に合わせて外出する必要もありません。

テレワークなど会社以外の場所から業務を行う場合でも、会社のセキュリティルールや利用環境が整っていれば、紙書類を物理的に持ち運ぶ必要を減らせます。

入力チェックで単純ミスを減らせる

電子申請では、必須項目が未入力である、入力形式が違うといった形式的なエラーをシステム上で確認できる場合があります。

紙の届書の場合、未記入の欄があってもそのまま郵送できてしまいます。

電子化することで、こうした単純な記載漏れを送信前に発見しやすくなるのはメリットです。

ただし、ここは過大評価しない方がよいでしょう。

電子申請は「社会保険手続きを自動で判断してくれる仕組み」ではありません。

加入対象者なのか、資格取得日はいつなのか、報酬月額に何を含めるのか、算定基礎届の対象になるのかといった判断は、会社側で正しく行う必要があります。

誤った情報を効率よく送ってしまうリスクもある

これは電子申請の注意点として非常に重要です。

システム化すると処理は速くなりますが、元データが間違っていれば、間違った届出を速く作成できてしまいます。

たとえば給与システム側で通勤手当が社会保険上の報酬に含まれない設定になっていた場合、そのデータを利用して算定基礎届を大量作成すれば、多くの従業員について同じ誤りが発生する可能性があります。

そのため、電子化の前提として、従業員情報や給与項目の設定が正しいかを確認する必要があります。

初期設定には一定の手間がかかる

電子申請は、初日から紙申請より必ず速いとは限りません。

GビズID取得、届書作成プログラムのインストール、事業所情報の登録、操作方法の確認など、導入時には一定の作業が必要です。

年に1回しか社会保険手続きをしない会社であれば、「紙の方が早い」と感じることもあるでしょう。

一方で、資格取得・資格喪失・算定・月額変更・賞与支払届などを継続して処理する会社では、一度環境を整えた後のメリットが大きくなります。

電子申請の効果は、1回の申請時間だけで判断するのではなく、 印刷、郵送、移動、控えの管理、処理状況の確認まで含めた年間の総作業時間 で考えるのがおすすめです。

私自身、社会保険手続きを電子化するときは、システムの操作方法だけを教えて終わりにはしません。

「誰が入社情報を集めるのか」「誰が社会保険加入の判断をするのか」「誰が電子申請をするのか」「処理完了後に誰が給与へ反映するのか」という業務フローまで整理した方が、電子化の効果が出やすいからです。

単純に紙を電子に置き換えるのではなく、前後の業務も含めて見直す。

ここまでできると、電子申請が単なる提出方法の変更ではなく、労務事務全体の効率化につながってきます。

社会保険の電子申請のやり方を総まとめ

社会保険の電子申請を初めて行う場合は、いきなり資格取得届などを入力するのではなく、準備から順番に進めると分かりやすくなります。

最初に「何を使って申請するのか」を決め、その後に認証環境を用意し、最後に届出を作成するという順序です。

社会保険の電子申請を始める基本的な流れ

  1. 届書作成プログラム・e-Gov・労務管理ソフトから申請方法を選ぶ
  2. GビズIDなど必要な認証手段を準備する
  3. 必要に応じて届書作成プログラムをインストールする
  4. 事業所情報などの初期設定を行う
  5. 資格取得届など必要な届書を作成する
  6. 申請内容を確認して電子送信する
  7. 申請後の審査状況や通知を確認する

中小企業が初めて電子申請へ移行するのであれば、GビズIDを取得し、日本年金機構が提供する無料の届書作成プログラムから始める方法は比較的取り組みやすい選択肢です。

特に資格取得届、資格喪失届、算定基礎届、月額変更届、賞与支払届など、企業で繰り返し発生しやすい手続きを電子化できれば、印刷や郵送の手間を減らせます。

手続き件数が増えたら労務管理ソフトも検討する

一方、毎月多くの入退社がある会社や、従業員数が増えてきた会社では、無料であることだけを理由に届書作成プログラムを使い続けることが最適とは限りません。

給与計算システムや人事労務クラウドに登録している従業員情報を、毎回別のプログラムへ入力しているのであれば、その二重入力自体が大きな負担になります。

その場合には、給与計算、入退社管理、従業員情報、電子申請までを連携できる仕組みに切り替えることで、さらに効率化できる可能性があります。

無料ツールが適している会社と、有料の労務管理ソフトを使った方が結果的に効率的な会社は異なります。

従業員数、入退社件数、給与計算との連携、担当者数などを基準に判断するとよいでしょう。

電子申請後の業務まで設計する

大切なのは、単に「紙を電子に変える」ことではありません。

従業員情報の登録から届出作成、申請、処理完了確認までを一つの業務フローとして整理する ことで、電子申請のメリットを活かしやすくなります。

たとえば採用時であれば、従業員から情報を受け取る、社会保険の加入対象を判定する、資格取得届を作成する、電子申請する、処理状況を確認する、通知を保存する、給与計算へ反映するという一連の流れがあります。

電子申請で効率化されるのは、このうち「届書を作成して提出する部分」が中心です。

しかし、前後の業務が紙や手入力のまま残っていれば、期待したほど効率化できないこともあります。

私としては、電子申請を始めるタイミングは、会社の労務事務そのものを整理する良い機会だと思います。

最後に確認したい3つのポイント

  • 自社に合った申請方法を選んでいるか
  • 送信前に社会保険上の判断を確認しているか
  • 申請後の処理完了まで管理できているか

この3点を押さえておけば、「電子申請はできるようになったが、返戻を見ていなかった」「給与への反映を忘れた」「担当者しか操作方法を知らない」といった問題を防ぎやすくなります。

電子申請の画面、対応する届出、GビズIDの取得方法、電子申請義務化の対象範囲などは、制度改正やシステム変更によって変わる可能性があります。

社会保険の取扱いや電子申請の仕様について、 正確な情報は公式サイトをご確認ください

また、資格取得の判断、標準報酬月額の算定、算定基礎届、月額変更届、被扶養者の認定などは、会社や従業員の状況によって取扱いが異なる場合があります。

判断に迷うケースでは、誤った届出をそのまま電子申請する前に確認することが重要です。

最終的な判断は専門家にご相談ください

社会保険の電子申請は、最初の設定こそ少し作業がありますが、一度社内の流れを整えてしまえば、その後の入退社手続きや定例業務を効率化しやすくなります。

まずはGビズIDなどの認証環境を準備し、自社に合った方法で一つの手続きから電子申請へ切り替えてみるとよいでしょう。

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