有給休暇

有給休暇の出勤率8割の計算方法|全労働日と欠勤を実務で確認

こんにちは。

もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。

有給休暇を付与するときは、原則として対象期間の全労働日に対して8割以上出勤しているかを確認します。

計算式自体はシンプルですが、実務では産休・育休、労災、私傷病による欠勤や休職、会社都合の休業などを分母と分子のどちらに入れるのかで迷いやすいところです。

特に注意したいのは、「会社に来ていない日=すべて欠勤」と考えてはいけないことです。

実際には、出勤率の計算対象から外す日もあれば、実際には働いていなくても法律上は出勤したものとして扱う日もあります。

この記事では、有給休暇の出勤率8割の計算方法を基本から整理し、全労働日の考え方、計算から除外する日、出勤したものとみなす日、欠勤や遅刻・早退の扱いまで順番に解説します。

さらに、出勤率が8割未満だった場合に有給休暇をどう扱うのか、パート・アルバイトや週所定労働日数が途中で変わった場合にどう考えるのかについても、企業の実務担当者が判断しやすいように整理していきます。

  • 有給休暇の出勤率8割を計算する基本式
  • 全労働日から除外する日と出勤扱いする日の違い
  • 欠勤・遅刻・早退・休職が出勤率に与える影響
  • 8割未満やパート勤務の場合の有給付与の考え方

有給休暇の出勤率8割の計算方法|全労働日と欠勤の扱い

有給休暇の出勤率8割、その計算方法

有給休暇の出勤率を確認するときは、まず計算式を押さえたうえで、分母となる全労働日と分子となる出勤日数を正しく整理することが重要です。

勤怠システムが自動計算している会社でも、休業や休職が発生したときには設定が適切か確認しておきましょう。

通常勤務の従業員では問題が表面化しなくても、長期欠勤者や育児休業者が出たときに初めて設定ミスが分かることがあります。

出勤率は出勤日数÷全労働日で計算

年次有給休暇は、原則として雇入れの日から6か月間継続勤務し、その期間の 全労働日の8割以上出勤した労働者 に対して付与します。

初回は10日で、その後も原則として1年ごとに出勤率を確認し、勤続年数に応じた日数を付与していきます。

基本となる計算式は、次のとおりです。

出勤率 = 出勤日数 ÷ 全労働日数

たとえば、対象となる1年間の全労働日が250日で、そのうち出勤日として数える日が210日だった場合は、210日÷250日=0.84となります。

出勤率は84%ですので、8割以上という要件を満たします。

一方、全労働日250日に対して出勤日が199日なら、199日÷250日=79.6%です。

この場合は8割未満となるため、その計算期間に対応する新たな有給休暇は原則として付与されません。

8割ちょうどであれば要件を満たします。

「8割を超えていなければならない」という意味ではありません。

たとえば全労働日250日で出勤日数が200日なら、200÷250=0.8ですので、ちょうど80%となり要件を満たします。

最初に計算期間を確定する

実務では、計算式に数字を入れる前に、そもそも「どの期間の勤怠を見るのか」を確定することが重要です。

初回付与の場合は原則として雇入れの日から6か月間、その後は原則として直前1年間について出勤率を確認します。

たとえば4月1日入社の従業員であれば、一般的には10月1日が最初の基準日になります。

その後は翌年10月1日、その翌年10月1日というように基準日が到来します。

会社が全従業員の有給休暇の基準日を統一している場合には取扱いが異なることもありますので、自社の付与方法を確認してください。

中小企業の労務管理では、有給休暇の残日数は管理していても、「今回の付与判定は何月何日から何月何日までの勤怠を見たのか」が記録されていないケースがあります。

私は実務では、出勤率を手計算するときに、まず 基準日、判定期間、全労働日、除外日、みなし出勤日、通常欠勤日 を分けて確認します。

いきなり出勤日数だけを数えるより、この順番で整理した方が間違いがかなり減ります。

確認項目 確認する内容
基準日 今回、有給休暇を新たに付与する日
計算期間 初回は原則6か月、その後は原則1年間
全労働日 労働義務が設定されていた日
除外日 出勤率の分母から除くべき日
みなし出勤日 実際には勤務していなくても出勤扱いする日
通常欠勤日 全労働日には含めるが出勤日数には含めない日

年次有給休暇の基本的な発生要件は労働基準法第39条に定められています。

企業側で独自の有給制度を設けることはできますが、法定基準を下回る取扱いはできません。

根拠となる条文については、 e-Gov法令検索「労働基準法」 で確認できます。

計算結果だけを見るのではなく、どの日をどの区分に入れたのかまで残しておけば、従業員から「なぜ今年は有給が付かなかったのですか」と問い合わせを受けたときにも説明しやすくなります。

全労働日に含める日と含めない日

全労働日に含める日と含めない日

出勤率を正しく計算するうえで最も重要なのが、分母となる 全労働日 です。

全労働日とは、基本的には対象となる6か月または1年間の暦日から、就業規則や労働契約などで定められた所定休日を除いた、労働義務のある日をいいます。

つまり、1年間が365日だからといって365日を分母にするわけではありません。

会社があらかじめ休日としている日は、そもそも従業員に労働義務がありませんので、通常は全労働日に含まれません。

たとえば、土日を所定休日としている完全週休2日制の会社であれば、原則として土日は全労働日に入りません。

祝日を会社の休日としている場合の祝日や、就業規則で休日として定めている年末年始休暇、夏季休暇などについても同様です。

日の種類 全労働日に含めるか 実務上の考え方
通常の所定労働日 含める 基本となる全労働日
週休2日制の所定休日 含めない そもそも労働義務がない
会社が休日と定める祝日 含めない 会社カレンダーを確認
会社が休日と定める年末年始休暇 含めない 就業規則や年間休日表を確認
会社が休日と定める夏季休暇 含めない 休日として設定されている場合
通常の所定労働日に欠勤した日 含める 欠勤したから分母から外れるわけではない

欠勤した日も全労働日である

ここは非常に重要です。

従業員が欠勤したからといって、その日を全労働日から外してはいけません。

たとえば月曜日から金曜日までが所定労働日の会社で、従業員が水曜日に私傷病で欠勤した場合、水曜日は本来働く義務があった日です。

したがって全労働日の分母には含めます。

ただし、通常の私傷病欠勤であれば出勤日数の分子には含めないため、結果として出勤率が下がります。

「休んだ日だから全労働日ではない」と考えてしまうと、欠勤日を分母から外すことになり、欠勤が出勤率に反映されなくなってしまいます。

これは8割要件の考え方そのものと合わなくなります。

休日労働をしても全労働日は増えない

ここで注意したいのが、 実際に働いた日数と全労働日は同じ概念ではない ということです。

たとえば、所定休日の日曜日に休日労働をしたとしても、もともとその日は労働義務のない日です。

そのため、その日を全労働日に1日追加し、出勤日にも1日追加するという計算はしません。

もし休日労働をするたびに分母と分子を増やしてしまうと、休日出勤の多い従業員ほど本来の所定労働日に欠勤していても出勤率が高くなるという不自然な結果になってしまいます。

出勤率を見るときは、「実際に会社に来た日を全部数える」のではなく、まず労働義務が設定されていた日を確定し、その中で出勤した日を数えると考えると整理しやすくなります。

特にシフト制では、正社員用の年間カレンダーをそのままパートやアルバイトに当てはめると計算を誤りやすくなります。

勤務カレンダーが従業員ごとに異なる会社では、全員について一律の日数を分母にするのではなく、各従業員の労働契約や勤務シフトに基づいて確認する必要があります。

全労働日から除外する日の扱い

所定労働日であっても、出勤率を計算するときに全労働日から除外して考える日があります。

こうした日は、 分母にも分子にも入れない のがポイントです。

代表的なものとして、使用者側に起因する経営・管理上の障害による休業日、労使いずれの責任にも帰すことのできない不可抗力による休業日、正当なストライキなどによって労務の提供がまったく行われなかった日などがあります。

また、もともと所定休日である日に休日労働をした場合も、全労働日に追加することはありません。

全労働日から除外する日は、出勤率を下げる「欠勤日」として扱わないことが重要です。

分母から除外する意味

たとえば、本来の全労働日が250日で、そのうち10日が出勤率の計算上、全労働日から除外すべき休業日だった場合、分母は250日ではなく240日として計算します。

仮にそのほかの240日のうち220日が出勤日だったのであれば、出勤率は220日÷240日で約91.7%となります。

除外すべき10日を欠勤として扱い、220日÷250日で計算するのは適切ではありません。

この違いは、8割を大きく超えている従業員であれば結果に影響しないこともあります。

しかし、出勤率が80%前後の従業員では、わずかな日数の区分ミスによって「付与」か「不付与」かが変わる可能性があります。

欠勤・休職・休業を名称だけで判断しない

勤怠システムでは、「休業」「欠勤」「休職」といった区分が用意されていることがあります。

しかし、システム上の名称と労働基準法上の出勤率計算の取扱いが自動的に一致するとは限りません。

たとえば「会社都合休業」と「私傷病欠勤」は、どちらも実際には勤務していない日ですが、出勤率の計算では同じ処理にはなりません。

会社都合による一定の休業日は全労働日から除外するのに対し、通常の私傷病欠勤は原則として全労働日に含めたまま出勤日数には入れません。

分母 分子
通常の私傷病欠勤 含める 含めない
一定の会社都合休業 除外 除外
不可抗力による一定の休業 除外 除外
正当なストライキ等 除外 除外
所定休日の休日労働 追加しない 追加しない

使用者側の事情による不就労であっても、裁判などによって解雇が無効とされ、正当な理由なく就労を拒まれていたと評価される期間など、事情によっては単なる「分母から除外」とは異なる扱いになる場合があります。

特殊なケースを「会社の責任だから全部同じ」と一律に処理するのは避けてください。

厚生労働省も、年次有給休暇の出勤率について、全労働日から除外する日と出勤日として扱う日を分けて整理しています。

具体的な行政上の取扱いは、 厚生労働省「確かめよう労働条件 年次有給休暇Q&A」 で確認できます。

実務では、この「分母から外す日」と、次に説明する「分母には残したまま分子を出勤扱いにする日」を混同しないことが重要です。

この2つを区別できれば、出勤率計算のかなりの部分は整理できます。

産休・育休・労災は出勤扱い

産休・育休・労災は出勤扱い

実際には会社へ出勤していない日でも、法律上、年次有給休暇の出勤率を計算するときに 出勤したものとみなす期間 があります。

代表的なのは、業務上の負傷・疾病による療養のための休業、産前産後休業、育児休業、介護休業です。

これらについては、実際に勤務していなくても、有給休暇の8割要件を判定するときには出勤したものとして扱います。

また、年次有給休暇を取得した日についても、年休を取得したことによって次回の年休付与に不利になることはなく、出勤日として扱って計算します。

休業・休暇 全労働日 出勤率の基本的な扱い
業務上の負傷・疾病による療養休業 含める 出勤したものとみなす
産前産後休業 含める 出勤したものとみなす
育児休業 含める 出勤したものとみなす
介護休業 含める 出勤したものとみなす
年次有給休暇取得日 含める 出勤日として扱う

育児休業を欠勤扱いにしない

たとえば、育児休業によって1年間ほとんど会社に出勤していなかったとしても、「実際に勤務した日がほとんどないから出勤率が8割未満」と計算するわけではありません。

育児休業をした期間については、出勤率の計算上、出勤したものとみなして扱います。

そのため、育児休業を取得したこと自体を理由として次回の年次有給休暇を不付与とするような計算にはなりません。

これは産前産後休業や介護休業についても同じ考え方です。

実務では、育児休業から復帰する従業員について有給休暇の残日数を確認した際に、「1年間休んでいたので今年は有給が付きませんよね」と質問されることがあります。

しかし、育児休業と私傷病休職は出勤率の扱いが異なります。

私傷病による休職と、産休・育休・労災による休業は同じ扱いではありません。

「会社に出勤していない」という外形だけで判断しないことが大切です。

年次有給休暇を取得した日も出勤扱い

有給休暇を取った日についても、次回付与の出勤率計算では出勤日として扱います。

仮に年休取得日を欠勤と同じように分子から外してしまえば、有給休暇を多く取得した人ほど次回の有給休暇が付与されにくくなってしまいます。

年次有給休暇という制度の趣旨から見ても、このような処理にはなりません。

勤怠システム上で「実出勤日数」と「年休の出勤率計算上の出勤日数」が別項目になっている場合もあります。

月次の勤怠集計で表示される実出勤日数だけをそのまま分子に使用すると、年休日や育児休業日などが漏れることがありますので注意してください。

なお、会社独自の特別休暇、慶弔休暇、生理休暇などについては、法定のみなし出勤と同じように一律処理できるとは限りません。

就業規則や会社の取扱いを確認し、法定のみなし出勤日と会社独自制度を分けて管理するのが安全です。

勤怠システムの初期設定では、休暇区分ごとに「出勤率算定に含む・含まない」を設定できるものもあります。

一度設定した後は長期間見直されないことも多いため、産休・育休・労災休業などが実際に発生したタイミングで手計算と照合しておくと安心です。

欠勤・遅刻・早退はどう数えるか

私傷病などによる通常の欠勤日は、原則として全労働日には含めたまま、出勤日数には加えません。

そのため、欠勤が増えるほど出勤率は下がります。

たとえば、全労働日が250日あり、私傷病欠勤が60日、そのほかの190日は出勤していた場合、出勤率は190日÷250日=76%となり、8割を下回ります。

これに対して、遅刻や早退については考え方が異なります。

その日に実際に出勤して勤務していれば、基本的には1日の出勤日として数えます。

出勤率は労働時間の割合ではなく、原則として「何日に出勤したか」で判定します。

遅刻した時間を割合計算しない

たとえば、所定労働時間8時間の日に2時間遅刻し、6時間勤務したとします。

この場合、その日の出勤率を「6時間÷8時間=75%」として計算するわけではありません。

その日は出勤日1日として扱います。

同じように、1時間だけ遅刻した日、通院のため午後から出勤した日なども、実際に出勤して勤務しているのであれば、年次有給休暇の出勤率を算定する際には基本的に出勤日として数えることになります。

早退についても同じです。

勤務途中に体調不良で帰宅した日を、丸1日の欠勤として出勤日数から外してしまうと、出勤率を必要以上に低く計算することになります。

時間数ベースの勤怠率と混同しない

会社によっては、人事評価や皆勤手当、賞与査定などで「出勤率」という言葉を使用していることがあります。

その場合、遅刻時間や早退時間を控除して独自の勤務率を計算していることもあります。

しかし、会社独自の勤務率と、労働基準法上の年次有給休暇を付与するための出勤率は別のものです。

たとえば賞与査定上は遅刻3回を欠勤1日相当として扱う社内ルールが存在したとしても、そのルールをそのまま年次有給休暇の8割判定へ持ち込むことはできません。

皆勤手当や人事評価で使用している「出勤率」と、年次有給休暇の付与要件としての「出勤率」を同じ計算式で処理しないよう注意してください。

半日欠勤や半休も日単位で整理する

半日休暇や半日欠勤についても、年休の出勤率は基本的に日単位で考えることになります。

午前中を欠勤して午後から勤務した場合など、実際にその日に出勤しているのであれば、その日を出勤日として扱うのが基本です。

「半日欠勤だから0.5日だけ出勤」というように出勤率を時間比例させる考え方ではありません。

一方で、会社独自の半日休暇制度や勤怠処理との関係もありますので、給与計算上の欠勤控除と年休出勤率上の出勤日判定は分けて整理してください。

たとえば給与計算では午前中4時間分の欠勤控除が必要だったとしても、有給休暇の8割要件ではその日を出勤日として数えることがあります。

「賃金を何時間分払うか」と「年休の出勤率で1日として数えるか」は別の論点です。

半日単位の有給休暇については、 有給の半休の基本ルールと実務上の注意点 でも詳しく解説しています。

実務では、勤怠データをExcelへ出力して出勤率を計算するときに、遅刻・早退・半休の行まで機械的に欠勤扱いしてしまうミスがあります。

8割ぎりぎりの従業員については、勤務日ごとの勤怠区分まで一度確認した方がよいかなと思います。

有給休暇の出勤率8割の計算方法と実務

基本的な計算方法を理解したら、次は実務で特に判断が分かれやすいケースを確認していきます。

私傷病休職、8割未満だった年の翌年度、パート・アルバイト、勤務日数の変更などは、有給管理で問い合わせの多い部分です。

ここからは、単に計算式だけを見るのではなく、「実際に会社でどのように処理すればよいのか」という視点で整理していきます。

私傷病欠勤や休職期間の扱い

業務とは関係のない病気やけがによる欠勤は、原則として出勤したものとはみなされません。

私傷病による休職についても、産前産後休業や育児休業とは異なり、法律上当然に出勤したものとして扱われる制度ではありません。

そのため、原則的な考え方では出勤率を下げる方向に働きます。

たとえば、長期療養によって1年間のうち数か月間欠勤・休職していた場合、復職したとしても直前の計算期間の出勤率が8割未満となり、次の基準日に新たな有給休暇が付与されないことがあります。

継続勤務と出勤率は別に考える

ここで混同しやすいのが、「休職している期間は勤続年数からも外れるのか」という点です。

私傷病休職によって実際に勤務していない期間があったとしても、在籍関係が続いているのであれば、通常は継続勤務期間そのものまでリセットされるわけではありません。

つまり、「勤続年数は進んでいるが、出勤率8割を満たしていないため今回の年休は付与されない」という状態が起こり得ます。

たとえば入社3年6か月の基準日で出勤率8割未満となり、その年の付与がなかったとしても、翌年の基準日は勤続4年6か月として考えます。

翌年に8割以上の出勤率を満たせば、その時点の継続勤務年数に対応する日数で付与を判定します。

就業規則に有利な取扱いがないか確認する

ただし、ここで必ず確認してほしいのが 会社の就業規則 です。

会社によっては、法定基準より労働者に有利な制度として、私傷病休職期間について出勤したものとみなしたり、出勤率の計算から除外したりする規定を設けていることがあります。

そのような定めがある場合には、会社が自ら定めた有利な取扱いとの整合性を確認したうえで判断する必要があります。

「休職だからすべて欠勤」「休職だからすべて全労働日から除外」と一律に処理するのは避けてください。

休職理由と就業規則の両方を確認する必要があります。

たとえば就業規則に「業務外傷病による休職期間は、年次有給休暇の出勤率算定上、出勤したものとして取り扱う」といった規定があるにもかかわらず、勤怠システム側で通常欠勤として処理してしまえば、会社が定めた制度と実際の運用が食い違うことになります。

逆に、就業規則には特別な取扱いがないのに、「以前から休職者は全部出勤扱いにしていた」という運用が長年続いている場合には、運用変更の影響も含めて慎重に確認した方がよいでしょう。

私傷病休職と有給付与の関係については、 休職中の有給付与と8割要件の考え方 で休職に絞って詳しく整理しています。

勤怠システムの設定も確認する

勤怠システムを利用している会社では、特に「休職」という勤怠区分を登録したときに、システムが自動的に分母から除外しているのか、欠勤として処理しているのか、みなし出勤としているのかを確認しておきましょう。

有給休暇の自動付与機能まで使用している場合、この設定が間違っていると、基準日に誤った日数が自動付与される可能性があります。

実務上は、長期休職者が復職したときや初めて基準日を迎えるときに、少なくとも一度は手計算で検算しておく方法がおすすめです。

システムの結果と手計算が一致すれば、その後の運用にも安心感が出ます。

出勤率8割未満なら有給は不付与

出勤率8割未満なら有給は不付与

対象となる計算期間の出勤率が8割未満だった場合、その期間に対応して新たに発生する年次有給休暇については、原則として付与する必要がありません。

たとえば、入社から6か月間の出勤率が8割未満であれば、6か月経過時点の10日は付与されません。

1年6か月時点や2年6か月時点など、その後の基準日についても、直前の対象期間の出勤率が8割未満であれば、その基準日に対応する新たな年休は原則として発生しません。

不付与と消滅を区別する

ここで重要なのは、 不付与と、すでに持っている有給休暇の消滅は別の話 だということです。

8割未満になると「新しい有給が発生しない」のであって、過去に付与された有給がその日に全部なくなるわけではありません。

たとえば、前年に付与された年次有給休暇が残っている従業員について、今年の出勤率が8割未満だったとしても、その残っている年休まで出勤率を理由に消滅させることはできません。

過去に発生した年休については、その年休がいつ付与されたかを基準に、取得済み日数や時効を確認します。

具体例で考えてみましょう。

前年に11日付与され、そのうち5日取得して6日残っている従業員が、その後長期欠勤によって次回基準日の出勤率8割を満たせなかったとします。

この場合、次回の新規付与は0日となり得ますが、前年から残っている6日まで出勤率を理由としてゼロになるわけではありません。

残っている6日は、もともとの付与日に基づいて管理します。

この点を誤解すると、「今年は8割未満だから残っている有給もゼロ」といった誤った処理につながります。

有給休暇の付与日、繰越、消滅時期については、 有給休暇の付与日・消滅日・繰越ルール もあわせて確認してください。

年5日の取得義務との関係

また、年5日の確実な取得義務は、法定の年次有給休暇が年10日以上付与される労働者について生じます。

その基準日に出勤率8割未満によって新たな法定年休が付与されない場合、その不付与となった年休を前提として新たに年5日の取得義務が発生するわけではありません。

ただし、基準日を統一している会社、前倒し付与をしている会社、法定を上回る独自付与をしている会社などでは管理が複雑になることがあります。

単純に「今年は8割未満だから5日義務は絶対に関係ない」と結論付けず、どの法定年休をいつ付与しているのかまで確認してください。

出勤率8割未満の従業員が出たときは、「今回の新規付与日数」「過去の残日数」「各年休の消滅日」「年5日取得義務の対象期間」を別々に確認すると整理しやすくなります。

従業員への説明でも、「今年は有給がありません」とだけ伝えると、現在保有している残日数まで使えないと誤解されることがあります。

「今回の基準日では新たな年休が発生しない」という言い方の方が正確です。

不付与でも継続勤務年数は通算する

出勤率が8割未満で有給休暇が付与されなかった場合でも、勤続年数までリセットされるわけではありません。

継続勤務年数はそのまま通算されます。

ここは給与・労務担当者が間違いやすいポイントです。

有給休暇の付与日数は、基準日時点の継続勤務年数に応じて増えていきます。

一方、出勤率8割という要件は、「その基準日に新たな年休を発生させるかどうか」を判定する要件です。

したがって、一度不付与になったからといって、次回また最初の10日からやり直すわけではありません。

初回不付与でも次回は11日

たとえば、入社6か月時点の出勤率が8割未満だったため、初回の10日が付与されなかった従業員がいたとします。

その後勤務を続け、1年6か月時点で直前1年間の出勤率が8割以上となった場合、付与するのは初回分の10日ではありません。

1年6か月時点の勤続年数に対応する11日を付与します。

最初の10日を後からさかのぼって付与し、さらに11日を加えて21日付与するわけでもありません。

基準日 直前期間の出勤率 新規付与 考え方
入社6か月 8割未満 0日 初回付与要件を満たさない
入社1年6か月 8割以上 11日 勤続1年6か月として判定
入社2年6か月 8割以上 12日 勤続2年6か月として判定

途中の年度だけ不付与の場合も同じ

初回だけではなく、途中の年度で8割未満になった場合も考え方は同じです。

たとえば、6か月時点で10日、1年6か月時点で11日が正常に付与され、その後長期欠勤によって2年6か月時点では8割未満となったとします。

この場合、2年6か月時点では新たな12日は付与されません。

しかし、その翌年の3年6か月時点で直前1年間の出勤率が8割以上となれば、付与日数を再び10日や12日から始めるのではなく、3年6か月の継続勤務年数に対応する日数で判定します。

つまり、有給休暇の制度では 「出勤率の判定」と「継続勤務年数」を分けて考える 必要があります。

不付与になった年度の日数を翌年度に追加して取り戻す制度ではありません。

また、不付与になったからといって勤続年数を最初から数え直す制度でもありません。

勤怠システムを手作業で修正している会社では、不付与者について「前年の付与実績が0日だから次も初回10日」と誤設定しないよう注意してください。

私が確認するときは、付与履歴だけではなく入社日からの継続勤務年数を必ず確認します。

システムによっては過去に不付与処理をすると次年度の自動付与まで止まるものも考えられますので、次回基準日を管理対象から外さないことも大切です。

パートの出勤率と比例付与の考え方

パート・アルバイトにも、要件を満たせば年次有給休暇は付与されます。

そして、 出勤率8割の計算式そのものは正社員と変わりません。

つまり、パートだから7割でよい、アルバイトだから出勤率を確認しなくてよい、といった取扱いにはなりません。

対象期間の出勤日数を全労働日で割って8割以上かどうかを判定します。

違いが出るのは、主に付与される有給休暇の日数です。

パートは自分の所定労働日で8割を見る

たとえば週3日勤務のパートであれば、その人について定められた所定労働日が全労働日になります。

正社員が年間250日勤務している会社だからといって、週3日勤務のパートについても250日を分母にするわけではありません。

仮に半年間の所定労働日が78日あり、そのうち65日を出勤日として数えることができるのであれば、出勤率は65÷78で約83.3%となります。

この場合、8割要件を満たします。

逆に、所定労働日が78日で出勤日が60日なら約76.9%となり、8割を下回ります。

パートの8割要件は、正社員の日数と比較するのではなく、そのパート本人の全労働日に対して判定します。

比例付与になるかも確認する

週の所定労働日数が4日以下で、かつ週の所定労働時間が30時間未満の労働者については、週所定労働日数や年間所定労働日数に応じて比例付与となります。

一方、パート・アルバイトという名称で働いていたとしても、週所定労働時間や所定労働日数によっては、通常の労働者と同じ法定日数が付与される場合があります。

パート・アルバイトという雇用上の呼び名だけで比例付与になるかどうかを判断しないでください。

実際の週所定労働時間、週所定労働日数、年間所定労働日数を確認します。

このため、パートの有給休暇を処理するときには、次の2段階で考えると分かりやすいです。

  1. 本人の全労働日に対して8割以上出勤しているか確認する
  2. 8割要件を満たしたら、勤務条件と勤続年数から付与日数を確認する

出勤率と付与日数を一緒に考えてしまうと、「週3日しか働いていないから8割条件も緩くなる」といった誤解が生じます。

週3日勤務であっても、予定されている勤務日の8割以上出勤するという要件自体は同じです。

年5日の取得義務も雇用形態では判断しない

なお、年5日の確実な取得義務についても、「正社員かパートか」で決まるわけではありません。

法定の年次有給休暇が10日以上付与される労働者が対象となるため、比例付与による法定付与日数が10日未満の段階では対象外でも、勤続年数が伸びて10日以上付与される段階になると対象となることがあります。

企業側では、パートだから年5日の取得義務は関係ないと固定的に考えず、毎年の付与日数を確認することが重要です。

また、週所定労働日数そのものが途中で変更される場合は、出勤率と比例付与日数をさらに分けて考える必要があります。

次の項目で詳しく見ていきます。

週所定労働日数が変わった場合

週所定労働日数が変わった場合

パートからフルタイムになった場合や、週3日勤務から週4日勤務へ変更した場合など、計算期間の途中で週所定労働日数が変わることがあります。

この場合、出勤率と付与日数を分けて考えると整理しやすくなります。

まず出勤率については、 その計算期間に実際に設定されていた全労働日に対して、出勤日数が8割以上あるか を確認します。

計算期間中の実際の全労働日を合計する

たとえば、前半6か月は週3日勤務、後半6か月は週4日勤務であった場合、前半と後半それぞれの勤務条件に基づいて全労働日を集計し、対象となる1年間全体の出勤率を計算します。

前半6か月の全労働日が78日、後半6か月の全労働日が104日だったとすれば、単純な例では合計182日が基礎となります。

そこから全労働日から除外すべき日があれば除き、出勤日やみなし出勤日を数えて8割以上かどうかを確認します。

「基準日時点では週4日だから、過去1年間もすべて週4日だったものとして計算する」という方法ではありません。

出勤率は計算期間全体の勤務実績、付与日数は基準日時点の働き方を確認する、と分けて考えるのがポイントです。

付与日数は基準日時点の勤務条件を確認する

一方、実際に何日の有給休暇を付与するかについては、原則として次の基準日時点の所定労働日数などを確認し、比例付与の対象であれば該当する付与日数を確認します。

このため、計算期間の大部分を週3日で働いていた従業員が、基準日前に週5日勤務へ変更されているようなケースでは、出勤率を求める際の全労働日と、新たに付与する日数を決める際の勤務条件が異なることがあります。

ここを一つの基準で処理しようとすると混乱しやすいところです。

育休復帰時の勤務変更は特に注意する

実際によくあるのは、育児休業から復帰すると同時に週所定労働日数や勤務形態が変わるケースです。

たとえば、育児休業前は週5日勤務だった従業員が、復職後は週4日勤務となることがあります。

この場合は、育児休業期間について出勤したものとみなす処理、復帰後の所定労働日数、次の基準日時点の契約内容をそれぞれ分けて確認する必要があります。

育児休業期間を通常の欠勤として出勤率を下げたうえで、さらに復職後の勤務日数減少を反映すると、誤って年休を不付与としてしまう可能性があります。

勤務条件の変更日が基準日の直前にある場合などは、雇用契約書、労働条件通知書、勤務シフト、就業規則を照合し、変更が実際にいつから適用されたのかを明確にしておきましょう。

また、「週3日から週4日へ変更する予定だったが、実際にはシフトが変更されていなかった」といったケースもあります。

契約上の所定労働日と実際の運用がずれていると、そもそもの全労働日の確定が難しくなります。

有給休暇だけの問題ではなく労働条件管理の問題にもなりますので、勤務日数を変更するときは変更日や所定労働日を文書で明確にしておくことをおすすめします。

有給休暇の出勤率8割の計算方法まとめ

有給休暇の出勤率8割の計算方法は、基本的には 出勤日数÷全労働日数 です。

ただし、実務では計算式そのものよりも、どの日を分母に入れ、どの日を出勤扱いとして分子に入れるのかが重要になります。

年間の勤怠データから「出勤」と表示されている日だけを数え、「所定労働日」で割れば終わり、というほど単純ではありません。

育児休業や産前産後休業、労災による休業、年休取得日など、実際には出勤していなくても出勤したものとして扱う日があるためです。

一方で、会社側の事情による一定の休業や正当な争議行為など、そもそも全労働日の分母から除外する日もあります。

ケース 全労働日 出勤日数 出勤率への影響
通常の出勤日 含める 含める 通常の出勤
私傷病欠勤 含める 含めない 出勤率を下げる
遅刻・早退した出勤日 含める 含める 基本的に1日出勤として扱う
年次有給休暇取得日 含める 出勤扱い 出勤率を下げない
労災による療養休業 含める 出勤扱い 出勤率を下げない
産前産後休業 含める 出勤扱い 出勤率を下げない
育児・介護休業 含める 出勤扱い 出勤率を下げない
所定休日 含めない 含めない 計算対象外
一定の会社都合・不可抗力による休業 原則として除外 除外 計算対象から除く

計算するときの実務上の順番

企業の労務担当者であれば、次の順番で確認すると比較的間違いにくくなります。

  1. 有給休暇の基準日を確認する
  2. 出勤率の計算対象期間を確定する
  3. その期間の所定労働日を一覧化する
  4. 全労働日から除外する日を取り除く
  5. 実際の出勤日に加えて、みなし出勤日を数える
  6. 出勤日数を全労働日数で割る
  7. 0.8以上かどうかを確認する
  8. 8割以上なら基準日時点の勤続年数や勤務条件から付与日数を決める

企業の労務担当者として特に押さえておきたいのは、 「全労働日から除外する日」と「出勤したものとみなす日」は別物 という点です。

産休・育休・労災などは、単純に計算対象から消すのではなく、出勤したものとして扱います。

一方、私傷病欠勤や私傷病休職は原則として同じ扱いにはなりません。

8割未満でも過去の年休や勤続年数は別管理

また、出勤率が8割未満だったとしても、過去に付与された有給休暇がその場で消えるわけではなく、継続勤務年数もリセットされません。

次の基準日に8割以上の要件を満たした場合は、その時点の勤続年数に対応する日数を付与します。

したがって、出勤率を計算した後は、「今回の付与があるか」だけを見るのではなく、現在保有している年休日数、過去の付与日、消滅時期、次回基準日もあわせて確認しておく必要があります。

有給休暇の出勤率管理で最も大切なのは、勤怠区分の名前だけで機械的に処理せず、その日を法律上どのように扱うのかを一つずつ整理することです。

勤怠システムで自動計算している会社でも、休職者、育児休業者、長期欠勤者、勤務日数を変更したパートなどが基準日を迎えるときは、一度手計算してみることをおすすめします。

私自身、実務で確認するときも、システムに表示された「出勤率○%」という結果だけではなく、その計算に使われた全労働日と出勤日数の内訳を確認します。

計算結果が合っていても、たまたま別々の誤りが相殺されていることも考えられるからです。

有給休暇の出勤率は、就業規則、個別の勤務形態、休業理由、会社独自の有利な取扱いなどによって確認事項が変わる場合があります。

勤怠システムの自動計算だけで判断せず、特殊な休業や長期休職がある場合は元データを確認してください。

制度改正や個別ケースによる違いもあるため、 正確な情報は公式サイトをご確認ください

判断に迷う場合には、 最終的な判断は専門家にご相談ください

有給休暇の出勤率8割の計算方法は、一度「分母から除外する日」「出勤扱いする日」「通常の欠勤日」の3つに分けて整理できれば、それほど難しいものではありません。

基準日ごとに同じ手順で確認できるよう、会社内で計算方法を統一しておくと、担当者が変わったときにも安定した運用ができます。

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