こんにちは。
もりおか社会保険労務士事務所、社会保険労務士の川熊です。
傷病手当金の事業主証明では、会社が申請書の3ページ目に、申請期間中の勤務状況や賃金の支払い状況を記入します。
基本的には、出勤簿やタイムカード、賃金台帳などを確認し、実際の勤務と給与支払いの事実をそのまま証明する手続きです。
初めて従業員から申請書を渡された会社担当者の場合、出勤していない日はどう書くのか、有給休暇や住宅手当は記載するのか、証明日はいつにすればよいのかなど、細かな部分で迷いやすいと思います。
特に中小企業では、傷病手当金の申請が毎月発生するわけではないため、担当者が初めて処理するケースも珍しくありません。
「休職しているから全部無給でよいだろう」「本人が書いた期間をそのまま会社も証明すればよいだろう」と進めると、実際の勤怠や給与の内容と食い違うことがあります。
この記事では、会社側の実務を中心に、事業主記入用の3ページ目をどのように確認して記入すればよいのか、退職後の申請や会社が証明しない場合の対応まで整理します。
- 傷病手当金の事業主記入用3ページ目の書き方
- 勤務状況と賃金支払い状況の確認方法
- 有給休暇や退職後の申請で迷いやすいポイント
- 会社が事業主証明を書かない場合の対応方法

傷病手当金の事業主証明と書き方
傷病手当金の事業主証明で会社が確認する中心的な資料は、出勤簿やタイムカードなどの勤怠記録と、賃金台帳や給与明細などの賃金記録です。
会社が傷病手当金を支給するかどうかを判断する書類ではなく、申請期間中に「働いた日があったか」「休んだ日に給与や手当を支払ったか」といった客観的な事実を証明します。
そのため、会社担当者が医学的な判断をしたり、「この程度の病気なら働けるのではないか」と独自に判断したりする必要はありません。
反対に、従業員から「全部休んだことにしてほしい」「手当は書かなくてもよいと思う」と言われたとしても、会社が保有している記録と異なる内容を証明することはできません。
会社担当者は、本人の申請期間を確認してから、勤怠記録と賃金記録を照合して3ページ目を作成する と考えると整理しやすくなります。
事業主記入用3ページ目は誰が書く
協会けんぽの健康保険傷病手当金支給申請書は、被保険者本人、事業主、療養担当者で役割を分けて完成させます。
本人が記入するページとは別に、 3ページ目が事業主記入用 となっており、申請期間中の勤務状況や賃金支払い状況を会社が証明します。
ここでいう事業主証明は、所属部署の上司や店長が個人的な判断で記載するという意味ではありません。
実務上は、人事、総務、給与計算担当者などが出勤簿や賃金台帳を確認して作成し、会社として証明する形になります。
小規模な会社であれば代表者自身が作成することもありますし、社会保険手続きを社会保険労務士へ委託している場合は、会社から提供された資料をもとに社労士が作成や提出をサポートすることもあります。
健康保険法施行規則第84条では、傷病手当金の申請にあたり、労務に服することができなかった期間や報酬などについて、事業主の証明書を添付する仕組みが定められています。
協会けんぽの申請書では、この証明に当たるのが3ページ目です。
また、同施行規則第33条では、事業主は保険給付を受けようとする者から省令に基づく証明書を求められた場合、正当な理由がなければ拒むことができない旨が定められています。
傷病手当金の事業主証明は、会社の好意で任意に作成する書類という位置づけではないことも押さえておきたいところです。
会社側で特に意識したいのは、 会社が「この従業員は傷病手当金をもらえる」と判断して証明するわけではない ということです。
会社が証明するのは勤務と賃金の事実であり、療養のため労務不能であるか、傷病手当金の支給要件を満たすかといった最終的な審査は保険者が行います。
会社が確認する中心は「いつ働いたか」「休んでいる期間にどのような報酬を支払ったか」です。
病気の重さや治療内容を会社が審査する書類ではありません。
実務では、従業員が長期休職に入ると、会社側も「この人は傷病手当金の対象になるのだろうか」と心配になることがあります。
ただ、会社担当者が支給要件まで先回りして判断し、証明を保留する必要はありません。
会社は会社で把握できる事実を正確に証明し、支給可否は保険者の審査に委ねる。
この役割分担を明確にしておくと、処理がかなり分かりやすくなります。
本人が記入するページを含めた申請書全体の流れを確認したい場合は、 傷病手当金申請書の書き方と記入例 もあわせて確認してください。
会社では誰が実際に作成するのか
中小企業では、代表者本人ではなく社会保険担当者や給与計算担当者が実際の記入作業を行うケースが一般的です。
また、社会保険労務士へ社会保険手続きを委託している会社では、社労士が内容を確認して申請手続きをサポートすることもあります。
ただし、誰が実際にペンを持って記入するかよりも重要なのは、 会社として確認できる根拠資料に基づいて作成されているか です。
直属の上司が「ずっと休んでいたと思う」と話しているだけでは十分ではありません。
出勤簿、タイムカード、勤怠システム、賃金台帳、給与明細などを確認し、申請期間と照合します。
特に複数の店舗や事業所がある会社では、現場の店長が勤怠を管理し、本社が給与計算を行っていることがあります。
その場合は、現場から勤怠情報を集めたうえで、本社側で賃金支払い状況まで確認するとよいでしょう。
いずれの場合も重要なのは、記憶や本人からの聞き取りだけで書くのではなく、会社に保管されている客観的な記録を確認することです。
勤務状況欄は出勤日を丸で記入する

事業主記入用の勤務状況欄では、本人が2ページ目に記載した申請期間のうち、 実際に出勤した日を○で囲みます 。
反対に、欠勤した日に○を付ける欄ではありません。
この点は初めて作成する担当者が比較的間違いやすいところです。
たとえば、4月1日から4月30日までが申請期間で、4月1日から10日まで出勤し、その後休職したのであれば、申請期間のうち実際に出勤した日について○を付けます。
まったく出勤していない月であっても、その月の「年」と「月」は記入します。
出勤日がゼロだから勤務状況欄そのものを空欄にする、という書き方ではありません。
勤務状況欄を作成するときは、本人の申告ではなく、出勤簿、タイムカード、勤怠管理システムなどを確認します。
特に注意したいのが、半日だけ勤務した日や、途中で早退した日です。
所定労働時間の全部を勤務していなくても、一部の時間について実際に労務に服していれば出勤日として扱います。
たとえば午前中だけ出勤して午後から体調不良で早退した場合や、数時間だけ引継ぎのために出勤した場合も、単純に「欠勤日」として扱うのではなく、実際に勤務した日として記録との整合性を確認します。
ここで重要なのは、会社が「少ししか働いていないから休んだことにしておこう」と判断しないことです。
傷病手当金について、その日の勤務が支給にどのような影響を与えるかを最終的に判断するのは保険者です。
会社はまず実態どおりに証明します。
一方、有給休暇を取得して一日まったく勤務していない日は、出勤日として○を付けるのではありません。
有給休暇によって賃金を支給している場合は、後ほど説明する賃金支払い状況の欄で確認します。
公休日についても、実際に勤務していなければ出勤日として○を付けるものではありません。
勤務状況で確認する資料
- 出勤簿
- タイムカード
- 勤怠管理システム
- シフト表
- 有給休暇の取得記録
複数の資料がある場合は、できるだけ相互に確認してください。
たとえば、タイムカード上では打刻がないものの、シフト表には出勤予定が入っている場合、予定ではなく実際に勤務したかを確認する必要があります。
反対に、在宅勤務や直行直帰によってタイムカードの打刻がなくても、実際には勤務している可能性があります。
「打刻がない=休み」と機械的に判断しないことも大切です。
在宅勤務、直行直帰、休日出勤、短時間勤務などがある会社では、勤務実態を確認できる資料もあわせて見てください。
傷病手当金の申請では、本人、会社、医師がそれぞれ期間を記載するため、期間の食い違いが起きることがあります。
会社側では、まず本人が2ページ目に記載した申請期間を確認したうえで、その期間だけを対象に勤務状況を証明すると間違いが少なくなります。
たとえば本人が4月10日から5月9日までを申請しているのに、会社が給与締日の関係だけを見て4月1日から4月30日の勤怠を記載すると、対象期間がずれてしまいます。
給与計算期間と傷病手当金の申請期間は必ずしも同じではありません。
まず申請期間を特定し、その中の出勤日を拾う。
この順番で作業すると整理しやすいですよ。
賃金支払い状況は手当も確認する
会社担当者が最も迷いやすいのが、賃金支払い状況です。
「休職して基本給を払っていないから、何も書かなくてよい」と考えてしまいがちですが、 基本給以外の手当が継続して支給されていないか まで確認する必要があります。
傷病手当金は、療養のため働けない期間について、一定の要件を満たした場合に所得を保障する健康保険の給付です。
そのため、出勤していない日に対して会社から報酬等が支払われている場合には、その内容によって傷病手当金との調整が行われることがあります。
協会けんぽの事業主記入用では、申請期間のうち出勤していない日に対して報酬等を支給した場合、その対象となる期間や金額を記載します。
現行様式では、有給休暇の場合の賃金のほか、出勤の有無にかかわらず支給している扶養手当や住宅手当、食事や住居などの現物支給も例示されています。
| 確認するもの | 主な取扱い | 実務上の確認ポイント |
|---|---|---|
| 有給休暇の賃金 | 出勤していない日に支給した報酬として確認 | 有給取得日と支給額を勤怠・賃金台帳で照合 |
| 住宅手当 | 欠勤中も支給している場合は確認 | 休職中も定額で継続していないか確認 |
| 扶養手当 | 欠勤中も支給している場合は確認 | 基本給が0円でも手当のみ残っていないか確認 |
| 通勤手当 | 休職期間にも対応する支給があれば確認 | 定期代や一括支給分の扱いを確認 |
| 食事・住居などの現物支給 | 報酬に該当するものは確認 | 休職中も利用・支給が継続していないか確認 |
ここは賃金台帳だけを眺めるのではなく、給与規程や各手当の支給条件まで確認することがあります。
たとえば住宅手当が「在籍している限り毎月支給」という制度であれば、休職によって基本給が0円になっていても、住宅手当だけ支給されているケースがあります。
扶養手当や役職手当についても同じで、給与計算ソフト上で自動的に継続支給されていることがあります。
「基本給が0円か」ではなく、「出勤していない日に対して何らかの報酬等を支給していないか」 という視点で確認してください。
給与明細だけでなく賃金台帳も確認する
実務では、本人の給与明細だけを見て処理するのではなく、会社側の賃金台帳と照合することをおすすめします。
給与明細には当月支給額が表示されていますが、その金額がどの期間に対応するものなのか分かりにくい場合があるためです。
たとえば、前月分の残業代が翌月給与で支給される会社では、休職開始後の給与明細に残業代が載ることがあります。
反対に、休職期間中に対応する固定的な手当が後から精算されることもあります。
単に「申請期間中に給与振込があったから全部調整対象」と判断するのではなく、何に対する支払いなのかを確認することが重要です。
支給日だけを見て判断せず、その賃金がどの期間・どの事由に対応するものなのかを確認してください。
判断が難しい手当や一時金がある場合は、加入している保険者へ確認した方が安全です。
なお、見舞金など一時的に支給された金銭については、その性質によって取扱いが異なります。
名称だけで判断せず、就業規則や賃金規程に基づく賃金なのか、会社から恩恵的に支給されたものなのかを確認することが大切です。
傷病手当金では、報酬の支払いがあったからといって必ず申請そのものができなくなるわけではありません。
支払われた報酬額との関係によって不支給となったり、差額が支給されたりする場合があります。
会社担当者としては支給額を自分で計算して調整するのではなく、事実を正確に証明し、保険者の判断につなげることが重要です。
事業主証明日は申請期間終了後にする

事業主証明日は、 本人が申請する期間の最終日が経過してから 記入します。
まだ到来していない日の勤務状況や賃金支払い状況を、会社が事前に証明することはできないためです。
たとえば、申請期間が4月1日から4月30日までであれば、4月30日が終わってから勤務実績を確認して証明します。
4月25日の時点で「おそらく月末まで休むだろう」と考え、4月30日までの期間を証明するのは適切ではありません。
実際には4月28日に復職するかもしれませんし、4月30日に数時間だけ出勤する可能性もあります。
未来の勤務状況を会社が確定的に証明することはできないわけです。
3ページ目だけを休職開始時に先に作成しないようにしましょう。
本人が2ページ目に記載した申請期間が確定し、その期間が経過してから事業主証明を行うのが基本です。
実務では、休職に入る時点で従業員から「会社欄を書いてください」と申請書を渡されることがあります。
この場合、その場ですべてを完成させるのではなく、申請対象期間を確認し、期間終了後に勤務状況と賃金支払い状況を確定させてから証明します。
証明日だけでなく給与確定のタイミングも確認する
申請期間が終了していても、会社の給与計算がまだ終わっていない場合があります。
たとえば4月30日までの申請について、5月1日の時点では4月分の有給取得や欠勤控除、各種手当の計算が最終確定していない会社もあるでしょう。
傷病手当金の事業主証明では、勤務状況だけでなく賃金支払い状況も重要です。
そのため、会社の給与締日や計算スケジュールとの関係も見ながら、正確な証明ができる時点で作成することが実務的です。
傷病手当金の申請を毎月行う会社では、給与締日と事業主証明の作成日を社内ルールとして決めておくとスムーズです。
たとえば「月末までの申請分は翌月の給与計算確定後に証明する」といった運用です。
一方で、必要以上に長期間保留する必要もありません。
従業員にとって傷病手当金は休職中の生活を支える重要な給付です。
勤怠と給与が確定して証明できる状態になったら、社内で速やかに処理できる体制を整えておくことが望ましいでしょう。
私が会社側の手続きを確認するときも、証明日と申請期間の最終日の前後関係は必ず確認するポイントです。
単純な日付の問題ですが、差し戻しや確認連絡を防ぐうえでは重要です。
長期休職者がいる会社であれば、毎月担当者が変わっても同じ処理ができるよう、「申請期間終了後に証明」「勤怠確定後に作成」「賃金台帳を照合」といった手順を簡単な社内マニュアルにしておくとよいかなと思います。
事業主の押印は原則不要
協会けんぽの現在の傷病手当金支給申請書では、事業主記入用に事業主印を押す欄はなく、事業所所在地、事業所名称、事業主氏名、電話番号などを記載して証明します。
以前の社会保険関係の申請書では会社印や代表者印を求められるものが多かったため、「傷病手当金の事業主証明にも社印が必要なのでは」と迷う担当者は少なくありません。
しかし、協会けんぽの現行様式を利用する場合、従来の感覚で押印欄を探す必要はありません。
協会けんぽの最新様式は、 (出典:全国健康保険協会「健康保険傷病手当金支給申請書」) で確認できます。
押印が不要だからといって、事業主証明自体が簡略化されたわけではありません。
事業所所在地、事業所名称、事業主氏名などを正確に記載し、その会社が証明したものであることが分かるように作成する必要があります。
特に会社名の変更、代表者変更、本店移転などがあった場合には、古い社判や以前の住所をそのまま転記せず、申請時点の事業所情報を確認してください。
申請書をExcelやPDFで社内保存して使い回している会社では、古い情報が残っていることがあります。
健康保険組合では独自様式に注意する
一方、健康保険組合に加入している会社の場合には注意が必要です。
健康保険組合では独自の申請書や運用を設けている場合があるため、協会けんぽとまったく同じとは限りません。
たとえば、協会けんぽの申請書を参考に会社側で記入方法を覚えていても、加入先の健康保険組合では項目の配置、添付資料、提出経路などが異なることがあります。
会社が健康保険組合へ加入しているのであれば、その組合が公開している最新の申請書や記入要領を優先してください。
加入している保険者が協会けんぽなのか、健康保険組合なのかを確認してから、その保険者の最新様式を使用する ことが基本です。
「傷病手当金だから全国共通の用紙」とは限りません。
協会けんぽと健康保険組合では様式や提出方法が異なる可能性があるため、会社の加入先を最初に確認してください。
また、協会けんぽでは電子申請も利用できるようになっています。
電子申請であっても、事業主が証明する勤務状況や賃金支払い状況という内容自体がなくなるわけではありません。
紙の申請書に押印するかどうかだけに目を向けるのではなく、会社が証明すべき内容を正確にそろえることが重要です。
申請様式や電子申請の方法は制度改正によって変更される可能性があります。
会社で過去に保存していた古い申請書をそのままコピーして使用するのではなく、申請の都度、少なくとも最新様式であるかを確認する運用にしておくと安全です。
申請方法や必要な添付データは変更される可能性がありますので、申請時点の公式案内を確認してください。
傷病手当金の事業主証明で迷うケース
基本的な記入方法が分かっても、実際の申請では「休職が数か月続いている」「有給を使ってから休職した」「すでに退職している」といったケースが出てきます。
ここからは、中小企業の実務で特に判断に迷いやすい場面を整理します。
会社側は、傷病手当金の支給可否を判断しようとするのではなく、申請期間と会社に残っている記録を一つずつ照合するのが基本です。
複雑に見えるケースでも、「いつの期間を申請しているのか」「その期間に出勤した日はあるか」「出勤していない日に報酬を支払っているか」「その期間は在職中か退職後か」という順番で分解すると、かなり整理しやすくなります。
複数月の申請は月ごとに確認する
休職が長期化すると、傷病手当金の申請も複数回にわたることがあります。
協会けんぽでは、給与の支払い状況について事業主証明が必要になるため、 1か月単位で給与の締切日ごとに申請する方法 が実務上分かりやすい方法です。
たとえば給与計算期間が毎月1日から末日までであれば、4月分、5月分、6月分というように申請期間を区切ると、出勤簿と賃金台帳を照合しやすくなります。
毎月申請する場合、その都度、対象期間について事業主記入用を確認します。
一度会社が証明したからといって、その後の休職期間について自動的に同じ証明が使われるわけではありません。
4月は完全欠勤でも、5月に数日だけ復職しているかもしれませんし、6月から住宅手当の支給が止まることもあります。
各申請期間ごとに事実関係を確認する必要があります。
長期休職者については、 「申請期間・出勤簿・賃金台帳」の3点を毎回セットで確認する運用 にしておくとミスを減らせます。
申請期間が月をまたぐ場合には、それぞれの月の勤務状況を確認します。
特に月の途中から休職した場合や、復職した月については出勤日が混在するため注意が必要です。
給与締日と申請期間が違う場合
また、申請期間と給与計算期間が完全に一致しない会社もあります。
たとえば給与締日が20日の場合、申請期間と給与計算期間の境目がずれることがあります。
4月1日から4月30日まで傷病手当金を申請するとしても、会社の給与計算は3月21日から4月20日、次回が4月21日から5月20日というケースです。
この場合、1枚の給与明細だけで申請期間全体の賃金状況を確認できないことがあります。
前後2回分の賃金台帳や勤怠記録を見て、申請期間に対応する情報を整理してください。
| 確認する項目 | 確認する資料 | 注意点 |
|---|---|---|
| 申請期間 | 本人記入用2ページ目 | 給与締日と同じとは限らない |
| 出勤日 | 出勤簿・タイムカード | 複数月にまたがる場合は月ごとに確認 |
| 有給休暇 | 勤怠記録・有休管理簿 | 出勤ではないが賃金支払いを確認 |
| 給与・手当 | 賃金台帳・給与明細 | 複数の給与計算期間にまたがる場合がある |
この場合も、申請期間に対応する勤務実態と、その期間に関係する報酬等の支払いを賃金台帳などから確認してください。
長期休職者の申請を毎月処理していると、2回目、3回目から担当者側も慣れてきます。
ただ、慣れた頃に有給消化、短時間の試し出勤、復職、手当変更などが入り、前月と条件が変わることがあります。
「先月と同じだからコピー」で処理せず、毎回対象期間を確認することが大切です。
なお、協会けんぽの申請書では申請期間を暦で3か月以内とする案内がされています。
長期間をまとめて申請しようとする場合には、用紙を分ける必要が生じるため、最新の記入要領も確認してください。
傷病手当金の申請手続き全体については、 傷病手当金の申請方法と必要書類 でも詳しく整理しています。
有給休暇や休職中の手当も確認する

傷病手当金の事業主証明で特に間違いやすいのが、有給休暇の扱いです。
有給休暇の日は実際には働いていないため、勤務状況欄で出勤日として○を付けるのではありません。
一方、有給休暇を取得すれば通常は賃金が支払われます。
そのため、 有給休暇の日について支給した賃金は、賃金支払い状況として確認する必要があります。
たとえば、休職前に残っていた年次有給休暇を5日間使用し、その後無給の休職に移行した場合、有給休暇の5日間と無給休職期間では賃金の状況が異なります。
この違いをそのまま事業主証明に反映します。
「会社には一度も出勤していないから全部無給扱い」とまとめてしまうと、実際の賃金支払いと合わなくなります。
休職中でも残りやすい手当に注意する
中小企業で実際に見落としやすいのは、基本給ではなく各種手当です。
- 住宅手当
- 扶養手当
- 通勤手当
- 役職手当
- 現物で支給している食事や住居
たとえば休職規程で「休職期間中は基本給を支給しない」と定めていても、給与計算システム上、住宅手当だけがそのまま支給されていることがあります。
「休職だから給与は0円のはず」と思い込まず、実際の給与計算結果を確認してください。
傷病手当金との調整に関係する可能性があります。
これは私が会社側の給与や社会保険手続きを確認するときにも、かなり意識するところです。
休職者は基本給を0円に変更しているため、担当者としては「無給処理が済んだ」と思いがちです。
しかし給与ソフトでは、住宅手当や家族手当など別の固定項目が自動計算され、そのまま振り込まれていることがあります。
有給休暇と待期期間は別に整理する
傷病手当金には、支給開始前に連続する3日間の待期があります。
この待期については、有給休暇や公休日を含めて成立する場合があります。
一方、待期が完成することと、その日に傷病手当金が支給されることは別問題です。
有給休暇を使用して賃金を受けている日がある場合には、その賃金と傷病手当金の関係を保険者が確認します。
会社担当者としては「有給だから対象外」「待期だから記載不要」と自己判断するのではなく、勤怠上は有給休暇として、賃金上は実際に支給した内容として、それぞれ正確に証明してください。
有給休暇は「出勤していない」という勤務上の事実と、「賃金を支払っている」という給与上の事実を分けて考えるのがポイントです。
また、賞与や見舞金などについては、支給の性質によって扱いが異なることがあります。
傷病手当金との調整対象になる報酬かどうか判断しにくい場合には、加入している保険者へ確認してから記入する方が安全です。
会社で名称を「休職見舞金」としていても、その名称だけで判断することはできません。
就業規則や賃金規程に支給条件が定められているのか、労務の対価としての性質があるのか、恩恵的に一時支給したものなのかによって検討が必要です。
判断に迷う金銭がある場合は、支給規程や給与明細を手元に用意して保険者へ確認すると話が早いでしょう。
退職後の会社記入欄は在職期間を確認
退職した元従業員から傷病手当金の申請書が会社へ届いた場合は、まず 申請期間の中に在職期間が含まれているか を確認してください。
たとえば3月31日に退職した従業員が、3月1日から4月30日までの期間について申請するのであれば、3月31日までの在職期間について会社が確認すべき勤務状況や賃金支払い状況があります。
このように申請期間が退職日をまたぐ場合には、会社が在職中の事実関係を確認して証明する必要があります。
退職したからといって、過去の在職期間について会社が何も確認しなくてよいわけではありません。
一方、申請期間のすべてが資格喪失後である場合は事情が異なります。
協会けんぽの電子申請では、 資格喪失日以降の期間に関する申請については、事業主記入用のアップロードは不要 と案内されています。
退職者から申請書が届いたときは、最初に 「申請期間」と「退職日・資格喪失日」の位置関係 を確認すると整理しやすくなります。
退職日をまたぐ申請の考え方
たとえば3月31日退職で、3月15日から4月30日まで休んでいる場合を考えてみます。
3月15日から3月31日までは在職中ですから、会社にはその期間の出勤状況や給与支払い状況について確認できる記録があります。
一方、4月1日以降はすでに退職しており、元勤務先で出勤することも、通常は元勤務先から労務の対価として給与を受けることもありません。
このため、「退職後の申請だから全部会社証明不要」「一度退職したから会社は何も書かない」という一律の考え方ではなく、申請期間の中に在職期間が含まれているかを切り分けて考えます。
また、退職後も傷病手当金を継続して受給できるかどうかは、単に「退職した後も病気だった」というだけでは決まりません。
資格喪失後の継続給付には別途要件があり、退職日に出勤したかどうかなどが問題になる場合もあります。
退職日に実際に勤務している場合は、退職後の継続給付に影響する可能性があります。
退職日については、有給休暇なのか、欠勤なのか、実際に出勤したのかを出勤簿で正確に確認してください。
そのため退職者については、傷病手当金の事業主証明だけでなく、退職日前後の出勤状況も正確に保存しておくことが重要です。
実務では、退職後数か月してから元従業員から申請書が届くケースもあります。
その時点で当時の担当者が異動・退職していることもあるため、「誰が覚えているか」ではなく、保存している出勤簿や賃金台帳から証明できる体制が必要です。
健康保険組合では独自の取扱いがある場合もありますので、資格喪失後の会社記入欄を省略できるか迷う場合は加入先へ確認してください。
また、支給開始日以前12か月以内に勤務先や健康保険上の資格が変わっている場合には、加入状況に関する追加資料が必要になることがあります。
定年退職後に同じ会社へ再雇用されて健康保険の記号・番号が変わったケースなどもあるため、退職や再雇用が絡む場合は通常の申請より少し丁寧に確認した方がよいでしょう。
会社が事業主証明を拒否したときの対処
従業員側から見ると、会社が事業主証明を書いてくれない場合は非常に困ります。
傷病手当金は休職中の生活費に直結する制度ですから、証明が進まないことで申請自体が遅れてしまうことがあります。
健康保険法施行規則では、傷病手当金の申請にあたり事業主の証明が求められるほか、事業主は保険給付を受けようとする者から省令に基づく証明書を求められた場合、 正当な理由がなければ拒むことができない と定められています。
会社側で「本当に病気なのか分からない」「傷病手当金を支給することに納得できない」といった理由から証明を止めてしまうケースがありますが、 会社が証明するのは傷病手当金の支給可否ではなく、勤務状況や賃金支払い状況など会社が把握している事実 です。
会社は「支給してよいか」を判断するのではなく、 出勤したか、休んだか、給与を支払ったかという事実を証明する と整理すると分かりやすくなります。
まず会社の担当部署へ理由を確認する
会社が証明してくれないように見えても、実際には「給与がまだ確定していない」「申請期間が終了していない」「担当者が書き方を分かっていない」「医師欄が必要だと思って待っている」など、単純な事務上の理由で止まっていることもあります。
そのため従業員側では、最初から対立的に対応するのではなく、「どの部分が理由で証明できないのか」「いつであれば作成できるのか」を確認してみてください。
会社側も、内容に疑問がある場合は証明そのものを全面的に拒むのではなく、確認できる勤怠記録と賃金記録を整理し、必要に応じて保険者へ記入方法を確認する方が実務的です。
従業員側で会社が証明に応じてくれない場合は、まず人事・総務担当者や会社へ、傷病手当金の事業主記入用が必要であることを説明して依頼します。
それでも対応してもらえない場合には、加入している協会けんぽ支部や健康保険組合へ事情を相談してください。
保険者の判断によっては、会社への確認や、申請者側に追加資料の提出を求めるなど、個別の対応が行われることがあります。
事業主証明が得られないからといって、自分の判断で空欄のまま提出したり、会社名義で記入したりするのではなく、先に保険者へ相談することが重要です。
証明を得られない場合の代替資料や申立方法は、保険者や個別事情によって異なる可能性があります。
給与明細、出勤記録、休職通知書、会社とのやり取りなど手元にある資料を整理したうえで、加入先の保険者へ確認してください。
会社側からすると、事業主証明を作成することで「会社が従業員の主張を全部認めたことになるのでは」と心配することもありますが、そこは分けて考える必要があります。
勤務状況と賃金の事実を証明することと、傷病手当金の支給要件を認定することは別です。
会社と本人の間で休職そのものをめぐるトラブルがあったとしても、それとは切り離して健康保険上の証明事務を処理することが、不要な労使トラブルを広げないためにも大切です。
事業主証明を本人が自分で書かない

会社がなかなか事業主証明を書いてくれない場合、「勤務状況も給与も自分で分かっているので、自分で3ページ目を書けばよいのでは」と考える方もいます。
しかし、 事業主記入用は本人が自分自身について証明する欄ではありません。
勤務状況や賃金支払い状況について、事業主側が会社の記録に基づいて証明するためのものです。
本人が会社に無断で事業主欄を記入し、事業主が証明したような形で提出することは避けてください。
本人自身が「4月は一度も会社に行っていない」「給与も振り込まれていない」と認識していたとしても、会社側の記録では有給休暇が処理されていたり、住宅手当が支給されていたりする可能性があります。
また、本人が給与だと思っていなかった現物支給などについて会社側で確認が必要になることもあります。
本人が書いてよい部分と会社が書く部分を分ける
傷病手当金支給申請書では、本人が記入するページと会社が記入するページ、医師等が記入するページが分かれています。
本人は本人記入用の内容を正確に記載し、事業主証明は会社へ、療養担当者の証明は医療機関へ依頼します。
これは単なる形式ではありません。
同じ期間について、本人、会社、医師という異なる立場から情報を確認することで、保険者が支給要件を審査できる仕組みになっています。
本人が会社欄まで代わりに完成させてしまうと、「事業主が確認した事実」という証明の意味が失われます。
傷病手当金では、事業主の証明内容によって報酬との調整が行われることがあります。
事実と異なる内容が記載され、その結果として本来より多い保険給付が行われれば、後から返還などの問題につながる可能性があります。
会社側にも同じことがいえます。
従業員から「全部休んでいるので給与0円で書いてください」と言われても、その言葉だけを根拠に記入するのではなく、賃金台帳を確認してください。
本人の申告と会社の記録が違う場合は、会社の記録を確認したうえで事実どおりに証明します。
傷病手当金を多くもらえるように記載内容を調整することはできません。
反対に、会社側が「傷病手当金が出るなら有給扱いを書かない方が本人のためだろう」と考えて省略するのも適切ではありません。
結果として保険者に誤った情報を伝えることになり、後から確認や返還が必要になる可能性があります。
健康保険法には、不正な保険給付が行われた場合の返還や、事業主の虚偽の証明が関係する場合の取扱いも定められています。
会社担当者としては、「本人のために有利に書く」のではなく、正確な証明を行うことが結果的に本人と会社の双方を守ります。
もし会社の記録自体が誤っているのであれば、傷病手当金の申請書だけを合わせるのではなく、まず勤怠記録や給与計算そのものを訂正すべきか確認してください。
元データと申請書のどちらを正しい状態にするのか。
この順番も重要です。
傷病手当金の事業主証明は事実を記載
傷病手当金の事業主証明は、一見すると細かな記入項目が多く見えますが、会社側の役割を整理するとそれほど複雑ではありません。
基本は、 本人が申請した期間について、出勤簿と賃金台帳を確認し、勤務と賃金支払いの事実をそのまま記載すること です。
会社担当者が迷いやすいのは、傷病手当金の制度全体を自分で判断しようとするときです。
「この病気は対象か」「医師が休職と言っているが本当に働けないのか」「退職後も支給されるのか」「この手当があるといくら減額されるのか」と考え始めると、かなり複雑に感じます。
しかし、事業主証明という作業に限れば、会社が行うべきことはかなり明確です。
申請期間を確認し、その期間の勤怠を確認し、休んだ日に対応する賃金や手当の支払いを確認する。
それを事実どおりに記載します。
| 確認項目 | 実務上のポイント | 主な確認資料 |
|---|---|---|
| 申請期間 | 本人が記載した期間を最初に確認する | 申請書2ページ目 |
| 出勤日 | 出勤簿やタイムカードを確認して○を付ける | 出勤簿・勤怠システム |
| 有給休暇 | 出勤日ではなく賃金支払いとして確認する | 有休管理簿・賃金台帳 |
| 各種手当 | 休職中にも支給していないか確認する | 賃金台帳・給与明細・賃金規程 |
| 証明日 | 申請期間が終了した後の日付にする | 申請期間・作成日 |
| 退職者 | 申請期間に在職期間が含まれるか確認する | 退職日・資格喪失日・出勤簿 |
会社担当者の立場では、傷病手当金の支給要件まで自分で判断しなければならないように感じることがあります。
しかし、会社の役割は労務不能を医学的に判断することでも、支給・不支給を決定することでもありません。
会社は会社でしか確認できない勤務状況と賃金支払い状況を正確に証明する 。
ここを明確にしておけば、事業主証明の実務はかなり整理しやすくなります。
社内で手順を決めておくと毎月の申請が楽になる
長期休職者がいる会社では、傷病手当金の申請が毎月続くことがあります。
そのたびに担当者が一から調べるのではなく、簡単なチェックフローを決めておくと処理しやすくなります。
- 本人から申請書を受け取る
- 本人記入用の申請期間を確認する
- 出勤簿・タイムカードで勤務状況を確認する
- 有給休暇の取得状況を確認する
- 賃金台帳で基本給と各種手当を確認する
- 申請期間が終了していることを確認する
- 事業主証明欄を作成する
- 必要に応じて本人へ返却または保険者へ提出する
特に給与計算を外部へ委託している会社では、勤怠担当者と給与計算担当者の情報が分かれていることがあります。
誰がどの資料を確認して事業主証明を完成させるのかを決めておくと、処理漏れを防げます。
会社担当者の最終チェック
- 本人の申請期間を確認したか
- 出勤簿やタイムカードを確認したか
- 賃金台帳と給与明細を確認したか
- 有給休暇の賃金を見落としていないか
- 住宅手当や扶養手当などを確認したか
- 証明日は申請期間終了後になっているか
- 退職者は在職期間との関係を確認したか
また、事業主証明の控えを会社側で保存しておくこともおすすめします。
翌月の申請時に前回の期間との重複や空白を確認できますし、後から保険者や本人から問い合わせがあった場合にも、何を証明したのか確認しやすくなります。
傷病手当金の申請では、本人、会社、医師の記載内容がそれぞれ関連します。
会社だけで全体をコントロールできるものではありませんが、少なくとも会社が担当する勤怠と賃金について正確な証明を行えば、不要な差し戻しや確認を減らすことにつながります。
また、協会けんぽと健康保険組合では申請様式や細かな運用が異なる場合があり、制度改正や電子申請の変更によって手続き方法が変わることもあります。
正確な情報は公式サイトをご確認ください 。
会社が証明に応じないケース、退職前後の資格関係、報酬に該当するか判断しにくい手当など、個別事情によって結論が変わる場合があります。
判断に迷うケースでは保険者へ確認するとともに、 最終的な判断は専門家にご相談ください 。