こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
63歳から受け取れる特別支給の老齢厚生年金は、一律に「月○万円」と決まっているわけではありません。
まず、生年月日や厚生年金の加入歴などから特別支給の対象になるかを確認し、そのうえで過去の厚生年金加入期間や給与・賞与の記録をもとに受給額を確認する必要があります。
特に女性の場合、昭和37年4月2日から昭和39年4月1日までに生まれた方は、原則として63歳から特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分を受け取れる世代に該当します。
一方、男性は女性と支給開始年齢の引上げスケジュールが異なります。
そのため、「自分はいま63歳だから対象になるはず」と年齢だけで判断すると、実際の制度とずれてしまうことがあります。
また、対象者であっても「63歳なら月5万円」「女性なら月8万円」のように一律の金額が決まっているわけではありません。
会社員としてどのくらいの期間働き、その間にどの程度の給与や賞与を受け取っていたかによって金額は大きく変わります。
「自分は対象なのか」「63歳からいくらもらえるのか」は、生年月日と年金加入記録を分けて確認すると整理しやすくなります。
この記事では、63歳から特別支給を受けられる人の条件から、金額の考え方、働きながら受け取る場合の注意点、正確な受給額の確認方法、請求手続きまで順番に解説します。
- 63歳から特別支給を受けられる生年月日
- 女性と男性で異なる支給開始年齢
- 特別支給の老齢厚生年金の金額の決まり方
- 自分の正確な年金額を確認する方法

63歳の年金、特別支給はいくらもらえる?
63歳から受け取れる特別支給の老齢厚生年金について、最初に確認したいのは「63歳なら誰でも受け取れるわけではない」という点です。
特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳へ段階的に引き上げられた際に設けられた経過措置です。
そのため、現在の年齢だけではなく、生年月日と性別によって受給開始年齢が細かく分かれています。
さらに、生年月日の条件に当てはまっていても、老齢基礎年金の受給資格期間や厚生年金保険等の加入期間などの要件を満たしている必要があります。
63歳から受け取る代表的な対象者は、昭和37年4月2日から昭和39年4月1日までに生まれた女性です。
ただし、実際の受給額は厚生年金への加入期間や過去の報酬によって異なり、63歳という年齢だけから金額を計算することはできません。
63歳から対象となる生年月日
特別支給の老齢厚生年金は、単純に「現在63歳だから受け取れる」という制度ではありません。
最初に確認するのは、自分の生年月日が63歳を支給開始年齢とする区分に入っているかどうかです。
この点は非常に重要です。
年金相談でも、「友人が63歳から年金をもらっているので自分も同じだと思った」「同級生だから同じ時期からもらえると思っていた」という認識になりやすいところですが、男性と女性では支給開始年齢の引上げスケジュールが異なります。
一般的な厚生年金加入者について、63歳から報酬比例部分の支給が始まる生年月日は次のとおりです。
| 性別 | 63歳から受給開始となる生年月日 |
|---|---|
| 女性 | 昭和37年4月2日~昭和39年4月1日 |
| 男性 | 昭和32年4月2日~昭和34年4月1日 |
特に現在の検索者で該当しやすいのは女性です。
昭和37年4月2日から昭和39年4月1日までに生まれた女性は、原則として63歳から報酬比例部分を受給する世代です。
一方、男性で63歳支給の区分となるのは昭和32年4月2日から昭和34年4月1日までに生まれた方です。
現在63歳前後の男性の場合は、この生年月日区分より後に生まれていることが多いため、「今63歳の男性」というだけで特別支給の対象になるわけではありません。
特別支給の対象かを確認するときは、「現在何歳か」ではなく「生年月日に対応する支給開始年齢は何歳か」という順番で確認します。
63歳になる日と受給開始年齢を分けて考える
年金制度では、年齢到達の考え方にも注意が必要です。
実務上は誕生日そのものだけを見るのではなく、受給権がいつ発生するか、日本年金機構からどの時期に請求書が届くかまで含めて確認しておくと安心です。
たとえば63歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取る世代であっても、62歳の段階から年金が支給されるわけではありません。
自分の受給開始年齢に到達して初めて受給権が発生します。
また、特別支給の老齢厚生年金には、生年月日だけでなく、老齢基礎年金の受給資格期間や厚生年金保険等の加入期間などの要件があります。
「生年月日の表に入っている=必ず年金が発生する」と考えず、加入記録まで確認してください。
63歳から支給されるのは老齢基礎年金ではない
もう一つ混同しやすいのが、老齢基礎年金との違いです。
老齢基礎年金と通常の老齢厚生年金は原則65歳から受給します。
63歳から特別支給の対象となる方が受け取るのは、基本的には65歳前の経過措置として支給される老齢厚生年金の報酬比例部分です。
したがって、「63歳から公的年金が全部そろって支給される」と考えるのではなく、63歳から65歳までの間に特別支給の老齢厚生年金があり、65歳になると原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金の仕組みに移る、と整理すると分かりやすいかなと思います。
社会保険とは全体の流れは、社会保険とは?仕組み・種類・広義と狭義の違いの記事でまとめて整理しています。
65歳前後の年金の受け取り方について全体像から確認したい方は、 年金は何歳からもらえるかを整理した解説 も参考にしてください。
女性で63歳受給となる生年月日

「63歳から特別支給の年金を受け取れるのか」という疑問について、現在特に確認しておきたいのが女性の支給開始年齢です。
女性の場合、昭和37年4月2日から昭和39年4月1日までに生まれた方は、原則として63歳から特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分を受け取る世代です。
女性の特別支給の老齢厚生年金は、男性より5年遅いスケジュールで支給開始年齢が段階的に引き上げられています。
そのため、現在でも63歳や64歳から特別支給を受け取る女性がいる一方、より若い世代ではこの経過措置が終了していきます。
女性の一般的な支給開始年齢を整理すると、次のようになります。
| 女性の生年月日 | 報酬比例部分の支給開始年齢 |
|---|---|
| 昭和29年4月2日~昭和33年4月1日 | 60歳 |
| 昭和33年4月2日~昭和35年4月1日 | 61歳 |
| 昭和35年4月2日~昭和37年4月1日 | 62歳 |
| 昭和37年4月2日~昭和39年4月1日 | 63歳 |
| 昭和39年4月2日~昭和41年4月1日 | 64歳 |
| 昭和41年4月2日以後 | 原則65歳 |
たとえば昭和38年生まれの女性であれば、基本的には63歳から報酬比例部分を受け取る世代に該当します。
2026年に63歳となる女性の中でも、昭和38年4月2日から昭和39年4月1日までに生まれ、必要な加入要件を満たす方は、特別支給の老齢厚生年金の請求時期を迎えることになります。
63歳からもらえるのは主に報酬比例部分
ここで「63歳から年金がもらえるなら、65歳からの年金と同じ金額が2年前倒しでもらえるのか」と思う方もいるかもしれません。
そうではありません。
63歳から通常受け取るのは、 老齢厚生年金の報酬比例部分 です。
63歳から老齢基礎年金まで一緒に支給されるという意味ではありません。
老齢基礎年金は原則として65歳からです。
報酬比例部分とは、簡単にいえば「会社員などとして厚生年金に加入していた実績に応じて計算される部分」です。
そのため、同じ昭和38年生まれの女性であっても、会社員として40年近く厚生年金に加入してきた方と、結婚や退職などにより厚生年金加入期間が数年間だけだった方では、63歳から受け取る金額が大きく異なります。
ここが「63歳の特別支給はいくら?」という質問に、一律の金額で答えられない最大の理由です。
長期加入者や障害の特例がある場合
通常の63歳支給では報酬比例部分が中心ですが、厚生年金への長期加入や一定の障害状態など、所定の要件を満たす場合には、定額部分の支給開始年齢について特例が適用されることがあります。
こうした特例は誰にでも適用されるものではなく、厚生年金の加入期間、現在の被保険者資格、障害の状態などによって確認事項が増えます。
長期間会社員として働いてきた方や、障害年金との関係が気になる方は、一般的な生年月日の一覧表だけで結論を出さないほうがよいでしょう。
制度の対象者、生年月日別の支給開始年齢、特例については、一次情報である 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」 でも確認できます。
(出典:日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」)
男性は支給開始年齢の基準が異なる
男性と女性では、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢を決める生年月日の区分が異なります。
男性が63歳から報酬比例部分を受け取る区分は、 昭和32年4月2日から昭和34年4月1日までに生まれた方 です。
男性の支給開始年齢は次のようになっています。
| 男性の生年月日 | 報酬比例部分の支給開始年齢 |
|---|---|
| 昭和24年4月2日~昭和28年4月1日 | 60歳 |
| 昭和28年4月2日~昭和30年4月1日 | 61歳 |
| 昭和30年4月2日~昭和32年4月1日 | 62歳 |
| 昭和32年4月2日~昭和34年4月1日 | 63歳 |
| 昭和34年4月2日~昭和36年4月1日 | 64歳 |
| 昭和36年4月2日以後 | 原則65歳 |
この表から分かるとおり、男性について63歳から特別支給を受け取る世代は、女性よりかなり前の生年月日です。
現在63歳の男性の場合、生まれた年はおおむね昭和37年から昭和38年頃になります。
ところが、男性の特別支給の老齢厚生年金は、昭和36年4月2日以後生まれの方については原則として65歳からの老齢厚生年金へ移行しています。
そのため、現在63歳の男性が「女性の知人が63歳から年金をもらっているから、自分も特別支給を受け取れるのでは」と考えても、通常は同じ扱いにはなりません。
「63歳」という年齢が同じでも、男性と女性では特別支給の対象となる生年月日が異なります。
夫婦が同年代の場合でも、夫には63歳からの特別支給がなく、妻には63歳から支給されるというケースがあります。
男性と女性で5年ずれている理由
特別支給の老齢厚生年金では、女性の支給開始年齢引上げが男性より遅れて進められました。
そのため、たとえば報酬比例部分が63歳からとなる区分を見ると、男性は昭和32年4月2日から昭和34年4月1日生まれ、女性は昭和37年4月2日から昭和39年4月1日生まれとなり、5年の違いがあります。
検索すると「63歳から年金がもらえる」という情報だけが目に入ることがありますが、この5年の違いを見落とすと、自分の受給開始時期を誤って理解することになります。
年金の相談では、生年月日を聞くだけでなく性別や厚生年金加入歴まで一緒に確認するのはこのためです。
現在63歳の男性は原則65歳からを基本に考える
現在63歳前後の男性の場合は、原則65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給する世代として考えるのが基本です。
もちろん、60歳から64歳までの老齢年金の繰上げ受給など、別の制度を利用できる場合はあります。
しかし、これは特別支給の老齢厚生年金とは制度が違います。
繰上げ受給は、本来65歳から受け取る老齢基礎年金・老齢厚生年金を早く受け取る代わりに、一定の減額が生涯続く制度です。
一方、特別支給は、対象となる世代について法律上定められた支給開始年齢から支給される経過措置です。
「63歳でもらえる年金」という言葉だけで、特別支給と繰上げ受給を混同しないことが重要です。
特別支給の老齢厚生年金とは

特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳へ引き上げられた際、その間を段階的につなぐために設けられた経過措置です。
昭和60年の法律改正により、厚生年金保険の受給開始年齢を60歳から65歳へ引き上げることになりました。
しかし、それまで60歳から厚生年金を受け取ることを前提としていた世代について、ある時点を境に一律65歳からへ変更すると、老後の生活設計に大きな影響が出ます。
そこで、生年月日に応じて60歳、61歳、62歳、63歳、64歳と支給開始年齢を段階的に引き上げ、最終的に65歳へ移行する仕組みがとられました。
この移行期間に支給されるのが特別支給の老齢厚生年金です。
特別支給は65歳前の経過措置
名前に「特別支給」と付いているため、「一定の人だけがもらえるボーナスのような年金」と感じる方もいるかもしれませんが、そういう制度ではありません。
受給開始年齢を段階的に引き上げる過程で、対象となる生年月日の方に65歳前から老齢厚生年金を支給するための仕組みです。
現在は制度の移行がかなり進んでおり、男性については原則として対象となる世代が終了しています。
女性についても、昭和41年4月2日以後生まれの方は特別支給ではなく、原則65歳から老齢厚生年金を受給する世代になります。
つまり、特別支給の老齢厚生年金は今後ずっと新しい世代に残る制度ではなく、受給開始年齢引上げのための経過措置と理解すると整理しやすいでしょう。
特別支給の老齢厚生年金は「年金の繰上げ受給」とは別の制度です。
対象となる生年月日の方が法律上の支給開始年齢から受け取る年金であり、単に早く受け取ったことを理由として、生涯にわたり一定率で減額される仕組みではありません。
繰上げ受給との違い
特別支給と繰上げ受給の違いは、63歳前後の方が特に混同しやすいポイントです。
| 項目 | 特別支給の老齢厚生年金 | 繰上げ受給 |
|---|---|---|
| 制度の性質 | 受給開始年齢引上げに伴う経過措置 | 本人の希望で65歳前に受給 |
| 対象 | 所定の生年月日・加入要件を満たす方 | 一定の受給要件を満たし繰上げを希望する方 |
| 早期受給による減額 | 通常の支給開始年齢からなら原則なし | 繰上げ月数に応じて減額 |
| 65歳まで待てば増えるか | 特別支給部分に繰下げ制度なし | 繰上げしなければ本来の65歳受給へ |
特に注意してほしいのは、特別支給の老齢厚生年金には原則として繰下げ制度がないことです。
「63歳から受け取れるけれど、生活に困っていないので65歳まで待てば、その分だけ増額されるのでは」と考える方がいますが、特別支給についてはそのような繰下げ増額はありません。
特別支給を請求せず65歳まで待っても、「待った2年分だけ年金月額が増える」という仕組みにはなりません。
受給権が発生したら、請求漏れのないよう手続きを確認することが大切です。
なお、65歳以降の老齢基礎年金・老齢厚生年金については、一定の要件のもとで繰下げ受給を選択できるため、63歳から65歳までの特別支給と65歳以降の年金は分けて考えてください。
受給には厚生年金の加入歴が必要
生年月日の条件を満たしているだけでは、特別支給の老齢厚生年金を受け取ることはできません。
「昭和38年生まれの女性だから63歳から必ずもらえる」と考えるのではなく、年金の受給資格期間と厚生年金保険等への加入期間を確認する必要があります。
基本的には、次の要件を確認します。
- 対象となる生年月日の範囲に入っていること
- 老齢基礎年金の受給資格期間が原則10年以上あること
- 厚生年金保険等の加入期間が1年以上あること
- 生年月日に応じた支給開始年齢に達していること
この中で特に分かりにくいのが、「厚生年金保険等の加入期間が1年以上」という部分です。
老齢基礎年金の受給資格期間が10年以上あったとしても、厚生年金の加入実績がなければ、そもそも老齢厚生年金の報酬比例部分は形成されません。
たとえば、長年自営業で国民年金だけに加入してきた方が、63歳支給となる女性の生年月日区分に入っていたとしても、それだけで特別支給の老齢厚生年金が発生するわけではありません。
過去に会社員だった期間も確認する
反対に、現在は会社員ではなくても、過去に厚生年金へ加入していた期間があれば対象になる可能性があります。
たとえば、20代から40代まで会社員として働き、その後は配偶者の扶養に入っていた方や、自営業へ転身した方でも、過去の厚生年金加入期間は年金記録として残ります。
現在働いている会社だけを見るのではなく、これまでの職歴全体を確認することが重要です。
転職回数が多い方は、昔の会社名や勤務期間をすべて正確に覚えていないこともあります。
その場合は記憶だけで判断せず、ねんきん定期便やねんきんネットの加入記録を確認してください。
特に、会社名が変わっている、会社がすでに廃業している、結婚などで氏名が変わっているといった場合でも、年金記録として正しくつながっているかを確認しておく意味があります。
63歳でも働いている場合は在職老齢年金に注意
もう一つ重要なのが、63歳になっても会社員として働き、厚生年金に加入している場合です。
現在働いているかどうかと、特別支給の老齢厚生年金の受給資格があるかどうかは別の問題です。
対象者であれば働いていても請求できますが、給与や賞与と老齢厚生年金の額によっては、在職老齢年金による支給停止が生じる場合があります。
2026年度は、在職老齢年金について、基本月額と総報酬月額相当額の合計が月65万円以下であれば原則として老齢厚生年金は全額支給され、65万円を超える場合には超えた額をもとに年金の一部または全部が支給停止される場合があります。
ここでいう総報酬月額相当額は、単純な毎月の手取り給与ではありません。
標準報酬月額に、直近1年間の標準賞与額の合計を12で割った額を加えて考えます。
そのため、「月給50万円だから65万円未満なので大丈夫」と単純に判断するのではなく、賞与も含めて確認する必要があります。
たとえば、基本月額が8万円で、総報酬月額相当額が50万円なら合計58万円ですから、2026年度の65万円という基準の範囲内です。
一方、基本月額10万円、総報酬月額相当額60万円なら合計70万円となり、基準額を超える部分について支給停止の計算が必要になります。
在職老齢年金の基準額は年度や制度改正によって変わる可能性があります。
63歳以降も比較的高い給与で勤務する方は、年金の請求時だけでなく、給与や賞与が大きく変わったときにも確認しておくとよいでしょう。
63歳の年金特別支給はいくら?確認方法
対象者であることが分かったら、次に気になるのが「実際に63歳からいくらもらえるのか」でしょう。
特別支給の老齢厚生年金については、年齢だけから受給額を出すことはできません。
基本となる報酬比例部分は、会社員として働いていた期間の給与や賞与と、厚生年金へ加入していた期間をもとに計算されるためです。
そのため、同じ63歳の女性でも受給額にはかなり差があります。
厚生年金の加入期間が短ければ月数万円程度となることがありますし、長期間にわたり比較的高い報酬で加入していれば、それより大きな額になることもあります。
重要なのは、ネット上で見つけた平均額をそのまま自分に当てはめるのではなく、加入期間と報酬記録から確認することです。
「対象になるか」は生年月日と加入要件で確認し、「いくらもらえるか」はあなた自身の厚生年金記録で確認する。
この2段階に分けると、63歳の特別支給をかなり理解しやすくなります。
受給額は加入期間と給与で変わる
63歳から受け取る特別支給の老齢厚生年金の中心となるのが、 報酬比例部分 です。
名前のとおり、現役時代の報酬に比例して年金額が決まる部分です。
簡単にいえば、会社員として厚生年金に加入していた期間が長く、その期間中の給与や賞与の水準が高いほど、報酬比例部分も大きくなる傾向があります。
そのため、たとえば「63歳の女性なら月8万円」「40年間働けば必ず月10万円」というように、年齢や性別、勤続年数のどれか一つだけで金額を決めることはできません。
金額を見るときの2つのポイント
- 厚生年金に何カ月加入していたか
- 加入期間中の標準報酬月額・標準賞与額がどの程度だったか
たとえば、厚生年金に40年間加入していた方と20年間加入していた方を比較すれば、その他の条件が同じなら40年間加入した方の報酬比例部分は大きくなります。
一方で、加入期間が同じ40年でも、平均的な報酬水準が月20万円程度だった方と月40万円程度だった方では、年金額に差が生じます。
つまり、厚生年金の受給額は 「加入期間 × 報酬水準」 の両方から考える必要があります。
現在の給与ではなく加入期間全体を見る
ここも勘違いしやすいところです。
「今の月給が30万円なので、月給30万円で年金額を計算すればよい」と考えるわけではありません。
厚生年金の報酬比例部分では、長年の加入記録に基づく標準報酬月額や標準賞与額が使われます。
たとえば、20代は月給15万円、30代は25万円、40代は30万円、50代以降は40万円というように、長い職業生活の中で給与は変化します。
転職によって一時的に給与が下がった方もいれば、役職に就いて50代から大幅に給与が上がった方もいるでしょう。
そのすべての加入記録が年金額の計算に関係するため、現在の給与だけから受給額を推測すると実際の金額とずれる可能性があります。
「最後の会社の給与が高かったから年金もかなり高いはず」と思っていても、厚生年金は退職直前の給与だけで決まる制度ではありません。
加入期間全体の報酬記録を見ることが重要です。
賞与も年金額に関係する
平成15年4月以降は、標準報酬月額だけでなく標準賞与額も含めた平均標準報酬額が報酬比例部分の計算に関係します。
そのため、毎月の給与は同じでも賞与の支給状況が異なれば、厚生年金額にも違いが生じる可能性があります。
年収500万円といっても、「月給約42万円で賞与なし」の方と「月給30万円で賞与が年間140万円程度」の方では、標準報酬の記録のされ方が完全に同じとは限りません。
ネット上の年収別早見表はこうした点を単純化していることが多いため、あくまで目安として使うのが適切です。
厚生年金について年収・加入期間別の大まかな水準を確認したい場合は、 厚生年金受給額早見表の解説 も参考にしてください。
63歳から受け取る特別支給の年金額と、65歳以降に受け取る公的年金全体の金額は同じではありません。
63歳時点では主に報酬比例部分を受け取り、65歳以降は原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取る仕組みに変わります。
報酬比例部分の金額の考え方

特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分は、厚生年金に加入していた時期によって計算方法が分かれています。
現在63歳前後の方の場合、20代や30代の頃から会社員として働いていれば、平成15年3月以前と平成15年4月以降の両方に厚生年金加入期間がある可能性が高いでしょう。
この平成15年4月を境に、賞与を含めた総報酬制が導入されたため、計算に使用する報酬の考え方が変わっています。
基本的なイメージは次のとおりです。
| 加入期間 | 基本的な計算の考え方 |
|---|---|
| 平成15年3月以前 | 平均標準報酬月額 × 給付乗率 × 加入月数 |
| 平成15年4月以降 | 平均標準報酬額 × 給付乗率 × 加入月数 |
実際の計算では、生年月日、加入時期、再評価率なども関係するため、この表だけで正確な年金額を算出できるわけではありません。
平成15年3月以前と4月以降で違う理由
平成15年3月以前の報酬比例部分では、基本的に月々の標準報酬月額を中心に計算します。
これに対し、平成15年4月以降は賞与にも厚生年金保険料がかかる総報酬制となったため、標準賞与額を含めた平均標準報酬額を用いる仕組みになっています。
現在63歳の方が20歳代から会社員として働いていれば、加入期間の前半は平成15年3月以前、後半は平成15年4月以降となることがあります。
そのため、単純に「平均月給30万円 × 40年」のような計算だけでは正確な金額を出せません。
簡易計算で見る金額のイメージ
それでも、「全く金額のイメージがないので、おおよそどの程度なのか知りたい」という方も多いと思います。
そこで、あくまで仕組みを理解するための単純な例として、報酬水準が加入期間を通じて一定だったと仮定し、厚生年金へ40年間加入、そのうち平成15年3月以前を20年間、平成15年4月以降を20年間と仮定して単純計算すると、次のようなイメージになります。
| 仮定する報酬水準 | 年額の単純計算例 | 月額換算 |
|---|---|---|
| 月20万円程度 | 約60.5万円 | 約5.0万円 |
| 月30万円程度 | 約90.8万円 | 約7.6万円 |
| 月40万円程度 | 約121.0万円 | 約10.1万円 |
この表は、63歳から必ず受け取れる金額を示したものではありません。
報酬水準を一定とし、加入時期も20年ずつに分けるなど、実際の年金計算を大幅に単純化した説明用の目安です。
実際の職歴では、20歳代と50歳代の給与が同額ということは少ないでしょうし、転職、育児や介護による離職、短時間勤務、賞与の有無なども人によって異なります。
月5万円・8万円・10万円になる人の違い
上記の簡易例を見ると、「月5万円程度」「月8万円前後」「月10万円程度」という違いが、単に63歳という年齢によるものではないことが分かります。
厚生年金に長く加入し、平均的な報酬が高かった方ほど報酬比例部分が大きくなります。
反対に、会社員期間が短く、その後長期間にわたり国民年金第1号被保険者や第3号被保険者だった方などは、老齢基礎年金の加入期間が長くても、63歳から受け取る報酬比例部分は比較的小さくなることがあります。
つまり、65歳以降の老齢基礎年金を含む総額と、63歳からの特別支給の額は切り分けて考える必要があります。
年金額の数値はあくまで一般的な目安です。
実際の受給額には、過去の標準報酬月額、標準賞与額、加入月数、加入時期、再評価率などが関係します。
表の金額をそのまま将来の確定収入として資金計画に使用しないようにしてください。
特に63歳前後の方は、数十年にわたる厚生年金記録があるケースも多いため、自分で昔の給与を集計して計算するより、日本年金機構が管理している年金記録から確認するほうが確実です。
年金事務所で正確な金額を確認
「自分の場合、63歳から結局いくらもらえるのか」を正確に知りたいのであれば、一般的な早見表よりも、あなた自身の年金記録を確認することが大切です。
年金額の概算を知るだけであれば早見表も便利ですが、実際に63歳からの生活費を考えたり、仕事を続けるか退職するかを検討したりする段階では、自分の年金見込額を確認したほうがよいでしょう。
確認方法としては、主に次のようなものがあります。
- 日本年金機構から届く年金請求書や案内を確認する
- ねんきん定期便の加入記録や年金額を確認する
- ねんきんネットで年金記録を確認する
- 年金事務所で加入記録や受給見込額を確認する
まず年金加入記録に漏れがないか確認する
私は、金額を見る前に一度確認してほしいのが 年金加入記録そのもの です。
63歳前後であれば、20歳代から現在まで40年前後の職歴がある方も珍しくありません。
勤務先が一社だけなら比較的確認しやすいのですが、転職を繰り返している場合には、「昔勤めていた会社の期間も入っているか」「退職から次の会社への入社までの期間はどうなっているか」といった点を確認しておく意味があります。
また、厚生年金だけでなく、国民年金の第1号被保険者期間、第3号被保険者期間、共済組合の加入期間などがある方もいます。
長い職業人生のすべてを記憶だけで正確に再現するのは難しいものです。
金額を確認する前に、まず年金加入記録そのものに漏れや違和感がないかを見ることをおすすめします。
ねんきん定期便で確認する
ねんきん定期便には、これまでの年金加入期間や年金額に関する情報が記載されています。
50歳以上の方の場合、現在の加入条件が一定年齢まで継続したものとして計算された年金見込額が表示されるため、老後の年金額を考えるうえで参考になります。
ただし、ねんきん定期便の数字を見るときには、「63歳からの特別支給の額なのか」「65歳からの老齢基礎年金と老齢厚生年金を含む金額なのか」を区別して確認する必要があります。
単に一番大きく書かれている数字だけを見るのではなく、何歳から受け取る年金の金額なのかを確認してください。
年金定期便の確認方法が分からない場合は、 年金定期便の見方と年金見込額の確認ポイント も参考にしてください。
ねんきんネットなら加入記録を詳しく確認できる
ねんきんネットを利用すると、自分の年金加入記録や年金見込額などをインターネット上で確認できます。
「昔勤めた会社の厚生年金期間を確認したい」「加入月数が思っていたより少ない気がする」といった場合にも便利です。
年金額を試算するときは、「自分の平均年収はこれくらいだったはず」と推測するより、記録されている情報をもとに確認したほうが精度が高くなります。
分からなければ年金事務所へ相談する
特別支給の対象かどうか、過去の加入記録、在職老齢年金との関係など、自分だけでは判断しにくい場合は年金事務所で確認する方法があります。
年金事務所へ相談するときは、基礎年金番号が分かる資料や日本年金機構から届いた年金請求書・ねんきん定期便などを用意しておくと確認が進めやすくなります。
また、配偶者の年金、加給年金、他の年金の受給権などが関係する場合には、自分の年金額だけを単独で見ても判断しにくいケースがあります。
特に「63歳で退職したほうがよいのか」「働き続けると年金が減るのか」といった働き方まで含む相談では、年金額だけでなく給与、雇用保険、健康保険なども合わせて確認すると整理しやすくなります。
請求手続きと受給開始のタイミング

特別支給の老齢厚生年金は、対象年齢になれば自動的に銀行口座へ振り込まれるわけではありません。
年金を受け取るためには年金請求の手続きが必要です。
この点は意外に見落とされやすく、「日本年金機構が記録を持っているのだから、対象年齢になれば自動的に支給されると思っていた」という方もいます。
しかし、受給権が発生したことと、実際に年金の支給を受けるための請求手続きを行ったことは別です。
日本年金機構では、特別支給の老齢厚生年金の受給権が発生する方に対して、原則として受給開始年齢に到達する3カ月前に年金請求書を送付しています。
年金請求書が届いたら確認すること
- 氏名や住所などの基本情報
- これまでの年金加入記録
- 必要な添付書類
- 請求書を提出できる時期
- 提出先となる年金事務所等
年金請求書には、基礎年金番号や氏名、生年月日、年金加入記録などがあらかじめ印字されている場合があります。
届いたらすぐ署名して提出するのではなく、加入記録に漏れがないか、住所や氏名に誤りがないかなどを確認しましょう。
3カ月前に届いてもすぐ請求できるとは限らない
年金請求書が受給開始年齢の3カ月前に届くのは、事前に書類を確認・準備できるようにするためです。
実際の提出時期については、年金請求書や同封されている案内を確認してください。
「書類が届いた=その日から年金がもらえる」という意味ではありません。
戸籍や住民票などの添付書類が必要となる場合には、取得時期について条件があることもありますので、必要書類を早く取りすぎないよう案内を確認することも大切です。
請求書が届いたら、まず加入記録と必要書類を確認し、受給権が発生する時期に合わせて提出準備を進めるのが基本です。
請求を忘れても繰下げ増額にはならない
特別支給の老齢厚生年金で特に注意したいのが、「請求しないでおけば増えるのではないか」という誤解です。
特別支給の老齢厚生年金には原則として繰下げ制度がありません。
「65歳まで請求しなければ、待った期間に応じて特別支給の年金額が増える」というものではありません。
65歳以降の老齢基礎年金や老齢厚生年金には繰下げ受給の仕組みがありますが、63歳から65歳までの特別支給の部分とは分けて考えます。
そのため、対象となる特別支給については、受給権が発生したら請求漏れのないよう手続きを進めることが基本です。
年金には時効がある
「あとでまとめて請求すればよい」と何年も放置するのもおすすめできません。
年金を受け取る権利には時効の問題があり、長期間請求しないまま経過すると、過去分の一部を受け取れなくなる可能性があります。
特別支給に繰下げ増額がないことも合わせて考えると、請求書が届いたのに何年もそのままにしておくメリットは通常ありません。
「書類の記入方法が分からない」「必要書類が揃わない」といった場合は、そのまま放置せず年金事務所等へ確認してください。
請求手続きについては、一次情報である 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金を受給するときの手続き」 で最新の案内を確認できます。
(出典:日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金を受給するときの手続き」)
65歳になると年金の仕組みが変わる
63歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取っている方も、65歳になると公的年金の仕組みが切り替わります。
原則として、65歳からは老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給することになります。
63歳から受け取っていた報酬比例部分がそのまま単純に上乗せされ、さらに同じ金額の年金が追加されるというイメージではありません。
65歳時には日本年金機構から届く案内を確認し、老齢基礎年金や老齢厚生年金について必要な手続きを行ってください。
また、65歳以降については繰下げ受給を検討できる場合があります。
63歳からの特別支給は速やかに請求し、65歳以降の年金については生活資金や働き方を踏まえて別途判断する、という考え方もできます。
まとめ|63歳の年金特別支給はいくらか確認
63歳から受け取れる特別支給の老齢厚生年金は、全員が同じ金額を受け取る制度ではありません。
「63歳の年金特別支給はいくら?」と調べたときに、最初から平均金額だけを見るのではなく、まず自分が特別支給の対象になる世代なのかを確認することが大切です。
女性の場合、 昭和37年4月2日から昭和39年4月1日までに生まれた方は、原則として63歳から報酬比例部分の支給が始まります。
一方、男性が63歳から受給する対象となるのは昭和32年4月2日から昭和34年4月1日までに生まれた方です。
したがって、現在63歳前後の男性と女性では、特別支給の取扱いが異なる場合があります。
63歳からいくらかを確認する順番
「63歳の年金特別支給はいくらなのか」を確認するときは、次の順番で見ると整理しやすくなります。
- 生年月日から特別支給の対象か確認する
- 老齢基礎年金の受給資格期間を確認する
- 厚生年金保険等への加入期間を確認する
- 加入期間中の標準報酬月額や標準賞与額の記録を確認する
- ねんきん定期便やねんきんネットで金額を確認する
- 働いている場合は在職老齢年金の影響を確認する
- 必要に応じて年金事務所へ相談する
この順番で確認すれば、「そもそも対象外なのに金額だけ調べていた」「65歳からの年金額を63歳からもらえる金額だと思っていた」といった混乱を防ぎやすくなります。
同じ63歳でも受給額は大きく変わる
特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分は、厚生年金への加入期間と現役時代の報酬によって決まります。
長期間会社員として働き、比較的高い給与や賞与で厚生年金に加入していた方は、63歳からの報酬比例部分も大きくなる傾向があります。
一方、厚生年金の加入期間が短い方は、老齢基礎年金の受給資格期間が十分にあったとしても、63歳から受け取る特別支給の金額が比較的小さいことがあります。
そのため、「友人が月8万円もらっている」「知人は月10万円だと言っていた」という情報をそのまま自分に当てはめることはできません。
63歳からいくらもらえるかを知る一番確実な方法は、自分自身の年金加入記録と年金額を確認することです。
働いている方は支給停止も確認する
63歳以降も会社員として働いている場合、特別支給の老齢厚生年金の受給資格がなくなるわけではありません。
ただし、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取る方は、給与・賞与と年金額の組み合わせによって在職老齢年金による支給停止が生じる場合があります。
2026年度は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超える場合に支給停止の計算が行われます。
年金だけを見て「月8万円受け取れる」と判断せず、現在の給与や直近1年間の賞与まで含めて確認してください。
特別支給は請求手続きを忘れない
対象となる方には、原則として受給開始年齢に到達する3カ月前に年金請求書が送付されます。
特別支給の老齢厚生年金は自動的に振り込まれる制度ではないため、届いた書類を確認し、受給権発生後に必要な請求手続きを行うことが大切です。
また、特別支給には原則として繰下げ制度がありません。
「63歳からもらえるけれど、65歳まで待てば増える」という仕組みではないため、請求を意図的に遅らせる前に制度を確認してください。
この記事の要点
- 女性の昭和37年4月2日~昭和39年4月1日生まれは原則63歳から報酬比例部分を受給
- 男性の63歳支給対象は昭和32年4月2日~昭和34年4月1日生まれ
- 63歳という年齢だけでは対象か判断できない
- 受給額は厚生年金の加入期間と報酬記録によって異なる
- 63歳から受け取るのは通常は報酬比例部分で老齢基礎年金は原則65歳から
- 働いている場合は在職老齢年金による支給停止を確認する
- 特別支給には原則として繰下げ制度がない
- 受給には年金請求の手続きが必要
年金制度や在職老齢年金の支給停止基準額、年金額の計算に使われる数値は、制度改正や年度改定によって変わることがあります。
この記事で紹介した金額や計算例は、制度を理解するための一般的な目安です。
実際の受給額は個々の年金加入記録によって異なります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
また、特別支給の対象になるか、働き続けた場合に年金がどの程度支給停止されるか、65歳以降の年金をどのように受け取るかなどは、一人ひとりの加入記録や働き方によって判断が変わります。
年金だけでなく、給与、雇用保険、健康保険、税金、退職後の生活資金まで含めて検討したほうがよいケースもあります。
あなた自身の年金記録や今後の働き方を踏まえた個別判断が必要な場合は、一般的な早見表だけで結論を出さず、 最終的な判断は専門家にご相談ください。