こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
会社名を変更した、事業所を移転した、個人事業主が交代したといった場合には、雇用保険の登録情報を変更するために雇用保険事業主事業所各種変更届を提出することがあります。
この手続きで実務上まず確認したいのは、届書の書き方よりも「今回の変更が雇用保険上の届出対象になるのか」という点です。
ただし、変更があれば何でもこの届出が必要になるわけではありません。
たとえば法人の代表者が交代しただけで、法人名や所在地などに変更がなければ、雇用保険上の変更手続きは原則として必要ありません。
一方で、同じ「事業主が変わった」というケースでも、個人事業主の代替わりでは取扱いが異なります。
さらに会社の移転や名称変更では、雇用保険だけでなく労働保険や社会保険の変更手続きも同時に発生しやすいため、どの行政機関に何を出すのかを整理して進めることが大切です。
この記事では、雇用保険事業主事業所各種変更届が必要になるケースから、提出先、提出期限、添付書類、具体的な書き方、労働保険との手続き順、電子申請まで、企業の実務担当者向けに順番に解説します。
- 雇用保険事業主事業所各種変更届が必要なケース
- 変更届の提出先と提出期限
- 添付書類と具体的な記入ポイント
- 労働保険や社会保険との手続きの違い

雇用保険事業主事業所各種変更届の基本
まずは、雇用保険事業主事業所各種変更届がどのような書類なのかを整理しましょう。
実務では、書き方より先に「今回の変更がそもそも届出対象なのか」を判断することが重要です。
特に迷いやすいのが、法人の代表者変更と個人事業主の交代です。
同じ「代表者が変わった」という感覚でも、雇用保険上の取扱いは同じではありません。
また、本店登記だけが変わったのか、実際に雇用保険の適用事業所が移転したのかによっても確認すべき内容が変わります。
ここでは、最初に届出対象、代表者変更、個人事業主の代替わり、提出先、期限という順番で基本を整理します。
届出が必要になる変更事項
雇用保険事業主事業所各種変更届は、雇用保険の適用事業所としてハローワークに登録されている事業主や事業所の情報に変更が生じた場合に使用する届書です。
雇用保険の手続きでは、従業員一人ひとりの資格取得や資格喪失だけでなく、「どの事業所で雇用されているのか」という事業所情報も登録されています。
そのため、会社名や事業所所在地などに変更があった場合には、従業員側の資格を変更するのではなく、事業所側の登録情報を変更する必要があります。
雇用保険事業主事業所各種変更届は、雇用保険法施行規則上の様式第6号に当たる届書で、電子申請では帳票種別13003として扱われています。
様式番号そのものを覚える必要はありませんが、似た名称の書類が多いため、書類を探す際には正式名称を確認することが大切です。
代表的には、次のような変更が対象になります。
- 会社や事業所の名称を変更した
- 事業所を別の所在地へ移転した
- 事業の種類や事業内容を変更した
- 事業所の電話番号など登録事項を変更した
- 個人事業において事業主の氏名や住所が変わった
- 一定の条件のもとで個人事業主が交代した
会社名と事業所名を分けて考える
会社では、登記上の法人名と実際に使用している事業所名、店舗名、営業所名が異なることがあります。
たとえば、法人名が「株式会社みどり商事」で、雇用保険の適用事業所として「株式会社みどり商事盛岡営業所」が登録されているケースです。
このとき、会社全体の商号変更なのか、営業所の名称だけを変更したのかによって、変更する情報を整理する必要があります。
株式会社みどり商事が株式会社みどり企画へ商号変更した場合や、盛岡市内の事業所を別の住所へ移転した場合には、雇用保険の事業所情報について変更手続きを確認します。
一方で、会社内部の担当者が変わった、総務担当者のメールアドレスが変わった、部長の役職名が変わったといった事情まで、すべて雇用保険事業主事業所各種変更届で届け出るわけではありません。
本店移転と事業所移転は必ずしも同じではない
所在地変更で特に注意したいのが、法人登記上の本店所在地と、雇用保険の適用事業所所在地が必ずしも一致しない点です。
たとえば、登記上の本店を代表者の自宅に置き、従業員が勤務する事務所を別の場所に設けている企業があります。
この場合、本店登記だけを変更して、従業員が勤務している雇用保険適用事業所には何も変化がないのであれば、「登記住所が変わった」という事情だけで判断せず、雇用保険上どの情報が登録されているのかを確認する必要があります。
逆に、登記上の本店住所は変更しなくても、従業員が実際に勤務している営業所を移転するのであれば、雇用保険の事業所所在地変更が問題になります。
会社の移転手続きでは、「登記上の本店」と「雇用保険上の適用事業所」をいったん分けて考えると整理しやすくなります。
私は実務でも、最初に登記事項証明書だけを見るのではなく、雇用保険適用事業所設置届などの過去資料と現在の勤務実態を確認するようにしています。
合併や事業譲渡は単純な変更届とは限らない
また、合併、事業譲渡、会社分割、事業所の統廃合などは少し注意が必要です。
こうしたケースでは、会社名や所在地だけが変わる通常の変更とは異なり、「雇用関係を誰が承継するのか」「雇用保険上、同じ事業所として継続できるのか」という問題が生じます。
たとえば、株式会社Aの事業を株式会社Bへ譲渡し、株式会社Aで雇用されていた従業員が株式会社Bへ移る場合には、原則的な資格喪失・資格取得の考え方だけでなく、新旧事業の実態や同一性を確認したうえで取扱いが判断されることがあります。
組織再編や事業譲渡では、各種変更届だけで処理できると自己判断しないことが重要です。
事業の実態、雇用契約の承継状況、資産や営業場所の承継などによって必要な手続きが変わる可能性があります。
単純な会社名変更や所在地変更とは分けて考え、事前に管轄ハローワークへ確認してから進めるのが安全です。
まずは「何が変わったのか」を一つずつ分解すること。
これが雇用保険事業主事業所各種変更届を正しく処理するための最初のポイントです。
法人の代表者変更だけなら原則不要
実務でよく質問を受けるのが、「代表取締役が変わったので雇用保険の変更届も必要ですか」というケースです。
法人については、代表者が変更されただけで、法人そのものや事業所の名称、所在地などに変更がなければ、雇用保険の変更手続きは原則として必要ありません。
会社では、代表取締役の退任・就任があると法務局で代表者変更の登記を行うため、人事・総務担当者としては「他の役所にも全部変更届を出さなければならないのではないか」と考えやすいところです。
ただ、行政手続きは制度ごとに変更対象が異なります。
法務局の法人登記で必要となる変更事項と、雇用保険の適用事業所情報として変更が必要になる事項は一致するとは限りません。
法人は代表者が変わっても同じ法人
たとえば、株式会社Aで代表取締役が田中さんから佐藤さんへ交代したものの、会社名、本店所在地、実際の事業所所在地、事業内容がそのままであるケースを考えてみます。
この場合、法人である株式会社Aという事業主体自体は変わっていません。
田中さん個人が事業主だったものを佐藤さん個人へ引き継いだわけではなく、あくまで株式会社Aの代表機関が変更されたという関係です。
そのため、代表取締役の交代だけを理由として雇用保険事業主事業所各種変更届を提出する必要はないという整理になります。
法人の代表者が変わっただけなら、まず「会社名・所在地・事業内容など、雇用保険上の登録事項にも変更があるか」を確認しましょう。
代表者変更だけであれば、雇用保険事業主事業所各種変更届は原則不要です。
代表者変更と同時に別の変更がある場合
一方で、「社長交代」と同じタイミングで会社の商号を変更したり、本店・事業所を移転したりする企業もあります。
たとえば、代表取締役交代と同時に「株式会社A」から「株式会社B」へ商号変更した場合です。
この場合、代表者変更だけを理由とする届出は不要でも、会社名の変更については雇用保険の事業所情報を変更する必要があります。
同様に、代表者変更と同時に事業所が別住所へ移転したのであれば、所在地変更について手続きを確認します。
| 変更内容 | 雇用保険の考え方 |
|---|---|
| 法人の代表者だけ変更 | 原則として変更届は不要 |
| 代表者変更+会社名変更 | 会社名変更について届出を確認 |
| 代表者変更+事業所移転 | 事業所所在地変更について届出を確認 |
| 代表者変更+事業内容変更 | 変更後の事業内容について届出を確認 |
法人登記では代表取締役の変更登記が必要になることがありますが、法務局で必要な手続きとハローワークで必要な手続きは同じではありません。
「登記を変更したから雇用保険も変更する」と機械的に判断しないようにしましょう。
代表者個人の住所変更も混同しない
代表取締役の自宅住所が変わった場合も、法人の事業所所在地とは別に考えます。
たとえば会社の本店・事業所は盛岡市内の同じ場所にあるものの、代表取締役が個人的に引っ越したというだけであれば、「事業所が移転した」ことにはなりません。
企業実務では、登記事項証明書、税務関係、金融機関、各種許認可などで代表者情報を変更することがあるため、すべての変更手続きを一括して考えがちです。
しかし、雇用保険については雇用保険上の登録事項を基準に判断する必要があります。
実務では、「社長が変わった」という事実だけを見るのではなく、 雇用保険に登録されている事業所情報のどこが変わったのか を確認するのがポイントです。
変更が複数重なっている場合は、代表者変更を中心に考えるのではなく、「法人名」「事業所名」「所在地」「事業内容」「事業主」に分けて確認すると、届出の要否を判断しやすくなります。
個人事業主の代替わりは届出が必要
法人とは異なり、個人事業では事業主そのものが交代するときに注意が必要です。
たとえば、父親が長年経営していた店舗を子が引き継ぎ、従業員、店舗、設備、取引先、事業内容などをそのまま承継するようなケースです。
法人では代表取締役が交代しても法人格そのものは存続しますが、個人事業では事業主が父から子へ変われば、法律上の事業主となる個人そのものが変わります。
そのため、「法人の社長交代と同じ」と考えることはできません。
実質的に同じ事業が継続しているかを確認する
個人事業主が変更された場合、一定の条件を満たして新旧の事業に実質的な同一性が認められれば、雇用保険事業主事業所各種変更届による変更手続きとして処理できることがあります。
ここで重要なのが「実質的な同一性」です。
単に同じ場所で同じ屋号を使っているというだけではなく、従業員の雇用関係が継続しているか、事業内容が引き継がれているか、設備や資産が承継されているか、取引関係が継続しているかなど、実際の事業承継の状況を確認されることがあります。
一方で、単に「親から子へ引き継いだから変更届を出せば終わり」と考えるのは危険です。
新しい事業主が全く別の事業を始め、旧事業主との雇用関係も一度終了しているのであれば、旧事業所の廃止と新事業所の設置、従業員の資格喪失・資格取得などが必要になる可能性があります。
| ケース | 雇用保険上の考え方 |
|---|---|
| 事業内容や従業員を引き継ぐ | 同一性が認められれば変更届で扱われる可能性がある |
| 相続により事業を引き継ぐ | 変更届と確認資料が必要になることがある |
| 店舗・設備・取引先も継続する | 新旧事業の実態を確認して判断される |
| 従業員との雇用契約を一度終了する | 資格喪失・資格取得が必要になる可能性がある |
| 実態が大きく変わる | 旧事業所の廃止と新事業所の設置になる可能性がある |
従業員の雇用関係を先に整理する
個人事業主の代替わりで特に大切なのが、従業員の雇用契約をどう承継するかです。
たとえば父親が事業主だった店舗を子が引き継ぐ場合、「4月1日から事業主だけ子へ変更するが、従業員の雇用条件、勤続年数、勤務場所などはそのまま承継する」というケースがあります。
この場合、給与計算上は単に事業主名を変更すればよいように見えるかもしれません。
しかし雇用保険では、旧事業と新事業に同一性があるのかを確認したうえで、被保険者関係をどのように扱うか判断する必要があります。
逆に、旧事業主との雇用契約を終了させ、新事業主が改めて全員を新規採用するのであれば、その事実関係に沿った手続きが必要になります。
個人事業主の代替わりは、法人の代表者変更と同じ扱いではありません。
従業員をそのまま引き継ぐ場合には、変更届だけで処理できるのか、資格喪失・資格取得が必要になるのかによって従業員側の雇用保険記録にも影響します。
事業承継の予定が決まった段階で管轄ハローワークへ確認しておくことをおすすめします。
確認資料は事業承継の内容によって変わる
個人事業主の交代では、新旧事業主の関係や事業承継の経緯を確認するため、通常の社名変更より多くの確認資料を求められることがあります。
住民票、事業譲渡契約書、相続関係を確認する資料、店舗の賃貸借契約書、事業用資産の承継状況、被保険者の承継に関する資料などが考えられますが、必要書類は個別の事情や管轄ハローワークの確認内容によって異なります。
個人事業主の代替わりを予定している場合は、届書を書く前に次の点を整理しておくとスムーズです。
- 旧事業主と新事業主は誰か
- 事業を承継する日
- 店舗や事業所はそのままか
- 事業内容は変わるか
- 従業員の雇用契約を継続するか
- 設備や取引関係を引き継ぐか
個人事業の承継は、それぞれの事情によって実態がかなり異なります。
形式だけを見て届書を選ぶのではなく、実際に誰が誰の事業をどのように引き継ぐのかを整理してから手続きを進めることが重要です。
提出先は変更後を管轄するハローワーク
雇用保険事業主事業所各種変更届の提出先は、基本的に 事業所の所在地を管轄するハローワーク です。
単なる会社名変更など、所在地が変わらないケースであれば現在その事業所を管轄しているハローワークを確認すればよいのですが、所在地変更では少し注意が必要です。
特に重要なのが、事業所移転によって管轄ハローワークが変わる場合です。
移転時は変更後の所在地から管轄を確認する
たとえば、A市を管轄するハローワークから、B市を管轄する別のハローワークの区域へ事業所を移転した場合には、原則として変更後の所在地を管轄するハローワークで手続きを行います。
所在地変更では「旧所在地のハローワーク」ではなく「変更後の所在地を管轄するハローワーク」が基本 と覚えておくと整理しやすいです。
同じ市内で移転する場合でも、市区町村とハローワークの管轄区域が必ず一対一で対応しているとは限りません。
市町村合併などの事情もあるため、「同じ市だから同じハローワークだろう」と思い込まず、所在地から管轄を確認する方が確実です。
一元適用事業では労基署側の変更も確認する
ただし、会社移転の場合には、ハローワークだけを先に変更してしまえばよいとは限りません。
多くの一般企業に該当する一元適用事業では、労働保険の名称や所在地について、まず労働保険名称、所在地等変更届を提出し、その後に雇用保険事業主事業所各種変更届を進める流れになります。
特に所在地変更では、労働基準監督署とハローワークの双方が関係します。
そのため私は、会社から移転の相談を受けたときには、最初から「ハローワークへ何を出すか」だけを見るのではなく、労働保険と雇用保険を一連の手続きとして整理します。
| 確認先 | 主に確認する内容 |
|---|---|
| 労働基準監督署 | 労働保険の名称・所在地等変更 |
| ハローワーク | 雇用保険適用事業所の登録情報変更 |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金の適用事業所変更 |
| 法務局 | 法人の商号・本店所在地などの登記変更 |
都道府県をまたぐ移転でも慌てず整理する
本社や事業所が都道府県をまたいで移転する場合は、社内ではかなり大きな変更になります。
たとえば岩手県から宮城県へ事業所を移転する場合、ハローワークだけでなく、労働基準監督署、年金事務所、税務関係など複数の管轄が変わる可能性があります。
このとき重要なのは、「すべて旧管轄へ出す」「すべて新管轄へ出す」と一括して覚えないことです。
制度ごとに提出先のルールが異なるため、それぞれ確認します。
雇用保険事業主事業所各種変更届については、移転後の事業所所在地を管轄するハローワークを確認して手続きを進めます。
私は実務では、移転先が決まった時点で「旧住所」「新住所」「移転日」を一枚にまとめ、その横に法務局、労基署、ハローワーク、年金事務所、税務署などの手続きを並べて管理することをおすすめしています。
移転日は一つでも、それぞれ提出期限や提出先が違うためです。
会社移転の手続きでは、書類作成そのものよりも管轄確認に時間がかかることがあります。
移転後に初めて調べるのではなく、可能であれば移転前から新所在地の管轄行政機関を確認しておくとスムーズですよ。
提出期限は変更翌日から10日以内
雇用保険事業主事業所各種変更届の提出時期は、 変更があった日の翌日から起算して10日以内 とされています。
これは単なる社内管理上の目安ではなく、雇用保険の事業所に関する正式な届出期限です。
会社名変更や所在地変更を行った場合は、他の手続きに追われて後回しにしないようにしましょう。
厚生労働省の雇用保険手続一覧でも、事業主の名称や所在地等に変更があった場合の雇用保険事業主事業所各種変更届について、名称・所在地等の変更があった日の翌日から10日以内と案内されています。
変更を決めた日ではなく実際の変更日を確認する
たとえば、4月1日付で事業所を移転した場合には、4月2日から起算して期限を確認します。
ここで大切なのが、「変更を決めた日」と「変更が実際に生じた日」を混同しないことです。
会社では移転について取締役会などで早い段階から決定していたり、新事務所の賃貸借契約を数か月前に締結していたりすることがあります。
しかし、賃貸借契約を締結した日が、そのまま雇用保険上の事業所所在地変更日になるとは限りません。
たとえば次のような日付が存在することがあります。
- 新事務所の賃貸借契約を締結した日
- 会社内部で移転を決議した日
- 法務局へ本店移転登記を申請した日
- 新事務所へ備品を運び込んだ日
- 従業員が新事務所で勤務を開始した日
- 新事務所で実際に営業を開始した日
このように複数の日付がある場合には、今回変更する雇用保険上の事業所情報について、いつ事実が変わったのかを確認したうえで記載します。
社名変更でも登記資料と日付を合わせる
会社名を変更する場合も同じです。
社内では新ブランド名を先行して使用しているものの、法人の正式な商号変更日は別の日ということもあります。
行政手続きでは、広告やホームページで新名称を使い始めた日ではなく、正式な変更事実を基準として確認することが重要です。
登記事項証明書を添付する場合は、届書に記載した変更年月日と証明資料の内容が整合しているか確認しておきましょう。
10日を過ぎたからといって手続きを放置してよいわけではありません。
期限を過ぎていることに気づいた場合も、できるだけ早く管轄ハローワークへ確認し、必要な届出を進めてください。
届出が遅れると後続手続きで気づくことがある
変更手続きを後回しにすると、通常の雇用保険事務を行ったときに登録情報との不一致が生じることがあります。
たとえば退職者が発生して離職証明書を提出しようとしたところ、会社が現在使用している住所とハローワーク上の事業所住所が違っていたというケースです。
ほかにも、資格取得届、資格喪失届、転勤届、各種証明書、助成金関係の手続きなどを進める段階で、旧名称や旧所在地が登録されたままになっていることに気づくことがあります。
手続きが遅れたからといって、過去の雇用保険加入記録が直ちに消えるという話ではありませんが、行政に登録されている情報と会社の実態が食い違った状態を長期間放置することは避けた方がよいでしょう。
会社名変更や移転が決まったら、変更日を基準として手続き一覧を作っておくと管理しやすくなります。
- 法人登記の変更
- 労働保険の変更
- 雇用保険の変更
- 社会保険の変更
- 税務関係の変更
- 銀行・許認可・取引先などへの変更連絡
特に中小企業では、一人の担当者がこれらをまとめて処理することも多いですよね。
だからこそ、記憶だけで進めず、変更日と期限を一覧化して管理することをおすすめします。
雇用保険事業主事業所各種変更届の手続き
ここからは、実際に届出をするときの準備と書き方を確認します。
雇用保険事業主事業所各種変更届は、届書だけを作れば終わりというものではありません。
変更した事実を確認する資料や、労働保険側で先に済ませる手続きが必要になることがあります。
書類を作り始める前に、変更内容、変更日、変更前後の正式情報、事業所番号、労働保険番号を整理しておくとスムーズです。
特に移転では「番号が似ている」「名称が似ている」「提出先も複数ある」という状態になりやすいため、様式へ直接入力する前の準備が重要になります。
添付書類と事前に確認したい資料
雇用保険事業主事業所各種変更届を提出するときは、変更した事実を確認できる資料を求められることがあります。
何を添付すればよいのかは検索されることが多いポイントですが、実務上は「この書類を一つ添付すれば全国どこでも必ず受付される」というものではありません。
法人の商号変更、事業所移転、事業内容変更、個人事業主の承継では、行政側が確認したい事実がそれぞれ異なるからです。
法人の名称・所在地変更では登記関係資料を確認する
法人の商号や本店所在地を変更した場合には、登記事項証明書などによって変更の事実を確認できることがあります。
ただし、登記上の本店所在地と雇用保険上の事業所所在地が異なる場合には、登記事項証明書だけでは実際の事業所移転を確認できないこともあります。
そのような場合は、賃貸借契約書、不動産関係資料、公共料金関係資料、事業許可証、他の行政機関へ提出した届書の控えなど、変更後の事業所がどこにあり、そこで実際に事業を行っているのかを確認できる資料が必要になることがあります。
| 変更内容 | 確認資料の例 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| 法人の名称変更 | 登記事項証明書など | 正式な変更後名称と変更日 |
| 法人の所在地変更 | 登記事項証明書、賃貸借契約書など | 本店と実際の事業所の関係 |
| 事業所所在地の変更 | 賃貸借契約書、公共料金関係資料など | 新所在地で事業を行っている事実 |
| 事業内容の変更 | 事業許可証、契約書など | 変更後の具体的な事業内容 |
| 個人事業主の変更 | 住民票、事業承継関係資料、新旧事業の実態確認資料など | 新旧事業の同一性や承継状況 |
労働保険側の控えも準備しておく
一元適用事業の場合には、先に労働基準監督署で労働保険名称、所在地等変更届の手続きを行い、その後にハローワークで雇用保険側の変更手続きを進める流れになります。
ハローワークでは、他の行政機関へ提出した届書の控えなど、変更事実を確認できる資料を求められる場合があります。
したがって、労働基準監督署へ書類を提出した後は、事業主控えや受付状況を確認できる資料を捨てずに保管しておきましょう。
現在登録されている情報も確認する
変更後の情報だけ確認して届書を作ると、「変更前の登録内容がそもそも何だったのか」で迷うことがあります。
たとえば、社内では以前から「株式会社みどり」と呼んでいたものの、雇用保険上は「株式会社みどり盛岡営業所」と登録されていたということも考えられます。
そのため、雇用保険適用事業所設置届の事業主控え、過去の雇用保険手続きの控え、電子申請の返戻公文書などから、現在登録されている情報を確認しておくと安心です。
提出前に最低限確認しておきたいのは、 雇用保険適用事業所番号、労働保険番号、変更年月日、変更前後の正式名称・所在地 です。
添付資料は多ければよいわけではない
実務では、「不足すると困るから」と関係しそうな資料を大量に添付したくなることもあります。
しかし、重要なのは量ではなく、今回の変更事実を確認できる資料かどうかです。
たとえば会社名変更なら正式な名称と変更日、事業所移転なら新所在地と実際の事業実態、個人事業主の承継なら事業の承継関係を確認できることが重要になります。
添付書類は変更内容や管轄ハローワークの確認方法によって異なる場合があります。
提出前に所轄ハローワークへ必要書類を確認しておくと、追加提出や再申請を減らしやすくなります。
特に個人事業主の交代、事業譲渡、合併、会社分割などは定型的な所在地変更とは違います。
一般的な添付書類一覧だけを見て判断せず、具体的な事情を説明したうえで確認することをおすすめします。
労働保険の変更届との提出順

会社の名称や所在地を変更するときに特に混同しやすいのが、労働保険名称、所在地等変更届との関係です。
名前が似ていますが、雇用保険事業主事業所各種変更届とは別の書類です。
会社移転の相談を受けていると、「ハローワークに出す変更届が一枚あれば、労災保険も雇用保険も全部変更できると思っていました」というケースがあります。
実際には、労働保険側と雇用保険の適用事業所側で確認する手続きが分かれています。
一元適用事業では労働保険側から確認する
多くの一般企業に該当する 一元適用事業 では、基本的に次の順番で進めます。
- 移転後の所在地を管轄する労働基準監督署へ労働保険名称、所在地等変更届を提出する
- 労働保険側の変更内容を確認する
- 移転後の所在地を管轄するハローワークへ雇用保険事業主事業所各種変更届を提出する
先に労働保険側を確認する理由の一つは、雇用保険も労働保険制度の一部として労働保険番号と関係しているためです。
特に所在地変更では、労働保険番号の情報を含めて整合性を取ったうえで、雇用保険の適用事業所情報を変更する必要があります。
したがって、いきなりハローワーク用の書類だけを作成するより、労働保険側の変更内容とセットで確認した方が実務上は分かりやすいです。
二元適用事業では労災保険と雇用保険を分ける
一方、建設業や農林水産業などに見られる二元適用事業では、労災保険と雇用保険について労働保険の保険関係を別々に扱います。
このため、労災保険分と雇用保険分について、それぞれの手続きを確認する必要があります。
一般的には、労災保険側の労働保険名称、所在地等変更届は労働基準監督署、雇用保険側についてはハローワークで確認することになります。
二元適用事業については、同じ会社の中でも複数の労働保険番号を管理しているケースがありますので、「会社に一つだけある番号を書けばよい」と考えないよう注意してください。
| 区分 | 労働保険側 | 雇用保険側 |
|---|---|---|
| 一元適用事業 | 主に労働基準監督署で変更手続き | ハローワークで各種変更届 |
| 二元適用事業 | 労災保険分と雇用保険分を分けて確認 | 雇用保険分はハローワークで確認 |
会社移転では変更手続きを一つの工程として管理する
実務では、「労基署への届出が終わったので手続き完了」と思い込み、ハローワークへの変更届を忘れることがあります。
逆に、雇用保険の変更を先に進めようとして、労働保険側の変更がまだ済んでいないことに気づくこともあります。
そのため私は、会社移転については「労働保険の変更」と「雇用保険の変更」を別々の仕事として考えるより、一つの工程表の中で順番に処理することをおすすめしています。
会社移転時は「労基署の変更届」と「ハローワークの変更届」を同じ書類だと思わないことがポイントです。
名称が似ていても、提出先も役割も異なります。
労働保険側の書き方については、 労働保険名称所在地等変更届の記入例と書き方 で詳しく解説しています。
会社名変更や事業所移転を行う場合は、まず自社が一元適用事業なのか二元適用事業なのか、どの労働保険番号が対象なのかを確認してください。
ここを整理してから各届書を作成すると、提出先や記入する番号を間違えにくくなります。
各項目の書き方と記入ポイント
雇用保険事業主事業所各種変更届を書くときは、まず現在の雇用保険適用事業所情報を確認してから記入します。
様式を見ると入力項目が多く感じるかもしれませんが、基本的な考え方は「どの事業所について」「いつ」「何が」「どのように変わったのか」を行政側が確認できるようにすることです。
現在の様式では、変更年月日、事業所番号、設置年月日、法人番号、事業所名称、所在地、電話番号、事業内容、労働保険番号などの情報を確認しながら作成します。
事業所番号を正確に確認する
雇用保険適用事業所番号は、一般に 4桁-6桁-1桁 で構成される番号です。
この番号は、雇用保険の適用事業所を特定するための重要な番号です。
会社ではほかにも法人番号、労働保険番号、事業所整理記号、適用事業所番号など多くの番号を使用しているため、番号の取り違えには注意してください。
求人番号や労働保険番号とは別の番号ですので、雇用保険適用事業所設置届の事業主控え、過去の雇用保険届出、電子申請の返戻公文書などで確認してから記入します。
実務では数字の入力ミスが意外と起こります。
特に途中に0が含まれる場合でも省略せず、登録されている番号をそのまま確認してください。
「たぶんこの番号だろう」と給与ソフトや社内一覧表だけを見て入力するのではなく、可能であればハローワーク関係の正式な控えで確認しましょう。
変更年月日は実際の変更日を書く
変更年月日には、名称や所在地などが実際に変更された日を記載します。
所在地変更であれば新事業所で事業を開始した日、名称変更であれば正式に名称変更が生じた日など、今回の変更内容に応じて事実関係を確認します。
登記を伴う変更であれば、登記事項証明書などの資料と日付が食い違っていないか確認しておくとよいでしょう。
移転では、賃貸借契約日、鍵の引渡日、引っ越し日、登記変更日、従業員の勤務開始日などが異なるケースがあります。
複数の日付がある場合には、どの時点で雇用保険上の事業所所在地が実際に変更されたのかを整理してください。
名称や所在地は正式表記で記入する
社内で普段使用している略称ではなく、変更後の正式な名称や所在地を記載します。
たとえば正式名称が「株式会社みどり総合企画」であるのに、日常的に使用している「みどり企画」だけを記載すると、登記事項証明書などの確認資料と整合しません。
所在地についても、「盛岡市○○1-2-3」のような社内向けの省略表記と、正式な所在地表記が異なることがあります。
行政上の登録情報となるため、確認資料を見ながら正確に入力しましょう。
変更前と変更後を並べて整理する
雇用保険事業主事業所各種変更届では、変更前と変更後の情報を整理して記載します。
いきなり申請画面や用紙へ入力するより、次のような一覧を作ってから転記すると間違いを減らせます。
| 確認項目 | 確認する内容 | 主な確認資料 |
|---|---|---|
| 事業所番号 | 現在登録されている雇用保険適用事業所番号 | 設置届控え、返戻公文書など |
| 設置年月日 | 雇用保険の適用事業所として設置された年月日 | 設置届控えなど |
| 変更年月日 | 今回の変更が実際に発生した日 | 登記、契約書、社内資料など |
| 変更前情報 | 変更前の正式名称や所在地 | 現在の登録資料 |
| 変更後情報 | 変更後の正式名称や所在地 | 登記、契約書など |
| 労働保険番号 | 今回の変更対象となる番号 | 労働保険関係資料 |
事業内容は具体的に整理する
事業の種類や概要を変更した場合には、変更後の事業内容についても確認します。
「サービス業」「小売業」「コンサルティング業」など、非常に大きなくくりだけでは実際の事業内容が分かりにくいことがあります。
たとえば、「飲食店の運営」「建設工事の施工」「人事労務コンサルティング」「食品小売店舗の運営」のように、実際に何をしている事業所なのか説明できるよう整理しておくとよいでしょう。
事業内容は労働保険側の事業種類とも関係するため、大幅に事業内容が変わった場合には雇用保険の届書だけでなく、労働保険側の変更もあわせて確認します。
裏面や記載要領も確認する
所在地変更では、様式の表面だけを見て作業を終わらせず、裏面や記載要領も確認してください。
様式によっては事業所への道順など、所在地変更時に追加で確認する項目があります。
実務での記入順は、次のようにすると分かりやすいです。
- 現在の事業所番号を確認する
- 変更年月日を確定する
- 変更前情報を確認する
- 変更後情報を証明資料と照合する
- 労働保険番号を確認する
- 変更した項目だけでなく必須記入欄も確認する
- 裏面・記載要領を確認する
様式や記載方法は改定される可能性があります。
古い記入例をそのまま使用せず、提出時点の最新様式と記載要領を確認してください。
記入例は非常に役立ちますが、記入例の会社名や住所を自社へ置き換えるだけでは不十分です。
「なぜその欄にその内容を書くのか」を理解して作成した方が、複数項目を同時に変更するときにも対応しやすくなります。
e-Govによる電子申請の方法
雇用保険事業主事業所各種変更届は、窓口への持参だけでなく、e-Govを利用した電子申請も可能です。
日常的に雇用保険手続きを電子申請している会社であれば、会社名変更や事業所移転のためだけにハローワーク窓口へ行かず、オンライン上で手続きを進めることができます。
e-Govでは「雇用保険の事業所の各種変更届出(令和4年6月以降手続き)」として電子申請手続きが公開されています。
(出典:e-Gov電子申請「雇用保険の事業所の各種変更届出」)
電子申請の基本的な流れ
電子申請では、おおむね次のような流れで進めます。
- e-Govで対象手続きを選択する
- 対象となる事業所情報を入力する
- 変更年月日と変更内容を入力する
- 必要な確認資料を電子ファイルで添付する
- 申請内容を確認して送信する
- 処理状況や返戻公文書を確認する
最初に確認したいのは、申請対象となる事業所番号です。
複数事業所を持つ会社では、本社と営業所で雇用保険適用事業所番号が異なることがあります。
変更する事業所を間違えると、訂正や再申請が必要になる可能性がありますので、送信前に必ず対象事業所を確認してください。
添付書類は電子ファイルで準備する
登記事項証明書、賃貸借契約書、事業許可証、他の行政機関へ提出した変更届の控えなど、変更内容を確認する資料については、必要に応じて電子ファイルとして添付します。
紙でしか保管していない資料を添付する場合は、スキャンしてPDF化するなど、内容を確認できる状態にしておきましょう。
写真で撮影した資料を添付する場合も、文字がぼやけていたりページの一部が切れていたりすると確認しにくくなります。
スマートフォンで撮影する場合でも、四隅まで写っているか、文字が読めるかを確認してください。
なお、e-Govでは、添付書類を電子ファイルで準備できない場合には別途郵送による提出が必要となる場合も案内されています。
送信したら終わりではなく処理状況を確認する
電子申請で意外と忘れやすいのが、送信後の確認です。
申請ボタンを押した時点で、すべての行政処理が完了しているわけではありません。
送信後は審査状況を確認し、行政側から補正や確認の連絡が来ていないか、返戻公文書が発行されていないかを確認します。
雇用保険事業主事業所各種変更届では、処理後に事業主控えなどの返戻公文書が交付されることがありますので、電子申請した場合も社内の手続き控えとして適切に保存しておきましょう。
電子申請は便利ですが、「電子だから添付資料や事実確認が簡略化される」という意味ではありません。
特に個人事業主の承継、事業譲渡、合併など、事業の同一性を判断する必要があるケースは、申請前にハローワークへ必要書類や手続方法を確認しておく方がスムーズです。
日常的な雇用保険手続きとまとめて電子化する
会社で資格取得届、資格喪失届、離職証明書などを頻繁に提出しているのであれば、事業所変更届だけでなく、雇用保険手続き全体を電子申請へ移行する方法もあります。
窓口へ行く時間を減らせるほか、過去の申請履歴や返戻公文書を電子データとして管理しやすくなる点もメリットです。
一方で、電子申請では「誰が申請したのか」「返戻公文書を誰が保存するのか」「補正通知を誰が確認するのか」という社内ルールも必要になります。
担当者一人だけがe-Govを確認している会社では、その人が休んだときに行政からの連絡を見落とすことがあります。
電子化するときは、申請操作だけでなく申請後の管理方法まで決めておくと安心です。
窓口申請と電子申請のどちらが正解というわけではありません。
自社の申請頻度、担当者数、添付資料の状況を踏まえて、管理しやすい方法を選びましょう。
社会保険の名称所在地変更は別手続き

会社名や所在地を変更した場合、「雇用保険の変更届を出したから社会保険も変更される」と考えないように注意してください。
健康保険・厚生年金保険と雇用保険は別の制度です。
そのため、雇用保険事業主事業所各種変更届をハローワークへ提出しても、それだけで日本年金機構に登録されている適用事業所名称や所在地まで自動的に変更されるわけではありません。
健康保険・厚生年金には別の変更届がある
健康保険・厚生年金保険に加入している適用事業所では、名称や所在地を変更した場合、社会保険側についても適用事業所名称/所在地変更(訂正)届などの手続きを確認します。
社会保険では、同じ年金事務所の管轄内で所在地を変更する場合と、別の年金事務所の管轄へ移転する場合とで届書の区分や確認事項が異なります。
さらに、雇用保険と社会保険では提出期限も同じではありません。
雇用保険事業主事業所各種変更届は変更日の翌日から起算して10日以内ですが、健康保険・厚生年金保険の適用事業所名称・所在地変更については、原則として事実発生から5日以内の届出を確認する必要があります。
「会社移転の届出は全部10日以内」と覚えないようにしてください。
同じ会社名変更・所在地変更でも、制度ごとに期限、提出先、様式が異なります。
会社移転時に確認したい主な窓口
つまり、会社の名称変更や事業所移転では、複数の行政手続きを並行して確認する必要があります。
| 手続き | 主な提出先 | 代表的な届書・手続き | 実務上の確認点 |
|---|---|---|---|
| 法人登記 | 法務局 | 商号・本店所在地等の変更登記 | 登記上の変更日・正式名称 |
| 労働保険 | 労働基準監督署等 | 労働保険名称、所在地等変更届 | 一元・二元適用の区分 |
| 雇用保険 | ハローワーク | 雇用保険事業主事業所各種変更届 | 変更後所在地の管轄 |
| 健康保険・厚生年金 | 日本年金機構 | 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 | 管轄内・管轄外の区分 |
| 税務関係 | 税務署等 | 異動関係の届出等 | 国税・地方税の双方を確認 |
雇用保険と社会保険の事業所単位が違う場合もある
会社によっては、雇用保険と社会保険で適用事業所の単位が完全には一致していないことがあります。
たとえば複数の営業所がある会社で、雇用保険では営業所ごとに適用事業所となっている一方、社会保険では本社で一括して適用関係を管理しているケースなどです。
このような会社では、一つの営業所を移転したからといって、雇用保険と社会保険の双方でまったく同じ届出が必要になるとは限りません。
逆に、本社移転によって会社全体の社会保険適用事業所所在地が変更される一方、一部の雇用保険適用事業所には変更がないこともあります。
会社移転時には、それぞれの制度について次の3点を確認すると整理しやすくなります。
- 現在どの事業所が適用事業所として登録されているか
- 今回その登録情報のどこが変わるか
- どの行政機関へ何日以内に提出するか
行政手続き以外の変更も忘れない
会社移転では、行政機関への届出以外にも多くの変更が発生します。
銀行口座、法人クレジットカード、各種許認可、商工会議所、取引先、請求書、給与明細、労働条件通知書の会社住所、就業規則に記載している事業所情報、会社ホームページ、名刺などです。
社名変更の場合も同様で、給与システムや勤怠システムの事業所名称が古いまま残っているケースがあります。
会社の移転では、私は実務上「法務局」「労基署」「ハローワーク」「年金事務所」「税務関係」の順に必要な変更手続きがないか一覧で確認し、その後に銀行・許認可・取引先・社内システムなどの民間手続きを追加する方法をおすすめしています。
ひとつずつ思い出しながら処理するより、漏れを防ぎやすくなります。
社会保険の様式や最新の提出先・添付書類については、日本年金機構の公式情報で必ず確認してください。
制度改正や電子申請対応によって運用が変わる可能性もあります。
雇用保険事業主事業所各種変更届のまとめ
雇用保険事業主事業所各種変更届は、会社や事業所の名称、所在地、事業内容、個人事業主など、雇用保険の適用事業所として登録されている情報に変更があった場合に使用する届書です。
届書自体は一枚の様式ですが、実務では「何を変更したのか」「誰が事業主なのか」「どこへ提出するのか」「労働保険や社会保険でも別の変更が必要なのか」を整理することの方が重要です。
まず届出が必要な変更かを確認する
最初に押さえておきたいのは、 法人の代表者変更だけであれば原則として雇用保険の変更手続きは不要 という点です。
法人の代表取締役が変わっても、同じ法人が事業を継続し、事業所名称や所在地などの登録事項が変わらないのであれば、代表者変更だけを理由とする雇用保険事業主事業所各種変更届は原則として必要ありません。
一方で、代表者変更と同時に社名変更や所在地変更を行ったのであれば、その変更事項について届出を確認します。
また、個人事業主の交代は法人の代表者変更とは扱いが異なります。
親から子への事業承継、相続、個人間の事業譲渡などでは、新旧事業に実質的な同一性が認められるかによって、変更届で処理できるのか、旧事業所の廃止と新事業所の設置、被保険者の資格喪失・資格取得などが必要になるのかが変わる可能性があります。
会社移転では手続きの順番を整理する
通常の会社移転や名称変更では、次の流れで整理すると分かりやすいです。
- 何がいつ変更されたのかを整理する
- 雇用保険適用事業所番号と労働保険番号を確認する
- 一元適用事業では労働保険側の変更手続きを先に確認する
- 変更後の所在地を管轄するハローワークを確認する
- 変更の事実を証明できる資料を準備する
- 変更があった日の翌日から起算して10日以内に提出する
- 社会保険など他制度の変更手続きも確認する
特に所在地変更では、労働基準監督署、ハローワーク、年金事務所など複数の窓口が関係します。
それぞれ別の制度ですので、ひとつの届出を行えばすべて自動的に変更されるわけではありません。
書類を書く前の事実整理が重要
雇用保険事業主事業所各種変更届を書く前には、少なくとも次の情報を手元にそろえておきましょう。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 変更内容 | 名称・所在地・事業内容・個人事業主など何が変わったか |
| 変更日 | 変更の事実が実際に発生した日 |
| 事業所番号 | 雇用保険適用事業所番号 |
| 労働保険番号 | 今回の事業所に対応する番号 |
| 変更前情報 | 現在ハローワークへ登録されている名称・所在地等 |
| 変更後情報 | 登記や契約書等と一致する正式情報 |
| 添付資料 | 変更事実を確認できる資料 |
| 関連手続き | 労働保険・社会保険・登記・税務等 |
この一覧を先に作れば、届書の各欄を見たときに「この番号は何だったか」「旧住所はどこだったか」と探し直す時間を減らせます。
期限を過ぎても放置しない
提出期限は変更日の翌日から起算して10日以内です。
会社移転では他の手続きも多いため、気づいたら期限を過ぎてしまっていたということもあるかもしれません。
その場合でも、「もう期限を過ぎたから提出しなくてよい」ということにはなりません。
登録情報が古いままでは、その後の雇用保険手続きで不一致が生じる可能性がありますので、速やかに管轄ハローワークへ相談してください。
個別性が高い変更は事前確認する
必要な添付資料や個別ケースの取扱いは、変更内容や事業所の状況によって異なる場合があります。
単純な会社名変更や同一事業所の移転であれば比較的整理しやすいのですが、個人事業主の承継、事業譲渡、合併、会社分割、法人成り、個人事業化、複数事業所の統廃合などでは、事業所の変更だけでなく従業員の資格関係にも影響することがあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。
特に個人事業主の承継、事業譲渡、合併、会社分割、事業所統廃合など、事業主体や雇用関係そのものに影響する変更については、単純な名称・所在地変更とは取扱いが異なる可能性があります。
最終的な判断は専門家にご相談ください。
雇用保険事業主事業所各種変更届は、書類そのものはそれほど難しく見えなくても、実務では「そもそも変更届でよいのか」「変更日はいつなのか」「どの役所から先に手続きするのか」という判断が重要です。
私はこのような変更手続きを確認するとき、いきなり様式を開いて入力するのではなく、最初に変更前後の会社情報を一枚に整理します。
そこへ雇用保険適用事業所番号、労働保険番号、変更日、管轄行政機関を加えてから届書を作ると、かなり分かりやすくなります。
会社名変更や移転は、頻繁に行う手続きではないからこそ担当者が迷いやすいものです。
変更内容を整理し、関連する労働保険や社会保険の手続きも含めて、一つずつ漏れなく進めていきましょう。